説明

車両周辺監視装置

【課題】 スミアによる物体の誤検出をなくすことができる車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】 車両周辺の所定範囲を撮像するCCDカメラ(11)を有し、当該CCDカメラ(11)からの画像情報に基づいて前記車両の周辺に存在する物体に関する情報を運転者に与える車両周辺監視装置において、高輝度光源によりCCDカメラ(11)による撮像画像上に現れる直線状のスミア画像を検出するスミア検出手段(41a)と、前記スミア検出手段により検出されたスミア画像を除去するスミア除去手段(41b)を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両周辺監視装置にかかり、より詳細には、自動車などの車両の周辺を監視して車両運転における運転者の安全確認を支援するのに有効に適用される車両周辺監視装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車などの車両の周辺を監視する車両周辺監視装置が提案され、実用化されている。この車両周辺監視装置は、車両の後方や側方といった運転者からの視認が難しい領域(監視領域)あるいは車両の前方の領域について、車両に取り付けたビデオカメラを用いてこの監視領域を撮像するとともにこの撮像画像を運転席のダッシュボード上などに取り付けられたディスプレイにより表示し、監視領域の監視を行うものである。
【0003】このような車両周辺監視装置としては、本出願人が、特願平6−42433号にて、提案した装置(以下先願装置という)がある。この先願装置は、車両に所定距離だけ離して設置された2台のCCDカメラと、この画像情報を個別に格納保持するフレームメモリと、CPUなどにより構成されるデータ処理部と、CCDカメラからの画像あるいはデータ処理部により処理されたグラフィック画像などを表示するディスプレイと、ブザーなどにより構成される警報部とを有している。
【0004】そして、この先願装置では、上記フレームメモリの一方に記録されている全ての画像情報を高さ0と仮定し、この画像情報を他方のカメラで撮像したとして得られる投影画像情報を作成し、作成された投影画像情報と他方のメモリに記録されている画像情報との差より路面上の画像を除去する。また、他方のフレームメモリに記録されているデータの水平方向の微分値と前記路面画像が除去された画像情報に基づいて物体のエッジを検出する。そして、この物体エッジについて、フレームメモリに記録されている画像情報により物体の位置を算出するとともにこの算出した物体の位置情報に基づいて警報を出力するものである。
【0005】このような先願装置は、CCDカメラにより撮像された画像情報に基づいて、高さ「0」である背景画像すなわち路面画像を除去することにより物体のエッジ画像を生成し、生成したエッジ画像に基づいて物体と車両との相対位置などを算出するように構成したので、無用な演算処理が省け、処理を高速化できるという特徴を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したようにこの先願装置においては、撮像手段としてCCDカメラを採用しているので、撮像領域内に太陽光による反射面や光源といった極めて高輝度の画像が存在すると、この高輝度画像から画面の上下方向の全域に亘って直線状に延びる高輝度の直線画像、いわゆるスミアと呼ばれる画像が現れる。このスミアは、上述した2台のCCDカメラにより撮像した画像情報において、双方の画像情報あるいは一方の画像情報上に現れる。すなわち、その撮像条件に応じて様々なパターンで現れる。
【0007】そして、このようなスミアが出現した場合には、このスミアを物体のエッジ点と誤認識することにより、本来存在しない物体を検出してしまう可能性があり、この点において、さらなる改良の余地があった。よって本発明は、このような改良点に鑑み、スミアによる物体の誤検出をなくすことができる車両周辺監視装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明によりなされた車両周辺監視装置は、図1の基本構成図に示すように、車両周辺の所定範囲を撮像するCCDカメラ(11)を有し、当該CCDカメラ(11)からの画像情報に基づいて前記車両の周辺に存在する物体に関する情報を運転者に与える車両周辺監視装置において、高輝度光源によりCCDカメラ(11)による撮像画像上に現れる直線状のスミア画像を検出するスミア検出手段(41a)と、前記スミア検出手段により検出されたスミア画像を除去するスミア除去手段(41b)を有することを特徴としている。(請求項1)
【0009】また、前記スミア検出手段(41a)は、前記CCDカメラ(11)からの画像情報に基づいてエッジ画像を生成するエッジ画像生成手段(41c)と、前記エッジ画像を構成する画素の着目画素について、その座標値を取得する座標値取得手段(41d)と、前記着目画素の座標値に基づいて、前記CCDカメラ(11)からの画像情報中にて前記着目画素に対応する対応画素の輝度値を取得する第1輝度値取得手段(41e)と、前記第1輝度値取得手段(41e)からの対応画素の輝度値に基づき、前記対応画素の輝度値が規定値以上であった場合に、前記CCDカメラ(11)からの画像情報を参照し、前記対応画素を含む直線上に存在する画素群の輝度値を取得する第2輝度値取得手段(41f)と、前記第2輝度値取得手段(41f)により取得された画素群の輝度値に基づき、前記対応画素を含む直線上に存在する画素群がスミア画像であるか否かを判定するスミア判定手段(41g)とを有していることを特徴としている。(請求項2)
【0010】また、前記スミア除去手段(41b)は、前記スミア判定手段(41g)によりスミア画像と判定された画素群に隣接する境界線上の画素群の輝度値を取得する第3輝度値取得手段(41h)と、前記第3輝度値取得手段(41h)により取得された境界線上の画素群の輝度値に基づいて前記スミア画像と判定された画素群の輝度値を算出するとともに当該算出した輝度値によりスミア画像と判定された画素群を補間する画像補間手段(41i)とを有することを特徴としている。(請求項3)
【0011】また、前記座標値取得手段(41d)は、前記エッジ画像生成手段(41c)により生成されたエッジ画像中の任意の一列についてエッジ点を探索することを特徴としている。(請求項4)
