説明

車両用サンバイザ

【課題】 複数種類の鏡を備えた車両用サンバイザの薄型化に資する技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る車両用サンバイザ201は、サンバイザ本体203と、サンバイザ本体203内に当該サンバイザ本体203の面方向に並列状に配置された複数種類の鏡221,223と、サンバイザ本体203における、複数種類の鏡221,223の表面と対向する部位に形成された開口227と、開口227を開閉可能にサンバイザ本体203の面方向に沿って移動するカバー部材228,229と、を有する。カバー部材228,229は、開口227を開く側に移動されたとき、当該開口227から複数種類の鏡のうちの一の鏡を選択的に露出させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用サンバイザに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000−238532号公報(特許文献1)には、標準鏡である平面鏡と、拡大鏡である凹面鏡がサンバイザ本体の広幅面に形成された切欠内に層状に配置された車両用サンバイザが開示されている。サンバイザ本体には、鏡を見るために1つの開口が設定されている。この1つの開口を通して複数の鏡を選択的に見ることができるようにするために、特許文献1に開示された車両用サンバイザでは、開口の最も奥側に凹面鏡が固定状に配置され、凹面鏡の手前にカバーがサンバイザ本体の面方向にスライド可能に配置され、さらにカバーの手前に平面鏡がサンバイザ本体の面方向にスライド可能に配置されている。カバーの手前側に配置される平面鏡は、常時(不使用時)にはポケット状の空間に収容されている。したがって、その状態でカバーを移動させて開口部を開放すれば、凹面鏡を見ることができる。一方、平面鏡はカバーの手前に引き出すことによって開口部を通して見ることができる。
【0003】
ところが、上述した特許文献1に開示された車両用サンバイザにおいては、平面鏡と凹面鏡をサンバイザ本体に対して厚み方向(前後)に層状に配置する構成である。このため、サンバイザ本体の厚み(広幅面に直交する方向の寸法)が大きくなり、特に特許文献1のようにカバーをスライド方式としたときは、当該カバーの収納スペースをサンバイザ本体の内部に設定する関係でより厚くなり、この点でなお改良の余地がある。
【特許文献1】特開2000−238532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記に鑑み、複数種類の鏡を備えた車両用サンバイザの薄型化に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、各請求項に記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明に係る車両用サンバイザは、サンバイザ本体と、サンバイザ本体内に当該サンバイザ本体の面方向に並列状に配置された複数種類の鏡と、サンバイザ本体における複数種類の鏡の表面と対向する部位に形成された開口と、当該開口を開閉可能にサンバイザ本体の面方向に沿って移動するカバー部材とを有する。そしてカバー部材は、開口を開く側に移動されたとき、当該開口から複数種類の鏡のうちの一の鏡を選択的に露出させるように構成されている。なお本発明における「並列状に配置」は、複数種類の鏡が互いに離れて配置される態様、あるいは近接して配置される態様のいずれも好適に包含する。また本発明における「複数種類の鏡」とは、鏡面の曲率が異なる態様、色が異なる態様等を包含し、典型的には、標準鏡である平面鏡、拡大鏡としての凹面鏡がこれに該当する。また本発明における「面方向に沿って移動する」とは、カバー部材がサンバイザ本体の長手方向(左右方向)に移動する態様、サンバイザ本体の長手方向と交差する方向(上下方向)に移動する態様のいずれも包含する。この場合、サンバイザ本体の平面領域を有効に活用するには、サンバイザ本体の長手方向に沿ってスライドする方式とすることが好ましい。また本発明における「カバー部材は、開口から一の鏡を選択的に露出させるように構成」の意味は、使用者が開口を開く側にカバー部材を移動操作したとき、当該カバー部材によって開放される開口からは一種類の鏡のみが露出され、他種類の鏡が露出されない構成をいう。換言すれば、カバー部材が開口を開く側に移動されるときの、当該カバー部材の移動範囲が、複数種類の鏡のうちの一の鏡の大きさに対応する範囲に規制される構成がこれに該当する。なおカバー部材は、単数から構成される態様、複数から構成される態様のいずれも好適に包含する。
