説明

車両用の電源装置及びこの電源装置を備える車両

【課題】電装用バッテリの電圧低下に影響されずに、常にコントロール回路を正常に動作状態に保持する。
【解決手段】車両用の電源装置は、複数の電池10を接続してなる走行用バッテリ1と、走行用バッテリ1を車両側負荷30に接続するバッテリスイッチ2と、バッテリスイッチ2を制御するコントロール回路4と、コントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給する電装用バッテリ35とを備える。電源装置は、電装用バッテリ35の供給電圧が低下する電圧低下状態において、走行用バッテリ1の電池10からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給してコントロール回路4を動作状態に保持する一時電力供給回路6を備え、電装用バッテリ35の電圧低下状態において、一時電力供給回路6がコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給して、コントロール回路4を動作状態に保持してバッテリスイッチ2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用バッテリを負荷に接続するバッテリスイッチと、このバッテリスイッチを制御するコントロール回路とを備える車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電源装置は、走行用バッテリと車両側負荷との間にバッテリスイッチを設けている(特許文献1参照)。バッテリスイッチは、車両のキースイッチのオン状態でオン、キースイッチのオフ状態でオフに切り換えられる。オン状態のバッテリスイッチは、走行用バッテリを車両側負荷に接続する。車両側負荷は、DC/ACインバータを介してモータや発電機を接続している。バッテリスイッチのオン状態で、走行用バッテリはDC/ACインバータを介してモータに電力を供給してモータで車両を走行させる。また、この状態で、発電機の出力は、DC/ACインバータを介して走行用バッテリを充電する。
【0003】
以上のバッテリスイッチは、コントロール回路でオンオフに制御される。コントロール回路は、キースイッチのオン状態を検出してバッテリスイッチをオンに、キースイッチのオフを検出してバッテリスイッチをオフに切り換える。また、コントロール回路は、走行用バッテリや車両の異常な状態を検出して、バッテリスイッチをオフに切り換える。以上の動作をするコントロール回路は、ほとんどの車両が、12Vの鉛バッテリを使用する電装用バッテリから動作電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−269742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電装用バッテリは、車両の種々の電装品、たとえばパワーステアリングやセルモータなどにも電力を供給している。このため、車両のパワーステアリングやセルモータが電装用バッテリを大電流で放電するとき、電装用バッテリの電圧が一時的に低下することがある。とくに、劣化する電装用バッテリをパワーステアリングやセルモータが大電流で放電するとき、電装用バッテリの電圧が著しく低下する。電装用バッテリは、エンジンで回転される発電機で充電され、あるいは走行用バッテリの出力を降圧するDC/DCコンバータを介して充電されるが、充電電流は一定の電流に制限されるので、負荷電流が著しく大きくなって電圧が低下することがある。さらに、電装用バッテリが充電されない状態でパワーステアリングやセルモータで放電電流が大きくなると、電装用バッテリの電圧は著しく低下する。電装用バッテリの電圧が著しく低下すると、コントロール回路の動作が不安定となり、あるいは動作できなくなることがある。コントロール回路が正常に動作できなくなると、バッテリスイッチを正常にオンオフにコントロールできなくなる。この状態になると、キースイッチをオンに切り換えているにもかかわらず、バッテリスイッチをオン状態に保持できなくなって、走行用バッテリからモータに正常に電力を供給できなくなる。
【0006】
本発明は、この欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、電装用バッテリの電圧低下に影響されることなく、常にコントロール回路を正常に動作状態に保持できる車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両を提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、電源ラインの電圧低下状態において、コントロール回路を動作状態に保持するために専用の電源を設ける必要がなく、走行用バッテリの一部の電池からコントロール回路を動作状態に保持できる車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両を提供すことにある。
さらにまた、本発明の他の大切な目的は、電源ラインの電圧低下状態において、コントロール回路の電源ラインの供給電圧を最適電圧に調整して、コントロール回路に最適な電圧で走行用バッテリから動作電力を供給できる車両用の電源装置とこの電源装置を備える車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の車両用の電源装置は、複数の電池10を直列に接続して、車両の走行用モータ32に電力を供給する走行用バッテリ1と、この走行用バッテリ1を車両側負荷30に接続するバッテリスイッチ2と、このバッテリスイッチ2を制御するコントロール回路4と、このコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給する電装用バッテリ35とを備えている。さらに、車両用の電源装置は、電装用バッテリ35がコントロール回路4の電源ライン5に供給する供給電圧が低下する電圧低下状態において、走行用バッテリ1を構成する一部の電池10からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給して、コントロール回路4を動作状態に保持する一時電力供給回路6を備えている。車両用の電源装置は、一時電力供給回路6が、走行用バッテリ1を構成している直列接続している一部の電池10から、コントロール回路4を動作状態とする電圧の動作電力をコントロール回路4の電源ライン5に供給して、電装用バッテリ35の電圧低下状態において、コントロール回路4を動作状態に保持してバッテリスイッチ2を制御する。
【0008】
