説明

車両用の給電構造

【課題】 主電源への給電が停止されている状態での主電源電力の消耗を抑制する。
【解決手段】 アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って所定のシャットダウン処理を行うシャットダウン処理手段29を備えた電子機器4を搭載してある車両用の給電構造において、主電源3からの給電により充電される補助電源5と、電子機器4に対する給電状態の切り換えを制御する制御手段30とを備え、アクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられると、制御手段30の制御作動によって、そのオフ状態への切り換えから所定時間t3の間は、主電源3および補助電源5から電子機器4への給電が行われ、その所定時間t3の経過後に、補助電源5から電子機器4への給電が停止されるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って所定のシャットダウン処理を行うシャットダウン処理手段を備えた電子機器を搭載してある車両用の給電構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シャットダウン処理手段を備えた電子機器としては、ナビゲーション装置やオーディオ機器などがある。その一例であるナビゲーション装置においては、例えば、人為設定された目標地点や走行経路に基づく道案内動作中に、休憩などの停車によってアクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられた場合、その停車後にアクセサリスイッチが再びオン状態に切り換えられる走行再開時に停車前の動作状態を再現できるように、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って、シャットダウン処理手段が、走行再開時に必要な目標地点や走行経路などの各種の設定情報をデータ保存用の記憶手段に保存する、などの処理をシャットダウン処理として行う。
【0003】
ちなみに、データ保存用の記憶手段としては、メモリバックアップ用の電力を要するSRAMやメモリバックアップ用の電力が不要なEEPROMなどがある。
【0004】
そして、このような電子機器を搭載した車両用の給電構造としては、主電源からの給電によって充電されることにより電子機器に対する印加電圧を最低駆動補償電圧に補償する副電源(キャパシタ)を備えたアイドルストップ機能付きの車両において、キーオフ時(アクセサリスイッチがオフのとき)には、主電源(バッテリ)から電子機器に給電し、かつ、副電源(キャパシタ)から電子機器への給電を停止することにより、キーオフ時における副電源の放電を防止するように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−251234号公報(段落番号0023、0032、図1、3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成によると、アクセサリスイッチのオフ状態(キーオンからキーオフ)への切り換えに伴って行われる電子機器のシャットダウン処理に要する電力の全てが、主電源からの給電によって賄われることになる。つまり、アクセサリスイッチのオフ状態が、車載の発電機から主電源への給電が停止されている状態であるにもかかわらず、電子機器のシャットダウン処理によって主電源の電力が消費されるようになっており、主電源電力の消耗を抑制する上において改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、主電源への給電が停止されている状態での主電源電力の消耗を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って所定のシャットダウン処理を行うシャットダウン処理手段を備えた電子機器を搭載してある車両用の給電構造において、
主電源からの給電により充電される補助電源と、前記電子機器に対する給電状態の切り換えを制御する制御手段とを備え、
前記アクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられると、前記制御手段の制御作動によって、そのオフ状態への切り換えから所定時間の間は、前記主電源および前記補助電源から前記電子機器への給電が行われ、その所定時間の経過後に、前記補助電源から前記電子機器への給電が停止されるように構成してあることを特徴とする。
【0008】
この特徴構成によると、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って行われる電子機器のシャットダウン処理に要する電力は、主電源および補助電源からの給電によって賄われることになる。これにより、電子機器のシャットダウン処理によって消費される主電源の電力量が減少する。
