説明

車両用カードシステム

【課題】 キーやキースイッチなどを廃止しつつも車両に対する高度のセキュリティ性を有する「車両用カードシステム」を得る。
【解決手段】 IDコードを記憶したトランスポンダカード10を使ってドアロック機構13によるドアのロック/アンロックおよびECCS6のソフトウェアロックのON/OFFを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キーやキースイッチなどを廃止しつつもカード型のトランスポンダ素子を使って車両に対する高度のセキュリティを構築しうる車両用カードシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両の盗難を防止するためのエンジンの不正始動を防止する装置(エンジン不正始動防止装置またはイモビライザー)として、IDコードの照合により所定のキーによってのみエンジンの始動を可能とするようにしたものがある。
【0003】図11は従来のいわゆるトランスポンダ式イモビライザーの概略構成を示すシステム図である。ここでは、IDコードを記憶するIC(トランスポンダ素子)1をキー2のキーヘッドの中に埋め込んでおき、受信機3によって、キーシリンダー4に設けたアンテナ5を介して交信することによりそのIDコードを読み取り、照合を行って、IDコードが一致すればソフトウェアロックを解除してECCS(エンジン集中電子制御システム)6を動作可能状態とするように構成されている。動作可能状態にあるECCS6へキースイッチ7からIG信号(またはSTART信号)が入力されるとECCS6はエンジンの始動制御を行い、実際にエンジンがスタートする。なお、キースイッチ7は、図12に示すように、キー2を差し込んだだけのオフ(OFF)位置と、電装品に電力を供給するアクセサリー(ACC)位置と、エンジンを始動させるイグニッション(IG)位置と、エンジン始動時にスタータモータを回転させるスタート(START)位置とを有し、キー2をキーシリンダー4に差し込んで各ポジションまで手で回すように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のトランスポンダ式イモビライザーにあっては、キー2の鍵山およびキーシリンダー4やキースイッチ7のキー溝(以下、それらをまとめてキー溝等という。)が一種の機械的なセキュリティコードになっているが、それらはたかだか数十通りにしかすぎないのに対し、IDコードの場合は、その桁数にもよるが、通常はキー溝等よりも多くの種類を有する。たとえば、24ビットのIDコードでは約1700万通りにもなる。したがって、セキュリティの点においてはキー溝等の意味はあまりない。
【0005】とすれば、トランスポンダ式イモビライザーにおいては、単にIDコードだけでも高度のセキュリティが確保されうる以上、キー溝等(つまりは、キー2、キーシリンダー4、キースイッチ7)を廃止することがコスト的に有利となる。ただ、キー2はドアのロック/アンロックの際にも使用されることが多いため、キー2を廃止する場合には、キーを使用しなくともイモビライザー機能と同時にドアのロック/アンロックを自動的に行いうる機能をも併せ持ったシステムを構築することが望まれる。
【0006】本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、キーやキースイッチなどを廃止しつつも車両に対する高度のセキュリティ性を有する車両用カードシステムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ドアをロック/アンロックするドアロック手段と、エンジンの始動制御をロック/アンロックするエンジンロック手段と、使用者を識別するためのIDコードを記憶する非接触で読出し/書込み自在のカード型記憶手段と、前記記憶手段とアクセスしデータのやり取りを行うアクセス手段と、前記アクセス手段を介して前記記憶手段に記憶されているIDコードを読み取り、読み取ったIDコードを照合用のIDコードと照合し、それらが一致するときにドアアンロック信号およびエンジンアンロック信号を前記ドアロック手段および前記エンジンロック手段にそれぞれ出力する制御手段とを有することを特徴とする。この構成にあっては、カード型記憶手段を持ったユーザー(使用者)が車両に接近すると、制御手段は、アクセス手段を介して非接触で記憶手段に記憶されているIDコードを読み取り、読み取ったIDコードを照合用のIDコードと照合し、それらが一致すればドアアンロック信号およびエンジンアンロック信号をドアロック手段およびエンジンロック手段にそれぞれ出力する。ドアアンロック信号を入力したドアロック手段はドアをアンロックし、これによりユーザーはドアを開けて車両に乗り込むことができる。また、エンジンアンロック信号を入力したエンジンロック手段はエンジン始動制御のロック状態を解除し、これによりエンジンはスタート可能状態となる。
