車両データの解析方法及び車両データの解析システム
【課題】ドライバの運転操作の推移を示す車両データの特徴を定量的に解析できる車両データの解析方法、及び車両データの解析システムを提供する。
【解決手段】複数種の運転操作に基づく複数の車両データを車両100等から収集する。この収集した車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき、相反する運転レベルのグループである、運転レベル「高」と運転レベル「低」とのグループにグループ分けする。このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出するとともに、抽出した特徴量が評価項目に基づき評価される車両データに及ぼす影響度を順位付けて求める。
【解決手段】複数種の運転操作に基づく複数の車両データを車両100等から収集する。この収集した車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき、相反する運転レベルのグループである、運転レベル「高」と運転レベル「低」とのグループにグループ分けする。このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出するとともに、抽出した特徴量が評価項目に基づき評価される車両データに及ぼす影響度を順位付けて求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から取得された車両データの解析に適用して有益な車両データの解析方法及び該解析方法を用いた車両データ解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の運転を支援する運転支援システムでは、交差点や一時停止位置、カーブ、前方車両の接近、等々といった車両の減速が必要となる交通情報を車載カメラやナビゲーションシステム等により取得している。そして、この取得された車両周辺の交通情報に基づき、例えば音声による減速案内等として、ドライバに対する運転支援が行われる。
【0003】
また、このような運転支援に際しては、通常、ある走行パターンを、模擬コース等の所定の走行モデルのもとで測定された一般のドライバの交通情報の認知、判断、運転操作といった各種運転行動で平均化した標準走行パターンが用いられることが多い。例えば、特許文献1に記載のシステムでは、まずは、交差点やカーブへの進入速度、並びに交差点やカーブの曲率半径等の道路の形状に関する情報(走行モデル)に基づき、例えば、アクセルペダルやブレーキペダル等の操作機器の模範的な操作量の時系列的な推移を示す模範操作データを生成する。そして、この生成した模範操作データを運転模範モデル(標準走行パターン)としてデータベースに登録し、このデータベースに登録した模範操作データと、運転支援の対象とする車両のドライバによる各種操作機器の操作量の推移とをドライバに同時に提示することによって、ドライバの運転操作を評価するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−294250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、交差点や一時停止位置等に向かう車両の走行パターンは、道路のカーブの曲率をはじめ、道路の幅や傾斜等の多種多様な要素が存在する道路環境、並びにドライバ固有の癖や運転技量等に応じて変化することが普通であり、こうして変化するドライバの走行パターンに上記一般化された標準走行パターンを適合させることは難しい。すなわち、実際の道路環境やドライバ固有の癖、運転技量等を踏まえた運転模範モデルを作成しようとしても、そのモデルの作成には膨大な工数が必要とされることとなり、現実的ではない。
【0006】
一方、最近は、ドライバによる運転操作の推移を示す車両データを解析して、複数のドライバの運転操作のもとに取得された車両データ群を、ドライバの運転技量、すなわち運転レベルの別に層別することも検討されている。しかし、このようにして車両データ群を運転レベル毎に層別したところで、どのような運転操作が要因となって各ドライバの運転レベルに相違が生じるのかを特定することは難しく、運転レベルが相違する要因、換言すれば、運転レベルの向上を支援すべき運転要素を特定するには至っていない。すなわち、ドライバの運転操作に基づき取得された車両データの特徴を定量的に把握できるレベルには至っていない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドライバの運転操作の推移を示す車両データの特徴を定量的に解析することのできる車両データの解析方法、及び該解析方法を用いた車両データの解析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析方法において、前記車両データとして複数種の運転操作に基づく複数の車両データを収集するとともに、この収集した車両データを運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けし、このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することを要旨とする。
【0009】
請求項11に記載の発明は、ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析システムにおいて、前記車両データとして複数種の運転操作に基づく車両データが記憶される記憶装置と、前記記憶装置に記憶された車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けする車両データ分類部と、前記車両データ分類部によりグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出する車両データ解析部と、を備えることを要旨とする。
【0010】
ドライバの運転操作を示す車両データとは、アクセル、ブレーキ、ステアリング等の様々な運転要素の操作態様を示すものであり、こうした運転要素の操作態様によって燃費や走行時における車両の挙動等も大きく変化する。また、例えば、単位時間当たりの燃料消費量である燃費が低い、すなわち低燃費(省燃費)なために運転レベルが高いとされる車両データ群には、所定のタイミングでのアクセルオフ等のように共通する特徴量が含まれていることが多い。一方、高燃費なために運転レベルが低いとされる車両データ群には、相対的に遅いタイミングでのアクセルオフや過剰なアクセルペダルの踏み込み等といった特徴量が含まれていることが多い。そして、このように運転レベルが相違する車両データ群に含まれる特徴量が相違するときには、この相違する特徴量によって示される運転操作が、車両データの運転レベルを異ならしめる要因となることが多い。すなわち、この相違する特徴量、換言すれば、同特徴量が示す或る運転操作が行われているが故に、運転結果となる燃費や車両の走行時における挙動等に相違が発生する傾向にある。
【0011】
そこでまず、上記方法あるいは構成によるように、例えばアクセル開度やステアリングの操舵角度等の運転要素の推移を示す車両データを車両から収集する。また、この収集した車両データをドライバの運転技量を識別可能な評価基準に基づいてグループ分けすることにより、複数種の運転操作のもとで取得された車両データ群を運転レベルの別に分類する。そして、この運転レベルの別に分類したグループ間で相違する特徴量を抽出することにより、分類された車両データ間で運転レベルを異ならしめる要因となる特徴量を抽出する。これにより、複数種の運転操作に基づき取得された車両データ群の中から、車両データ間で運転レベルに相違が発生する要因を定量的に示す情報を抽出することが可能となる。すなわち、車両データに含まれる運転操作の特徴を定量的に解析することができるようになる。
【0012】
また、上記収集された車両データは、複数種のドライバの運転操作のもとに実際の道路上を走行した車両から取得されたものであるから、同車両データを用いることにより、実際の走行環境や同走行環境のもとで行われた運転操作が反映された走行モデルを生成することも可能である。そしてこの場合には、上記抽出された車両データの特徴量を加味して模範となる走行モデルを生成することより、運転レベルを決定する特徴量を盛り込んだ走行モデルを生成することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両データの解析方法において、前記抽出した車両データの特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることを要旨とする。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ解析部はさらに、前記抽出した特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める影響度算出部を備えることを要旨とする。
【0015】
車両データに含まれる特徴量には、評価基準に基づく車両データの評価結果に及ぼす影響が大きい特徴量や同評価結果に及ぼす影響が小さい特徴量が存在する。そして、評価結果に対する影響が大きい特徴量ほど、車両データ群の運転レベルを異ならしめる主な要因となる。
【0016】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、上記抽出した車両データの特徴量が評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響を求める。これにより、各々グループ分けされた車両データの間で相違する特徴量のみならず、この特徴量が、評価基準にて評価される車両データ、換言すれば、同評価基準に基づく評価に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両データの解析方法において、前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、それら交通要素もしくは走行区間もしくは走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分けと前記車両データの特徴量の抽出とを行うことを要旨とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項11または12に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、前記車両データ分類部及び前記車両データ解析部は、前記交通要素もしくは前記走行区間もしくは前記走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分け及び前記車両データの特徴量の抽出を行うことを要旨とする。
【0019】
ドライバによる運転操作とは、例えば、信号交差点やカーブ等の交通要素、交差点やカーブ等の交通要素により区画される所定の走行区間、こうした交通要素や走行区間を包含する走行エリア等といったように、車両周辺の走行環境が大きく反映されるものである。そして、こうした走行環境のもとで行われる運転操作の特徴も、車両の走行環境毎に相違するのが普通である。また、例えば、カーブの走行時における車両挙動の少ないために同カーブでの運転技量が高いものの、交差点等の減速・停止位置の走行時における燃費が高いために同減速・停止位置での運転技量が低いドライバ等、ドライバの運転技量も走行環境毎に相違する傾向にある。このため、たとえ或るドライバの運転操作に基づき取得された1つの車両データであっても、評価基準に基づく評価結果も車両の走行環境毎に相違することが多い。
【0020】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、走行環境としての交通要素もしくは走行区間もしくは走行エリアを単位として車両データのグループ分けと車両データの特徴量の抽出とを行うこととすれば、交通要素、走行区間、及び走行エリアのもとで行われる一連の運転操作が反映される車両データの特徴量を、車両データ群から的確に抽出することが可能となる。これにより、交通要素、走行区間、及び走行エリアを単位として、運転レベルが相違する要因を特定することが可能となる。またこれにより、上記収集された車両データの中から、より多くの特徴量を抽出することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準の各々の対応関係をさらに求めることを要旨とする。
【0022】
請求項14に記載の発明は、請求項11〜13のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、前記車両データ解析部は、前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準の各々の対応関係をさらに求めることを要旨とする。
【0023】
例えば、カーブに進入した車両が同カーブを通過するまでには、その道路形状等に応じて、同カーブを構成する各走行地点で様々な運転操作が行われる。よって、共通する1つのカーブもしくは曲率半径等が類似するカーブ等での運転操作を示す車両データであっても、各走行地点での運転操作が反映される車両データには、各走行地点に対応する各別の特徴量が含まれることとなる。また、これに伴い、たとえ同一のドライバの運転操作に基づき取得された車両データであっても、各走行地点での車両データの評価結果は、例えばカーブの進入開始位置からカーブの中間地点までは低燃費(省燃費)なもののカーブの中間地点からカーブの終了地点までは高燃費になるなど、走行地点毎に相違することもある。
【0024】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、車両データの特徴量、走行地点、及び評価基準の各々の対応関係を求めることとすれば、走行地点に応じて現れる特徴量や同特徴量が評価基準に及ぼす影響を、走行地点毎に求めることが可能となる。これにより、車両データをより詳細に解析することが可能となり、評価基準に基づく運転レベルが相違する要因や同要因が評価基準に及ぼす影響を、走行地点レベルにまで解析することが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化することを要旨とする。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項11〜14のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ解析部はさらに、前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部を備えることを要旨とする。
【0027】
通常、車両データの取得源となる車両の走行速度とは、車両毎、ドライバ毎に相違する傾向にある。このため、例えば、共通もしくは類似する走行環境で取得されたドライバによる運転操作態様が時系列的に記録された車両データ、すなわち時系列データを比較したとしても、それらの取得源となる車両の走行速度等が大幅に相違するときには、時間軸をもとに各時系列データを比較しようとすると、異なる走行位置での運転操作が比較対象になりかねない。
【0028】
この点、上記方法あるいは構成によれば、時系列データを走行位置に基づき正規化することで、走行速度等が相違する車両から取得された時系列データについても、精度よく対比可能なレベルに変換することができる。これにより、より多くの車両データ(時系列データ)を解析対象とすることが可能となり、こうした車両データ間で相違する特徴量をより多く抽出することが可能となる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求めることを要旨とする。
【0030】
請求項16に記載の発明は、請求項11〜15のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、前記車両データ解析部は、前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求める処理をさらに実行することを要旨とする。
【0031】
通常、ドライバによる運転結果を示す燃費や車両挙動等は、例えば操舵角度やアクセルの踏込み量といった複数種の運転要素の操作態様により変化する。そして、各運転要素に対する操作態様の相違に起因して、車両データ間の運転レベルが相違する傾向にある。
【0032】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、上記特徴量によって示される運転要素が上記評価基準に及ぼす影響を運転要素の別に求めることとすれば、複数種の運転要素が影響して運転レベルに相違が生じるような場合であれ、各車両データの運転レベルを異ならしめる複数の要因を的確に特定することが可能となる。また、これにより、車両データに局所的に含まれる特徴量を的確に抽出することが可能になるとともに、各運転要素が評価基準に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0033】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを、前記車両データに対する周波数分解を通じて生成することを要旨とする。
【0034】
請求項17に記載の発明は、前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する周波数分解を通じて前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを生成する周波数分解部を備えることを要旨とする。
【0035】
車両データの特徴量は、様々な周波数成分として車両データに含まれていることが多く、各周波数成分に含まれる特徴量が影響して、各車両データの運転レベルが相違する傾向にある。
【0036】
そこで、上記方法あるいは構成によれば、車両データに対する周波数分解を通じて、車両データに含まれている様々な周波数成分を抽出することで、運転操作が反映された様々な特徴量を顕在化することが可能となる。このため、上記グループ化された車両データ間で相違する特徴量を抽出する上で、その候補となる特徴量を含んだ候補データを、限られた車両データの中から大量に生成することが可能となる。
【0037】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データの特徴量の抽出に先立ち、窓関数に基づく演算を通じて特徴量の顕在化を行うことを要旨とする。
【0038】
請求項18に記載の発明は、請求項11〜17のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する窓関数に基づく演算を通じて特徴量を顕在化する窓関数演算部を備えることを要旨とする。
【0039】
上記方法あるいは構成によるように、窓関数に基づく演算を通じて車両データの特徴量を顕在化することとすれば、車両データに含まれる微小な特徴量についても的確に抽出することが可能となる。
【0040】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記評価基準は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられたグループ分けのための基準であることを要旨とする。
【0041】
請求項19に記載の発明は、請求項11〜18のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ分類部は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられた評価基準に基づいて、前記車両データをグループ化することを要旨とする。
【0042】
一般に、低燃費を実現可能な運転操作や車両挙動の少ないスムーズな運転操作ほど、ドライバの運転技量が高いとして評価することが可能であり、それら燃費や車両挙動、並びに旅行時間や車両の横方向における躍度を評価項目として車両データを運転レベルの別にグループ分けすることが可能である。このため、上記方法あるいは構成によれば、上記各評価項目を指標として分類される車両データの特徴量を抽出することで、燃費、旅行時間、スムーズな運転操作(急制動の有無)、及び躍度等が、上記収集した車両データ間で相違する要因を特定することが可能となる。
【0043】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記評価基準に基づくグループ分けを通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、前記車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類されたデータのうちの共通する特徴量の差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行うことを要旨とする。
【0044】
