説明

車両用アシストグリップ

【課題】使用時にグリップ本体が把持し易く、楽に体重を掛けて降車することができる車両用アシストグリップを提供する。
【解決手段】シート51の側方で車両側面に設けたドア用開口部の下部に乗員のシートからの降車動作をサポートするグリップ本体2を設け、このグリップ本体2を車両外側方向に起倒自在に設けたから、アシストグリップの使用時にはグリップ本体2が車両の外側に倒れることで乗員の手をかける部分が広くなると共に姿勢変化の自由度が増えることで乗員の降車が容易となる。また、グリップ本体2は、車両ドア9の開口動作に伴い、車両外側方向に突出状態となると共に、閉口動作に伴い、収納状態となるから、グリップ本体2の利便性の向上を図ることができ、乗員による収納や起立作業又はグリップ本体2の位置調整などの手間がかからない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両乗降動作において、降車時における乗員の身体の負担を軽減するための車両用アシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、シートのシートバッグの側方に位置するロッカーパネルの適所に凹部を形成し、この凹部に、略L字形に形成されたアシストグリップ本体を格納可能に枢着させ、使用時には起立可能となるように、付勢するコイルばねをグリップ本体に取り付けた自動車の降車用アシストグリップ(例えば特許文献1)が提案されている。
【0003】
この特許文献1によれば、車内からの降車時に乗員がドアを開口した後、アシストグリップ本体に形成された指掛け部を利用し、ばね力を抗して、グリップ本体を起立状態に作動させる際、係止手段となるロッカーパネルの係合凹部とアシストグリップ本体の突起部をロック可能とすることによって、安全に降車できると共に、アシストグリップ操作時の節度感も得られるという利点がある。
【0004】
また、乗員のシートの側方及び上方に開口したケースを取り付け、このケース内部に把持部となるサポート部材を立設させるように構成させ、サポート部材の上昇方向の移動を自由にさせ、一方では、下降方向の移動時に、所定の位置でロック可能となるようなワンウェイロック手段を用いることで、シートに着座した乗員が、安全且つ容易にサポート部材の昇降移動操作をすることができる自動車の乗降サポート装置(例えば特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−52834号公報
【特許文献2】特開2010−202120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる従来のアシスト装置にあっては、降車時に乗員が、サポートするグリップ本体を、使用の都度、収納部位から起立させるための操作や、或いは自身の体格に合わせて乗員自らが、グリップ本体の高さ調整を行う必要があるため、例えば幼少者や高齢者などにとっては、使用に際しての負担が生じている。
【0007】
また、取付箇所に関して、車両のロッカーパネルの上部面又はシート本体の端部にサポート部を有するものであることから、降車時に体重を掛ける位置がシート付近に制限されるという難点がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、使用時にグリップ本体が把持し易く、楽に体重を掛けて降車することができる車両用アシストグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、シートの側方で車両側面に設けたドア用開口部の下部に乗員の前記シートからの降車動作をサポートするグリップ本体を設けた車両用アシストグリップであって、前記グリップ本体を車両外側方向に起倒自在に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記グリップ本体は、前記車両ドアの開閉動作に応じて突出及び収納状態となることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記シートは前後方向に位置調整自在であり、前記シートの位置調整の全範囲において前記グリップ本体が前記シートの着座部分の側部に位置するように該グリップ本体を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の車両用アシストグリップによれば、アシストグリップのグリップ本体を車両の外側方向に起倒自在に設けたことにより、アシストグリップの使用時にはグリップ本体が車両の外側に倒れることで乗員の手をかける部分が広くなると共に姿勢変化の自由度が増えることで乗員の降車が容易となる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の車両用アシストグリップによれば、車両ドアの開成状態では、グリップ本体は収納状態となり、車両ドアの開成作動に伴い、グリップ本体は車両外側方向へ突出した使用状態となることで、グリップ本体の利便性の向上を図ることができる。