本発明によれば、複数種類の鏡がサンバイザ本体の面方向に並列状に配置された構成とされる。これによって、複数種類の鏡を面方向に交差する方向に重ねて配置する従来の構成に比べて、サンバイザ本体の鏡の収容スペースを厚み方向に関して小さくでき、その結果、サンバイザの薄型化が実現される。また本発明によれば、カバー部材を移動して開口を開いたときは、複数種類の鏡のうちの一の鏡のみを開口から選択的に露出させることができる。すなわち、選択された鏡以外の他種類の鏡は、カバー部材によって隠されたままであるため、開口から露出された鏡を使用するときの邪魔にならず、使い易い。また複数種類の鏡につき、開口からの奥行きに差があると、例えば奥側に位置する鏡については、その周縁部に影ができる等の点で使い勝手が悪いといった問題が生ずるが、本発明によれば、かかる問題を回避して使用性を向上できる。
【0006】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の車両用サンバイザにおけるカバー部材は、鏡の種類数に対応した数だけ備えられている。かかる構成によれば、例えば鏡の横幅とカバー部材の横幅(移動方向の寸法)とを一致することができる。すなわち、鏡の性状とカバー部材の性状が互いに一致することで、鏡の使い易さを向上できる。またカバー部材は、複数種類の鏡の配置面内での移動によって一の鏡全体を開口から露出することができる。このため、サンバイザ本体の面スペースを鏡の配置領域として有効に利用することができる。
【0007】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の車両用サンバイザにおける複数種類の鏡は、平面鏡と凹面鏡を含む構成とされる。本発明によれば、使用者は標準鏡である平面鏡と拡大鏡である凹面鏡とを適宜使い分けることができる。
【0008】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用サンバイザにおけるカバー部材は、直線状に移動することによって開口を開閉可能であり、一方への移動によって複数種類の鏡のうちの一方の鏡のみを開口から露出させ、他方への移動によって複数種類の鏡のうちの他方の鏡のみを開口から露出させる構成とした。本発明によれば、複数種類(2種類)の鏡のうちの一の鏡のみを、1枚のカバー部材を用いて選択的に開口から露出させることができる。
【0009】
(請求項5に記載の発明)
請求項5に記載の発明によれば、請求項1または3に記載の車両用サンバイザにおけるカバー部材は、鏡の表面側と裏面側との間で屈曲状に移動することによって開口を開閉可能であり、一方への移動によって複数種類の鏡のうちの一方の鏡のみを開口から露出させ、他方への移動によって複数種類の鏡のうちの他方の鏡のみを開口から露出させる構成とした。本発明によれば、請求項4に記載の発明と同様、複数種類(2種類)の鏡のうちの一の鏡のみを、1枚のカバー部材を用いて選択的に開口から露出させることができる。また本発明によれば、開口を開放するべくカバー部材を移動したとき、当該カバー部材の移動先端側が鏡の裏面側に屈曲しつつ回り込む構成のため、1枚のカバー部材でありながら、当該カバー部材が鏡の配置領域外へ大きく移動することがなく、サンバイザ本体の平面スペースを合理的に利用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数種類の鏡を備えた車両用サンバイザの薄型化に資する技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る車両用サンバイザについて、図面を参照しつつ詳しく説明する。図1には本実施の形態に係る複数種類の鏡を有する車両用サンバイザの全体構成が簡略に示され、図2には図1のA−A線に基づく断面構造およびスライドカバーの開閉態様が示される。図1に示すように、本実施の形態に係る車両用サンバイザ201は、概括的に見て、サンバイザ201の外形を構成するサンバイザ本体203と、サンバイザ本体203を車両に装着するための支軸205とを主体として構成されている。支軸205は、概ね鉛直方向に延びる縦軸部205aと、概ね水平方向に延びる横軸部205bとを備えた略L字状に形成されている。支軸205の横軸部205aは、サンバイザ本体203における上縁部の一方の隅部に内蔵された軸受部(便宜上図示を省略する)に装着され、これによりサンバイザ本体203が横軸部205bの軸回りに相対的に回動自在とされる。支軸205の縦軸部205aは、取付ブラケット207を介して車室天井面の前側隅部に回動自在に装着される。
【0012】
