説明

車両検知装置

【課題】より確実な車両の分離性能および高速車両の検出精度を確保することができる車両検知装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る車両検知装置は、道路を走行する車両に対して真横あるいは真上に設置され、前記車両の少なくとも一部を重なりなく撮像する少なくとも2つのカメラからなるステレオカメラ方式の撮像部と、この撮像部の前記2つのカメラから得られる画像に対し平面投影ステレオ法による画像処理を施すことにより当該設置位置に対する前記車両の有無を検知する画像処理手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、走行する車両を検知する車両検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、有料道路の料金所において、交通量計測等に使用するため、車両を検知する車両検知装置として、カメラにより車両を撮像し、得られた画像を処理して車両検知等を行なうものが公知である。
【0003】
上記公知技術では、車両を精度よく検知することが困難であり、特に、有料道路の料金所に設置される車両検知装置として、要求される装置仕様を実現するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−53890号公報
【特許文献2】特開2009−198445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より確実な車両の分離性能および高速車両の検出精度を確保することができる車両検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る車両検知装置は、道路を走行する車両に対して真横あるいは真上に設置され、前記車両の少なくとも一部を重なりなく撮像する少なくとも2つのカメラからなるステレオカメラ方式の撮像部と、この撮像部の前記2つのカメラから得られる画像に対し平面投影ステレオ法による画像処理を施すことにより当該設置位置に対する前記車両の有無を検知する画像処理手段とを具備している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る車両検知装置の構成を概略的に示す模式図。
【図2】画像処理部における平面投影ステレオ法による画像処理を説明するフローチャート。
【図3】有料道路の料金所における料金収受車線に対する各機器の配置例を模式的に示す側面図。
【図4】有料道路の料金所における料金収受車線に対する各機器の配置例を模式的に示す上面図。
【図5】有料道路の料金所における料金収受車線に対する各機器の配置例を模式的に示す正面図。
【図6】撮像部の視野イメージを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る車両検知装置について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る車両検知装置の構成を概略的に示すものである。図1において、本実施形態に係る車両検知装置は、たとえば、有料道路の料金所において、交通量計測等に使用されるもので、撮像部10、電源部20および制御部30により構成される。
【0009】
撮像部10は、ステレオカメラ方式とし、少なくとも2つのカメラ、本実施形態では、撮像レンズ11を備えたモノクロの親カメラ(ビデオカメラ)12と同じく撮像レンズ13を備えた子カメラ(ビデオカメラ)14をケース15内に収納している。ケース15の前面に形成された撮像窓には、曇り防止のためのデフロスタガラス16が装着されている。
【0010】
2つのカメラ12,14は、その撮像視野が長辺×短辺であるとすると、長辺が縦方向となるように上下方向に所定間隔あけて並設してある。具体的に説明すると、2つのカメラ12,14を共に道路の表面(以降、路面とも称す)に対して90°回転させた状態、すなわち、2つのカメラ12,14の撮像視野がVGA画面で640画素(長辺)×480画素(短辺)であるとすると、縦方向を640画素とするように2つのカメラ12,14を上下方向に所定間隔あけて並設してある。なお、本例では、親カメラ12の上側に子カメラ14が位置するように設置されている。
【0011】
電源部20は、2つのカメラ12,14に動作電源を供給するカメラ電源部21、および、子カメラ14を親カメラ12と同期して動作させるための同期信号を生成するとともに、親カメラ12の映像出力を分配して出力する映像分配器22により構成される。
【0012】
制御部30は、親カメラ12の映像出力を取込むキャプチャボード31、子カメラ14の映像出力を取込むキャプチャボード32、取込んだ2つのカメラ12,14の映像出力(以降、画像ともいう)に対し平面投影ステレオ法による画像処理を施すことにより当該設置位置に対する車両の有無等を検知する画像処理部33、および、画像処理部33から出力される車両検知結果等を外部の上位装置へ送るインターフェース部34により構成される。
【0013】
画像処理部33における平面投影ステレオ法による画像処理は、たとえば、特開2006−53890号公報や特開2009−19845号公報などで既に公知の技術であるので、詳細な説明は省略するが、図2に示すフローチャート参照して以下に概略を説明する。
【0014】
2つのカメラ12,14で道路を通過する車両を連続して撮影する。2つのカメラ12,14は、前述したように同期しながら連続撮影する機能を有し、それぞれの時系列画像を取込む(ステップS1)。
【0015】
次に、取込んだ2つのカメラ12,14の時系列画像上で、平面上での視差の関係を表す視差プロファイルを作成(計算)する(ステップS2)。具体的には、2つのカメラ12,14の画像の対応点を抽出する。
【0016】
次に、それぞれの画像ごとの道路特徴点を複数個所抽出して、路面が同じ画像となるように合成(アフィン変換による)する。このとき、2つのカメラ12,14の視差プロファイルにより、平面(路面)と路面以外の物体(一定以上の高さを有する物体)との境界線が抽出される。前後した複数の車両や車両以外の物体に対応するために、監視領域を複数に分割した部分領域ごとに平面投影ステレオ法を適用する。部分領域ごとに平面(路面)と物体との境界線を検出し、ほぼ等距離の境界線の類似度に応じて分類することで物体を検知する。さらに、各部分領域の結果を結合して監視領域全体の物体の検知結果とする(ステップS3〜S6)。
【0017】
