説明

車両用サンバイザ

【課題】サンバイザ本体をシャフトの軸線方向にスライドさせる際に、サンバイザ本体内部においてハーネスケーブルが不適切に折れ曲がってサンバイザ本体のスライド移動の妨げになるという不具合を低減する。
【解決手段】サンバイザ本体1aが、シャフト3を介して車体に回動可能に支承されると共に、シャフト3に対して回転可能に且つシャフト3の軸線方向にスライド可能に支持され、さらに、サンバイザ本体1aに電気機器を収容するアクセサリ収容部6が形成されると共に、シャフト3内に挿通され、サンバイザ本体1a内部の一端側から延出されたハーネスケーブル70の少なくとも余長部位70aをフラットケーブルにより構成して、該フラットケーブルにより構成された余長部位70aをその幅方向が起立する状態で配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転席或いは助手席の前方或いは側方から照射される太陽光や対向車の前照灯光などの照射光を遮光するための車両用サンバイザに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用サンバイザは、例えば管状に形成されたサンバイザ本体の内部にホルダを内蔵する。ホルダ内には、略L字状に折曲されたシャフトの一端側における挿入側部が回動可能に挿通され、且つ、シャフトの他端側における取り付け側部がブラケットを介して車体側に取り付けられる。このように構成されることで、シャフトがブラケットに対して回動可能に支承されると共に、サンバイザ本体がシャフトに対して回動可能に支承される。
【0003】
太陽光や対向車の前照灯などの照射光が運転席或いは助手席の前方より照射される場合には、サンバイザ本体をシャフトを介して運転席或いは助手席に対向するように下方に回動させて、照射光を遮光するようにしている。
【0004】
また、照射光が運転席或いは助手席の側方より照射される場合には、サンバイザ本体をシャフトを介して下方に回動させると共にブラケットに対して車両の側方に回動させることで車両の側方に位置させることにより、車両の側方より照射される照射光を遮光するようにしている。
【0005】
さらに、特許文献1や特許文献2のように、例えば日の出から日の入りまでに亘る車両の長時間走行時に、車両の側方から照射される照射光が車両の前後方向において移動する場合を考慮して、サンバイザ本体をシャフトの軸線方向にスライド可能に構成されたスライド式の車両用サンバイザが提案されている。
【0006】
加えて、従来、スライド式の車両用サンバイザにおいて、サンバイザ本体に照明付きのバニティミラーなどの電気機器を内蔵するタイプのものが採用されている。このようなタイプの車両用サンバイザでは、シャフトを管状に構成し、該シャフト内部に電気機器への電力供給を行うためのハーネスケーブルを挿通収容して、シャフトより延出させたハーネスケーブルの一端部が電気機器に接続されるように構成している。
【0007】
図5は、従来の電気機器を内蔵するスライド式の車両用サンバイザ1におけるサンバイザ本体を構成する分割サンバイザ体同士を見開いた状態で、且つサンバイザ本体をシャフトに対して車両前方側にスライドさせた状態を描いた正面図である。
【0008】
図5において、サンバイザ本体1aは、ホルダ2を介してシャフト3の一端側の挿入側部3aにおいて回転可能に軸承される。シャフト3の他端側の他端側の取り付け側部3bはブラケット4を介して車体(不図示)に回転可能に軸承される。サンバイザ本体1aは、一面側が開口する薄型ボックス状に成形され、ヒンジ1dを介して一体的に形成された一対の分割サンバイザ体1a−1,1a−2で構成される。
【0009】
さらに、一方の分割サンバイザ体1a−1には長手方向に延在するようにホルダ収容部5が形成されており、ホルダ収容部5にホルダ2がスライド可能に収容され、サンバイザ本体1aがシャフト3の軸線方向にスライド可能となっている。加えて、一方の分割サンバイザ体1a−1にはバニティミラー(不図示)及び照明ランプ(不図示)を収容するアクセサリ収容部6が形成されている。
【0010】
