説明

車両リフト装置

【課題】車両が進入したり運転者が乗降したりする際に邪魔にならずに、而もがたの発生を抑制すると共に安全性を向上させる。
【解決手段】車両を載置するテーブル2と、テーブルを水平姿勢の状態で昇降作動する昇降機構3とを備え、この昇降機構は、テーブルの下面に、当該テーブルの長手方向において離隔された状態で一端31a、32aが回動自在に連結される一組のアーム31、32と、一組のアームの各他端31b、32bが回動自在に連結され、テーブルが上昇している場合には各一端を回動中心にして各他端を接近させ、テーブルが下降している場合には各一端を回動中心にして各他端を離隔させるために、各他端をテーブルの長手方向において水平移動させる水平移動手段30とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両リフト装置に係り、特に車両を載置するテーブルを水平姿勢の状態で昇降作動する昇降機構を備えた車両リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の点検及び整備等を行うために整備場所の床面には車両リフトが設置されている。この車両リフトとして、例えば図5(A)に示すように、床に立った状態で設けられた左右一対の支柱501、502と、この左右一対の支柱501、502にそれぞれ昇降自在に組み付けられたキャリッジ503、504と、各キャリッジ503、504に組み付けられ車両を支持するための車両支持アーム505、506とを備えた車両整備用リフトが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。この車両整備用リフトは、キャリッジ503、504を一方の支柱501内に設けられた油圧シリンダで駆動する巻き掛け伝動装置(図示せず)によるチェーン伝動で、車両支持アーム505、506で支持された車両を昇降させることができる。
【0003】
また、図5(B)に示すように、1本の支柱601に組み付けられたキャリッジ602を、支柱601内に設けられた油圧シリンダで駆動する巻き掛け伝動装置(図示せず)によるチェーン伝動で、車両支持アーム603で支持された車両を昇降させる車両整備用リフトが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
また、車両リフトとして、図6(A)に示すように、車両を載置するテーブル701と床とを連結するX形リンク機構702と、X型リンク機構702を起伏作動する油圧シリンダ703とを左右一対に備えた床式リフトが知られている(例えば、特許文献4参照。)。この床式リフトは、油圧シリンダ703を伸縮作動させるとX形リンク機構702が起伏作動するので、テーブル701を水平姿勢の状態で昇降作動させることができる。
【0005】
また、図6(B)に示すように、車両を載置するドライブオンプレート801と床とを連結するX形リンク機構802、及びX型リンク機構802を起伏作動する油圧シリンダ803を備えた第1の昇降装置800Aと、この第1の昇降装置800Aのドライブオンプレート801に設けられ車両の前後のタイヤ間より短い寸法から成るボード804と、X形リンク機構805及び油圧シリンダ806とを備えた第2の昇降装置800Bとから構成された車両整備用リフトが知られている(例えば、特許文献5、特許文献6参照。)。この車両整備用リフトは、第1の昇降装置800Aでドライブオンプレート801をリフトアップして車両下回りの点検やオイル交換等を行い、第2の昇降装置800Bでタイヤを外せる程度にボード804をリフトアップしてタイヤ回りの整備作業等を行うことができる。
【0006】
さらに、車両リフトとして、図7に示すように、車両を載置するテーブル901と、テーブル901に一端902aが回動自在に連結され他端902bが床に摺動自在に配置されるロングアーム902と、ロングアーム902の中央部と一端903aとが回動自在に連結され他端903bが床に回動自在に連結されるショートアーム903と、テーブル901の下面とショートアーム903の一端903aとを回動自在に連結するプッシュロッド904と、ロングアーム902の他端902bとショートアーム903の一端903aとを回動自在に連結する油圧シリンダ905と、ロングアーム902の他端902bの摺動軌道をテーブル901が水平移動するように調整するレール906とを備えた車両整備用リフトが知られている(例えば、特許文献7参照。)。この車両整備用リフトは、油圧シリンダ905を伸縮作動させるとショートアーム903の他端903bを回動中心にしてショートアーム903の一端903aが回動するので、その動きに応じてロングアーム902及びプッシュロッド904が連動してテーブル901を水平姿勢の状態で昇降作動させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−106498号公報
