説明

車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造

【課題】強度に優れ薄板化による軽量化が可能な高張力鋼板よるエネルギ吸収性に優れた車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造を提供する。
【解決手段】前端部及び後端部がドア本体に支持されドアアウタパネル12に沿って延在するドアインパクトビーム20は、断面形状において第1閉断面形状部22を構成する第1内側縦壁部25のドアアウタパネル12側が下降するように傾斜する台形形状の断面形状を有し、第2閉断面形状部32を構成する第2外側縦壁部35のドアアウタパネル12側が上昇するように傾斜する台形形状の断面形状を有する。ドアアウタパネル12から入力される衝撃荷重Pに対する第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32の変形が拘束されて衝撃荷重に対する抗力が確保される。エネルギ吸収性に優れかつ生産性に優れた高張力鋼板による薄板化による軽量化及び生産性の向上が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のドアインパクトビーム等に用いられる車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車の車体側部に配設されるサイドドアは、前端が上下に離間して設けられた複数のヒンジによって車体本体に支持されてドア開口部を開閉し、ドアロック機構によって閉状態を保つように構成する。
【0003】
このようなサイドドアは、車室側となるドアインナパネルと車体外側となるドアアウタパネルを対向配置して互いに縁部を結合したドア本体を有し、ドアインナパネルとドアアウタパネルとの間にドアロック機構やウインドレギュレータ等を配置する。
【0004】
更に、特許文献1や特許文献2に示すように、乗員の安全性を確保する目的で側面衝突時等に外側方から衝撃荷重を受けた際に、ドア本体の変形を低減してドア本体が車室内に侵入するのを低減するための衝撃エネルギ吸収ビームとしてドアインナパネルとドアアウタパネルとの間に略前後方向に延在する鋼管等からなる円筒状のドアインパクトビームを配置したものがある。
【0005】
しかし、強度及びエネルギ吸収性能の向上を図る場合には、このような円筒状のドアインパクトビームでは本数の増加やサイズ拡大、即ち大径のドアインパクトビームが必要になりドア本体内におけるドアインパクトビームの占有スペースの増大や重量の増加が懸念される。
【0006】
この対策として比較的軽量でかつ断面形状の自由度が大きいアルミニウム合金の押出材を用いたドアインパクトビームが例えば特許文献3や特許文献4等によって提案されている。特許文献3に開示されるドアインパクトビームは、対向するフランジ間に一対のウェーブが掛け渡された閉断面形状で連続するアルミ合金の押出材によって構成し、入力荷重に対して対向するウェーブを外側或いは内側に屈曲しやすい形状に湾曲乃至折曲させることによって入力時の座屈変形を制御する。
【0007】
また、特許文献4は、衝突に起因して荷重が入力される入力面と、入力面に対向する支持面との間に互いに離間して掛け渡された複数のウェーブとによって互いに離間した第1閉断面部と第2閉断面部を形成し、第1閉断面部及び第2閉断面部の対向するウェーブを他方の閉断面部側に凸となるように形成することで、荷重入力時に互いのウェーブの中間部が互いに近接する変形モードとなり、これらウェーブが互いに当接してドアインパクトビームの変形に対する抗力を増大させてエネルギ吸収効率の向上を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−86178号公報
【特許文献2】特開2002−316536号公報
【特許文献3】特開2003−118367号公報
【特許文献4】特開2007−55414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1及び特許文献2に開示されるように、鋼管からなる円筒状のドアインパクトビームは、強度及びエネルギ吸収性能を向上させるために、その本数の増加やサイズ拡大、即ち大径のドアインパクトビームが必要になりドア本体内におけるドアインパクトビームの占有スペースの増大や重量の増加が懸念される。また、鋼管からなるドアインパクトビームは強度向上のための熱処理が必要であり製造コストが増大する。
【0010】
また、特許文献3及び特許文献4に開示されるアルミニウム合金の押出材からなるドアインパクトビームは、断面形状を変更することで要求強度及びエネルギ吸収性能が比較的容易に制御でき、かつドア本体内におけるドアインパクトビームの占有スペースの抑制が得られる。
【0011】
しかし、アルミニウム合金からなる押出材の製造には多くの製造コストを要すると共に、アルミニウム合金からなる押出材は鉄系金属からなるドアインナパネルとの溶接が困難であり、ドアインナパネルにブラケットを介して、或いはドアインナパネルにボルト結合により取り付けることからその作業工数の増加及びドアインパクトビームとブラケットとの異種金属間における電食の対策が必要になり製造コストの増加を招く要因となる。また、上記衝撃エネルギ吸収ビームはドアインパクトビームに限らず、バンパビーム等の車両の他の部位においても同様のことが懸念される。
【0012】
一方、最近、強度が飛躍的に高く、薄板化による軽量化が可能で燃費の低減が期待でき、かつ生産性に優れたロール加工や溶接が容易な高張力鋼板(ハイテン材)による自動車部材が注目されている。
【0013】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、強度に優れ薄板化による軽量化が可能で、かつ生産性に優れた高張力鋼材による車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する請求項1に記載の車両用エネルギ吸収ビームの発明は、複数の閉断面形状部が衝撃荷重入力方向に対して交差する方向に延在すると共に両端がそれぞれ車体部材に支持される車両用エネルギ吸収ビームにおいて、エネルギ吸収ビームは、高張力鋼板製であって上記衝撃荷重入力方向に沿って対向して延在する第1内側縦壁部及び第2内側縦壁部を備え、上記第1内側縦壁部、該第1内側縦壁部の端部から上記第2内側縦壁部と離反する方向に折曲して延在する第1の一方側面部、該第1の一方側面部の端部から鋭角に折曲して衝撃荷重入力方向に沿って移行するに従って第1内側縦壁部に漸次接近する第1外側縦壁部、該第1外側縦壁部の端部から上記第2内側縦壁部の方向に鈍角に折曲して上記第1の一方側面部と対向して延在する第1の他方側面部が連続し、該第1の他方側面部側の一端部と上記第1内側縦断面部側の一端部とが結合して形成される中空台形形状の第1閉断面形状部と、上記第2内側縦壁部、該第2内側縦壁部の端部から上記第1内側縦壁部と離反する方向に折曲して延在する第2の一方側面部、該第2の一方側面部の端部から鋭角に折曲して衝撃荷重入力方向に沿って移行するに従って第2内側縦壁部に漸次接近する第2外側縦壁部、該第2外側縦壁の端部から上記第1内側縦壁部の方向に鈍角に折曲して上記第2の一方側面部と対向して延在する第2の他方側面部が連続し、該第2の他方側面部側の一端部と上記第2内側縦断面部側の一端部とが結合して形成される中空台形形状の第2閉断面形状部とが一体形成されたことを特徴とする。
【0015】
これによると、車両用エネルギ吸収ビームが衝撃荷重入力方向に沿って対向して延在する第1内側縦壁部及び第2内側縦壁部を備え、第1内側縦壁部、第1の一方側面部、第1外側縦壁部、第1の他方側面部によって形成された中空台形形状の第1閉断面形状部と、第2内側縦壁部、第2の一方側面部、第2外側縦壁部、衝撃荷重入力方向と対向して延在する第2他方の側面部によって形成された中空台形形状の第2閉断面形状部とが一体形成され、衝撃荷重に対する第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の変形が拘束されて衝撃荷重の入力に対する抗力が確保でき、衝撃荷重に対する優れたエネルギ吸収性が確保できる。更に、エネルギ吸収性に優れかつ生産性に優れた高張力鋼板による薄板化による軽量化及び高張力鋼板が溶接作業性に優れることと相俟ってエネルギ吸収ビームの製造コストの低減が期待できる。