【0009】
ところで、電子機器のシャットダウン処理によって消費される主電源の電力量を減少させる上においては、電子機器のシャットダウン処理に要する電力の全てを、補助電源からの給電のみで賄うことも考えられる。しかしながら、この場合には、電子機器のシャットダウン処理時に消費される補助電源の電力量が多くなるために、補助電源の本来の機能が著しく低下する虞がある。
【0010】
例えば、補助電源がデータ保存用のバックアップ電源として装備されたものである場合には、電子機器のシャットダウン処理による消費電力量が多くなると、それに伴って、バックアップ電源として機能する時間が短くなることから、主電源から補助電源への給電が再開されるまでの間において、補助電源が完放電してデータが消失される可能性が高くなる。
【0011】
また、補助電源が、アイドルストップ機能を備えた車両において、電子機器に対する印加電圧を最低駆動補償電圧に補償する補償電源として装備されたものである場合には、電子機器のシャットダウン処理による消費電力量が多くなると、シャットダウン処理時の電力消費によって、補助電源の電力量が、補償電源として機能し得る電力量から大幅に低下することになる。そのため、補助電源の電力量が、主電源からの給電により補償電源として機能し得る電力量に回復するまでに要する時間が長くなり、その間、アイドルストップ機能を働かせることができなくなる。
【0012】
そこで、本発明では、電子機器のシャットダウン処理に要する電力の供給を、補助電源からだけでなく主電源からも行い、また、補助電源から電子機器への給電時間を所定時間の間に制限するようにしているのであり、これによって、電子機器のシャットダウン処理による補助電源の電力消費が抑制されることになる。
【0013】
その結果、補助電源が、例えばバックアップ電源として装備されたものである場合には、バックアップ電源として機能する時間が長くなることから、主電源から補助電源への給電が再開されるまでの間において、補助電源が完放電してデータが消失される可能性が低くなる。
【0014】
また、補助電源が、例えば補償電源として装備されたものである場合には、シャットダウン処理後の補助電源の電力量が、主電源からの給電によって補償電源として機能し得る電力量に回復するまでに要する時間が短くなることから、アイドルストップ機能を早期のうちに働かせることができるようになる。
【0015】
従って、補助電源の電力を適切に有効利用することによって、主電源への給電が停止されている状態での主電源電力の消耗を抑制することができるとともに、その利用による補助電源の本来機能の低下を抑制することができる。
【0016】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記制御手段に、前記主電源から前記電子機器への給電を制限する制限回路を備え、
前記制御手段の制御作動によって、前記所定時間の経過後には、前記制限回路を介した前記主電源から前記電子機器への給電が行われるように構成してあることを特徴とする。
【0017】
この特徴構成によると、電子機器として、そのシャットダウン処理後に計時用やメモリバックアップ用の電力を要するものを装備した場合に、電子機器に対する必要最小限の電力が主電源から電子機器に供給されることになる。その結果、電子機器のシャットダウン処理後における主電源の電力消費を抑制することができる。
【0018】
従って、主電源をメモリバックアップ電源などとして機能させるようにしながら、主電源への給電が停止されている状態での主電源電力の消耗を必要最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる車両用の給電構造を、アイドルストップ機能を備えた車両の給電システムに適用した場合について説明する。
【0020】
図1〜5には、アイドルストップ機能を有する車両に備えた給電システムの一部が示されている。この給電システムには、CPUからなる制御装置1を備えたアイドルストップ制御部2と、車両に搭載されたスタータ(図示せず)などの種々の電子機器に給電する主電源としてのバッテリ3と、種々の電子機器のうちの最低駆動電圧を補償する必要のある電圧補償対象負荷4と、バッテリ3からの給電で充電されることによって補助電源として機能する蓄電素子(例えばキャパシタ)5などを備えた補助電源装置6とが装備されている。そして、この給電システムにおいて、バッテリ3、電圧補償対象負荷4、および補助電源装置6は、それぞれアイドルストップ制御部2を介して接続されている。
【0021】
図示は省略するが、アイドルストップ制御部2は、エンジン停止用の所定条件が成立した場合にエンジンを停止させ、かつ、エンジン再始動用の所定条件が成立した場合にエンジンを再始動させるアイドルストップ機能を有するように構成されている。