請求項20に記載の発明は、請求項11〜19のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ分類部は、前記評価基準に基づくグループ化を通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、前記車両データ解析部は、前記相違する車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類された共通する差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量を重み付けする処理を実行することを要旨とする。
【0045】
上記車両データ群においては、例えば、運転レベル「高」に分類された或るタイミングでの操舵角度の操作量を示す車両データと、運転レベル「低」に分類されたデータのうち同操舵角度の操作量に対応する車両データとの間での差分が多くなる特徴量ほど、運転レベルが相違する主要因である蓋然性が高い。また、こうした運転レベル「高」及び「低」の車両データ間で差分が発生する割合の高い特徴量ほど、運転レベルが相違する主要因である蓋然性が高い。一方、或るタイミングでのアクセルペダルの踏込み量を示す車両データの特徴量が、運転レベル「高」及び「低」に各々分類されたデータにおいて相似するときには、同特徴量は各車両データ群において運転レベルを異ならしめる要因とはなり得ない。
【0046】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、上記特徴量の差分の合計値をもとに、運転レベルが相違する車両データの特徴量が重み付けすることとすれば、運転レベルが相違する要因を評価基準に対する影響度の順に特定することが可能となる。これにより、運転レベル「低」とされた車両データにて示される運転操作の改善要素を、改善すべき優先度の順に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムの一実施の形態について、同解析方法が適用される車両データの解析システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、時系列データとしての車両データ群の一例を示すグラフ。(b)は、走行位置に基づき正規化された車両データ群の一例を示すグラフ。
【図3】同実施の形態の車両データの解析方法による車両データの解析手順の一例を示すフローチャート。
【図4】車両データの取得源となる車両が走行した走行エリアの一例を、同走行エリアに含まれる交通要素及び走行区間とともに模式的に示す図。
【図5】(a)は、図4に示した走行エリアを走行した車両の操舵角度の推移を示す時系列データについて、運転レベル「高」とされた時系列データと、運転レベル「低」とされた時系列データとの一例を示すグラフ。(b)は、(a)に示した時系列データを、走行位置に基づいて正規化したデータの一例を示すグラフ。
【図6】(a)は、主に低周波成分に分解された車両データの一例を示すグラフ。(b)〜(e)は、(a)に示した車両データが周波数分解された候補データの一例を示すグラフ。
【図7】周波数分解された車両データに対する窓関数処理の一例を示すグラフ。
【図8】(a)は、車両データ群の解析結果の一例を示す図。(b)は、図4に対応する走行モデルを車両データ群の解析結果とともに示す図。
【図9】周波数分解部による周波数分解処理の一例を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムの他の実施の形態について、評価項目毎に解析された車両データ群の解析結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムを具体化した一実施の形態について図1〜図9を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態の車両データの解析方法が適用される車両データの解析システムは、車両100のドライバの運転操作が反映された車両データを収集する車両データ解析センター200を備えて構成されている。
【0049】
車両データの取得源となる車両100には、ドライバによる各種運転要素の操作態様を検出する手段として、アクセルセンサ101、ブレーキセンサ102、操舵角センサ103、ジャイロセンサ104、車速センサ105、及び加速度センサ106等が搭載されている。これら各種センサ101〜106等は、例えばCAN(Control Area Network)などの車載ネットワークを介して、同センサ101〜106等の検出結果が、車両100のドライバの運転操作が反映される車両データとして時系列的に記憶される車両データ記憶領域110に接続されている。
【0050】
アクセルセンサ101は、ドライバによるアクセルペダル操作によって変化するアクセル開度を検出し、この検出したアクセルの開度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。ブレーキセンサ102は、ドライバによるブレーキペダルの踏込み量を検出し、この検出した踏込み量に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。操舵角センサ103は、ドライバのステアリング操作により変化する操舵角度を検出し、この検出した操舵角度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。ジャイロセンサ104は、車両100の進行方向を検出し、この検出した進行方向に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。車速センサ105は、車両100の車輪の回転速度を検出し、この検出した回転速度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。加速度センサ106は、車両100の加速度を検出し、この検出した加速度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。
【0051】
また、車両100には、同車両100に搭載されたエンジンを制御するエンジンECU107、車両100の絶対位置を検出するGPS108、道路地図データを有するカーナビゲーションシステム109が搭載されている。
【0052】
エンジンECU107は、アクセルセンサ101の検出結果等に基づき燃料の噴射量を決定する燃料噴射信号を生成し、この生成した燃料噴射信号を図示しない燃料噴射装置に出力する。また、エンジンECU107は、この生成した燃料噴射信号を車両データ記憶領域110に出力する。
【0053】
GPS108は、車両の絶対位置を検出するためのGPS衛星信号を受信し、この受信したGPS衛星信号に基づき車両100の緯度経度を検出し、この検出した車両100の緯度経度を示す情報を、車両データ記憶領域110に出力する。
【0054】
カーナビゲーションシステム109は、出発地点から目標地点までの推奨経路等をドライバに案内するシステムであり、車両100の運転域に対応する道路地図データを有している。この道路地図データは、地図に関する情報であり、道路勾配、カーブ等の道路線形、交差点、踏切等の交通要素を示す情報や、交差点名称、道路名称、方面名称、方向ガイド施設情報などから構成される。また、こうした道路地図データには、緯度経度に関する情報、連続する道路が交差点や信号機等の交通要素、同交通要素により区画された走行区間、及び連続する交通要素や走行区間を含む走行エリアに関する情報、すなわち車両100の走行環境に関する情報が登録されている。そして、カーナビゲーションシステム109は、道路地図データの参照を通じて、車両100が通過した走行環境に関する情報を車両データ記憶領域110に適宜出力する。
【0055】
車両データ記憶領域110には、こうした各センサ101〜106等やGPS108の検出結果、エンジンECU107から入力される燃料噴射信号、及びカーナビゲーションシステム109から入力される走行環境に関する情報が、それぞれ時系列的に記録される。これにより、車両データ記憶領域110には、車両100のドライバの運転操作を示す情報、並びに、同運転操作のもとに車両100が走行した走行環境に関する情報が、それぞれ対応付けされて車両100の車両データとして適宜蓄積される。
【0056】
また、車両100には、車両データ解析センター200との無線通信が可能な車載通信機120が搭載されている。車載通信機120は、例えば、車両100の走行の終了に伴い同車両100のアクセサリーポジションがオン状態からオフ状態に切り替えられたとき、車両データ記憶領域110に蓄積されている車両データを車両データ解析センター200に送信する。
【0057】
車両データ解析センター200は、車両100をはじめとする複数台の車両から送信されてくる車両データを受信するセンター通信機210を備えている。センター通信機210は、車両100をはじめとする複数台の車両で取得された車両データを受信し、この受信した車両データを記憶装置220に出力する。
【0058】
記憶装置220には、センター通信機210と各種車両に搭載された車載通信機との無線通信を通じて、複数台の車両で取得された複数種の運転操作に基づく車両データが蓄積される。
【0059】
また、車両データ解析センター200は、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき、記憶装置220に蓄積された車両データ群を運転レベル「高」と運転レベル「低」との2つのグループにグループ分けする車両データ分類部230を備えている。
【0060】
本実施の形態の車両データ分類部230は、記憶装置220に蓄積された車両データ群を、カーブや交差点等の交通要素、各交通要素により区画される所定の走行区間、及び連続する交通要素や走行区間を包含する走行エリアの少なくとも1つを単位として、記憶装置220に蓄積されている車両データ群をグループ分けする。これにより、記憶装置220に記憶されている車両データ群は、例えば、共通する走行エリアでの運転操作を示すデータ単位に分割されて、運転レベルの別にグループ分けされる。またこれにより、記憶装置220に記憶されている車両データ群は、例えば、共通する走行エリア中に存在する或るカーブでの運転操作を示すデータ単位や連続する交差点で区切られる走行区間での運転操作を示すデータ単位に細分化されて、運転レベルの別にグループ分けされる。なお、こうした交通要素や走行区間、走行エリア等の走行環境は、例えば、車両データに含まれている、上記GPS108の検出結果である緯度経度情報や上記カーナビゲーションシステム109から取得された情報に基づいて特定される。
【0061】
また、本実施の形態では、車両データのグループ分けの基準となる評価基準は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられている。
【0062】
ここでの例では、燃費が評価項目であるときには、車両データ群をレベル分けする評価基準として例えば「15km/l」が設定されている。そして、上記エンジンECU107の検出結果として車両100の車両データに含まれている燃料噴射信号から求まる燃費が、評価基準「15km/l」以上であるときには、同車両データが運転レベル「高」であるとして評価される。一方、車両データに含まれている燃料噴射信号から求まる燃費が、評価基準「15km/l」未満であるときには、同車両データが運転レベル「低」であるとして評価される。
【0063】
また、或る交通要素や所定の走行区間を法定速度の範囲内で車両が走行したときにおいて、それら交通要素や所定の走行区間に車両が進入してから通過するまでに要した時間が、所定の旅行時間以内である車両データについては、同車両データが運転レベル「高」であるとして評価される。一方、交通要素や所定の走行区間に車両が進入してから通過するまでに要した時間が、所定の旅行時間を超える車両データについては、同車両データが運転レベル「低」であるとして評価される。
【0064】
また一方、加速度センサ106の検出結果から求まる車両100の進行方向の横方向における加速度の変化量である躍度についても運転レベルを評価する所定の基準値が規定されており、同躍度と同基準値とをもとに、各車両データがそれぞれ運転レベル「高」、運転レベル「低」として評価される。
【0065】
さらに、アクセルセンサ101やブレーキセンサ102の検出結果から求まる急加速や急減速等の急制動の有無や発生頻度、すなわち車両100の挙動についても運転レベルを評価する基準値が規定されている。そして例えば、急制動の発生頻度が所定の閾値未満である車両データについては運転レベル「高」として評価されるとともに、急制動の発生頻度が所定の閾値以上である車両データについては運転レベル「低」として評価される。
【0066】
なお、本実施の形態では、記憶装置220に蓄積されている車両データ群は、例えば「燃費」を評価項目として運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つのグループにグループ分けされるとともに、その評価結果を示す情報が車両データの各々に関連付けられる。
【0067】
そして、車両データ分類部230は、評価基準に基づきグループ分けした車両データ群を、同車両データ分類部230による分類結果が記憶される分類結果格納部240に出力する。
【0068】
分類結果格納部240は、車両データ分類部230から入力された車両データを、車両データ分類部230による分類結果に応じて各別に保存する。本実施の形態の分類結果格納部240は、例えば、車両データ分類部230により運転レベル「高」と評価された車両データが格納される第1格納領域241と、車両データ分類部230により運転レベル「低」と評価された車両データが格納される第2格納領域242とを有している。これにより、第1格納領域241に、車両データ分類部230により運転レベル「高」と評価された車両データ群DAが蓄積されるとともに、第2格納領域242には、車両データ分類部230により運転レベル「低」と評価された車両データ群DBが蓄積される。
【0069】
また、車両データ解析センター200は、こうした分類結果格納部240に各別に記憶された車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する車両データの特徴量を抽出する車両データ解析部250を備えている。
【0070】
本実施の形態の車両データ解析部250は、時系列データとしての車両データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部251を有している。正規化演算部251は、車両データの正規化に際し、第1格納領域241に格納されている様々な走行エリアを走行した車両から収集された車両データ群DAの中から、例えば、所定の曲率半径を有するカーブについての車両データを第1格納領域241から読み込む。また、正規化演算部251は、第1格納領域241から読み込んだ車両データ群DAにて示される走行環境と、共通もしくは類似する走行環境のもとで取得された車両データ群を第2格納領域242に格納されている車両データ群DBの中から読み込む。これにより、例えば、或る走行経路中に存在する或るカーブで低燃費(省燃費)を実現した運転操作を示す車両データ群と、同カーブと共通もしくは類似する形状のカーブで高燃費の要因となった運転操作を示す車両データ群とが、分類結果格納部240から読み込まれる。
【0071】
このように、本実施の形態の正規化演算部251は、各車両データに含まれている交通要素を示す情報や走行区間を示す情報もしくは走行エリアを示す情報をもとに、共通もしくは類似する交通要素及び走行区間及び走行エリアでの運転操作を示す車両データを、分類結果格納部240から読み込む。
【0072】
こうして、例えば、図2(a)に例示するように、或る交通要素や或る走行区間、或る走行エリアでの上記各センサ101〜106等の検出結果、すなわち、車両100の運転要素であるアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等の複数種の操作機器の操作態様の推移を示す時系列データが分類結果格納部240から読み込まれる。
【0073】
なお、図2(a)に実線で示す運転レベル「高」と評価された車両データ群DAと、同図2(a)に一点鎖線で示す運転レベル「低」と評価された車両データ群DBとは、各車両データ群DA及びDBの収集源となった車両で行われた運転操作が異なるために、それぞれ異なる特徴量を有したものとなっている。また、この車両データに含まれる特徴量とは、所定のタイミングでのアクセルオフ、ブレーキオンとされたタイミングやその踏込み量の変化、及びステアリングの操舵角度の変化等、車両100に搭載される各操作機器である運転要素の操作態様の特徴を示したものである。そして、車両データの収集源となる車両100では、こうした各運転要素の操作態様の特徴に応じて、燃費、所定の走行区間等での旅行時間、急制動の有無、及び同車両100の横方向における躍度等が変化するようになっている。
【0074】
また、本実施の形態の車両データは、上記各センサ101〜106等の検出結果が時系列的に記録されたものである。このため、図2(a)からも明かなように、たとえ共通もしくは類似する交通要素や走行区間、走行エリアの始点を通過した各車両から取得されたものであっても、各車両データの取得源となる各車両の走行速度等の相違に起因して、各車両データのデータ長は相違したものとなっている。すなわち、各車両データの取得源となる各車両が或る交通要素や走行区間、走行エリアに進入してから、それら交通要素や走行区間、走行エリアを通過するまでに要した旅行時間は、各車両の走行速度等の相違に起因して、各々相違していることを示している。
【0075】
そこで、本実施の形態の正規化演算部251は、共通もしくは類似する走行環境のもとで取得された車両データ群DA及びDBを第1格納領域241及び第2格納領域242から読み込むと、それら読み込んだ車両データ群DA及びDBを走行位置に基づいて正規化する。これにより、例えば、図2(b)に例示するように、各車両データのデータ長が一致するようになる。そして、正規化演算部251は、図1に示すように、この正規化した車両データを、同車両データを周波数分解する周波数分解部252に出力する。
【0076】
周波数分解部252は、正規化演算部251から正規化された車両データ群が入力されると、このデータ群を例えばウェーブレット変換することにより、同データ群を複数の周波数帯に周波数分解する。これにより、例えば、正規化演算部251により正規化された1つの車両データは、所定の周波数成分毎に分解されることで複数のデータに分解される。そして、こうした周波数分解が正規化演算部251により正規化された車両データ群の各々に対して行われることにより、車両データの運転レベルを異ならしめる要因となる特徴量の抽出に際し、同抽出の候補となる大量の候補データが生成される。また、こうした周波数分解を通じて、車両データに局所的に含まれる周波数成分(特徴量)も顕在化されるようになる。こうして、周波数分解を通じて生成された候補データ群は、同候補データ群に対して窓関数に基づく演算を実行する窓関数演算部253に出力される。
【0077】
窓関数演算部253は、周波数分解部252から入力された候補データ群の各々に対して窓関数に基づく演算を実行することにより、各候補データ群に含まれている特徴量を顕在化する。そして、窓関数演算部253は、この窓関数に基づく演算を通じて、特徴量を顕在化した候補データ群を、同顕在化された特徴量が上記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める影響度算出部254に出力する。
【0078】
影響度算出部254は、窓関数演算部253により特徴量が顕在化された候補データ群が入力されると、運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類されたデータのうちの共通する特徴量の差分の合計値をもとに、車両データ群DA及び車両データ群DB間で運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行う。なお、本実施の形態の影響度算出部254は、例えば、周知の学習アルゴリズムである「adaboost」による学習を通じて、車両データの特徴量の重み付けを行う。そして、この重み付けを通じて、車両データ群DA及び車両データ群DBに含まれる特徴量のうち、運転レベル「高」にレベル分けされた車両データ群DAと運転レベル「低」レベル分けされた車両データ群DBとの間で相違する特徴量が抽出されるようになる。
【0079】
また、本実施の形態の影響度算出部254は、重み付けした車両データの特徴量と、同特徴量が示す運転操作が行われた走行地点との対応関係を求める。なお、特徴量と走行地点との対応関係は、車両データに含まれている緯度経度情報や各種交通要素及び走行区間及び走行エリアを示す情報に基づいて求められる。同様に、本実施の形態の影響度算出部254は、重み付けした車両データの特徴量と、上記評価項目に基づく車両データの評価結果との対応関係を求める。なお、この特徴量と評価結果との対応関係は、各候補データの元となる車両データに関連付けられている上記評価基準に基づく評価結果をもとに求められる。
