説明

車両固定装置

【課題】車両を安定的に固定する。
【解決手段】試験車両10の下面の凸部100の二つの孔101に、第1フック44の先端と第2フック47の先端とを、それぞれ挿入した上で、ターンバックル胴40を回転して、凸部100の第1フック44の先端を挿入した孔101と第2フック47の先端を挿入した孔101との間の部分を挟持する。そして、Dリング45に牽引装置3のベルト31の先端のフック33を引っ掛け、左右の牽引装置3の巻取装置32でベルト31を水平に巻き取り、試験車両10を牽引、固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシーダイナモメータに対して車両を固定するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動輪をローラ上で回転し自動車の各種特性の測定を行うシャシーダイナモメータでは、自動車の駆動輪を正しくローラ上に位置決めした上で、車体を固定して、その測定を行う必要がある。
そして、このような車両の固定の技術としては、ワイヤロープで、車両の前部と後部とを、それぞれ牽引して固定する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-307082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、前記ワイヤロープで車両を牽引して固定する場合において、車両側のワイヤロープの連結部として、車両のフロアパネルや車両のフロアパネルと一体に設けられている補強メンバに設けられている孔を用いるときには次のような問題がある。
すなわち、ワイヤロープの先端に設けたフックを孔に引っ掛けて、ワイヤロープで車両を牽引する場合には、フックと孔との掛合が安定的でないために、フックが孔から脱落してしまうことがある。また、車両のアンダースカートとワイヤロープが干渉してしまうため、ワイヤロープで車両を平行に牽引することができないという問題もある。また、さらには、自動車の種類毎に孔の大きさが異なるために、フックの形状によっては、孔が小さすぎて孔にフックを挿入できないことがある。
【0005】
そして、これらのために、車両のフロアパネルや車両のフロアパネルと一体に設けられている補強メンバに設けられている孔をワイヤロープの連結部として用いて、車両を安定的に固定することは比較的困難であった。
そこで、本発明は、シャシーダイナモメータの車両固定装置において、車両のフロアパネルや車両のフロアパネルと一体に設けられている補強メンバに設けられている孔を用いて車両を安定的に固定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
自動車の車輪を載置するローラを備えたシャシーダイナモメータにおいて、前記自動車を固定する車両固定装置を、前記自動車の下面に取り付けられる連結具と、前記連結具に連結する牽引条体と、前記牽引条体を巻き取る巻取装置とを含めて構成すると共に、前記連結具を、前記自動車下面に設けられている第1の孔と掛合する第1フックと、前記自動車下面に設けられている第2の孔と掛合する第2フックと、前記第1フックと第2フックとを締結する締結具と、前記牽引条体の先端を連結するための牽引条体連結部とを含めて構成したものである。
【0007】
このような車両固定装置によれば、試験車両の第1の孔と第2の孔との間の部分を、第1フックと第2フックで挟持した形態によって、連結具を強固かつ安定的に自動車に取り付けることができるようになる。
ここで、このような車両固定装置は、前記連結具の締結具を、第1ターンバックルボルトと第2ターンバックルボルトと前記第1ターンバックボルトと前記第2ターンバックルボルトを締結するターンバックル胴とより構成されるターンバックルと、前記第1ターンバックルボルトと前記第1フックを連結する第1ユニバーサルジョイントと、前記第2ターンバックルボルトと前記第2フックを連結する第2ユニバーサルジョイントとを含めて構成すると共に、前記牽引条体連結部を、前記ターンバックルに対して、前記第1フック及び第2フックの反対側に配置可能に、前記ターンバックルに対して連結するようにしてもよい。
【0008】
このように、牽引条体連結部を、第1フックと第2フックからオフセットさせて設けることにより、自動車のアンダースカートと干渉することなく、牽引条体を水平方向に牽引することができるようになる。
また、このような車両固定装置は、前記第1フックと前記第2フックとを、概略、棒状体を鋭角に折り曲げた形状を備えたものとすることも好ましい。このようにすることにより自動車の下面の孔が小さい場合にも、支障なく、前記第1フックと前記第2フックとを孔に挿入して、自動車を牽引、固定することができるようになる。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によれば、シャシーダイナモメータの車両固定装置において、車両のフロアパネルや車両のフロアパネルと一体に設けられている補強メンバに設けられている孔を用いて車両を安定的に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る連結具の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る連結具の使用形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る連結具の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るシャシーダイナモメータの構成を模式的に示す。
