説明

車両ドアの縦柱フレームの加工方法

【課題】 前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52とが隣接するタイプの車に於いて、両縦柱フレームの縁の部分に段差が生じないようにする。
【解決手段】 意匠部121と、袋部124と、意匠部121と袋部124を接続する接続部123とを備えた車両ドアの縦柱フレーム12の加工方法に於いて、意匠部121が車両前後方向で第1の曲率を成す凸形状にロール成形するステップと、意匠部121の車両前後方向の幅が長手方向で変化するようにカットするステップと、コーナー部の下方の意匠部121に対して接続部123より車両ドア縁側の部位に力Fを印加して加工する印加ステップとを有する縦柱フレーム12の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠部が幅方向で凸形状を成すようにロール成形され、且つ、意匠部の幅が長手方向で変化するようにカットされた車両ドアの縦柱フレームを加工して、隣接する縦柱フレームとの段差や、ベルトモールとの隙間を解消する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4ドア車では、前ドアのリア縦柱フレーム(センターピラー,又は、Bピラー)と、後ドアのフロント縦柱フレーム(センターピラー,又は、Bピラー)とが、例えば特開2010−264771号公報(特許文献1)の図1に示されるように、相互に沿うように隣接して設けられる。
また、4ドア車や2ドア車を問わず、ベルトモールを備えた車では、縦柱フレーム下部が、ベルトモールの上縁部に沿うように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−264771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前ドアのリア縦柱フレームと後ドアのフロント縦柱フレームとが沿うように隣接して設けられるタイプの車では、当該隣接して設けられる縦柱の幅が異なる場合が多く、その場合、そのままでは、当該隣接している部分に段差が生ずる。その理由は、縦柱フレームの意匠部が幅方向で凸形状を成すようにロール成形され、さらに、意匠部の幅が長手方向で変化するようにカットされることにある。即ち、同程度の曲率を成すようにロール成形された隣接する縦柱フレームの意匠部をそれぞれ異なる幅にカットすると、当該異なる幅の部分で車内側へ沈み込む量が異なることとなり、結果、段差が生ずるのである。このように段差が生ずると、見栄えが悪くなるという不具合が生ずる。
縦柱フレーム下部がベルトモールの上縁部に沿うように設けられるタイプの車では、縦柱フレームの意匠部下部がロール成形されて凸形状を成す結果、当該沿っている縁の部分に隙間が生じ、その結果、見栄えが悪くなるという不具合が生ずる。
【0005】
本発明は、前ドアのリア縦柱フレームと後ドアのフロント縦柱フレームとが両ドアを閉じたときに沿うように隣接して設けられるタイプの車に於いて、当該沿っている両縦柱フレームの縁の部分に段差が生じないようにすることを目的とする。
また、本発明は、縦柱フレーム下部がベルトモールの上縁部に沿うように設けられるタイプの車に於いて、当該沿っている縁の部分に隙間が生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]〜[5]のように構成される。
本項「課題を解決するための手段」と、次項「発明の効果」に於いて、各符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]構成1
意匠部121と、袋部124と、意匠部121と袋部124を接続する接続部123とを備えた車両ドアの縦柱フレーム12の加工方法に於いて、
意匠部121が車両前後方向で第1の曲率を成す凸形状にロール成形するステップと、
意匠部121の車両前後方向の幅が長手方向で変化するようにカットするステップと、
コーナー部の下方の意匠部121に対して接続部123より車両ドア縁側の部位に力Fを印加して加工する印加ステップと、
を有することを特徴とする車両ドアの縦柱フレーム12の加工方法。
【0008】
[2]構成2
構成1に於いて、
印加ステップでは、コーナー部の下方の意匠部121の曲率が第1の曲率より小さくなるように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【0009】
[3]構成3
構成1又は構成2に於いて、
縦柱フレームは前ドアのリア縦柱フレーム12と前ドアのリア縦柱フレーム12に隣接する後ドアのフロント縦柱フレーム52の少なくとも一方であり、
印加ステップでは、一方の縦柱フレーム12/52の意匠部121/521と一方の縦柱フレーム12/52に隣接する他方の縦柱フレーム52/12の意匠部521/121との間で段差dを解消するように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【0010】
[4]構成4
構成3に於いて、