【特許文献2】特開2001−130878号公報
【特許文献3】特開平10−316378号公報
【特許文献4】特開平8−40697号公報
【特許文献5】特開2000−272891号公報
【特許文献6】特開2004−203602号公報
【特許文献7】特開平7−309598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、背景技術に記載した特許文献1、特許文献2及び特許文献3の車両リフトでは、床から支柱が立っているので、車両リフトの車両の載置位置に車両を進入させる時に邪魔になったり、その載置位置に車両を停止後、運転者が車両の乗降時の際に、その支柱が邪魔になって乗降ドアを全開できなくなったりする難点があった。また、特許文献1及び特許文献2のような車両リフトでは、2本の支柱を床に立てて車重の重い車両に適応させるには支柱の埋設深さを約3mの深さにしなければならず、設置工事期間が長くなる難点があった。なお、設置工事期間が長くなると施工費用が高くなるので、安価な車両リフト装置を提供できなくなる。
【0009】
また、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7の車両リフトでは、昇降部材となるリンクやアームが数多く存在するので、その数多くの連結点に使用される連結軸が長期間の使用により磨耗することで、がたが発生し易くなる虞があった。また、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7の車両リフトでは、テーブルの昇降移動の際、リンクやアームの連結点の部位で接近してくる部材間に手足が挟まれる危険性があった。
【0010】
さらに、縦方向に一定の間隔毎に床部を形成した複層階建物に車両リフトを設置する場合には、設置階の床面と下階の天井とのスペース間に設置しなければならず、車重の重い車両には不適な床下埋設深さの浅い車両リフトしか利用することができなかったので、点検及び整備等を行う車両が限定されてしまう難点があった。
【0011】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、車両が進入したり運転者が乗降したりする際に邪魔にならずに、而もがたの発生を抑制すると共に安全性を向上させることができる車両リフト装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、昇降機構を埋設する凹部の深さを浅くしても車両の点検及び整備等を行う車両が限定されることなく複層階建物への設置が可能になる車両リフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成する第1の態様である車両リフト装置は、車両を載置するテーブルと、テーブルを水平姿勢の状態で昇降作動する昇降機構とを備えた車両リフト装置において、昇降機構は、テーブルの下面に、当該テーブルの長手方向において離隔された状態で一端が回動自在に連結される一組のアームと、一組のアームの各他端が回動自在に連結され、テーブルが上昇している場合には各一端を回動中心にして各他端を接近させ、テーブルが下降している場合には各一端を回動中心にして各他端を離隔させるために、各他端をテーブルの長手方向において水平移動させる水平移動手段とから構成されているものである。なお、本明細書において「回動」とは正逆方向に円運動することを意味する。
【0014】
このような第1の態様である車両リフト装置によれば、テーブルの下方に設けられた昇降機構の水平移動手段によって一組のアームの各他端を水平移動させるだけでテーブルを水平姿勢の状態で昇降させることができるので、車両が進入したり運転者が乗降したりする際に邪魔になることはない。また、一組のアームの各他端を水平移動させるだけでテーブルを昇降させることができるので、昇降機構の埋設深さを浅くしても車両の点検及び整備等を行う車両が限定されることなく複層階建物への設置が可能になる。また、一組のアームの各両端だけが磨耗部位なので、長期間の使用によるがたの発生を抑制することができる。さらに、一組のアームの各他端を水平移動させるだけなので、アームが交差する箇所がなくなり安全性を向上させることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は第1の態様である車両リフト装置において、水平移動手段は、テーブルの下方に配置され、一方のアームの他端に回動自在に連結される第1のナットと、第1のナットに螺合され、テーブルの長手方向に軸心方向が配置される第1のねじ軸と、テーブルの下方に配置され、他方のアームの他端に回動自在に連結される第2のナットと、第2のナットに螺合され、テーブルの長手方向に軸心方向が配置されると共に第1のねじ軸とはねじの巻上がり方が逆になる第2のねじ軸と、第1のねじ軸及び第2のねじ軸の対向する各軸端を回動するウォームギヤと、ウォームギヤを駆動するモータとから構成されているものである。