また、シャフト3は管状に形成されており、シャフト3にはアクセサリ収容部6に収容される照明ランプに電力を供給するハーネスケーブル7が挿通されている。ハーネスケーブル7は、シャフト3の一端側の挿入側部3aの先端から延出され、分割サンバイザ体1a−1に形成された互いに離間対向する一対のガイド通路1eを経て配線され、アクセサリ収容部6内に設置されたコネクタ6aに接続されることにより、照明ランプに電気的に接続されるようになっている。
【0011】
そして、ガイド通路1eを通過したハーネスケーブル7は、アクセサリ収容部6内のコネクタ6aに配線される間において、湾曲状に折曲された状態となって余長部位7aを構成しており、余長部位7aは、シャフト3に対してサンバイザ本体1aがスライドした際に、サンバイザ本体1aのスライド距離分のハーネスケーブル7の寸法差を吸収すべく、湾曲状部を解きほぐしながら伸長するように構成したものである。
【0012】
従って、図5に示すように、シャフト3に対してサンバイザ本体1aが車両の前方側にスライド移動している状態では、サンバイザ本体1a内部に確保された余長収納空間部1fに、ハーネスケーブル7の余長部位7aが弛んだ状態で収納されている。
【0013】
一方、図6に示すように、サンバイザ本体1aがシャフト3の軸線方向に沿って車両の後方側にスライド移動する過程において、ハーネスケーブル7の余長部位7aは、弛んだ状態から次第に伸長することになり、当該伸長分ホルダ収容部5に引き込まれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−9883号公報
【特許文献2】特開2004−175293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記のような電気機器を内蔵する従来技術におけるスライド式の車両用サンバイザを構成するハーネスケーブル7は、銅線等の電線にナイロン等の軟質の絶縁材を巻回被覆して構成している。したがって、シャフト3に対してサンバイザ本体1aがスライドして余長部位7aが伸長した後(図6に示す状態)、サンバイザ本体1aをシャフト3に対して逆側にスライドさせて元の位置に復帰させる際に、図7に示すように、ハーネスケーブル7の余長部位7aの一部7bが折れ曲がってホルダ2などに絡んでしまい、ハーネスケーブル7がシャフト3内に引込まれず、サンバイザ本体1aのスライド移動の妨げとなって、サンバイザ本体1aが元の位置に復帰し得ない事態が発生し兼ねなかった。
【0016】
本発明は、ハーネスケーブルが接続される電気機器を内蔵するスライド式の車両用サンバイザにおいて、サンバイザ本体をシャフトの軸線方向にスライドさせる際に、サンバイザ本体内部においてハーネスケーブルが不適切に折れ曲がってサンバイザ本体のスライド移動の妨げとなるという不具合を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る車両用サンバイザは、車両への照射光を遮光するサンバイザ本体が、管状のシャフトを介して車体に回動可能に支承されると共に、前記シャフトに対して回転可能に且つ前記シャフトの軸線方向にスライド可能に支持され、さらに、前記サンバイザ本体に電気機器を収容するアクセサリ収容部が形成されると共に、前記電気機器に一端が接続されたハーネスケーブルの他端側を、前記シャフト内に挿通した後延出させた際に、前記ハーネスケーブルにおける前記電気機器の接続部から前記シャフトへの導入口に至る間に、前記シャフトに対する前記サンバイザ本体のスライド距離分の前記ハーネスケーブルの寸法差を吸収すべく設けた余長部位を前記サンバイザ本体内に湾曲させた状態で配線することにより構成される車両用サンバイザであって、前記ハーネスケーブルの少なくとも前記余長部位がフラットケーブルにより構成して、該フラットケーブルにより構成された前記余長部位をその幅方向が起立する状態で配線されるようになしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る車両用サンバイザによれば、ハーネスケーブルの少なくともサンバイザ本体内の余長部位がフラットケーブルにより構成され、当該フラットケーブルは電線に硬質の絶縁材を巻回して構成していることと相俟って、余長部位がフラットケーブルの幅方向が起立するように配線されていることから、サンバイザ本体をシャフトの軸線方向にスライドさせる際に、サンバイザ本体内部においてハーネスケーブルが不適切に折れ曲がることがなく、結果的にシャフトを支持するホルダ等に絡んでしまいサンバイザ本体のスライド移動の妨げとなるという不具合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電気機器を内蔵する本実施形態に係るスライド式の車両用サンバイザにおけるサンバイザ本体を構成する分割サンバイザ体同士を見開いた状態で、且つ、サンバイザ本体を車両側部前方側にスライド移動させた状態を描いた正面図である。