以上の車両用の電源装置は、電装用バッテリの電圧が異常に低下する状態においても、常にコントロール回路を動作状態に保持して、バッテリスイッチを正確にコントロールできる特徴がある。それは、電装用バッテリの電圧が一時的に低下する状態においては、一時電力供給回路が走行用バッテリからコントロール回路の電源ラインに動作電力を供給するからである。したがって、以上の車両用の電源装置は、電装用バッテリの負荷が一時的に大きくなって電圧が低下しても、コントロール回路を正常な動作状態としてバッテリスイッチを常に正確にコントロールできる。
【0009】
また、以上の車両用の電源装置は、電源ラインの電圧低下状態においてコントロール回路を動作状態に保持するために専用の電源を設ける必要がなく、走行用バッテリの一部の電池からコントロール回路を動作状態に保持できる特徴がある。それは、走行用バッテリが複数の電池を直列に接続しているので、直列接続している電池の個数でもって、コントロール回路の電源ラインに供給できる電圧を最適電圧に調整できるからである。一般的に電装用バッテリは、定格電圧を12Vとする鉛バッテリが使用される。一方、走行用バッテリは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池が使用される。ニッケル水素電池は定格電圧を1.2V、リチウムイオン電池は定格電圧を3.7Vとする。したがって、ニッケル水素電池を9個直列に接続してコントロール回路に供給する一時電力供給回路は、定格供給電圧を10.8V、10個を直列に接続して定格供給電圧を12Vにできる。また、リチウムイオン電池を3個直列に接続してコントロール回路に供給する一時電力供給回路は、定格供給電圧が11.1Vとなる。したがって、走行用バッテリをニッケル水素電池とする電源装置においては、一時電力供給回路が9個〜10個の電池を直列に接続してコントロール回路の電源ラインに電力を供給して、定格供給電圧を10.8V〜12Vとして、コントロール回路を動作状態にできる。また、走行用バッテリをリチウムイオン電池とする電源装置においては、一時電力供給回路が3個の電池を直列に接続してコントロール回路の電源ラインに電力を供給して、定格供給電圧を11.1Vとして、コントロール回路を動作状態にできる。一時電力供給回路は、直列接続する電池の個数で定格供給電圧を最適電圧に設定する。したがって、一時電力供給回路は、DC/DCコンバータなどを使用して、コントロール回路の電源ラインに供給する電圧を調整することなく、走行用バッテリの一部の電池から直接にコントロール回路の電源ラインに動作電力を供給して、コントロール回路を動作状態にできる。
【0010】
したがって、以上の車両用の電源装置は、電装用バッテリの電圧低下状態においては、一時電力供給回路が走行用バッテリを構成する一部の電池からコントロール回路に電力を供給することで、一時電力供給回路は、直列に接続している電池の個数を調整して、コントロール回路の電源ラインの供給電圧を最適電圧に調整できる。このため、一時電力供給回路は、コントロール回路を動作状態とするのに最適な電圧として、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給して、電装用バッテリの定格電圧においてコントロール回路を動作状態に保持できる。
【0011】
また、以上の車両用の電源装置は、電装用バッテリの電圧低下状態のおいてのみ一時的に走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給するので、走行用バッテリの一部の電池がコントロール回路に電力供給することで、この電池が過放電されることはなく、また残容量に大きな差ができることもない。それは、電装用バッテリの電圧低下状態においてのみ、一時的に放電されるからである。
【0012】
本発明の車両用の電源装置は、一時電力供給回路6が、走行用バッテリ1の一部をコントロール回路4の電源ライン5に接続する一時オンスイッチ7を備えて、電装用バッテリ35の電圧低下状態において、一時オンスイッチ7をオンに切り換えて、走行用バッテリ1を構成する一部の電池10からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給することができる。
以上の電源装置は、電圧低下状態において、一時オンスイッチをオンに切り換えて、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給し、ノーマル状態においては、一時オンスイッチをオフに切り換えて、電装用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給できる。
【0013】
本発明の車両用の電源装置は、一時電力供給回路6が、走行用バッテリ1からコントロール回路4の電源ライン5に供給する定格供給電圧を、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低くすることができる。
以上の車両用の電源装置は、簡単な回路構成としながら、電装用バッテリの電圧低下状態において、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給できる。それは、走行用バッテリからコントロール回路に電力供給する状態で、電源ラインの電圧が電装用バッテリの定格電圧よりも低くなるからである。電圧低下状態において、電源ラインの電圧が電装用バッテリの定格電圧よりも低いと、走行用バッテリからコントロール回路に電力を供給する状態で、電源ラインの電圧が電装用バッテリの定格電圧よりも高くならないので、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給しながら、電圧低下状態にあることが検出でき、また、走行用バッテリの電圧がノーマル状態になると、このことを確実に検出して、電装用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給できる。
【0014】
本発明の車両用の電源装置は、一時電力供給回路6が、電装用バッテリ35の電圧低下状態でオン状態に切り換えられる一時オンスイッチ7と、コントロール回路4の電源ライン5の電圧又は電装用バッテリ35の電圧を検出する電圧検出回路8と、電圧検出回路8で検出される検出電圧が設定電圧よりも低い電圧低下状態と、検出電圧が設定電圧よりも高いノーマル状態とを判定する判定回路9とを備えて、判定回路9が、電圧低下状態で一時オンスイッチ7をオン状態として、走行用バッテリ1の一部からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給し、ノーマル状態で一時オンスイッチ7をオフ状態として、コントロール回路4の電源ライン5に電装用バッテリ35から動作電力を供給することができる。