ここで、図1aはシャシーダイナモメータを上方より見たようすを、図1bはシャシーダイナモメータを左右方向から見たようすを模式的に表したものである。
図示するように、このシャシーダイナモメータは、自動車用のシャシーダイナモメータであり、シャシーダイナモメータは、試験車両10の走行面となる駆体1の上面に設けた開口に、ローラの天頂部が露出するように配置されたダイナモメータ2を備えている。
【0012】
また、シャシーダイナモメータは、駆体1に固定された巻取装置32と、巻取装置32により巻き取られる、先端にフックが設けられたベルト31よりなる牽引装置3を、左右に2台づつ、当該2台の牽引装置3を前後方向に並べた配置で備えている。
そして、このようなシャシーダイナモメータを用いた試験車両10の試験は、試験車両10の各駆動輪を各ダイナモメータ2のローラの天頂部に載置した状態で、2台の牽引装置3を用いて、試験車両10を左右より牽引して固定しつつ、ローラを回転しながら、試験車両10の車輪とローラ周面間で作用するトルクを、各ダイナモメータ2を用いて計測することにより行われる。
【0013】
ここで、各牽引装置3による試験車両10の牽引は、ベルト31の先端のフックを試験車両10下面の前後左右の4カ所に取り付けた連結具に各々掛合した状態で、巻取装置32でベルト31を巻き取ることにより行われる。ただし、試験車両10の左右の各々において、前後に配置されている2つの牽引装置3のベルト31がクロス状になるように、前方の牽引装置3のベルト31は、後方の牽引装置3のベルト31が掛合する連結具よりも、試験車両10の後方に取り付けた連結具に掛合する。
以下、このような試験車両10下面に取り付けられる連結具について説明する。
図2aに、連結具の構成を示す。
図示するように、連結具4は、第1ターンバックルボルト41と、第2ターンバックルボルト42と、第1ターンバックルボルト41と第2ターンバックルボルト42とを連結するターンバックル胴40とよりなるターンバックル式の締結具であり、第1ターンバックルボルト41の先端には第1ユニバーサルジョイント43を介して第1フック44とDリング45が連結され、第2ターンバックルボルト42の先端には第2ユニバーサルジョイント46を介して第2フック47が連結されている。
【0014】
また、図示するように第1フック44は、棒状体を、おおよそ中央で内側に鋭角に折り曲げた形状を有しており、折り曲げた一方の側441が支持部440を介して第1ユニバーサルジョイント43に支持されており、他方442の側は、その先端部443がさらに内側に折り曲げられている。また、第2フック47も、第1フック44と同様の形状を有している。
【0015】
ここで、図中に矢印で示すように、第1ユニバーサルジョイント43は第1ターンバックルボルト41に対して、第1ターンバックルボルト41の軸回りに回転自在であり、第2ユニバーサルジョイント46は第2ターンバックルボルト42に対して、第2ターンバックルボルト42の軸回りに回転自在である。
【0016】
また、図2bに矢印で示すように、第1ユニバーサルジョイント43は、第1フック44とDリング45とを、第1ターンバックルボルト41の軸と垂直な軸回りに揺動自在に保持し、第2ユニバーサルジョイント46は、第2フック47を、第2ターンバックルボルト42の軸と垂直な軸回りに揺動自在に保持する。
【0017】
そして、図2cに矢印で示すように、ターンバックル胴40を回転することにより、第1ターンバックルボルト41と第2ターンバックルボルト42との間の距離、したがって、第1フック44と第2フック47との間の距離は任意に調節することができる。
以下、このような連結具4の試験車両10への取付について説明する。
図3a1に試験車両10の下面を示すように、自動車のフロアパネルの左右には、フロアパネルの形状またはフロアパネルと一体化されている補強メンバの形状によって、断面線AA,BBによる断面を表した図3a2、a3に示すように、下方に膨らんだ凸部100が設けられていることが一般的である。また、この凸部100には、通常、複数の孔101が設けられている。
【0018】
そして、連結具4の試験車両10への取付は、図3bに示すように、試験車両10の下面の凸部100の二つの孔101に、第1フック44の先端と第2フック47の先端とを、それぞれ挿入した上で、ターンバックル胴40を回転して、図3cに示すように、第1フック44と第2フック47とを締結することにより行う。この結果、凸部100の第1フック44の先端を挿入した孔101と第2フック47の先端を挿入した孔101との間の部分を、第1フック44と第2フック47で挟持した形態により、連結具4は強固かつ安定的に試験車両10に取り付けられることになる。
【0019】
また、図示するように、連結具4を試験車両10に取り付けた状態において、第1フック44と第2フック47は、それぞれ、凸部100の孔101の縁と凸部100の下面との2点に当接しているため、連結具4は、安定的に凸部100に対して固定されることとなる。
【0020】