【0022】
具体的には、アイドルストップ制御部2には、車軸の回転速度を検出する車速センサ、シフトレバーの操作位置を検出するシフトセンサ、および、車輪に作用するブレーキ圧を検出するブレーキセンサ、などからの検出情報が入力されている。そして、アイドルストップ制御部2は、基本的に、車速センサからの検出情報に基づいて、車速が予め設定した所定速度から零速まで低下したことを検知した状態において、シフトセンサからの検出情報に基づいて、変速レバーが中立位置またはドライブ位置に操作されていることを検知し、ブレーキセンサからの検出情報に基づいて、予め設定した所定圧以上のブレーキ圧が車輪に作用していることを検知した場合に、エンジン停止用の所定条件が成立している(車両が走行停止しているアイドリング状態である)と判断し、その判断に基づいて、エンジンが停止されるように点火装置や燃料噴射装置などの作動を制御する。また、そのアイドルストップ機能によるエンジンの自動停止後に、ブレーキセンサからの検出情報に基づいて、車輪に作用しているブレーキ圧が所定圧よりも低下したことを検知した場合に、エンジン再始動用の所定条件が成立している(運転者に車両を動かす意志がある)と判断して、エンジンが再始動されるように点火装置や燃料噴射装置およびスタータなどの作動を制御する。
【0023】
つまり、このアイドルストップ機能によって、信号待ちや渋滞などによる停車時にエンジン停止用の所定条件が成立した場合には、その成立に伴ってエンジンを自動的に停止させることができ、結果、停車中のアイドリングによる燃料の消費や排気ガスの発生などを抑制することができる。また、エンジンを自動停止させたアイドルストップ状態において、エンジン再始動用の所定条件が成立した場合には、その成立に伴ってエンジンを自動的に再始動させることができ、結果、エンジンの再始動操作に手間取るなどの不都合を招くことなく、車両を簡便に再発進させることができる。
【0024】
なお、エンジン停止用の所定条件、および、エンジン再始動用の所定条件は種々の変更が可能である。例えば、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサや、駐車ブレーキの作動状態を検出する駐車ブレーキセンサ、などからの検出情報をアイドルストップ制御部2に入力し、それらの検出情報を考慮するように構成してもよい。
【0025】
電圧補償対象負荷4は、車両に搭載された電子機器のうち、オーディオ機器やナビゲーション装置などのように、印加電圧が最低駆動電圧を下回った場合に、その動作をリセットまたは遮断するように構成された電子機器である。スタータは、車両に搭載された電子機器のうち、作動時に大電力を必要とする大電力負荷である。
【0026】
そのため、単にバッテリ3からの電力を電圧補償対象負荷4とスタータとに供給するように構成すると、電圧補償対象負荷4を作動させた状態で、アイドルストップ機能によるエンジンの再始動が行われた場合に、大電力負荷であるスタータの作動に伴って、図6において破線で示すように、電圧補償対象負荷4に対する印加電圧が最低駆動電圧を下回って、電圧補償対象負荷4の動作がリセットまたは一時的に遮断される不都合を招くことがある。
【0027】
そこで、図1〜5に示すように、この給電システムには、前述した補助電源装置6とともに、電圧補償対象負荷4に対する給電状態の切り換えを可能にする制御回路7が備えられている。
【0028】
制御回路7は、アイドルストップ制御部2に備えられており、電圧補償対象負荷4に対する給電ライン8に、バッテリ3への逆流を防止するダイオード9、電圧補償対象負荷4に対する給電状態を切り換える第1半導体スイッチ10と第2半導体スイッチ11、および、電圧補償対象負荷4に対する給電を制限する省電力用の制限回路(例えば抵抗器)28を備え、給電ライン8におけるダイオード9のアノード側を、バッテリ3から補助電源装置6への給電を断続するリレースイッチ12と第3半導体スイッチ13とを備えた充電ライン14を介して、補助電源装置6に対する充放電ライン15に接続し、給電ライン8におけるダイオード9のカソード側に、補助電源装置6への逆流を防止するダイオード16を備えた放電ライン17を介して充放電ライン15を接続して構成されている。
【0029】
そして、アクセサリスイッチ(図示せず)がオン状態に切り換えられると、制御装置1の制御作動によって、各半導体スイッチ10,11,13およびリレースイッチ12の作動が制御されることで、バッテリ3から電圧補償対象負荷4および補助電源装置6に給電する給充電状態(図1および図2参照)、または、補助電源装置6から電圧補償対象負荷4に給電する放電状態(図3参照)に切り換えられる。また、アクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられると、制御装置1の制御作動によって、各半導体スイッチ10,11,13およびリレースイッチ12の作動が制御されることで、バッテリ3および補助電源装置6から電圧補償対象負荷4に給電する給放電状態(図4参照)、または、バッテリ3から省電力用の制限回路28を介して電圧補償対象負荷4に給電する制限給電状態(図5参照)に切り換わる。