【図2】サンバイザ本体を図1に示す状態から車両側部後方側にスライド移動した状態を描いた正面図である。
【図3】図2における要部を拡大して描画した斜視図である。
【図4】本実施形態に係るハーネスケーブルの断面図である。
【図5】従来の電気機器を内蔵するスライド式の車両用サンバイザにおけるサンバイザ本体を構成する分割サンバイザ体同士を見開いた状態で、且つサンバイザ本体をシャフトに対して車両側部前方側にスライド移動させた状態を描いた正面図である。
【図6】サンバイザ本体を図5に示す状態から車両側部後方側にスライド移動させた状態を描いた正面図である。
【図7】サンバイザ本体を図6に示す状態から再び車両側部前方側にスライド移動させた結果、ハーネスケーブルの余長部位がホルダ手前で折れ曲がって絡んでしまい、車両側部後方側にスライド移動させたサンバイザ本体が車両側部前方側にスライド移動できなくなった状態を描いた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(以下、実施例と称す)は、ハーネスについて、以下図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本実施例に係るスライド式の車両用サンバイザにおいて、サンバイザ本体を構成する一対の分割サンバイザ体を見開いた状態で、且つサンバイザ本体をシャフトに対して車両側部前方側にスライド移動させた状態を描いた正面図である。
【0022】
図1において、図5乃至図7に示す従来の車両用サンバイザと異なる点は、ハーネスケーブルが、フラットケーブルにより構成されている点であり、図5乃至図7に対応する部位には、同一符号を付して以下の説明を行うこととする。
【0023】
図1において、サンバイザ本体1aは、ホルダ2を介してシャフト3の一端側の挿入側部3aにおいて回転可能に軸承される。シャフト3の他端側の取り付け側部3bはブラケット4を介して車体(不図示)に回転可能に軸承される。サンバイザ本体1aは、ヒンジ1dを介して一体的に形成された一対の分割サンバイザ体1a−1,1a−2で構成されており、各分割サンバイザ体1a−1、1a−2は、それぞれ、一面側が開口する薄型ボックス状に成形されている。
【0024】
さらに、一方の分割サンバイザ体1a−1のヒンジ1d側に寄った部位には長手方向に延在するようにホルダ収容部5が形成されており、ホルダ収容部5にホルダ2がスライド可能に収容され、サンバイザ本体1aがシャフト3の軸線方向にスライド可能となっている。加えて、一方の分割サンバイザ体1a−1の略中央部にはバニティミラー(不図示)及び照明ランプ(不図示)を収容するアクセサリ収容部6が形成されている。
【0025】
また、シャフト3は管状に形成されており、シャフト3にはアクセサリ収容部6に収容される照明ランプに電力を供給するハーネスケーブル70が挿通されている。ハーネスケーブル70は、シャフト3の一端側の挿入側部3aから延出され、分割サンバイザ体1a−1に形成されたガイド通路1eを経て湾曲され、一端側がアクセサリ収容部6内に設置されたコネクタ6aに配線されてコネクタ6aを介して照明ランプ等の電気機器に電気的に接続されており、他端側がブラケット4の内孔より延出した後、車両の電源側に接続するために電源側コネクタ4aに接続している。
【0026】
ハーネスケーブル70は、ガイド通路1e、1e間を通過した部位からコネクタ6aに配線される間において、湾曲状に折曲された状態となった余長部位70aを構成しており、余長部位70aは、シャフト3に対してサンバイザ本体1aがスライドした際に、サンバイザ本体1aのスライド距離分のハーネスケーブル7の寸法差を吸収すべく、湾曲状部を解きほぐしながら伸長するように構成したものである。
【0027】
