説明

車両性能試験装置の車輪センタリング装置

【課題】従来の接触(圧力)センサを使用したセンタリング装置は車輪の材質や空気圧等によって検出位置にバラつきが生じる。
【解決手段】車輪センタリング装置1は、シャシーダイナモメータの一軸ドラム103の軸心を通る鉛直線の前後に配置された前後一対のローラ2,2と、ローラ2をローラホルダ3によりロッド4の先端部に取り付けた前後一対の電動シリンダ5,6と、上記ローラ2と共に上記ローラホルダ3に取り付けられていて試験車両の駆動輪102を検出する駆動輪検出センサ7と、前後一対の電動シリンダ5,6の駆動を制御する制御装置と、を備えている。上記駆動輪検出センサ7に光電センサを使用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験車両の駆動輪を一軸ドラム(以下、ドラム)上に載せて、該ドラムで上記駆動輪を回転させて、試験車両の各種性能試験を行なうシャシーダイナモメータ等の車両性能試験装置において、試験車両の駆動輪を上記ドラムの真上に載せるための車輪センタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャシーダイナモメータにおいて、試験車両の試験を正確に行なうためには、試験車両の駆動輪を上記ドラムの真上、即ち、上記駆動輪の回転中心と上記ドラムの回転中心を結ぶ線が垂直となるように配置する必要がある。車輪センタリング装置は、上述の要求に応えるものである。
【0003】
図7〜図9に示すように、車輪センタリング装置101として、上記試験車両の駆動輪102を載せるドラム103の軸線を通る鉛直線VLの前後に配置した位置決め部材としての前後一対のローラ104,105と、これら一対のローラ104,105を前後方向に移動させて上記駆動輪を押圧する駆動機構106,107と、上記ローラ104,105と上記駆動輪102とが所定の圧力で接触した場合にその旨を示す接触信号を出力する接触センサ(図示省略)と、上記ローラ104,105の位置を検出する位置センサ(図示省略)と、上記駆動機構106,107を制御して上記各ローラ104,105を上記駆動輪102の軸線を上記鉛直線VL上に位置付け可能な作動位置と、上記駆動輪102に接触しない非作動位置との間で移動させる制御機構108と、を備えていて、上記制御機構108は、上記接触信号が出力された時点での位置センサから得られる位置を上記作動位置として設定する構成になっている。
【0004】
図8に示すように、上記車輪センタリング装置101は、上記駆動輪102が上記ドラム103の周面およびピットカバー面(車両走行床面)109のドラム用の開口部110の周縁部に接触したときに、上記駆動機構106,107のモータを駆動して、一対のローラ104,105を駆動輪102に向かってスライドさせる。
【0005】
上記駆動輪102に近い一方(駆動輪後方)のローラ105が駆動輪102に接触すると上記モータの負荷が増大し、該モータへの供給電流が増加する。上記接触センサは、上記供給電流が所定値以上になったことを検知することでローラ105が上記駆動輪102に接触したことを検知して接触信号を出力する。
【0006】
上記駆動輪102に接触している一方のローラ105のスライドに伴って上記駆動輪102は、上記ドラム103の頂上部に向かって移動する。
【0007】
そして、図9に示すように、上記駆動輪102がドラム103の頂上部に達すると他方(駆動輪前方)のローラ104も上記駆動輪102の他側面に接触して該駆動輪102を支持する。このとき、他側の接触センサも接触を検知して接触信号を出力する。ローラ104側の接触センサと、ローラ105側の接触センサの両方から接触信号が出力されたときにローラ104,105のスライドを停止させて、センタリング動作は終了する。(例えば、特許文献1の段落0042〜0046、段落0061〜0065等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−233668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来の車輪センタリング装置は、上述したように、一方のローラ105によって駆動輪102がドラム103の頂上部に移動して来て、該駆動輪102が他方のローラ104側の接触センサを所定の接触圧で押圧したことを検知して、センタリングを行なう構成になっていたために、駆動輪102の材質やスタッドレスか否か、あるいは空気圧の高低等によって、接触センサで検出される駆動輪102の検出位置に差異が生じる虞があるという問題点があった。
【0010】
本発明の目的は、駆動輪の材質や空気圧等に関係なく正確に駆動輪の外周端の位置を検知することのできる車輪センタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ピット内に配置したドラムの頂上部をピットカバー面に設けた開口部に臨ませて上記ドラムの頂上部に試験車両の駆動輪を載せて試験車両の試験を行なう車両性能試験装置において、上記駆動輪を上記ドラムの頂上部にセンタリングする車輪センタリング装置であって、上記ドラムの軸心を通る鉛直線の前後に配置された前後一対のローラと、ローラをローラホルダによりロッドの先端部に取り付けた前後一対の電動シリンダと、上記ローラと共に上記ローラホルダに取り付けられていて駆動輪を検出する駆動輪検出センサと、上記前後一対の電動シリンダの駆動を制御する制御装置と、を備えた車輪センタリング装置において、上記駆動輪検出センサに光電センサを使用した。