前ドアのリア縦柱フレーム12の意匠部121のコーナー部での幅と、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521のコーナー部での幅とが異なり、
印加ステップでは、少なくともコーナー部から下方へ向かって段差dを徐々に減らすように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【0011】
[5]構成5
構成1又は構成2に於いて、
縦柱フレーム12は、当該縦柱フレーム12の意匠部121の下部121bにベルトモール181の上縁部181bが沿うように設定され、
印加ステップでは、縦柱フレーム12の下部121bとベルトモール181の上縁部181bの隙間d2が解消されるように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【発明の効果】
【0012】
構成1は、意匠部121と、袋部124と、意匠部121と袋部124を接続する接続部123とを備えた車両ドアの縦柱フレーム12の加工方法に於いて、意匠部121が車両前後方向で第1の曲率を成す凸形状にロール成形するステップと、意匠部121の車両前後方向の幅が長手方向で変化するようにカットするステップと、コーナー部の下方の意匠部121に対して接続部123より車両ドア縁側の部位に力Fを印加して加工する印加ステップと、を有することを特徴とする車両ドアの縦柱フレーム12の加工方法であるため、縦柱フレームの意匠部コーナー部の下方で接続部より車両ドア縁側の部位を変形させることができる。
構成2は、構成1に於いて、印加ステップでは、コーナー部の下方の意匠部121の曲率が第1の曲率より小さくなるように力を印加する、ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法であるため、縦柱フレームの意匠部コーナー部の下方で接続部より車両ドア縁側の部位を第1の曲率より小さな曲率に変形させることができる。
構成3は、構成1又は構成2に於いて、縦柱フレームは前ドアのリア縦柱フレーム12と前ドアのリア縦柱フレーム12に隣接する後ドアのフロント縦柱フレーム52の少なくとも一方であり、印加ステップでは、一方の縦柱フレーム12/52の意匠部121/521と一方の縦柱フレーム12/52に隣接する他方の縦柱フレーム52/12の意匠部521/121との間で段差dを解消するように力を印加する、ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法であるため、前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52との段差を解消させることができる。
構成4は、構成3に於いて、前ドアのリア縦柱フレーム12の意匠部121のコーナー部での幅と、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521のコーナー部での幅とが異なり、印加ステップでは、少なくともコーナー部から下方へ向かって段差dを徐々に減らすように力を印加する、ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法であるため、前ドアのリア縦柱フレーム12の意匠部121のコーナー部での幅と、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521のコーナー部での幅とが異なる場合でも、前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52との段差を目立たないように減らすことができる。
構成5は、構成1又は構成2に於いて、縦柱フレーム12は、当該縦柱フレーム12の意匠部121の下部121bにベルトモール181の上縁部181bが沿うように設定され、印加ステップでは、縦柱フレーム12の下部121bとベルトモール181の上縁部181bの隙間d2が解消されるように力を印加する、ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法であるため、縦柱フレーム12の下部121bとベルトモール181の上縁部181bの隙間d2を解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】前ドアのリア縦柱フレーム(センターピラー,又は,Bピラー)12の羽根起こし加工を説明する端面図。(a)はロール成形で得た表側部材12a単体の状態で羽根起こし加工を施す場合を示し、(b)は表側部材12aにプレス成形で得た裏側部材12bを組み付けた後に羽根起こし加工を施す場合を示す。
【図2】前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム(センターピラー,又は,Bピラー)52が、前ドアと後ドアを閉じたとき隣接する様子を示す正面図。(a)はコーナー部の意匠部の幅がリア縦柱フレーム12とフロント縦柱フレーム52で異なる例を示し、(b)はリア縦柱フレーム12とフロント縦柱フレーム52のコーナー部の意匠部の幅を同一の幅に設定した例を示す。(a)では意匠部の曲率を徐々に小さくするべく羽根起こし位置kを下方ほど徐々に増加させる徐変区間VSと、曲率を小さな一定値にするべく羽根起こし位置kを一定に保つ一定区間CSを併せて示す。
