説明

車両接近情報通知装置、車両接近情報通知方法及びプログラム

【課題】対象物に対して適切に車両の接近を通知することが可能な車両接近情報通知装置、車両接近情報通知方法及び車両接近情報通知プログラムを提供する。
【解決手段】ECU101は、カメラ102からの画像データに対応する画像内に、実空間上の検知領域に対応する画像上の検知領域を設定し、当該画像上の検知領域内の縦方向のエッジに基づいて、検知領域内の歩行者を検知する。更に、ECU101は、第1領域内に歩行者が存在する場合には、パラメトリックスピーカ105に当該歩行者に向けて第1通知音を出力させ、第2領域内に歩行者が存在する場合には、パラメトリックスピーカ105に当該歩行者に向けて第2通知音を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、対象物に対して車両の接近を通知する車両接近情報通知装置、当該車両接近情報通知装置における車両接近情報通知方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者が車両に接近し、当該車両に接触することが予測される場合、歩行者に向けて警報音を出力する車載装置が存在する。例えば、特許文献1に記載の車両用警報装置は、車両と歩行者との衝突可能性を検知し、歩行者との衝突が予測される場合に、衝突が予測される人のみに対して音声警報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−62666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用警報装置は、衝突の可能性がきわめて低い歩行者にまで音声警報を出力してしまう場合がある。具体的には、車両用警報装置は、カメラによる車両前方の撮影範囲に含まれる全ての歩行者を検知し、検知した歩行者のうち、車両との相対速度が大きい歩行者を、衝突が予測される歩行者として検知する。この場合、車両用警報装置は、車両から遠く離れており、衝突の可能性がきわめて低い歩行者であっても、当該歩行者が撮影範囲に存在し、且つ、車両との相対速度が大きければ、衝突が予測される歩行者として検知し、音声警報を出力してしまう。このため、歩行者は無用な回避行動をしてしまう。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、対象物に対して適切に車両の接近を通知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る車両接近情報通知装置は、
車両に搭載され、対象物に対して前記車両の接近を通知する車両接近情報通知装置であって、
前記車両の前方に延在する帯状の領域である検知領域内に存在する対象物を検知する検知手段と、
前記検知手段により前記対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて、音を出力する音出力手段と
を備えることを特徴とする。
【0007】
例えば、前記車両接近情報通知装置は、前記車両の進行方向を撮影する撮影手段を備え、
前記検知手段は、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、前記検知領域内に存在する対象物を検知するようにしてもよい。
【0008】
例えば、前記車両接近情報通知装置において、前記検知手段は、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、道路上の前記車両の両側に存在する2本の白線を検知し、前記2本の白線に挟まれた領域を前記検知領域として設定するようにしてもよい。
【0009】
例えば、前記車両接近情報通知装置において、前記検知手段は、前記2本の白線が検知できない場合に、前記車両の進行方向に延在し、所定の幅を有する帯状の領域を前記検知領域として設定するようにしてもよい。
【0010】
例えば、前記車両接近情報通知装置において、前記検知領域は、前記車両の進行方向に延在し、前記車両の幅と同等の幅を有する帯状の第1の領域と、前記車両の進行方向に延在し、前記第1の領域の両側の帯状の第2の領域とからなり、
前記検知手段は、前記第1の領域内に存在する対象物と、前記第2の領域内に存在する対象物とを検知し、
前記音出力手段は、前記検知手段により前記第1の領域内で対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて第1の音を出力し、前記検知手段により前記第2の領域内で対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて第2の音を出力するようにしてもよい。
【0011】
例えば、前記車両接近情報通知装置において、前記音出力手段は、前記第1の音を出力中に、前記対象物が前記第2の領域内で検知された場合に、前記第1の音の出力を停止するようにしてもよい。
【0012】