【0016】
このような第2の態様である車両リフト装置は、モータでウォームギヤを駆動させることで第1のねじ軸及び第2のねじ軸が回転すると、この第1のねじ軸及び第2のねじ軸はねじの巻上がり方が逆なので第1のねじ軸に螺合する第1のナット及び第2のねじ軸に螺合する第2のナットは相反する方向に移動することになる。したがって、第1のナットに連結されている一方のアームの他端と、第2のナットに連結されている他方のアームの他端とを接近させ離隔させることができるようになるので、一対のアームはテーブルが上昇している場合には各一端を回動中心にして各他端を接近させ、テーブルが下降している場合には各一端を回動中心にして各他端を離隔させることができるようになる。
【0017】
本発明の第3の態様は第2の態様である車両リフト装置において、第1のナット及び第2のナットには、それぞれ当該ナットを支持した状態で床面を走行するガイドローラが設けられているものである。
【0018】
このような第3の態様である車両リフト装置によれば、アームが連結している第1のナット及び第2のナットをガイドローラで支持することができるので、第1のねじ軸及び第2のねじ軸に加わる荷重を軽減することができる。
【0019】
本発明の第4の態様は第1の態様である車両リフト装置において、水平移動手段は、
一端が一方のアームの他端に回動自在に連結される第1のチェーンと、
テーブルの下方において当該テーブルの長手方向に第1のチェーンを配置可能なように、当該第1のチェーンの他端側が巻き掛けられ当該第1のチェーンと噛み合って一方のアームの他端を水平方向で往復動させる第1の駆動スプロケットと、
一端が他方のアームの他端に回動自在に連結される第2のチェーンと、テーブルの下方において当該テーブルの長手方向に第2のチェーンを配置可能なように、当該第2のチェーンの他端側が巻き掛けられ当該第2のチェーンと噛み合って他方のアームの他端を水平方向で往復動させる第2の駆動スプロケットと、
第1の駆動スプロケット及び第2の駆動スプロケットの回転方向が反対方向になるようにモータによって駆動する駆動部と、
アームの他端とチェーンとの各連結点に設けられ当該連結点を支持した状態で床面を走行するガイドローラとから構成されているものである。
【0020】
このような第4の態様である車両リフト装置は、モータで駆動部を駆動させると、第1の駆動スプロケット及び第2の駆動スプロケットが、回転方向が反対方向になるように回転するので、第1の駆動スプロケットに巻き掛けられる第1のチェーン及び第2の駆動スプロケットに巻き掛けられる第2のチェーンが相反する方向に移動することになる。したがって、第1のチェーンの一端に連結されている一方のアームの他端と、第2のチェーンの一端に連結されている他方のアームの他端とをガイドローラで支持しながら接近させ離隔させることができるようになるので、一対のアームはテーブルが上昇している場合には各一端を回動中心にして各他端を接近させ、テーブルが下降している場合には各一端を回動中心にして各他端を離隔させることができるようになる。
【0021】
本発明の第5の態様は第1の態様である車両リフト装置において、水平移動手段は、テーブルの下方に配置され、シリンダ本体が一方のアームの他端に回動自在に連結され、ロッド先端部が他方のアームの他端に回動自在に連結されるテレスコピック・シリンダと、アームの他端と、シリンダ本体及びロッド先端部との各連結点に設けられ当該連結点を支持した状態で床面を走行するガイドローラとから構成されているものである。
【0022】
このような第5の態様である車両リフト装置によれば、テレスコピック・シリンダがロッド先端部を突出させるようにシリンダ動作を行うと、シリンダ本体に連結されている一方のアームの他端とロッド先端部に連結されている他方のアームの他端とをガイドローラで支持しながら離隔させ、テレスコピック・シリンダがロッド先端部を引っ込めるようにシリンダ動作を行うと、シリンダ本体に連結されている一方のアームの他端とロッド先端部に連結されている他方のアームの他端とをガイドローラで支持しながら接近させることができるようになるので、一対のアームはテーブルが上昇している場合には各一端を回動中心にして各他端を接近させ、テーブルが下降している場合には各一端を回動中心にして各他端を離隔させることができるようになる。
【0023】
本発明の第6の態様は第1の態様乃至第5の態様のうちの何れか1つの態様である車両リフト装置において、一組のアーム及び水平移動手段は、テーブルの幅方向において左右一対で設けられているものである。また、本発明の第7の態様は第6の態様である車両リフト装置において、前記テーブルは、前記左右一対で設けられた前記一組のアームそれぞれに設けられているものである。このような第6の態様及び第7の態様である車両リフト装置によれば、一組のアーム及び水平移動手段から構成された一対の昇降機構間に所定のスペースを設けることが容易になるので、車両の下方からの点検及び整備等が行い易くなる。