以上の車両用の電源装置は、電圧低下状態においては、一時オンスイッチをオンに切り換えて、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給し、ノーマル状態においては、電装用バッテリのみからコントロール回路に動作電力を供給する。したがって、電圧低下状態においてのみ走行用バッテリからコントロール回路に動作電力が供給され、ノーマル状態においては、走行用バッテリがコントロール回路で電力消費することがない。
【0015】
本発明の車両用の電源装置は、判定回路9が、電圧低下状態とノーマル状態とを判別する電圧の設定電圧を、一時電力供給回路6の定格供給電圧よりも高く、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低く設定することができる。
この電源装置は、電装用バッテリの電圧が、走行用バッテリの定格供給電圧よりも高く設定している設定電圧よりも低くなると、一時オンスイッチをオンに切り換えて、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給する。この状態で、走行用バッテリからコントロール回路の電源ラインに動作電力が供給されて、コントロール回路は動作状態となる。この状態で、走行用バッテリがコントロール回路に供給する電圧は、設定電圧よりも低く電圧低下状態となるので、一時オンスイッチはオン状態に保持されて、走行用バッテリからコントロール回路に動作電力が供給される。電装用バッテリの電圧が設定電圧よりも上昇して、電装用バッテリからコントロール回路に動作電力が供給できる状態になると、一時オンスイッチはオフに切り換えられて、走行用バッテリからコントロール回路への電力供給は遮断される。
【0016】
本発明の車両用の電源装置は、コントロール回路4が、電源ライン5に電解コンデンサ15を接続して、電圧検出回路8が、所定のサンプリング周期で電源ライン5又は電装用バッテリ35の電圧を検出するA/Dコンバータ13を備え、判定回路9が、このA/Dコンバータ13から出力されるデジタル信号から電圧低下状態とノーマル状態とを判定して、一時電力供給回路6の定格供給電圧を、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低く設定することができる。この電源装置は、判定回路9が電圧低下状態を検出して、所定の時間は一時オンスイッチ7をオン状態に保持し、この一時オンスイッチ7がオン状態に切り換えられる状態で、所定のサンプリング周期でA/Dコンバータ13が、電源ライン5又は電装用バッテリ35の電圧を検出して、判定回路9が検出電圧の変化の状態を検出して、検出電圧の変化から、電圧低下状態とノーマル状態とを判定して、一時オンスイッチ7をオンオフに制御することができる。
以上の電源装置は、電圧低下状態において、一時オンスイッチをオンに切り換える状態で、判定回路が電源ライン又は電装用バッテリの電圧変化を検出して、電圧低下状態とノーマル状態とを判定して、電圧低下状態とノーマル状態とを正確に判定できる。電装用バッテリが電圧低下状態となって一時オンスイッチがオンに切り換えられる状態で、電装用バッテリが電圧低下状態からノーマル状態になると、一時電力供給回路の定格供給電圧よりも電装用バッテリの定格電圧を高く設定しているので、電装用バッテリからコントロール回路に動作電力が供給される状態となって、電源ラインの電圧が一時電力供給回路の定格供給電圧から電装用バッテリの供給電圧に次第に上昇するからである。
【0017】
本発明の車両用の電源装置は、一時電力供給回路6の定格供給電圧を、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低く、かつ、一時電力供給回路6がダイオード17を介して走行用バッテリ1の一部の電池10からコントロール回路4の電源ライン5に電力を供給し、かつ、電装用バッテリ35がダイオード16を介してコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給することができる。
以上の車両用の電源装置は、ダイオードを介して一時電力供給回路と電装用バッテリからコントロール回路の電源ラインに動作電力が供給されるので、電圧低下状態においては、ダイオードを介して一時電力供給回路、すなわち走行用バッテリからコントロール回路に動作電力が供給され、ノーマル状態においては、電装用バッテリからコントロール回路に動作電力が供給される。したがって、この車両用の電源装置は、走行用バッテリからコントロール回路への電力供給を切り換えるスイッチを設ける必要がなく、簡単な回路構成で、電圧低下状態において走行用バッテリからコントロール回路に動作電力を供給できる。また、電圧低下状態に走行用バッテリが電装用バッテリに電力を供給することがなく、また、ノーマル状態においては、電装用バッテリからコントロール回路に電力が供給されることもない。
【0018】
本発明の車両用の電源装置は、コントロール回路4の電源ライン5を、ダイオード16を介して電装用バッテリ35に接続し、このダイオード16は、電装用バッテリ35から電源ライン5にのみ電力を供給でき、電源ライン5から電装用バッテリ35には電力を供給できない方向に接続することができる。
【0019】
本発明の車両は、上記のいずれかの電源装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例にかかる車両用の電源装置のブロック図である。
【図2】本発明の他の実施例にかかる車両用の電源装置のブロック図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる車両用の電源装置のブロック図である。
【図4】判定回路が一時オンスイッチをオンオフに切り換える電圧の一例を示す図である。
【図5】判定回路が一時オンスイッチをオンオフに切り換える電圧の他の一例を示す図である。
【図6】エンジンとモータで走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図7】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための車両用の電源装置及びこの電源装置を備える車両を例示するものであって、本発明は電源装置と車両を以下に特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