【0008】請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、前記制御手段は、前記記憶手段を作動させるためのエネルギーを前記アクセス手段を介して間欠的に発生させることを特徴とする。この構成では、記憶手段を作動させるためのエネルギーを間欠的に発生させるので、トリガースイッチを別途設けることなく車載バッテリーの消耗が抑えられる。
【0009】請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、トリガー用のスイッチを有し、前記制御手段は、前記スイッチがONされたときに、前記記憶手段を作動させるためのエネルギーを前記アクセス手段を介して発生させることを特徴とする。この構成では、記憶手段を作動させるためのエネルギーをトリガー用スイッチがONされたときにのみ発生させるので、車載バッテリーの消耗がより一層抑えられる。
【0010】請求項4記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、前記制御手段は、照合の結果としてIDコードが一致したときに、前記記憶手段に記憶されているIDコードおよび前記照合用のIDコードを現在のものとは別のものに書き替えるためのIDコードを作成し、作成した書替用IDコードにより前記各IDコードの書替えが正常に行われたときにドアアンロック信号およびエンジンアンロック信号を前記ドアロック手段および前記エンジンロック手段にそれぞれ出力することを特徴とする。この構成では、IDコードが一致するたびにそれを自動的に別のIDコードに書き替えるので、セキュリティ性のさらなる向上が図られる。
【0011】請求項5記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、前記制御手段は、エンジンが停止しかつドアが開いたときに前記アクセス手段を介して前記記憶手段と交信し、ドアが閉じかつ交信不能となったときにドアロック信号およびエンジンロック信号を前記ドアロック手段および前記エンジンロック手段にそれぞれ出力することを特徴とする。この構成にあっては、ユーザーがエンジンを停止しカード型記憶手段を持って車両から離れると、自動的に、IDコードの一致の有無を問わず、閉じたドアはロックされ、エンジンの始動制御にもロックがかかる。
【0012】請求項6記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、前記アクセス手段はドアに設置されていることを特徴とする。
【0013】請求項7記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、前記アクセス手段はドアミラーに設置されていることを特徴とする。
【0014】請求項8記載の発明は、上記請求項1記載の車両用カードシステムにおいて、エンジンを始動させるためのロータリー式またはプッシュ式のスイッチを有することを特徴とする。この構成では、従来のキーおよびキースイッチなどは廃止される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るトランスポンダカードシステムの概略図である。なお、図1111と共通する部分には同一の符号を付してある。このシステムは、使用者を識別するためのIDコードを記憶するカード型のトランスポンダ素子10(以下、トランスポンダカードという。)と、トランスポンダカード10と交信するためのアンテナ11と、アンテナ11を介してトランスポンダカード10との間でデータの送受信などを行う受信機12と、ドアのロック/アンロックを行うドアロック機構13と、エンジンの始動等を総合的に制御するECCS6とから構成されている。このシステムでは、従来のキー2、キーシリンダー4、およびキースイッチ7(図11参照)は廃止されている。
【0016】トランスポンダカード10は記憶手段として機能するものであって、ユーザーは従来のキー2の代わりにこのトランスポンダカード10を持つことになる。トランスポンダ素子は、周知のように、自ら電源を持たずに(バッテリーレス)外部磁界からのエネルギーを受けて非接触でデータの送受信を行うことができるものである。このようなトランスポンダ素子からなるトランスポンダカード10は、たとえば、概略図2のように構成されている。すなわち、トランスポンダカード10は、アンテナ14、コンタクトレスインターフェース15、アクセスコントロール(制御部)16、EEPROM(メモリ)17などからなっている。EEPROM17は記憶内容を電気的に書替え可能な不揮発性メモリであって、IDコードとして後述するローリングIDコード(たとえば、24ビット)を記憶している。このように構成されたトランスポンダカード10は、内蔵アンテナ14を介して外部から磁界エネルギー(たとえば、125kHz)を受けると起動し、同じく内蔵アンテナ14を介してEEPROM17に記憶されているIDコードを送信しまた外部から受信した新しいIDコードをEEPROM17に更新登録する機能を有している。