そして、ドアの開閉動作によって、グリップ本体の位置方向が決定されるので、乗員による収納や起立作業又はグリップ本体の位置調整などの手間がかからないという効果も奏する。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の車両用アシストグリップによれば、シートの位置に関わらずグリップ本体が座席のシート側方に位置するので、着座するどの位置からでも、乗員がグリップ本体を確実に把持することができるので、操作性及び利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1を示すグリップ本体及びグリップ固定基部を車内側から見た側面図である。
【図2】同上、図1のA−A線断面図である。
【図3】同上、要部の拡大断面図である。
【図4】同上、図1のB−B線断面図である。
【図5】同上、グリップ本体及びグリップ固定基部の背面図である。
【図6】同上、グリップ固定基部の取付状態を説明する断面図である。
【図7】同上、ブラケットの正面図である。
【図8】同上、カバー体を示し、図8(A)は平面図、図8(B)は車両外側から見た側面図である。
【図9】同上、取付状態を示す車両正面側から見た斜視図である。
【図10】同上、取付状態を示す斜視図であり、図10(A)はグリップ本体が使用位置、図10(B)はグリップ本体が収納位置にある。
【図11】同上、取付状態を示す車両斜め正面側から見た斜視図である。
【図12】同上、取付状態を示す平面説明図である。
【図13】本発明の実施例2を示すドア内面の正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の車両用アシストグリップの実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図12に示すように、アシストグリップ1は、車両サイドシルの上端部分の適所に取り付けられるグリップ固定基部3と、使用時に手を掛けて把持可能なグリップ本体2を備え、前記グリップ固定基部3には取付用の固定孔3Hが複数穿設させ、この固定孔3Hは筒状をなしている。
【0018】
また、前記グリップ固定基部3は、その略中間付近の水平位置から、図示する傾斜角Wの角度に傾斜させて形成されている。即ちグリップ固定基部3は、その下部3Aが垂直方向に配置されると共に、その上部3Bが車両前側に傾斜し、前記グリップ固定基部3の上部に前記グリップ本体2が取り付けられている。また、本実施例での傾斜角Wの傾斜角度θは鈍角であって15〜25度、この例では20度に設定されている。このようにして、前記グリップ固定基部3の上部を垂直に対して前方に傾斜角度θで傾斜させ、前記グリップ本体2を垂直に対して前方に傾斜角度θで傾斜させたことにより、乗員の乗降時に把持し易い角度とすることができる。また、前記アシストグリップ1は、ポリウレタン樹脂やABS樹脂、ポリプロピレン等の成型材料を用いて形成されている。
【0019】
また、グリップ固定基部3は、ブラケット6により前記車両サイドシル8に取付け固定され、取付状態のグリップ固定基部3とブラケット6の一部を覆うカバー体7を備える。尚、前記サイドシル8は、車両側面に設けたドア開口部10の下辺に位置する。
【0020】
前記グリップ本体2には、滑り止め部たるグリップラバー4を一側面側に貼着し、このグリップラバー4には複数の突起部4T,4T・・・が設けられている。また、前記グリップ本体2の先端は、車両のドア9の内面との係合を円滑に行うために凸状湾曲面2Aが形成されており、さらに、この湾曲面2Aの下部で他側面には、収納位置付近でドア9の内面と係合する凸状湾曲部5Aを備えた隆起部5が設けられている。そして、前記湾曲部5Aは、隆起部5の先端側に位置し、前後方向に長く形成されており、その湾曲部5Aは、乗員が把持する際に滑り難く指が掛かり易くなっている。尚、前記グリップラバー4及び隆起部5は合成ゴムからなる。また、ドア9は前後一方にヒンジ部9Aを設け、このヒンジ部9Aを中心にして回転することにより開閉するタイプが用いられ、この例では、図112に示すようにドア9の前側にヒンジ部9Aを設けている。
【0021】
前記グリップ本体2は、収納位置の略垂直位置から車両外側に倒れ、この倒れた位置から前記収納位置に起きるものであり、使用位置における上面側に前記グリップラバー4を設け、使用状態における下面側に前記隆起部5を設けている。そして、グリップ本体2は肉厚な略平板状であって、その上面から見て略長方形の形状をなし、また、グリップ本体2の先端側角部はそれぞれ凸状湾曲面2K,2Kに形成されている。