【0080】
そして、影響度算出部254は、同影響度算出部254による演算結果を、車両データの解析結果として解析結果記憶部260に出力する。これにより、解析結果記憶部260には、運転レベルが相反する車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する特徴量、同特徴量に対する重み付けを示す情報、同特徴量と走行地点と上記評価項目に基づく車両データの評価結果との対応関係を示す情報が、それぞれ蓄積されることとなる。
【0081】
以下、本実施の形態の車両データの解析方法及び車両データの解析システムによる車両データの作用について、図3〜図9を参照して説明する。
図3に示すように、まずステップS101において、複数台の車両から各車両で行われた運転操作を対応する走行環境とともに示す車両データが収集される。これにより、例えば、図4に示すように、走行区間Sec1、カーブCv1、走行区間Sec2、カーブCv2、及び走行区間Sec3が順に連なる走行エリアAr1を走行した複数台の車両の、同走行エリアAr1における車両データが収集される。すなわち、同走行エリアAr1を走行した各車両の各ドライバにより行われたアクセルペダルやブレーキペダル、操舵角度等の各種運転要素の操作態様を時系列的に示す車両データが収集される。
【0082】
そして、この収集された車両データは、図3にステップS102として示すように、例えば、「燃費」を評価項目として、低燃費に寄与した運転操作を示す車両データ群DA(運転レベル「高」)と、逆に高燃費の要因となった運転操作を示す車両データ群DB(運転レベル「低」)とに分類される。
【0083】
これにより、図5(a)に示すように、複数台の車両が上記走行エリアAr1を走行したときの各車両の操舵角度の推移を示す各時系列データは、図5(a)にそれぞれ実線と破線とで示すように、運転レベル「高」のグループに属する時系列データSt1と運転レベル「低」のグループに属する時系列データSt2とに分類される。
【0084】
なお、これら時系列データSt1及びSt2は、異なる運転操作のもとに取得されたデータであることから、時系列データSt1に含まれる特徴量と時系列データSt2に含まれる特徴量とは、相違するものとなっている。そして、この相違する特徴量が、時系列データSt1と時系列データSt2との間で運転レベルが相違する要因となっている。
【0085】
また、これら時系列データSt1及びSt2は、共通する走行エリアAr1を走行した車両から取得されたものの、各車両の走行速度の相違に起因して同走行エリアAr1を通過するまでに要した時間が相違し、時間軸で示されるデータ長が相違するようになっている。
【0086】
そこで、図3にステップS103として示すように、運転レベルの別にグループ分けされた車両データ群が走行位置に基づいて正規化される。これにより、上記走行エリアAr1での操舵角度の推移を示す時系列データSt1及びSt2は、図5(b)に例示するように、同走行エリアAr1の始点Psからの終点Pgまでの各走行位置を基準に正規化されることで、比較可能なデータ形式に変換される。そして、こうした正規化が、先のステップS102にてグループ分けされた車両データ群DA及びDBの全ての車両データに対して実行される。
【0087】
次に、図3にステップS104として示すように、正規化された車両データ群DA及びDBに含まれる各車両データは、例えばウェーブレット変換を通じて周波数分解されることによって、主に高周波成分を含んだデータと、図6(a)に例示する主に低周波成分を含んだデータとに分解される。そして、主に低周波成分を含んだデータはさらに、図6(b)〜(e)に例示するように、それぞれ異なる周波数成分を含んだデータα1、β1〜β3に分解される。なお、この図6(b)〜(e)から明かなように、所定の周波数成分を含んだデータα1、β1〜β3は、所定の周波数成分によって示される特徴量を有したものとなっている。そして、同様に、図6(a)に例示した主に低周波成分を含んだデータとは相反するデータ、すなわち主に高周波成分を含んだデータについても、異なる周波数成分を含んだ複数のデータへとさらに分解される。これにより、1つの車両データから、運転レベルが相違する要因を示す特徴量の抽出に際して、同抽出の候補となる複数の候補データが生成されるようになる。そして、こうした周波数分解が、先のステップS103にて正規化された車両データ群DA及びDBの全ての車両データに対して実行されることにより、大量の候補データが生成されることとなる。
【0088】
その後、図3にステップS105として示すように、この生成された候補データに含まれる特徴量を顕在化する処理が、例えば以下の式に基づく窓関数演算を通じて実行される。
【0089】
【数1】
この処理ではまず、例えば先の図6(b)の領域5bにおけるデータα1の拡大図を図7に示すように、同データα1のうち、上記走行エリアAr1の始点Ps(距離「0」)から所定の走行地点(距離「30」)の範囲に対応するデータが選定される。そして、この選定されたデータに対して、上記式に基づく窓関数演算が実行される。これにより、データα1のうち、距離「0」〜「15」の範囲のデータと、距離「16」〜「30」の範囲のデータとの差分が求められ、各範囲のデータに包含される特徴量が顕在化されるようになる。こうして、データα1の全範囲、すなわち、先の図4に示した走行エリアAr1の始点Psから終点Pgに対応するデータに対して窓関数に基づく演算が実行されることにより、同データα1に含まれる全ての特徴量が顕在化されるようになる。また同様に、その他、周波数分解されたデータβ1〜β3等に対しても窓関数が実行されることにより、各データβ1〜β3等に含まれる特徴量が顕在化されるようになる。そして、こうした特徴量の顕在化が、先のステップS104にて周波数分解された車両データ群DA及びDBの全ての車両データに対して実行される。
【0090】
そして、図3にステップS106として示すように、学習アルゴリズムによる学習を通じて、運転レベル「高」に属する車両データ群DAから生成された候補データ群と、運転レベル「低」に属する車両データ群DBから生成された候補データ群との間で相違する特徴量が選定される。また、同学習を通じて、各特徴量が上記評価基準に基づく評価結果に及ぼす影響度が算出されることにより、各特徴量の重み付けが行われる(ステップS107)。
【0091】
この結果、図8(a)に例示するように上記評価項目が例えば「燃費」であるときには、この燃費に最も影響を及ぼす特徴量として、先の図4に対応する図として図8(b)に示すように、走行エリアAr1に包含されるカーブCv2のうち、走行地点Pa3におけるステアリングの操作態様の特徴を示す特徴量「操舵角度α1」が特定される。すなわち、この操舵角度α1が、燃費をもとに評価される車両データに対する影響度が、上記生成された候補データ群に含まれる各特徴量の中で最も大きい特徴量であると特定される。なお、走行地点Pa3は、同カーブCv2の始点から所定の位置に存在する地点を示している。
【0092】
また、この操舵角度α1の次に燃費に影響を及ぼす特徴量として、図8(b)に示す走行エリアAr1のうち、走行区間Sec2の始点から所定の位置に存在する走行地点Pa2におけるステアリングの操作態様を示す特徴量「操舵角度β3」が特定される。
【0093】
さらに、この操舵角度β3の次に燃費に影響を及ぼす特徴量として、図8(b)に示す走行エリアAr1のうち、走行区間Sec1と同走行区間Sec1に後続するカーブCv1とを跨ぐ走行地点Pa1におけるアクセルペダルの操作態様を示す「アクセルβ3」が特定される。
【0094】
そして、こうした演算が、車両データの収集源となった各車両が走行した例えば走行エリアAr1〜Arn毎に行われることにより、図8(a)に示すように、各走行エリアAr1〜Arnに存在する各交通要素や各走行区間において燃費に影響を及ぼす特徴量が重み付けされる。また、同図8(a)に示すように、この重み付けされた各特徴量と各走行地点との対応関係が適宜求められる。
【0095】
こうして本実施の形態では、例えば「燃費」を評価項目として車両データ群が運転レベルの別にグループ分けされたときには、車両データ群の中で燃費が相違する要因となる各運転要素の操作態様を示す特徴量が、各走行エリアに包含される走行地点毎に、特定されることとなる。また併せて、各走行地点を包含する交通要素や走行区間も特定されることとなる。
【0096】
次に、上記周波数分解部252による周波数分解処理について図9を参照して詳述する。
図9に示すように、本処理ではまず、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリング等々の複数種の運転要素の中で、周波数分解すべき一種類の運転要素が選択される(ステップS201)。これにより、上記正規化された各種運転要素に基づく車両データ群のうち、例えばアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示す車両データ群が選択される。
【0097】
次いで、この選択されたアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示すN個の車両データの数をカウントする変数iに「0」が代入され(ステップS202)、このアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示すN個の車両データの中から1つの車両データが選択される(ステップS203)。
【0098】
その後、この選択された1つの車両データが周波数分解され(ステップS204)、上記変数iが加算される(ステップS205)。そして、この選択された1つの車両データが周波数分解されると、未だ周波数分解されていないアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示す車両データが順次周波数分解されるとともに、変数iが適宜加算される(ステップS206:NO、ステップS203〜S205)。
【0099】
こうして、アクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示すN個の車両データの全てが周波数分解されたことにより変数iが「N」に達すると(ステップS206:YES)、周波数分解が終了したアクセルペダル以外の運転要素が新たに選択される(ステップS201)。そして同様に、この選択された運転要素の車両データ群が順次周波数分解されるといった処理が繰り返し実行されることにより、記憶装置220に記憶されている全ての種類の運転要素に基づく車両データ群が周波数分解されることとなる(ステップS202〜S206)。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムによれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)車両データとして複数種の運転操作に基づく複数の車両データを収集し、この収集した車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき2つのグループにグループ分けした。そして、このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することとした。これにより、車両データに含まれる運転操作の特徴を定量的に解析することができるようになる。
【0101】
(2)また、上記収集された車両データ群は、複数種のドライバの運転操作のもとに実際の道路上を走行した車両から取得されたものであるから、同車両データ群を用いることにより、実際の走行環境や同走行環境のもとで行われた運転操作が反映された走行モデルを生成することも可能である。そしてこの場合には、上記抽出された車両データの特徴量を加味して模範となる走行モデルを生成することより、運転レベルを決定する特徴量を盛り込んだ走行モデルを生成することが可能となる。すなわち、上記車両データの解析結果を、車両の走行環境や、ドライバの運転技量、ドライバに特有の運転操作パターン等に応じた走行モデルの生成に適用することが可能となる。
【0102】
(3)上記抽出した車両データの特徴量が、上記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることとした。これにより、各々グループ分けされた車両データの間で相違する特徴量のみならず、この特徴量が、評価基準にて評価される車両データ、換言すれば、同評価基準に基づく評価に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0103】
(4)上記交通要素、走行区間、及び走行エリアを単位として、車両データのグループ分けと車両データの特徴量の抽出とを行った。このため、交通要素、走行区間、及び走行エリアのもとで行われる一連の運転操作が反映される車両データの特徴量を、交通要素単位、走行区間単位、及び走行エリア単位で抽出することが可能となる。これにより、交通要素や走行区間、走行エリアを単位として、各車両データ間で運転レベルが相違する要因を特定することが可能となる。またこれにより、1つの車両データの中から、交通要素毎、走行区間毎、及び走行エリア毎の特徴量を抽出することが可能となり、車両データ解析センター200に収集された車両データ群の中からより多くの特徴量を抽出することが可能となる。
【0104】
(5)上記各センサ101〜106等によりドライバによる運転操作を検出した。そして、この検出結果、並びに、ドライバによる運転操作が行われた走行地点を特定可能な緯度経度情報や各種道路地図に関する情報を、車両100の車両データとして取り扱うこととした。さらに、先の図8(a)及び(b)に示した態様で、運転操作の特徴量、走行地点、及び評価基準の各々の対応関係をさらに求めることとした。このため、車両データをより詳細に解析することが可能となり、評価基準に基づく運転レベルが相違する要因や同要因が評価基準に及ぼす影響を、走行地点レベルにまで解析することが可能となる。
【0105】
(6)上記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化した。このため、走行速度等が相違する車両から取得された各時系列データについて、高精度に対比可能なレベルに変換することができる。これにより、より多くの車両データ(時系列データ)を解析対象とすることが可能となり、こうした車両データ間で相違する特徴量をより多く抽出することが可能となる。
【0106】
(7)上記特徴量として、ドライバによる運転操作態様を示す複数の運転要素の特徴を示すデータを対象とし、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリング等々の複数種の運転要素が評価基準に及ぼす影響度を運転要素の別に求めることとした。これにより、燃費、車両挙動、及び車両100の横方向における躍度等に影響を与える運転要素が複数存在したとしても、各車両データの運転レベルを異ならしめる複数の要因を的確に特定することが可能となる。また、これにより、車両データに局所的に含まれる特徴量を的確に抽出することが可能になるとともに、各運転要素が評価基準に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0107】
(8)上記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを、車両データに対する周波数分解を通じて生成することとした。このため、車両データに含まれている様々な周波数成分を抽出することが可能となり、運転操作が反映された様々な特徴量を顕在化することが可能となる。これにより、上記グループ化された車両データ間で相違する特徴量を抽出する上で、その候補となる特徴量を含んだ候補データを、限られた車両データの中から大量に生成することが可能となる。
【0108】
(9)上記車両データの特徴量の抽出に先立ち、窓関数に基づく演算を通じて特徴量の顕在化を行うこととした。これにより、車両データに含まれる微小な特徴量についても的確に抽出することが可能となり、運転レベルの別にグループ分けされた車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する特徴量を的確に抽出することが可能となる。
【0109】
(10)上記評価基準により評価すべき評価項目として、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度を用いた。これにより、上記各評価項目を指標として分類される車両データの特徴量を抽出することで、燃費、旅行時間、スムーズな運転操作(急制動の有無)、及び躍度等が車両データ間で相違する要因を特定することが可能となる。
【0110】
(11)上記評価基準に基づくグループ分けを通じて、複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群DA及びDBに分類し、この分類した車両データ群DA及びDB間で運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行うこととした。このため、グループ分けされた車両データ群DA及びDB間で運転レベルが相違する要因を、評価基準に対する影響度の順に特定することが可能となる。これにより、運転レベル「低」とされた車両データにて示される運転操作の改善要素を、改善すべき優先度の順に把握することが可能となる。
【0111】
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を、車両100の走行の終了に伴い同車両100のアクセサリーポジションがオン状態からオフ状態に切り替えられたことを条件に行った。これに限らず、例えば、車両100のアクセサリーポジションがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングや、車両100が所定の交通要素や所定の走行区間を通過したタイミングで、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。同様に、予め定められた周期で、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。またこの他、車両データ解析センター200から車両100に対して要求があったときに、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。
【0112】
・上記車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を、車載通信機120とセンター通信機210との間での無線通信を通じて行った。これに限らず、例えばUSBメモリ等の外部記憶媒体を介した有線通信等によって、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。要は、車両100で取得された車両データを車両データ解析センター200に送信可能なものであれば、車両データの搬送手段とすることができる。
【0113】
・上記車両データの特徴量の重み付けを、学習アルゴリズムである「adaboost」による学習を通じて行った。これに限らず、この重み付けに用いる手段としては、運転レベルが相違する車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する特徴量の重み付けを行うことが可能なものであればよく、各種学習アルゴリズムや各種演算を用いることが可能である。
【0114】
・上記分類した車両データ群DA及びDB間で相違する車両データの特徴量の重み付けを通じて、車両データの特徴量が評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることとした。これに限らず、同影響度として、例えば「影響度:大」、「影響度:中」、「影響度:小」、及び「影響度:無」の4段階に分類された影響度を求めるようにしてもよい。この場合には、例えば、共通もしくは類似する交通要素、走行区間、及び走行エリアでの車両データ群の特徴量のうち、先の図5(a)及び(b)に例示したデータSt1とデータSt2との間で相違する頻度が相対的に高い特徴量ほど、また、各データ間での差が顕著になる特徴量ほど、「影響度:大」として求められる。一方、共通もしくは類似する交通要素、走行区間、及び走行エリアでの車両データ群の特徴量のうち、先の図5に例示したデータSt1とデータSt2との間で相違する頻度が相対的に低い特徴量ほど、また、各データ間での差が微小な特徴量ほど、「影響度:小」として求められる。また一方、グループ分けされた車両データ群DAと車両データ群DBとの間で共通する特徴量については、車両データ間で運転レベルが相違する要因となり得ない「影響度:無」として求められる。
【0115】