【0017】受信機12に接続されているアンテナ11はアクセス手段として機能するものであって、たとえば、図3に示すように、ドア18(たとえば、運転席側のフロントドア)の内部に設置されている。トランスポンダカード10の交信可能距離はアンテナの大きさによるが、ここでは、たとえば、トランスポンダカード10の交信可能距離が最大で約1〜2mとなるようにアンテナの大きさを決める。なお、トランスポンダカード10の交信範囲を拡大するため、アンテナ11を設けるドア18は運転席側のドアに限らず、これ以外の1以上の適当な数のドアにもそれぞれアンテナ11を設置するようにしてもよい。
【0018】なお、アンテナ11の設置場所は上記のようにドア18に限定されるわけではなく、たとえば、ドアミラー19に設置することも可能である。この場合には、ドア18に設置する場合に比べてアンテナ11の大きさが小さくなる(さらには設置場所の数も最大で2箇所と少なくなる)ので、コスト的に有利な反面、トランスポンダカード10の交信範囲は狭くなる。
【0019】受信機12は制御手段として機能するものであって、アンテナ11を介してトランスポンダカード10起動用の磁界エネルギー(125kHz)を発生させる機能、トランスポンダカード10から送信されたIDコードのデータを受信する機能、システム全体を制御する機能、書替用のローリングIDコードを作成する機能などを有し、そのための回路構成を有している。
【0020】図4は受信機12を中心としたシステム構成の一例を示すブロック図である。受信機12は、IDコードを照合し各部を制御するなど各種の制御演算処理を実行するCPU20、照合用のIDコード(24ビット)を記憶するEEPROM21、アンテナ11を駆動して磁界を発生させたりIDコードのデータを送信させるための信号処理を行う送信回路22、アンテナ11で受信した信号を処理(増幅、整形など)する受信回路23などから構成されている。CPU20にはドア18の開閉状態を検出するドアセンサ24が接続されている。さらに、CPU20にはドアロック機構13とECCS6も接続されている。
【0021】ドアロック機構13はドアロック手段として機能するものであって、従来キー2によってドア18のロック/アンロックを機械的に行っていたものを、受信機12(具体的にはCPU20)からの電気的信号(ドアロック信号/ドアアンロック信号)によって電気的にドア18のロック/アンロックを行う機能を有するものである。
【0022】また、ECCS6は従来のそれと同じでありエンジンロック手段として機能するものであって、従来のトランスポンダ式イモビライザーにおける場合と同様、受信機12(具体的にはCPU20)からの信号(エンジンロック信号/エンジンアンロック信号)によってソフトウェア上でエンジン始動制御をロック/アンロックする機能(ソフトウェアロック機能)を有している。ECCS6がソフトウェアロック状態にあれば、後述するスタータボタン25からIG信号(またはSTART信号)を入力してもECCS6はエンジンの始動制御を行わず、エンジンは始動しない(イモビライザー機能)。
【0023】本発明では、トランスポンダカード10を使ってのIDコードの照合によってECCS6のソフトウェアロックのON/OFFを行うほか、キー2の廃止に伴い、車両へのエントリーについてもトランスポンダカード10を使ってドア18のロック/アンロックを行うが、これらの動作はトランスポンダカード10を持ったユーザーが車両に接近しまたは車両から離れると自動的に行われるようになっている。そのため、図4の構成では、停車中は、アンテナ11を介してトランスポンダカード10起動用の磁界を間欠的に発生させ、車載バッテリーの消耗を抑えるようにしている。より具体的には、所定時間(たとえば、10秒)置きに所定の短時間(たとえば、0.4秒)だけ磁界を発生させる。この磁界発生はCPU20によって制御される。
【0024】このシステムの動作については後で詳細に説明するが、上記のように本発明ではキー2を廃止してトランスポンダカード10によりECCS6のソフトウェアロックのON/OFFおよびドア18のロック/アンロックを行うため、従来のキースイッチ7(図12参照)はなく、その代わりにスタータボタン25によってユーザーはエンジンを始動させるようにしている。スタータボタン25はロータリースイッチ(図5参照)でもプッシュボタン(図6参照)でもよく、それぞれ従来と同様4つのポジション(OFF位置、ACC位置、IG位置、START位置)を有している。スタータボタン25はECCS6に接続されている。
