説明

車両センタリング装置

【課題】被試験車両のセンタリング装置においては、前後方向のセンタリングは比較的容易であるが、左右、斜め方向のセンタリングについては時間を要している。
【解決手段】タイヤの前後に設けられた各シリンダ機構の可動ロッドの先端部に回動自在にセンタリングローラを取付け、被試験車両左右の各センタリングローラは車両のトレッド方向に対して外側を高くし配設するか、又はセンタリングローラを円錐状に形成し、径の大きい方を車両のトレッド方向に対して外側に向けて配設したことにより、容易にセンタリングを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーダイナモメータにおける車両センタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両試験時に、その駆動輪をローラ上に載置するためのシャシーダイナモメータのセンタリング装置としては、特許文献1や特許文献2が公知となっている。特許文献1は、ドラム頂上のほぼ中心位置に常に駆動輪を置くことを目的として、ドラムの頂上部側における径方向の両側にエアシリンダを設置し、そのシリンダロッドを駆動することによって車両の駆動車輪位置を調整するようにしたものである。
【0003】
また、特許文献2は、左右方向に引き抜き可能に一対のスライド部材をピットカバー上に設け、このスライド部材上に被試験車両の車輪を係止することによりセンタリング作業を行うようにしたものである。
【特許文献1】特許第2797095号公報
【特許文献2】特開平10−123020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものは、ローラ上に載置された駆動輪の位置が中心部からずれていた場合、タイヤの前後に設置したロッドをスライドさせることにより中心位置に変位させ、これにより被試験車両の前後方向のセンタリングを行うことを可能となっている。しかし、これら特許文献1及び2のものは、前後方向の位置決めを行うことは可能であるが、左右方向の位置決めを行うことはできない。
【0005】
また、コールドスタート試験の場合、試験終了の都度、1台毎に試験装置の冷却が必要となるため、冷却時間を含めた段取り時間が長くなってセッティング時間の短縮が要望されている。
【0006】
本発明が目的とするところは、短時間にて左右斜め方向のセンタリングを可能とする車両センタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シャシーダイナモメータのローラ頂上部位に被試験車両のタイヤ部分を載置する試験装置であって、被試験車両の左右タイヤ及びタイヤ前後から上下動するシリンダ機構の可動ロッドを配設し、各可動ロッドを介してタイヤ部分を押し上げて車両位置を調節するものにおいて、
前記タイヤの前後に設けられた各シリンダ機構の可動ロッドの先端部に回動自在にセンタリングローラを取付け、被試験車両左右の各センタリングローラは車両のトレッド方向に対して外側を高くし配設したことを特徴としたものである。
【0008】
また、本発明は、前記センタリングローラをテーパーを有した円錐状に形成し、径の大きい方を車両のトレッド方向に対して外側に向けて配設したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によれば、可動ロッドの先端にセンタリングローラを回動自在に取付け、被試験車両左右の各センタリングローラを車両のトレッド方向に対して外側を高くしたことにより、ダイナモメータを暖機運転するだけで容易にセンタリングが可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施例を示すセンタリング装置の部分側面図である。1はシャシーダイナモメータのローラで、ピット内に回転自在に設置されている。2はピットカバーで、図面の左右方向に可動可能な可動床となっていて、試験時にはローラ1の頂面に開口部3を形成してその位置に被試験車両のタイヤ4が載置される。5(5a,5b)はピット内に設けられたシリンダ機構で、タイヤ1個に対して前後左右にそれぞれ配置され、2個がセットなった各シリンダ機構5の可動ロッドの先端にはそれぞれセンタリングローラ6(6a,6b)が回動自在に取付けられている。各シリンダ機構5は、それぞれサーボ機構もしくは位置制御装置により可動ロッドを開口部3(タイヤ4)側に向かってそれぞれ伸縮、又は固定(停止)可能となるよう構成されている。
【0011】
図2は、シャシーダイナモメータのローラ1の前側(又は後側)におけるセンタリングローラ6の取付け状態図で、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図を示したものである。センタリングローラ6はシャシーダイナモメータのローラ1に対しては、図2(b)で示すように同軸配置ではなく、水平方向に傾斜を持っている。その傾斜方向は、車両のトレード方向の外側が高い位置となっている。すなわち、左右のセンタリングローラ6a,6bの取付け状態は左右対称で、何れもトレード方向に対して外側が高い状態に配置されている。
【0012】
上記のように構成された本発明のセンタリング装置についてその動作を説明する。
【0013】
試験に先立って被試験車両を搬入してシャシーダイナモメータのローラ1上に載置する。その後、各シリンダ機構5を制御することにより可動ロッドを介してセンタリングローラ6a,6bを上方に押し上げ、タイヤ4と接した位置でシリンダ機構5の制御を停止する。この状態で被試験車両の前後方向に対するセンタリングを実行しワイヤー等により固定する。
【0014】
次に、ダイナモメータを暖機運転してローラ1を回転させながらシリンダ機構5を駆動し、可動ロッドを同期制御しながら徐々に上昇させてセンタリングローラ6とタイヤ4との接触圧を高める。これにより、車両の左右側に配置されたセンタリングローラ6はそれぞれ外側が高い状態で傾斜を有して配置されているため、車両は左右、斜め方向にセンタリングされてトレード方向の中心に位置決めされる。
【0015】
図3は第2の実施例を示した部分図で、シャシーダイナモメータの前側(又は後側)におけるセンタリングローラの取付け状態図を示したものである。この実施例で第1の実施例と異なる部分は次の点のみである。すなわち、この実施例は、センタリングローラ10a,10bはテーパを有した円錐状に形成されて径の大きい方をトレード方向の外側に向けて配置され、ダイナモメータのローラ1とは同軸にしてシリンダ機構5の可動ロッドに取付けられている。
【0016】
したがって、この実施例の場合も、従来と同様にして車両の前後方向のセンタリング後に、ダイナモメータを暖機運転してローラ1を回転させながらシリンダ機構5を駆動し、可動ロッドを同期制御しながら徐々に上昇させてセンタリングローラ6とタイヤ4との接触圧を高めことにより、車両の左右側に配置されたセンタリングローラ6はそれぞれ外側が高い状態で傾斜を有して配置されているため、車両は左右、斜め方向にセンタリングされてトレード方向の中心に位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示す部分図。
【図2】本発明のセンタリングローラの取付け状態図で、(a)は平面図、図2(b)は正面図。
【図3】本発明の他の実施形態を示す部分平面図。
【符号の説明】
【0018】
1… ローラ
2… ピットカバー
3… 開口部
4… タイヤ
5… シリンダ機構
6、10… センタリングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシーダイナモメータのローラ頂上部位に被試験車両のタイヤ部分を載置する試験装置であって、被試験車両の左右タイヤ及びタイヤ前後から上下動するシリンダ機構の可動ロッドを配設し、各可動ロッドを介してタイヤ部分を押し上げて車両位置を調節するものにおいて、
前記タイヤの前後に設けられた各シリンダ機構の可動ロッドの先端部に回動自在にセンタリングローラを取付け、被試験車両左右の各センタリングローラは車両のトレッド方向に対して外側を高くし配設したことを特徴とした車両センタリング装置。
【請求項2】
前記センタリングローラをテーパーを有した円錐状に形成し、径の大きい方を車両のトレッド方向に対して外側に向けて配設したことを特徴とした車両センタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−197023(P2008−197023A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34260(P2007−34260)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)