図1ないし図3に示す車両用の電源装置は、ハイブリッドカーに搭載され、あるいは電気自動車に搭載される。この電源装置は、走行用バッテリ1をバッテリスイッチ2を介して車両側負荷30に接続している。車両側負荷30は、DC/ACインバータ31を介してモータ32と発電機33とを接続している。この電源装置は、走行用バッテリ1をモータ32に接続し、モータ32で車両を走行させる。この図の電源装置は、走行用バッテリ1と、この走行用バッテリ1の出力側に接続されて、車両側負荷30への電力供給を制御するバッテリスイッチ2と、このバッテリスイッチ2をオンに切り換えるに先だって、車両側負荷30のコンデンサー34をプリチャージするプリチャージ回路3と、このプリチャージ回路3とバッテリスイッチ2を制御するコントロール回路4と、コントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給する電装用バッテリ35と、この電装用バッテリ35の電圧が低下する電圧低下状態において、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する一時電力供給回路6とを備えている。
【0023】
車両側負荷30は、並列に大容量のコンデンサー34を接続している。このコンデンサー34は、バッテリスイッチ2をオンに切り換える状態で、走行用バッテリ1と両方から車両側負荷30に電力を供給する。とくに、コンデンサー34からは、車両側負荷30に瞬間的に大電力を供給する。このため、走行用バッテリ1に並列にコンデンサー34を接続することで、車両側負荷30に供給できる瞬間電力を大きくできる。コンデンサー34から車両側負荷30に供給できる電力は、静電容量に比例するので、このコンデンサー34には、たとえば4000〜6000μFと極めて大きい静電容量のものが使用される。放電状態にある大容量のコンデンサー34が、出力電圧の高い走行用バッテリ1に接続されると、瞬間的に極めて大きいチャージ電流が流れる。コンデンサー34のインピーダンスが極めて小さいからである。
【0024】
走行用バッテリ1は、車両を走行させるモータ32を駆動する。モータ32に大電力を供給できるように、走行用バッテリ1は複数の充電できる電池10を直列に接続して出力電圧を高くしている。電池10は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池のいずれかである。ただ、電池には、ニッケルカドミウム電池など充電できる全ての電池を使用できる。走行用バッテリ1は、モータ32に大電力を供給できるように、たとえば、出力電圧を100〜400Vと高くしている。ただし、電源装置は、走行用バッテリの電圧をDC/ACインバータ31で昇圧して、車両側負荷に電力を供給することもできる。この電源装置は、直列に接続する電池の個数を少なくして、走行用バッテリの出力電圧を低くできる。したがって、走行用バッテリは、たとえば出力電圧を50〜300Vとすることができる。
【0025】
バッテリスイッチ2は、機械的に可動する接点を有するリレー、又はIGBT等の電流容量の大きい半導体スイッチング素子である。このバッテリスイッチ2は、第1のバッテリスイッチ2A(図においてプラス側のバッテリスイッチ2)をオフに保持して、第2のバッテリスイッチ2B(図においてマイナス側のバッテリスイッチ2)のみをオンに切り換える。この状態で、プリチャージ回路3でコンデンサー34をプリチャージする。コンデンサー34がプリチャージされた後、第1のバッテリスイッチ2Aをオフからオンに切り換えて、走行用バッテリ1を車両側負荷30に接続する。その後、プリチャージ回路3のプリチャージスイッチ12をオフに切り換える。オン状態のバッテリスイッチ2をオフに切り換えるときは、両方のバッテリスイッチ2を同時にオフに切り換え、あるいは順番にオフに切り換える。
【0026】
プリチャージ回路3は、電流を制限しながら車両側負荷30のコンデンサー34をプリチャージする。このプリチャージ回路3は、プリチャージ抵抗11とプリチャージスイッチ12を直列に接続している。プリチャージ抵抗11は、車両側負荷30のコンデンサー34のプリチャージ電流を制限する。プリチャージ回路3は、プリチャージ抵抗11の電気抵抗を大きくしてプリチャージ電流を小さくできる。たとえば、プリチャージ抵抗11を10Ω、走行用バッテリ1の出力電圧を400Vとする電源装置は、プリチャージ電流の最大値が40Aとなる。プリチャージ抵抗11は、大きくしてプリチャージ電流の最大値を小さくできる。ただ、プリチャージ抵抗11が大きくなると、コンデンサー34をプリチャージする時間が長くなる。プリチャージ電流が小さくなるからである。プリチャージ抵抗11の電気抵抗は、プリチャージ電流とプリチャージ時間とを考慮して、たとえば、5〜20Ω、好ましくは6〜18Ω、さらに好ましくは6〜15Ωに設定される。
【0027】
プリチャージ回路3は、バッテリスイッチ2に並列に接続される。図の電源装置は、プラス側とマイナス側の両方にバッテリスイッチ2を設けて、プラス側のバッテリスイッチ2である第1のバッテリスイッチ2Aと並列にプリチャージ回路3を接続している。この電源装置は、マイナス側のバッテリスイッチ2である第2のバッテリスイッチ2Bをオンに切り換える状態で、プリチャージ回路3でコンデンサー34をプリチャージする。プリチャージ回路3でコンデンサー34がプリチャージされると、プラス側のバッテリスイッチ2である第1のバッテリスイッチ2Aをオンに切り換えて、プリチャージ回路3のプリチャージスイッチ12をオフに切り換える。
【0028】
プリチャージ回路3は、プリチャージスイッチ12をオンにして、コンデンサー34をプリチャージする。プリチャージスイッチ12は、リレー等の機械的な接点を有するスイッチである。ただ、プリチャージスイッチには、トランジスターやFET等の半導体スイッチング素子も使用できる。
【0029】
バッテリスイッチ2とプリチャージスイッチ12は、コントロール回路4に制御される。コントロール回路4は、車両のキースイッチ36のオン状態でバッテリスイッチ2をオン、キースイッチ36のオフ状態でバッテリスイッチ2をオフに切り換える。また、コントロール回路4は、車両の衝突や走行用バッテリ1の漏電時などを検出する異常時においては、キースイッチ36のオン状態においてもバッテリスイッチ2をオフに切り換えて、走行用バッテリ1を車両側負荷30から切り離す。
【0030】
さらに、コントロール回路4は、第2のバッテリスイッチ2Bとプリチャージスイッチ12をオンに切り換えて、車両側負荷30のコンデンサー34をプリチャージした後、第1のバッテリスイッチ2Aをオンに切り換える。コントロール回路4は、コンデンサー34のプリチャージを検出した後、第1のバッテリスイッチ2Aをオンに切り換える。コントロール回路4は、プリチャージを開始してから設定時間経過したことで、コンデンサー34のプリチャージを検出し、あるいは、車両側負荷30の電流や電圧からコンデンサー34のプリチャージを検出して、第1のバッテリスイッチ2Aをオンに切り換える。
【0031】