【0025】次に、図4のシステムの動作を図7および図8のフローチャートを用いて説明する。なお、図7は乗車時のシステムの動作を示すフローチャートであり、図8は降車時のシステムの動作を示すフローチャートである。
【0026】まず、図7のフローチャートを用いて乗車時の動作を説明する。まず動作の概略を説明すると、トランスポンダカード10を持ったユーザーが車両のドア18に近づくと自動的にトランスポンダカード10と受信機12との間でIDコードの送受信を行う。その際、1回の交信ごとにIDコードを変更する(ローリングIDコード)。IDコードが一致しかつ正常に書き替えられるとドア18をアンロックし、それと同時にECCS6のソフトウェアロックを解除する。
【0027】すなわち、より詳細には、停車中、受信機12はアンテナ11を介してトランスポンダカード10起動用の125kHzの磁界を間欠的に(10秒置きに0.4秒)発生させており(ステップS1)、CPU20は、トランスポンダカード10との交信開始によりトランスポンダカード10が車両に接近しているものと判断すると(ステップS2)、そのトランスポンダカード10の24ビットのIDコードをアンテナ11を介して読み取る(ステップS3)。ステップS3で読み取られたIDコードはEEPROM21に記憶されている照合用のIDコードと照合され、それらが一致するかどうかが判断される(ステップS4)。
【0028】この判断の結果としてOKの場合、つまりIDコードが一致する場合は、現在のIDコードを新しいIDコードに書き替えるべく、乱数を発生させて新しい24ビットのIDコードを作成し(ステップS5)、この作成した新しいIDコードをトランスポンダカード10およびEEPROM21に書き込んで現在のIDコードを新しいIDコードに更新登録する(ステップS6)。その際、トランスポンダカード10に登録された新IDコードは確認のためトランスポンダカード10から送信され、CPU20は、その受信結果をみて、トランスポンダカード10のIDコードが正常に書き替えられたことを確認する。IDコードが正常に書き替えられたことを確認した後、CPU20は、ドア18をアンロックする信号をドアロック機構13に出力するとともに、ECCS6のソフトウェアロックを解除する信号をエンジンアンロック信号としてECCS6に出力する(ステップS7、ステップS8)。これにより、ドアアンロック信号を入力したドアロック機構13はドア18をアンロックするので、ユーザーはドアノブを引くなどしてドア18を開けて車両に乗り込むことができ、さらに、ソフトウェアロック解除信号を入力したECCS6はエンジン始動制御を禁止するソフトウェアロックを解除するので、ユーザーはスタータボタン25を操作することにより、より具体的にはロータリースイッチをIG位置またはSTART位置に回し(図5参照)、またはプッシュボタンのIG位置またはSTART位置を押すことによって(図6参照)実際にエンジンを始動させることができる。
【0029】これに対し、ステップS4の判断の結果としてNGの場合、つまりIDコードが一致しない場合は、ステップS1に戻って、停車状態を継続する。すなわち、ドア18はロック状態にあり、かつ、ECCS6はソフトウェアロックがかかった状態にある。
【0030】次に、図8のフローチャートを用いて降車時の動作を説明する。まず動作の概略を説明すると、エンジンを停止しドア18を開けることによって再度トランスポンダカード10と受信機12との間で交信を開始し、ユーザーがドア18を閉めて車両から遠ざかりトランスポンダカード10と受信機12とが交信不能となった時点でドア18をロックし、かつ、ECCS6にソフトウェアロックをかける。
【0031】すなわち、より詳細には、降車時、CPU20は、ECCS6からの信号によりエンジンが停止したかどうか、ならびにドアセンサ24からの信号によりドア18が開いたかどうかをそれぞれ判断し(ステップS10、ステップS11)、これらの判断の結果としてエンジンが停止しかつドア18が開いた場合は、アンテナ11を介して125kHzの磁界を発生させ、もってトランスポンダカード10との間で交信を開始する(ステップS12)。それから、トランスポンダカード10からの送信信号の受信の有無によりトランスポンダカード10との交信が不能になったかどうか、ならびにドアセンサ24からの信号によりドア18が閉じているかどうかをそれぞれ判断し(ステップS13、ステップS14)、これらの判断の結果としてトランスポンダカード10との交信が不能となり(つまり、トランスポンダカード10を持ったユーザーが車両から離れてトランスポンダカード10が交信範囲の外に遠ざかったとき)かつドア18が閉まっている場合は、ドア18をロックする信号をドアロック機構13に出力するとともに、ECCS6のソフトウェアロックをONする信号をエンジンロック信号としてECCS6に出力する(ステップS15、ステップS16)。