車室天井面に装着されたサンバイザ201は、横軸部205bの軸回りに回動操作することで、車室の天井面に沿うように置かれる格納位置と、フロントガラスに沿うように置かれる遮光位置との間で配置位置を変更することができる。またサンバイザ201は、縦軸部205a回りに回動操作することで、フロント位置とサイドガラスに沿ったサイド位置との間で配置位置を変更することができる。またサンバイザ本体203は、上縁部の自由端側には、サポート軸209を有する。このサポート軸209は、車室の天井面に装着されるフック(便宜上図示を省略する)によって保持される。これによってサンバイザ201が格納位置から遮光位置へあるいは遮光位置から格納位置へと配置位置が変更されるときの、サンバイザ201の回動動作の安定化が図られている。
【0013】
図2の(A)〜(C)に示すように、本実施の形態に係るサンバイザ本体203は、対向状に配置された2つのシェル211,213を互いに接合することで外郭形状が構成されるシェル構造であり、一方(図2の上面側)のシェル211の広幅面に切欠211aを有し、この切欠211a内に鏡を収容したミラーユニット220が配置されている。ミラーユニット220は、鏡面の曲率が異なる複数種類の鏡、本実施の形態では標準鏡である平面鏡221、拡大鏡である凹面鏡223、平面鏡221と凹面鏡223の周囲を取り囲むミラートリム225、およびミラートリム225に形成された開口(枠内空間部)227を開閉するための平板状の2枚(左右)のスライドカバー228,229によって構成されている。
【0014】
平面鏡221と凹面鏡223は、それぞれが矩形状に形成されるとともに、互いに面方向に並列となるように配置されている。すなわち、平面鏡221および凹面鏡223は、サンバイザ本体203の面方向(左右方向)のほぼ同一平面上に並列状に配置されるとともに、その周囲を取り囲むミラートリム225によって互いに一体化されている。なお平面鏡221は、鏡面の曲率が零の場合をいう。ミラートリム225は、平面鏡221および凹面鏡223の鏡面(表面)を露出させることが可能な広さの開口227を有し、その開口227が左右のスライドカバー228,229によって開閉可能とされている。
【0015】
左右のスライドカバー228,229は、ミラートリム225に対して平面鏡221および凹面鏡223の面方向、すなわちサンバイザ本体203の面方向に沿って左右方向に移動可能に装着されている。左右のスライドカバー228,229は、いわゆる引き違い式のスライド開閉型であり、図2の(A)に示すように、開口227を閉じた状態では、使用者から見て左側のスライドカバー228が平面鏡221の鏡面上に置かれ、右側のスライドカバー229が凹面鏡223の面上に置かれる。なお左右のスライドカバー228,229の移動は、ミラートリム225の互いに対向する2つの枠内面(図1の上縁側および下縁側)にそれぞれ形成された各2本レール(図示省略)によって案内される構成とされる。また左右のスライドカバー228,229の表面側の一端部には、開閉操作部材としてそれぞれ凸状の摘み228a,229aが設けられている。
【0016】
平面鏡221に対応する左側のスライドカバー228は、平面鏡221の鏡面の大きさに対応した大きさに設定され、凹面鏡223に対応する右側のスライドカバー229は、凹面鏡223の鏡面の大きさに対応した大きさに設定されている。したがって、左側のスライドカバー228を右側へ移動させて開口227の左側領域を開いたときは、図2の(B)に示すように、当該左側領域から平面鏡221の全体が露出され、右側のスライドカバー229を左側へ移動させて開口227の右側領域を開いたときは、当該右側領域から凹面鏡223の全体が露出される構成とされる。なお本実施の形態では、平面鏡221と凹面鏡223は、互いに概ね同等の大きさに設定されており、したがって、これに対応して左右のスライドカバー228,229も共に概ね同等の大きさに設定されているが、この関係については、変更、つまり平面鏡221の横幅を凹面鏡223の横幅よりも大きく、あるいは小さく設定しても差し支えない。
【0017】
本実施の形態に係る車両用サンバイザ201は、上記のように構成されている。鏡を使用しない状態では、図2の(A)に示すように、左右のスライドカバー228,229が開口227を閉じる位置に置かれる。この状態では平面鏡221あるいは凹面鏡223がスライドカバー228,229によって隠される。これによって平面鏡221あるいは凹面鏡223が開口227から露出されている場合に起こり得る反射等による眩しさを防止することができる。
【0018】