【0024】
本発明の第8の態様は第1の態様乃至第7の態様のうちの何れか1つの態様である車両リフト装置において、ガイドローラを走行させるガイドレールが床面に設置されているものである。このような第8の態様である車両リフト装置によれば、ガイドローラの走行方向をガイドレールによって導くことができるので、安定した状態で一対のアームを動作させることができる。
【0025】
本発明の第9の態様は第1の態様乃至第8の態様のうちの何れか1つの態様である車両リフト装置において、テーブルが下降時に、当該テーブルの車両載置面が床面と同一高さになるように、床に掘り込まれた凹部内に昇降機構が格納されているものである。このような第9の態様である車両リフト装置によれば、昇降機構を床下に格納するタイプでも、昇降機構を埋設する凹部の深さを浅くしても昇降機構を不具合なく作動させることができるので、車両の点検及び整備等を行う車両が限定されることなく複層階建物への設置が可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の車両リフト装置によれば、車両が進入したり運転者が乗降したりする際に邪魔にならずに、而もがたの発生を抑制すると共に安全性を向上させることができる。また、本発明の車両リフト装置によれば、昇降機構を埋設する凹部の深さを浅くしても車両の点検及び整備等を行う車両が限定されることなく複層階建物への設置が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の車両リフト装置を実施するための最良の形態例について図面に基き説明する。
【0028】
本発明の車両リフト装置は図1(A)、(B)に示すように、車両を載置するテーブル2と、テーブル2を水平姿勢の状態で昇降作動する昇降機構3とを備えている。昇降機構3は、テーブル2の下面に、当該テーブル2の長手方向LDにおいて離隔された状態で一端31a、32aが回動自在に連結される一組のアーム31、32と、一組のアーム31、32の各他端31b、32bが回動自在に連結され、テーブル2が上昇している場合には各一端31a、32aを回動中心にして各他端31b、32bを接近させ、テーブル2が下降している場合には各一端31a、32aを回動中心にして各他端31b、32bを離隔させるために、各他端31b、32bをテーブル2の長手方向LDにおいて水平移動させる水平移動手段30とから構成されている。なお、テーブル2の長手方向LDとは、車両を載置した際の車両の前後方向と同一方向である。また、一組のアーム31、32は例えば構造部材の強度を高めることができる梯子型に形成されている。
【0029】
この水平移動手段30は、テーブル2の下方に配置され、一方のアーム31の他端31bに回動自在に連結される第1のナット33と、第1のナット33に螺合され、テーブル1の長手方向LDに軸心方向が配置される第1のねじ軸34と、テーブル2の下方に配置され、他方のアーム32の他端32bに回動自在に連結される第2のナット35と、第2のナット35に螺合され、テーブル2の長手方向LDに軸心方向が配置されると共に第1のねじ軸34とはねじの巻上がり方が逆になる第2のねじ軸36と、第1のねじ軸34及び第2のねじ軸36の対向する各軸端を回動するウォームギヤ37と、ウォームギヤ37を駆動するモータM1とから構成されている。
【0030】
第1のナット33及び第1のねじ軸34と、第2のナット35及び第2のねじ軸36との組み合わせは、ねじとボールが転がり接触することによって摩擦損失が少なく、良好な伝達効率が得られるボールねじを採用することが好ましいが、これに限らず、台形ねじや、力の伝達に好適な角ねじを利用してもよい。
【0031】
また、第1のナット33及び第2のナット35には、それぞれ当該ナット33、35を支持した状態で床面を走行するガイドローラ38が設けられている。このガイドローラ38は第1のナット33及び第2のナット35の各両端に設けられている。なお、このガイドローラ38を走行させるガイドレール39を床面に設置すると、ガイドローラ38の走行方向をガイドレール39によって導くことができるので、安定した状態で一対のアーム31、32を動作させることができる。このガイドレール39の形状は、例えばコの字形で形成され、その凹部内をガイドローラ38を走行させる。このように、アームが連結している第1のナット33及び第2のナット35をガイドローラ38で支持することができるので、第1のねじ軸34及び第2のねじ軸36に加わる荷重を軽減することができる。
【0032】
また、ウォームギヤ37は、ウォーム37aがモータM1の回転軸に固定され、ウォーム37aと噛み合うウォームホイール37bが第1のねじ軸34及び第2のねじ軸36の対向する各軸端に固定されている。なお、一組のアーム31、32の連結点は回動自在にするために、摺動部にブッシュ等を用いたジョイントを用いることで、テーブル2の下面に一端31a、32aが連結され、第1のナット33及び第2のナット35に他端31b、32bが連結される。