【0016】
上記目的を達成する請求項2に記載の車両用エネルギ吸収ビームの発明は、衝撃荷重入力方向に対向して延在する引張側面部及び圧縮側面部と、該引張側面部と圧縮側面部の間に架設された複数の縦壁部とによって形成された複数の閉断面形状部が上記衝撃荷重入力方向に対して交差する方向に延在すると共に両端がそれぞれ車体部材に支持される車両用エネルギ吸収ビームにおいて、上記エネルギ吸収ビームは、高張力鋼板製であって衝撃荷重入力方向と交差する方向に延在し、断面形状において衝撃荷重入力方向に対向する基部及び該基部の両端から上記衝撃荷重入力側から離反する方向に折曲すると共に対向して延在する第1内側縦壁部及び第2内側縦壁部を備え、上記第1内側縦壁部、該第1内側縦壁部の端部から上記第2内側縦壁部と離反する方向に折曲して衝撃荷重入力方向と対向して延在する第1引張側面部、該第1引張側面部の端部から衝撃荷重入力方向に折曲して衝撃荷重入力方向側に移行するに従って第1内側縦壁部に漸次接近する第1外側縦壁部、該第1外側縦壁部の端部から上記基部の方向に折曲して第1引張側面部と対向すると共に衝撃荷重入力方向と対向して延在する第1圧縮側面部、及び該第1圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第1端面部が連続する中空台形形状の第1閉断面形状部と、上記第2内側縦壁部、該第2内側縦壁部の端部から上記第1内側縦壁部と離反する方向に折曲して衝撃荷重入力方向と対向して延在する第2引張側面部、該第2引張側面部の端部から衝撃荷重入力方向に折曲して衝撃荷重入力方向側に移行するに従って第2内側縦壁部に漸次接近する第2外側縦壁部、該第2外側縦壁部の端部から上記基部の方向に折曲して第2引張側面部と対向すると共に衝撃荷重入力方向と対向して延在する第2圧縮側面部、及び該第2圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第2端面部が連続する中空台形形状の第2閉断面形状部とが一体形成されたことを特徴とする。
【0017】
これによると、車両用エネルギ吸収ビームは、断面形状において第1閉断面形状部を構成する第1引張面部に対し荷重が入力される第1圧縮面部が短く不等長で、かつ第1外側縦壁部が衝撃荷重入力方向に対して傾斜する台形形状の断面形状を有し、同様に第2閉断面形状部を構成する第2引張面部に対し荷重が入力される第2圧縮面部が短く不等長で、かつ第2外側縦壁部が衝撃荷重入力方向に対して傾斜する台形形状の断面形状を有し、更に第1圧縮面部と第2圧縮面部が基部によって連結されることから、第1圧縮面部及び第2圧縮面部に入力される衝撃荷重に対する第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の変形が拘束されて衝撃荷重の入力に対する抗力が確保できる。
【0018】
一方、更に、過大な衝撃荷重が入力されると、第1圧縮面部及び第2圧縮面部が押し潰されて第1引張面部及び第2引張面部側に若干変位し、この第1圧縮面部及び第2圧縮面部の変位に伴って第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部が押し広げられて衝撃荷重の入力方向と略平行となるように揺動し、第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部の衝撃荷重の入力に対する剛性が増大して第1外側縦壁部、第2外側縦壁部の座屈変形が抑制されて第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の変形が拘束され、衝撃荷重に対する優れたエネルギ吸収性が確保できる。更に、エネルギ吸収性に優れかつ生産性に優れた高張力鋼板による薄板化による軽量化及び高張力鋼板が溶接作業性に優れることと相俟ってエネルギ吸収ビームの製造コストの低減が期待できる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、上記第1圧縮側面部の端部と第1端面部との間に第1圧縮側面部側から第1端面部側に移行するに従って衝撃荷重入力方向から漸次離反する第1傾斜壁部が介在し、上記第2圧縮側面部の端部と第2端面部との間に第2圧縮側面部側から第1端面部側に移行するに従って衝撃荷重入力方向から漸次離反する第2傾斜壁部が介在することを特徴とする。
【0020】
これによると、過大な衝撃荷重の入力による第1圧縮側面部及び第2圧縮側面部の変位に伴って第1圧縮側面部及び第2圧縮側面部に連続形成された第1傾斜壁部及び第2傾斜壁部が揺動変形して押し広げられて第1傾斜壁部と第1圧縮面部及び第2傾斜壁部と第2圧縮面部が平面状に延伸変形する。この第1傾斜壁部と第1圧縮面部及び第2傾斜壁部と第2圧縮面部の延伸変形に伴って第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部の端部が押し広げられて第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部が衝撃荷重の入力方向と略平行となるように揺動付与され、請求項1の作用がより効率的に実行できる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、上記第1端面部及び第2端面部が基部の衝撃荷重入力側の面に積層されて第1端面部と基部及び第2端面部と基部がそれぞれ溶接されたことを特徴とする。
【0022】
これによると、基部の衝撃荷重入力側の面に積層されて第1端面部と基部及び第2端面部を基部に溶接することから、衝撃荷重が付与された際に、第1端面部及び第2端面部が基部に押圧され、第1端面部及び第2端面部が基部に圧接付与されて溶接部の剥離が防止されて第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の急激な形状変化及び挙動が抑制され、衝撃荷重に対する抗力が維持されて、エネルギ吸収性がより効率的に実行できる。
【0023】
上記目的を達成する請求項5に記載の車両用ドア構造の発明は、車体のドア開口部を開閉するドアアウタパネル及びドアインナパネルを備えたドア本体内に前端部及び後端部がドア本体に支持されると共にドアアウタパネルに沿って前後方向に延在するドアインパクトビームが配設された車両用ドア構造において、上記ドアインパクトビームは、高張力鋼板製であってドアアウタパネルに沿って前後方向に延在し、断面形状においてドアアウタパネルに対向する基部を備え、該基部の上端からドアアウタパネル側から離反する方向に折曲して略水平に延在する第1内側縦壁部、該第1内側縦壁部の端部から上方に折曲してドアアウタパネルと対向して延在する第1引張側面部、該第1引張側面部の端部からドアアウタパネル側に折曲してドアアウタパネル側に移行するに従って第1内側縦壁部に漸次接近する第1外側縦壁部、該第1外側縦壁の端部から下方に折曲して第1引張側面部と対向すると共にドアアウタパネルと対向して延在する第1圧縮側面部、及び該第1圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第1端面部が連続する中空台形形状の第1閉断面形状部と、上記基部の下端部からドアアウタパネル側から離反する方向に折曲して略水平に延在する第2内側縦壁部、該第2内側縦壁部の端部から下方に折曲してドアアウタパネルと対向して延在する第2引張側面部、該第2引張側面部の端部からドアアウタパネル側に折曲してドアアウタパネル側に移行するに従って第2内側縦壁部に漸次接近する第2外側縦壁部、該第2外側縦壁の端部から上方に折曲して第2引張側面部と対向すると共にドアアウタパネルと対向して延在する第2圧縮側面部、及び該第2圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第2端面部が連続する中空台形形状の第2閉断面形状部とが一体形成されたことを特徴とする。