平面鏡221を使用するときは、使用者は図2の(B)に示すように、左側のスライドカバー228を右方向に移動する。左側のスライドカバー228は、右側の表面に重なるように置かれ、これによって開口227の左半分の領域が開放され、この開放された領域から平面鏡221の鏡面の全体が露出される。使用者は開口227の開放された領域を通して平面鏡221を見ることができる。このとき、凹面鏡223は右側のスライドカバー229によって隠されている。
一方、凹面鏡223を使用するときは、使用者は、図2の(C)に示すように、右側のスライドカバー229を左方向へと移動する。右側のスライドカバー229は、左側のスライドカバー228の裏面に重なるように置かれ、これによって開口227の右半分の領域が開放され、この開放された領域から凹面鏡223の鏡面の全体が露出される。使用者は開口227の開放された領域を通して凹面鏡223を見ることができる。このとき、平面鏡221は左側のスライドカバー228によって隠されている。
【0019】
本実施の形態においては、平面鏡221と凹面鏡223をサンバイザ本体203の面方向のほぼ同一平面上に並列状に配置した構成としている。これによって、平面鏡と凹面鏡とをサンバイザ本体の面方向と交差する方向に重ねて配置する従来の構成に比べて、サンバイザ本体203における鏡の収容スペースが厚み方向(面方向と直交する方向)につき小さくて済む。その結果、サンバイザ本体203の厚みが薄くなり、サンバイザ201の薄型化が実現される。またスライドカバー228,229は、平面鏡221および凹面鏡223に対応した数だけ備えられている。このため、例えば平面鏡221および凹面鏡223の横幅とスライドカバー228,229の横幅(移動方向の寸法)とを一致することができ、使い易さを向上できる。
【0020】
また平面鏡221と凹面鏡223をサンバイザ本体203の面方向に並列状に配置する構成としたことによって、開口227からの鏡面までの深さ(奥行き)を平面鏡221と凹面鏡223の双方に関し、ほぼ同一深さに統一することができる。平面鏡221と凹面鏡223とにつき、開口227からの奥行きに差があると、例えば奥側に位置する鏡については、その外周縁部に影ができる等の点で使い勝手が悪いといった問題が生ずるが、本実施の形態によれば、かかる問題が回避されることになり、使用性を向上できる。また一方の鏡、例えば平面鏡221が開口227から露出させた状態に置かれるとき、他方の鏡、例えば凹面鏡223は、スライドカバー228,229によって使用者の視認領域から完全に隠されるため、平面鏡221を使用する際に、凹面鏡223も見えてしまうといった使いづらさが回避される。
【0021】
また本実施の形態によれば、平面鏡221および凹面鏡223の外周縁部には、ミラートリム225が配置されているため、平面鏡221および凹面鏡223につき、面倒な端末処理を不要とすることができる。また平面鏡221および凹面鏡223を使用しないときは、スライドカバー228,229によって開口227を閉じて置くことができる。このため、平面鏡221あるいは凹面鏡223の反射等による眩しさを防止することができる。また本実施の形態では、ミラートリム225を介して平面鏡221および凹面鏡223を一体化するとともに、当該ミラートリム225にスライドカバー228,229を装着することで、ミラーユニット220を構成しているため、サンバイザ本体203への組み付けが容易化され、サンバイザ201の生産性の向上に有効となる。
【0022】
なお上述した実施形態においては、カバー部材としてのスライドカバー228,229をサンバイザ本体201の面方向に沿って移動させることによって平面鏡221あるいは凹面鏡223を開口227から選択的に露出される構成としたが、カバー部材を面方向に沿って移動する方式に変えて、一辺側を支点にして回動させることで開口227を開閉する方式に変更することが可能である。
【0023】
(本発明の第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態に係る車両用サンバイザ201につき図3を参照しつつ説明する。この実施の形態に係る車両用サンバイザ201は、1枚の平板状のスライドカバー231をサンバイザ本体201の面方向に沿って直線状に移動させることによって平面鏡221と凹面鏡223のいずれか一方をミラートリム225の開口227から選択的に露出させる構成としたものであり、この点を除いては前述した第1の実施の形態と同様に構成される。したがって、同一構成部材については同一符号を付してその説明を省略する。スライドカバー231は、本発明における「カバー部材」に対応する。図3にはサンバイザ201の断面構造およびスライドカバー231の開閉態様が示される。