【0033】
このような昇降機構3の一組のアーム31、32及び水平移動手段30は図1(B)に示すように、テーブル2の幅方向WDにおいて左右一対で設けられている。また、テーブル2は、左右一対で設けられた一組のアーム31、32それぞれに設けられている。このように一組のアーム31、32、水平移動手段30及びテーブル2を左右一対で設けることで、一対の昇降機構3、3間に所定のスペースを設けることが容易になるので、車両の下方からの点検及び整備等が行い易くなる。なお、テーブル2は車両の下方からの点検及び整備等が行い易い形状ならば、1つを左右一対で設けられた各一組のアーム31、32に連結させてもよい。
【0034】
さらに、テーブル2が下降時に、当該テーブル2の車両載置面が床面と同一高さになるように、床に掘り込まれた凹部CP内に昇降機構3が格納されているが、この昇降機構3を床下に格納するタイプでも、昇降機構3を埋設する凹部CPの深さを浅くしても昇降機構3を不具合なく作動させることができるので、車両の点検及び整備等を行う車両が限定されることなく複層階建物への設置が可能になる。なお、この場合、ガイドローラ38を凹部CPの底部を走行させることになるが、ガイドレール39が使用されている場合にはガイドレール39が凹部CPの底部に設置されることになる。
【0035】
このように構成された車両リフト装置1の動作について説明する。なお、図1(A)においては、テーブル2、一組のアーム31、32、第1のナット33、第2のナット35及びガイドローラ38の移動変化は、テーブル2が上死点においては点線で示し、下死点においては実線による細線で示し、上死点から下死点に向かって3段階の位置を上から一点鎖線、実線による太線、二点鎖線で示してある。図1(B)は図1(A)におけるテーブル2が実線による太線の位置に停止している時の図である。
【0036】
テーブル2が下死点に位置している状態で、上死点に移動させるようにモータM1でウォームギヤ37を駆動させると、第1のねじ軸34及び第2のねじ軸36が回転するので、第1のねじ軸34に螺合する第1のナット33及び第2のねじ軸36に螺合する第2のナット35が移動を開始するが、この第1のねじ軸34及び第2のねじ軸36はねじの巻上がり方が逆なので第1のナット33及び第2のナット35は相反する方向に移動することになる。したがって、第1のナット33に連結されている一方のアーム31の他端31bと、第2のナット35に連結されている他方のアーム32の他端32bとは接近するように移動してくるので、一組のアーム31、32はテーブル2を上昇させることができる。また、上死点に移動したテーブル2を下死点に移動させるように、モータM1でウォームギヤ37を駆動させると、第1のねじ軸34及び第2のねじ軸36が第1のナット33及び第2のナット35を離隔するように移動させるので、一対のアーム31、32でテーブル2を下降させることができる。
【0037】
このように、テーブル2の下方に設けられた昇降機構3の水平移動手段30によって一組のアーム31、32の各他端31b、32bを水平移動させるだけでテーブル2を水平姿勢の状態で昇降させることができるので、車両が進入したり運転者が乗降したりする際に邪魔になることはない。また、一組のアーム31、32の各他端31b、32bを水平移動させるだけでテーブル2を昇降させることができるので、昇降機構3の埋設深さを浅くしても車両の点検及び整備等を行う車両が限定されることなく複層階建物への設置が可能になる。また、一組のアーム31、32の各両端31b、32bだけが磨耗部位なので、長期間の使用によるがたの発生を抑制することができる。さらに、一組のアーム31、32の各他端31b、32bを水平移動させるだけなので、アームが交差する箇所がなくなり安全性を向上させることができる。
【0038】
また、上述した左右一対の水平移動手段30、30は1つのモータM1で駆動させていたが、これに限らず、図2に示すように、左右一対の水平移動手段30、30それぞれを別のモータM2、M3で駆動させるようにしてもよい。この場合、モータM2、M3が同期回転するように制御回路4で制御することで、左右一対の水平移動手段30、30に同一の動作をさせることができる。したがって、テーブル2を水平姿勢の状態で昇降作動させることができる。なお、図2に示す左右一対の水平移動手段30、30の各部品は図1(A)、(B)と同様の符号を付して説明を省略する。
【0039】
また、水平移動手段30の一組のアーム31、32の形状を図3に示すように、それぞれ他端31b、32b側を外側方向にへの字状に折り曲げることで、テーブル2を下死点から上死点に上昇させる際に、第1のナット33及び第2のナット35の間隔がある程度広い状態でテーブル2が上死点になるために一組のアーム31、32に加わる荷重が分散することになるので、当該一組のアーム31、32に踏ん張りを持たせることができる。なお、図3に示す左右一対の水平移動手段30、30は、図1(A)に示す水平移動手段30と同一要素には同一参照番号を付して説明を省略する。