【0030】
制御装置1は、アクセサリスイッチのオン状態への切り換えによって起動され、その起動とともに、制御回路7が給充電状態に切り換わるように各半導体スイッチ10,11,13およびリレースイッチ12の作動を制御し(図1および図2参照)、かつ、制御回路7での電圧を監視する。そして、制御回路7での電圧が電圧補償対象負荷4の最低駆動電圧を超えて安定している場合には、制御回路7での電圧が電圧補償対象負荷4の最低駆動電圧を下回る虞がないと判断して、制御回路7が給充電状態に維持されるように各半導体スイッチ10,11,13およびリレースイッチ12の作動を制御する(図1および図2参照)。また、制御回路7での電圧が急激に降下する場合には、制御回路7での電圧が電圧補償対象負荷4の最低駆動電圧を下回る虞があると判断して、制御回路7が放電状態に切り換わるように各半導体スイッチ10,11,13およびリレースイッチ12の作動を制御する(図3参照)。
【0031】
つまり、スタータの作動によって電圧補償対象負荷4に対する印加電圧が最低駆動電圧を下回る虞がある場合には、制御装置1が制御回路7を放電状態(図3参照)に切り換えることで、蓄電素子5に充電した電力を電圧補償対象負荷4に供給することができる。
【0032】
ところで、上記のように制御回路7を放電状態に切り換えても、蓄電素子5の充電が不十分である場合には、電圧補償対象負荷4に対する印加電圧を最低駆動電圧に補償することができなくなる。
【0033】
そこで、制御装置1は、補助電源装置6における蓄電素子5の充電量を監視し、その蓄電素子5の充電量が、蓄電素子5からの放電によって電圧補償対象負荷4の最低駆動電圧を補償することが可能な放電可能電圧(ここでは電圧補償対象負荷4の最低駆動電圧とする)に達するまでの間はアイドルストップ機能を停止し、放電可能電圧に達するのに伴ってアイドルストップ機能を働かせるように構成されている。
【0034】
この構成によって、アイドルストップ機能によってエンジンが再始動される場合には、必ず、蓄電素子5の充電量が放電可能電圧に達していることから、その再始動時において、スタータの作動による電圧降下によって電圧補償対象負荷4に対する印加電圧が最低駆動電圧を下回る虞が生じた場合には、制御回路7の制御作動によって、制御回路7が放電状態(図3参照)に切り換えられ、これにより、電圧補償対象負荷4の最低駆動電圧を補償することが可能な電力が、蓄電素子5から電圧補償対象負荷4に向けて供給されることになる。
【0035】
その結果、図6において実線で示すように、アイドルストップ機能によるエンジン再始動時のスタータの作動にかかわらず、電圧補償対象負荷4に対する印加電圧を最低駆動電圧以上に補償することができ、そのときのスタータの作動による電圧降下に起因して、電圧補償対象負荷4の動作がリセットまたは一時的に遮断される不都合の発生を防止することができる。
【0036】
図1〜5に示すように、補助電源装置6には、蓄電素子5の放電によってバッテリ3と蓄電素子5との電位差が大きくなった場合に、バッテリ3から蓄電素子5にわたる充電経路18での過電流を防止する制限回路(例えば抵抗器)19が備えられている。
【0037】
これによって、充電経路18を形成する上において、充電経路18に備えられるリレースイッチ12や第3半導体スイッチ13、あるいは、バッテリ3からアイドルストップ制御部2にわたるハーネス20や、アイドルストップ制御部2から補助電源装置6にわたるハーネス21などに、その過電流に耐え得る耐過電流性の高いものを採用する必要がなくなり、結果、耐過電流性の高いハーネス20,21などを採用することによるコストの高騰を招くことなく、それらの過電流に起因した損傷を未然に回避することができる。
【0038】
ところで、補助電源装置6に過電流防止用の制限回路19を備えるだけでは、図7の(ロ)に示すように、蓄電素子5の充電量が放電可能電圧に達するまでに要する時間t2が長くなり、それに伴って、アイドルストップ機能の停止時間も長くなることから、停車中のアイドリングによる燃料の消費や排気ガスの発生などを効果的に抑制することが難しくなる。
【0039】