例えば、前記車両接近情報通知装置において、前記音出力手段は、ハンドル操作及びブレーキ操作の少なくとも何れかが行われた場合に、音の出力を停止するようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る車両接近情報通知方法は、
車両に搭載され、対象物に対して前記車両の接近を通知する車両接近情報通知装置における車両接近情報通知方法であって、
前記車両接近情報通知装置が、前記車両の前方に延在する帯状の領域である検知領域内に存在する対象物を検知するステップと、
前記車両接近情報通知装置が、前記対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて音を出力するステップと
を備えることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
車両の前方に延在する帯状の領域である検知領域内に存在する対象物を検知する検知手段、
前記検知手段により前記対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて音を出力する音出力手段
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、対象物に対して適切に車両の接近を通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両接近情報通知装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る実空間上の検知領域の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像上の検知領域の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る縦方向のエッジ検出結果の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る検知領域内の歩行者の位置検出結果の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両接近情報通知装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る車両接近情報通知装置、車両接近情報通知方法、及び、車両接近情報通知プログラムを説明する。
【0018】
(1)車両接近情報通知装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る車両接近情報通知装置の構成図である。図1に示す車両接近情報通知装置100は、車両に搭載され、当該車両に対する衝突が予測される対象物(歩行者)に対して、車両の接近を通知する。車両接近情報通知装置100は、例えば、カーナビゲーションシステムの一部を構成する。車両接近情報通知装置100は、検知手段及び音出力手段としてのECU(Electronic Control Unit)と、検知手段としてのカメラ102と、ブレーキ103と、ハンドル104と、音出力手段としてのパラメトリックスピーカ105と、運転者用スピーカ106と、光源107と、を備える。
【0019】
ECU101は、車両接近情報通知装置100の全体を制御する。具体的には、ECU101は、内蔵するメモリに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより、車両接近情報通知装置100の制御を行う。
【0020】
カメラ102は、車両に固定され、車両の進行方向を基準とした撮影方向と撮影倍率とが不変である。本実施形態において、撮影方向は、車両の進行方向である。カメラ102は、車両の進行方向の所定範囲を撮影し、画像データを生成する。更に、カメラ102は、画像データをECU101へ出力する。ブレーキ103及びハンドル104は、それぞれ運転者の操作に応じた信号(操作信号)をECU101へ出力する。パラメトリックスピーカ105は、音の出力方向に関して指向性を有するスピーカであり、歩行者に向けて音を出力する。パラメトリックスピーカ105は、例えば、車両150のフロントグリルに搭載される。運転者用スピーカ106は、運転者に向けて音を出力する。
【0021】
次に、車両に対する衝突が予測される対象物(歩行者)に対して、車両の接近を通知する際の処理の詳細を説明する。
【0022】
図2は、実空間上の歩行者を検知する領域(検知領域)の一例を示す図である。図2に示す検知領域200は、車両150の進行方向に延在する帯状の領域である。検知領域200は、車両150の幅と同等の幅を有し、車両150の進行方向に延在する帯状の領域である第1領域201と、車両150の進行方向を基準とした場合に、第1領域201の右側において車両150の進行方向に延在する帯状の領域である第2領域202と、車両150の進行方向を基準とした場合に、第1領域201の左側において車両150の進行方向に延在する帯状の領域である第2領域203とにより構成される。ここで、車両150の幅と同等の幅とは、車両150の幅と同一の幅、あるいは、車両150の幅よりも所定長さだけ広い幅を意味し、例えば約2mである。
