説明

車両の電源制御装置

【課題】簡単な構成で車両に設けられた種々の電気負荷に対して適正に電力を供給することができる車両の電源制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン始動用のスタータ20に電力を供給する第一蓄電装置3と、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機4と、該発電機4に接続されてその発電電力を蓄える第二蓄電装置6とを備えた車両の電源制御装置であって、上記第二蓄電装置6と電気軽負容量の小さい電気負荷物15とをDC/DCコンバータ16を介して接続する給電回路17と、上記第二蓄電装置6と第一蓄電装置3とを接続リレー26を介して接続する接続ライン27と、上記給電回路17および接続ライン27を流れる電力を制御する通電制御手段30とを備え、この通電制御手段30は、上記スタータ20の作動時に接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とする制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動用のスタータに電力を供給する第一蓄電装置と、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機と、該発電機に接続されてその発電電力を蓄える第二蓄電装置とを備えた車両の電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、ヘッドランプのような突入電流が大きい電気負荷が突然にオン状態とされることよるグランド電位の上昇に影響を受けることなくバッテリ電源の昇圧を確実に行うことができ、エンジン停止時から再始動する際に電気負荷へ確実に電力を供給できるようにすることを目的として、自動停止したエンジンを再始動するときに、エンジンのスタータに電力を供給するバッテリと、該スタータの作動時に上記バッテリの電圧を昇圧して第1の電気負荷へ電力を供給する昇圧コンバータと、上記バッテリに接続されて電源スイッチがオンとされたときに突入電流が流れる第2の電気負荷の作動を遅延させる作動遅延制御を行う作動遅延制御手段とを設け、該作動遅延制御手段により、上記昇圧コンバータの動作に作動遅延制御を実行することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−142089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された車両用電源装置では、オーディオ装置およびナビゲーション装置等の第1の電気負荷、ヘッドランプ等の第2の電気負荷およびスタータに対し、バッテリの直流電流をそれぞれ供給するように構成されているため、該バッテリの電圧を必要に応じて昇圧する昇圧コンバータや、突入電流が流れる第2の電気負荷の作動を遅延させる作動遅延制御手段を設けたとしても、上記バッテリとして大容量のものを使用する必要があるとともに、上記昇圧コンバータを有する電源ラインとして大電流を通電可能なものを使用する必要があり、装置が大型化して製造コストが高くなるという欠点があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車両に設けられた種々の電気負荷に対して適正に電力を供給することができる車両の電源制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、エンジン始動用のスタータに電力を供給する第一蓄電装置と、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機と、該発電機に接続されてその発電電力を蓄える第二蓄電装置とを備えた車両の電源制御装置であって、上記第二蓄電装置とオーディオ類やメータ類等からなる電気軽負容量の小さい電気負荷物とをDC/DCコンバータを介して接続する給電回路と、上記第二蓄電装置と第一蓄電装置とを接続リレーを介して接続する接続ラインと、上記給電回路および接続ラインを流れる電力を制御する通電制御手段とを備え、この通電制御手段は、上記スタータの作動時に接続ラインの接続リレーをオフ状態とする制御を実行するものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の電源制御装置において、エンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させるエンジン自動停止制御を行うとともに、その後エンジンの再始動条件が成立したときに上記スタータを作動させてエンジンを自動的に再始動させる自動停止制御手段と、上記第二蓄電装置の電圧を検出する電圧検出手段を備え、この電圧検出手段により検出された上記第二蓄電装置の電圧が所定値以下である場合に、上記自動停止制御手段による自動停止制御の実行を禁止するように構成されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の電源制御装置において、上記第二蓄電装置は、第一蓄電装置よりも急速な充放電が可能なキャパシタにより形成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、上記スタータの作動時に接続ラインの接続リレーをオフ状態として、上記第二蓄電装置から第一蓄電装置等への電力の供給を停止するように構成したため、上記第二蓄電装置の電力不足に起因して、スタータを作動させてエンジンを始動させる際に、第二蓄電装置から各電気負荷物に充分な電流を供給することができなるという事態の発生を効果的に防止し、該電気負荷物が意に反して作動停止状態となるのを効果的に防ぐことができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、エンジンを再始動させる際に第二蓄電装置の残留電力が少ないために上記消費電力を賄うことができない状態にある場合には、エンジンの自動停止制御の実行が禁止されることにより、エンジンの再始動時に、各電気負荷物に充分な電流を供給することができないことに起因して、該電気負荷物が作動停止状態となるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、鉛蓄電池等よりも急速な充放電が可能なキャパシタにより第二蓄電装置を形成した場合には、上記発電機の発電電流を第二蓄電装置に供給して迅速に充電することができるとともに、該第二蓄電装置に充電された電力を、上記DC/DCコンバータを介して適正値に降下させた状態で、上記電気負荷物に供給することにより効果的に電力の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電源制御装置を備えた車両の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る電源制御装置を備えた車両の概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る電源制御装置の実施形態を示すブロック図である。
【図4】接続リレーをオン状態としつつ、バイパスリレーをオン状態としたブロック図である。
【図5】接続リレーおよびバイパスリレーをオフ状態としたブロック図である。
【図6】DC/DCコンバータの出力を停止した状態を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電源制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図8】エンジンの再始動時における電源制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る車両の電源制御装置を備えた車両の前部構造を示している。該車両の前部に位置するエンジンルーム1内には、図示を省略したエンジン(内燃機関)およびトランスミッションが配設され、エンジンルーム1内の一方側(当実施形態では左側)には、長期に亘り電力を保持可能な鉛蓄電池等からなる第一蓄電装置3が配設されるとともに、上記エンジンルーム1内の他方側(右側)には、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収するオルタネータからなる発電機4が配設されている。
【0014】
また、上記エンジンルーム1内の他方側であってフロントタイヤ2の前方側には、第一ハーネス5により上記発電機4に接続された第二蓄電装置6が配設されている。該第二蓄電装置6は、複数の電気二重層キャパシタセルが直列に接続されてなるキャパシタからなり、上記第一蓄電装置3よりも急速な充放電が可能であるという特性を有している。そして、車両の減速時等にオルタネータからなる発電機4が駆動されることにより発生した電力が上記第一ハーネス5を介して第二蓄電装置6に供給され、該第二蓄電装置6が発電機4の発電電圧に応じた適宜の電圧、例えば14V〜25V程度に充電されるようになっている。
【0015】
上記エンジンルーム1の後方側に位置する車室内には、後述の自動停止制御手段29および通電制御手段30を構成するCPUや各種メモリ等を備えた制御ユニット7が、運転席または助手席の下方に位置するフロアパネル上に設置されている。そして、フロントタイヤ2の上方に形成されホイールアーチに沿って上記第一蓄電装置3と制御ユニット7等とを接続する第二ハーネス8が配策されている。
【0016】
図3は、本発明に係る車両の電源制御装置の具体的構成を示すブロック図であり、該車両の電源制御装置には、上記第一蓄電装置3の電圧を検出する第一電圧検出手段9と、第二蓄電装置6の電圧を検出する第二電圧検出手段10とが設けられるとともに、ナビゲーション装置11、オーディオ装置12、メータユニット13および車室内照明装置14等の電気負荷容量が比較的小さい第一電気負荷物15と、上記第二蓄電装置6とをDC/DCコンバータ16を介して接続する第一給電回路17が設けられている。上記DC/DCコンバータ16は、第二蓄電装置6から給電電圧を上記第一電気負荷物15の作動電圧に対応した値、例えば14V程度に降下させる機能を有するものである。
【0017】
上記第一蓄電装置3と第二蓄電装置6とは、第一給電回路17のDC/DCコンバータ16と並列に設置されたバイパスリレー18を有する第二給電回路19により接続されている。また、エンジン始動用のスタータ20、パワーステアリング装置21およびABS・DSC装置22等からなる電気負荷容量が比較的大きい第二電気負荷物23と、上記第二蓄電装置6とが、上記第二給電回路19を介して接続されている。
【0018】