【0024】
スライドカバー231は、並列状に配置された平面鏡221と凹面鏡223の面上に対向状に置かれ、当該平面鏡221と凹面鏡223との両方を隠すことが可能な広さを有する(図3の(A)参照)。スライドカバー231は、平面鏡221および凹面鏡223の面方向に直線状に移動可能にミラートリム225に装着され、一方(図示右側)への移動によって平面鏡221のみを開口227から露出させ、他方(図示左側)への移動によって凹面鏡223のみを開口227から露出させる構成とされる。このようなスライドカバー231の移動を可能とするべく、ミラートリム225には通し孔225aが設けられている。スライドカバー231はこの通し孔225aを貫通してミラートリム225の外側へと移動され、サンバイザ本体201の内部空間に置かれる構成とされる(図3の(B),(C)参照)。
【0025】
スライドカバー231の表面側における移動方向の両端部には、開閉操作部材としての凹状の引き手233が設けられている。凹状の引き手233を設けることで、スライドカバー231がミラートリム225の通し孔225aを貫通することが可能とされる。そしてスライドカバー231が開口227を閉じる状態(図3の(A)参照)から図示右側へと移動されて平面鏡221を開口227から露出させる位置に置かれたとき(図3の(B)参照)、あるいは図示左側へと移動されて凹面鏡223を開口227から露出させる位置に置かれたとき(図3の(C)参照)、凹状の引き手233はサンバイザ本体201側に設けた係合凸部235と係合する構成とされる。これによって、スライドカバー231が開口227の左側領域あるいは右側領域を開放した位置に位置決めされる。引き手233と係合凸部235との係合動作あるいは離脱動作は、スライドカバー231またはサンバイザ本体201のいずれか一方あるいは両方の弾性変形を介して行う構成であり、スライドカバー231の開閉操作に対して節度感を付与することができるとともに、係合状態では、スライドカバー231の無用な動きを規制することができる。
【0026】
本実施の形態に係る車両用サンバイザ201は、上記のように構成されている。したがって、スライドカバー231を右側または左側へ直線状に移動させる、つまり1枚のスライドカバー231を異なる方向へ移動させることによって、平面鏡221あるいは凹面鏡223のいずれかのみを開口227から選択的に露出させて使用することができる。このとき、引き手233が係合凸部235に係合することによって、スライドカバー231を開口227の左側領域あるいは右側領域を開放する開き位置に確実に位置決めすることができる。また平面鏡221、凹面鏡223がサンバイザ本体203の面方向のほぼ同一平面上に並列状に配置されるとともに、1枚のスライドカバー231を移動させて開口227を開閉する構成のため、サンバイザ本体203における鏡およびカバーの収容スペースが厚み方向につき小さくて済むことになり、サンバイザ本体203の厚みを薄くでき、サンバイザ101の薄型化が実現される。
【0027】
なおこの実施形態では、引き手233が係合凸部235に係合することで開き位置に位置決めする構成としたが、閉じ位置についても同様の位置決め構造、すなわち凹部と凸部との係合による位置決め構造を設けてもよい。またスライドカバー231の位置決め構造については、凹部と凸部との係合方式に変えて、スライドカバー231の端面がいずれか一方のシェル211あるいは213に設けた突部に当接することで移動規制を行なうストッパ構造に変更してもよい。
【0028】
(本発明の第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態に係る車両用サンバイザ201につき図4を参照しつつ説明する。この実施の形態に係る車両用サンバイザ201は、1枚の屈曲可能なスライドカバー241をサンバイザ本体203の面方向に沿って平面鏡221の裏面側あるいは凹面鏡223の裏面側に回り込むように移動させることによって、平面鏡221と凹面鏡223のいずれか一方をミラートリム225の開口227から選択的に露出させることを可能としたものであり、この点を除いては前述した第1の実施の形態と同様に構成される。したがって、同一構成部材については同一符号を付してその説明を省略する。スライドカバー241は、本発明における「カバー部材」に対応する。図4にはサンバイザ201の断面構造およびスライドカバー241の開閉態様が示される。
【0029】