・上記車両データ解析センター200に収集された車両データ群を、上記評価基準に基づき運転レベル「高」と運転レベル「低」との2つのグループに分類した。これに限らず、同車両データ群を、上記評価基準に基づき3以上のグループに分類するようにしてもよい。そして、例えば、車両データ群が運転レベルの高い順に第1〜第3の3つのグループに分類されるときには、例えば第1及び第2のグループ間で相違する車両データの特徴量が抽出される。そしてこの場合には、この抽出された特徴量が、運転レベルが最も高い第1のグループと、その次に運転レベルが高い第2のグループとの間で運転レベルが相違する要因であるとして特定されることとなる。同様に、第2及び第3のグループ間で相違する車両データの特徴量が、第2及び第3のグループ間で運転レベルが相違する要因として特定されることとなる。これにより、車両データの運転レベルが複数の運転レベルにグループ分け可能な場合であれ、各グループ間で運転レベルが相違する要因を特定することが可能となる。
【0116】
・上記分類した車両データ群DA及びDB間で相違する車両データの特徴量の重み付けを、図8(a)に示したように、評価項目を「燃費」として行った。さらに、図10に示すように、躍度、車両挙動、旅行時間のそれぞれを評価項目として車両データ群のグループ分けを行い、このグループ分けした車両データ間で相違する特徴量の重み付けを行うようにしてもよい。この場合には、燃費のみならず、躍度、車両挙動、旅行時間のそれぞれの評価項目に基づき評価される運転レベルが相違する要因を走行地点毎に特定することが可能となる。
【0117】
・上記車両データ群のグループ分けを、燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度のうち、1つの評価項目に基づいて行った。これに限らず、2つ以上の評価項目についての評価基準に基づき車両データ群のグループ分けを行ってもよい。この場合には、例えば、燃費と車両挙動とが評価項目であるときには、低燃費かつ車両挙動が少ない旨を示す車両データが運転レベル「高」として評価され、その他の車両データについては運転レベル「低」として評価される。そして、それら運転レベル「高」と運転レベル「低」との間で相違する特徴量を抽出することにより、複数の評価項目に設けられた評価基準を同時に達成可能な運転操作を示す車両データの特徴量を抽出することが可能となる。
【0118】
・上記評価項目として、燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度を採用した。この他、車両データのグループ分けに用いる評価項目とは、ドライバの運転技量が反映されるものであればよく、例えば、運転操作の安定性、車間距離等を評価項目とすることができる。なお、車間距離を評価項目とするときには、例えば、車両データの取得源となった車両と同車両の進行方向前方を走行する車両との車間距離が、所定の距離以上に保たれているか否かを評価基準とすることができる。同様に、車両データの取得源となった車両と同車両の進行方向前方を走行する車両との車間距離の変化量が、一定以内であるか否かを評価基準とすることができる。
【0119】
・上記車両データの特徴量の顕在化を、窓関数に基づく演算を通じて行った。これに限らず、車両データに含まれる特徴量を顕在化可能な演算であれば、車両データの顕在化に際して採用可能である。また、評価基準に基づきグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することができればよく、上記窓関数演算部253を割愛する構成とし、車両データの特徴量を顕在化する演算を行わないこともできる。
【0120】
・上記車両データの周波数分解を、ウェーブレット変換を通じて行った。これに限らず、例えば、離散コサイン変換や、フーリエ変換等によって車両データを周波数分解することもできる。なお、この場合には、可逆変換可能な変換手法が好ましい。要は、車両データの周波数を分解することにより、複数の周波数帯の周波数成分を抽出可能な手段であればよい。また、評価基準に基づきグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することができればよく、上記周波数分解部252を割愛する構成とし、車両データに対する周波数分解を行わないこともできる。
【0121】
・上記分類結果格納部240に、運転レベルの別にグループ分けされた車両データが記憶される第1格納領域241と第2格納領域242とを設ける構成とした。これに限らず、分類結果格納部240を割愛するとともに、車両データ分類部230により運転レベルを識別可能な情報を記憶装置220に記憶されている各車両データに付するようにしてもよい。この場合には、各々相反する運転レベルを示す情報が付された車両データ群が、車両データ分類部230から車両データ解析部250に出力される。そして、車両データ解析部250では、各車両データに付されている運転レベルを識別可能な情報に基づき、例えば運転レベルが相反する車両データ間で相違する特徴量が抽出されることとなる。
【0122】
・上記車両データ解析センター200に収集された車両データ群から、ドライバによる運転操作態様を示すアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等の複数の運転要素の特徴を示す特徴量を抽出することとした。これに限らず、抽出の対象とする特徴量として、例えばアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等のうち、1つの運転要素の特徴を示す特徴量を、車両データ群から抽出するようにしてもよい。
【0123】
・上記各実施の形態では、ドライバの運転操作が反映される車両データを、アクセルセンサ101、ブレーキセンサ102、操舵角センサ103、ジャイロセンサ104、車速センサ105、及び加速度センサ106の検出結果に基づき取得した。この他、例えば、車両100の旋回方向への回転角の変化速度であるヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出結果に基づき、車両データを取得するようにしてもよい。この場合には、上記特徴量として、車両のヨーレートに起因する運転レベルの相違要因が車両データから抽出されることとなる。またこの他、ドライバによる運転操作や同運転操作が反映される信号を取得可能な手段であれば、車両データの取得手段として採用することができる。
【0124】
・上記車両データ解析部250に、車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部251を設ける構成とした。これに限らず、同一もしくは類似する走行環境での運転操作態様を示す時系列データのデータ長が対比可能な態様で近似するときには、この正規化演算部251を割愛する構成とし、車両データとしての時系列データの正規化を行わないこともできる。
【0125】
・上記抽出した車両データの特徴量、走行地点、及び評価基準の各々の対応関係を求めることとした。これに限らず、例えば、車両データの特徴量と走行地点との対応関係のみ、あるいは、車両データの特徴量と評価基準との対応関係のみを求めるようにしてもよい。
【0126】
・上記走行地点を識別可能な情報を含んだ車両データを車両100から収集することとした。これに限らず、走行地点に代えて、交通要素や走行区間、走行エリアのみを識別可能な情報を含んだ車両データを車両100から収集するようにしてもよい。そして、この収集した交通要素、走行区間、走行エリアと、車両データの特徴量との対応関係を求めるようにしてもよい。同様に、この収集した交通要素、走行区間、走行エリアと、評価基準との対応関係を求めるようにしてもよい。
【0127】
・上記車両データの特徴量の重み付けを、先の図8(a)に示したように、走行エリアAr1〜Arnに包含される走行地点毎に行った。これに限らず、この図8(a)に対応する図として図10に示すように、上記車両データの特徴量の重み付けを、例えば道路線形等が共通もしくは類似するカーブや交差点等の交通要素単位で行ってもよい。また、同図10に示すように、上記車両データの特徴量の重み付けを、例えば道路線形等が共通もしくは類似する走行区間単位で行ってもよい。これらの場合には、交通要素毎や走行区間毎に、影響度の大きい特徴量が順位付けされることにより、交通要素単位や走行区間単位での、より詳細な特徴量の抽出が可能となる。また、この場合には、異なる走行エリアを走行した車両から収集された車両データであれ、道路線形等が類似していれば、グループ間で相違する特徴量の抽出に際してグループ分けの対象とすることが可能となる。これによって、より広範囲な走行エリアから収集された車両データから、より多くの特徴量を抽出することが可能となる。
【0128】
・上記交通要素、走行区間、及び走行エリアを単位として、車両データのグループ分け及び車両データの特徴量の抽出を行うこととした。これに限らず、交通要素、走行区間、及び走行エリアの少なくとも1つを単位として車両データのグループ分け及び車両データの特徴量の抽出を行うものであればよい。
【0129】
・上記評価基準に基づくグループ分けを、共通もしくは類似する走行環境での運転操作態様を示すデータを対象として行った。これに限らず、例えば、共通する走行環境での運転操作態様を示すデータのみを対象として、上記評価基準に基づくグループ分けを行うようにしてもよい。
【0130】
・車両データの収集源となる車両100の走行環境に関する情報として、カーブや交差点等の交通要素、走行区間、及び走行エリアに関する情報を設定した。さらに、車両100の走行環境に関する情報として、例えば、渋滞の発生頻度の高い走行エリアを示す情報、渋滞の発生頻度の高い走行時間帯、交通流が共通する時間帯、及び車両データにて示される運転操作が行われたときの天候等を示す情報、等々を設定することも可能である。そして、こうした情報をもとに特定される渋滞状況や天候等を加味して、上記車両データのグループ分け及び車両データの抽出を行うようにしてもよい。この場合には、車両データにて示される運転操作が行われた交通要素、走行区間、走行エリア等が共通し、かつ、同走行エリアでの渋滞状況や天候が共通する車両データ群が、グループ分け及び特徴量の対象とすべき車両データとして特定される。そして、この場合には、交通要素、走行区間、走行エリア等が共通し、かつ、渋滞状況や天候等、運転操作に影響を及ぼす要素が共通する車両データ群に対して、評価基準に基づくグループ分けや特徴量の抽出が行われることとなる。このため、走行環境の相違に起因する車両データ間での特徴量の相違とドライバの運転技量に起因する車両データ間での特徴量の相違とを、的確に識別することが可能となる。これにより、各ドライバの運転技量のみに起因する特徴量の相違、換言すれば、運転操作が行われた走行環境が同一であるにも拘わらず各車両データ間で運転レベルが相違する要因を、車両データ群からより的確に抽出することが可能となる。
【0131】
・上記車両データに、車両データの収集対象となる車両100の走行環境を示す情報を含めることとした。これに限らず、特徴量の抽出対象とする各車両データの推移に基づき、共通もしくは類似する走行環境下で収集された車両データを特定可能な場合には、上記GPS108やカーナビゲーションシステム109を割愛する構成とし、ドライバによる運転操作の推移を示すデータのみを、上記車両データとして収集することも可能である。
【0132】
・上記抽出した車両データの特徴量が、上記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることとした。これに限らず、上記評価基準に基づきグループ分けされたグループ間で相違する特徴量のみを、車両データ群から抽出するようにしてもよい。この場合であれ、この抽出される車両データの特徴量に基づき、各グループ間で運転レベルが相違する要因を定量的に特定することが可能となる。
【0133】
・上記車両データの特徴量を、車種を限定することなく、不特定多数の車両から収集された車両データ群から抽出することとした。これに限らず、ドライバの運転操作のみに起因する車両データの特徴量の相違を車両データ群から抽出する上では、同一の車種から収集された車両データ群のみを解析の対象としてもよい。この場合には、車両間の個体差が除去されることとなり、ドライバの運転技量の相違のみに起因する特徴量を的確に抽出することが可能となり、より高精度な解析が可能となる。
【0134】
・上記車両データを、複数台の車両から取得することとした。これに限らず、解析の対象とする車両データとは、一台の車両から取得されたものであってもよく、運転操作さえ異なれば同一のドライバの運転操作に基づき取得されたものであってもよい。要は、上記評価基準に基づきグループ分け可能な、複数種の運転操作が反映された車両データであれば、解析の対象とすることができる。
【符号の説明】
【0135】
100…車両、101…アクセルセンサ、102…ブレーキセンサ、103…操舵角センサ、104…ジャイロセンサ、105…車速センサ、106…加速度センサ、107…エンジンECU、108…GPS、109…カーナビゲーションシステム、110…車両データ記憶領域、120…車載通信機、200…車両データ解析センター、210…センター通信機、220…記憶装置、230…車両データ分類部、240…分類結果格納部、241…第1格納領域、242…第2格納領域、250…車両データ解析部、251…正規化演算部、252…周波数分解部、253…窓関数演算部、254…影響度算出部、260…解析結果記憶部、Ar1−Arn…走行エリア、Cv1、Cv2…カーブ(交通要素)、Pg…走行エリアの終点、Ps…走行エリアの始点、Pa1〜Pa3…走行地点、St1、St2…時系列データ(車両データ)、Sec1〜Sec3…走行区間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両から取得された車両データの解析に適用して有益な車両データの解析方法及び該解析方法を用いた車両データ解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の運転を支援する運転支援システムでは、交差点や一時停止位置、カーブ、前方車両の接近、等々といった車両の減速が必要となる交通情報を車載カメラやナビゲーションシステム等により取得している。そして、この取得された車両周辺の交通情報に基づき、例えば音声による減速案内等として、ドライバに対する運転支援が行われる。
【0003】
また、このような運転支援に際しては、通常、ある走行パターンを、模擬コース等の所定の走行モデルのもとで測定された一般のドライバの交通情報の認知、判断、運転操作といった各種運転行動で平均化した標準走行パターンが用いられることが多い。例えば、特許文献1に記載のシステムでは、まずは、交差点やカーブへの進入速度、並びに交差点やカーブの曲率半径等の道路の形状に関する情報(走行モデル)に基づき、例えば、アクセルペダルやブレーキペダル等の操作機器の模範的な操作量の時系列的な推移を示す模範操作データを生成する。そして、この生成した模範操作データを運転模範モデル(標準走行パターン)としてデータベースに登録し、このデータベースに登録した模範操作データと、運転支援の対象とする車両のドライバによる各種操作機器の操作量の推移とをドライバに同時に提示することによって、ドライバの運転操作を評価するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−294250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、交差点や一時停止位置等に向かう車両の走行パターンは、道路のカーブの曲率をはじめ、道路の幅や傾斜等の多種多様な要素が存在する道路環境、並びにドライバ固有の癖や運転技量等に応じて変化することが普通であり、こうして変化するドライバの走行パターンに上記一般化された標準走行パターンを適合させることは難しい。すなわち、実際の道路環境やドライバ固有の癖、運転技量等を踏まえた運転模範モデルを作成しようとしても、そのモデルの作成には膨大な工数が必要とされることとなり、現実的ではない。
【0006】
一方、最近は、ドライバによる運転操作の推移を示す車両データを解析して、複数のドライバの運転操作のもとに取得された車両データ群を、ドライバの運転技量、すなわち運転レベルの別に層別することも検討されている。しかし、このようにして車両データ群を運転レベル毎に層別したところで、どのような運転操作が要因となって各ドライバの運転レベルに相違が生じるのかを特定することは難しく、運転レベルが相違する要因、換言すれば、運転レベルの向上を支援すべき運転要素を特定するには至っていない。すなわち、ドライバの運転操作に基づき取得された車両データの特徴を定量的に把握できるレベルには至っていない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドライバの運転操作の推移を示す車両データの特徴を定量的に解析することのできる車両データの解析方法、及び該解析方法を用いた車両データの解析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析方法において、前記車両データとして複数種の運転操作に基づく複数の車両データを収集するとともに、この収集した車両データを運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けし、このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することを要旨とする。
【0009】
請求項11に記載の発明は、ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析システムにおいて、前記車両データとして複数種の運転操作に基づく車両データが記憶される記憶装置と、前記記憶装置に記憶された車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けする車両データ分類部と、前記車両データ分類部によりグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出する車両データ解析部と、を備えることを要旨とする。
【0010】
ドライバの運転操作を示す車両データとは、アクセル、ブレーキ、ステアリング等の様々な運転要素の操作態様を示すものであり、こうした運転要素の操作態様によって燃費や走行時における車両の挙動等も大きく変化する。また、例えば、単位時間当たりの燃料消費量である燃費が低い、すなわち低燃費(省燃費)なために運転レベルが高いとされる車両データ群には、所定のタイミングでのアクセルオフ等のように共通する特徴量が含まれていることが多い。一方、高燃費なために運転レベルが低いとされる車両データ群には、相対的に遅いタイミングでのアクセルオフや過剰なアクセルペダルの踏み込み等といった特徴量が含まれていることが多い。そして、このように運転レベルが相違する車両データ群に含まれる特徴量が相違するときには、この相違する特徴量によって示される運転操作が、車両データの運転レベルを異ならしめる要因となることが多い。すなわち、この相違する特徴量、換言すれば、同特徴量が示す或る運転操作が行われているが故に、運転結果となる燃費や車両の走行時における挙動等に相違が発生する傾向にある。
【0011】
そこでまず、上記方法あるいは構成によるように、例えばアクセル開度やステアリングの操舵角度等の運転要素の推移を示す車両データを車両から収集する。また、この収集した車両データをドライバの運転技量を識別可能な評価基準に基づいてグループ分けすることにより、複数種の運転操作のもとで取得された車両データ群を運転レベルの別に分類する。そして、この運転レベルの別に分類したグループ間で相違する特徴量を抽出することにより、分類された車両データ間で運転レベルを異ならしめる要因となる特徴量を抽出する。これにより、複数種の運転操作に基づき取得された車両データ群の中から、車両データ間で運転レベルに相違が発生する要因を定量的に示す情報を抽出することが可能となる。すなわち、車両データに含まれる運転操作の特徴を定量的に解析することができるようになる。
【0012】
また、上記収集された車両データは、複数種のドライバの運転操作のもとに実際の道路上を走行した車両から取得されたものであるから、同車両データを用いることにより、実際の走行環境や同走行環境のもとで行われた運転操作が反映された走行モデルを生成することも可能である。そしてこの場合には、上記抽出された車両データの特徴量を加味して模範となる走行モデルを生成することより、運転レベルを決定する特徴量を盛り込んだ走行モデルを生成することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両データの解析方法において、前記抽出した車両データの特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることを要旨とする。
【0014】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ解析部はさらに、前記抽出した特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める影響度算出部を備えることを要旨とする。