【0012】また、車両に所定距離だけ離して設置され、車両周辺の所定範囲を撮像する2台のCCDカメラ(11R、11L)を有し、当該CCDカメラ(11R、11L)からの画像情報に基づいて前記車両の周辺に存在する物体に関する情報を運転者に与える車両周辺監視装置において、高輝度光源によりCCDカメラ(11)による撮像画像上に現れる直線状のスミア画像を検出するスミア検出手段(41a)と、前記スミア検出手段(41a)により検出されたスミア画像を除去するスミア除去手段(41b)と、前記スミア除去手段(41b)によりスミア画像が除去された撮像画像について、一方のCCDカメラ(11R)にて撮像された全ての画像を高さ0と仮定し、この画像を他方のカメラで撮像したとして得られる投影画像データを作成し、作成された投影画像データと他方のメモリに記録されている画像データとの差より路面上の画像を除去し、物体のエッジを検出する物体エッジ検出手段(41j)と、前記物体エッジ検出手段(41j)にて検出された物体エッジにより物体の位置を算出する物体位置算出手段(41k)と、前記物体位置算出手段(41k)より算出された物体の位置に基づいて警報を出力する警報手段(60)とを有すること特徴としている。(請求項5)
【0013】上記請求項1の構成によれば、スミア検出手段(41a)は、高輝度光源により現れる直線状のスミア画像を検出し、スミア除去手段(41b)は、この検出されたスミア画像を除去する。
【0014】すなわち、スミア画像を検出する手段と、検出されたスミア画像を除去する手段とを設けたので、スミアによる物体の誤検出をなくすことができる。
【0015】そして、上記スミア検出手段(41a)の具体的構成としては、請求項2に示す構成が適用される。そして、同請求項の各構成は、次の作用をなす。すなわち、エッジ画像生成手段(41c)は、CCDカメラ(11)からの画像情報に基づいて物体の縁部画像であるエッジ画像を生成し、座標値取得手段(41d)は、エッジ画像を構成する画素の着目画素について、その座標値を取得する。
【0016】第1輝度値取得手段(41e)は、着目画素に対応する対応画素の輝度値をCCDカメラ(11)からの画像情報を参照することにより取得し、第2輝度値取得手段(41f)は、上記対応画素の輝度値が規定値以上であった場合に、前記CCDカメラ(11)からの画像情報を参照し、前記対応画素を含む直線上に存在する画素群の輝度値を取得する。そして、スミア判定手段(41g)は、取得された画素群の輝度値に基づいてこの画素群がスミア画像であるか否かを判定する。
【0017】このように、スミアを物体と同等に扱うことによりCCDカメラからの撮像画像からスミアのエッジ画像を含むエッジ画像を取得する手段と、このスミアが直線状に現れるという性質を有することに基づいてスミア候補点を含む直線上に存在する画素群すなわちスミア画像の輝度値を取得するとともにこの取得した画素群の輝度値に基づいてこのスミア候補点がスミアに属するか否かを判定する手段とを設けたので、処理を単純化することができるとともにスミアを高速にかつ確実に検出することができる。
【0018】また、上記スミア除去手段(41b)の具体的構成としては、請求項3に示す構成が適用される。そして、同請求項の各構成は、次の作用をなす。すなわち、第3輝度値取得手段(41h)は、前記スミア判定手段(41g)によりスミア画像と判定された画素群に隣接する境界線上の画素群の輝度値を取得し、画像補間手段(41i)は、この境界線上の画素群の輝度値に基づいて前記スミア画像と判定された画素群の輝度値を算出するとともに当該算出した輝度値によりスミア画像と判定された画素群の補間を行う。
【0019】このように、スミアと判定された領域(直線)に隣接する撮像画像の境界線上に存在する画素の輝度値に基づき、スミアと判定された画素群の輝度値を算出し、この算出した輝度値によりスミア画像の補間を行うように構成したので、スミアと判定された領域に関し、その周囲領域の画素の輝度値に近い輝度値の画素として補間されるので、スミア除去後の画像に関して違和感の少ない画像を得ることができる。
【0020】また、上記請求項4の構成においては、請求項2記載の座標値取得手段(41d)にてエッジ点を探索する場合に、前記エッジ画像中の任意の一列について探索を行うように構成している。
【0021】すなわち、この請求項4の構成においては、スミアが画像の全域に亘って直線状に現れる性質を利用し、任意の一列のみを探索時の対象としているので、その処理が単純となり高速に行うことができる。
【0022】また、上記請求項5の構成においては、スミア検出手段(41a)は、高輝度光源により現れる直線状のスミア画像を検出し、スミア除去手段(41b)は、この検出されたスミア画像を除去する。
【0023】物体エッジ検出手段(41j)は、スミア画像が除去された撮像画像について、一方のCCDカメラ(11R)にて撮像された全ての画像を高さ0と仮定し、この画像を他方のカメラで撮像したとして得られる投影画像データを作成し、作成された投影画像データと他方のメモリに記録されている画像データとの差より路面上の画像を除去することにより物体のエッジを検出する。物体位置算出手段(41k)は、この物体エッジにより物体の位置を算出し、警報手段(60)は、算出された物体の位置に基づいて警報を出力する。
【0024】すなわち、この請求項5の構成においては、スミア検出手段(41a)及びスミア除去手段(41b)によりスミア画像が除去された撮像画像について、高さ「0」である背景画像すなわち路面画像を除去することにより物体のエッジ画像を生成し、生成したエッジ画像に基づいて物体と車両との相対位置などを算出するように構成したので、スミアが現れた画像においても物体と車両との相対位置などを算出することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の具体例を図面を参照して説明する。図2は、本発明が適用される装置の構成を説明するブロック図で、同図において、10は車両周辺を撮像する撮像部、20はハンドルの舵角あるいは操舵輪の操舵角を検出し、この舵角情報を転回情報として出力する舵角検出部、30は撮像部10から得られた撮像画像情報あるいは車両の形状情報等を保持する記憶部、40は予め格納されたプログラムに従って動作するコンピュータによって構成されるデータ処理部、50はディスプレイ51を備えた表示部、60は警報音あるいは音声ガイダンスを発生する警報部である。
【0026】上記撮像部10は、CCDカメラ11により構成されている。そして、このCCDカメラ11は、右側CCDカメラ11Rと左側CCDカメラ11Lとから構成されている。そして、これらのCCDカメラ11R及び11Lは、所定距離隔てて互いに平行な状態で車両に取り付けられている。例えば、図3に示すように、車両100の後方中央部の高さHの位置に、車両の後方に向けて所定距離隔てて互いに平行に且つ俯角θS で取り付けられている。これにより、この撮像部10は車両後方の監視領域100a〔100a(11R)及び100a(11L)〕を撮像する。
【0027】舵角検出部20は、ハンドルの回転量及び回転方向を検出するハンドル舵角センサや操舵輪(一般的に前輪)の操舵角を検出する操舵角センサ(いずれも図示せず)などにより構成され、これらのセンサからの検出信号により車両の転回方向を転回情報として出力する。