なお、一定以上の幅や大きさを有する物体を車両と検知する。また、車両と車両以外の判別精度を向上させるため、あらかじめ辞書として登録されている形状パターン(データパターン)と比較することも可能である。さらに、車両と判定されるものは、1台の車両とは限らず、前後した2台の車両の場合、2輪車が含まれている場合も、前記の監視領域の複数分割により可能である。
【0018】
次に、得られた物体(車両)の視差から位置を算出し、さらに物体を時系列に追跡処理することで(ステップS7)、「車両進入の有無」、「車両の進行方向」、「車両退出の有無」を判定(検知)する(ステップS8〜S10)。
【0019】
これらの一連処理を連続的に実施することにより車両検知としての画像処理を実施することが可能である。
【0020】
図3〜図5は各機器の配置例を示している。
撮像部10は、有料道路の料金所における料金収受車線41の側部(アイランド42)に立設されたポール43に取付けられている。この場合、料金収受車線41を走行する車両44を真横で斜め上方から撮像できる位置に撮像部10を設置する。具体的には、たとえば、料金収受車線41の幅が3500mm、車両44の幅が2500mm、車両44の高さが3800mmとすると、料金収受車線41の端部より路側方向へ700mm後方で、路面より3000mmの高さに車両44を真横で斜め上方から撮像するよう撮像部10を設置する。
【0021】
なお、ポール43には電源部20が取付けられている。また、アイランド42上に設置されたブース45内には制御部30が設置されている。
【0022】
このような撮像部10の設置位置により、カメラ・レンズ性能によるが、高速車の検知や最小検知物体に対して、交通量計測に必要な性能を確保できる。また、車両ごとの画像の重なりが発生しない視野とすることができ、確実な車両分離性能を確保することができる。
【0023】
なお、ステレオカメラ方式とすることにより、路面とそれ以外との検出処理が確実に実施できるため、車両44の撮像視野は、車両全景を撮像する必要はなく、車両44の一部だけが重なりなく撮像できればよい。
【0024】
次に、最小検知物体の精度向上について説明する。
最小検知物体の精度は、カメラおよびレンズと、これらの設置位置によるところが大きい。具体的には、画像処理エンジンの処理性能達成に要求される最小画素数が、車両検知精度として要求される最小検知物体のサイズを確保している必要がある。たとば、車両検知精度として、φ40mmの棒状物体(被牽引車両を牽引する小径の牽引棒)を検知する必要がある場合、また、画像処理エンジンの処理性能達成に要求される最小画素数が5画素の場合、これらを満たすカメラおよびレンズと設置位置を決定する。
【0025】
車両検知精度として、高さ方向の物体サイズを規定される場合が多く、本実施形態では、高解像度のカメラを使用することなく、車両の高さ方向の精度向上を図るため、前述したように、2つのカメラ12,14を、料金収受車線41の表面(路面)に対して90°回転させた状態(VGA画面(640画素×480画素)でいうところの縦方向を640画素とする)でケース15内に収容する。図6に撮像部10の視野イメージを示す。これにより、一般的なカメラ設置向きと比べ、高さ方向の解像度を確保することができる。
【0026】
以上述べた少なくとも1つの実施形態の車両検知装置よれば、車両を撮像する撮像部の設定位置は、車両に対して真横とし、撮像視野の範囲内で前車両・後車両の重なりが生じない位置とするとともに、ステレオカメラ方式とすることにより、少なくとも車両の一部が撮像されていれば、車両を確実に分離することができる。
【0027】
また、最小検知物体の検知精度を高めるため、高解像の高価なカメラを採用することなく、設置向きにより精度向上を図ることができる。具体的には、前述したようにカメラの設置向きを路面に対して90°回転させた向きとすることで、高さ方向の分解能を容易に確保することができる。
【0028】
これにより、たとえば、ボートトレーラ等による小径の牽引棒(最小検知物体)を検知するため、カメラの設置向きを路面に対して90°回転させた向きとすることで、高さ方向の分解能を確保し、最小検知物体の検知精度向上を図ることができる。
【0029】
なお、前記実施形態では、撮像部10を路側(アイランド42)に設置して車両44を真横から撮像するようにしたが、撮像部10を車両44の真上に設置して、真下を走行する車両44を撮像するようにしてもよい。この場合、2つのカメラ12,14が並んだ方向が車両44の走行方向と直交する方向となるように設置する。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
10…撮像部、20…電源部、30…制御部、11,13…撮像レンズ、12…親カメラ(ビデオカメラ)、14…子カメラ(ビデオカメラ)、21…カメラ電源部、22…映像分配器、31,32…キャプチャボード、33…画像処理部、41…料金収受車線、42…アイランド、44…車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両に対して真横あるいは真上に設置され、前記車両の少なくとも一部を重なりなく撮像する少なくとも2つのカメラからなるステレオカメラ方式の撮像部と、
この撮像部の前記2つのカメラから得られる画像に対し平面投影ステレオ法による画像処理を施すことにより当該設置位置に対する前記車両の有無を検知する画像処理手段と、
を具備したことを特徴とする車両検知装置。
【請求項2】
前記撮像部が前記道路を走行する車両に対して真横に設置される場合、前記2つのカメラの撮像視野が長辺×短辺であるとすると、長辺が縦方向となるように前記2つのカメラを上下方向に所定間隔あけて並設してなることを特徴とする請求項1記載の車両検知装置。
【請求項3】
前記撮像部が前記道路を走行する車両に対して真上に設置される場合、前記2つのカメラの撮像視野が長辺×短辺であるとすると、長辺が前記車両の走行方向と直交する方向となるように前記2つのカメラを前記車両の走行方向と直交する方向に所定間隔あけて並設してなることを特徴とする請求項1記載の車両検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−45429(P2013−45429A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185197(P2011−185197)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】