【0012】
上記光電センサを、上記ローラホルダに、上記ピットカバー面に沿わせて上記ローラと並べて略水平方向に配置した。また、上記光電センサを、上記ローラホルダに、上記ローラよりもロッドの先端側に該ロッドの移動方向に直列に並べて配置した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車輪センタリング装置は、駆動輪検出センサに光電センサを使用したので、駆動輪の材質や空気圧等に関係なく駆動輪の外周端のエッジ位置を正確に検出することができる。特に、光電センサとローラを、ピットカバー面に沿わせて略水平方向に並べてローラホルダに配置したので、光電センサによる駆動輪の検出と、ローラの駆動輪の接触を略同時に行なうことができる。また、上記光電センサを、上記ローラよりもロッドの先端側に該ロッドの移動方向に直列に並べてローラホルダに配置したので、光電センサによる駆動輪の検出と、ローラの駆動輪への接触に時間差をもたせ、光電センサにより駆動輪を検出した後、所定の時間後に、ローラを駆動輪に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車輪センタリング装置の概略構成を示す正面図。
【図2】同平面図。
【図3】同側面図。
【図4】図3の要部の拡大図。
【図5】本発明の車輪センタリング装置の作用を示すフロー図。
【図6】本発明の車輪センタリング装置の他の実施例の説明図。
【図7】従来例の車輪センタリング装置の平面図。
【図8】従来例の車輪センタリング装置の作用を示す説明図。
【図9】従来例の車輪センタリング装置の作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の車輪センタリング装置の概略構成を示す正面図、図2は同平面図、図3は同側面図、図4は図3の要部の拡大図である。
【0016】
図1に示すように、車輪センタリング装置1は、ピット内に配置した一軸ドラム(以下、ドラム)103の頂上部を、ピットカバー面109のドラム用の開口部110から外部に臨ませ、該ドラム103の頂上部に試験車両の駆動輪102を載せて試験車両の試験を行なうシャシーダイナモメータに使用されている。
【0017】
車輪センタリング装置1は、ドラム103の軸心を通る鉛直線VLの前後に配置された前後一対のローラ2,2と、ローラ2をローラホルダ3によりロッド4の先端部に取り付けた前後一対の電動シリンダ5,6と、上記ローラ2と共に上記ローラホルダ3に取り付けられていて駆動輪102を検出する駆動輪検出センサ7と、上記前後一対の電動シリンダ5,6の駆動を制御する制御装置(図示省略)を備えている。上記駆動輪検出センサ7には光電センサが使用されている。
【0018】
上記前後一対の電動シリンダ5,6は、モータ11によりスプロケット12やチェーンベルト13等を介して回転軸14を回転させることにより、該回転軸14の軸(長さ)方向の両端部に配置されている左右一対の運動変換装置15,15で上記回転軸14の回転運動を左右一対のロッド4,4の直進運動に変換する。運動変換装置15には、ボールネジやボールナット等が用いられている。上記ロッド3は、ピットカバー面109に対して所定の傾斜角度θ、例えば35°の傾斜角度で上下方向に移動するようになっている。
【0019】
図2,図3に示すように、前後一対の電動シリンダ5,6の左右一対のロッド4,4の先端は、上記ローラホルダ3によって連結されている。上記ローラホルダ3は、上記左右一対のロッド4,4の先端部を連結している連結部21と、該連結部21の両端部に設けられた一対のローラ支持アーム部22,23と、からなっていて、これら一対のローラ支持アーム部22,23の間に上記ローラ2が回転自在に取り付けられている。
【0020】
ローラ支持アーム部22,23の上記ローラ2近傍位置には上記駆動輪検出センサとしての光電センサ7が配置されている。
【0021】
光電センサ7は、一方のローラ支持アーム部22の内面に取り付けられた発光素子7aと、他方のローラ支持アーム部23の内面に上記発光素子7aと対向させて取り付けられた受光素子7bと、からなっていて、上記発光素子7aと受光素子7bの間に駆動輪102が侵入すると該駆動輪102により上記発光素子7aから発射された検出光が遮断されて駆動輪102を検出する。
【0022】
図4に拡大して示すように、ローラホルダ3の先端、即ちローラ支持アーム部22,23の先端は、上記ピットカバー面109と平行になるように水平に形成されている。ローラ支持アーム部22,23の先端には、ローラ2をピット内に収納したときに上記ドラム用開口部110の一部を閉塞する蓋板24が取り付けられている。また、ローラホルダ3の先端には、ローラ2と光電センサ7が水平方向に並べた状態で配置されていて、光電センサ7で駆動輪102を検出するのと略同時にローラ2が駆動輪102に接触するようになっている。
【0023】
ローラホルダ3は、移動ガイド部材25によって上下動をガイドされる。ローラホルダ3にはアーム26を介してリミットスイッチ操作体27が設けられている。
【0024】