そこで、図1〜5に示すように、この給電システムには、バッテリ3から蓄電素子5への給電状態を、過電流防止用の制限回路19を介して行う第1給電状態(図1参照)と、過電流防止用の制限回路19を迂回して行う第2給電状態(図2参照)とに切り換える切換手段22が備えられている。切換手段22は、制御装置1の制御作動に基づいて、アイドルストップ制御部2に備えたリレードライバ23が、補助電源装置6に備えた常開型のリレースイッチ24の作動状態を切り換えることで、バッテリ3から蓄電素子5への給電状態を第1給電状態と第2給電状態とに切り換えるように構成されている。
【0040】
制御装置1は、蓄電素子5の充電量に基づいて切換手段22の作動を制御することで、バッテリ3から蓄電素子5への給電を制御するように構成されている。
【0041】
以下、図8のフローチャートに基づいて、制御装置1の制御作動による蓄電素子5に対する給電制御について説明する。
【0042】
制御装置1は、アクセサリスイッチのオン状態への切り換えによって起動されるとともに、蓄電素子5の充電量が予め設定した所定電圧に達しているか否かを判別する。所定電圧に達していない場合には、切換手段22のリレースイッチ24に対する励磁ライン25への通電を阻止して、リレースイッチ24をオフ状態に維持することで、切換手段22を第1給電状態(初期状態)に維持する。つまり、バッテリ3から蓄電素子5に流れる電流が過電流防止用の制限回路19によって制限されるように蓄電素子5に給電する(図1参照)。所定電圧に達している場合、または、その給電によって所定電圧に達した場合には、蓄電素子5の充電量が放電可能電圧に達しているか否かを判別する。放電可能電圧に達していない場合には、励磁ライン25への通電を許容して、リレースイッチ24をオン状態に切り換えることで、切換手段22を第2給電状態に切り換える。つまり、バッテリ3から蓄電素子5に流れる電流が過電流防止用の制限回路19によって制限されないように蓄電素子5に給電する(図2参照)。放電可能電圧に達している場合、または、その給電によって放電可能電圧に達した場合には、励磁ライン25への通電を阻止して、リレースイッチ24をオフ状態に切り換えることで、切換手段22を第1給電状態に切り換える(図1参照)。そして、アクセサリスイッチのオフ操作が行われるまで、この給電制御を繰り返すように構成されている。
【0043】
ちなみに、上記の所定電圧は、バッテリ3から蓄電素子5にわたる充電経路18に使用するリレースイッチ12や第3半導体スイッチ13あるいはハーネス20,21などの耐過電流性に基づいて、切換手段22を第2給電状態に切り換えた際に、それらにおいて過電流を招く虞のない値に設定されている。
【0044】
この構成によって、蓄電素子5の充電量が所定電圧に達していない場合、つまり、充電経路18において過電流を招く虞があるほどにバッテリ3と蓄電素子5との電位差が大きい場合には、図1に示すように、バッテリ3から蓄電素子5への給電が、過電流防止用の制限回路19によって制限された状態で行われることから、充電経路18での過電流を防止することができる。
【0045】
また、蓄電素子5の充電量が所定電圧に達している場合、つまり、充電経路18において過電流を招く虞がない程度にバッテリ3と蓄電素子5との電位差が小さい場合には、図2に示すように、バッテリ3から蓄電素子5への給電が、過電流防止用の制限回路19によって制限されない状態で行われることから、図7に示すように、蓄電素子5の充電量が放電可能電圧に達するまでに要する充電時間t1〔図7の(イ)参照〕を、蓄電素子5の充電量にかかわらず過電流防止用の制限回路19を介してバッテリ3から蓄電素子5に給電する場合の充電時間t2〔図7の(ロ)参照〕に比較して短縮することができる。
【0046】
そして、蓄電素子5の充電時間t1が短縮されることで、アイドルストップ機能の停止時間が短縮されて、アイドルストップ機能を早期に働かせることができるようになり、結果、停車中のアイドリングによる燃料の消費や排気ガスの発生などを効果的に抑制することができる。
【0047】
制御装置1は、エンジン停止用の所定条件が成立してエンジンを自動停止させたアイドルストップ状態では、図2に示すように、切換手段22を第2給電状態に切り換えるように構成されている。これにより、エンジン再始動用の所定条件が成立してエンジンを再始動させる場合には、そのときのスタータの作動による電圧降下に基づいて、制御回路7が給充電状態(図2参照)から放電状態(図3参照)に切り換えられるとともに、蓄電素子5から電圧補償対象負荷4への給電が過電流防止用の制限回路19を迂回した状態で迅速に行われることになる。
【0048】