【0024】
これによると、前端部及び後端部がドア本体に支持されてドアアウタパネルに沿った延在するドアインパクトビームは、断面形状において第1閉断面形状部を構成する第1引張面部に対しドアアウタパネル側の第1圧縮面部が短く、かつ第1内側縦壁部が略水平に延在し、第1外側縦壁部がドアアウタパネル側に移行するに従って下降するように傾斜する台形形状の断面形状を有し、同様に第2閉断面形状部を構成する第2引張面部に対しドアアウタパネル側の第2圧縮面部が短く、かつ第2内側縦壁部が略水平に延在し、第2外側縦壁部がドアアウタパネル側に移行するに従って上昇するように傾斜する台形形状の断面形状を有し、更に第1圧縮面部と第2圧縮面部が第1端面部が基部によって連結されることから、ドアアウタパネルから第1圧縮面部及び第2圧縮面部に入力される衝撃荷重に対する第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の変形が拘束されて衝撃荷重に対する抗力が確保される。
【0025】
一方、過大な衝撃荷重がドアアウタパネルから入力されると第1圧縮面部及び第2圧縮面部が押し潰されて第1引張面部及び第2引張面部側に若干変位し、この第1圧縮面部及び第2圧縮面部の変位に伴って第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部が上下に押し広げられて第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部が衝撃荷重の入力方向と略平行となるように揺動し、第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部の衝撃荷重の入力に対する剛性が増大して座屈変形が抑制されて第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の変形が拘束されて衝撃荷重に対する優れたエネルギ吸収性が確保できる。更に、ドアインパクトビームのエネルギ吸収性に優れかつ生産性に優れた高張力鋼材による薄板化による軽量化及び溶接によるドアインナパネル等と結合が可能になり生産性の向上が期待できる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項5の車両用ドア構造において、上記第1圧縮側面部の端部と第1端面部との間に第1圧縮側面部側から第1端面部側に移行するに従ってドアアウタパネル側から漸次離反する第1傾斜壁部が介在し、上記第2圧縮側面部の端部と第2端面部との間に第2圧縮側面部側から第2端面部側に移行するに従ってドアアウタパネル側から漸次離反する第2傾斜壁部が介在することを特徴とする。
【0027】
これによると、ドアアウタパネルから過大な衝撃荷重の入力によって第1圧縮側面部及び第2圧縮側面部の変位に伴って第1圧縮側面部及び第2圧縮側面部に折曲部を介して連続形成された第1傾斜壁部及び第2傾斜壁部が押し広げられて第1傾斜面部と第1圧縮面部及び第2傾斜壁部と第2圧縮面部が平面状に延伸変形する。この第1傾斜壁部と第1圧縮面部及び第2傾斜壁部と第2圧縮面部の延伸変形に伴って第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部のドアアウタパネル側に端部が押し広げられて第1外側縦壁部及び第2外側縦壁部が衝撃荷重の入力方向と略平行になるように揺動付与され、請求項5の作用がより効率的に実行できる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の車両用ドア構造において、上記第1端面部及び第2端面部が基部のドアアウタパネル側の面に積層されて第1端面部と基部及び第2端面部と基部がそれぞれ溶接されたことを特徴とする。
【0029】
これによると、ドアインパクトビームの第1端面部と第2端面部の端縁が互いに当接した状態で基部の衝撃荷重入力側となるドアアウタパネル側の面に積層されて第1端面部と基部及び第2端面部を基部に溶接することから、衝撃荷重が付与された際に、第1端面部及び第2端面部が基部に押圧されて第1端面部及び第2端面部が基部に圧接付与され、溶接部の剥離が防止されて第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の急激な形状変化及び挙動が抑制され、衝撃荷重に対する抗力が維持されて、エネルギ吸収性がより効率的に実行できる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7の車両用ドア構造において、ドアインパクトビームは、高張力鋼板をロール成形して成形されたことを特徴とする。
【0031】
これによると、高張力鋼板を生産性に優れたロール成形によって成形することによって容易かつ安価に請求項5〜7のドアインパクトビームを製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、車両用エネルギ吸収ビーム或いはドアインパクトビームは、中空台形形状に形成された第1閉断面形状部及び第2閉断面形状部の変形が拘束されて衝撃荷重に対する抗力が確保され、衝撃荷重に対する優れたエネルギ吸収性が確保できる。更に、エネルギ吸収性に優れかつ生産性に優れた高張力鋼材による薄板化による軽量化及び生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態におけるドアインパクトビームを有するフロントサイドドアを備えた自動車の側面図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】図2のII−II線断面図である。
【図4】図2のA部分解斜視図である。
【図5】図2のIII−III線断面図である。
【図6】図2のIV−IV線断面図である。
【図7】ドアインパクトビームの作用説明図であり、(a)は圧潰前の通常状態におけるドアインパクトビームの断面図、(b)は圧潰後におけるドアインパクトビームの断面図である。
【図8】比較例におけるドアインパクトビームの作用説明図であり、(a)は圧潰前の通常状態におけるドアインパクトビームの断面図、(b)は圧潰後におけるドアインパクトビームの断面図である。
【図9】本実施の形態におけるドアインパクトビームと比較例におけるドアインパクトビームにおける圧潰挙動を示す衝撃荷重Pと変形ストロークSとの関係を示すP−S図である。
【図10】ドアインパクトビームの前端部とドアインナパネルとの結合を示す図であり、(a)は要部断面図、(b)は(a)のB矢視図である。
【図11】ドアインパクトビームの前端部とドアインナパネルとの結合を示す図であり、(a)は要部断面図、(b)は(a)のC矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明による車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造の一実施の形態を車両用エネルギ吸収ビームがドアインパクトビームであり、ドアインパクトビームをフロントサイドドアに配設した例を、図1乃至図11を参照して説明する。なお、図中矢印Fは車体前方方向を示し、矢印OUTは外側方向、矢印UPは上方を示す。
【0035】
図1は、本実施の形態におけるドアインパクトビーム20を有するフロントサイドドア10を備えた自動車の側面図であり、図2は図1のI−I線断面図、図3は図2のII−II線断面図である。
【0036】