コントロール回路4は、電装用バッテリ35から動作電力を供給している。したがって、コントロール回路4は、電源ライン5を電装用バッテリ35に接続している。さらに、図に示すコントロール回路4は、電源ライン5に電解コンデンサ15を接続している。電装用バッテリ35は、車両の電装品にも電力を供給する。車両は、種々の電装品、種々のランプ、エアコン、電動パワーステアリング、セルモータ、音響設備等を装備する。電装用バッテリ35は、主として12Vの鉛バッテリが使用され、大型車両にあっては24Vの鉛バッテリも使用される。電装用バッテリ35は、種々の電装品に電力を供給しているので、大きな電流で放電されるときに電圧が低下することがある。電装用バッテリ35の電圧が低下して、コントロール回路4の電源ライン5の電圧が異常に低下すると、コントロール回路4が正常に動作しなくなる。
【0032】
図1ないし図3の電源装置は、電装用バッテリ35の電圧が低下する状態で、コントロール回路4を動作状態に保持するために、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する一時電力供給回路6を備えている。一時電力供給回路6は、電装用バッテリ35がコントロール回路4の電源ライン5に供給する供給電圧が低下する電圧低下状態において、走行用バッテリ1を構成する一部の電池10からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給して、電装用バッテリ35の電圧低下状態においてコントロール回路4を動作状態に保持する。
【0033】
一時電力供給回路6は、走行用バッテリ1を構成している直列接続している一部の電池10から、コントロール回路4を動作状態とする電圧をコントロール回路4の電源ライン5に供給して、電装用バッテリ35の電圧低下状態においてコントロール回路4を動作状態に保持して、コントロール回路4でもってバッテリスイッチ2のオンオフを正常に制御する。
【0034】
一時電力供給回路6は、走行用バッテリ1の出力電圧を降圧してコントロール回路4の電源ライン5に電力を供給するのではない。一時電力供給回路6は、走行用バッテリ1を構成している一部の電池10からコントロール回路4に電力を供給する。電装用バッテリ35は、主として、定格電圧を12Vとする鉛バッテリが使用される。ハイブリッドカーは、キースイッチ36のオン状態において、エンジン(図示せず)で駆動される発電機33で電装用バッテリ35を充電し、あるいは、走行用バッテリ1の出力をDC/DCコンバータで降圧して電装用バッテリ35を充電する。電装用バッテリ35は、充電される状態において、電圧が13.6V〜14.5Vに上昇する。ただ、キースイッチ36がオンに切り換えられた後、コントロール回路4が種々の動作確認を完了した後、電装用バッテリ35の充電が開始されるので、電装用バッテリ35はキースイッチ36のオン状態で常に充電されるのではない。電装用バッテリ35は、充電されない状態で、大きな電流で放電されると、電圧が異常に低下する。また、電装用バッテリ35は充電される状態においても、充電電流に対して放電電流が相当に大きくなると、出力電圧は低下する。電装用バッテリ35の電圧が異常に低下する電圧低下状態において、コントロール回路4は、一時電力供給回路6によって、走行用バッテリ1から動作電力が供給される。
【0035】
一時電力供給回路6は、走行用バッテリ1を構成している電池10の直列接続個数で、コントロール回路4の電源ライン5に供給する定格供給電圧を調整する。ニッケル水素電池の定格電圧を1.2V、リチウムイオン電池の定格電圧を3.7Vとすれば、ニッケル水素電池の走行用バッテリは、直列に接続している9個の電池から電圧を出力して定格供給電圧を10.8Vとし、10個の電池から12Vの定格供給電圧を出力できる。また、リチウムイオン電池は直列に接続している3個の電池から11.1Vの定格供給電圧を出力できる。
【0036】
一時電力供給回路6は、コントロール回路4の電源ライン5に供給する定格供給電圧を、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低くして、全体の回路構成を簡単にできる。電圧低下状態となって、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する状態で、コントロール回路4の電源ライン5の電圧が電装用バッテリ35の定格電圧よりも高くならないからである。この電源装置は、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する状態、すなわち電圧低下状態において、コントロール回路4の電源ライン5の電圧が電装用バッテリ35の定格電圧よりも高くならないので、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給しながら、電圧低下状態にあることを検出できるからである。
【0037】
ただし、本発明の電源装置は、必ずしも一時電力供給回路の定格供給電圧を電装用バッテリの定格電圧よりも低くする必要はなく、一時電力供給回路の定格供給電圧を、電装用バッテリの定格電圧よりも高くすることもできる。この電源装置は、電圧低下状態において、走行用バッテリと電装用バッテリの放電電流を検出して電圧低下状態とノーマル状態とを判定し、あるいは電圧低下状態において、電源ラインの電圧変化から電圧低下状態とノーマル状態とを判定することもできる。
【0038】
図1に示す一時電力供給回路6は、走行用バッテリ1の一部をコントロール回路4の電源ライン5に接続する一対の一時オンスイッチ7と、電装用バッテリ35又は電源ライン5の電圧を検出する電圧検出回路8と、電圧検出回路8で検出される検出電圧から、電圧低下状態とノーマル状態とを判定する判定回路9とを備えている。電圧検出回路8は、電装用バッテリ35又は電源ライン5の電圧を一定のサンプリング周期で検出するA/Dコンバータ13を備えている。A/Dコンバータ13は、一定のサンプリング周期で電装用バッテリ35や電源ライン5の電圧を検出し、検出した電圧をデジタル信号に変換して判定回路9に出力する。
【0039】
電装用バッテリ35を直接にコントロール回路4の電源ライン5に接続する回路構成において、電装用バッテリ35の電圧と電源ライン5の電圧は同じ電圧となる。ただ、図1の鎖線で示すように、コントロール回路4の電源ライン5が、ダイオード16を介して電装用バッテリ35に接続される回路構成では、電装用バッテリ35の電圧と電源ライン5の電圧は必ずしも同じ電圧とはならない。たとえば、電装用バッテリ35の電圧が異常に低下する電圧低下状態において、走行用バッテリ1からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力を供給する状態においては、電源ライン5の電圧が電装用バッテリ35の電圧よりも高くなる。したがって、この回路構成においては、電圧検出回路8は、電装用バッテリ35の電圧を検出し、あるいは、図の鎖線で示すように、電源ライン5の電圧を検出して、一時オンスイッチ7をオンオフに切り換える。