ところで、ナビゲーション装置やオーディオ機器などの電圧補償対象負荷(電子機器)4は、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って所定のシャットダウン処理を行うシャットダウン処理手段28を備えている。ナビゲーション装置のシャットダウン処理手段28は、例えば、人為設定された目標地点や走行経路に基づく道案内動作中に、休憩などの停車によってアクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられた場合には、その停車後にアクセサリスイッチが再びオン状態に切り換えられる走行再開時に、停車前の動作状態を再現できるように、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って、走行再開時に必要な目標地点や走行経路などの各種の設定情報をデータ保存用の記憶手段に保存する、などの処理をシャットダウン処理として行うように構成されている。オーディオ機器のシャットダウン処理手段28は、例えば、楽曲の再生中に、休憩などの停車によってアクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられた場合には、その停車後にアクセサリスイッチが再びオン状態に切り換えられる走行再開時に、停車前に再生していた楽曲の頭出し再生が可能となるように、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って、走行再開時の頭出し再生に必要な各種の情報をデータ保存用の記憶手段に保存する、などの処理をシャットダウン処理として行うように構成されている。
【0049】
そのため、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えが行われてから、ナビゲーション装置やオーディオ機器などの電圧補償対象負荷4においてシャットダウン処理が行われている間は、車載のオルタネータ(図示せず)による発電が停止されているにもかかわらず、それらの電圧補償対象負荷4にシャットダウン処理用の電力を供給する必要がある。
【0050】
さらに、ナビゲーション装置やオーディオ機器などの電圧補償対象負荷4は、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換え後も、計時機能などを有効な状態に維持するための電力を要するものである。また、シャットダウン処理手段28を備えた電圧補償対象負荷4には、データ保存用の記憶手段として、バックアップ用の電力を要するSRAMなどを採用しているものもある。
【0051】
そのため、電圧補償対象負荷4のシャットダウン処理後においても、車載のオルタネータによる発電が停止されているにもかかわらず、計時用やメモリバックアップ用の電力を、ナビゲーション装置やオーディオ機器などの電圧補償対象負荷4に供給する必要がある。
【0052】
そこで、図4、図5および図9に示すように、制御装置1は、アクセサリスイッチ(図9ではACCスイッチと表記)がオフ状態に切り換えられると、そのオフ状態への切り換えから所定時間t3の間は、制御回路7が、バッテリ3および蓄電素子5の双方から電圧補償対象負荷(図9では電子機器と表記)4に給電する給放電状態(図4および図9参照)に切り換わり、その所定時間t3の経過後には、制御回路7が、蓄電素子5から電圧補償対象負荷4への給電を停止し、かつ、バッテリ3から電圧補償対象負荷4への給電を省電力用の制限回路28を介して行う制限給電状態(図5および図9参照)に切り換わるように、各半導体スイッチ10,11,13およびリレースイッチ12,24の作動を制御し、その後、アクセサリスイッチのオン状態への切り換えが行われるまでの間、作動停止するように構成されている。なお、所定時間t3は、電圧補償対象負荷4のシャットダウン処理に要する時間よりも少し長い時間(例えば3分)に設定されている。
【0053】
この構成から、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えが行われると、そのオフ状態への切り換え後は自然放電によって消費される蓄電素子5の電力が、所定時間t3の間、バッテリ3からの電力とともに、ナビゲーション装置やオーディオ機器などの電圧補償対象負荷4におけるシャットダウン処理用の電力として電圧補償対象負荷4に供給され、その所定時間t3の経過後は、蓄電素子5から電圧補償対象負荷4への給電が停止され、バッテリ3からの電力が、省電力用の制限回路28によって、計時用やメモリバックアップ用の電力としての必要最小限に制限された状態で電圧補償対象負荷4に供給されることになる。
【0054】
つまり、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換え後は自然放電によって消費される蓄電素子5の電力を、電圧補償対象負荷4のシャットダウン処理用として有効利用することから、そのシャットダウン処理に要する電力の全てをバッテリ3からの電力で賄う場合に比較して、バッテリ3の消耗を抑制することができる。また、シャットダウン処理後のバッテリ3から電圧補償対象負荷4への給電を、省電力用の制限回路28を介して必要最小限に抑えることから、その給電を省電力用の制限回路28を介さずに行う場合に比較して、バッテリ3の消耗を抑制することができる。