これにより、ドアロック信号を入力したドアロック機構13はドア18をロックし、また、ソフトウェアロックON信号を入力したECCS6はエンジン始動制御を禁止するソフトウェアロックをかける。こうした処理は、IDコードの一致の有無を問わず、トランスポンダカード10を持った者が車両のドア18を閉めて車両から離れることによって無条件で自動的に行われる。
【0032】図9は受信機12を中心としたシステム構成の他の一例を示すブロック図である。なお、図4と共通する部分には同一の符号を付している。この例では、上記した図4の構成と異なって、CPU20aにトリガースイッチ26が接続されている。このトリガースイッチ26はトランスポンダカード10起動用の磁界を発生させるトリガー信号を発生するものであって、たとえば、ドアノブを引くとONするように構成されている。また、トリガースイッチ26を車両の適当な場所に設置した隠しスイッチで構成し、ドアノブを引く動作に先立ってその隠しスイッチをONするようにしてもよい。このようなトリガースイッチ26を設けることにより、トリガースイッチ26をONしたときのみ磁界を発生させることが可能となり、部品点数は若干増加するものの、上記したように間欠的に磁界を発生させる場合よりも、車載バッテリーの消耗を抑えることができる。なお、トリガースイッチ26以外の構成については図4の場合と同じであるから、その説明は省略する。
【0033】図10は図9のシステムの乗車時の動作を示すフローチャートである。このシステムでは、CPU20aは、トリガースイッチ26がONされたかどうかを判断し(ステップS20)、この判断の結果としてYESの場合、つまりトリガースイッチ26がONされた場合に、アンテナ11を介してトランスポンダカード10起動用の125kHzの磁界を発生させる(ステップS21)。その後のステップS22以降の処理は、上記した図7のステップS2以降の処理と同じであるから、その説明は省略する。また、このシステムの降車時の動作は、上記した図8のフローチャートと同様であるから、その説明も省略する。
【0034】したがって、上記した実施形態によれば、トランスポンダカード10を使ってドア18のロック/アンロックおよびECCS6のソフトウェアロックのON/OFFを行うようにしたので、キー2、キーシリンダー4、キースイッチ7を廃止することができ、しかもそれらの廃止にもかかわらず車両に対する高度のセキュリティを確保することができる。
【0035】
【発明の効果】以上述べたように、請求項1および5記載の各発明によれば、IDコードを記憶するカード型記憶手段を使ってドアのロック/アンロックおよびエンジン始動制御のロック/アンロックを行うので、従来使用していたキー、キーシリンダー、キースイッチを廃止することができ、しかもそれらの廃止にもかかわらず車両に対する高度のセキュリティを構築することができる。
【0036】請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、記憶手段作動用のエネルギーを間欠的に発生させるので、トリガースイッチなどの部品を別途設けることなく車載バッテリーの消耗を抑えることができる。
【0037】請求項3記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、トリガー用スイッチがONされたときにのみ記憶手段作動用のエネルギーを発生させるので、車載バッテリーの消耗をより一層抑えることができる。
【0038】請求項4記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、IDコードが一致するたびにそれを自動的に別のIDコードに書き替えるので、セキュリティ性のさらなる向上が図られる。
【0039】請求項6記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、アクセス手段をドアに設置したので、アクセス手段を大きくすることができ、記憶手段との交信範囲を拡大することができる。
【0040】請求項8記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明と相俟って、エンジンを始動させるためのロータリー式またはプッシュ式のスイッチを設けたので、従来のキー、キーシリンダー、キースイッチを廃止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るトランスポンダカードシステムの概略図