【0040】
判定回路9は、電圧低下状態とノーマル状態とを判別する電圧の設定電圧を記憶している。判定回路9は、記憶する設定電圧を、一時電力供給回路6の定格供給電圧よりも高く、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低く設定している。図4は判定回路9が一時オンスイッチ7をオンオフに切り換える電圧を示している。この判定回路9は、設定電圧を電装用バッテリ35の定格電圧(12V)よりも低く、走行用バッテリ1から供給する定格供給電圧(11.1V)よりも高い電圧に設定している。この判定回路9は、電圧検出回路8で電装用バッテリ35又は電源ライン5の電圧を検出し、検出電圧が設定電圧よりも低くなると、電圧低下状態と判定して、一時オンスイッチ7をオンに切り換えて、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する。この状態で、走行用バッテリ1からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力が供給されて、コントロール回路4は動作状態となるが、この状態において、走行用バッテリ1がコントロール回路4に供給する電圧は、設定電圧よりも低くなるので、電圧検出回路8で検出される検出電圧は、設定電圧よりも低くなる。したがって、判定回路9は、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給しながら、走行用バッテリ1の電圧低下状態を検出して、一時オンスイッチ7をオン状態に保持して、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する。電装用バッテリ35の電圧が設定電圧よりも上昇すると、電装用バッテリ35の検出電圧が設定電圧よりも高くなることからノーマル状態と判定し、一時オンスイッチ7をオフに切り換えて、走行用バッテリ1からコントロール回路4への電力供給を遮断する。
【0041】
図5は、判定回路9が一時オンスイッチ7をオフに切り換える設定電圧と、オンに切り換える設定電圧とを異なる電圧として記憶して、一時オンスイッチ7をオンオフに切り換える状態を示している。この判定回路9は、電装用バッテリ35の電圧が、定格供給電圧(例えば11.1V)よりも低く設定している第1の設定電圧よりも低下すると、一時オンスイッチ7をオンに切り換えて、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する。一時オンスイッチ7がオンに切り換えられると、電源ライン5の電圧は走行用バッテリ1の定格供給電圧まで上昇するが、この状態になっても、判定回路9は一時オンスイッチ7をオフに切り換えない。判定回路9は、電装用バッテリ35の電圧が、定格供給電圧(例えば11.1V)よりも高く、かつ電装用バッテリ35の定格電圧(例えば12V)よりも低く設定している第2の設定電圧よりも高くなると一時オンスイッチ7をオフに切り換えて、電装用バッテリ35からコントロール回路4に動作電力を供給する。
【0042】
さらに、判定回路9は、電圧低下状態を検出した後、所定の時間は一時オンスイッチ7をオン状態に保持し、この一時オンスイッチ7がオン状態に切り換えられる状態で、所定のサンプリング周期で電圧検出回路8が、電源ライン5又は電装用バッテリ35の電圧を検出して、判定回路9が検出電圧の変化の状態を検出して、検出電圧の変化から、電圧低下状態とノーマル状態とを判定して一時オンスイッチ7をオンオフに制御することもできる。電圧低下状態において、一時オンスイッチ7がオンに切り換えられ、走行用バッテリ1と電装用バッテリ35の両方からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力が供給される状態において、電装用バッテリ35の電圧が上昇すると、電源ライン5の電圧が上昇するので、判定回路9は、この電圧上昇を検出して、電圧低下状態からノーマル状態になったことを検出することができるからである。
【0043】
以上の電源装置は、一対の一時オンスイッチ7を介して、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給するので、一時オンスイッチ7のオフ状態において、走行用バッテリ1はシャーシーアース14に接続されない。したがって、この回路構成は、走行用バッテリ1をシャーシーアースに接続しない電源装置に最適である。走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する状態においては、走行用バッテリ1が一時的にシャーシーアース14に接続される。ただ、走行用バッテリ1は、一時的に短い時間にコントロール回路4に動作電力を供給するので、走行用バッテリ1が一時的にシャーシーアース14に接続される実質的な弊害はない。
【0044】
図2に示す電源装置は、一時電力供給回路6からダイオード17を介してコントロール回路4に動作電力を供給し、また電装用バッテリ35もダイオード16を介してコントロール回路4に動作電力を供給する。走行用バッテリ1に接続しているダイオード17は、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給するように接続され、電装用バッテリ35に接続しているダイオード16は、電装用バッテリ35からコントロール回路4に動作電力を供給するように接続している。
【0045】
一時電力供給回路6は、走行用バッテリ1からコントロール回路4に供給する定格供給電圧を電装用バッテリ35の定格電圧よりも低く設定している。たとえば、3個のリチウムイオン電池10の直列回路からコントロール回路4に動作電力を供給することで、定格供給電圧を11.1Vとし、電装用バッテリ35を12Vの鉛バッテリとしている。この一時電力供給回路6は、電装用バッテリ35の電圧が低下して電圧低下状態になると、ダイオード17を介して走行用バッテリ1からコントロール回路4の電源ライン5に動作電力が供給される。この状態で、走行用バッテリ1に接続しているダイオード17は、逆方向に電流を流すことがなく、電装用バッテリ35から走行用バッテリ1に電流を流すことはない。電装用バッテリ35の電圧が走行用バッテリ1の定格供給電圧よりも高い状態、すなわちノーマル状態では、電装用バッテリ35からコントロール回路4に動作電力が供給される。
【0046】