【0055】
その結果、車載のオルタネータからバッテリ3への充電が停止されているアクセサリスイッチのオフ状態への切り換え後において、電圧補償対象負荷4への給電によるバッテリ3の消耗を効果的に抑制することができる。
【0056】
また、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えから所定時間t3の間だけ、蓄電素子5の電力を、バッテリ3からの電力とともに電圧補償対象負荷4に供給し、その所定時間の経過後には、蓄電素子5から電圧補償対象負荷4への給電を停止することから、電圧補償対象負荷4のシャットダウン処理に要する電力の全てを蓄電素子5からの電力で賄う場合や、蓄電素子5から電圧補償対象負荷4への給電を所定時間の経過後も継続して行う場合に比較して、蓄電素子5の消耗を抑制することができる。
【0057】
このように、アクセサリスイッチのオフ状態における蓄電素子5の消耗を抑制することにより、休憩などの停車によって一時的にアクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられた場合には、その停車中における蓄電素子5の自然放電量も少ないことから、その停車後にアクセサリスイッチが再びオン状態に切り換えられる走行再開時には、そのオン状態への切り換えに伴って行われるバッテリ3から蓄電素子5への給電によって、蓄電素子5の電力量を、電圧補償対象負荷4に対する印加電圧を最低駆動電圧に補償し得る電力量まで、比較的に短い時間で回復させることができる。
【0058】
その結果、アイドルストップ機能を早期のうちに働かせることができ、停車中のアイドリングによる燃料の消費や排気ガスの発生などを効果的に抑制することができる。
【0059】
そして、本実施形態においては、制御装置1、制御回路7、過電流防止用の制限回路19、および切換手段22、によって電圧補償対象負荷(電子機器)4に対する給電状態の切り換えを適切に制御する制御手段30が構成されている。
【0060】
図1〜5に示すように、制御装置1は、励磁ライン25を介して蓄電素子5の充電量を監視するように構成されている。また、励磁ライン25は、蓄電素子5と過電流防止用の制限回路19とにわたる充放電ライン26(蓄電素子5のプラス側)に接続されている。
【0061】
この構成から、過電流防止用の制限回路19とハーネス21とにわたる充放電ライン27(バッテリ3のプラス側)に励磁ライン25を接続する場合に比較して、蓄電素子5の充電量を容易に監視することができる。また、アイドルストップ制御部2と補助電源装置6とにわたるハーネス21のグランドショートや制御装置1の故障などに起因して、励磁ライン25が不測に通電状態に切り換わったとしても、蓄電素子5が十分に充電されてリレースイッチ24の作動電圧に達していない限り、切換手段22が第2給電状態に切り換わらないようになる。その結果、励磁ライン25を蓄電素子5と過電流防止用の制限回路19とにわたる充放電ライン26に接続する場合には、励磁ライン25が不測に通電状態に切り換わると招く虞のあった充電経路18での過電流を防止することができ、その過電流に起因したハーネス20,21などの損傷を未然に回避することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
【0063】
〔1〕上記の実施形態では、本発明にかかる車両用の給電構造を、アイドルストップ機能を備えた車両の給電システムに適用した場合について例示したが、本発明は、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って所定のシャットダウン処理を行うシャットダウン処理手段29を備えた電子機器を搭載してある車両であれば、アイドルストップ機能を有する車両に限定されることはなく、それ以外の車両にも適用することができる。
【0064】
〔2〕シャットダウン処理手段29を備えた電子機器としては、電圧補償対象負荷4に限定されるものではない。また、主電源3からの計時用やメモリバックアップ用の電力の供給が不要に構成されたものであってもよい。
【0065】
〔3〕上記の実施形態においては、給電システムに過電流防止用の制限回路19と切換手段22とを備えることから、電子機器(電圧補償対象負荷4)に対する給電状態の切り換えを適切に制御する制御手段30として、制御装置1、制御回路7、過電流防止用の制限回路19、および切換手段22、によって構成したものを例示したが、過電流防止用の制限回路19と切換手段22とを備えない給電システムにおいては、制御手段30は、制御装置1と制御回路7とから構成されることになる。つまり、制御手段30の構成は、給電システムの構成に基づいて種々の変更が可能である。