【図3】図2(a)のA−A線端面での羽根起こし加工の説明図。
【図4】図2(b)のB−B線端面図。
【図5】前ドアのリア縦柱フレーム12の下部21bとベルトモール181の上縁部181bとの隙間を解消し、及び、後ドアのフロント縦柱フレーム52の下部521bとベルトモール581の上縁部581bとの隙間を解消する羽根起こし加工の説明図。(a)はリア縦柱フレーム12の下部121bとベルトモール181の上縁部181bの間の隙間、及び、フロント縦柱フレーム52の下部21bとベルトモール581の上縁部581bの間の隙間を、それぞれ示す。(b)はリア縦柱フレーム12とフロント縦柱フレーム52のコーナー部の意匠部の幅を同一に設定した場合に於いて羽根起こし加工による曲率を小さな一定値にするべく羽根起こし位置kを一定に保つ一定区間CSと、曲率を徐々に小さくするべく羽根起こし位置kを下方ほど徐々に増加させる徐変区間VSとを設定した例を示す。(c)はリア縦柱フレーム12とフロント縦柱フレーム52のコーナー部の意匠部の幅を同一に設定した場合に於いて曲率を徐々に小さくするべく羽根起こし位置kを下方ほど徐々に増加させる徐変区間VSに全区間を設定した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
(1)羽根起こし加工
図1(b)は、図2(a)のA−A線での切断端面を、前ドアの縦柱フレーム(センターピラー,又は,Bピラー)12について示す端面図である。図示のように、前ドアの縦柱フレーム12は、ロール成形で得た表側部材12aに、プレス成形で得た裏側部材12bを組み付けて成る。なお、裏側部材12bを、ロール成形で得てもよい。
【0015】
表側部材12aは、意匠部121と、折返部122と、接続部123と、袋部124を有する。意匠部121の表面(図1(b)で下面)が意匠面1210である。即ち、自動車に組み付けられた状態で外界に露出されて人の目に触れる面である。折返部122は意匠部121の内側(窓ガラスGが位置するべき側)の縁を裏側(車内側;図で上方側)へ折り返して成る部位である。接続部123は、意匠部121と袋部124を接続する部位である。この接続部123は、折返部122の先端(図1(b)で右端)から裏側(車内側;図で上方側)方向へ向けて立てるように延設された立設部1230に、後述の中板部1249及び外板部12b4を重ねて一体に接合して成る。袋部124は、立設部1230の先端(図1(b)で上端)側に連なる部位を内側(窓ガラスGが位置するべき側)へ屈曲し、更に裏側(車内側;図で上方側)にて周回して筒状と成した部分である。この袋部124の更に先端側が、前述の中板部1249として、立設部1230に重ねて一体に接合される。
この表側部材12aは、ロールフォーミングによって成形される。
【0016】
裏側部材12bは、図1(b)に示すように、表側部材12aの裏側(車内側;図で上方側)に組み付けられる。即ち、意匠部121の外側(窓ガラスGが位置するべき側と反対の側)の縁1219を折り返して裏側部材12bの外側縁部12b1を挟み込むとともに、裏側部材12bの反対側の縁寄りの立設部を前述の外板部12b4として表側部材12aの立設部1230及び中板部1249に重ね合わせて接合(スポット溶接)することにより、表側部材12aに組付けられる。裏側部材12bの外側縁部12b1から段部12b2を経て構成される中央部12b3と、表側部材12aの意匠部121の裏面との間には、段部12b2により確保された空間が設けられている。また、中央部12b3の接続部寄りの部位には、突設部12b30が形成されている。また、外板部12b4の先端側には屈曲形成されたカール部12b5が延設され、このカール部12b5と、前記外板部12b4及び突設部12b30により凹溝が形成され、ウェザストリップ係止用のウェザストリップ(シール部品)受け部Wとされている。
この裏側部材12bは、ロールフォーミング又はプレスによって成形される。
【0017】
前ドアのリア縦柱フレーム12は係る構造を成す部材であるが、前ドアと後ドアを閉じた状態に於いて前ドアの縦柱フレーム12に沿うように隣接する後ドアのフロント縦柱フレーム52もまた、同様に、表側部材52a(図3参照)に裏側部材(不図示)を組み付けて成る部材である。
【0018】
かかる構造の前ドアのリア縦柱フレーム12に対しては、前述の段差が生じないようにするべく、意匠部121に、図1に示すようにして羽根起こし加工を施す。即ち、袋部124の奥壁部1245に保持具91を当てて押さえるとともに、接続部123の両側に保持具91,92を当てて押さえることによりリア縦柱フレーム12を固定し、その状態で、接続部12より外側の意匠部121に対して、車外側(図1(b)で下方向)へ付勢する力Fを印加する。これにより、印加前は図1(a)(b)に破線で示す形状だったものが、印加後には同図に実線で示す形状に変形する。即ち、意匠部121の当該部位の曲率が、ロール成形直後の曲率(=第1の曲率)よりも小さくなる。言い換えれば、曲率半径が大きくなる。このため、羽根起こし加工を施さなかった場合に前ドアのリア縦柱フレーム12の意匠部121の一縁部121aと、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521の一縁部521aとの間に生ずる段差d(図3参照)が解消され、見栄えの悪化が防止される。また、リア縦柱フレーム12の意匠部121先端の車内側への沈み込みを低減されて外観が良くなるという効果もある。