【0023】
ECU101には、カメラ102からの画像データが入力される。次に、ECU101は、画像データに対応する画像内に、検知領域200を設定する。図3は、画像上の検知領域200の一例を示す図である。
【0024】
上述したように、カメラ102は、車両150に固定され、車両150の進行方向を基準とした撮影方向と、撮影倍率とが不変である。また、撮影方向は、車両150の進行方向である。このため、第1領域201は、画像の中央部に位置する。ECU101が内蔵するメモリには、第1領域201の画像内の位置を示す座標情報が記憶されている。ECU101は、カメラ102からの画像データに対応する画像を生成する。ECU101は、画像内に、座標情報に基づいて第1領域201を設定する。
【0025】
更に、ECU101は、画像解析処理により、画像内の路面上の白線を検出する。画像内において、第1領域201の右側に白線(図3の白線302)が検出された場合、ECU101は、画像内において、第1領域201の右端部から白線までの領域を、第2領域202として設定する。一方、第1領域201の右側に白線が検出されなかった場合、ECU101は、画像内において、第1領域201の右端部から右側の所定の領域(例えば幅1mに相当する領域)を、第2領域202として設定する。
【0026】
同様に、画像内において、第1領域201の左側に白線が検出された場合、ECU101は、画像内において、第1領域201の左端部から白線までの領域を、第2領域203として設定する。一方、第1領域201の左側に白線が検出されなかった場合、ECU101は、画像内において、第1領域201の左端部から左側の所定の領域(例えば幅1mに相当する領域)を、第2領域203として設定する。
【0027】
上述した処理によって画像内に検知領域200が設定された後、ECU101は、検知領域200内に存在する歩行者を検知する。具体的には、ECU101は、画像内の検知領域200において、画像の横方向に連続する2つの画素の輝度の差を判定する。更に、ECU101は、輝度の差が所定値以上となる連続する2つの画素の境界を、縦方向のエッジとして検出する。本実施形態では、縦方向のエッジは、立体物(対象物)のエッジと見なされる。
【0028】
但し、ECU101は、路面上の白線に対応する縦方向のエッジを排除する。具体的には、白線は、画像において、直線上に配置され、画像の上方に向かうほど幅が狭くなるという規則性を有する。このため、ECU101は、この規則性に合致する縦方向のエッジについては排除する。
【0029】
図4は、縦方向のエッジ検出結果の一例を示す図である。図4(A)は、対象物が、検知対象である歩行者である場合の縦方向のエッジ検出結果の一例である。図4(B)は、対象物が、歩行者以外の立体物である場合の縦方向のエッジ検出結果の一例である。図4(A)及び図4(B)における黒点は、横方向に連続する2つの画素のうち、左側の画素の輝度が右側の画素の輝度より所定値以上大きい場合における、当該2つの画素の境界(縦方向のエッジ)の位置を示す。一方、図4(A)及び図4(B)における黒点は、横方向に連続する2つの画素のうち、右側の画素の輝度が左側の画素の輝度より所定値以上大きい場合における、当該2つの画素の境界(縦方向のエッジ)の位置を示す。
【0030】
次に、ECU101は、検出した縦方向のエッジの集合が縦方向の直線上に存在する場合には、その縦方向のエッジを排除する。図4(A)における歩行者に対応する縦方向のエッジの集合と図4(B)における歩行者以外の立体物に対応する縦方向のエッジの集合とを比較すると、歩行者に対応する縦方向のエッジの集合は、縦方向の直線上に存在せず、不規則な配置であるのに対し、歩行者以外の立体物に対応する縦方向のエッジの集合は、縦方向の直線上に存在し、規則的な配置である。このため、ECU101は、縦方向の直線上に存在する縦方向のエッジの集合を排除した後に残った縦方向のエッジを、歩行者に対応する縦方向のエッジと見なすことができる。換言すれば、ECU101は、縦方向のエッジが残った場合、検知領域200内に歩行者が存在すると見なすことができる。
【0031】
以下の処理は、個々の歩行者毎に、当該歩行者が検知領域200内に存在しなくなるまで行われる。ECU101は、歩行者に対応する縦方向のエッジの集合を構成するエッジのうち、最も下に存在する縦方向のエッジを、画像上の歩行者と路面との接地点として検出する。更に、ECU101は、画像上の歩行者と路面との接地点に基づいて、実空間上の歩行者と路面との接地点を検出する。
【0032】
上述したように、カメラ102は、車両150に固定され、車両150の進行方向を基準とした撮影方向と、撮影倍率とが不変である。このため、ECU101は、画像上の位置と、実空間上の位置とを1対1に対応づけることができる。更に、ECU101は、画像上の歩行者と路面との接地点に基づいて、実空間上の歩行者と路面との接地点を検出することができる。実空間上の歩行者と路面との接地点は、歩行者の位置である。図5は、図3に示す画像上の歩行者300の実空間上の位置301を示す図である。