【0040】
また、昇降機構3の水平移動手段は上述した水平移動手段30に限らず、図4(A)に示す水平移動手段300や図4(B)に示す水平移動手段350でもよい。
【0041】
図4(A)に示す水平移動手段300が適用される車両リフト装置10は、第1のチェーン301及び第1の駆動スプロケット302による鎖伝動装置303で一方のアーム31を駆動させ、第2のチェーン304及び第2の駆動スプロケット305による鎖伝動装置306で他方のアーム32を駆動させることができるものである。図中、第1の駆動スプロケット302が右側に位置し、第2の駆動スプロケット305が左側に位置している。
【0042】
第1のチェーン301は、一端301aが一方のアーム31の他端31bに回動自在に連結され、第2のチェーン304は、一端304aが他方のアーム32の他端32bに回動自在に連結されている。また、第1の駆動スプロケット302は、テーブル2の下方において当該テーブル2の長手方向LDに第1のチェーン301を配置可能なように、当該第1のチェーン301の他端301b側が巻き掛けられ当該第1のチェーン301と噛み合って一方のアーム31の他端31bを水平方向で往復動させることができるように設けられている。第2の駆動スプロケット305は、テーブル2の下方において当該テーブル2の長手方向LDに第2のチェーン304を配置可能なように、当該第2のチェーン304の他端304b側が巻き掛けられ当該第2のチェーン304と噛み合って他方のアーム32の他端32bを水平方向で往復動させることができるように設けられている。
【0043】
また、水平移動手段300は、第1の駆動スプロケット302及び第2の駆動スプロケット305の回転方向が反対方向になるようにモータによって駆動する駆動部(図示せず)を備えている。この駆動部としては、1つのモータで第1の駆動スプロケット302及び第2の駆動スプロケット305を駆動させる場合には、歯車装置によって第1の駆動スプロケット302及び第2の駆動スプロケット305を同期回転させる。また、2つのモータでそれぞれ第1の駆動スプロケット302及び第2の駆動スプロケット305を駆動させる場合には、2つのモータが同期回転するように制御回路で制御する。
【0044】
さらに、一方のアーム31の他端31b及び第1のチェーン301の連結点と、他方のアーム32の他端32b及び第2のチェーン304の連結点とに設けられ、当該連結点を支持した状態で床面を走行するガイドローラ307を備えている。このガイドローラ307を走行させるガイドレール308を床面に設置することで、上述した水平移動手段30と同様の作用、効果を得ることができる。
【0045】
なお、この水平移動手段300の一組のアーム31、32の各他端31b、32bにおける連結点は上述した水平移動手段30と同様に、回動自在にするために、摺動部にベアリング等を用いたジョイントを用いることで、第1のチェーン301に他端31bが、第2のチェーン304に他端32bがそれぞれ連結される。
【0046】
このように構成された車両リフト装置10の動作について説明する。テーブル2が下死点に位置している状態で、上死点に移動するように駆動部で第1の駆動スプロケット302及び第2の駆動スプロケット305を回転方向が反対方向になるように駆動させると、第1の駆動スプロケット302は図中時計方向に回転して第1のチェーン301を右方向に移動させ、第2の駆動スプロケット305は図中反時計方向に回転して第2のチェーン304を左方向に移動させるので、第1のチェーン301に連結された一方のアーム31の他端31bと、第2のチェーン304に連結された他方のアーム32の他端32bとはそれぞれ一端31a、32aを回動中心にして接近するようにガイドローラ307で支持された状態で移動するので、一組のアーム31、32はテーブル2を上昇させることができる。
【0047】
また、上死点に移動したテーブル2を下死点に移動させるように、駆動部で第1の駆動スプロケット302及び第2の駆動スプロケット305を回転方向が反対方向になるように駆動させると、第1の駆動スプロケット302は図中反時計方向に回転して第1のチェーン301を左方向に移動させ、第2の駆動スプロケット305は図中時計方向に回転して第2のチェーン304を右方向に移動させるので、第1のチェーン301に連結された一方のアーム31の他端31bと、第2のチェーン304に連結された他方のアーム32の他端32bとは、テーブル2や車両の重量によりそれぞれ一端31a、32aを回動中心にして離隔するようにガイドローラ307で支持された状態で移動するので、一組のアーム31、32はテーブル2を下降させることができる。
【0048】