【0028】記憶部30は、右側フレームメモリ31R、左側フレームメモリ31L、右側補正画像メモリ32R、左側補正画像メモリ32L、差分画像メモリ33、微分画像メモリ34及びエッジ画像メモリ35を有している。上記右側フレームメモリ31R及び左側フレームメモリ31Lには、撮像部10の右側CCDカメラ11R及び左側CCDカメラ11Lにより撮像された画像情報が一時的に蓄えられる。
【0029】上記右側補正画像メモリ32R及び左側補正画像メモリ32Lには、右側フレームメモリ31R及び左側フレームメモリ31Lに蓄えられた画像情報のそれぞれに対して所定の補正処理が施された補正画像情報が保持される。そして、上記差分画像メモリ33、微分画像メモリ34及びエッジ画像メモリ35には、それぞれ後述する差分画像、微分画像及びエッジ画像が保持される。
【0030】これらの各メモリ(フレームメモリ31乃至エッジ画像メモリ35)は、m行×n列の構成を有し、例えば512画素(m)×512画素(n)のメモリとして構成されている。そして、このメモリを構成する各画素には、例えば256階調(「0」乃至「255」)あるいは2階調(「0」または「1」)の輝度値データが格納される。
【0031】データ処理部40は、動作プログラムに従って動作するCPU41と、この動作プログラムが格納されたROM42と、CPU41の動作時において必要な情報を一時格納するRAM43とを有している。表示部50は、ディスプレイ51を有し、このディスプレイ51はCPU41から出力された表示画像信号に基づいて、物体の車両との相対位置を表示したりあるいは運転者に対するメッセージを表示したりする。警報部60は、CPU41から出力されたブザー音信号あるいは音声ガイダンス信号に基づいて、スピーカ61からブザー音あるいは音声ガイダンスを出力する。
【0032】次に、以上説明した構成を有する具体例の動作をフローチャートを参照して説明する。この具体例においては、まず、図4のフローチャートのステップS110にて、撮像部10の右側CCDカメラ11R及び左側CCDカメラ11Lからの撮像画像を、それぞれ右側画像情報及び左側画像情報として、対応する右側フレームメモリ31R及び左側フレームメモリ31Lに格納する。
【0033】すなわち、このステップS110では、例えば図6に示すような、2本の白線300が描かれた路面400及びこの路面400に立設され、その表面が例えば金属光沢面といった反射面とされたポール状の物体200(以下、単にポール200という)の画像と、このポール200に太陽光などの強い光が反射することにより現れた縦方向(V方向)の全域に亘って延びる直線状の光であるスミア500の画像とが右側フレームメモリ31R及び左側フレームメモリ31Lに格納される。そして、このステップS110の処理が終了するとステップS120に移行する。
【0034】ステップS120では、スミア除去処理を行う。このスミア除去処理は具体的には、図5のフローチャートによりなされる。以下、この図5のフローチャートを参照してこのスミア除去処理を説明する。
【0035】このスミア除去処理では、まず、ステップS210にて処理対象となる画像の選択を行う。上述したように、このスミアは、その撮像条件に応じて、2台のCCDカメラにより撮像した画像情報の双方の画像情報あるいは一方の画像情報上に様々なパターンで現れる。従って、スミアの検出並びに除去処理は、右側フレームメモリ31R及び左側フレームメモリ31Lに格納された双方の撮像画像について行う必要がある。そして、このステップS210では、処理対象とする撮像画像を右側フレームメモリ31Rに格納された撮像画像と、左側フレームメモリ31Lに格納された撮像画像のいずれにするかを選択する。
【0036】引き続くステップS220では、上記ステップS210で選択された撮像画像について微分処理を施し、微分画像を作成する。より詳細には、このステップS220では、検出対象とされた側のフレームメモリ31Rあるいは31Lに格納された撮像画像に関し、そのm行n列の画像データの輝度値Im,n を水平方向(図6におけるH方向に相当)に走査し、次式(1)の演算によって微分画像を生成する。
|Im,n+1 −Im,n |≧E0 ならば Em,n =1 |Im,n+1 −Im,n |<E0 ならば Em,n =0 ・・・(1)
上記式中、E0 はしきい値
【0037】そして、この微分処理を撮像画像に対して行った場合には、水平方向(図6におけるH方向)の輝度境界すなわち明るさに差を有する部分がエッジ画像すなわち値「1」が付与された画像として抽出される。このようにして作成された微分画像については、微分画像メモリ34に格納される。そして微分画像を格納した後にステップS230に移行する。
【0038】ステップS230では、エッジ点の探索を行う。このエッジ点の探索処理では、ステップS220で作成された微分画像(すなわち物体のエッジ画像)中の任意の一列の画素群について、この画素群を水平方向に走査しながらエッジ点を検出する処理すなわち値「1」が付与された画素を検出する処理がなされる。
【0039】引き続くステップS231では、対象画像(撮像画像)中の画素の輝度値の取得処理がなされる。詳細には、このステップS231では、上記ステップS230で探索された画素群において、検出された画素すなわち値「1」が付与された画素についてその座標値を取得し、対象画像すなわちフレームメモリ31Rあるいは31Lに格納された撮像画像において対応する座標値の画素の輝度値を取得する。そして、このステップS231の処理が終了するとステップS232に移行する。
【0040】ステップS232では、上記ステップS231で取得された撮像画像中の画素の輝度値を参照し、この輝度値が規定値以上であるかを判定する。この判定処理における規定値は、スミアを判定するための高輝度の所定値として与えられており、例えば値「200」として与えられる。
【0041】そして、このステップS232の判定処理では、上記ステップS231で取得した画素の輝度値に基づき、この輝度値が規定値(値「200」)を超えていた場合(Y)には、この画素をスミア候補点と判定し、引き続くステップS240に移行する。一方、この画素の輝度値が規定値(値「200」)以下であった場合(N)には、この画素を通常の可視画像と判定するとともに上述したステップS230に移行してエッジ点の探索を行い、次のエッジ点の検出を行う。
【0042】ステップS240では、垂直方向に存在する画素群の輝度値を取得する。この輝度値取得処理では、上記ステップS232でスミア候補点と判定された画素について、その画素から垂直方向に延びる直線上に存在する画素群の輝度値を、フレームメモリ31Rあるいは31Lを参照することにより取得する処理がなされる。
【0043】引き続くステップS241では、上記ステップS240で取得した画素群の輝度値に基づき、この画素群を構成する全ての画素の輝度値が規定値以上であるかを判定する。なお、この判定処理における規定値は、上記ステップS232の規定値と同じくスミアを判定するための高輝度の所定値として与えられており、例えば値「200」として与えられている。