【図2】 トランスポンダカードの概略構成図
【図3】 アンテナと受信機の設置場所を示す図
【図4】 受信機を中心としたシステム構成の一例を示すブロック図
【図5】 ロータリー式のスタータボタンを示す図
【図6】 プッシュ式のスタータボタンを示す図
【図7】 図4のシステムの乗車時の動作を示すフローチャート
【図8】 図4のシステムの降車時の動作を示すフローチャート
【図9】 受信機を中心としたシステム構成の他の一例を示すブロック図
【図10】 図9のシステムの乗車時の動作を示すフローチャート
【図11】 従来のトランスポンダ式イモビライザーの概略構成を示すシステム図
【図12】 従来のキースイッチを示す図
【符号の説明】
6…ECCS(エンジンロック手段)
10…トランスポンダカード(記憶手段)
11…アンテナ(アクセス手段)
12…受信機(制御手段)
13…ドアロック機構(ドアロック手段)
18…ドア
19…ドアミラー
25…スタータボタン
26…トリガースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドア(18)をロック/アンロックするドアロック手段(13)と、エンジンの始動制御をロック/アンロックするエンジンロック手段(6)と、使用者を識別するためのIDコードを記憶する非接触で読出し/書込み自在のカード型記憶手段(10)と、前記記憶手段(10)とアクセスしデータのやり取りを行うアクセス手段(11)と、前記アクセス手段(11)を介して前記記憶手段(10)に記憶されているIDコードを読み取り、読み取ったIDコードを照合用のIDコードと照合し、それらが一致するときにドアアンロック信号およびエンジンアンロック信号を前記ドアロック手段(13)および前記エンジンロック手段(6)にそれぞれ出力する制御手段(12)と、を有することを特徴とする車両用カードシステム。
【請求項2】 前記制御手段(12)は、前記記憶手段(10)を作動させるためのエネルギーを前記アクセス手段(11)を介して間欠的に発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。
【請求項3】 トリガー用のスイッチ(26)を有し、前記制御手段(12)は、前記スイッチ(26)がONされたときに、前記記憶手段(10)を作動させるためのエネルギーを前記アクセス手段(11)を介して発生させることを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。
【請求項4】 前記制御手段(12)は、照合の結果としてIDコードが一致したときに、前記記憶手段(10)に記憶されているIDコードおよび前記照合用のIDコードを現在のものとは別のものに書き替えるためのIDコードを作成し、作成した書替用IDコードにより前記各IDコードの書替えが正常に行われたときにドアアンロック信号およびエンジンアンロック信号を前記ドアロック手段(13)および前記エンジンロック手段(6)にそれぞれ出力することを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。
【請求項5】 前記制御手段(12)は、エンジンが停止しかつドア(18)が開いたときに前記アクセス手段(11)を介して前記記憶手段(10)と交信し、ドア(18)が閉じかつ交信不能となったときにドアロック信号およびエンジンロック信号を前記ドアロック手段(13)および前記エンジンロック手段(6)にそれぞれ出力することを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。
【請求項6】 前記アクセス手段(11)はドア(18)に設置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。
【請求項7】 前記アクセス手段(11)はドアミラー(19)に設置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。
【請求項8】 エンジンを始動させるためのロータリー式またはプッシュ式のスイッチ(25)を有することを特徴とする請求項1記載の車両用カードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図12】
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【図4】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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