車体本体1の左右側部には、車室下部に沿って前後方向に延在するサイドシル2と、車室上部に沿って前後方向に延在するサイドレール3と、上下方向に延在してサイドシル2の前端とサイドレール3の前端とを連結するフロントピラ4と、上下方向に延在してサイドシル2の後端とサイドレール3の後端とを連結するリヤピラ5とを有する。これら、フロントピラ4とリヤピラ5との間において上下方向に延在してサイドシル2とサイドレール3とを連結するセンタピラ6を備える。このフロントピラ4とセンタピラ6との間及びセンタピラ6とリヤピラ5との間にそれぞれ車体側部に開口するフロントサイドドア10用のドア開口部7及びリヤサイドドア9用のドア開口部8を形成する。左右のサイドシル2はフロアパネルによって連結され、左右のサイドレール3間にルーフパネルを配設する。
【0037】
フロントサイドドア10は、図2に図1のI−I線断面図を示すように車体外側となるドアアウタパネル12と車室側となるドアインナパネル13を対向配置して互いに周縁を結合したドア本体11を有し、そのドア本体11の前部をドア開口部7の前縁部を構成する剛性強度に優れたフロントピラ4に図示しない上下一対のヒンジによって開閉自在に支持し、かつ後端近傍に設けた図示しないドアロック機構によってセンタピラ6に閉鎖状態に保持する。
【0038】
ドア本体11のドアインナパネル13は、ドアアウタパネル12と対向する内側面部14の前端から前部屈曲部14aを介してドアアウタパネル12側に延在する前面部15及び前面部15の外方端15aから折曲してドアアウタパネル12と対向する前部平坦部16が連続形成され、前部平坦部16の前端が段部を介してドアアウタパネル12の前端縁12aに結合する。
【0039】
一方、ドアインナパネル13の後部は、内側面部14の後端から後部屈曲部14bを介してドアアウタパネル12側に延在する後面部17及び後面部17の外方端17aから折曲してドアアウタパネル12と対向する後部平坦部18が連続形成され、後部平坦部18の後端18aから折曲してドアアウタパネル12側に延在する後端部19の外方端がドアアウタパネル12の後端縁12bに結合する。また、ドアインナパネル13の下部は、内側面部14の下端から折曲してドアアウタパネル12側に延在する下面部の外方端がドアアウタパネル12の下端縁に結合する。なお、ドアインナパネル14の内側面部14にはドア本体11内に配設されるドアロック機構やウインドレギュレータ等の取付作業及び点検作業等のための作業孔14cが開口する。
【0040】
ドア本体11が閉鎖状態において、ドアインナパネル13の前面部15及び前部平坦部16がそれぞれフロントピラ4の後面4a及び外側面4bと間隙を隔てて対向し、後面部17及び後部平坦部18がそれぞれセンタピラ6の前面6a及び外側面6bに間隙を隔てて対向してドア開口部7の前縁及び後縁を覆う。
【0041】
ドアアウタパネル12とドアインナパネル13によって形成されたドア本体11内の空間S内には、前側ビームブラケット41及び後側ビームブラケット45によってドアインナパネル13の前部平坦部16と後部平坦部18間にドアアウタパネル12に沿って前後方向に延在する高張力鋼板製のドアインパクトビーム20を架設する。この空間S内には、その他に図示しないウインドガラス、ドアロック機構、ウインドレギュレータ等の艤装部品を備えているが、これらは本発明と直接関係はないので説明は省略する。
【0042】
ドアインパクトビーム20は、図3に図2のII−II線断面図を示すように、断面形状においてドアアウタパネル12と対向して上下方向に延在する基部21を有する。この基部21の上縁21aから略直角に折曲してドアアウタパネル12から離反する方向に略水平に延在する第1内側縦壁部23と、この第1内側縦壁部23の端部から略直角に折曲する折曲部24aを介して上方向に延在してドアアウタパネル12と対向する第1の一方側面部または第1引張側面部となる第1背面壁部24と、第1背面壁部24の上端に鋭角θでドアアウタパネル12側に折曲する折曲部24bを介してドアアウタパネル12側に移行するに従って漸次下降するように傾斜して延在する第1外側縦壁部25と、第1外側縦壁部25のドアアウタパネル12側の端部に鈍角で下方に折曲する折曲部26aを介して下方に延在して第1背面壁部24と平行に対向すると共にドアアウタパネル12に対向する第1の他方側面部または第1圧縮側面となる第1正面壁部26と、第1正面壁部26の下端に鈍角で折曲する折曲部26bを介して下降するに従ってドアアウタパネル12から離れるように傾斜して延在する第1傾斜壁部27と、第1傾斜壁部27の端部に鈍角で折曲する折曲部27bを介して基部21の外面、即ちドアアウタパネル12に対向する側の面に結合する第1端面部28とを一体に連続形成する。
【0043】
この基部21の上縁21aに連続する第1内側縦壁部23、第1背面壁部24、第1外側縦壁部25、第1正面壁部26、第1傾斜壁部27及び基部21の外面に結合される第1端面部28によって、ドアアウタパネル12と対向する第1正面壁部26及び第1正面壁部26より上下に長い第1背面壁部24を備え、第1正面壁部26の上端部及び第1背面壁部24の上端部間に架設されて第1背面壁部24側から第1正面壁部26側に移行するに従って下降する第1外側縦壁部25と、第1正面壁部26の下端部と第1背面壁部24の下端部との間に架設される第1内側縦壁部23及び第1傾斜壁部27とからなり、第1正面壁部26と第1背面壁部24が不等長の断面略台形形状の第1閉断面形状部22が形成される。
【0044】
同様に、基部21の下縁21bからドアアウタパネル12から離反する方向に略直角に折曲してドアインナパネル13側に略水平に延在する第2内側縦壁部33と、この第2内側縦壁部33の端部から略直角で下方に折曲する折曲部34aを介して下方向に延在すると共にドアアウタパネル12と対向する第2の一方側面部または第2引張側面部となる第2背面壁部34と、第2背面壁部34の下端部にドアアウタパネル12側に鋭角θで折曲する折曲部34bを介してドアアウタパネル12側に折曲する折曲部34bを介してドアアウタパネル12側に移行するに従って漸次上昇するように傾斜して延在する第2外側縦壁部35と、第2外側縦壁部35のドアアウタパネル12側の端部に鈍角で上方に折曲する折曲部36aを介して上方に延在して第2背面壁部34と平行に対向すると共にドアアウタパネル12に対向する第2の他方側面部または第2圧縮側面となる第2正面壁部36と、第2正面壁部36の上端に鈍角で折曲する折曲部36bを介して上昇するに従ってドアアウタパネル12から離れるように傾斜して延在する第2傾斜壁部37と、第2傾斜壁部37の端部に鈍角で折曲する折曲部37bを介して基部21の外面に結合する第2端面部38とを一体に連続形成する。
【0045】
この基部21の下縁21bに連続する第2内側縦壁部33、第2背面壁部34、第2外側縦壁部35、第2正面壁部36、第2傾斜壁部37及び基部21の外面に結合される第2端面部38によって、ドアアウタパネル12に対向する第2正面壁部36及び第2正面壁部36より上方に長い第2背面壁部34を備え、第2正面壁部36の下端縁及び第2背面壁部34の下端縁間に架設されて第2背面壁部34側から第2正面壁部36側に移行するに従って上昇する第2外側縦壁部35と、第2正面壁部36の上端縁と第2背面壁部34の下端縁との間に架設される第2内側縦壁部33及び第2傾斜壁部37とからなり、第2正面壁部36と第2背面壁部34が不等長の断面略台形形状の第2閉断面形状部32が形成される。
【0046】
この断面略台形形状の第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32は基部21の上下方向中央を中心として上下対称形状であって、第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32の第1内側縦壁部23と第2内側縦壁部33が略平行に対向し、第1背面壁部24と第2背面壁部34が略面一に配置され、第1外側縦壁面部25と第2縦壁面部35がドアアウタパネル12側に移行するに従って互いに接近するように傾斜して対向し、第1正面壁部26と第2正面壁部36が略面一でドアアウタパネル12に対向し、第1端面部28と第2端面部38の端縁28aと38aが互いに近接乃至当接した状態で基部21のドアアウタパネル12側の面に積層されて端縁28a、38aに沿って基部21にプロジェクト溶接される。