【0044】この判定処理において、判定対象の画素群の輝度値がこの規定値以上であった場合、すなわち上述したスミア候補点を含めた垂直方向に延びる画素群が全て高輝度の画素で構成されていた場合(Y)にはステップS242に移行し、このステップS242にて、判定対象の画素群をスミア画像として認識する。そして、この認識したスミア画像の情報例えばスミア画像を示す座標情報については、データ処理部40のRAM43に格納保持する。
【0045】一方、判定対象の画素群中に、輝度値が上述した規定値以下である画素が存在した場合(N)には、この判定対象の画素群はスミア画像ではないとして、上述したステップS230に移行してエッジ点の探索を行い、次のエッジ点の検出を行う。そして、上述したステップS242の処理が終了すると、ステップS250に移行する。
【0046】ステップS250では、エッジ点の探索が終了したか否かを判定する。すなわち、このステップS250では、上記ステップS230で説明した画素群を水平方向に走査しながらエッジ点を検出する処理を、その水平方向全域に亘って実行したか否かを判定する。この判定処理は、その時点において走査対象となっている画素の座標値に基づいてなされ、この座標値が水平方向終端に相当する座標値であるか否かによりなされる。
【0047】そして、この判定処理にて探索終了すなわち走査対象となっている画素の座標値水平方向終端に相当する座標値であった場合(Y)にはステップS260に移行し、未だ探索途中である場合(N)には、上述したステップS230に移行して残りのエッジ点の探索を行う。
【0048】ステップS260では、スミア画像の有無を判定する。このスミア画像の有無判定は、データ処理部40のRAM43に格納保持されたスミア画像の情報に基づいてなされる。そして、このRAM43にスミア画像の存在を示す情報が格納されている場合には「スミア有(Y)」と判定してステップS270に移行し、またスミア画像の存在を示す情報が格納されていない場合には「スミア無(N)」と判定してステップS280に移行する。
【0049】ステップS270では、境界線上画素群の輝度値取得処理を行う。詳細には、このステップS270では、上記ステップS260によりスミア画像と判定された画素群の座標値をRAM43を参照することにより取得し、この取得した座標値に基づきこのスミア画像に隣接する境界線上の画素群の輝度値を取得する。なお、このステップS270の輝度値取得処理は、上述したスミア画像を挟む両脇の境界線上画素群について行なわれる。
【0050】引き続くステップS271では、ステップS270で取得した境界線上画素群の輝度値に基づき、スミア画像と判定された画素群の輝度値を算出するとともに当該算出した輝度値によりスミア画像と判定された画素群の補間を行う。すなわち、この補間処理では、処理対象となるフレームメモリ31Rあるいは31Lに格納された撮像画像を参照し、上記ステップS270で取得したスミア画像の両脇に存在する境界線上画素群の輝度値に基づき、補間対象となる画素の両脇の画素の輝度値を平均し、この平均値を補間対象となる画素の輝度値に置換することにより上記撮像画像に対する補間を行う。そして、このステップS271の補間処理が終了すると、ステップS280に移行する。
【0051】ステップS280では、上述した一連の処理が、右側フレームメモリ31R及び左側フレームメモリ31Lに格納された双方の撮像画像について行なわれたか否かを判定する。そして、このステップS280にて、一連のスミア除去処理が双方の撮像画像に対して行われた場合(Y)には、このスミア除去処理を終了し、図4のフローチャートにおけるステップS130に移行する。また、一連のスミア除去処理が一方の撮像画像にしか行われていない場合(N)には、再度ステップS210に移行し、未処理の撮像画像に対する一連の処理を実行する。
【0052】ここで、以上説明した一連のスミア除去処理の実際の動作について、図6乃至図9の模式図を参照して説明する。このスミア除去処理においては、まず処理対象となる撮像画像を設定し(S210)、そして、この処理対象となる撮像画像に対し、上式(1)にて説明した微分処理を実行する(S220)。
【0053】例えば、図6にて例示した撮像画像に対してこの微分処理を行った場合には、図7に示すように、符号ED1及びED2、ED7及びED8で示す2本の白線300の縁部の画像と、符号ED3及びED4で示すポール200の垂直方向縁部の画像と、符号ED5及びED6で示すスミア500の縁部の画像がエッジ画像として抽出された微分画像、すなわちこのエッジ画像については値「1」が付与され、その他の画像については値「0」が付与された画像が作成される。そして、この作成された微分画像が、記憶部30の微分画像メモリ34に格納される。
【0054】次いで、図7に符号HLで示す左端画素H1から右端画素H6に亘る水平方向画素列について、左端画素H1から順に走査を行うことによりエッジ点の探索を行う。この探索により、同図の例においてはまず符号H2で示すエッジ点が検出される(S230)。そして、このエッジ点H2に対応する撮像画像中の画素の輝度値すなわち図6に符号H2´で示す画素の輝度値を取得し(S231)、この画素H2´の輝度値がスミアを判定するための規定値を超えているかを判定する。
【0055】仮に、この規定値が図8に示すように輝度値「200」であり、また画素H2´の輝度値が値「180」であったとすると、このエッジ点H2はスミア候補点でないと判定される(S232)。そして、再度、水平方向画素列について探索を行うことより、次の検出点であるエッジ点H3が検出される(S230)。このエッジ点H3についても対応する撮像画像中の画素の輝度値の取得がなされ、これにより図6に符号H3´で示す画素の輝度値が取得される(S231)。
【0056】そして、この画素H3´の輝度値が値「210」であったとすると、このエッジ点H3は上述した規定値「200」を超えているので、このエッジ点H3はスミア候補点と判定される(S232)。この判定を受けて、撮像画像中にて対応する画素群、すなわち画素H3´を含む垂直方向に存在する画素群の輝度値を取得する。より詳細には、図6に符号V11´並びにV12´で示す上下端画素を結ぶ垂直方向の直線VL1´上に存在する垂直画素群の輝度値を取得する(S240)。
【0057】次に、この取得した画素群の輝度値が、図8で説明したスミアを判定するための規定値を超えているかを判定する。この場合、この直線VL1´上の垂直画素群には、比較的低輝度の路面400の画像が含まれているので、この垂直画素群を構成する画素に規定値以下である画素が存在していると判定され、これによりこのエッジ点H3はスミア画像でないと判定する(S241)。
【0058】これにより、再度、水平方向画素列について探索が行なわれ、次の検出点であるエッジ点H4が検出され、対応する撮像画像中の画素、すなわち図6に符号H4´で示す画素の輝度値が取得される(S230、S231)。