【0033】
歩行者の実空間上の位置(検知領域200内の歩行者の位置)が検出された後、ECU101は、歩行者の横方向の位置を導出する。具体的には、ECU101は、歩行者が第1領域201内に存在するか、第2領域202及び203の何れかに存在するかを判定する。
【0034】
歩行者が第1領域201内に存在する場合、ECU101は、警報音である第1通知音を、パラメトリックスピーカ105から出力させる制御を行う。この際、ECU101は、車両150を基準とした検知領域200内の歩行者の位置への方向を、第1通知音の出力方向として決定し、当該方向へ第1通知音が出力されるように、パラメトリックスピーカ105の指向性を制御する。指向性が制御されたパラメトリックスピーカ105は、検知領域200内の歩行者の位置への方向に向けて、第1通知音を出力する。また、歩行者が第1領域201内に存在する場合、ECU101は、光を点滅させるように、光源107を制御する。光源107は、ECU101の制御により、光を点滅させる。
【0035】
一方、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在する場合、EU101は、警報音である第2通知音を、パラメトリックスピーカ105から出力させる制御を行う。第2通知音は、例えば、第1通知音よりも警告の度合いが低い音である。この際、第1通知音の出力時と同様、ECU101は、車両150を基準とした検知領域200内の歩行者の位置の方向を、第2通知音の出力方向として決定する。そして、当該方向へ第2通知音が出力されるように、パラメトリックスピーカ105の指向性を制御する。指向性が制御されたパラメトリックスピーカ105は、検知領域200内の歩行者の位置の方向に向けて、第2通知音を出力する。また、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在する場合、ECU101は、光を点滅させるように、光源107を制御する。このとき、点滅の態様は、歩行者が第1領域201内に存在する場合と同様でもよく、異なっていてもよい。光源107は、ECU101の制御により、光を点滅させる。
【0036】
但し、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在する場合であって、且つ、第1通知音を出力中、及び、光の点滅を実行中である場合には、それまで第1領域201に存在した歩行者が、第1通知音や光の点滅によって車両150の接近を認識し、危険回避のために第2領域202及び203の何れかに移動したと見なすことができる。
【0037】
このため、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、第1通知音が出力中である場合には、ECU101は、第1通知音の出力を停止する制御と、光源107による光の点滅を停止させる制御とを行うとともに、第2通知音を出力するための制御を行わないようにしてもよい。この場合、パラメトリックスピーカ105は、通知音の出力を停止する。光源107は、光の点滅を停止する。
【0038】
また、検知領域200内に歩行者が存在しても、ブレーキ103が操作された場合には、車両150の運転者が歩行者を避けるための措置を行っていると見なすことができる。この場合には、ECU101は、ブレーキ103からの操作信号に基づく当該ブレーキ103の操作状態を考慮して、通知音の出力、及び、光の点滅を制御してもよい。
【0039】
また、ハンドル104が所定角度以上、回転操作された場合には、車両150の運転者が歩行者を避けるための措置を行っていると見なすことができる。この場合には、ECU101は、ハンドル104からの操作信号に基づく当該ハンドル104の操作状態を考慮して、通知音の出力、及び、光の点滅を制御してもよい。
【0040】
具体的には、歩行者が第1領域201内に存在し、ブレーキ103が操作されたときは、ECU101は、第1通知音を出力するための制御を行わない。また、歩行者が第1領域201内に存在し、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されたときは、ECU101は、第1通知音を出力するための制御と、光源107により光を点滅させる制御とを行わない。パラメトリックスピーカ105は、通知音の出力を行わない。光源107は、光の点滅を行わない。一方、歩行者が第1領域201内に存在し、ブレーキ103が操作されておらず、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されていないときには、ECU101は、第1通知音を出力するための制御と、光源107により光を点滅させる制御とを行う。パラメトリックスピーカ105は、検知領域200内の歩行者の位置の方向に向けて、第1通知音を出力する。光源107は、光の点滅を行う。