スライドカバー241は、並列状に配置された平面鏡221と凹面鏡223との両方を隠すことが可能な平面広さを有し(図4の(A)参照)、平面鏡221の表面側と裏面側との間あるいは凹面鏡223の表面側と裏面側との間で屈曲状に移動することによって開口227を開閉可能とし、一方(図示右側)への移動によって平面鏡221のみを開口227から露出させ(図4の(B)参照)、他方(図示左側)への移動によって凹面鏡223のみを開口227から露出させる構成とされる(図4の(C)参照)。スライドカバー241は、例えば、図示の如き表面側に鋸歯状の凹凸を移動方向に連続する態様で設けることで屈曲性が付与されている。そしてミラートリム225には、平面鏡221の表面側と裏面側および凹面鏡223の表面側と裏面側とのそれぞれにスライドカバー241が通行可能な通し孔225a、225bが設けられている。また一方のシェル211(あるいは他方のシェル213)には、スライドカバー241が開口227を開放する側に移動されたとき、当該スライドカバー241を屈曲させつつ鏡裏面側へ回り込むように案内する屈曲ガイド243が設けられている。さらに他方のシェル213の鏡裏面側には、スライドカバー241を開放位置に規制するストッパ245が設けられ、これによってスライドカバー241は、平面鏡221あるいは凹面鏡223を開口227の左側領域あるいは右側領域から露出させる位置に位置決めされる構成とされる。
【0030】
本実施の形態に係る車両用サンバイザ201は、上記のように構成されている。したがって、一枚のスライドカバー241を右側または左側へ移動させることによって、平面鏡221あるいは凹面鏡223のいずれかのみを開口227から選択的に露出させて使用することができる。このとき、スライドカバー241の端部がストッパ245に当接することによって開き位置に確実に置くことができる。また平面鏡221、凹面鏡223がサンバイザ本体203の面方向のほぼ同一平面上に並列状に配置されるとともに、1枚のスライドカバー241を移動させて開口227を開閉する構成のため、サンバイザ本体203における鏡およびカバーの収容スペースが厚み方向につき小さくて済むことになり、前述した第2の実施の形態と同様、サンバイザ本体203の厚みを薄くでき、サンバイザ101の薄型化が実現される。
【0031】
またこの実施形態においては、スライドカバー241が開口227を開く側に移動されるとき、鏡裏面側に回り込む構成である。このため、当該スライドカバー241が鏡の配置領域外へ大きく移動することがなく、サンバイザ本体203の平面スペースを合理的に活用できる。
【0032】
なお図5には、前述した第1の実施形態に係る車両用サンバイザ201の変更例が模式図で示される。この変更例では、3種類の鏡、例えば1つの平面鏡251と、曲率の異なる2つの凹面鏡252,253を並列状に配置するとともに、各鏡251,252,253に対応して3つのスライドカバー254,255,256をサンバイザ本体201の面方向に沿って移動可能に配置した構成としている。3つのスライドカバー254,255,256は、その表面側には開閉操作用の凹状の引き手254a,255a,256aを有し、ミラートリム257に2本のレールを介して装着される。すなわち、中央に位置するスライドカバー255が一方(手前側)のレールに装着され、左右のスライドカバー254,256がそれぞれ他方(奥側)のレールに装着される構成とされる。かかる構成によれば、3つのスライドカバー254,255,256のいずれか1つを移動することによって3種類の鏡251,252,253のうちのいずれか1つのみを開口258から選択的に露出させることができる。
【0033】
またこの変更例では、各スライドカバー254,255,256がそれぞれ対応する鏡251,252,253を隠す位置に置かれたとき、あるいはいずれか1つのスライドカバー254,255,256が対応する鏡251,252,253を開口258から露出させる位置に置かれたとき、図6に模式図で示すように、それらスライドカバー254,255,256が凹部259と凸部261との係合を介して当該各位置にそれぞれ位置決めされる構成とされる。凹部259はスライドカバー254,255,256側に設定され、凸部261はミラートリム257側に設定される。この場合、凸部261は、例えば板バネ等を用いてミラートリム257とスライドカバー254,255,256間に弾発状に介在する構成とすることが好ましい。かかる構成によれば、スライドカバー254,255,256の開閉動作時において、凹部259と凸部261との係脱動作による節度感を付与することができるとともに、凹部259と凸部261との係合状態では、スライドカバー254,255,256の無用な動きを規制することができる。なおこのような凹部259と凸部261とを利用した位置決め構造は、隣接するスライドカバー254,255,256間に設定することが可能であるし、また前述した第1の実施形態の車両用サンバイザ201に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用サンバイザの概略構成を示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に基づく断面構造およびスライドカバーの開閉態様を示す断面図であり、(A)は鏡の不使用状態を示し、(B)は平面鏡の使用状態を示し、(C)は凹面鏡の使用状態を示す。