【0022】
具体的には、図2に示すように、グリップ本体2は、略垂直は収納位置Xと、先端側が基端側より僅かに高い使用位置Yと、略水平な下限位置Zの範囲で角度回動可能に設けられている。尚、使用位置Yは水平に対して略25〜35度、この例では略30度である。また、後述するように、グリップ本体2は、ドア9の閉成に応じて使用位置Yから収納位置Xに復帰し、具体的にはドア9の内面に押されて収納位置Xに復帰し、一方、ドア9の開成に応じて使用位置Yに回動し、この例ではドア9の収納位置Xから使用位置Yに回動するために回動付勢手段を用いており、グリップ本体2はドア9の開閉時に該ドア9の内面に当接して回動する。
【0023】
次に、前記グリップ本体2の起倒機構について説明する。前記グリップ本体2の下部の前後に下連結部11,11を設け、これら前後の下連結部11,11間に金属製連結軸12を設け、この連結軸12は水平に対して前記傾斜角度θで車両前側が低くなるように斜設されている。また、前記グリップ固定基部3の上部3Bには、その前後に上連結部13,13を設け、図1及び図4に示すように、それら上連結部13,13を、前記下連結部11,11の間において、前記連結軸12に回動可能に連結しており、これにより前記連結軸12を中心に前記グリップ本体2を回動可能に設けている。
【0024】
また、前記上連結部13,13間に位置して、前記連結軸12には、中間回動体14が回動可能に設けられている。この中間回動体14は、その上部に略半円状の円弧面15を有すると共に、その下部に前記連結軸12を中心とした歯部16が設けられており、この歯部16に歯合する制動歯車17を、前記グリップ固定基部3の上部に回動可能に設けている。前記制動歯車17には、回動に対する所定の制動力が付与されており、その制動歯車17により前記中間回動体14は回動時に一定の制動力が付与されている。
【0025】
さらに、中間回動体14の一側(取付状態における車両内側)には、前記円弧面15に連続して内側係合受部たる内側係合面18が設けられ、前記中間回動体14の他側には、前記円弧面15に連続して、外側係合受部たる外側段部19が設けられている。そして、前記連結軸12に回転付勢手段たるコイルスプリング20,20Aを外装し、一方のコイルスプリング20の両端(図示せず)を前記グリップ固定基部3と中間回動体14にそれぞれ係止し、前記コイルスプリング20により前記中間回動体14をグリップ固定基部3に対して図1中で時計回り方向(収納位置方向)に回転付勢する。即ちコイルスプリング20は、ねじりばねとして作用する。また、前記グリップ固定基部3の上部3Bには、前記中間回動体14が当接してその角度範囲を規制する当接規制部(図示せず)を設け、この当接規制部により中間回動体14の時計回り方向の回動範囲を規制している。尚、図1で実線で示した位置が中間回動体14が当接規制部に当接した初期位置であり、この初期位置で前記コイルスプリング20はねじりモーメントを受けているから、中間回動体14を前記当接規制部に押し当てている。
【0026】
また、他方のコイルスプリング20Aの両端(図示せず)を前記中間回動体14とグリップ本体2にそれぞれ係止し、前記コイルスプリング20Aにより前記グリップ本体2を前記中間回動体14に対して図1中で反時計回り方向(下限位置方向)に回転付勢する。
【0027】
次に、前記グリップ本体2の前記中間回動体14及びグリップ固定基部3の係合箇所を中心に説明すると、図3などに示すように、グリップ本体2はドア9の閉成により使用位置Yから収納位置X側に回転し、グリップ本体2の基端側には、前記中間回動体14の円弧面15に対応して、凹状円弧面15Aを形成すると共に、この凹状円弧面15Aから下方に延設部21を設け、この延設部21の内面が前記内側係合面18に当接して前記グリップ本体2の回動範囲を規制する中央係合部18Aであり、また、図5に示すように、前記延設部21の両側に両側係合部22,22を設け、この両側係合部22が当接する係合受部23を、前記グリップ固定基部3の上部3Bの両側に設け、それら両側係合部22と係合受部23との当接状態で、前記グリップ本体2は略垂直な収納状態となる。この場合、グリップ本体2はコイルスプリング20により収納位置Xから使用位置Y側に回転するように付勢されているため、ドア9を閉めた状態で、グリップ本体2の湾曲部5Aがドア9の内面に押し当てられた状態となり、これによりグリップ本体2のがたつきが防止される。尚、ドア9を閉め、グリップ本体2の湾曲部5Aをドア9の内面に押し当てた状態では、グリップ固定基部3と中間回動体14に、グリップ本体2が当接しなくてもよい。
【0028】
また、前記グリップ本体2の基端側には、前記延設部21の他側に、前記外側段部19に当接する当接部19Aを設け、この当接部19Aが前記外側段部19に当接した位置で、前記グリップ本体2は使用位置Yとなる。さらに、使用位置Yのグリップ本体2に荷重を加えると、コイルスプリング20Aの付勢に抗してグリップ本体2が下限位置Zまで回転可能であり、この際、当接部19Aが前記外側段部19に当接することにより、制動歯車17により制動力が加えられている中間回動体14が回転するため、グリップ本体2が揺やかに回転する。このように使用位置Yのグリップ本体2に手を載せ体重を預けても、コイルスプリング20Aの圧縮による反力と制動歯車17の制動力により、急にグリップ本体2が下がることが防止されるため、バランスを崩すことがなく、且つ使用位置Yから下側に回転することにより、体重を掛けた際に緩衝作用が得られ、使用感に優れたものとなる。尚、コイルスプリング20Aは、グリップ本体2が下がるに連れて弾性復元力が強くなる。そして、グリップ固定基部3の上部3Bに設けた下限位置当接部24にグリップ本体2が当接することにより、下限位置Zから下方へのグリップ本体2の回転が規制される。
【0029】
図6はブラケット6の取付状態を示し、同図において右側が車内側、左側がドア9側であり、図6及び図7に示すように、前記ブラケット6は、平板状をなす縦方向の本体31と、この本体31の中央に設けられ横方向に突出した接地部32とを一体に備え、この接地部32は先端側が本体31側より僅かに高く斜設されており、本体31の上部には前記固定孔3Hに対応して透孔33を穿設し、この透孔33に皿ネジ34を挿通し、この皿ネジ34を前記固定孔3Hに螺合し、これによりグリップ固定基部3をブラケット6に固定する。また、このブラケット6の下部には、複数の透孔35を穿設している。そして、図6に示すように、サイドシル8の段部8Aに前記接地部32を載置し、段部8Aの下方で前記透孔35に皿ネジ34を挿通し、この皿ネジ34をサイドシル8に螺着することにより、ブラケット6を介してグリップ固定基部3をサイドシル8に固定する。
【0030】
また、図6に示すように、前記グリップ固定基部3の室内側はカバー体41により覆われている。図8に示すように、前記カバー体41は、前記グリップ固定基部3と同様に屈曲形成された本体42と、この本体の前後に設けられた前壁部43及び後壁部44とを備え、図8(A)に示すように、カバー体41は平断面が略コ字状をなし、前壁部43と後壁部44の間に前記グリップ固定基部3が収納される。したがって、グリップ固定基部3をカバー体41により覆うことにより、グリップ固定基部3の内部機構である前記中間回動体14や制動歯車17などが外部に露出することがなく、保護される。
【0031】
図9〜図11に示すように、前記車両の室内には、シート(座席)51が設けられ、このシート51はシートバック51A及び座面部51Bを備え、前記シート51は、モータ駆動による前後スライドを可能とした電動パワーシートが採用されており、構成部材となるパワーシートユニット52及び前記シート51をスライドさせるためのシートレール52Aが室内の床面に敷設され、座面部51Bの側部にパワーシート操作部53を設け、このパワーシート操作部53を操作することによりシート51が前後にスライド駆動する。また、前記アシストグリップ1の取付け位置は、車両のフレームを構成するフロアパネルから延設し、ドア開口部10の下部を構成する前記サイドシル8の適所に取付けるのが好ましい。この例では、シート51の位置調整の全範囲においてグリップ本体2がシート51の着座部分たる座面部51Bの側部に位置するように該グリップ本体2を前記サイドシル8に取り付けており、右側ハンドルの運転席の側部にアシストグリップ1を装備している。
【0032】
また、前記ドア9のインナーパネル61には、前記グリップ本体2が当たる箇所に保護用シート材62を接着などにより貼設しており、前記保護用シート材62はドア9の後側に設けられている。そして、ドア9の開閉時にグリップ本体2が保護用シート材62に当たることにより、インナーパネル61の外面を保護している。また、その保護用シート材62は前記インナーパネル61より摩擦係数が小さい。尚、図中、63は車両のセンターピラーである。
【0033】