【0047】
この第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32が連続形成されるドアインパクトビーム20は、高張力鋼板からなる例えば板厚が1.6mm程度の薄板を既存のロール成形によって容易に安価に製造できる。
【0048】
また、図4に図2のA部分解斜視図を示すように、ドアインパクトビーム20の前端部20aは、第1正面壁部25及び第2正面壁部35の端部が切り欠かれて後述するスポット溶接用の電極挿入用開口部29が形成される。同様に図示を省略するが、ドアインパクトビーム20の後端部20bにおいても第1正面壁部25及び第2正面壁部35の端部が切り欠かれて電極挿入用開口部が形成される。
【0049】
ドアインパクトビーム20の前端部20aをドアインナパネル13の前部平坦部16に結合する前側ビームブラケット41は、図4及び図5に図2のIII−III線断面図に示すように、前部平坦部16に重合可能な平板状の基部42と、基部42に連続形成されてドアインパクトビーム20の第1背面壁部24及び第2背面壁部34が重合可能な底面部43A及び底面部43Aの上縁及び下縁からそれぞれドアアウタパネル12側に折曲して延在する第1延在部43B及び第2延在部43Cを有する断面コ字状で延在し、第1延在部43B、第2延在部43Cの縁部に沿って補強フランジ43Ba、43Caが折曲形成されたインパクトビーム取付部43とを一体形成する。この前側ビームブラケット41は鉄系鋼板をプレス成形することにより容易かつ安価に製造できると共にドアインパクトビーム20の前端部29aと溶接できる。
【0050】
このように構成された前側ビームブラケット41のインパクトビーム取付部43の第1延在部43Bと第2延在部43C間にドアインパクトビーム20の前端部20aを挿入して第1背面壁部24及び第2背面壁部34を底面部43Aに当接させてインパクトビーム取付部43に嵌合してドアインパクトビーム20と前側ビームブラケット41とを相対位置決めし、この位置決めされた状態で、図5に仮想線で示すようにドアインパクトビーム20の前端部20aに切り欠き形成された電極挿入用開口部29からスポット溶接機の電極Wを第1閉断面部22及び第2閉断面部32に挿入して第1背面壁部24と底面部43A及び第2背面壁部34と底面部43Aとの間をスポット溶接してドアインパクトビーム20の前端部20aに前側ビームブラケット41を結合する。
【0051】
一方、後側ビームブラケット45は、図6に図2のIV−IV線断面図を示すように、ドアインパクトビーム20の第1背面壁部24及び第2背面壁部34が重合可能な平坦なインパクトビーム取付部46及びインパクトビーム取付部46の上下両端からドアインナパネル13側に折曲して形成された第1延在部47A、第2延在部47Bを有する断面コ字状で延在し、第1延在部47A及び第2延在部47Bの端縁にドアインナパネル13の後部平坦部18に重合可能な取付部48A及び48Bが折り曲げ形成される。この後側ビームブラケット45は鉄系鋼板をプレス成形することにより容易かつ安価に製造できる。
【0052】
このように構成された後側ビームブラケット45のインパクトビーム取付部46にドアインパクトビーム20の後端部20bを重ねてドアインパクトビーム20と後側ビームブラケット45とを相対位置決めし、この位置決めされた状態で、図6に仮想線で示すようにドアインパクトビーム20の後端部20bに切り欠き形成された電極挿入用開口部からスポット溶接機の電極を第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32に挿入して第1背面壁部24とインパクトビーム取付部46及び第2背面壁部34とインパクトビーム取付部46との間をスポット溶接してドアインパクトビーム20の後端部20bに後側ビームブラケット45を結合する。
【0053】
ドアインパクトビーム20の前端部20aに結合された前側ビームブラケット41の基部42をドアインナパネル13の前部平坦部16に重ねて位置決めし、同様にドアインパクトビーム20の後端部20bに結合された後側ビームブラケット45の各取付部48A、48Bを後部平坦部18に重ねて位置決めしてドアインナパネル13の前部平坦部16と後部平坦部18との間にドアインパクトビーム20を掛け渡し、ドアインナパネル13とドアインパクトビーム20の相対位置決めする。この相対位置決めされた状態で互いに重合する前側ビームブラケット41の基部42とドアインナパネル13の前部平坦部16とをスポット溶接し、後側ビームブラケット45の各取付部48A、48Bとをスポット溶接してドアインナパネル13にドアインパクトビーム20を取り付ける。
【0054】
このようにドア本体11内に配置されたドアインパクトビーム21は、図1及び図2に示すように第1正面壁部26及び第2正面壁部36がドアアウタパネル12と対向してドアアウタパネル12に沿って前後方向に延在すると共に前端部20aがシートに着座した乗員の胸部高さでかつ後端部20bが大腿部高さに位置する後下がり状態に傾斜して配置される。
【0055】
また、第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32を形成する第1正面壁部26及び第2正面壁部26がドアアウタパネル12と対向するすると共に後述する衝撃荷重Pの入力方向と略直交する垂直に配置され、互いに対向する第1内側縦壁部23及び第2内側縦壁部33が衝撃荷重入力方向と略平行に衝撃荷重入力方向に沿って延在し、かつ第1外側縦壁部25が第1背面壁部24側から第1正面壁部26側に移行するに従って衝撃荷重入力方向に対して下降するように傾斜し、第2外側縦壁部35が第2背面壁部34側から第2正面壁部36側に移行するに従って衝撃荷重入力方向に対して上昇するように傾斜して配置される。
【0056】
次に、このように構成された自動車のフロントドア構造の作用について、図7乃至図9を参照して説明する。
【0057】
図7はドアインパクトビーム20の作用説明図であり、(a)は図3と同様の圧潰前の通常状態におけるドアインパクトビーム20の断面形状を示し、(b)は圧潰後におけるドアインパクトビーム20の断面形状を示す。
【0058】
フロントドア10が閉鎖状態において、側面衝突等によって車体側方からドア本体11に衝撃荷重Pが入力されたときには、図3及び図7(a)に示すように衝撃荷重Pがドアアウタパネル12を介してドアアウタパネル12と対向するドアインパクトビーム20の第1正面壁部26及び第2正面壁部36に入力する。
【0059】
このとき、前端部20a及び後端部20bが前側ビームブラケット41及び後側ビームブラケット45等を介してドア本体11に支持されたドアインパクトビーム20が若干湾曲変形してドアアウタパネル12に対向する側の第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32の第1正面壁部26及び第2正面壁部36側に圧縮力が発生し、ドアアウタパネル12と離反する側の第1背面壁部24及び第2背面壁部34側に引張力が発生する。
【0060】