そして、図1に実線で示すように、ローラホルダ3が下限位置(移動基準位置)まで移動すると、スイッチ操作体27で下端リミットスイッチ28が押圧操作されてローラホルダ3が下限位置(移動基準位置)に在ることが検知される。また、図1に2点鎖線で示すように、ローラホルダ3を上限位置まで移動させると、スイッチ操作体27で上端リミットスイッチ29が押圧操作され、ローラホルダ3が上限位置に在ることが検知され、ローラホルダ3の更なる移動を阻止する。なお、前後一対の電動シリンダ5,6は、ピットカバー面109に対するロッド4の傾斜角度θを調整可能にシリンダ保持部材30によりピット内に取り付けられている。
【0025】
次に、車輪センタリング装置1の作用について説明する。先ず、試験車両の駆動輪102をシャシーダイナモメータのドラム103と、ピットカバー面109のドラム用の開口部110の周縁部の間に載せる。次に、前後一対の電動シリンダ5,6でローラホルダ3を下降させて、スイッチ操作体27で下端リミットスイッチ28を押圧操作して基準位置となる下限位置を検出する。
【0026】
下限位置を検出したら、前後一対の電動シリンダ5,6のロッド4を上昇させる。一対の電動シリンダ5,6のロッド4を上昇させると、駆動輪102に近い一方の電動シリンダ、即ち駆動輪102の後方側の電動シリンダ6の光電センサ7が駆動輪102を検出するのと略同時にローラ2が駆動輪102に接触する。
【0027】
更に、前後一対の電動シリンダ5,6のロッド4を上昇させると、他方の電動シリンダ、即ち駆動輪102の前方側の電動シリンダ5の光電センサ7が駆動輪102を検出するのと略同時にローラ2が駆動輪102に接触してセンタリングが行なわれる。
【0028】
上記センタリング終了後においても、駆動輪102がドラム103から浮き上がらない程度に、更に、前後一対の電動シリンダ5,6のロッド4、ロッドホルダ3およびローラ2を上昇させて、駆動輪102を所定の荷重圧でドラム103に圧着させる。そして、上記ローラ2を回転させて駆動輪102や試験車両の姿勢制御を行なう。上記駆動輪102がドラム103から浮き上がったか否かは図示省略の圧力センサによって検出する。なお、前後一対の電動シリンダ5,6は、それぞれ別々にピット内で組み付け固定されるので不可避的に両者の間には組付誤差が発生する。そして、組付位置の誤差により、ロッド4のストローク偏差を生じる場合がある。このような、場合は、前後一対の電動シリンダ5,6のロッド4のストロークの偏差を演算して、前後一対の電動シリンダ5,6のロッド4のストロークが同じになるように補正する。図5は、上記車輪センタリング装置1の動作の一例を示すフロー図を示し、31は操作盤を示す。
【0029】
図6は本発明の車輪センタリング装置1の他の実施例を示す。この実施例において、駆動輪102の前方側に位置する光電センサ7は、ローラ2よりもロッドホルダ3の先端側に位置するように、ロッド4のスライド方向の前方に直列にロッドホルダ3に配置されている。そして、光電センサ7による駆動輪102の検出と、ローラ2の駆動輪102への接触に時間差をもたせ、光電センサ7により駆動輪102を検出した後、所定の時間後に、ローラ2を駆動輪102に接触させることができる。その他の構成、作用効果は、上記基本となる実施例の場合と同じであるので重複する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記実施例においては、本発明の車輪センタリング装置を、シャシーダイナモメータにおいて一軸ドラムに試験車両の駆動輪をセンタリングする場合を例にとって説明したが、シャシーダイナモメータに限らず広く車両性能試験装置において試験車両の駆動輪等をセンタリングする場合に用いられる。
【符号の説明】
【0031】
1…車輪センタリング装置
2…ローラ
3…ローラホルダ
4…ロッド
5,6…電動シリンダ
7…光電センサ(駆動輪検出センサ)
7a…発光素子
7b…受光素子
102…駆動輪
109…ピットカバー面
110…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピットカバーに設けた開口部から外部に臨む一軸ドラムの軸心を通る鉛直線の前後に配置された前後一対のローラと、ローラをローラホルダによりロッドの先端部に取り付けた前後一対の電動シリンダと、上記ローラと共に上記ローラホルダに取り付けられていて駆動輪を検出する駆動輪検出センサと、上記前後一対の電動シリンダの駆動を制御する制御装置と、を備え、上記駆動輪検出センサとして光電センサを使用したことを特徴とするシャシーダイナモメータの車輪センタリング装置。
【請求項2】
上記光電センサは、上記ローラホルダに、上記ピットカバー面に沿わせて上記ローラと並べて略水平方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシャシーダイナモメータの車輪センタリング装置。
【請求項3】
上記光電センサは、上記ローラホルダに、上記ローラよりもロッドの先端側に該ロッドの移動方向に直列に並べて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシャシーダイナモメータの車輪センタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−33364(P2011−33364A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177163(P2009−177163)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)