さて、図3cに示すように、4つの連結具4を、試験車両10のフロアパネルの左右下面の凸部100の前後にそれぞれ取り付けたならば、Dリング45に牽引装置3のベルト31の先端のフック33を引っ掛ける。ここで、左前方の牽引装置3のベルト31の先端のフック33は、試験車両10の左の凸部100の後方に取り付けた連結具4に引っ掛け、左後方の牽引装置3のベルト31の先端のフック33は、試験車両10の左の凸部100の前方に取り付けた連結具4に引っ掛け、右前方の牽引装置3のベルト31の先端のフック33は、試験車両10の右の凸部100の後方に取り付けた連結具4に引っ掛け、右後方の牽引装置3のベルト31の先端のフック33は、試験車両10の右の凸部100の前方に取り付けた連結具4に引っ掛けることにより、試験車両10の左右の各々において、前後に配置されている2つの牽引装置3のベルト31がクロス状になるようにする。
【0021】
そして、図3dに示すように左右の牽引装置3の巻取装置32でベルト31を水平に巻き取る。ここで、図3cに示すように、Dリング45の位置は、試験車両10のフロアパネル面より下に距離Lオフセットされているので、車両のアンダースカートと干渉することなく、ベルト31を水平方向に牽引することができる。
そして、以上により、試験車両10の各牽引装置3による試験車両10の牽引、固定が実現されることとなる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0022】
ところで、以上の実施形態で用いた連結具4は、図4a1に示すように構成してもよい。
図示するように、この連結具4は、図2に示した連結具4の第1フック44と第2フック47の先端をほぼストレートに構成したものである。また、第1ユニバーサルジョイント43を、第1フック44とDリング45とを、第1ターンバックルボルト41の軸と垂直な軸回りに揺動しないように拘束するものとし、第2ユニバーサルジョイント46を、第2フック47を、第2ターンバックルボルト42の軸と垂直な軸回りに揺動しないように拘束するものとしたものである。
【0023】
このような連結具4の試験車両10への取付は、図4a2に示すように、試験車両10の下面の凸部100の二つの孔101に、第1フック44の先端と第2フック47の先端とを、それぞれ挿入した上で、ターンバックル胴40を回転して、図4a3に示すように、凸部100の第1フック44の先端を挿入した孔101と第2フック47の先端を挿入した孔101との間の部分を挟持することにより行う。
【0024】
ここで、図示するように、連結具4を試験車両10に取り付けた状態において、第1フック44と第2フック47は、それぞれ凸部100の孔101の縁と、試験車両10の凸部100の上の構成材(フロアパネルやフロア材)110との2点に当接しているため、連結具4は、安定的に凸部100に対して固定されることとなる。
【0025】
ここで、このような図4a1に示した連結具4によれば、第1フック44と第2フック47の先端をほぼストレートに構成しているので、図4bのように第1フック44と第2フック47とをU字形状とした場合には先端が挿入できなくなるほど、試験車両10の下面の凸部100の孔101が小さい場合でも、支障なく、先端を当該孔101に挿入して連結具4を試験車両10に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…駆体、2…ダイナモメータ、3…牽引装置、4…連結具、10…試験車両、31…ベルト、32…巻取装置、40…ターンバックル胴、41…第1ターンバックルボルト、42…第2ターンバックルボルト、43…第1ユニバーサルジョイント、44…第1フック、45…Dリング、46…第2ユニバーサルジョイント、47…第2フック、100…凸部、101…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車輪を載置するローラを備えたシャシーダイナモメータにおいて、前記自動車を固定する車両固定装置であって、
前記自動車の下面に取り付けられる連結具と、
前記連結具に連結する牽引条体と、
前記牽引条体を巻き取る巻取装置とを有し、
前記連結具は、
前記自動車下面に設けられている第1の孔と掛合する第1フックと、
前記自動車下面に設けられている第2の孔と掛合する第2フックと、
前記第1フックと第2フックとを締結する締結具と、
前記牽引条体の先端を連結するための牽引条体連結部とを有することを特徴とする車両固定装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両固定装置であって、
前記連結具の締結具は、
第1ターンバックルボルトと第2ターンバックルボルトと前記第1ターンバックボルトと前記第2ターンバックルボルトを締結するターンバックル胴とより構成されるターンバックルと、
前記第1ターンバックルボルトと前記第1フックを連結する第1ユニバーサルジョイントと、
前記第2ターンバックルボルトと前記第2フックを連結する第2ユニバーサルジョイントとを含み、
前記牽引条体連結部は、前記ターンバックルに対して、前記第1フック及び第2フックの反対側に配置可能に、前記ターンバックルに対して連結されていることを特徴とする車両固定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両固定装置であって、
前記第1フックと前記第2フックとは、概略、棒状体を鋭角に折り曲げた形状を有していることを特徴とする車両固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−33555(P2011−33555A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182029(P2009−182029)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)