ここで、ドアインパクトビーム20は、断面形状において第1閉断面形状部22を構成する第1背面壁部24に対し衝撃荷重Pが入力される第1正面壁部26が短く不等長で、かつ第1内側縦壁部23が衝撃荷重Pの入力方向に平行でかつ第1外側縦壁部25が衝撃荷重Pの入力方向に対して傾斜する中空台形形状を有し、衝撃荷重Pの入力に対する第1閉断面形状部22の変形が拘束される。同様に、第2閉断面形状部32を構成する第2背面壁部34に対し衝撃荷重Pが入力される第2正面壁部36が短く不等長で、かつ第2内側縦壁部33が衝撃荷重Pの入力方向に平行でかつ第2外側縦壁部35が衝撃荷重Pの入力方向に対して傾斜する中空台形形状の断面を有し、衝撃荷重Pの入力に対する第2閉断面形状部32の変形が拘束される。更に、第1閉断面形状部22の第1正面壁部26と第2閉断面形状部32の第2正面壁部36が基部21等を介して連結されて第1閉断面形状部22と第2閉断面形状部32の相対変位が拘束されて衝撃荷重Pに対するドアインパクトビーム20の変形が抑制されて抗力が確保されることから、ドアインパクトビーム20に入力された衝撃荷重Pがドアインパクトビーム20によって確実に分散されて衝撃荷重Pの一部がドアインパクトビーム20の前端部20aが結合された前側ビームブラケット41やヒンジを介してフロントピラ4に伝達する一方、ドアインパクトビーム20の後端部20bやロック機構等を介してセンタピラ6に分散伝達する。
【0061】
また、外側方からドア本体11に過大な衝撃荷重Pが入力されると、上記同様にドアアウタパネル12からドアインパクトビーム20に荷重伝達し、ドアインパクトビーム20によって分散されてフロントピラ4及びセンタピラ6等に分散伝達する。
【0062】
更に、ドアインパクトビーム20の第1正面壁部26及び第2正面壁部36に入力された衝撃荷重Pによって第1正面壁部26及び第2正面壁部36がそれぞれ押し潰され第1背面壁部24及び第2背面壁34側に若干変位すると、この第1正面壁部26の第1背面壁部24側への変位に伴って第1正面壁部26に折曲部26bを介して連続形成された第1傾斜壁部27の折曲部26b側に衝撃荷重Pの一部が伝達される。
【0063】
この衝撃荷重Pの一部が入力された第1傾斜壁面部27は、基部21に結合して支持された第1端面部28に連続する折曲部27bを中心に第1背面壁部27側に揺動変形して折曲部26a及び26bが押し広げられ、第1端面部28、第1傾斜面部27及び第1正面壁部26が平面状に延伸変形する。この折曲部26a及び26bの変形を伴って第1端面部28、第1傾斜壁部27、第1正面壁部26が平面状に延伸変形し、この延伸変形に伴って第1正面壁部26と第1外側縦壁部25とが連続する折曲部26aがビーム中心線Lから離れる上方に変位する。折曲部26aの上方変位に伴って衝撃荷重Pの入力方向に対して傾斜角θで傾斜して配置された第1外側縦壁部25のドアアウタパネル12側の端部が押し広げられて、図7(b)に示すように第1外側縦壁部25が第1内側縦壁23と略平行な衝撃荷重Pの入力方向と略平行になる。
【0064】
同様に、第2正面壁部36の第2背面壁部34側への変位に伴って、第2正面壁部36に折曲部36aを介して連続形成された第2傾斜壁部37の折曲部36a側に衝撃荷重Pの一部が伝達される。この衝撃荷重Pの一部が入力された第2傾斜壁部37は、基部21に結合して支持された第2端面部38に連続する折曲部37bを中心に第2背面壁部34側に揺動変形して折曲部36a及び36bが押し広げられて第2端面部38、第2傾斜面部37及び第2正面壁部36が平面状に延伸変形する。この折曲部36a及び36bの変形を伴う第2端面部38、第2傾斜壁部37、第2正面壁部36が平面状に延伸変形に伴って第2正面壁部36と第2外側縦壁部35とが連続する折曲部36aがビーム中心線Lから離れる下方に変位する。折曲部36aの下方変位に伴って荷重入力方向に対して傾斜角θで傾斜して配置された第2外側縦壁部35のドアアウタパネル12側の端部が押し広げられて、図7(b)に示すように第2外側縦壁部35が第2内側縦壁33と略平行な衝撃荷重Pの入力方向と略平行となる。
【0065】
このようにドアインパクトビーム20の第1閉断面形状部22を形成する第1内側縦壁部23と第1外側縦壁部25及び、第2閉断面形状部32を形成する第2内側縦壁部33及び第2外側縦壁部35が衝撃荷重Pの入力方向と略平行となり、第1内側縦壁部23、第1外側縦壁部25、第2内側縦壁部33、第2外側縦壁部35の衝撃荷重Pの入力に対する剛性が増大してこれら第1内側縦壁部23、第1外側縦壁部25、第2内側縦壁部33、第2外側縦壁部35の座屈変形が抑制されて衝撃荷重Pの入力に対する第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32の変形が拘束されると共に、第1閉断面形状部22の第1正面壁部26と第2閉断面形状部32の第2正面壁部36が基部21等を介して連結されて第1閉断面形状部22と第2閉断面形状部32の相対変位が拘束されて衝撃荷重Pに対するドアインパクトビーム20の変形が抑制されて抗力が確保される。
【0066】
ドアインパクトビーム20の第1端面部28の端縁28aと第2端面部38の端縁38aが互いに近接乃至当接した状態で基部21の衝撃荷重入力側となるドアアウタパネル12側の面に積層されて第1端面部28を基部21及び第2端面部38を基部21に溶接することから、衝撃荷重Pが付与された際に、第1端面部28及び第2端面部38が基部21に押圧されて第1端面部28及び第2端面部38が基部21に圧接付与されると共に、第1端面部28の端縁28aと第2端面部38の端縁38aが互いに圧接して第1端面部28及び第2端面部38の基部21に対する相対移動が抑制されて溶接部の剥離が防止され、溶接部の剥離による第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32の急激な形状変化及び挙動が抑制され、衝撃荷重に対するドアインパクトビーム20の抗力が維持されて、エネルギ吸収がより効率的に実行できる。
【0067】
このドアインパクトビーム20の抗力の増大に伴って、ドアインパクトビーム20に入力された衝撃荷重Pがドアインパクトビーム20によって確実に分散されて衝撃荷重Pの一部がドアインパクトビーム20の前端部20aが結合された前側ビームブラケット41やヒンジを介してフロントピラ4に伝達される一方、ドアインパクトビーム20の後端部20bやロック機構等を介してセンタピラ6に分散伝達されてドアインパクトビーム20の中折れ変形が抑制される。ドアインパクトビーム20の中折れ変形が抑制されて衝撃エネルギ吸収性能が向上すると共に、ドアインパクトビーム20の中折れ変形の抑制に伴うドア本体11の中折れ変形が抑制されてドア本体11の車室内侵入が有効的に防止でき、乗員への影響が回避乃至軽減できて安全性の向上が得られる。
【0068】
図8は本実施の形態におけるドアインパクトビーム20による衝撃エネルギ吸収性能と比較する比較例におけるドアインパクトビーム50の作用説明図である。同図(a)はドアインパクトビーム50の断面形状を示し、(b)は圧潰変形後におけるドアインパクトビーム50の断面形状を示す。なお、説明の便宜上本実施の形態におけるドアインパクトビーム20と対応する部位には同一符号を付す。
【0069】
このドアインパクトビーム50は、本実施の形態におけるドアインパクトビーム20とほぼ同様の外観寸法を備え、高張力鋼材からなる板厚が1.6mm程度の薄板をロール成形することによって製造される。
【0070】
図8(a)に示すように、断面形状において上下方向に延在する基部21を有し、基部21の上縁から略直角に折曲して延在する第1内側縦壁部23と、第1内側縦壁部23の端縁から略直角に折曲する折曲部を介して上方向に延在する第1正面壁部26と、第1正面壁部26の上端縁からに略直角に折曲する折曲部を介して第1内側縦壁部23と平行に延在する第1外側縦壁部25と、第1外側縦壁部25の端縁から略直角に折曲する折曲部を介して下方に延在して第1正面壁部26と平行に対向する第1背面壁部24及び第1背面壁部24に連続形成されて基部21の衝撃荷重入力側と反対側に面に結合する第1端面部28とが一体に連続形成されて、対向する第1内側縦壁部23と第1外側縦壁部25が等長でかつ第1正面壁部26と第1背面壁部24が等長の略矩形の第1閉断面形状部22を形成する。
【0071】