【0015】
車両データに含まれる特徴量には、評価基準に基づく車両データの評価結果に及ぼす影響が大きい特徴量や同評価結果に及ぼす影響が小さい特徴量が存在する。そして、評価結果に対する影響が大きい特徴量ほど、車両データ群の運転レベルを異ならしめる主な要因となる。
【0016】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、上記抽出した車両データの特徴量が評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響を求める。これにより、各々グループ分けされた車両データの間で相違する特徴量のみならず、この特徴量が、評価基準にて評価される車両データ、換言すれば、同評価基準に基づく評価に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車両データの解析方法において、前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、それら交通要素もしくは走行区間もしくは走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分けと前記車両データの特徴量の抽出とを行うことを要旨とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項11または12に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、前記車両データ分類部及び前記車両データ解析部は、前記交通要素もしくは前記走行区間もしくは前記走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分け及び前記車両データの特徴量の抽出を行うことを要旨とする。
【0019】
ドライバによる運転操作とは、例えば、信号交差点やカーブ等の交通要素、交差点やカーブ等の交通要素により区画される所定の走行区間、こうした交通要素や走行区間を包含する走行エリア等といったように、車両周辺の走行環境が大きく反映されるものである。そして、こうした走行環境のもとで行われる運転操作の特徴も、車両の走行環境毎に相違するのが普通である。また、例えば、カーブの走行時における車両挙動の少ないために同カーブでの運転技量が高いものの、交差点等の減速・停止位置の走行時における燃費が高いために同減速・停止位置での運転技量が低いドライバ等、ドライバの運転技量も走行環境毎に相違する傾向にある。このため、たとえ或るドライバの運転操作に基づき取得された1つの車両データであっても、評価基準に基づく評価結果も車両の走行環境毎に相違することが多い。
【0020】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、走行環境としての交通要素もしくは走行区間もしくは走行エリアを単位として車両データのグループ分けと車両データの特徴量の抽出とを行うこととすれば、交通要素、走行区間、及び走行エリアのもとで行われる一連の運転操作が反映される車両データの特徴量を、車両データ群から的確に抽出することが可能となる。これにより、交通要素、走行区間、及び走行エリアを単位として、運転レベルが相違する要因を特定することが可能となる。またこれにより、上記収集された車両データの中から、より多くの特徴量を抽出することが可能となる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準の各々の対応関係をさらに求めることを要旨とする。
【0022】
請求項14に記載の発明は、請求項11〜13のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、前記車両データ解析部は、前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準の各々の対応関係をさらに求めることを要旨とする。
【0023】
例えば、カーブに進入した車両が同カーブを通過するまでには、その道路形状等に応じて、同カーブを構成する各走行地点で様々な運転操作が行われる。よって、共通する1つのカーブもしくは曲率半径等が類似するカーブ等での運転操作を示す車両データであっても、各走行地点での運転操作が反映される車両データには、各走行地点に対応する各別の特徴量が含まれることとなる。また、これに伴い、たとえ同一のドライバの運転操作に基づき取得された車両データであっても、各走行地点での車両データの評価結果は、例えばカーブの進入開始位置からカーブの中間地点までは低燃費(省燃費)なもののカーブの中間地点からカーブの終了地点までは高燃費になるなど、走行地点毎に相違することもある。
【0024】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、車両データの特徴量、走行地点、及び評価基準の各々の対応関係を求めることとすれば、走行地点に応じて現れる特徴量や同特徴量が評価基準に及ぼす影響を、走行地点毎に求めることが可能となる。これにより、車両データをより詳細に解析することが可能となり、評価基準に基づく運転レベルが相違する要因や同要因が評価基準に及ぼす影響を、走行地点レベルにまで解析することが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化することを要旨とする。
【0026】
請求項15に記載の発明は、請求項11〜14のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ解析部はさらに、前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部を備えることを要旨とする。
【0027】
通常、車両データの取得源となる車両の走行速度とは、車両毎、ドライバ毎に相違する傾向にある。このため、例えば、共通もしくは類似する走行環境で取得されたドライバによる運転操作態様が時系列的に記録された車両データ、すなわち時系列データを比較したとしても、それらの取得源となる車両の走行速度等が大幅に相違するときには、時間軸をもとに各時系列データを比較しようとすると、異なる走行位置での運転操作が比較対象になりかねない。
【0028】
この点、上記方法あるいは構成によれば、時系列データを走行位置に基づき正規化することで、走行速度等が相違する車両から取得された時系列データについても、精度よく対比可能なレベルに変換することができる。これにより、より多くの車両データ(時系列データ)を解析対象とすることが可能となり、こうした車両データ間で相違する特徴量をより多く抽出することが可能となる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求めることを要旨とする。
【0030】
請求項16に記載の発明は、請求項11〜15のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、前記車両データ解析部は、前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求める処理をさらに実行することを要旨とする。
【0031】
通常、ドライバによる運転結果を示す燃費や車両挙動等は、例えば操舵角度やアクセルの踏込み量といった複数種の運転要素の操作態様により変化する。そして、各運転要素に対する操作態様の相違に起因して、車両データ間の運転レベルが相違する傾向にある。
【0032】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、上記特徴量によって示される運転要素が上記評価基準に及ぼす影響を運転要素の別に求めることとすれば、複数種の運転要素が影響して運転レベルに相違が生じるような場合であれ、各車両データの運転レベルを異ならしめる複数の要因を的確に特定することが可能となる。また、これにより、車両データに局所的に含まれる特徴量を的確に抽出することが可能になるとともに、各運転要素が評価基準に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0033】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを、前記車両データに対する周波数分解を通じて生成することを要旨とする。
【0034】
請求項17に記載の発明は、前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する周波数分解を通じて前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを生成する周波数分解部を備えることを要旨とする。
【0035】
車両データの特徴量は、様々な周波数成分として車両データに含まれていることが多く、各周波数成分に含まれる特徴量が影響して、各車両データの運転レベルが相違する傾向にある。
【0036】
そこで、上記方法あるいは構成によれば、車両データに対する周波数分解を通じて、車両データに含まれている様々な周波数成分を抽出することで、運転操作が反映された様々な特徴量を顕在化することが可能となる。このため、上記グループ化された車両データ間で相違する特徴量を抽出する上で、その候補となる特徴量を含んだ候補データを、限られた車両データの中から大量に生成することが可能となる。
【0037】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記車両データの特徴量の抽出に先立ち、窓関数に基づく演算を通じて特徴量の顕在化を行うことを要旨とする。
【0038】
請求項18に記載の発明は、請求項11〜17のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する窓関数に基づく演算を通じて特徴量を顕在化する窓関数演算部を備えることを要旨とする。
【0039】
上記方法あるいは構成によるように、窓関数に基づく演算を通じて車両データの特徴量を顕在化することとすれば、車両データに含まれる微小な特徴量についても的確に抽出することが可能となる。
【0040】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記評価基準は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられたグループ分けのための基準であることを要旨とする。
【0041】
請求項19に記載の発明は、請求項11〜18のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ分類部は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられた評価基準に基づいて、前記車両データをグループ化することを要旨とする。
【0042】
一般に、低燃費を実現可能な運転操作や車両挙動の少ないスムーズな運転操作ほど、ドライバの運転技量が高いとして評価することが可能であり、それら燃費や車両挙動、並びに旅行時間や車両の横方向における躍度を評価項目として車両データを運転レベルの別にグループ分けすることが可能である。このため、上記方法あるいは構成によれば、上記各評価項目を指標として分類される車両データの特徴量を抽出することで、燃費、旅行時間、スムーズな運転操作(急制動の有無)、及び躍度等が、上記収集した車両データ間で相違する要因を特定することが可能となる。
【0043】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両データの解析方法において、前記評価基準に基づくグループ分けを通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、前記車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類されたデータのうちの共通する特徴量の差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行うことを要旨とする。
【0044】
請求項20に記載の発明は、請求項11〜19のいずれか一項に記載の車両データの解析システムにおいて、前記車両データ分類部は、前記評価基準に基づくグループ化を通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、前記車両データ解析部は、前記相違する車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類された共通する差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量を重み付けする処理を実行することを要旨とする。
【0045】
上記車両データ群においては、例えば、運転レベル「高」に分類された或るタイミングでの操舵角度の操作量を示す車両データと、運転レベル「低」に分類されたデータのうち同操舵角度の操作量に対応する車両データとの間での差分が多くなる特徴量ほど、運転レベルが相違する主要因である蓋然性が高い。また、こうした運転レベル「高」及び「低」の車両データ間で差分が発生する割合の高い特徴量ほど、運転レベルが相違する主要因である蓋然性が高い。一方、或るタイミングでのアクセルペダルの踏込み量を示す車両データの特徴量が、運転レベル「高」及び「低」に各々分類されたデータにおいて相似するときには、同特徴量は各車両データ群において運転レベルを異ならしめる要因とはなり得ない。
【0046】
そこで、上記方法あるいは構成によるように、上記特徴量の差分の合計値をもとに、運転レベルが相違する車両データの特徴量が重み付けすることとすれば、運転レベルが相違する要因を評価基準に対する影響度の順に特定することが可能となる。これにより、運転レベル「低」とされた車両データにて示される運転操作の改善要素を、改善すべき優先度の順に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムの一実施の形態について、同解析方法が適用される車両データの解析システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、時系列データとしての車両データ群の一例を示すグラフ。(b)は、走行位置に基づき正規化された車両データ群の一例を示すグラフ。
【図3】同実施の形態の車両データの解析方法による車両データの解析手順の一例を示すフローチャート。
【図4】車両データの取得源となる車両が走行した走行エリアの一例を、同走行エリアに含まれる交通要素及び走行区間とともに模式的に示す図。
【図5】(a)は、図4に示した走行エリアを走行した車両の操舵角度の推移を示す時系列データについて、運転レベル「高」とされた時系列データと、運転レベル「低」とされた時系列データとの一例を示すグラフ。(b)は、(a)に示した時系列データを、走行位置に基づいて正規化したデータの一例を示すグラフ。
【図6】(a)は、主に低周波成分に分解された車両データの一例を示すグラフ。(b)〜(e)は、(a)に示した車両データが周波数分解された候補データの一例を示すグラフ。
【図7】周波数分解された車両データに対する窓関数処理の一例を示すグラフ。
【図8】(a)は、車両データ群の解析結果の一例を示す図。(b)は、図4に対応する走行モデルを車両データ群の解析結果とともに示す図。
【図9】周波数分解部による周波数分解処理の一例を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムの他の実施の形態について、評価項目毎に解析された車両データ群の解析結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムを具体化した一実施の形態について図1〜図9を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態の車両データの解析方法が適用される車両データの解析システムは、車両100のドライバの運転操作が反映された車両データを収集する車両データ解析センター200を備えて構成されている。
【0049】
車両データの取得源となる車両100には、ドライバによる各種運転要素の操作態様を検出する手段として、アクセルセンサ101、ブレーキセンサ102、操舵角センサ103、ジャイロセンサ104、車速センサ105、及び加速度センサ106等が搭載されている。これら各種センサ101〜106等は、例えばCAN(Control Area Network)などの車載ネットワークを介して、同センサ101〜106等の検出結果が、車両100のドライバの運転操作が反映される車両データとして時系列的に記憶される車両データ記憶領域110に接続されている。
【0050】
アクセルセンサ101は、ドライバによるアクセルペダル操作によって変化するアクセル開度を検出し、この検出したアクセルの開度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。ブレーキセンサ102は、ドライバによるブレーキペダルの踏込み量を検出し、この検出した踏込み量に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。操舵角センサ103は、ドライバのステアリング操作により変化する操舵角度を検出し、この検出した操舵角度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。ジャイロセンサ104は、車両100の進行方向を検出し、この検出した進行方向に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。車速センサ105は、車両100の車輪の回転速度を検出し、この検出した回転速度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。加速度センサ106は、車両100の加速度を検出し、この検出した加速度に応じた信号を、車両データ記憶領域110に出力する。
【0051】
また、車両100には、同車両100に搭載されたエンジンを制御するエンジンECU107、車両100の絶対位置を検出するGPS108、道路地図データを有するカーナビゲーションシステム109が搭載されている。
【0052】
エンジンECU107は、アクセルセンサ101の検出結果等に基づき燃料の噴射量を決定する燃料噴射信号を生成し、この生成した燃料噴射信号を図示しない燃料噴射装置に出力する。また、エンジンECU107は、この生成した燃料噴射信号を車両データ記憶領域110に出力する。
【0053】
GPS108は、車両の絶対位置を検出するためのGPS衛星信号を受信し、この受信したGPS衛星信号に基づき車両100の緯度経度を検出し、この検出した車両100の緯度経度を示す情報を、車両データ記憶領域110に出力する。
【0054】
カーナビゲーションシステム109は、出発地点から目標地点までの推奨経路等をドライバに案内するシステムであり、車両100の運転域に対応する道路地図データを有している。この道路地図データは、地図に関する情報であり、道路勾配、カーブ等の道路線形、交差点、踏切等の交通要素を示す情報や、交差点名称、道路名称、方面名称、方向ガイド施設情報などから構成される。また、こうした道路地図データには、緯度経度に関する情報、連続する道路が交差点や信号機等の交通要素、同交通要素により区画された走行区間、及び連続する交通要素や走行区間を含む走行エリアに関する情報、すなわち車両100の走行環境に関する情報が登録されている。そして、カーナビゲーションシステム109は、道路地図データの参照を通じて、車両100が通過した走行環境に関する情報を車両データ記憶領域110に適宜出力する。
【0055】
車両データ記憶領域110には、こうした各センサ101〜106等やGPS108の検出結果、エンジンECU107から入力される燃料噴射信号、及びカーナビゲーションシステム109から入力される走行環境に関する情報が、それぞれ時系列的に記録される。これにより、車両データ記憶領域110には、車両100のドライバの運転操作を示す情報、並びに、同運転操作のもとに車両100が走行した走行環境に関する情報が、それぞれ対応付けされて車両100の車両データとして適宜蓄積される。
【0056】
また、車両100には、車両データ解析センター200との無線通信が可能な車載通信機120が搭載されている。車載通信機120は、例えば、車両100の走行の終了に伴い同車両100のアクセサリーポジションがオン状態からオフ状態に切り替えられたとき、車両データ記憶領域110に蓄積されている車両データを車両データ解析センター200に送信する。
【0057】
車両データ解析センター200は、車両100をはじめとする複数台の車両から送信されてくる車両データを受信するセンター通信機210を備えている。センター通信機210は、車両100をはじめとする複数台の車両で取得された車両データを受信し、この受信した車両データを記憶装置220に出力する。
【0058】