以上の電源装置は、簡単な回路構成で、電圧低下状態において走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給できる。この電源装置は、走行用バッテリ1のグランドライン18をコントロール回路4のマイナス側、すなわち車両のシャーシーアース14に接続して、走行用バッテリ1をシャーシーアース14に接続している。出力電圧を数100Vとする高電圧の走行用バッテリは、グランドラインを車両のシャーシーアースに接続することなく絶縁して、感電を防止している。このことから、走行用バッテリ1のグランドライン18をシャーシーアース14に接続している電源装置は、低電圧の走行用バッテリ1、たとえば、60V以下の走行用バッテリ1の電源装置に適している。
【0047】
図3の電源装置は、電装用バッテリ35からコントロール回路4に供給される供給電流を検出して、電装用バッテリ35が、電圧低下状態からノーマル状態に復帰したことを検出する。この電源装置は、電装用バッテリ35の供給電流を検出する電流検出回路20と、電装用バッテリ35の電圧を検出する電圧検出回路8と、電圧検出回路8と電流検出回路20の信号で電圧低下状態とノーマル状態とを判定する判定回路9とを備えている。この電源装置も、一時電力供給回路6の定格供給電圧、すなわち走行用バッテリ1からコントロール回路4に供給する電圧を、電装用バッテリ35の定格電圧よりも低く設定している。したがって、電装用バッテリ35の電圧低下状態におけるコントロール回路4の電源ライン5の電圧は、ノーマル状態における電源ライン5の電圧よりも低くなる。
【0048】
電流検出回路20は、電流検出抵抗21の両端の電圧を増幅する差動アンプ22と、この差動アンプ22から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ23とを備えており、A/Dコンバータ23が所定のサンプリング周期で入力される信号をデジタル信号に変換して判定回路9に出力する。電圧検出回路8も、所定のサンプリング周期で電装用バッテリ35の電圧をデジタル信号に変換して判定回路9に入力するA/Dコンバータ13を備えている。
【0049】
判定回路9は、電圧検出回路8からデジタル信号として入力される電装用バッテリ35の検出電圧を設定電圧に比較して、電装用バッテリ35の電圧低下状態を検出する。判定回路9は、電圧検出回路8から入力される検出電圧が設定電圧よりも低い状態を電圧低下状態と判定する。電圧低下状態を検出する判定回路9は、一時オンスイッチ7をオンに切り換えて、走行用バッテリ1からコントロール回路4に動作電力を供給する。電装用バッテリ35の電圧低下状態において、コントロール回路4は、走行用バッテリ1から動作電力が供給された動作状態に保持される。電圧低下状態において、判定回路9は、電流検出回路20のA/Dコンバータ23からデジタル信号として入力される電装用バッテリ35の供給電流を設定電流に比較する。電装用バッテリ35の電圧が低い電圧低下状態において、電装用バッテリ35の電圧が低下しているので、コントロール回路4には走行用バッテリ1から電流が供給される。したがって、電圧低下状態において、電装用バッテリ35の供給電流は設定電流よりも小さくなる。電装用バッテリ35の電圧が上昇して、電装用バッテリ35からコントロール回路4に動作電力を供給できる状態になると、電装用バッテリ35の供給電流が増加する。したがって、判定回路9は電装用バッテリ35の供給電流を設定電流に比較して、電圧低下状態からノーマル状態に復帰したことを検出する。ノーマル状態を検出すると、判定回路9は一時オンスイッチ7をオフに切り換えて、コントロール回路4に電装用バッテリ35のみから動作電力を供給する。
【0050】
図3の電源装置は、電装用バッテリ35からコントロール回路4に動作電力が供給されることを検出して、一時オンスイッチ7をオフに切り換えるので、ノーマル状態を確実に検出して、一時オンスイッチ7をオフに切り換えできる。
【0051】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車などの電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
【0052】
(ハイブリッド車用電源装置)
図6は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン37及び走行用のモータ32と、モータ32に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機33とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ31を介してモータ32と発電機33に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ32とエンジン37の両方で走行する。モータ32は、エンジン効率の悪い領域、たとえば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ32は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機33は、エンジン37で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0053】
(電気自動車用電源装置)
また、図7は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ32と、このモータ32に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機33とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ31を介してモータ32と発電機33に接続している。モータ32は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機33は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る電源装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
100…電源装置
1…走行用バッテリ
2…バッテリスイッチ 2A…第1のバッテリスイッチ
2B…第2のバッテリスイッチ
3…プリチャージ回路
4…コントロール回路
5…電源ライン
6…一時電力供給回路
7…一時オンスイッチ
8…電圧検出回路
9…判定回路
10…電池
11…プリチャージ抵抗
12…プリチャージスイッチ
13…A/Dコンバータ
14…シャーシーアース
15…電解コンデンサ
16…ダイオード
17…ダイオード
18…グランドライン
20…電流検出回路
21…電流検出抵抗
22…差動アンプ
23…A/Dコンバータ
30…車両側負荷
31…DC/ACインバータ
32…モータ
33…発電機