同様に、基部21の下縁から略直角に折曲して延在する第2内側縦壁部33と、第2内側縦壁部33の端縁から略直角に折曲する折曲部を介して下方向に延在する第2正面壁部36と、第2正面壁部36の下端縁からに略直角に折曲する折曲部を介して第2内側縦壁部33と平行に延在する第2外側縦壁部35と、第2外側縦壁部35の端縁から略直角に折曲する折曲部を介して上方に延在して第2正面壁部36と平行に対向する第2背面壁部34及び第2背面壁部34に連続形成されて基部21に結合する第2端面部38とが一体に連続形成されて、対向する第2内側縦壁部33と第2外側縦壁部35が等長でかつ第2正面壁部36と第2背面壁部34が等長の略矩形の第2閉断面形状部32を形成する。
【0072】
このように構成されたドアインパクトビーム50において、側面衝突等によって車体側方からドアアウタパネルを介して衝撃荷重Pが入力される第1閉断面形状部22の第1正面壁部26側と、第2閉断面形状部32の第2正面壁部36側とが互いに分離形成され、第1内側縦壁部23と第1外側縦壁部25及び第2内側縦壁部33と第2外側縦壁部35が互いに平行に配置されることから互いの変形が拘束されることがなく、第1正面壁部26に衝撃荷重Pが入力されると初期段階において第1内側縦壁部23及び第1外側縦壁部25が互いに中間部分が離反する座屈変形が始まり、同様に第2正面壁部36においても衝撃荷重Pの入力による初期段階において第2内側縦壁部33及び第2外側縦壁部35の中間部分が離反する座屈変形が始まり、しかる後座屈変形した図8(b)に示すように第1内側縦壁部23と第2内側縦壁部33が当接して若干変形が拘束される。
【0073】
また、基部21の衝撃荷重入力側と反対側の面、即ち引張荷重Pが付与される側に第1端面部28及び第2端面部38を溶接することから、衝撃荷重Pが入力された際に基部21の変形及び第1端面部28、第2端面部38の変形に伴って、第1端面部28及び第2端面部38が基部21から剥離して第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32の断面形状が破壊されてドアインパクトビーム50の剛性が急激に低下する。これに伴いドアインパクトビーム50が屈曲或いは折曲等の挙動が誘発されて、衝撃荷重Pに対するドアインパクトビーム50の抗力が急激に低下することが懸念される。
【0074】
図9は本実施の形態におけるドアインパクトビーム20と比較例におけるドアインパクトビーム50の圧潰挙動を示す衝撃荷重P−圧潰ストロークSを示すP−S線図である。本実施の形態におけるドアインパクトビーム20のP−S線を実線aで示し、比較例におけるドアインパクトビーム50のP−S線を一点鎖線bで示す。
【0075】
比較例におけるドアインパクトビーム50においては、第1正面壁部26及び第2正面壁部36に衝撃荷重Pが入力されると初期段階において第1閉断面形状部22を形成する第1内側縦壁部23と第1外側縦壁部25、第2閉断面形状部32を形成する第2内側縦壁部33と第2外側縦壁部35の変形挙動が始まり、衝撃荷重Pに対する抗力の低下が著しく、かつ第1内側縦壁部23、第1外側縦壁部25、第2内側縦壁部33、第2外側縦壁部35の座屈変形による剛性低下によるドアインパクトビーム50の中折れ等の変形による衝撃エネルギ吸収性能の低下が確認される。
【0076】
一方、本実施の形態におけるドアインパクトビーム20によると、第1正面壁部26及び第2正面壁部36に衝撃荷重Pが入力されると初期段階において、断面形状が略台形形状で第1正面壁部26と第2正面壁部36が基部21によって連結されて変形が拘束された第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32によって剛性が確保されたドアインパクトビーム20によって受け止められ、衝撃荷重Pに対する抗力が確保され、しかる後、第1正面壁部26及び第2正面壁部36の若干の変位に伴って第1外側壁部25及び第2外側壁部35が衝撃荷重入力方向と略平行な状態となり、第1内側縦壁部23、第1外側縦壁部25、第2内側縦壁部33、第2外側縦壁部35の衝撃荷重Pの入力に対する剛性が増大して衝撃荷重Pに対するドアインパクトビーム20の変形が抑制されてドアインパクトビーム20の中折れ変形が抑制されて衝撃エネルギ吸収性能が向上することが確認できる。
【0077】
本実施の形態によると、ドアインパクトビーム20を高張力鋼板からなる薄板を生産性に優れたロール成形により断面略台形形状の第1閉断面形状部22及び第2閉断面形状部32を備える断面形状に形成することで、軽量で衝撃荷重Pに対する抗力及び衝撃エネルギ吸収特性に優れたドアインパクトビーム20が容易かつ安価に得られる。更にドアインパクトビーム20が生産性に優れたスポット溶接によって結合される前側ビームブラケット41及び後側ビームブラケット45によりドアインナパネル13に結合することから組み立て作業性に優れる。また、互いに結合されるドアインパクトビーム20と前側ビームブラケット41及び後側ビームブラケット45間における電食の発生が抑制されて耐久性が向上する。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態ではスポット溶接によりドアインパクトビーム20の前端部20aを前側ビームブラケット41のインパクトビーム取付部43に嵌合すると共にスポット溶接によりに結合したが、図10(a)にドア本体11の断面図を示し、かつ(b)に(a)のB矢視図を示すように、前側ビームブラケット41に代えてドアインナパネル13の前側平坦部16に重合可能な基部52及びドアインパクトビーム20の第1背面壁部24及び第2背面壁部34が重合可能なビーム取付部53を備えた平坦な前側ビームブラケット51を備え、ドアインパクトビーム20の前端部20aにおける第1背面壁部24及び第2背面壁部24をビーム取付部53に重合して(b)に示すように第1背面壁部24及び第2背面壁部34の端縁をビード取付部53にCS溶接してドアインパクトビーム20の前端部20aに前側ビームブラケット51を結合し、その前側ビームブラケット51の基部52をドアインナパネル13の前部平坦部16に重合してスポット溶接することによってドアインパクトビーム20の前端部20aをドアインナパネル13の前部平坦部16に結合することもできる。この場合ドアインパクトビーム20の前端部20aに電極挿入用開口部29を形成する必要がなく、ドアインパクトビーム20の形状の簡素化が得られる。
【0079】
また、図11(a)にドア本体11の断面図を示し、かつ同図(b)に(a)のC矢視図を示すように、ドアインパクトビーム20の前端部20aにおける第1背面壁部24及び第2背面壁部34をドアインナパネル13の前部平坦部16に重合して、第1背面壁部24及び第2背面壁部34を前端平坦部16にスポット溶接することができる。この場合前側ビームブラケットを廃止することもでき、構成の簡素化が得られる。
【0080】
上記実施の形態ではエネルギ吸収ビームがフロントサイドドア内に配置されるドアインパクトビームである場合を例に説明したが、例えばリヤドアのドアインパクトビームや、車両の前端部に設けられるフロントバンパ内に配置されるバンパビーム等の他のエネルギ吸収ビームに適用することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1 車体本体
7 フロントサイドドア用のドア開口部
10 フロントサイドドア
11 ドア本体
12 ドアアウタパネル
13 ドアインナパネル
20 ドアインパクトビーム
20a 前端部
20b 後端部
21 基部
21a 上縁
21b 下縁
22 第1閉断面形状部
23 第1内側縦壁部
24 第1背面壁部(第1の一方側面部、第1引張側面部)
24a 折曲部
24b 折曲部
25 第1外側縦壁部
26 第1正面壁部(第1の他方側面部、第1圧縮側面部)
26a 折曲部
26b 折曲部
27 第1傾斜壁部
27a 折曲部
28 第1端面部
28a 端縁
29 電極挿入用開口部
32 第2閉断面形状部
33 第2内側縦壁部
34 第2背面壁部(第2の一方側面部、第2引張側面部)
34a 折曲部
34b 折曲部
35 第2外側縦壁部
36 第2正面壁部(第2の他方側面部、第2圧縮側面部)
36a 折曲部
36b 折曲部
37 第2傾斜壁面部