【0059】そして、この画素H4´の輝度値が値「240」であったとすると、このエッジ点H4はスミア候補点と判定される(S232)。これにより、画素H4´を含む垂直方向に存在する画素群、すなわち図6に符号V21´並びにV22´で示す上下端画素を結ぶ垂直方向の直線VL2´上に存在する垂直画素群の輝度値が取得される(S240)。
【0060】次に、この取得した画素群の輝度値についての判定がなされる。この場合、この直線VL2´上の垂直画素群は、スミア500の画像であるので、その全てが上述した規定値「200」を超えている。これにより、このエッジ点H4はスミア画像であると判定され(S241、S242)、このエッジ点H4を含む直線VL2´上の垂直画素群すなわち図6における直線VL2に関する情報がスミア画像情報としてRAM43に格納される。
【0061】そして、再度、水平方向画素列について探索が行なわれ、次の検出点であるエッジ点H5が検出され、対応する撮像画像中の画素、すなわち図6に符号H5´で示す画素の輝度値(値「240」)が取得される(S230、S231)。この画素H5´についても、先の画素H4´と同様にその輝度値に基づいて候補点と判定され(S232)、その垂直画素群すなわちVL3´上に存在する垂直画素群の輝度値が取得される(S240)。
【0062】さらに、この取得した垂直画素群の輝度値について判定がなされる。この垂直画素群は、上述したエッジ点H4の垂直画素群と同様にスミア500の画像であるので、スミア画像であると判定され(S241、S242)、このエッジ点H5を含む直線VL3´上の垂直画素群すなわち図7における直線VL3に関する情報がスミア画像情報としてRAM43に格納される。
【0063】そして、図7における右端画素H6まで探索が終了したことを確認した(S250)後にスミアの有無を判定する(S260)。上述した例においては、スミア500によるエッジ画像(図7におけるVL2、VL3)が検出されているので、「スミア有」と判定してこのスミア画像を除去する処理を行う。
【0064】このスミア画像の除去処理では、まず、スミアとして検出されたエッジ画像に隣接する境界線上の画素群の輝度値を取得する処理を行う。例えば、図9(a)に示すように、α、β及びγ行及びa、b、c及びd列の画素からなるマトリクス状のフレームメモリ構成が与えられ、c列がスミア画像に対応する画素群であったとすると、同図に示すように、画素αc、・・・・、γcがいずれも輝度値「230」と高輝度を示す。
【0065】そして、この場合にはスミア画像の両脇であるb列(画素αb、・・・・、γb)及びd列(画素αd、・・・・、γd)の画素群の輝度値を取得する(S270)。続いて、この取得した画素群の輝度値に基づき、スミア画像と判定された画素群を補間するための輝度値を算出する(S271)。この輝度値の算出は、スミア画像と判定された画素の両脇の画素の平均値を算出することによりなされる。
【0066】そして、図9(b)に示すように、α行では、画素αbの輝度値「100」と画素αdの輝度値「110」の平均値「105」をスミア画像の画素αcの輝度値とする。同様に、β行では、画素βbの輝度値と画素βdの輝度値とが同値「120」であるので、この値「120」をスミア画像の画素βcの輝度値とし、γ行では、画素γbの輝度値「110」と画素γdの輝度値「90」の平均値「100」をスミア画像の画素γcの輝度値とし、各輝度値による画像の補間を行っている。
【0067】また、図9(c)に示すように、スミア画像が複数列(b列乃至d列)に亘っている場合には、上述した例と同様にスミア画像の両脇であるa列(画素αa、・・・・、γa)及びe列(画素αe、・・・・、γe)の画素群の輝度値を取得し、この取得した輝度値に基づいて各画素の輝度値を段階的に変化させている。例えば、図9(d)に示すように、その画素αaが輝度値「100」であり画素αeが輝度値「120」であった場合、このα行については、画素αbに輝度値「105」、画素αcに輝度値「110」、画素αdに輝度値「115」がっといったように、その輝度値の変化量が略等しくなるように段階的に変化させた輝度値が与えられている。
【0068】このように、スミアと判定された領域(直線)に隣接する撮像画像の境界線上に存在する画素の輝度値に基づき、スミアと判定された画素群の輝度値を算出し、この算出した輝度値によりスミア画像の補間を行うように構成したので、スミアと判定された領域に関し、その周囲領域の画素の輝度値に近い輝度値の画素として補間されるので、スミア除去後の画像に関して違和感の少ない画像を得ることができる。
【0069】また、上述した一連のスミア除去処理においては、スミア500を物体と同等に扱うことによりCCDカメラ11からの撮像画像からスミアのエッジ画像を含むエッジ画像を取得し、このスミアが直線状に現れるという性質を有することに基づいてスミア候補点を含む直線上に存在する画素群すなわちスミア画像の輝度値を取得するとともにこの取得した画素群の輝度値に基づいてこのスミア候補点がスミアに属するか否かを判定するように構成したので、処理を単純化することができるとともにスミアを高速にかつ確実に検出することができる。
【0070】また、スミアが画像の全域に亘って直線状に現れる性質を利用し、任意の一列のみを探索時の対象としているので、その処理が単純となり高速に行うことができる。
【0071】次に、以上説明したステップS120の処理に続いてなされるステップS130以降の処理について説明する。ステップS130では、上述したステップS120のスミア除去処理が施された撮像画像に対し、歪曲収差の補正処理を行う。すなわち、上記ステップS120の撮像画像は、CCDカメラ11が有するレンズの歪曲収差を含んだ画像となっている。そしてこの歪曲収差は後述する物体の位置検出における誤差の原因となる。
【0072】例えば、格子状の模様を撮像した場合について考えてみると、CCDカメラ11のレンズに収差がないときには、図10(a)に示すようにこの格子状の模様がそのままフレームメモリ31に格納されている。また、そのレンズに収差があるときには、図10(b)に示すように光軸を中心としてその中央部の画像が外方に膨らんだ樽形に歪曲した画像、あるいは図10(c)に示すように光軸を中心としてその中央部の画像が内側に湾曲した糸巻形に歪曲した画像がフレームメモリ31に格納されている。
【0073】そして、このステップS130では、上述した図10(b)あるいは図10(c)に示すような歪曲画像に対して補正処理を施すことにより補正画像情報を生成し、この補正画像情報を右側補正画像メモリ32R及び左側補正画像メモリ32Lに格納する。以下、この画像の歪曲収差の補正処理について説明する。
【0074】図10(d)に示すように、歪曲収差が無い時の点P(x0 ,y0 )が歪曲収差によって点P′(x,y)に結像したものとすると、その収差量Dは次式(2)により表すことができる。