上記第二蓄電装置6には、その電力を放電させる抵抗回路を備えた放電手段25が接続されている。該放電手段25は、イグニッションスイッチがオフ操作されてエンジンが停止状態なった時点で、上記第二電圧検出手段10により第二蓄電装置6の電圧が予め設定された基準値(例えば16V程度)以上であることが検出されたときに上記制御ユニット7から出力される制御信号に応じて第二蓄電装置6に蓄えられた電力を、車体を介してアースすることにより放電させるように構成されている。
【0019】
また、上記第一給電回路17と第二給電回路19とは、DC/DCコンバータ16およびバイパスリレー18の下流部において、接続リレー26を有する接続ライン27により互いに接続されている。そして、上記制御ユニット7には、ブレーキスイッチ、アクセルスイッチおよび車輪速センサ等からなる運転状態検出手段28の検出信号に応じてエンジンを自動停止させるとともに該エンジンを再始動させる制御を実行する自動停止制御手段29と、上記バイパスリレー18および接続リレー26のオンオフ制御を実行する等により、上記第一給電回路17、第二給電回路19および接続ライン27を流れる電力を制御し、かつ上記発電機4および放電手段25を必要に応じて作動させるように制御する通電制御手段30とが設けられている。
【0020】
自動停止制御手段29は、上記運転状態検出手段28の検出信号に応じてエンジンの自動停止条件が成立したことが検出された時点、例えば交差点等において車両を一時的に停止させる状態となったと判定された時点で、燃料噴射を停止してエンジンを自動的に停止させるとともに、その後に車両の発進操作が行われる等によりエンジンの再始動条件が成立した時点で、上記スタータ20を作動させてエンジンを自動的に再始動させる制御を実行するように構成されている。
【0021】
通常の運転時には、図3に示すように、上記第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態とするとともに、上記接続ライン27の接続リレー26をオン状態とする制御が、上記通電制御手段30において実行される。この状態で車両の減速時または下り坂の走行時に、上記発電機4により25V程度の電圧で発電が行われ、該発電電流が第二蓄電装置6に供給されて充電される。該第二蓄電装置6に充電された電力は、上記DC/DCコンバータ16を介して14V程度に降下された状態で、上記第二給電回路19を通ってナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給されるとともに、上記接続ライン27を通って第一蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給されることにより有効に利用される。
【0022】
そして、エンジンの作動状態で、上記第二蓄電装置6の電力が消費される等により、その電圧が例えば14V未満に低下した場合には、上記通電制御手段30から出力される制御信号に応じ、図4に示すように、第二給電回路19のバイパスリレー18をオン状態とするとともに、接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とする制御が実行される。この状態で、車両のエンジンにより上記発電機4を駆動して12V〜14V程度の電圧で発電を行うことにより、この発電電流を上記第二蓄電装置6に供給して充電する。また、上記発電機4の発電電流が第一給電回路17を通ってナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給されるとともに、上記発電電流が第二給電回路19を通って上記パワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23および第一蓄電装置3に供給され、必要に応じて該第一蓄電装置3に対する充電が行われる。
【0023】
また、上記自動停止制御手段29によりエンジンを自動停止させる制御が実行された後、上記スタータ20を作動させてエンジンを再始動させる際には、図5に示すように、第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態としつつ、接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とする制御が上記通電制御手段30により実行される。これより、上記接続ライン27を介した第二蓄電装置6から第二電気負荷物23等への電力の供給が停止され、該第二電気負荷物23には、第一蓄電装置3から電力が供給されることになる。
【0024】
さらに、後述するようにエンジンの自動停止状態で第二蓄電装置6の電力が消費されることにより、その残留電力がエンジンの再始動時に必要とされる消費電力よりも小さくなる虞が生じた場合には、上記バイパスリレー18をオフ状態とするとともに、接続リレー26をオン状態としつつ、上記DC/DCコンバータ16の出力を停止する制御が実行される。この状態では、図6に示すように、第一蓄電装置3からの電力がパワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23に供給されるとともに、上記接続ライン27を通ってナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に上記第一蓄電装置3からの電力が供給される。これにより、上記第二蓄電装置6の電力消費が抑制され、エンジンを自動停止させた後に再始動させる際に、該第二蓄電装置6の電力不足に起因して上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15が作動不可となること等が防止されることになる。