したがって、車両リフト装置10は上述した車両リフト装置1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、図4(B)に示す水平移動手段350が適用される車両リフト装置100は、テーブル2の下方に配置され、シリンダ本体351aが一方のアーム31の他端31bに回動自在に連結され、ロッド先端部351bが他方のアーム32の他端32bに回動自在に連結されるテレスコピック・シリンダ351を備えている。このテレスコピック・シリンダ351は、ロッドが2段ストロークで伸縮するもので、軸方向の取り付けスペースを小さくすることができる。また、水平移動手段350は、一方のアーム31の他端31b及びシリンダ本体351aの連結点と、他方のアーム32の他端32b及びロッド先端部351bの連結点とに設けられ、当該連結点を支持した状態で床面を走行するガイドローラ352を備えている。このガイドローラ352を走行させるガイドレール353を床面に設置することで、上述した水平移動手段30と同様の作用、効果を得ることができる。
【0050】
なお、この水平移動手段350の一組のアーム31、32の各他端31b、32bにおける連結点は上述した水平移動手段30と同様に、回動自在にするために、摺動部にベアリング等を用いたジョイントを用いることで、シリンダ本体351aに他端31bが、ロッド先端部351bに他端32bがそれぞれ連結される。
【0051】
このように構成された車両リフト装置100の動作について説明する。テーブル2が下死点に位置している状態で、上死点に移動するようにテレスコピック・シリンダ351を駆動させると、ロッド先端部351bを引っ込めるようにシリンダ動作を開始するので、シリンダ本体351aに連結されている一方のアーム31の他端31bとロッド先端部351bに連結されている他方のアーム32の他端32bとをガイドローラ352で支持しながら接近させる。このシリンダ動作により、一組のアーム31、32はテーブル2を上昇させることができる。
【0052】
また、テレスコピック・シリンダ351がロッド先端部351bを突出するようにシリンダ動作を行うと、シリンダ本体351aに連結されている一方のアーム31の他端31bとロッド先端部351bに連結されている他方のアーム32の他端32bとをガイドローラ352で支持しながら離隔させる。このシリンダ動作により、一組のアーム31、32はテーブル2を下降させることができる。
【0053】
したがって、車両リフト装置100は上述した車両リフト装置1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、車両リフト装置10、100は上述した車両リフト装置1と同様に、昇降機構3をテーブル2の幅方向WDにおいて左右一対で設けることで、車両リフト装置1と同様の作用、効果を得ることができる。また、この車両リフト装置10、100は上述した車両リフト装置1と同様に、テーブル2が下降時に、当該テーブル2の車両載置面が床面と同一高さになるように、床に掘り込まれた凹部CP内に昇降機構3を格納できるように構成することで、車両リフト装置1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0055】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の車両リフト装置による好ましい実施の形態例で、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【図2】本発明の車両リフト装置による他の好ましい実施の形態例を示す上面図である。
【図3】本発明の車両リフト装置による他の好ましい実施の形態例を示す上面図である。
【図4】(A)、(B)は本発明の車両リフト装置による他の好ましい実施の形態例を示す図である。
【図5】(A)、(B)は従来の車両リフトを示す説明図である。
【図6】(A)、(B)は従来の車両リフトを示す説明図である。
【図7】従来の車両リフトを示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1、10、100……車両リフト装置
2……テーブル
3……昇降機構
31、32……一組のアーム
31a、32a……一端
31b、32b……他端
30……水平移動手段
33……第1のナット
34……第1のねじ軸
35……第2のナット
36……第2のねじ軸
37……ウォームギヤ
38……ガイドローラ
39……ガイドレール
M1、M2、M3……モータ
300……水平移動手段
301……第1のチェーン
302……第1の駆動スプロケット
304……第2のチェーン
305……第2の駆動スプロケット
306……ガイドローラ
307……ガイドレール
350……水平移動手段
351……テレスコピック・シリンダ
351a……シリンダ本体
351b……ロッド先端部
352……ガイドローラ
353……ガイドレール