D=[(x0 −x)2 +(y0 −y)2 0.5 ・・・(2)
【0075】そして、図10(b)あるいは図10(c)に示すような歪曲画像において、その収差量Dは光軸からの距離の3乗に比例して大きくなる。すなわち、レンズの中心点より点Pまでの距離の3乗に比例するので、上記式(2)の右辺は、次式(3)により表すことができる。
[(x0 −x)2 +(y0 −y)2 0.5 =k1 [(x02−y020.5 3 ・・・(3)
上記式中、k1 はレンズによって定まる比例定数
【0076】従って、レンズに歪曲収差が存在する場合は、例えば次式(4)の演算を行うことによりこの歪曲収差を補正することができる。
0 ≒x(1+k1 (x2 +y2 ))
0 ≒y(1+k1 (x2 +y2 )) ・・・(4)
【0077】ところで、この式(4)の演算により画像の歪曲収差の補正を行った場合には、隣接画素間の距離が離れてしまい画像の抜けが生じることがある。データ処理部40は、この画像の抜けに関し、隣接する画素の情報に基づいて補間を行う。そして、このような補正処理及び補間処理が施された画像情報は、補正画像情報として右側補正画像メモリ32R及び左側補正画像メモリ32Lにそれぞれ格納し、ステップS130の歪曲収差の補正処理を終了する。
【0078】引き続くステップS140では、路面画像の除去処理を行う。この路面画像の除去処理を説明するにあたり、まず、図3にて説明した光学系において撮像領域(監視領域100a)内における物体の位置算出処理について説明する。
【0079】CCDカメラ11は、図3にて説明したように、車両後方の所定位置に設置俯角θS で取り付けられており、監視領域100aを撮像している。従ってCCDカメラ11による撮像画像はこの所定位置を基準とした画像となっているので、この撮像画像から算出した位置もこの所定位置を基準とした位置となっている。そこで、以後の説明を容易にするため、図11に示すように、この所定位置すなわちカメラ設置位置を基準とした座標をX′,Y′,Z′で表わし、路面を基準とした座標をX,Y,Zで表わすものとする。
【0080】そして、このカメラ設置位置を基準としたX′,Y′,Z′座標系においては、図12(a)に示すように、Z′軸はCCDカメラ11のレンズ光軸として定義され、上記X′軸は路面と平行な軸として定義され、また上記Y′軸はZ′軸とX′軸の双方に直交する軸として定義されている。従って、右側CCDカメラ11R及び左側CCDカメラ11Lは、それぞれのレンズ光軸がZ′軸と一致するように配置されている。また、X′軸に関し、このX′軸上にそれぞれのレンズの中心点が位置するよう配置されるとともに互いに距離dxaだけ離間して配置されている。以後の説明を容易にするため、X′,Y′およびZ′軸の原点Oを左側CCDカメラ11Rのレンズの中心として定義することとする。
【0081】以上のように設置されたCCDカメラ11によって撮像された点P(XP ′,YP ′,ZP ′)は、右側補正情報メモリ32RにPR (xRP,yRP)として保持され、左側補正情報メモリ32LにPL (xLP,yLP)として保持される。
【0082】そしてこの点PのZ′座標ZP ′は、図12(b)のX′Z′平面における模式図で示すように、三角形の相似にて求めることができる。すなわち、この距離ZP ′は、次式(5)で表すことができる。
P ′=dxa・f/(xLP−xRP) ・・・(5)
上記式中、dxaは両レンズの間隔fはレンズの焦点距離
【0083】同様に点PのX′座標XP ′についても、図12(b)のX′Z′平面の模式図で示すように、三角形の相似にて求めることができる。そして点PのY′座標YP ′についても、図示しないY′Z′平面を想定することにより、同様にして求めることができる。すなわち、これら点PのX′座標XP ′及びY′座標YP ′は、それぞれ次式(6)及び式(7)で求めることができる。
P ′=ZP ′xLP/f =dxa・xLP/(xLP−xRP) ・・・(6)
P ′=ZP ′yLP/f =dxa・yLP/(xLP−xRP) ・・・(7)
なお、上記座標XP ′に関し、その基準座標を右側CCDカメラ11Rと左側CCDカメラ11Lの間とする場合には、上式(5)で算出された座標XP ′と両レンズの間隔dxaの1/2の差分をとればよい。
【0084】以上の式(5)乃至式(7)にて算出されたX′Y′Z′座標系における点P(XP ′,YP ′,ZP ′)は、上述したようにカメラ設置位置を基準とした座標系の座標値であるので、この座標値を路面を基準としたXYZ座標系における座標値に変換する必要がある。この場合、撮像部10(CCDカメラ11)の俯角がθS であるとすれば、X′Y′Z′座標での点Pの座標(XP ′,YP ′,ZP ′)と路面を基準としたXYZ座標との関係は上述した図11で示すようになる。
【0085】従って、上式(5)乃至式(7)で算出した座標(ZP ′,YP ′,XP ′)は、次式(8)〜式(10)の実行により、XYZ座標系における点Pの座標(XP ,YP ,ZP )に変換することができる。
P =XP ′ ・・・(8)
P =H−ZP ′cos θS +YP ′sin θS ・・・(9)
P =ZP ′sin θS +YP ′cos θS ・・・(10)
【0086】次に、このステップS140の路面画像(高さ「0」の画像)の除去処理について説明する。図13(a)は、右側CCDカメラ11Rで撮像された後、上述した歪曲収差補正が施され、そして右側補正画像メモリ32Rに保持された右側補正画像を示している。同図において、300は路面上に画かれた白線、また200はポール状の物体である。ここで、この右側補正画像メモリ32Rに保持されている右側補正画像に関し、その全ての画像が高さ「0」の背景画像すなわち路面上に描かれている画像だと仮定する。そしてこのように仮定した右側補正画像に基づき、この右側補正画像があたかも左側CCDカメラ11Lの撮像位置で撮像された画像(投影画像)となるよう変換処理を行う〔図13(b)〕。
【0087】以下、この投影画像の変換処理について説明する。ここで、右画像の点PR (xRP,yRP)に対応する投影画像の点をPL ′(xLP′,yLP′)とする。図11に示すように、カメラ座標のX′軸と路面座標のX軸は平行であり、また、カメラによって撮像する走査線のx軸(図12のxL 軸およびxR 軸)も共に平行であるとすると、同一物体を撮像した場合の撮像画像のyL とyR 値は一致する。そして、画像の全てが路面上であるとすれば、上式(9)で示すYP の値は0となる。以上から次式(11)及び式(12)を導くことができる。そして、式(12)のZP ′およびYP ′に式(5)のZP ′及び式(7)のYP ′を代入することにより、式(13)に示すように、xLP′を求めることができる。
【0088】
LP′=yRP ・・・(11)