【0025】
次に、上記自動停止制御手段29によりエンジンの自動停止条件が成立したと判定された場合に、上記通電制御手段30において実行される通電制御動作を図7に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、第二給電回路19のバイパスリレー18がオン状態にあるか否かを判定する(ステップS1)。該ステップS1でNOと判定され、図3に示すように上記バイパスリレー18がオフとなった通常の状態にあることが確認された場合には、第一電気負荷物15の消費電流と第二電気負荷物23の消費電流との合計値GAが、20A程度に設定された上記DC/DCコンバータ16の定格出力電流よりも大きくなる傾向があるか否かを判定する(ステップS2)。
【0026】
上記ステップS2でYESと判定され、第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の多くが作動状態となってその消費電流の合計値GAが上記定格電流値(20A程度)よりも大きくなる可能性あることが確認された場合には、上記自動停止制御手段29に自動停止不許可信号を出力した後(ステップS3)、上記発電機4を作動状態として該発電機4の発電電流を第一蓄電装置3、第二電気負荷物23および第一電気負荷物15にそれぞれ供給する(ステップS4)。
【0027】
すなわち、図4に示すように、第二給電回路19のバイパスリレー18をオン状態とするとともに、接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とし、かつ車両のエンジンにより上記発電機4を駆動して12V〜14V程度の電圧で発電を行うことにより、この発電電流を、第二給電回路19を介して上記第一蓄電装置3およびパワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23に供給するとともに、上記第一給電回路17を介してナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に上記発電電流を供給する。
【0028】
上記のように第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の消費電流が多い場合に、発電機4の発電電流を、第二給電回路19を介して上記第一蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給する制御を実行し、第二蓄電装置6の電力消費を抑制することにより、エンジンの自動停止状態で第二蓄電装置6から上記DC/DCコンバータ16を介して各電気負荷物15,23に充分な電流を供給することができなくなって該電気負荷物15,23が作動停止状態となり、あるいは上記第一蓄電装置3から各電気負荷物15,23に多量の電流が供給されてエンジンの再始動に必要な第一蓄電装置3の電力が不足すること等を防止することができる。
【0029】
一方、上記ステップS2でNOと判定され、第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の消費電流の合計値GAが上記定格電流値(20A)以下であることが確認された場合には、上記第二電圧検出手段10により検出された第二蓄電装置6の残留電力ZAがエンジンを自動停止させた後に再始動させる際に必要とされる消費電力よりも大きいか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5でNOと判定され、エンジンの再始動時に第二蓄電装置6の残留電力ZAが少ないために上記消費電力を賄うことができない可能性があることが確認された場合には、上記自動停止制御手段29に自動停止不許可信号を出力し(ステップS6)、かつ上記発電機4を作動状態として該発電機4の発電電流を上記第二電気負荷物23および第一電気負荷物15に供給しつつ、第二蓄電装置6に対する充電を行う(ステップS7)。
【0030】
すなわち、図3に示すように、上記第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態とするとともに、上記接続ライン27の接続リレー26をオン状態とした通常状態において、上記発電機4を駆動することにより、その発電電流を第二蓄電装置6に供給して充電しつつ、上記第二給電回路19のDC/DCコンバータ16を介してナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給するとともに、上記接続ライン27を介して第一蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給する。
【0031】
上記ステップS5でYESと判定されて第二蓄電装置6の残留電力ZAがエンジンを自動停止させた後に再始動させる際に必要とされる消費電力よりも大きいことが確認された場合には、上記自動停止制御手段29に自動停止許可信号を出力することによりエンジンの自動停止状態とする制御を実行する(ステップS8)。その後、例えば上記第二蓄電装置6の電力が消費される等により、その残留電力ZAがエンジンを自動停止させた後に再始動させる際に必要とされる消費電力よりも小さくなる虞があるか否かを判定し(ステップS9)、YESと判定された場合には、上記第一給電回路17のDC/DCコンバータ16を出力停止状態とする制御信号を出力した後(ステップS10)、リターンする。
