説明

車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム

【課題】車両の位置情報を根拠に運転者の運行状態を判定し、危険状況が感知されると運転者に警告メッセージを自動に出力するようにした車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る非正常運転判定及び警報システムは、少なくとも一つ以上のセンサを含み、これを介して車両の運行状況を感知する感知手段、車両の位置基盤情報を受信する位置情報受信手段、前記感知手段により検出された情報と前記位置情報受信手段により受信された位置基盤情報を根拠に、現在走行中の道路で前記感知手段が出力することのできる許容範囲を算出する演算統計部、及び前記演算統計部により算出された値を根拠に前記感知手段により検出された値を比較し、車両の非正常運転状態の可否を判定する非正常運転判定部を含んで構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムに係り、より詳しくは、特に別途の追加構成なく車両の位置情報を根拠に運転者の運行状態を判定し、危険状況が感知されると運転者に警告メッセージを自動に出力するようにした車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故の原因は、運転者の不注意や道路環境による突発的な危険状況の発生など様々な要因が関連していることがあるが、この中でも速度オーバー又は眠気運転による事故の比重は毎年増加する傾向にあり、これらは殆どが人命事故に繋がる大型事故を引き起こすことになるので、深刻な社会問題となっている。
このような問題点を解消するため、主な自動車製造企業などは車両の安全運行を補助する多様な新規システムを持続的に開発して車両に適用している。
一方、従来の眠気運転判定技術は主にカメラに基づき運転者の状態を感知するほか、センサなどを介して運転者の脈搏数をモニタリングすることにより眠気運転の可否を判定するようになっているものが殆どである。
【0003】
即ち、前者の場合、車両の内部に設けられた室内カメラを介して運転者の顔を撮影し、運転者のまぶた開閉程度、瞬き、瞳の動きなどを把握し、これを根拠に眠気運転可否を判定するようになっており、後者の場合、眠気状態では運転者の脈搏数が減る現象を根拠に判定するようになっている。
したがって、前述した従来技術の場合、運転者の脈搏数を検出するためのセンサと分析アルゴリズム、又は瞳の動きを撮影するカメラと映像を処理するH/W及び分析するS/Wなど、複雑な追加な構成が必要であるだけでなく、このような構成を全て揃えても単に眠気運転による非正常運行を感知するのみであるため、システムの具現に要する費用に比べて効果が少ないと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−171393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の事情を勘案してなされたものであって、別途の追加構成なく車両の位置情報を根拠に運転者の運行状態を判定し、危険状況が感知されると運転者に警告メッセージを自動的に出力するようにした車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムは、自動車の非正常運転状態を判定するシステムにおいて、少なくとも一つ以上のセンサを含み、これを介して車両の運行状況を感知する感知手段、車両の位置基盤情報を受信する位置情報受信手段、前記感知手段により検出された情報と前記位置情報受信手段により受信された位置基盤情報を根拠に、現在走行中の道路で前記感知手段が出力することのできる許容範囲を算出する演算統計部、及び前記演算統計部により算出された値を根拠に前記感知手段により検出された値を比較し、車両の非正常運転状態の可否を判定する非正常運転判定部を含んで構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記警報システムは、前記演算統計部により算出された値を所定時間累積格納し、これを基準データとして管理するデータ格納部をさらに備え、前記非正常運転判定部はこのデータ格納部に格納された基準データを根拠に前記感知手段により検出されたデータを比較し、車両の非正常運転状態の可否を判定するようになっていることを特徴とする。
【0008】
前記非正常運転判定部は、前記感知手段により検出された値のうち少なくともいずれか一つが前記演算統計部により算出された許容範囲を外れる場合、非正常運転状態と判定することを特徴とする。
【0009】
前記非正常運転判定部は、前記感知手段により検出された値のうち少なくともいずれか一つが前記データ格納部に格納されている基準データの範囲を外れる場合、非正常運転状態と判定することを特徴とする。
【0010】
前記感知手段は、操向角センサ(SAS;Steering Angle Sensor)、車速センサ、加速センサ、角速度センサのうち少なくともいずれか一つを含んで構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記位置基盤情報はGPS位置情報、マップ(map)情報、道路情報、交通状況情報のうち少なくともいずれか一つを含んで構成されていることを特徴とする。
【0012】
前記非正常運転判定部の制御に従い警告メッセージを出力する警告表示部がさらに備えられていることを特徴とする。
【0013】
車両には外部ネットワークに接続するための無線通信部がさらに備えられ、車両の外部には前記ネットワークに連結され前記車両の無線通信部から送信されてくる少なくとも一つ以上の情報を収集して統合管理する運営サーバがさらに備えられ、前記非正常運転判定部は走行中に非正常運転状態と確認された地点での位置情報を、前記無線通信部を介して前記運営サーバに送信することを特徴とする。
【0014】
前記演算統計部及び非正常運転判定部は、ECU(Electronic Control Unit)などで構成された制御部内に備えられていることを特徴とする。
【0015】
前記運営サーバは収集された情報を少なくとも一つ以上の車両に周期的に送信するように構成され、前記車両内の非正常運転判定部は前記無線通信部を介して前記運営サーバから受信された情報を根拠に危険地域を判定し、前記警告表示部を介して警報メッセージを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高価で複雑な構成を車両に追加せず、車両の位置情報を根拠に運転状態を簡単に判定することができるようになるに伴い、製造コストを節減しながらも信頼度の高い効率的な非正常運転判定システムを提供することができる。