【0066】
〔4〕アクセサリスイッチのオフ状態への切り換え後に主電源3および補助電源5から電子機器への給電が行われる所定時間t3としては種々の変更が可能であり、例えば、所定時間t3を、電圧補償対象負荷4のシャットダウン処理に要する時間と同じ時間、あるいは、電圧補償対象負荷4のシャットダウン処理に要する時間よりも少し短い時間に設定するようにしてもよい。
【0067】
〔5〕図10に示すように、アクセサリスイッチ(図10ではACCスイッチと表記)がオフ状態に切り換えられると、制御手段30の制御作動によって、そのオフ状態への切り換えから所定時間t3の間は、補助電源5から電子機器4への給電と、省電力用の制限回路28を介した主電源3から電子機器4への給電とが行われ、その所定時間t3の経過後には、補助電源5から電子機器4への給電が停止されて、省電力用の制限回路28を介した主電源3から電子機器4への給電のみが行われるように構成してもよい。
【0068】
この構成によると、車載のオルタネータから主電源3への充電が停止されているアクセサリスイッチのオフ状態への切り換え後において、電子機器4への給電による主電源3の消耗をより効果的に抑制することができる。
【0069】
また、この構成においては、省電力用の制限回路28を可変式に構成して、アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えから所定時間t3の間に、省電力用の制限回路28を介して主電源3から電子機器4に供給される電力量の調節が可能となるように構成してもよい。
【0070】
〔6〕アクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられると、制御手段30の制御作動によって、そのオフ状態への切り換えから所定時間t3の間は、主電源3および補助電源5から電子機器4への給電が行われ、その所定時間t3の経過後には、主電源3および補助電源5から電子機器4への給電が停止されるように構成してもよい。
【0071】
〔7〕補助電源5としては、計時用やメモリバックアップ用の電力を電子機器4に供給するバックアップ電源として機能するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】蓄電素子への給電を制限する給充電状態を示す電気回路図
【図2】蓄電素子への給電を制限しない給充電状態を示す電気回路図
【図3】放電状態を示す電気回路図
【図4】給放電状態を示す電気回路図
【図5】制限給電状態を示す電気回路図
【図6】スタータ作動時の電圧の変位を示す図
【図7】蓄電素子の充電時間を示す図
【図8】蓄電素子に対する給電制御のフローチャート
【図9】アクセサリスイッチの状態と電子機器に対する電力供給状態との関係を示す図
【図10】別実施形態でのアクセサリスイッチの状態と電子機器に対する電力供給状態との関係を示す図
【符号の説明】
【0073】
3 主電源(バッテリ)
4 電子機器(電圧補償対象負荷)
5 補助電源(蓄電素子)
28 制限回路(省電力用)
29 シャットダウン処理手段
30 制御手段
t3 所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセサリスイッチのオフ状態への切り換えに伴って所定のシャットダウン処理を行うシャットダウン処理手段を備えた電子機器を搭載してある車両用の給電構造であって、
主電源からの給電により充電される補助電源と、前記電子機器に対する給電状態の切り換えを制御する制御手段とを備え、
前記アクセサリスイッチがオフ状態に切り換えられると、前記制御手段の制御作動によって、そのオフ状態への切り換えから所定時間の間は、前記主電源および前記補助電源から前記電子機器への給電が行われ、その所定時間の経過後に、前記補助電源から前記電子機器への給電が停止されるように構成してあることを特徴とする車両用の給電構造。
【請求項2】
前記制御手段に、前記主電源から前記電子機器への給電を制限する制限回路を備え、
前記制御手段の制御作動によって、前記所定時間の経過後には、前記制限回路を介した前記主電源から前記電子機器への給電が行われるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両用の給電構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−222122(P2008−222122A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65571(P2007−65571)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)