【0041】
また、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、ブレーキ103が操作されたときは、ECU101は、第2通知音を出力するための制御と、光源107により光を点滅させる制御とを行わない。また、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されたときは、ECU101は、第2通知音を出力するための制御と、光源107により光を点滅させる制御とを行わない。パラメトリックスピーカ105は、通知音の出力を行わない。光源107は、光の点滅を行わない。一方、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、ブレーキ103が操作されておらず、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されていないときは、ECU101は、第2通知音を出力するための制御と、光源107により光を点滅させる制御とを行う。パラメトリックスピーカ105は、検知領域200内の歩行者の位置の方向に向けて、第2通知音を出力する。光源107は、光の点滅を行う。
【0042】
あるいは、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、第1通知音が出力中でなく、ブレーキ103が操作されたときは、ECU101は、第2通知音を出力するための制御と、光を点滅させる制御とを行わない。また、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されたときは、ECU101は、第2通知音を出力するための制御と、光を点滅させる制御とを行わない。パラメトリックスピーカ105は、通知音の出力を行わない。光源107は、光の点滅を行わない。一方、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在し、第1通知音が出力中でなく、ブレーキ103が操作されておらず、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されていないときは、ECU101は、第2通知音を出力するための制御と、光源107により光を点滅させる制御とを行う。パラメトリックスピーカ105は、検知領域200内の歩行者の位置の方向に向けて、第2通知音を出力する。光源107は、光の点滅を行う。
【0043】
(2)車両接近情報通知装置の動作
図6は、車両接近情報通知装置100の動作を示すフローチャートである。ECU101は、検知領域内で歩行者を検知したか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101において、検出領域内で歩行者を検知した場合、ECU101は、ECU101は、検知領域200内の歩行者の横方向の位置を導出する(ステップS102)。ECU101は、導出した検知領域200内の歩行者の横方向の位置に基づいて、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在するか否かを判定する(ステップS103)。
【0044】
歩行者が第2領域202及び203の何れにも存在しない場合、換言すれば、歩行者が第1領域201内に存在する場合(ステップS103:NO)、ECU101は、ブレーキ103が操作されたか否か、及び、ハンドル104が所定角度以上回転操作されたか否かを判定する(ステップS104)。
【0045】
ブレーキ103が操作されておらず、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されていない場合には(ステップS104:NO)、ECU101は、第1領域201内の歩行者に向けて第1通知音を出力する制御と、光を点滅させる制御とを行う(ステップS105)。その後、ECU101は、ステップS102以降の動作を繰り返す。
【0046】
一方、ブレーキ103が操作された場合、及び、ハンドル104が所定角度以上、回転操作された場合の少なくとも何れかである場合には(ステップS104:YES)、ECU101は、通知音の出力を停止させる制御と、光の点滅を停止させる制御とを行う(ステップS106)。その後、ECU101は、ステップS102以降の動作を繰り返す。
【0047】
また、ステップS103において、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在すると判定された場合(ステップS103:YES)、ECU101は、第1通知音を出力中であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0048】
第1通知音を出力中でない場合(ステップS107:NO)、ECU101は、ブレーキ103が操作されたか否か、及び、ハンドル104が所定角度以上回転操作されたか否かを判定する(ステップS108)。