【0032】
なお、上記DC/DCコンバータ16の出力が停止されると、図6に示すように、第一蓄電装置3からの電力がパワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23に供給されるとともに、上記接続ライン27を通ってナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15にも上記第一蓄電装置3から電力が供給される。これにより、エンジンを自動停止させた後に再始動させる際に、上記第二蓄電装置6の電力不足が生じるのを効果的に抑制することができ、上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15が作動不可となるのを防止できるという利点がある。
【0033】
また、上記ステップS1でYESと判定されてバイパスリレー18がオン状態となっていること、例えば後述するようにエンジンの再始動後において、図4に示すように上記バイパスリレー18がオン状態となり、発電機4の発電電流が、第二給電回路19を通って上記第一蓄電装置3およびパワーステアリング装置21等からなる第二電気負荷物23に供給されて、該第一蓄電装置3に対する充電が行われるとともに、上記接続ライン27を通って上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15にも上記発電機4の発電電流が供給されている状態にあることが確認された場合には、上記バイパスリレー18をオフ状態とする条件が成立しているか否かを判定する(ステップS11)。
【0034】
上記ステップS11でNOと判定されてバイパスリレー18をオフ状態とする条件が成立していないことが確認された場合には、上記ステップS3に移行して自動停止制御手段29に自動停止不許可信号を出力した後、ステップS4において、発電機4の発電電流を第一蓄電装置3、第二電気負荷物23および第一電気負荷物15に供給する。
【0035】
一方、上記ステップS11でYESと判定され、第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の消費電流の合計値GAがDC/DCコンバータ16の定格出力電流(例えば20A)よりも小さくなる等により、発電機4から第一電気負荷物15および第二電気負荷物23等へ給電する必要がなくなったことが確認された場合には、上記バイパスリレー18をオフ状態とする制御信号を出力する(ステップS12)。
【0036】
次いで、上記第二蓄電装置6の残留電力ZAがエンジンを自動停止させた後に再始動させる際に必要とされる消費電力よりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。このステップS13でNOと判定され、第二蓄電装置6の残留電力ZAが少ないために上記消費電力を賄うことができない状態にあることが確認された場合には、発電機4の発電電流により第二蓄電装置6の充電を行う(ステップS14)。
【0037】
すなわち、図3に示すように、上記接続ライン27の接続リレー26をオンとするとともに、上記第二給電回路19のバイパスリレー18をオフした状態で、上記発電機4を駆動することにより、その発電電流を上記第一給電回路17のDC/DCコンバータ16を介してナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給するとともに、上記接続ライン27を介して第一蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給しつつ、第二蓄電装置6に対する充電を行う。
【0038】
そして、上記ステップS13に戻って第二蓄電装置6の残留電力ZAが上記必要消費電力よりも大きくなったか否かを再び判定し、YESと判定された時点で、上記ステップS8に移行して自動停止制御手段29に自動停止許可信号を出力し、エンジンを自動停止状態とする制御を実行する。
【0039】
次に、上記エンジンの自動停止状態で自動停止制御手段29により再始動条件が成立したと判定された場合に、上記通電制御手段30において実行される通電制御動作を、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。上記制御動作がスタートすると、第一給電回路17のDC/DCコンバータ16が出力停止状態(図6参照)にあるか否かを判定し(ステップS21)、NOと判定された場合には、下記ステップS23に移行する。
【0040】
上記ステップS21でYESと判定された場合には、DC/DCコンバータ16の出力を開始する指令信号を出力した後(ステップS22)、上記接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とする制御信号を出力し(ステップS23)、図5に示すように、第二給電回路19のバイパスリレー18および接続ライン27の接続リレー26がそれぞれオフ状態とする。このようにして上記第二蓄電装置6から第二電気負荷物23等への電力の供給を停止するとともに、該第二電気負荷物23に第一蓄電装置3の電力を供給する状態に移行することにより、エンジンの再始動時に上記第二蓄電装置6の電力不足が生じることがなく、各電気負荷物15,23を適正に作動させることができる。