さらに、運転状態を判定した結果、非正常運転状態が確認され危険状況が予測されるようになれば、警告灯又は音声メッセージなどを介して運転者に直ちに警報を提供することにより事故の発生を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1実施形態に係る車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムの機能ブロック図である。
【図2】図1の構成を有するシステムの警報メッセージ出力動作を例示した図である。
【図3】本発明の2実施形態に係る非正常運転判定及び警報システムの機能ブロック図である。
【図4】運転者に危険地域を案内する警報メッセージを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しながら本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施形態に係る車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムの機能ブロック図である。
図1で符号11は、CAN(Control Area Network)を介して送信される複数の運行状況感知情報、即ち操向角センサ(SAS;Steering Angle Sensor)、車速センサ、加速センサ、角速度センサなどの出力情報と、マルチメディアCANを介して送信される位置基盤情報、即ちGPS位置情報、マップ(map)情報、道路情報、交通状況情報などのナビゲーション情報を印加されてこれを根拠に非正常運転状況を判定し、危険の感知時に警報発生を制御する非正常運転判定部である。
【0019】
さらに、符号12は、前記運行状況感知情報と位置基盤情報を根拠に、現在走行中の道路で各感知情報が有する許容範囲を算出する演算統計部であり、13は演算統計部により算出された値を一定時間累積させて格納し、基準データとして管理するデータ格納部であり、符号20は非正常運転判定部11の制御に従い警告メッセージを出力する警告表示部である。
一方、非正常運転判定部11と演算統計部12はECU(Electronic Control Unit)で構成される制御部内に統合させて具現されてもよく、それぞれの構成が個別に独立して具現されてもよい。
【0020】
次いで、前記構成を有する装置の動作を説明する。
車両内に取り付けられた各種センサは、車両の運行状態を判断するのに必要な測定情報を感知し、CANを介して送信するようになっている。
一方、非正常運転判定部11は、CANを介しSAS、車速センサ、加速センサ、角速度センサなどと連結され、マルチメディアCANを介しナビゲーションと連結される。
したがって、制御手段内の非正常運転判定部11は車両内の各種センサ等から運行状態と関連する情報を受信し、マルチメディアCANを介し車両の現在位置情報と道路情報、交通情報などを受信することになる。
受信された情報は、演算統計部12により約定された演算及び統計処理が実施されることになる。
【0021】
一方、前記演算統計部12で行われる演算及び統計過程は約定されたアルゴリズムにより実施される。各センサの出力値が有する相対的連関指数が算出され、その算出結果が互いに比較され、所定時間の周期で統計化された情報として出力されることになる。
即ち、例えば車両が現在高速道路上を走行していると仮定すれば、前記非正常運転判定部11はCANを介し車両速度と操向角の変化量などを印加されることになり、前記マルチメディアCANを介しては車両の現在位置、道路及び交通状況情報などを含む位置基盤情報の入力を受けることになる。
非正常運転判定部11は、これをデータ格納部13に一時格納するとともに、演算統計部12を介して車両の運転状態を判断するのに必要な指標値を算出する。例えば当該高速道路の制限速度と渋滞状況などを勘案して現在の道路状況で車両が運行することのできる速度の範囲を算出し、道路の曲率半径に基づき操向ホイール(運転台;ハンドル)が示す角度の適正範囲を導き出す。
【0022】
一方、非正常運転判定部11は、前述の過程により算出された値をデータ格納部13に格納し、所定時間の周期で統計化して累積管理する。
前記CANを介し受信された値等のうちいずれか一つが、演算統計部12により算出された許容範囲値、又はデータ格納部13に格納された基準データの範囲を外れるようになれば、非正常運転判定部11は警告表示部20を駆動させることになる。その結果、図2に示すように、車両のクラスタ(計器盤)には非正常運転状態であることを報知する警告灯が点灯され、スピーカーを介しては危険状態であることを報知する警告メッセージが出力される。
例えば、走行中の道路状況に照らし操向ホイールが多すぎる変化量を見せるか、加速及び減速パターンが高速道路走行状況と見難い大きい変化を見せる場合、非正常運転判定部11はこれを非正常運転状態と判定することになる。
【0023】
一方、非正常運転判定部11が車両の運転状態を判断する基準は大きく三つに区分される。即ち、高速道路における高速走行モード、国道又は都心市内における中速走行モード、そして渋滞道路における低速走行モードに分けられる。
ナビゲーションから送信されたデータから取得した情報により、現在走行中の道路が国道や都心の市内であることを確認することになると、非正常運転判定部11は中速走行モードに基準値を設定し、演算統計部12により算出された値、即ち位置基盤情報とSAS検出値、加速センサ及び角速度センサ検出値を根拠に算出された許容範囲演算結果を、各センサにより検出されたデータと比較して非正常運転の可否を判定することになる。
【0024】
前記低速走行モードでは、前記マップ情報と急加速/急減速を判定する加速度センサの測定値が用いられ、道路屈曲度と車速、車両経路情報基盤の現在の横加速度、及びステアリングホイール値などが危険の判定に参照される。
即ち、前記実施形態によれば、ナビゲーションから受信された道路情報とCANを介し検出された車両状態情報とを根拠に、車両の非正常運転状態を効率よく判定することのできるシステムを具現することができる。
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を外れない範囲内で多様に変形させて実施することができる。