【0019】
かかる羽根起こし加工は、図1(b)に示すように表側部材12aに裏側部材12bを組み付けた後に施してもよく、また、図1(a)に示すように裏側部材を組み付ける前の表側部材12a単体に対して施してもよい。
また、羽根起こし加工は、隣接する一方(上記の例では「意匠部121」)のみに施しても良いが、必要に応じて、双方(上記の例で言えば、「意匠部121」と「意匠部521」)にそれぞれ施しても良い。
【0020】
(2)コーナー部の意匠部の幅を同一に設定
上述のように、前ドアのリア縦柱フレーム12に対して羽根起こし加工を施して、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521の縁部521aとの間の段差を解消するのであるが、リア縦柱フレーム12の部位によっては、羽根起こし加工を施すと別の不具合が生じてしまうため、羽根起こし加工を施さない部位もある。即ち、図2(b)にB−B線で示す位置より上の部位(コーナー部)に対しては、羽根起こし加工を施さない。その理由は、前ドアの横柱フレーム11とリア縦柱フレーム12とをラインWLで溶接してドアフレームのコーナー部と成すときに、意匠面の両縁を結ぶ仮想線と接続部分との成す角度を調整して、意匠面の接合部分に溝が生じないように溶接しているため、これに、悪影響を与えないようにすることにある。ここで、B−B線とは、前ドアの縦柱フレームの意匠部ガラス側の端部と横柱フレームの意匠部ガラス側の端部の交点b1と、後ドアの縦柱フレームの意匠部ガラス側の端部と横柱フレームの意匠部ガラス側の端部の交点b2とを結ぶ線である。
【0021】
しかし、図2(b)のB−B線より上の部位(コーナー部)に対して羽根起こし加工を施さない場合、そのままでは、コーナー部では、隣接する後ドアのフロント縦柱フレーム52の縁部521aとの間に意匠部幅が異なると段差が生じて、前述の不具合が生じてしまう。
【0022】
その対策として、図2(b)の例では、コーナー部の意匠部を、前ドアのリア縦柱フレーム12と、後ドアのフロント縦柱フレーム52とで、同一の幅に設定している。即ち、図2(b)のB−B線位置の意匠部の幅を、前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52とで等しくなるように設定している。これにより、図4に示すように、当該の位置では、意匠部121の一縁部121aと意匠部521の一縁部521aの間に段差が生ずることがなく、当該位置での不具合が防止される。
【0023】
(3)徐変による羽根起こし加工
コーナー部より下方の部位(図2(b)でのB−B線より下方の部位)に対しては、羽根起こし加工を施す。その場合、下方へ向かって或る範囲までは意匠部121の幅が広くなるほど曲率が小さくなるように、換言すれば、意匠部121の幅が広くなるほど曲率半径が大きくなるように羽根起こし位置kを徐々に増加させて羽根起こし加工を施すと、コーナー部での溶接部位に悪影響を及ぼすことが無い。また、図2(a)の如く、コーナー部の意匠部の幅を、前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52とで同一の幅に設定できない場合でも、コーナー部より下方でコーナー部付近の縁部121a−521a間の段差を無視できる程度に抑制して目立たなくすることができる。ここで、羽根起こし位置kとは、ガラス外表面の仮想延長線と意匠部外表面のドア縁側端部との距離である。羽根起こし位置kを徐々に増加させた区間を図2(a)に区間VSとして示す。また、羽根起こし位置kを徐々に増加させる(又は徐々に減少させる)羽根起こし加工を、以下、「徐変による羽根起こし加工」という。
【0024】
徐変区間VSより下方の区間では、徐変区間VSの下端での羽根起こし位置kと同じ羽根起こし位置kを維持するようにして、羽根起こし加工を施す。つまり、羽根起こし位置kが徐変区間VSの下端での羽根起こし位置kと同じとなるように、羽根起こし加工を施す。この区間を、図2(a)に区間CSとして示す。これにより、一定区間CSでも、前ドアのリア縦柱フレーム12の意匠部121の縁部121aと、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521の縁部521aとの間の段差を解消できる。
【0025】
図2(b)の如くコーナー部の意匠部の幅を、前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52とで同一の幅に設定した場合にも、コーナー部より下方に於いて、意匠部121に羽根起こし加工を施す。なお、羽根起こし位置kは、全区間で一定としてもよく、また、コーナー部寄りの部位で「徐変による羽根起こし加工」を行い、下方の区間で羽根起こし位置kを一定とする羽根起こし加工を行うようにしてもよい。