そして、ハーネスケーブル70は、全長でもよいが、少なくとも余長部位70aを、図4に示すように、一対の導線72を所定の間隔を隔てて並列させた状態で、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、オレフィン系樹脂等の硬質材料からなる絶縁材74により被覆して断面を扁平な形状に形成した所謂フラットケーブルで構成されている。
【0028】
また、ハーネスケーブル70の余長部位70aは、扁平断面における幅方向がサンバイザ本体1aの遮光面1a−1に対して垂直になるように起立した状態で配線される(明確に示している図3を参照)。
【0029】
以上、本実施形態では、ハーネスケーブル70の少なくとも余長部位70aが、フラットケーブルで構成され、さらにその余長部位70aの扁平断面における幅方向がサンバイザ本体1aの遮光面に対して垂直になるように起立した状態で配線されている。このように構成されることで、フラットケーブルであるハーネスケーブル70の剛性により、図1に示すように、シャフト3に対してサンバイザ本体1aが車両側部前方側に存する状態から、シャフト3に対してホルダ収容部5内をホルダ2が摺動することにより図2に示すようにシャフト3に対してサンバイザ本体1aがホルダ2と共に車両側部後方側にスライドした際、余長部位70aは、従来のように適切に折れ曲がって結果的にシャフト3を支持するホルダ2等に絡んでしまい、サンバイザ本体1aのスライド移動を妨げるような事態の発生を防ぐことができる。
【0030】
また、従来のスライド式の車両用サンバイザでは、サンバイザ本体の軸線方向の移動に伴うハーネスケーブルの移動を円滑に行うために例えばガイド通路1eの側壁に不織布を貼り付けていた。しかし、本実施形態によれば、従来のように不織布を貼り付けなくてもハーネスケーブル70の余長部位70aがホルダ2等に絡んでしまうことはなく、常にサンバイザ本体1aのスライド移動を円滑に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、ハーネスケーブルの少なくとも余長部位をフラットケーブルで構成することにより、サンバイザ本体のスライド移動に際して余長部位がホルダ等に絡みつくことがなく、常にシャフトに対してサンバイザ本体のスライド移動を円滑に行うことができるので、車両の運転席或いは助手席の前方或いは側方から照射される太陽光や対向車の前照灯光などの照射光を遮光するための車両用サンバイザ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1a サンバイザ本体
1a−1,1a−2 分割サンバイザ体
1e ガイド通路
1f 余長収納空間部
2 ホルダ
3 シャフト
4 ブラケット
5 ホルダ収容部
6 アクセサリ収容部
10 車両用サンバイザ
70 ハーネスケーブル
70a 余長部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への照射光を遮光するサンバイザ本体が、管状のシャフトを介して車体に回動可能に支承されると共に、前記シャフトに対して回転可能に且つ前記シャフトの軸線方向にスライド可能に支持され、さらに、前記サンバイザ本体に電気機器を収容するアクセサリ収容部が形成されると共に、前記電気機器に一端が接続されたハーネスケーブルの他端側を、前記シャフト内に挿通した後延出させた際に、前記ハーネスケーブルにおける前記電気機器の接続部から前記シャフトへの導入口に至る間に、前記シャフトに対する前記サンバイザ本体のスライド距離分の前記ハーネスケーブルの寸法差を吸収すべく設けた余長部位を前記サンバイザ本体内に湾曲させた状態で配線することにより構成される車両用サンバイザであって、前記ハーネスケーブルの少なくとも前記余長部位がフラットケーブルにより構成され、該フラットケーブルにより構成された前記余長部位をその幅方向が起立する状態で配線されるようになしたことを特徴とする車両用サンバイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−42338(P2011−42338A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193616(P2009−193616)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)