38 第2端面部
38a 端縁
41 前側ビームブラケット
43 インパクトビーム取付部
45 後側ビームブラケット
46 インパクトビーム取付部
51 前側ビームブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の閉断面形状部が衝撃荷重入力方向に対して交差する方向に延在すると共に両端がそれぞれ車体部材に支持される車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
エネルギ吸収ビームは、
高張力鋼板製であって上記衝撃荷重入力方向に沿って対向して延在する第1内側縦壁部及び第2内側縦壁部を備え、
上記第1内側縦壁部、該第1内側縦壁部の端部から上記第2内側縦壁部と離反する方向に折曲して延在する第1の一方側面部、該第1の一方側面部の端部から鋭角に折曲して衝撃荷重入力方向に沿って移行するに従って第1内側縦壁部に漸次接近する第1外側縦壁部、該第1外側縦壁部の端部から上記第2内側縦壁部の方向に鈍角に折曲して上記第1の一方側面部と対向して延在する第1の他方側面部が連続し、該第1の他方側面部側の一端部と上記第1内側縦断面部側の一端部とが結合して形成される中空台形形状の第1閉断面形状部と、
上記第2内側縦壁部、該第2内側縦壁部の端部から上記第1内側縦壁部と離反する方向に折曲して延在する第2の一方側面部、該第2の一方側面部の端部から鋭角に折曲して衝撃荷重入力方向に沿って移行するに従って第2内側縦壁部に漸次接近する第2外側縦壁部、該第2外側縦壁の端部から上記第1内側縦壁部の方向に鈍角に折曲して上記第2の一方側面部と対向して延在する第2の他方側面部が連続し、該第2の他方側面部側の一端部と上記第2内側縦断面部側の一端部とが結合して形成される中空台形形状の第2閉断面形状部とが一体形成されたことを特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。
【請求項2】
衝撃荷重入力方向に対向して延在する引張側面部及び圧縮側面部と、該引張側面部と圧縮側面部の間に架設された複数の縦壁部とによって形成された複数の閉断面形状部が上記衝撃荷重入力方向に対して交差する方向に延在すると共に両端がそれぞれ車体部材に支持される車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
上記エネルギ吸収ビームは、
高張力鋼板製であって上記衝撃荷重入力方向と交差する方向に延在し、断面形状において上記衝撃荷重入力方向に対向する基部及び該基部の両端から上記衝撃荷重入力側から離反する方向に折曲すると共に対向して延在する第1内側縦壁部及び第2内側縦壁部を備え、
上記第1内側縦壁部、該第1内側縦壁部の端部から上記第2内側縦壁部と離反する方向に折曲して上記衝撃荷重入力方向と対向して延在する第1引張側面部、該第1引張側面部の端部から上記衝撃荷重入力方向に折曲して上記衝撃荷重入力側に移行するに従って第1内側縦壁部に漸次接近する第1外側縦壁部、該第1外側縦壁部の端部から上記基部の方向に折曲して第1引張側面部と対向すると共に上記衝撃荷重入力方向と対向して延在する第1圧縮側面部、及び該第1圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第1端面部が連続する中空台形形状の第1閉断面形状部と、
上記第2内側縦壁部、該第2内側縦壁部の端部から上記第1内側縦壁部と離反する方向に折曲して上記衝撃荷重入力方向と対向して延在する第2引張側面部、該第2引張側面部の端部から上記衝撃荷重入力方向に折曲して上記衝撃荷重入力側に移行するに従って第2内側縦壁部に漸次接近する第2外側縦壁部、該第2外側縦壁部の端部から上記基部の方向に折曲して第2引張側面部と対向すると共に上記衝撃荷重入力方向と対向して延在する第2圧縮側面部、及び該第2圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第2端面部が連続する中空台形形状の第2閉断面形状部と、
が一体形成されたことを特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。
【請求項3】
上記第1圧縮側面部の端部と第1端面部との間に第1圧縮側面部側から第1端面部側に移行するに従って上記衝撃荷重入力側から漸次離反する第1傾斜壁部が介在し、
上記第2圧縮側面部の端部と第2端面部との間に第2圧縮側面部側から第1端面部側に移行するに従って上記衝撃荷重入力側から漸次離反する第2傾斜壁部が介在することを特徴とする請求項2に記載の車両用エネルギ吸収ビーム。
【請求項4】
上記第1端面部及び第2端面部の基部の上記衝撃荷重入力側の面に積層されて第1端面部と基部及び第2端面部と基部がそれぞれ溶接されたことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用エネルギ吸収ビーム。
【請求項5】
車体のドア開口部を開閉するドアアウタパネル及びドアインナパネルを備えたドア本体内に前端部及び後端部がドア本体に支持されると共にドアアウタパネルに沿って前後方向に延在するドアインパクトビームが配設された車両用ドア構造において、
上記ドアインパクトビームは、
高張力鋼板製であってドアアウタパネルに沿って前後方向に延在し、断面形状においてドアアウタパネルに対向する基部を備え、該基部の上端からドアアウタパネル側から離反する方向に折曲して略水平に延在する第1内側縦壁部、該第1内側縦壁部の端部から上方に折曲してドアアウタパネルと対向して延在する第1引張側面部、該第1引張側面部の端部からドアアウタパネル側に折曲してドアアウタパネル側に移行するに従って第1内側縦壁部に漸次接近する第1外側縦壁部、該第1外側縦壁の端部から下方に折曲して第1引張側面部と対向すると共にドアアウタパネルと対向して延在する第1圧縮側面部、及び該第1圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第1端面部が連続する中空台形形状の第1閉断面形状部と、
上記基部の下端部からドアアウタパネル側から離反する方向に折曲して略水平に延在する第2内側縦壁部、該第2内側縦壁部の端部から下方に折曲してドアアウタパネルと対向して延在する第2引張側面部、該第2引張側面部の端部からドアアウタパネル側に折曲してドアアウタパネル側に移行するに従って第2内側縦壁部に漸次接近する第2外側縦壁部、該第2外側縦壁の端部から上方に折曲して第2引張側面部と対向すると共にドアアウタパネルと対向して延在する第2圧縮側面部、及び該第2圧縮側面部の端部に連続形成されて上記基部に結合される第2端面部が連続する中空台形形状の第2閉断面形状部と、
が一体形成されたことを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項6】
上記第1圧縮側面部の端部と第1端面部との間に第1圧縮側面部側から第1端面部側に移行するに従ってドアアウタパネル側から漸次離反する第1傾斜壁部が介在し、
上記第2圧縮側面部の端部と第2端面部との間に第2圧縮側面部側から第2端面部側に移行するに従ってドアアウタパネル側から漸次離反する第2傾斜壁部が介在することを特徴とする請求項5に記載の車両用ドア構造。
【請求項7】
上記第1端面部及び第2端面部が基部のドアアウタパネル側の面に積層されて第1端面部と基部及び第2端面部と基部がそれぞれ溶接されたことを特徴とする請求項5または6に記載の車両用ドア構造。
【請求項8】
ドアインパクトビームは、高張力鋼板をロール成形して成形されたことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−149841(P2010−149841A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265929(P2009−265929)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)