【0025】
図3は、本発明の2実施形態に係る車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システムの機能ブロック図を示したものである。
前記演算統計部により算出された情報は、当該道路を通行する他の車両においても重要な情報として利用され、特に多数の車両から収集された情報を分析した結果、多数の運転者の共通する非正常運転状態を示す地点が確認される。このように道路自体が危険要素を内包した道路と確認された地点に対しては、事故予防のため当該情報を共有する努力が必要になる。
図3に示す本発明の2実施形態においては、外部ネットワーク(インターネット)に接続するための無線通信部30がさらに備えられ、多数の車両から情報を収集して統合管理する運営サーバ40が備えられる。
【0026】
即ち、非正常運転判定部51は、道路走行中に非正常運転状態と確認された地点での位置情報と時間情報とを、無線通信部30を介しインターネットに連結された運営サーバ40へ送信することになり、運営サーバ40は多数の車両の共通する非正常運行状態を示す地点を抽出し、当該位置情報を位置基盤情報又は交通情報としてネットワークに連結された多数の車両に送信することになる。
一方、各車両の非正常運転判定部51は、無線通信部30を介して運営サーバ40から送信される情報を受信し、これを根拠に警告表示部20を駆動制御することにより、図4に示すように、運転者に危険地域を報知し注意を喚起させる。
前記実施形態によれば、道路の状態が不安定で事故発生の危険がある地点に対し多数の車両が情報を共有できるようになることにより、事故の危険を予防し、車両の安全な運行を補助することのできるシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
10、50 制御部
11、51 非正常運転判定部
12 演算統計部
13 データ格納部
20 警告表示部
30 無線通信部
40 運営サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の非正常運転状態を判定するシステムにおいて、
少なくとも一つ以上のセンサを含み、これを介して車両の運行状況を感知する感知手段、
車両の位置基盤情報を受信する位置情報受信手段、
前記感知手段により検出された情報と前記位置情報受信手段により受信された位置基盤情報を根拠に、現在走行中の道路で前記感知手段が出力することのできる許容範囲を算出する演算統計部、及び
前記演算統計部により算出された値を根拠に前記感知手段により検出された値を比較し、車両の非正常運転状態の可否を判定する非正常運転判定部
を含んで構成されていることを特徴とする車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項2】
前記演算統計部により算出された値を所定時間累積格納し、これを基準データとして管理するデータ格納部をさらに備え、
前記非正常運転判定部はこのデータ格納部に格納された基準データを根拠に前記感知手段により検出されたデータを比較し、車両の非正常運転状態の可否を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項3】
前記非正常運転判定部は、前記感知手段により検出された値のうち少なくともいずれか一つが前記演算統計部により算出された許容範囲を外れる場合、非正常運転状態と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項4】
前記非正常運転判定部は、前記感知手段により検出された値のうち少なくともいずれか一つが前記データ格納部に格納されている基準データの範囲を外れる場合、非正常運転状態と判定することを特徴とする請求項2に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項5】
前記感知手段は、操向角センサ(SAS;Steering Angle Sensor)、車速センサ、加速センサ、角速度センサのうち少なくともいずれか一つを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項6】
前記位置基盤情報は、GPS位置情報、マップ(map)情報、道路情報、交通状況情報のうち少なくともいずれか一つを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項7】
前記非正常運転判定部の制御に従い警告メッセージを出力する警告表示部がさらに備えられていることを特徴とする請求項1に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項8】
車両には外部ネットワークに接続するための無線通信部がさらに備えられ、
車両の外部には前記ネットワークに連結され前記車両の無線通信部から送信されてくる少なくとも一つ以上の情報を収集して統合管理する運営サーバがさらに備えられ、
前記非正常運転判定部は走行中に非正常運転状態と確認された地点での位置情報を、前記無線通信部を介して前記運営サーバに送信するようになっていることを特徴とする請求項7に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項9】
前記演算統計部及び非正常運転判定部はECU(Electronic Control Unit)などで構成された制御部内に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。
【請求項10】
前記運営サーバは収集された情報を少なくとも一つ以上の車両に周期的に送信するように構成され、
前記車両内の非正常運転判定部は、前記無線通信部を介して前記運営サーバから受信された情報を根拠に危険地域を判定し、前記警告表示部を介して警報メッセージを出力するようになっていることを特徴とする請求項8に記載の車両位置情報基盤の非正常運転判定及び警報システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−84236(P2013−84236A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−94038(P2012−94038)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】