記憶装置220には、センター通信機210と各種車両に搭載された車載通信機との無線通信を通じて、複数台の車両で取得された複数種の運転操作に基づく車両データが蓄積される。
【0059】
また、車両データ解析センター200は、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき、記憶装置220に蓄積された車両データ群を運転レベル「高」と運転レベル「低」との2つのグループにグループ分けする車両データ分類部230を備えている。
【0060】
本実施の形態の車両データ分類部230は、記憶装置220に蓄積された車両データ群を、カーブや交差点等の交通要素、各交通要素により区画される所定の走行区間、及び連続する交通要素や走行区間を包含する走行エリアの少なくとも1つを単位として、記憶装置220に蓄積されている車両データ群をグループ分けする。これにより、記憶装置220に記憶されている車両データ群は、例えば、共通する走行エリアでの運転操作を示すデータ単位に分割されて、運転レベルの別にグループ分けされる。またこれにより、記憶装置220に記憶されている車両データ群は、例えば、共通する走行エリア中に存在する或るカーブでの運転操作を示すデータ単位や連続する交差点で区切られる走行区間での運転操作を示すデータ単位に細分化されて、運転レベルの別にグループ分けされる。なお、こうした交通要素や走行区間、走行エリア等の走行環境は、例えば、車両データに含まれている、上記GPS108の検出結果である緯度経度情報や上記カーナビゲーションシステム109から取得された情報に基づいて特定される。
【0061】
また、本実施の形態では、車両データのグループ分けの基準となる評価基準は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられている。
【0062】
ここでの例では、燃費が評価項目であるときには、車両データ群をレベル分けする評価基準として例えば「15km/l」が設定されている。そして、上記エンジンECU107の検出結果として車両100の車両データに含まれている燃料噴射信号から求まる燃費が、評価基準「15km/l」以上であるときには、同車両データが運転レベル「高」であるとして評価される。一方、車両データに含まれている燃料噴射信号から求まる燃費が、評価基準「15km/l」未満であるときには、同車両データが運転レベル「低」であるとして評価される。
【0063】
また、或る交通要素や所定の走行区間を法定速度の範囲内で車両が走行したときにおいて、それら交通要素や所定の走行区間に車両が進入してから通過するまでに要した時間が、所定の旅行時間以内である車両データについては、同車両データが運転レベル「高」であるとして評価される。一方、交通要素や所定の走行区間に車両が進入してから通過するまでに要した時間が、所定の旅行時間を超える車両データについては、同車両データが運転レベル「低」であるとして評価される。
【0064】
また一方、加速度センサ106の検出結果から求まる車両100の進行方向の横方向における加速度の変化量である躍度についても運転レベルを評価する所定の基準値が規定されており、同躍度と同基準値とをもとに、各車両データがそれぞれ運転レベル「高」、運転レベル「低」として評価される。
【0065】
さらに、アクセルセンサ101やブレーキセンサ102の検出結果から求まる急加速や急減速等の急制動の有無や発生頻度、すなわち車両100の挙動についても運転レベルを評価する基準値が規定されている。そして例えば、急制動の発生頻度が所定の閾値未満である車両データについては運転レベル「高」として評価されるとともに、急制動の発生頻度が所定の閾値以上である車両データについては運転レベル「低」として評価される。
【0066】
なお、本実施の形態では、記憶装置220に蓄積されている車両データ群は、例えば「燃費」を評価項目として運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つのグループにグループ分けされるとともに、その評価結果を示す情報が車両データの各々に関連付けられる。
【0067】
そして、車両データ分類部230は、評価基準に基づきグループ分けした車両データ群を、同車両データ分類部230による分類結果が記憶される分類結果格納部240に出力する。
【0068】
分類結果格納部240は、車両データ分類部230から入力された車両データを、車両データ分類部230による分類結果に応じて各別に保存する。本実施の形態の分類結果格納部240は、例えば、車両データ分類部230により運転レベル「高」と評価された車両データが格納される第1格納領域241と、車両データ分類部230により運転レベル「低」と評価された車両データが格納される第2格納領域242とを有している。これにより、第1格納領域241に、車両データ分類部230により運転レベル「高」と評価された車両データ群DAが蓄積されるとともに、第2格納領域242には、車両データ分類部230により運転レベル「低」と評価された車両データ群DBが蓄積される。
【0069】
また、車両データ解析センター200は、こうした分類結果格納部240に各別に記憶された車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する車両データの特徴量を抽出する車両データ解析部250を備えている。
【0070】
本実施の形態の車両データ解析部250は、時系列データとしての車両データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部251を有している。正規化演算部251は、車両データの正規化に際し、第1格納領域241に格納されている様々な走行エリアを走行した車両から収集された車両データ群DAの中から、例えば、所定の曲率半径を有するカーブについての車両データを第1格納領域241から読み込む。また、正規化演算部251は、第1格納領域241から読み込んだ車両データ群DAにて示される走行環境と、共通もしくは類似する走行環境のもとで取得された車両データ群を第2格納領域242に格納されている車両データ群DBの中から読み込む。これにより、例えば、或る走行経路中に存在する或るカーブで低燃費(省燃費)を実現した運転操作を示す車両データ群と、同カーブと共通もしくは類似する形状のカーブで高燃費の要因となった運転操作を示す車両データ群とが、分類結果格納部240から読み込まれる。
【0071】
このように、本実施の形態の正規化演算部251は、各車両データに含まれている交通要素を示す情報や走行区間を示す情報もしくは走行エリアを示す情報をもとに、共通もしくは類似する交通要素及び走行区間及び走行エリアでの運転操作を示す車両データを、分類結果格納部240から読み込む。
【0072】
こうして、例えば、図2(a)に例示するように、或る交通要素や或る走行区間、或る走行エリアでの上記各センサ101〜106等の検出結果、すなわち、車両100の運転要素であるアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等の複数種の操作機器の操作態様の推移を示す時系列データが分類結果格納部240から読み込まれる。
【0073】
なお、図2(a)に実線で示す運転レベル「高」と評価された車両データ群DAと、同図2(a)に一点鎖線で示す運転レベル「低」と評価された車両データ群DBとは、各車両データ群DA及びDBの収集源となった車両で行われた運転操作が異なるために、それぞれ異なる特徴量を有したものとなっている。また、この車両データに含まれる特徴量とは、所定のタイミングでのアクセルオフ、ブレーキオンとされたタイミングやその踏込み量の変化、及びステアリングの操舵角度の変化等、車両100に搭載される各操作機器である運転要素の操作態様の特徴を示したものである。そして、車両データの収集源となる車両100では、こうした各運転要素の操作態様の特徴に応じて、燃費、所定の走行区間等での旅行時間、急制動の有無、及び同車両100の横方向における躍度等が変化するようになっている。
【0074】
また、本実施の形態の車両データは、上記各センサ101〜106等の検出結果が時系列的に記録されたものである。このため、図2(a)からも明かなように、たとえ共通もしくは類似する交通要素や走行区間、走行エリアの始点を通過した各車両から取得されたものであっても、各車両データの取得源となる各車両の走行速度等の相違に起因して、各車両データのデータ長は相違したものとなっている。すなわち、各車両データの取得源となる各車両が或る交通要素や走行区間、走行エリアに進入してから、それら交通要素や走行区間、走行エリアを通過するまでに要した旅行時間は、各車両の走行速度等の相違に起因して、各々相違していることを示している。
【0075】
そこで、本実施の形態の正規化演算部251は、共通もしくは類似する走行環境のもとで取得された車両データ群DA及びDBを第1格納領域241及び第2格納領域242から読み込むと、それら読み込んだ車両データ群DA及びDBを走行位置に基づいて正規化する。これにより、例えば、図2(b)に例示するように、各車両データのデータ長が一致するようになる。そして、正規化演算部251は、図1に示すように、この正規化した車両データを、同車両データを周波数分解する周波数分解部252に出力する。
【0076】
周波数分解部252は、正規化演算部251から正規化された車両データ群が入力されると、このデータ群を例えばウェーブレット変換することにより、同データ群を複数の周波数帯に周波数分解する。これにより、例えば、正規化演算部251により正規化された1つの車両データは、所定の周波数成分毎に分解されることで複数のデータに分解される。そして、こうした周波数分解が正規化演算部251により正規化された車両データ群の各々に対して行われることにより、車両データの運転レベルを異ならしめる要因となる特徴量の抽出に際し、同抽出の候補となる大量の候補データが生成される。また、こうした周波数分解を通じて、車両データに局所的に含まれる周波数成分(特徴量)も顕在化されるようになる。こうして、周波数分解を通じて生成された候補データ群は、同候補データ群に対して窓関数に基づく演算を実行する窓関数演算部253に出力される。
【0077】
窓関数演算部253は、周波数分解部252から入力された候補データ群の各々に対して窓関数に基づく演算を実行することにより、各候補データ群に含まれている特徴量を顕在化する。そして、窓関数演算部253は、この窓関数に基づく演算を通じて、特徴量を顕在化した候補データ群を、同顕在化された特徴量が上記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める影響度算出部254に出力する。
【0078】
影響度算出部254は、窓関数演算部253により特徴量が顕在化された候補データ群が入力されると、運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類されたデータのうちの共通する特徴量の差分の合計値をもとに、車両データ群DA及び車両データ群DB間で運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行う。なお、本実施の形態の影響度算出部254は、例えば、周知の学習アルゴリズムである「adaboost」による学習を通じて、車両データの特徴量の重み付けを行う。そして、この重み付けを通じて、車両データ群DA及び車両データ群DBに含まれる特徴量のうち、運転レベル「高」にレベル分けされた車両データ群DAと運転レベル「低」レベル分けされた車両データ群DBとの間で相違する特徴量が抽出されるようになる。
【0079】
また、本実施の形態の影響度算出部254は、重み付けした車両データの特徴量と、同特徴量が示す運転操作が行われた走行地点との対応関係を求める。なお、特徴量と走行地点との対応関係は、車両データに含まれている緯度経度情報や各種交通要素及び走行区間及び走行エリアを示す情報に基づいて求められる。同様に、本実施の形態の影響度算出部254は、重み付けした車両データの特徴量と、上記評価項目に基づく車両データの評価結果との対応関係を求める。なお、この特徴量と評価結果との対応関係は、各候補データの元となる車両データに関連付けられている上記評価基準に基づく評価結果をもとに求められる。
【0080】
そして、影響度算出部254は、同影響度算出部254による演算結果を、車両データの解析結果として解析結果記憶部260に出力する。これにより、解析結果記憶部260には、運転レベルが相反する車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する特徴量、同特徴量に対する重み付けを示す情報、同特徴量と走行地点と上記評価項目に基づく車両データの評価結果との対応関係を示す情報が、それぞれ蓄積されることとなる。
【0081】
以下、本実施の形態の車両データの解析方法及び車両データの解析システムによる車両データの作用について、図3〜図9を参照して説明する。
図3に示すように、まずステップS101において、複数台の車両から各車両で行われた運転操作を対応する走行環境とともに示す車両データが収集される。これにより、例えば、図4に示すように、走行区間Sec1、カーブCv1、走行区間Sec2、カーブCv2、及び走行区間Sec3が順に連なる走行エリアAr1を走行した複数台の車両の、同走行エリアAr1における車両データが収集される。すなわち、同走行エリアAr1を走行した各車両の各ドライバにより行われたアクセルペダルやブレーキペダル、操舵角度等の各種運転要素の操作態様を時系列的に示す車両データが収集される。
【0082】
そして、この収集された車両データは、図3にステップS102として示すように、例えば、「燃費」を評価項目として、低燃費に寄与した運転操作を示す車両データ群DA(運転レベル「高」)と、逆に高燃費の要因となった運転操作を示す車両データ群DB(運転レベル「低」)とに分類される。
【0083】
これにより、図5(a)に示すように、複数台の車両が上記走行エリアAr1を走行したときの各車両の操舵角度の推移を示す各時系列データは、図5(a)にそれぞれ実線と破線とで示すように、運転レベル「高」のグループに属する時系列データSt1と運転レベル「低」のグループに属する時系列データSt2とに分類される。
【0084】
なお、これら時系列データSt1及びSt2は、異なる運転操作のもとに取得されたデータであることから、時系列データSt1に含まれる特徴量と時系列データSt2に含まれる特徴量とは、相違するものとなっている。そして、この相違する特徴量が、時系列データSt1と時系列データSt2との間で運転レベルが相違する要因となっている。
【0085】
また、これら時系列データSt1及びSt2は、共通する走行エリアAr1を走行した車両から取得されたものの、各車両の走行速度の相違に起因して同走行エリアAr1を通過するまでに要した時間が相違し、時間軸で示されるデータ長が相違するようになっている。
【0086】
そこで、図3にステップS103として示すように、運転レベルの別にグループ分けされた車両データ群が走行位置に基づいて正規化される。これにより、上記走行エリアAr1での操舵角度の推移を示す時系列データSt1及びSt2は、図5(b)に例示するように、同走行エリアAr1の始点Psからの終点Pgまでの各走行位置を基準に正規化されることで、比較可能なデータ形式に変換される。そして、こうした正規化が、先のステップS102にてグループ分けされた車両データ群DA及びDBの全ての車両データに対して実行される。
【0087】
次に、図3にステップS104として示すように、正規化された車両データ群DA及びDBに含まれる各車両データは、例えばウェーブレット変換を通じて周波数分解されることによって、主に高周波成分を含んだデータと、図6(a)に例示する主に低周波成分を含んだデータとに分解される。そして、主に低周波成分を含んだデータはさらに、図6(b)〜(e)に例示するように、それぞれ異なる周波数成分を含んだデータα1、β1〜β3に分解される。なお、この図6(b)〜(e)から明かなように、所定の周波数成分を含んだデータα1、β1〜β3は、所定の周波数成分によって示される特徴量を有したものとなっている。そして、同様に、図6(a)に例示した主に低周波成分を含んだデータとは相反するデータ、すなわち主に高周波成分を含んだデータについても、異なる周波数成分を含んだ複数のデータへとさらに分解される。これにより、1つの車両データから、運転レベルが相違する要因を示す特徴量の抽出に際して、同抽出の候補となる複数の候補データが生成されるようになる。そして、こうした周波数分解が、先のステップS103にて正規化された車両データ群DA及びDBの全ての車両データに対して実行されることにより、大量の候補データが生成されることとなる。
【0088】
その後、図3にステップS105として示すように、この生成された候補データに含まれる特徴量を顕在化する処理が、例えば以下の式に基づく窓関数演算を通じて実行される。
【0089】
【数1】
この処理ではまず、例えば先の図6(b)の領域5bにおけるデータα1の拡大図を図7に示すように、同データα1のうち、上記走行エリアAr1の始点Ps(距離「0」)から所定の走行地点(距離「30」)の範囲に対応するデータが選定される。そして、この選定されたデータに対して、上記式に基づく窓関数演算が実行される。これにより、データα1のうち、距離「0」〜「15」の範囲のデータと、距離「16」〜「30」の範囲のデータとの差分が求められ、各範囲のデータに包含される特徴量が顕在化されるようになる。こうして、データα1の全範囲、すなわち、先の図4に示した走行エリアAr1の始点Psから終点Pgに対応するデータに対して窓関数に基づく演算が実行されることにより、同データα1に含まれる全ての特徴量が顕在化されるようになる。また同様に、その他、周波数分解されたデータβ1〜β3等に対しても窓関数が実行されることにより、各データβ1〜β3等に含まれる特徴量が顕在化されるようになる。そして、こうした特徴量の顕在化が、先のステップS104にて周波数分解された車両データ群DA及びDBの全ての車両データに対して実行される。
【0090】
そして、図3にステップS106として示すように、学習アルゴリズムによる学習を通じて、運転レベル「高」に属する車両データ群DAから生成された候補データ群と、運転レベル「低」に属する車両データ群DBから生成された候補データ群との間で相違する特徴量が選定される。また、同学習を通じて、各特徴量が上記評価基準に基づく評価結果に及ぼす影響度が算出されることにより、各特徴量の重み付けが行われる(ステップS107)。
【0091】
この結果、図8(a)に例示するように上記評価項目が例えば「燃費」であるときには、この燃費に最も影響を及ぼす特徴量として、先の図4に対応する図として図8(b)に示すように、走行エリアAr1に包含されるカーブCv2のうち、走行地点Pa3におけるステアリングの操作態様の特徴を示す特徴量「操舵角度α1」が特定される。すなわち、この操舵角度α1が、燃費をもとに評価される車両データに対する影響度が、上記生成された候補データ群に含まれる各特徴量の中で最も大きい特徴量であると特定される。なお、走行地点Pa3は、同カーブCv2の始点から所定の位置に存在する地点を示している。
【0092】
また、この操舵角度α1の次に燃費に影響を及ぼす特徴量として、図8(b)に示す走行エリアAr1のうち、走行区間Sec2の始点から所定の位置に存在する走行地点Pa2におけるステアリングの操作態様を示す特徴量「操舵角度β3」が特定される。
【0093】
さらに、この操舵角度β3の次に燃費に影響を及ぼす特徴量として、図8(b)に示す走行エリアAr1のうち、走行区間Sec1と同走行区間Sec1に後続するカーブCv1とを跨ぐ走行地点Pa1におけるアクセルペダルの操作態様を示す「アクセルβ3」が特定される。
【0094】
そして、こうした演算が、車両データの収集源となった各車両が走行した例えば走行エリアAr1〜Arn毎に行われることにより、図8(a)に示すように、各走行エリアAr1〜Arnに存在する各交通要素や各走行区間において燃費に影響を及ぼす特徴量が重み付けされる。また、同図8(a)に示すように、この重み付けされた各特徴量と各走行地点との対応関係が適宜求められる。
【0095】
こうして本実施の形態では、例えば「燃費」を評価項目として車両データ群が運転レベルの別にグループ分けされたときには、車両データ群の中で燃費が相違する要因となる各運転要素の操作態様を示す特徴量が、各走行エリアに包含される走行地点毎に、特定されることとなる。また併せて、各走行地点を包含する交通要素や走行区間も特定されることとなる。
【0096】
次に、上記周波数分解部252による周波数分解処理について図9を参照して詳述する。
図9に示すように、本処理ではまず、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリング等々の複数種の運転要素の中で、周波数分解すべき一種類の運転要素が選択される(ステップS201)。これにより、上記正規化された各種運転要素に基づく車両データ群のうち、例えばアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示す車両データ群が選択される。