0=HP −ZP ′cos θS +YP ′sin θS ・・・(12)
LP′=(dxa・fcos θS −dxa・yRPsin θS )/H+xRP ・・・(13)
そして、上式(11)及び式(13)の演算を行なうことにより、データ処理部40(CPU41)は、投影画像〔図13(b)〕を作成する。
【0089】そして、このようにして作成した投影画像を左側補正画像に重畳すると図13(c)のようになる。すなわち、右側CCDカメラ11Rで撮像された画像を投影した場合、路面上に画かれている白線等の模様は左側CCDカメラ11Lで撮像された模様と位置、輝度共に一致し、物体が路面より高くなるに従って差が大きくなる。
【0090】従って、左画像データと投影画像データの差分をとることにより、高さのある物体を構成する画素以外の路面を構成する画素の輝度値は値「0」または値「0」に近い値となる。そして所定しきい値以下を値「0」とすれば、全て値「0」となる。
【0091】このようにして、左画像データと投影画像データの差分をとることにより、その差分画像は図13(d)に示すように、路面画像(高さ「0」の背景画像)が除去され、高さのある部分のみが値「0」以外の値として取り出される。そして、この差分画像については記憶部30の差分画像メモリ33に格納される。
【0092】以上説明したように、このステップS140では、撮像画像中の高さ「0」の路面画像を除去し、高さのある画像すなわち物体の画像のみを抽出する。そして、このステップS140の路面画像除去処理が終了するとステップS150に移行して物体の位置算出処理を行う。
【0093】このステップS150の物体の位置算出処理では、まず抽出した物体画像についてのエッジの抽出処理を行う。以下、この物体エッジ抽出処理について説明する。この物体エッジ抽出処理は、左側補正画像メモリ32Lに格納された画像情報に対してなされる。すなわち、左側補正画像メモリ32Lに格納されている左側補正画像に関し、そのm行n列の画像データの輝度値Im,n を水平方向すなわち図12におけるX′軸方向に走査し、次式(14)の演算によって微分画像を生成する。
|Im,n+1 −Im,n |≧E0 ならば Em,n =1 |Im,n+1 −Im,n |<E0 ならば Em,n =0 ・・・(14)
上記式中、E0 はしきい値
【0094】この微分画像は、図14(b)に示すように、物体や路面に画かれている文字等の縦方向エッジ部分が「1」に、その他の部分は「0」となった画像となる。そして、この微分画像は記憶部3の微分画像メモリ34に上書きされ保持される。
【0095】このようにして求めた微分画像〔図14(b)〕と、前述した路面画像除去処理で生成され差分画像メモリ33に保持された差分画像〔図13(d)〕と重ね合せてアンドを取ると、図14(c)で示す物体のエッジ部分のみが抽出された物体エッジの画像が生成される。そして、この物体エッジ画像を物体を示す情報として、エッジ画像メモリ35に格納する。
【0096】そしてデータ処理部40(CPU41)は、このエッジ画像メモリ35に格納された物体エッジ画像に基づいて物体を認識し、この物体エッジ画像の各座標点について図11及び図12にて説明した3次元位置座標算出動作を行い、このエッジ画像の3次元座標値を算出する ことにより、認識した物体すなわち物体エッジと車両との相対位置を算出する。
【0097】引き続くステップS160では、障害物の有無を判定する。すなわち、このステップS160では、上記ステップS150にて算出したエッジ画像の3次元座標値に基づき、図3にて説明した撮像領域100a内に障害物があるか否かを判定する。そして、このステップS160にて「障害物無」と判定した場合には、ステップS110に移行し、次動作周期の処理動作を再度実行する。また、このステップS160にて「障害物有」と判定した場合には、引き続くステップS170に移行する。
【0098】ステップS170では、車両進路予測処理を行う。このステップS170の車両進路予測処理では、舵角検出部20(図2参照)からの転回情報を読み込むとともにこの読み込んだ転回情報に基づいて車両の進路を予測し、この予測進路にさらに車両の形状情報を加味して車両の予測軌跡を算出する。そして、この算出した車両の予測軌跡は、データ処理部40のRAM43に格納する。
【0099】引き続くステップS180では、上記ステップS170にて算出した予測軌跡と上記ステップS150にて算出した障害物の3次元座標値に基づいて、障害物と車両の衝突の可能性が有るか否かを判定する。そして「衝突の可能性有り」と判定された場合には警報部60のスピーカにより警報音を発生して運転者にその旨を知らせる。そして、このステップS180の警報処理の終了により一連の処理動作が終了し、再度ステップS110に移行して次動作周期における処理動作を実行する。
【0100】以上の説明から明らかなように、この具体例においては、スミア画像が除去された撮像画像について、高さ「0」である背景画像すなわち路面画像を除去することにより物体のエッジ画像を生成し、生成したエッジ画像に基づいて物体と車両との相対位置などを算出するように構成したので、スミアが現れた画像においても物体と車両との相対位置などを算出することができる。
【0101】また、スミアの除去処理をレンズの歪曲収差を補正する処理より前に行なうように構成しているので、スミア画像がレンズの歪曲収差の補正により湾曲することながない。これにより、スミアを簡単に除去することができる。
【0102】そして、本発明の基本構成と具体例の動作を示すフローチャートは、次の対応関係を有している。すなわち、スミア検出手段(41a)は図5のフローチャートにおけるステップS210乃至S250に対応し、スミア除去手段(41b)は同じくステップS270乃至S271に対応している。
【0103】また、エッジ画像生成手段(41c)は同フローチャートにおけるステップS220に、座標値取得手段(41d)は同じくステップS230に、第1輝度値取得手段(41e)は同じくステップS231に、第2輝度値取得手段(41f)は同じくステップS240に、スミア判定手段(41g)は同じくステップS241に対応している。
【0104】また、第3輝度値取得手段(41h)は同フローチャートにおけるステップS270に対応し、画像補間手段(41i)は同じくステップS271に対応している。
【0105】また、物体エッジ検出手段(41j)は図4フローチャートにおけるステップS140に対応し、物体位置算出手段(41k)は同じくステップS150に対応している。
【0106】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の車両周辺監視装置によれば次の効果を奏する。すなわち、スミア画像を検出する手段と、検出されたスミア画像を除去する手段とを設けたので、スミアによる物体の誤検出をなくすことができる。