【0049】
ブレーキ103が操作されておらず、ハンドル104が所定角度以上、回転操作されていない場合には(ステップS108:NO)、ECU101は、第2領域202及び203内の何れかに存在する歩行者に向けて第2通知音を出力する制御と、光を点滅させる制御とを行う(ステップS109)。その後、ECU101は、ステップS102以降の動作を繰り返す。
【0050】
一方、ブレーキ103が操作された場合、及び、ハンドル104が所定角度以上、回転操作された場合の少なくとも何れかである場合には(ステップS108:YES)、ECU101は、通知音の出力を停止させる制御と、光の点滅を停止させる制御とを行う(ステップS110)。その後、ECU101は、ステップS102以降の動作を繰り返す。
【0051】
また、ステップS107において、第1通知音を出力中であると判定された場合(ステップS107:YES)、ECU101は、第1通知音の出力を停止させる制御と、光の点滅を停止させる制御とを行う(ステップS111)。その後、ECU101は、ステップS102以降の動作を繰り返す。
【0052】
(3)作用・効果
上述したように、本発明の実施形態に係る車両接近情報通知装置100において、ECU101は、カメラ102からの画像データに対応する画像内に、実空間上の検知領域200に対応する画像上の検知領域200を設定する。次に、ECU101は、画像上の検知領域200内の縦方向のエッジに基づいて、検知領域200内の歩行者を検知する。更に、ECU101は、第1領域201内に歩行者が存在する場合には、パラメトリックスピーカ105に当該歩行者に向けて第1通知音を出力させる。また、ECU101は、第2領域202又は203内に歩行者が存在する場合には、パラメトリックスピーカ105に当該歩行者に向けて第2通知音を出力させる。このため、車両接近情報通知装置100は、車両150から遠く離れており、衝突の可能性がきわめて低い歩行者に対して、警告を行うことがなく、歩行者に対して適切に車両150の接近を通知することが可能となる。
【0053】
また、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在しても、第1通知音が出力中であれば、当該歩行者が、第1通知音によって車両150の接近を認識し、危険回避のために第2領域202及び203の何れかに移動したと見なすことができる。このため、ECU101は、歩行者が第2領域202及び203の何れかに存在する場合であっても、第1通知音が出力中である場合には、通知音の出力を停止する制御を行う。これにより、不要な通知音の出力が防止され、歩行者の無用な回避行動を防止できる。
【0054】
また、検知領域200内の歩行者が存在しても、ブレーキ103が操作されたとき、又はハンドル104が所定角度以上、回転操作されたときには、車両150の運転者が歩行者を避けるための措置を行っていると見なすことができる。このため、ECU101は、ブレーキ103が操作された場合、あるいは、ハンドル104が所定角度以上、回転操作された場合には、通知音の出力を停止する制御を行う。これにより、不要な通知音の出力が防止され、歩行者の無用な回避行動を防止できる。また、通知音が出力される場合には、光源107は、光を点滅させる。これにより、歩行者は、点滅する光の方向に車両150が存在することを認識でき、適切な回避行動をとることができる。
【0055】
(4)他の実施形態
上述した実施形態では、ECU101は、ブレーキ103が操作された場合や、ハンドル104が所定角度以上、回転操作された場合には、通知音の出力を停止する制御を行った。しかし、ECU101は、更に、車両150の速度を考慮して通知音の出力を制御してもよい。
【0056】
具体的には、ECU101は、車両150に搭載された、例えば車速パルス発生装置から出力されるパルス信号に基づいて、車両150の速度を算出する。パルス信号のパルス間隔は、速度に応じて変化する。従って、ECU101は、パルス信号に基づいて、車両150の速度を算出することができる。
【0057】
更に、ブレーキ103が操作され、車両150の速度が所定速度未満であるときには、ECU101は、通知音の出力を停止する制御を行う。また、ハンドル104が所定角度以上、回転操作され、車両150の速度が所定速度未満であるときには、ECU101は、通知音の出力を停止する制御を行う。ここで、所定速度は、車両150と検出した歩行者との距離が短いほど、小さくなる。一方、ブレーキ103が操作され、車両150の速度が所定速度以上であるときには、ECU101は、通知音を出力する制御を行う。また、ハンドル104が所定角度以上、回転操作され、車両150の速度が所定速度以上であるときには、ECU101は、通知音を出力する制御を行う。
【0058】
このように、ECU101が、車両150の速度を考慮した通知音の出力制御を行うことにより、車両接近情報通知装置100は、歩行者に対してより適切に車両150の接近を通知することができる。
【0059】