【0097】
次いで、この選択されたアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示すN個の車両データの数をカウントする変数iに「0」が代入され(ステップS202)、このアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示すN個の車両データの中から1つの車両データが選択される(ステップS203)。
【0098】
その後、この選択された1つの車両データが周波数分解され(ステップS204)、上記変数iが加算される(ステップS205)。そして、この選択された1つの車両データが周波数分解されると、未だ周波数分解されていないアクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示す車両データが順次周波数分解されるとともに、変数iが適宜加算される(ステップS206:NO、ステップS203〜S205)。
【0099】
こうして、アクセルペダルの踏込み量の時系列的な推移を示すN個の車両データの全てが周波数分解されたことにより変数iが「N」に達すると(ステップS206:YES)、周波数分解が終了したアクセルペダル以外の運転要素が新たに選択される(ステップS201)。そして同様に、この選択された運転要素の車両データ群が順次周波数分解されるといった処理が繰り返し実行されることにより、記憶装置220に記憶されている全ての種類の運転要素に基づく車両データ群が周波数分解されることとなる(ステップS202〜S206)。
【0100】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両データの解析方法及び車両データの解析システムによれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)車両データとして複数種の運転操作に基づく複数の車両データを収集し、この収集した車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき2つのグループにグループ分けした。そして、このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することとした。これにより、車両データに含まれる運転操作の特徴を定量的に解析することができるようになる。
【0101】
(2)また、上記収集された車両データ群は、複数種のドライバの運転操作のもとに実際の道路上を走行した車両から取得されたものであるから、同車両データ群を用いることにより、実際の走行環境や同走行環境のもとで行われた運転操作が反映された走行モデルを生成することも可能である。そしてこの場合には、上記抽出された車両データの特徴量を加味して模範となる走行モデルを生成することより、運転レベルを決定する特徴量を盛り込んだ走行モデルを生成することが可能となる。すなわち、上記車両データの解析結果を、車両の走行環境や、ドライバの運転技量、ドライバに特有の運転操作パターン等に応じた走行モデルの生成に適用することが可能となる。
【0102】
(3)上記抽出した車両データの特徴量が、上記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることとした。これにより、各々グループ分けされた車両データの間で相違する特徴量のみならず、この特徴量が、評価基準にて評価される車両データ、換言すれば、同評価基準に基づく評価に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0103】
(4)上記交通要素、走行区間、及び走行エリアを単位として、車両データのグループ分けと車両データの特徴量の抽出とを行った。このため、交通要素、走行区間、及び走行エリアのもとで行われる一連の運転操作が反映される車両データの特徴量を、交通要素単位、走行区間単位、及び走行エリア単位で抽出することが可能となる。これにより、交通要素や走行区間、走行エリアを単位として、各車両データ間で運転レベルが相違する要因を特定することが可能となる。またこれにより、1つの車両データの中から、交通要素毎、走行区間毎、及び走行エリア毎の特徴量を抽出することが可能となり、車両データ解析センター200に収集された車両データ群の中からより多くの特徴量を抽出することが可能となる。
【0104】
(5)上記各センサ101〜106等によりドライバによる運転操作を検出した。そして、この検出結果、並びに、ドライバによる運転操作が行われた走行地点を特定可能な緯度経度情報や各種道路地図に関する情報を、車両100の車両データとして取り扱うこととした。さらに、先の図8(a)及び(b)に示した態様で、運転操作の特徴量、走行地点、及び評価基準の各々の対応関係をさらに求めることとした。このため、車両データをより詳細に解析することが可能となり、評価基準に基づく運転レベルが相違する要因や同要因が評価基準に及ぼす影響を、走行地点レベルにまで解析することが可能となる。
【0105】
(6)上記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化した。このため、走行速度等が相違する車両から取得された各時系列データについて、高精度に対比可能なレベルに変換することができる。これにより、より多くの車両データ(時系列データ)を解析対象とすることが可能となり、こうした車両データ間で相違する特徴量をより多く抽出することが可能となる。
【0106】
(7)上記特徴量として、ドライバによる運転操作態様を示す複数の運転要素の特徴を示すデータを対象とし、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリング等々の複数種の運転要素が評価基準に及ぼす影響度を運転要素の別に求めることとした。これにより、燃費、車両挙動、及び車両100の横方向における躍度等に影響を与える運転要素が複数存在したとしても、各車両データの運転レベルを異ならしめる複数の要因を的確に特定することが可能となる。また、これにより、車両データに局所的に含まれる特徴量を的確に抽出することが可能になるとともに、各運転要素が評価基準に及ぼす影響度も併せて特定することが可能となる。
【0107】
(8)上記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを、車両データに対する周波数分解を通じて生成することとした。このため、車両データに含まれている様々な周波数成分を抽出することが可能となり、運転操作が反映された様々な特徴量を顕在化することが可能となる。これにより、上記グループ化された車両データ間で相違する特徴量を抽出する上で、その候補となる特徴量を含んだ候補データを、限られた車両データの中から大量に生成することが可能となる。
【0108】
(9)上記車両データの特徴量の抽出に先立ち、窓関数に基づく演算を通じて特徴量の顕在化を行うこととした。これにより、車両データに含まれる微小な特徴量についても的確に抽出することが可能となり、運転レベルの別にグループ分けされた車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する特徴量を的確に抽出することが可能となる。
【0109】
(10)上記評価基準により評価すべき評価項目として、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度を用いた。これにより、上記各評価項目を指標として分類される車両データの特徴量を抽出することで、燃費、旅行時間、スムーズな運転操作(急制動の有無)、及び躍度等が車両データ間で相違する要因を特定することが可能となる。
【0110】
(11)上記評価基準に基づくグループ分けを通じて、複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群DA及びDBに分類し、この分類した車両データ群DA及びDB間で運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行うこととした。このため、グループ分けされた車両データ群DA及びDB間で運転レベルが相違する要因を、評価基準に対する影響度の順に特定することが可能となる。これにより、運転レベル「低」とされた車両データにて示される運転操作の改善要素を、改善すべき優先度の順に把握することが可能となる。
【0111】
なお、上記実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を、車両100の走行の終了に伴い同車両100のアクセサリーポジションがオン状態からオフ状態に切り替えられたことを条件に行った。これに限らず、例えば、車両100のアクセサリーポジションがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングや、車両100が所定の交通要素や所定の走行区間を通過したタイミングで、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。同様に、予め定められた周期で、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。またこの他、車両データ解析センター200から車両100に対して要求があったときに、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。
【0112】
・上記車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を、車載通信機120とセンター通信機210との間での無線通信を通じて行った。これに限らず、例えばUSBメモリ等の外部記憶媒体を介した有線通信等によって、車両100から車両データ解析センター200への車両データの送信を行うようにしてもよい。要は、車両100で取得された車両データを車両データ解析センター200に送信可能なものであれば、車両データの搬送手段とすることができる。
【0113】
・上記車両データの特徴量の重み付けを、学習アルゴリズムである「adaboost」による学習を通じて行った。これに限らず、この重み付けに用いる手段としては、運転レベルが相違する車両データ群DAと車両データ群DBとの間で相違する特徴量の重み付けを行うことが可能なものであればよく、各種学習アルゴリズムや各種演算を用いることが可能である。
【0114】
・上記分類した車両データ群DA及びDB間で相違する車両データの特徴量の重み付けを通じて、車両データの特徴量が評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることとした。これに限らず、同影響度として、例えば「影響度:大」、「影響度:中」、「影響度:小」、及び「影響度:無」の4段階に分類された影響度を求めるようにしてもよい。この場合には、例えば、共通もしくは類似する交通要素、走行区間、及び走行エリアでの車両データ群の特徴量のうち、先の図5(a)及び(b)に例示したデータSt1とデータSt2との間で相違する頻度が相対的に高い特徴量ほど、また、各データ間での差が顕著になる特徴量ほど、「影響度:大」として求められる。一方、共通もしくは類似する交通要素、走行区間、及び走行エリアでの車両データ群の特徴量のうち、先の図5に例示したデータSt1とデータSt2との間で相違する頻度が相対的に低い特徴量ほど、また、各データ間での差が微小な特徴量ほど、「影響度:小」として求められる。また一方、グループ分けされた車両データ群DAと車両データ群DBとの間で共通する特徴量については、車両データ間で運転レベルが相違する要因となり得ない「影響度:無」として求められる。
【0115】
・上記車両データ解析センター200に収集された車両データ群を、上記評価基準に基づき運転レベル「高」と運転レベル「低」との2つのグループに分類した。これに限らず、同車両データ群を、上記評価基準に基づき3以上のグループに分類するようにしてもよい。そして、例えば、車両データ群が運転レベルの高い順に第1〜第3の3つのグループに分類されるときには、例えば第1及び第2のグループ間で相違する車両データの特徴量が抽出される。そしてこの場合には、この抽出された特徴量が、運転レベルが最も高い第1のグループと、その次に運転レベルが高い第2のグループとの間で運転レベルが相違する要因であるとして特定されることとなる。同様に、第2及び第3のグループ間で相違する車両データの特徴量が、第2及び第3のグループ間で運転レベルが相違する要因として特定されることとなる。これにより、車両データの運転レベルが複数の運転レベルにグループ分け可能な場合であれ、各グループ間で運転レベルが相違する要因を特定することが可能となる。
【0116】
・上記分類した車両データ群DA及びDB間で相違する車両データの特徴量の重み付けを、図8(a)に示したように、評価項目を「燃費」として行った。さらに、図10に示すように、躍度、車両挙動、旅行時間のそれぞれを評価項目として車両データ群のグループ分けを行い、このグループ分けした車両データ間で相違する特徴量の重み付けを行うようにしてもよい。この場合には、燃費のみならず、躍度、車両挙動、旅行時間のそれぞれの評価項目に基づき評価される運転レベルが相違する要因を走行地点毎に特定することが可能となる。
【0117】
・上記車両データ群のグループ分けを、燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度のうち、1つの評価項目に基づいて行った。これに限らず、2つ以上の評価項目についての評価基準に基づき車両データ群のグループ分けを行ってもよい。この場合には、例えば、燃費と車両挙動とが評価項目であるときには、低燃費かつ車両挙動が少ない旨を示す車両データが運転レベル「高」として評価され、その他の車両データについては運転レベル「低」として評価される。そして、それら運転レベル「高」と運転レベル「低」との間で相違する特徴量を抽出することにより、複数の評価項目に設けられた評価基準を同時に達成可能な運転操作を示す車両データの特徴量を抽出することが可能となる。
【0118】
・上記評価項目として、燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度を採用した。この他、車両データのグループ分けに用いる評価項目とは、ドライバの運転技量が反映されるものであればよく、例えば、運転操作の安定性、車間距離等を評価項目とすることができる。なお、車間距離を評価項目とするときには、例えば、車両データの取得源となった車両と同車両の進行方向前方を走行する車両との車間距離が、所定の距離以上に保たれているか否かを評価基準とすることができる。同様に、車両データの取得源となった車両と同車両の進行方向前方を走行する車両との車間距離の変化量が、一定以内であるか否かを評価基準とすることができる。
【0119】
・上記車両データの特徴量の顕在化を、窓関数に基づく演算を通じて行った。これに限らず、車両データに含まれる特徴量を顕在化可能な演算であれば、車両データの顕在化に際して採用可能である。また、評価基準に基づきグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することができればよく、上記窓関数演算部253を割愛する構成とし、車両データの特徴量を顕在化する演算を行わないこともできる。
【0120】
・上記車両データの周波数分解を、ウェーブレット変換を通じて行った。これに限らず、例えば、離散コサイン変換や、フーリエ変換等によって車両データを周波数分解することもできる。なお、この場合には、可逆変換可能な変換手法が好ましい。要は、車両データの周波数を分解することにより、複数の周波数帯の周波数成分を抽出可能な手段であればよい。また、評価基準に基づきグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出することができればよく、上記周波数分解部252を割愛する構成とし、車両データに対する周波数分解を行わないこともできる。
【0121】
・上記分類結果格納部240に、運転レベルの別にグループ分けされた車両データが記憶される第1格納領域241と第2格納領域242とを設ける構成とした。これに限らず、分類結果格納部240を割愛するとともに、車両データ分類部230により運転レベルを識別可能な情報を記憶装置220に記憶されている各車両データに付するようにしてもよい。この場合には、各々相反する運転レベルを示す情報が付された車両データ群が、車両データ分類部230から車両データ解析部250に出力される。そして、車両データ解析部250では、各車両データに付されている運転レベルを識別可能な情報に基づき、例えば運転レベルが相反する車両データ間で相違する特徴量が抽出されることとなる。
【0122】
・上記車両データ解析センター200に収集された車両データ群から、ドライバによる運転操作態様を示すアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等の複数の運転要素の特徴を示す特徴量を抽出することとした。これに限らず、抽出の対象とする特徴量として、例えばアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等のうち、1つの運転要素の特徴を示す特徴量を、車両データ群から抽出するようにしてもよい。
【0123】
・上記各実施の形態では、ドライバの運転操作が反映される車両データを、アクセルセンサ101、ブレーキセンサ102、操舵角センサ103、ジャイロセンサ104、車速センサ105、及び加速度センサ106の検出結果に基づき取得した。この他、例えば、車両100の旋回方向への回転角の変化速度であるヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出結果に基づき、車両データを取得するようにしてもよい。この場合には、上記特徴量として、車両のヨーレートに起因する運転レベルの相違要因が車両データから抽出されることとなる。またこの他、ドライバによる運転操作や同運転操作が反映される信号を取得可能な手段であれば、車両データの取得手段として採用することができる。
【0124】
・上記車両データ解析部250に、車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部251を設ける構成とした。これに限らず、同一もしくは類似する走行環境での運転操作態様を示す時系列データのデータ長が対比可能な態様で近似するときには、この正規化演算部251を割愛する構成とし、車両データとしての時系列データの正規化を行わないこともできる。
【0125】
・上記抽出した車両データの特徴量、走行地点、及び評価基準の各々の対応関係を求めることとした。これに限らず、例えば、車両データの特徴量と走行地点との対応関係のみ、あるいは、車両データの特徴量と評価基準との対応関係のみを求めるようにしてもよい。
【0126】
・上記走行地点を識別可能な情報を含んだ車両データを車両100から収集することとした。これに限らず、走行地点に代えて、交通要素や走行区間、走行エリアのみを識別可能な情報を含んだ車両データを車両100から収集するようにしてもよい。そして、この収集した交通要素、走行区間、走行エリアと、車両データの特徴量との対応関係を求めるようにしてもよい。同様に、この収集した交通要素、走行区間、走行エリアと、評価基準との対応関係を求めるようにしてもよい。
【0127】
・上記車両データの特徴量の重み付けを、先の図8(a)に示したように、走行エリアAr1〜Arnに包含される走行地点毎に行った。これに限らず、この図8(a)に対応する図として図10に示すように、上記車両データの特徴量の重み付けを、例えば道路線形等が共通もしくは類似するカーブや交差点等の交通要素単位で行ってもよい。また、同図10に示すように、上記車両データの特徴量の重み付けを、例えば道路線形等が共通もしくは類似する走行区間単位で行ってもよい。これらの場合には、交通要素毎や走行区間毎に、影響度の大きい特徴量が順位付けされることにより、交通要素単位や走行区間単位での、より詳細な特徴量の抽出が可能となる。また、この場合には、異なる走行エリアを走行した車両から収集された車両データであれ、道路線形等が類似していれば、グループ間で相違する特徴量の抽出に際してグループ分けの対象とすることが可能となる。これによって、より広範囲な走行エリアから収集された車両データから、より多くの特徴量を抽出することが可能となる。
【0128】
・上記交通要素、走行区間、及び走行エリアを単位として、車両データのグループ分け及び車両データの特徴量の抽出を行うこととした。これに限らず、交通要素、走行区間、及び走行エリアの少なくとも1つを単位として車両データのグループ分け及び車両データの特徴量の抽出を行うものであればよい。
【0129】
・上記評価基準に基づくグループ分けを、共通もしくは類似する走行環境での運転操作態様を示すデータを対象として行った。これに限らず、例えば、共通する走行環境での運転操作態様を示すデータのみを対象として、上記評価基準に基づくグループ分けを行うようにしてもよい。