【0041】
次いで、エンジンの再始動が完了したか否かを判定し(ステップS24)、YESと判定された時点で、上記DC/DCコンバータ16の出力電圧を定格下限値である12V以上に維持できる状態にあるか否か判定し(ステップS25)、YESと判定された場合には、上記接続ライン27の接続リレー26をオン状態とする制御信号を出力することにより(ステップS26)、通常の運転状態に移行する。
【0042】
上記ステップS25でNOと判定され、DC/DCコンバータ16の出力電圧が定格下限電圧未満に低下する可能性があることが確認された場合には、第二給電回路19のバイパスリレー18をオン状態とする制御信号を出力した後(ステップS27)、上記発電機4を駆動して12V〜14V程度の電圧で発電を行うことにより(ステップS28)、図4に示すように、発電機4の発電電流を、第二給電回路19により上記第一蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給するとともに、第一給電回路17を介して第一電気負荷物15に供給する。なお、上記接続ライン27の接続リレー26をON状態とし、発電機4の発電電流を、第二給電回路19のバイパスリレー18から接続ライン27を介してナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給するようにしてもよい。
【0043】
次いで、上記発電機4の発電電流に代替して、DC/DCコンバータ16から必要電力を供給できる状態にあるか否か、つまり上記第一電気負荷物15および第二電気負荷物23の消費電力をDC/DCコンバータ16の供給電力で賄うことができる状態になったか否かを判定し(ステップS29)、NOと判定された場合には、ステップS28に戻って上記制御動作を繰り返し、上記ステップS29でYESと判定された時点で、上記ステップS26に移行して第二給電回路19のバイパスリレー18をオフ状態とすることにより、図3に示す通常の運転状態に移行する。
【0044】
上記のようにエンジン始動用のスタータ20に電力を供給する第一蓄電装置3と、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機4と、該発電機4に接続されてその発電電力を蓄える第二蓄電装置6とを備えた車両の電源制御装置において、上記第二蓄電装置6とオーディオ類やメータ類等からなる電気軽負容量の小さい電気負荷物15とをDC/DCコンバータ16を介して接続する第一給電回路17と、上記第二蓄電装置6と第一蓄電装置3とを接続リレー26を介して接続する接続ライン27と、上記第一給電回路17および接続ライン27を流れる電力を制御する通電制御手段30とを設け、この通電制御手段30により、上記スタータ20の作動時に接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とするように構成したため、簡単な構成で車両に設けられた種々の電気負荷に対して適正に電力を供給できるという利点がある。
【0045】
すなわち、上記のように鉛蓄電池等からなる通常の第一蓄電装置3以外に、急速な充放電が可能なキャパシタ等からなる第二蓄電装置6を設け、車両の減速時または下り坂の走行時には、上記発電機4により25V程度の電圧で発電を行い、該発電電流を第二蓄電装置6に供給して充電し、該第二蓄電装置6に充電された電力を、上記DC/DCコンバータ16を介して14V程度に降下させた状態で、上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給するとともに、第一蓄電装置3および第二電気負荷物23に供給するように構成したため、車両の減速時等における回生エネルギーを有効に利用して車両の燃費を効果的に向上することができる。
【0046】
そして、上記実施形態では、エンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させるとともに、その後にエンジンの再始動条件が成立したときに上記スタータ20を作動させてエンジンを自動的に再始動させる自動停止制御手段29を備えた車両において、上記スタータ20を作動させて自動停止状態にあるエンジンを再始動させる際に、図5に示すように、上記接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とすることにより、上記第二蓄電装置6から第一蓄電装置3およびスタータ20等からなる第二電気負荷物23への電力の供給を停止し、該第二電気負荷物23に第一蓄電装置3からの電力を供給するように構成したため、エンジンの再始動時に上記第二蓄電装置6の電力不足に起因して、第二蓄電装置6から上記DC/DCコンバータ16を介して各電気負荷物15,23に充分な電流を供給することができなるという事態の発生を効果的に防止し、該電気負荷物15,23が意に反して作動停止状態となるのを効果的に防ぐことができる。
【0047】
なお、上記自動停止制御手段29により自動停止状態とされたエンジンを再始動させる際に、上記接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とするように構成した上記実施形態に代え、あるいはこの構成とともに、イグニッションスイッチの操作に応じてエンジンを停止させた後、該イグニッションキースイッチを操作してスタータ20を作動させることによりエンジンを始動させる際に、通電制御手段30により、上記スタータ20の作動時に接続ライン27の接続リレー26をオフ状態とするように構成してもよい。この場合においても、エンジンの始動時に上記第二蓄電装置6の電力不足に起因して、第二蓄電装置6から上記DC/DCコンバータ16を介して各電気負荷物15,23に充分な電流を供給することができるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0048】