上述した実施形態では、パラメトリックスピーカ105が通知音を出力する際に、光源107が光を点滅させた。しかし、光源107が設けられない車両接近情報通知装置においても、同様に本発明を適用できる。
【0060】
その他、本発明は、上記実施形態の説明及び図面によって限定されるものではなく、上記実施形態及び図面に適宜変更等を加えることは可能である。例えば、コンピュータがプログラムを実行することで、車両接近情報通知装置100の機能を実現してもよい。また、車両接近情報通知装置100の機能を実現するためのプログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータにダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0061】
100 車両接近情報通知装置
101 ECU
102 カメラ
103 ブレーキ
104 ハンドル
105 パラメトリックスピーカ
106 運転者用スピーカ
107 光源
150 車両
200 検知領域
201 第1領域
202、203 第2領域
300 歩行者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、対象物に対して前記車両の接近を通知する車両接近情報通知装置であって、
前記車両の前方に延在する帯状の領域である検知領域内に存在する対象物を検知する検知手段と、
前記検知手段により前記対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて、音を出力する音出力手段と
を備えることを特徴とする車両接近情報通知装置。
【請求項2】
前記車両の進行方向を撮影する撮影手段を備え、
前記検知手段は、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、前記検知領域内に存在する対象物を検知する請求項1に記載の車両接近情報通知装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、道路上の前記車両の両側に存在する2本の白線を検知し、前記2本の白線に挟まれた領域を前記検知領域として設定する請求項2に記載の車両接近情報通知装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記2本の白線が検知できない場合に、前記車両の進行方向に延在し、所定の幅を有する帯状の領域を前記検知領域として設定する請求項3に記載の車両接近情報通知装置。
【請求項5】
前記検知領域は、前記車両の進行方向に延在し、前記車両の幅と同等の幅を有する帯状の第1の領域と、前記車両の進行方向に延在し、前記第1の領域の両側の帯状の第2の領域とからなり、
前記検知手段は、前記第1の領域内に存在する対象物と、前記第2の領域内に存在する対象物とを検知し、
前記音出力手段は、前記検知手段により前記第1の領域内で対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて第1の音を出力し、前記検知手段により前記第2の領域内で対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて第2の音を出力する請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両接近情報通知装置。
【請求項6】
前記音出力手段は、前記第1の音を出力中に、前記対象物が前記第2の領域内で検知された場合に、前記第1の音の出力を停止する請求項5に記載の車両接近情報通知装置。
【請求項7】
前記音出力手段は、ハンドル操作及びブレーキ操作の少なくとも何れかが行われた場合に、音の出力を停止する請求項1乃至6の何れか一項に記載の車両接近情報通知装置。
【請求項8】
車両に搭載され、対象物に対して前記車両の接近を通知する車両接近情報通知装置における車両接近情報通知方法であって、
前記車両接近情報通知装置が、前記車両の前方に延在する帯状の領域である検知領域内に存在する対象物を検知するステップと、
前記車両接近情報通知装置が、前記対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて音を出力するステップと
を備えることを特徴とする車両接近情報通知方法。
【請求項9】
コンピュータを、
車両の前方に延在する帯状の領域である検知領域内に存在する対象物を検知する検知手段、
前記検知手段により前記対象物が検知された場合に、前記対象物に向けて音を出力する音出力手段
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54702(P2013−54702A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194386(P2011−194386)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】