次に、前記アシストグリップ1の使用方法について説明する。図10(A)に示すように、ドア9を開くと、コイルスプリング20の力によりグリップ本体2が使用位置Yまで回動して下がり、外側に張り出した状態になり、グリップ本体2の広い上面が表れる。そして、シート51に着座した使用者は、上から握るようにしてグリップ本体2を把持する。この場合、指を下面の湾曲部5Aに掛けて握ることができる。そして、手の甲でグリップ本体2に体重を掛け、シート51から立ち上がり、この際、コイルスプリング20Aと制動歯車17の制動力によりグリップ本体2がゆっくりと下がるためバランスを崩すことがなく、楽に体重を預けることができる。また、グリップ本体2を垂直に対して車両前方に傾斜角度θで傾斜させたので、シート51から斜め前方に立ち上がる動作の補助としてグリップ本体2は使い易いものとなる。そして、手を離すと、コイルスプリング20Aの弾性復元力によりグリップ本体2が使用位置Yに戻り、ドア9を閉めると、ドア9の内面に設けた保護用シート材62がグリップ本体2の湾曲面2Aに当たり、コイルスプリング20に抗してグリップ本体2が収納位置X側に回転し、収納位置Xの近傍では、保護用シート材62に湾曲部5Aが摺動しながら当接し、ドア9を完全に閉めると、グリップ本体2が収納位置Xとなる。この例では、図12に示すように、ドア9はヒンジ部9Aを中心に開閉するが、ドア9の内面が凸状湾曲面2Kに当たるため、グリップ本体2がスムーズに回転する。そして、ドア9を閉めた収納位置では、コイルスプリング20Aの弾性復元力によりドア9の保護用シート材62に押し当てられているため、インナーパネル61が保護されると共に、がたつくことなくグリップ本体を収納することができる。この場合、保護用シート材62に弾性を有するシートを用いることにより、がたつきなどを一層防止できる。
【0034】
以上のように、本発明のアシストブリップ1では、乗員の降車時における姿勢変化の自由度を向上させると共に、グリップ本体を把持しやすい角度で、且つ使用時に乗員自らの準備操作や調整等の必要が無く、楽に体重を掛けて降車することができる利便性の高い車両用アシストグリップを提供することができる。
【0035】
このように本実施例では、請求項1に対応して、シート51の側方で車両側面に設けたドア用開口部10の下部に乗員のシート51からの降車動作をサポートするグリップ本体2を設けた車両用アシストグリップであって、グリップ本体2を車両外側方向に起倒自在に設けたから、アシストグリップの使用時にはグリップ本体2が車両の外側に倒れることで乗員の手をかける部分が広くなると共に姿勢変化の自由度が増えることで乗員の降車が容易となる。
【0036】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、グリップ本体2は、車両ドア9の開閉動作に応じて突出及び収納状態となるから、グリップ本2体の利便性の向上を図ることができる。そして、ドア9の開閉動作によって、グリップ本体2の位置方向が決定されるので、乗員による収納や起立作業又はグリップ本体2の位置調整などの手間がかからないという効果も奏する。
【0037】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、シート51は前後方向に位置調整自在であり、シート51の位置調整の全範囲においてグリップ本体2がシート51の着座部分である座面部51Bの側部に位置するように該グリップ本体2を配置したから、シートの位置に関わらずグリップ本体2が座席のシート51の側方に位置するので、着座するどの位置からでも、乗員がグリップ本体2を確実に把持することができるので、操作性及び利便性を向上させることができる。
【0038】
また、実施例上の効果として、グリップ本体2を垂直に対して車両前方に傾斜角度θで傾斜させたから、乗員の降車時に把持し易い角度とすることができる。また、グリップ本体2を収納位置Xから使用位置Y側に回転付勢するコイルスプリング20Aを備えるから、ドア9を開くと、自動的にグリップ本体2が使用位置Yに回動する。また、グリップ本体2には、使用位置Yにおける下面に、収納位置付近でドア9の内面と係合する凸状湾曲部5Aを備えた隆起部5が設けたから、その湾曲部5Aは、乗員が把持する際に滑り難く指が掛かり易くなり、しかも、閉成動作時にドア9の内面に湾曲部5Aが摺動するため、グリップ本体2の回動を円滑に行うことができる。さらに、グリップ本体2の先端側角部はそれぞれ凸状湾曲面2K,2Kに形成されているから、ヒンジ式のドア9の開閉動作に対してグリップ本体2の回動を円滑に行うことができる。また、グリップ本体2の起倒機構は、グリップ本体2が下がるに連れて上方に回転付勢する弾性復元力が強くなるから、使用位置Yのグリップ本体2に体重を加えても、急にグリップ本体2が下がることがなく、安定して体重を支えることができる。さらに、中間回動体14の回動を制動する制動手段たる制動歯車17を備えるから、使用位置Yから下限位置Zまでのグリップ本体2を緩やかに回動することができる。また、ブラケット6には、サイドシル8の載置受部たる段部8Aに載置する接地部32を備えたから、この接地部32によりアシストグリップ1に加わる荷重を支持することができる。さらに、カバー体41により、グリップ固定基部3の内部機構である前記中間回動体14や制動歯車17などが外部に露出することがなく、保護することができる。また、ドア9の内面には、グリップ本体2が当たる箇所に保護用シート材62を設けたから、ドア9のインナーパネル61などを保護することができると共に、グリップ本体2の起倒動作を円滑に行うことができる。