【0107】また、スミアを物体と同等に扱うことによりCCDカメラからの撮像画像からスミアのエッジ画像を含むエッジ画像を取得する手段と、このスミアが直線状に現れるという性質を有することに基づいてスミア候補点を含む直線上に存在する画素群すなわちスミア画像の輝度値を取得するとともにこの取得した画素群の輝度値に基づいてこのスミア候補点がスミアに属するか否かを判定する手段とを設けたので、処理を単純化することができるとともにスミアを高速にかつ確実に検出することができる。
【0108】また、スミアと判定された領域(直線)に隣接する撮像画像の境界線上に存在する画素の輝度値に基づき、スミアと判定された画素群の輝度値を算出し、この算出した輝度値によりスミア画像の補間を行うように構成したので、スミアと判定された領域に関し、その周囲領域の画素の輝度値に近い輝度値の画素とて補間されるので、スミア除去後の画像に関して違和感の少ない画像を得ることができる。
【0109】また、スミアが画像の全域に亘って直線状に現れる性質を利用し、任意の一列のみを探索時の対象としているので、その処理が単純となり高速に行うことができる。
【0110】また、スミア検出手段及びスミア除去手段によりスミア画像が除去された撮像画像について、高さ「0」である背景画像すなわち路面画像を除去することにより物体のエッジ画像を生成し、生成したエッジ画像に基づいて物体と車両との相対位置などを算出するように構成したので、スミアが現れた画像においても物体と車両との相対位置などを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】本発明が適用される装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】撮像部10を構成するCCDカメラ11の取付態様の説明図である。
【図4】具体例の動作を説明するフローチャートである。
【図5】スミア除去処理を説明するフローチャートである。
【図6】スミアを含む撮像画像を説明する図である。
【図7】スミアを含む撮像画像から生成された微分画像を説明する図である。
【図8】具体例におけるスミアを判定する規定値を説明する模式図である。
【図9】スミア画像を補間する処理を説明する図である。
【図10】具体例におけるレンズ収差補正の説明図である。
【図11】具体例におけるCCDカメラの俯角補正の説明図である。
【図12】具体例における3次元位置測定の説明図である。
【図13】具体例における路面画像除去の説明図である。
【図14】具体例における物体エッジ検出の説明図である。
【符号の説明】
10 撮像部
11、11R、11L CCDカメラ
20 舵角検出部
30 記憶部
31R,31L フレームメモリ
34 微分画像メモリ
35 エッジ画像メモリ
40 データ処理部
41 CPU
42 ROM
43 RAM
50 表示部
60 警報部
100 車両
200 障害物
500 スミア

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両周辺の所定範囲を撮像するCCDカメラを有し、当該CCDカメラからの画像情報に基づいて前記車両の周辺に存在する物体に関する情報を運転者に与える車両周辺監視装置において、高輝度光源によりCCDカメラによる撮像画像上に現れる直線状のスミア画像を検出するスミア検出手段と、前記スミア検出手段により検出されたスミア画像を除去するスミア除去手段を有することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】 前記スミア検出手段は、前記CCDカメラからの画像情報に基づいてエッジ画像を生成するエッジ画像生成手段と、前記エッジ画像を構成する画素の着目画素について、その座標値を取得する座標値取得手段と、前記着目画素の座標値に基づいて、前記CCDカメラからの画像情報中にて前記着目画素に対応する対応画素の輝度値を取得する第1輝度値取得手段と、前記第1輝度値取得手段からの対応画素の輝度値に基づき、前記対応画素の輝度値が規定値以上であった場合に、前記CCDカメラからの画像情報を参照し、前記対応画素を含む直線上に存在する画素群の輝度値を取得する第2輝度値取得手段と、前記第2輝度値取得手段により取得された画素群の輝度値に基づき、前記対応画素を含む直線上に存在する画素群がスミア画像であるか否かを判定するスミア判定手段とを有していることを特徴とする請求項1記載の車両周辺監視装置。
【請求項3】 前記スミア除去手段は、前記スミア判定手段によりスミア画像と判定された画素群に隣接する境界線上の画素群の輝度値を取得する第3輝度値取得手段と、前記第3輝度値取得手段により取得された境界線上の画素群の輝度値に基づいて前記スミア画像と判定された画素群の輝度値を算出するとともに当該算出した輝度値によりスミア画像と判定された画素群を補間する画像補間手段とを有することを特徴とする請求項2記載の車両周辺監視装置。
【請求項4】 前記座標値取得手段は、前記エッジ画像生成手段により生成されたエッジ画像中の任意の一列についてエッジ点を探索することを特徴とする請求項1乃至3記載の車両周辺監視装置。
【請求項5】 車両に所定距離だけ離して設置され、車両周辺の所定範囲を撮像する2台のCCDカメラを有し、当該CCDカメラからの画像情報に基づいて前記車両の周辺に存在する物体に関する情報を運転者に与える車両周辺監視装置において、高輝度光源によりCCDカメラによる撮像画像上に現れる直線状のスミア画像を検出するスミア検出手段と、前記スミア検出手段により検出されたスミア画像を除去するスミア除去手段と、前記スミア除去手段によりスミア画像が除去された撮像画像について、一方のCCDカメラにて撮像された全ての画像を高さ0と仮定し、この画像を他方のカメラで撮像したとして得られる投影画像データを作成し、作成された投影画像データと他方のメモリに記録されている画像データとの差より路面上の画像を除去し、物体のエッジを検出する物体エッジ検出手段と、前記物体エッジ検出手段にて検出された物体エッジにより物体の位置を算出する物体位置算出手段と、前記物体位置算出手段より算出された物体の位置に基づいて警報を出力する警報手段とを有すること特徴とする車両周辺監視装置。

【図3】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図5】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図7】
image rotate


【図9】
image rotate


【図12】
image rotate


【公開番号】特開平9−142208
【公開日】平成9年(1997)6月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−300239
【出願日】平成7年(1995)11月17日
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)