また、上記実施形態では、エンジンの自動停止制御手段29と、第二蓄電装置6の電圧(残留電力ZA)を検出する電圧検出手段10とを備えた車両において、該電圧検出手段10により検出された上記第二蓄電装置6の電圧が所定値以下、つまり上記残留電力ZAが、エンジンを自動停止させた後に再始動させる際に必要とされる消費電力よりも小さいと判定された場合に、上記自動停止制御手段による自動停止制御の実行を禁止するように構成したため、エンジンを再始動させる際に第二蓄電装置6の残留電力が少ないことに起因して上記消費電力を賄うことができない状態にあるにも拘わらず、エンジンの自動停止制御が実行されることによる弊害、例えばエンジンの再始動時に、各電気負荷物15,23に充分な電流を供給することができず、該電気負荷物15,23が作動停止状態となるという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態に示すように、鉛蓄電池等からなる第一蓄電装置3よりも急速な充放電が可能なキャパシタにより第二蓄電装置6を形成した場合には、上記発電機4の発電電流を第二蓄電装置6に供給して迅速に充電することができるとともに、該第二蓄電装置6に充電された電力を、上記DC/DCコンバータ16を介して14V程度に降下させた状態で、上記ナビゲーション装置11等からなる第一電気負荷物15に供給することにより電力の有効利用を図ることができる。
【0050】
なお、複数の電気二重層キャパシタからなる第二蓄電装置6を設けてなる上記実施形態に代え、リチイムイオンキャパシタ等のハイブリッドキャパシタや、高出力リチイムイオン電池を用いることも可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、イグニッションスイッチ検出手段24の出力信号に応じてイグニッションスイッチのオフ操作が行われたことが確認された時点で、第二電圧検出手段10により検出された第二蓄電装置6の電圧が予め設定された基準値(16V)以上であることが確認された場合に、上記放電手段25による放電制御を実行するように構成したため、鉛蓄電池等に比べて充電電圧の上限値を極めて高い値に設定可能であって、蓄電電圧が高い値に維持された状態で放置されることに起因して早期に劣化し易い傾向があるキャパシタ等からなる上記第二蓄電装置6の早期劣化を効果的に防止できるという利点がある。
【符号の説明】
【0052】
3 第一蓄電装置
4 発電機
6 第二蓄電装置
9 第一電圧検出手段
10 第二電圧検出手段
15 第一電気負荷物
23 第二電気負荷物
20 スタータ
26 接続リレー
27 接続ライン
29 自動停止制御手段
30 通電制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン始動用のスタータに電力を供給する第一蓄電装置と、車両の減速時等に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する発電機と、該発電機に接続されてその発電電力を蓄える第二蓄電装置とを備えた車両の電源制御装置であって、上記第二蓄電装置とオーディオ類やメータ類等からなる電気軽負容量の小さい電気負荷物とをDC/DCコンバータを介して接続する給電回路と、上記第二蓄電装置と第一蓄電装置および電気負荷物とを接続リレーを介して接続する接続ラインと、上記給電回路および接続ラインを流れる電力を制御する通電制御手段とを備え、この通電制御手段は、上記スタータの作動時に接続ラインの接続リレーをオフ状態とする制御を実行することを特徴とする車両の電源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の電源制御装置において、エンジンの自動停止条件が成立したときにエンジンを自動的に停止させるエンジン自動停止制御を行うとともに、その後エンジンの再始動条件が成立したときに上記スタータを作動させてエンジンを自動的に再始動させる自動停止制御手段と、上記第二蓄電装置の電圧を検出する電圧検出手段を備え、この電圧検出手段により検出された上記第二蓄電装置の電圧が所定値以下である場合に、上記自動停止制御手段による自動停止制御の実行を禁止するように構成されたことを特徴とする車両の電源制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の電源制御装置において、上記第二蓄電装置は、第一蓄電装置よりも急速な充放電が可能なキャパシタにより形成されたことを特徴とする車両の電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240487(P2012−240487A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110436(P2011−110436)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)