【実施例2】
【0039】
図13は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、同図は、ドア9の内面を示し、前記ドア9のインナーパネル61には、その上部にアッパーカバー部71が設けられ、このアッパーカバー部71の下部にドアロックユニット72が設けられ、その下部には前側からスピーカ部74と前後方向に長いドアポケット73が配置され、前記ドアポケット73は、その周囲のインナーパネル61より内側に膨出形成されており、そのドアポケット73の後側には、前記グリップ本体2が当たる箇所に前記保護用シート材62を接着などにより貼設し、ドア9の開閉時にグリップ本体2が保護用シート材62に当たることにより、ドアポケット73の外面を保護している。
【0040】
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【0041】
また、この例では、ドア9内面の出っ張り部分であるドアポケット73にグリップ本体2を当接するようにしたから、ドアポケット73部分以外で、ドア9の内面とシート51との間に空間を確保することができる。
【0042】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、ドアの開成動作に伴い、使用位置側にグリップ本体を回転付勢する回転付勢手段たるコイルスプリングを設けたが、収納位置でグリップ本体が外側に傾くように構成すれば、ドアを開くと、グリップ本体が自重で使用位置側に回転するから回転付勢手段が不要となるか、併用することができる。また、ドアとグリップ本体が当接しないようにしてもよく、この場合は、ドアの開閉を検出するセンサを設けると共に、グリップ本体の回動をステップモータなどによる電動式とし、センサの出力により制御手段がグリップ本体を回動駆動するようにしてもよく、この場合も中間回動体、コイルスプリング20及び制動歯車を備えることが好ましい。尚、この電動式の場合もアシストグリップがドアの内面に当接してもよい。さらに、グリップ本体の回転中心である連結軸を水平に配置してもよい。また、シートは電動式に限らず、手動により位置調整自在なものでもよい。さらに、アシストグリップを助手席側のシートの側部、後部座席の両側部に設けることができることは言うまでもない。さらにまた、実施例ではヒンジ式のドアを例示したが、スライド式の開閉ドアに適用することもでき、この場合は、そのスライド式開閉ドアの内面に、グリップ本体2がドアの開閉により収納位置と使用位置に回動するように当接する突条部をドア内面の長さ方向に設ければよい。また、保護用シート材は、シートの位置調整の全範囲においてグリップ本体が当たるように前後方向に長く配置することが好ましい。
【符号の説明】
【0043】
1 アシストグリップ
2 グリップ本体
9 ドア(車両ドア)
10 ドア用開口部
17 制動歯車(制動手段)
18 内側係合面(内側係合受部)
19 外側段部(外側係合受部)
20 コイルスプリング(回転付勢手段)
20A コイルスプリング(回転付勢手段)
51 シート
51B 座面部(着座部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの側方で車両側面に設けたドア用開口部の下部に乗員の前記シートからの降車動作をサポートするグリップ本体を設けた車両用アシストグリップであって、前記グリップ本体を車両外側方向に起倒自在に設けたことを特徴とする車両用アシストグリップ。
【請求項2】
前記グリップ本体は、前記車両ドアの開閉動作に応じて突出及び収納状態となることを特徴とする請求項1記載の車両用アシストグリップ。
【請求項3】
前記シートは前後方向に位置調整自在であり、前記シートの位置調整の全範囲において前記グリップ本体が前記シートの着座部分の側部に位置するように該グリップ本体を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用アシストグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−23161(P2013−23161A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162585(P2011−162585)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)
【Fターム(参考)】