【0130】
・車両データの収集源となる車両100の走行環境に関する情報として、カーブや交差点等の交通要素、走行区間、及び走行エリアに関する情報を設定した。さらに、車両100の走行環境に関する情報として、例えば、渋滞の発生頻度の高い走行エリアを示す情報、渋滞の発生頻度の高い走行時間帯、交通流が共通する時間帯、及び車両データにて示される運転操作が行われたときの天候等を示す情報、等々を設定することも可能である。そして、こうした情報をもとに特定される渋滞状況や天候等を加味して、上記車両データのグループ分け及び車両データの抽出を行うようにしてもよい。この場合には、車両データにて示される運転操作が行われた交通要素、走行区間、走行エリア等が共通し、かつ、同走行エリアでの渋滞状況や天候が共通する車両データ群が、グループ分け及び特徴量の対象とすべき車両データとして特定される。そして、この場合には、交通要素、走行区間、走行エリア等が共通し、かつ、渋滞状況や天候等、運転操作に影響を及ぼす要素が共通する車両データ群に対して、評価基準に基づくグループ分けや特徴量の抽出が行われることとなる。このため、走行環境の相違に起因する車両データ間での特徴量の相違とドライバの運転技量に起因する車両データ間での特徴量の相違とを、的確に識別することが可能となる。これにより、各ドライバの運転技量のみに起因する特徴量の相違、換言すれば、運転操作が行われた走行環境が同一であるにも拘わらず各車両データ間で運転レベルが相違する要因を、車両データ群からより的確に抽出することが可能となる。
【0131】
・上記車両データに、車両データの収集対象となる車両100の走行環境を示す情報を含めることとした。これに限らず、特徴量の抽出対象とする各車両データの推移に基づき、共通もしくは類似する走行環境下で収集された車両データを特定可能な場合には、上記GPS108やカーナビゲーションシステム109を割愛する構成とし、ドライバによる運転操作の推移を示すデータのみを、上記車両データとして収集することも可能である。
【0132】
・上記抽出した車両データの特徴量が、上記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求めることとした。これに限らず、上記評価基準に基づきグループ分けされたグループ間で相違する特徴量のみを、車両データ群から抽出するようにしてもよい。この場合であれ、この抽出される車両データの特徴量に基づき、各グループ間で運転レベルが相違する要因を定量的に特定することが可能となる。
【0133】
・上記車両データの特徴量を、車種を限定することなく、不特定多数の車両から収集された車両データ群から抽出することとした。これに限らず、ドライバの運転操作のみに起因する車両データの特徴量の相違を車両データ群から抽出する上では、同一の車種から収集された車両データ群のみを解析の対象としてもよい。この場合には、車両間の個体差が除去されることとなり、ドライバの運転技量の相違のみに起因する特徴量を的確に抽出することが可能となり、より高精度な解析が可能となる。
【0134】
・上記車両データを、複数台の車両から取得することとした。これに限らず、解析の対象とする車両データとは、一台の車両から取得されたものであってもよく、運転操作さえ異なれば同一のドライバの運転操作に基づき取得されたものであってもよい。要は、上記評価基準に基づきグループ分け可能な、複数種の運転操作が反映された車両データであれば、解析の対象とすることができる。
【符号の説明】
【0135】
100…車両、101…アクセルセンサ、102…ブレーキセンサ、103…操舵角センサ、104…ジャイロセンサ、105…車速センサ、106…加速度センサ、107…エンジンECU、108…GPS、109…カーナビゲーションシステム、110…車両データ記憶領域、120…車載通信機、200…車両データ解析センター、210…センター通信機、220…記憶装置、230…車両データ分類部、240…分類結果格納部、241…第1格納領域、242…第2格納領域、250…車両データ解析部、251…正規化演算部、252…周波数分解部、253…窓関数演算部、254…影響度算出部、260…解析結果記憶部、Ar1−Arn…走行エリア、Cv1、Cv2…カーブ(交通要素)、Pg…走行エリアの終点、Ps…走行エリアの始点、Pa1〜Pa3…走行地点、St1、St2…時系列データ(車両データ)、Sec1〜Sec3…走行区間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析方法において、
前記車両データとして複数種の運転操作に基づく複数の車両データを収集するとともに、この収集した車両データを運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けし、このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出する
ことを特徴とする車両データの解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両データの解析方法において、
前記抽出した車両データの特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める
ことを特徴とする車両データの解析方法。
【請求項3】
前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、それら交通要素もしくは走行区間もしくは走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分けと前記車両データの特徴量の抽出とを行う
請求項1または2に記載の車両データの解析方法。
【請求項4】
前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、
前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準に基づく前記車両データの評価結果の各々の対応関係をさらに求める
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項5】
前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項6】
前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、
前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求める
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項7】
前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを、前記車両データに対する周波数分解を通じて生成する
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項8】
前記車両データの特徴量の抽出に先立ち、窓関数に基づく演算を通じて特徴量の顕在化を行う
請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項9】
前記評価基準は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられたグループ分けのための基準である
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項10】
前記評価基準に基づくグループ分けを通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、
前記車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類されたデータのうちの共通する特徴量の差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行う
請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項11】
ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析システムにおいて、
前記車両データとして複数種の運転操作に基づく車両データが記憶される記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けする車両データ分類部と、
前記車両データ分類部によりグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出する車両データ解析部と、を備える
ことを特徴とする車両データの解析システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車両データの解析システムにおいて、
前記車両データ解析部はさらに、前記抽出した特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める影響度算出部を備える
ことを特徴とする車両データの解析システム。
【請求項13】
前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、
前記車両データ分類部及び前記車両データ解析部は、前記交通要素もしくは前記走行区間もしくは前記走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分け及び前記車両データの特徴量の抽出を行う
請求項11または12に記載の車両データの解析システム。
【請求項14】
前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、
前記車両データ解析部は、前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準に基づく前記車両データの評価結果の各々の対応関係をさらに求める
請求項11〜13のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項15】
前記車両データ解析部はさらに、前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部を備える
請求項11〜14のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項16】
前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、
前記車両データ解析部は、前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求める処理をさらに実行する
請求項11〜15のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項17】
前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する周波数分解を通じて前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを生成する周波数分解部を備える
請求項11〜16のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項18】
前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する窓関数に基づく演算を通じて特徴量を顕在化する窓関数演算部を備える
請求項11〜17のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項19】
前記車両データ分類部は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられた評価基準に基づいて、前記車両データをグループ化する
請求項11〜18のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項20】
前記車両データ分類部は、前記評価基準に基づくグループ化を通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、
前記車両データ解析部は、前記相違する車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類された共通する差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量を重み付けする処理を実行する
請求項11〜19のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項1】
ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析方法において、
前記車両データとして複数種の運転操作に基づく複数の車両データを収集するとともに、この収集した車両データを運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けし、このグループ分けしたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出する
ことを特徴とする車両データの解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両データの解析方法において、
前記抽出した車両データの特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める
ことを特徴とする車両データの解析方法。
【請求項3】
前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、それら交通要素もしくは走行区間もしくは走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分けと前記車両データの特徴量の抽出とを行う
請求項1または2に記載の車両データの解析方法。
【請求項4】
前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、
前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準に基づく前記車両データの評価結果の各々の対応関係をさらに求める
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項5】
前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項6】
前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、
前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求める
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項7】
前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを、前記車両データに対する周波数分解を通じて生成する
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項8】
前記車両データの特徴量の抽出に先立ち、窓関数に基づく演算を通じて特徴量の顕在化を行う
請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項9】
前記評価基準は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられたグループ分けのための基準である
請求項1〜8のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項10】
前記評価基準に基づくグループ分けを通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、
前記車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類されたデータのうちの共通する特徴量の差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量の重み付けを行う
請求項1〜9のいずれか一項に記載の車両データの解析方法。
【請求項11】
ドライバの運転操作が反映された車両データを解析する車両データの解析システムにおいて、
前記車両データとして複数種の運転操作に基づく車両データが記憶される記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された車両データを、運転操作のレベルの評価の指標である評価基準に基づき少なくとも2つのグループにグループ分けする車両データ分類部と、
前記車両データ分類部によりグループ分けされたグループ間で相違する車両データの特徴量を抽出する車両データ解析部と、を備える
ことを特徴とする車両データの解析システム。
【請求項12】
請求項11に記載の車両データの解析システムにおいて、
前記車両データ解析部はさらに、前記抽出した特徴量が前記評価基準にて評価される車両データに及ぼす影響度を求める影響度算出部を備える
ことを特徴とする車両データの解析システム。
【請求項13】
前記車両データには、交通要素もしくは走行区間もしくはそれら交通要素及び走行区間が連続する走行エリアを示す情報が含まれ、
前記車両データ分類部及び前記車両データ解析部は、前記交通要素もしくは前記走行区間もしくは前記走行エリアを単位として、前記車両データのグループ分け及び前記車両データの特徴量の抽出を行う
請求項11または12に記載の車両データの解析システム。
【請求項14】
前記車両データには、走行地点を示す情報が含まれ、
前記車両データ解析部は、前記抽出した車両データの特徴量、前記走行地点、及び前記評価基準に基づく前記車両データの評価結果の各々の対応関係をさらに求める
請求項11〜13のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項15】
前記車両データ解析部はさらに、前記車両データとしての時系列データを走行位置に基づいて正規化する正規化演算部を備える
請求項11〜14のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項16】
前記特徴量は、ドライバによる運転操作態様を示す1乃至複数の運転要素の特徴を示すものであり、
前記車両データ解析部は、前記運転要素が前記評価基準に及ぼす影響度を前記運転要素の別に求める処理をさらに実行する
請求項11〜15のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項17】
前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する周波数分解を通じて前記車両データの特徴量を示す上での元データとなる複数の候補データを生成する周波数分解部を備える
請求項11〜16のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項18】
前記車両データ解析部はさらに、前記車両データに対する窓関数に基づく演算を通じて特徴量を顕在化する窓関数演算部を備える
請求項11〜17のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項19】
前記車両データ分類部は、単位燃料量あたりの車両の走行距離である燃費、及び旅行時間、及び車両挙動、及び車両の横方向における躍度の少なくとも1つの評価項目に対して設けられた評価基準に基づいて、前記車両データをグループ化する
請求項11〜18のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【請求項20】
前記車両データ分類部は、前記評価基準に基づくグループ化を通じて、前記複数種の車両データを運転レベル「高」及び運転レベル「低」の2つの車両データ群に分類し、
前記車両データ解析部は、前記相違する車両データの抽出として、前記評価基準に基づき運転レベル「高」及び運転レベル「低」に各々分類された共通する差分の合計値をもとに、前記運転レベルが相違する車両データの特徴量を重み付けする処理を実行する
請求項11〜19のいずれか一項に記載の車両データの解析システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−242894(P2012−242894A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109453(P2011−109453)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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