【図3】第2の実施形態に係る車両用サンバイザにおけるスライドカバーの開閉態様を示す断面図であり、(A)は鏡の不使用状態を示し、(B)は平面鏡の使用状態を示し、(C)は凹面鏡の使用状態を示す。
【図4】第3の実施形態に係る車両用サンバイザにおけるスライドカバーの開閉態様を示す断面図であり、(A)は鏡の不使用状態を示し、(B)は平面鏡の使用状態を示し、(C)は凹面鏡の使用状態を示す。
【図5】第1の実施形態に係る車両用サンバイザの変更例を示す模式図である。
【図6】スライドカバーの位置決め構造を平面的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
201 車両用サンバイザ
203 サンバイザ本体
205 支軸
205a 縦軸部
205b 横軸部
207 取付ブラケット
209 サポート軸
211,213 シェル
220 ミラーユニット
221 平面鏡
223 凹面鏡
225 ミラートリム
225a,225b 通し孔
227 開口
228,229 スライドカバー(カバー部材)
228a,229a 摘み
231 スライドカバー(カバー部材)
233 引き手
235 係合凹部
241 スライドカバー(カバー部材)
243 屈曲ガイド
245 ストッパ
251 平面鏡
252,253 凹面鏡
254,255,256 スライドカバー(カバー部材)
257 ミラートリム
258 開口
259 凹部
261 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンバイザ本体と、
前記サンバイザ本体内に当該サンバイザ本体の面方向に並列状に配置された複数種類の鏡と、
前記サンバイザ本体における、前記複数種類の鏡の表面と対向する部位に形成された開口と、
前記開口を開閉可能に前記サンバイザ本体の面方向に沿って移動するカバー部材と、を有し、
前記カバー部材は、前記開口を開く側に移動されたとき、当該開口から前記複数種類の鏡のうちの一の鏡を選択的に露出させるように構成されていることを特徴とする車両用サンバイザ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用サンバイザであって、
前記カバー部材は、前記鏡の種類数に対応した数だけ備えられていることを特徴とする車両用サンバイザ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用サンバイザであって、
前記複数種類の鏡は、平面鏡と凹面鏡を含むことを特徴とする車両用サンバイザ。
【請求項4】
請求項1または3に記載の車両用サンバイザであって、
前記カバー部材は、直線状に移動することによって前記開口を開閉可能であり、一方への移動によって前記複数種類の鏡のうちの一方の鏡のみを前記開口から露出させ、他方への移動によって前記複数種類の鏡のうちの他方の鏡のみを前記開口から露出させる構成としたことを特徴とする車両用サンバイザ。
【請求項5】
請求項1または3に記載の車両用サンバイザであって、
前記カバー部材は、前記鏡の表面側と裏面側との間で屈曲状に移動することによって前記開口を開閉可能とし、一方への移動によって前記複数種類の鏡のうちの一方の鏡のみを前記開口から露出させ、他方への移動によって前記複数種類の鏡のうちの他方の鏡のみを前記開口から露出させる構成としたことを特徴とする車両用サンバイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−62424(P2007−62424A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247655(P2005−247655)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(599041329)共和産業株式会社 (76)
【出願人】(503406240)新和精工株式会社 (55)
【Fターム(参考)】