CP……床の凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を載置するテーブルと、前記テーブルを水平姿勢の状態で昇降作動する昇降機構とを備えた車両リフト装置において、
前記昇降機構は、
前記テーブルの下面に、当該テーブルの長手方向において離隔された状態で一端が回動自在に連結される一組のアームと、
前記一組のアームの各他端が回動自在に連結され、前記テーブルが上昇している場合には前記各一端を回動中心にして前記各他端を接近させ、前記テーブルが下降している場合には前記各一端を回動中心にして前記各他端を離隔させるために、前記各他端を前記テーブルの長手方向において水平移動させる水平移動手段とから構成されていることを特徴とする車両リフト装置。
【請求項2】
前記水平移動手段は、
前記テーブルの下方に配置され、一方の前記アームの前記他端に回動自在に連結される第1のナットと、
前記第1のナットに螺合され、前記テーブルの長手方向に軸心方向が配置される第1のねじ軸と、
前記テーブルの下方に配置され、他方の前記アームの前記他端に回動自在に連結される第2のナットと、
前記第2のナットに螺合され、前記テーブルの長手方向に軸心方向が配置されると共に前記第1のねじ軸とはねじの巻上がり方が逆になる第2のねじ軸と、
前記第1のねじ軸及び前記第2のねじ軸の対向する各軸端を回動するウォームギヤと、
前記ウォームギヤを駆動するモータとから構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両リフト装置。
【請求項3】
前記第1のナット及び前記第2のナットには、それぞれ当該ナットを支持した状態で床面を走行するガイドローラが設けられていることを特徴とする請求項2記載の車両リフト装置。
【請求項4】
前記水平移動手段は、
一端が一方の前記アームの前記他端に回動自在に連結される第1のチェーンと、
前記テーブルの下方において当該テーブルの長手方向に前記第1のチェーンを配置可能なように、当該第1のチェーンの他端側が巻き掛けられ当該第1のチェーンと噛み合って一方の前記アームの前記他端を水平方向で往復動させる第1の駆動スプロケットと、
一端が他方の前記アームの前記他端に回動自在に連結される第2のチェーンと、
前記テーブルの下方において当該テーブルの長手方向に前記第2のチェーンを配置可能なように、当該第2のチェーンの他端側が巻き掛けられ当該第2のチェーンと噛み合って他方の前記アームの前記他端を水平方向で往復動させる第2の駆動スプロケットと、
前記第1の駆動スプロケット及び前記第2の駆動スプロケットの回転方向が反対方向になるようにモータによって駆動する駆動部と、
前記アームの前記他端と前記チェーンとの各連結点に設けられ当該連結点を支持した状態で床面を走行するガイドローラとから構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両リフト装置。
【請求項5】
前記水平移動手段は、
前記テーブルの下方に配置され、シリンダ本体が一方の前記アームの前記他端に回動自在に連結され、ロッド先端部が他方の前記アームの前記他端に回動自在に連結されるテレスコピック・シリンダと、
前記アームの前記他端と、前記シリンダ本体及び前記ロッド先端部との各連結点に設けられ当該連結点を支持した状態で床面を走行するガイドローラとから構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両リフト装置。
【請求項6】
前記一組のアーム及び前記水平移動手段は、前記テーブルの幅方向において左右一対で設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載の車両リフト装置。
【請求項7】
前記テーブルは、前記左右一対で設けられた前記一組のアームそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項6記載の車両リフト装置。
【請求項8】
前記ガイドローラを走行させるガイドレールが床面に設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の車両リフト装置。
【請求項9】
前記テーブルが下降時に、当該テーブルの車両載置面が床面と同一高さになるように、床に掘り込まれた凹部内に前記昇降機構が格納されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のうち何れか1項に記載の車両リフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−100376(P2010−100376A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271918(P2008−271918)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)