34…コンデンサー
35…電装用バッテリ
36…キースイッチ
37…エンジン
EV…車両
HV…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池(10)を直列に接続してなる、車両の走行用モータ(32)に電力を供給する走行用バッテリ(1)と、
この走行用バッテリ(1)を車両側負荷(30)に接続するバッテリスイッチ(2)と、
このバッテリスイッチ(2)を制御するコントロール回路(4)と、
このコントロール回路(4)の電源ライン(5)に動作電力を供給する電装用バッテリ(35)と、
を備える車両用の電源装置であって、
前記電装用バッテリ(35)が前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に供給する供給電圧が低下する電圧低下状態において、前記走行用バッテリ(1)を構成する一部の電池(10)から前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に動作電力を供給して、前記コントロール回路(4)を動作状態に保持する一時電力供給回路(6)を備えており、
前記一時電力供給回路(6)が、前記走行用バッテリ(1)を構成している直列接続している一部の電池(10)から、前記コントロール回路(4)を動作状態とする電圧の動作電力を前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に供給して、前記電装用バッテリ(35)の電圧低下状態において前記コントロール回路(4)を動作状態に保持してバッテリスイッチ(2)を制御するようにしてなる車両用の電源装置。
【請求項2】
前記一時電力供給回路(6)が、前記走行用バッテリ(1)の一部を前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に接続する一時オンスイッチ(7)を有し、前記電装用バッテリ(35)の電圧低下状態において一時オンスイッチ(7)がオンに切り換えられて、前記走行用バッテリ(1)を構成する一部の電池(10)から前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に動作電力が供給される請求項1に記載される車両用の電源装置。
【請求項3】
前記一時電力供給回路(6)が、前記走行用バッテリ(1)から前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に供給する定格供給電圧を、前記電装用バッテリ(35)の定格電圧よりも低くしてなる請求項1または2に記載される車両用の電源装置。
【請求項4】
前記一時電力供給回路(6)が、前記電装用バッテリ(35)の電圧低下状態でオン状態に切り換えられる一時オンスイッチ(7)と、前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)の電圧又は前記電装用バッテリ(35)の電圧を検出する電圧検出回路(8)と、前記電圧検出回路(8)で検出される検出電圧が設定電圧よりも低い電圧低下状態と、検出電圧が設定電圧よりも高いノーマル状態とを判定する判定回路(9)とを備えており、
前記判定回路(9)は、電圧低下状態で前記一時オンスイッチ(7)をオン状態として、前記走行用バッテリ(1)の一部から前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に動作電力を供給し、
ノーマル状態で前記一時オンスイッチ(7)をオフ状態として、前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に前記電装用バッテリ(35)から動作電力を供給するようにしてなる請求項1ないし3のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項5】
前記判定回路(9)が、電圧低下状態とノーマル状態とを判別する電圧の設定電圧を、前記一時電力供給回路(6)の定格供給電圧よりも高く、前記電装用バッテリ(35)の定格電圧よりも低く設定している請求項4に記載される車両用の電源装置。
【請求項6】
前記コントロール回路(4)が、前記電源ライン(5)に電解コンデンサ(15)を接続しており、
前記電圧検出回路(8)が、所定のサンプリング周期で前記電源ライン(5)又は前記電装用バッテリ(35)の電圧を検出するA/Dコンバータ(13)を備えて、前記判定回路(9)が、このA/Dコンバータ(13)から出力されるデジタル信号から電圧低下状態とノーマル状態とを判定しており、
前記一時電力供給回路(6)の定格供給電圧を、前記電装用バッテリ(35)の定格電圧よりも低く設定しており、
前記判定回路(9)が電圧低下状態を検出して、所定の時間は前記一時オンスイッチ(7)をオン状態に保持し、前記一時オンスイッチ(7)がオン状態に切り換えられる状態で、所定のサンプリング周期で前記A/Dコンバータ(13)が、前記電源ライン(5)又は前記電装用バッテリ(35)の電圧を検出して、前記判定回路(9)が検出電圧の変化の状態を検出して、検出電圧の変化から、電圧低下状態とノーマル状態とを判定して、前記一時オンスイッチ(7)をオンオフに制御する請求項4に記載される車両用の電源装置。
【請求項7】
前記一時電力供給回路(6)の定格供給電圧が、前記電装用バッテリ(35)の定格電圧よりも低く、
かつ、前記一時電力供給回路(6)がダイオード(17)を介して走行用バッテリ(1)の一部の電池(10)から前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に電力を供給し、かつ、前記電装用バッテリ(35)がダイオード(16)を介して前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)に動作電力を供給する請求項1ないし6のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項8】
前記コントロール回路(4)の電源ライン(5)が、ダイオード(16)を介して前記電装用バッテリ(35)に接続され、このダイオード(16)は、前記電装用バッテリ(35)から電源ライン(5)にのみ電力を供給でき、電源ライン(5)から前記電装用バッテリ(35)には電力を供給できない方向に接続してなる請求項1ないし7のいずれかに記載される車両用の電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載される電源装置を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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