【0026】
なお、コーナー部の意匠部の幅を、前ドアのリア縦柱フレーム12と後ドアのフロント縦柱フレーム52とで同一の幅に設定した場合(図2(b)の場合)も、同一の幅に設定できない場合(図2(a)の場合)も、コーナー部より下方の全区間で「徐変による羽根起こし加工」を行うようにしてもよい。
【0027】
(4)ベルトモールとの隙間
上記では、前ドアのリア縦柱フレーム12に沿うように隣接する後ドアのフロント縦柱フレーム52との段差を解消するべく、前ドアのリア縦柱フレーム12に施す羽根起こし加工について述べたが、羽根起こし加工は、図5に示すように、前ドアのリア縦柱フレーム12の意匠部121の下部121bと、該下部121bに沿う前ドアのベルトモール181の上縁部181bとの間の隙間d2を解消する場合や、後ドアのフロント縦柱フレーム52の意匠部521の下部521bと、該下部521bに沿う後ドアのベルトモール581の上縁部581bとの間の隙間を解消する場合にも有効である。
【0028】
この場合の羽根起こし加工としては、図5(b)に示すように、コーナー部から下方へ向かって或る範囲までは羽根起こし位置kを一定とする加工を行い(一定区間CS)、その下方から下端まで羽根起こし位置kを徐々に増加させる徐変による羽根起こしを行う(徐変区間VS)加工方法と、図5(c)に示すように、コーナー部の下方の全区間で徐変による羽根起こしを行う加工方法とがある。
【0029】
何れの加工方法でも、ベルトモール181/581の上縁部181b/581bとの間の隙間が解消されるように、意匠部121/521の下部121b/521bに近づくにつれて、羽根起こし位置kを大きくとっている。即ち、曲率を小さくして(=曲率半径を大きくして)、隙間を解消している。
【符号の説明】
【0030】
11 前ドアの横柱フレーム
12 前ドアのリア縦柱フレーム
12a 表側部材
12b 裏側部材
12b1 外側縁部
12b2 段部
12b3 中央部
12b30 突設部
12b4 外板部
12b5 カール部
121 意匠部
121a 一縁部
121b 下部
1219 意匠部の外側の縁
122 折返部
123 接続部
1230 立設部
124 袋部
1245 奥壁部
1249 中板部
181 前ドアのベルトモール
181b 上縁部
51 後ドアの横柱フレーム
52 後ドアのフロント縦柱フレーム
521 意匠部
521a 一縁部
581 後ドアのベルトモール
581b 上縁部
91,92,93 保持具
d 段差
d2 隙間
F 力
BL 羽根起こし加工の境界
WL 溶接位置
VS 徐変区間
CS 一定区間
G ガラスラン受け部
W ウェザストリップ受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠部と、袋部と、意匠部と袋部を接続する接続部とを備えた車両ドアの縦柱フレームの加工方法に於いて、
意匠部が車両前後方向で第1の曲率を成す凸形状にロール成形するステップと、
意匠部の車両前後方向の幅が長手方向で変化するようにカットするステップと、
コーナー部の下方の意匠部に対して接続部より車両ドア縁側の部位に力を印加して加工する印加ステップと、
を有することを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【請求項2】
請求項1において、
印加ステップでは、コーナー部の下方の意匠部の曲率が第1の曲率より小さくなるように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
縦柱フレームは前ドアのリア縦柱フレームと前ドアのリア縦柱フレームに隣接する後ドアのフロント縦柱フレームの少なくとも一方であり、
印加ステップでは、一方の縦柱フレームの意匠部と一方の縦柱フレームに隣接する他方の縦柱フレームの意匠部との間で段差を解消するように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【請求項4】
請求項3に於いて、
前ドアのリア縦柱フレームの意匠部のコーナー部での幅と、後ドアのフロント縦柱フレームの意匠部のコーナー部での幅とが異なり、
印加ステップでは、少なくともコーナー部から下方へ向かって段差を徐々に減らすように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に於いて、
縦柱フレームは、当該縦柱フレームの意匠部下部にベルトモールの上縁部が沿うように設定され、
印加ステップでは、縦柱フレーム下部とベルトモールの上縁部の隙間が解消されるように力を印加する、
ことを特徴とする車両ドアの縦柱フレームの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95341(P2013−95341A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241876(P2011−241876)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)