説明

車両用シート

【課題】クッション材の支持性能をより向上させることにある。
【解決手段】着座側とは異なるクッション材4Pの裏面側を、クッション材4Pよりも伸長性に劣る裏打材50にて被覆する構成とし、クッション材4Pの裏面側が、一対の支持部材11によって、一対の支持部材11の間に配置する中央部位20と、中央部位20の両側に配置する一対の側方部位30とに区画され、中央部位20と側方部位30が、各々、クッション材の裏面側から突出する半円筒状の外形形状を有するとともに、中央部位20の外形部と各側方部位30の外形部によって、着座側に向かって凹む配置部位41を形成することにより、支持部材11を沈み込み状に配置可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション材と、線状の支持部材(クッション材を支持可能な部材)を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、シートクッションと、シートバックを備えた車両用シートが公知である(特許文献1を参照)。
シートバックは、シートクッションに対して起立可能に連結する部材であり、シート骨格をなすフレーム部材(略長方形状)と、クッション材と、一対の支持部材を有する。
一対の支持部材は、それぞれフレーム部材の長手方向に延びる線状部材であり、途中でクランク状に(シート幅方向に)屈曲する。
【0003】
またクッション材は、シート外形をなして乗員を弾性支持する部材(ポリウレタンフォーム製)であり、隆起部位と、裏打材を有する。
隆起部位は、クッション材の裏面中央に隆起する半円筒状(断面視で円弧状等)の凸部であり、クッション材の長手方向に延びる。また裏打材は、クッション材よりも伸長性に劣る面状部材(スパンボンド法不織布)であり、クッション材の裏面側に配置できる。
【0004】
公知技術では、一対の支持部材を、フレーム部材に取付けてシート長手方向に延設する。そしてフレーム部材内にクッション材を配置するのであるが、このとき一対の支持部材の間に隆起部位を配置しつつ、クッション材を一対の支持部材にて支持する。
ところでこの種のシート構成では、乗員荷重によりクッション材がつぶれるなどして、シートの着座性が悪化することが懸念される。そこで公知技術では、クッション材が受ける押圧力を、隆起部位の反発力(裏打材の収縮力)にて極力相殺することでシートの着座性を良好に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−10748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで公知技術では、一対の支持部材の間(クッション材一部)に、隆起部位(裏打材の収縮力が好適に作用する部位)が形成される。
このため公知技術では、コーナリング走行時等に乗員の荷重移動が生じた場合、クッション材他部(隆起部位の非形成箇所)に乗員の押圧力がかかるなどして、クッション材の支持性能が不十分となることがあった。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、クッション材の支持性能をより向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、シートクッションやシートバックなどのシート構成部材を有する。そしてシート構成部材が、シート骨格をなすフレーム部材と、シート外形をなして弾性的に乗員を支持可能なクッション材と、クッション材を支持可能な線状の一対の支持部材とを有する。
本発明では、一対の支持部材をフレーム部材に取付けて、着座状態の乗員を支持可能にシート幅方向に並列配置する。そして着座側とは異なるクッション材の裏面側を、クッション材よりも伸長性に劣る裏打材にて被覆するのであるが、この種のシート構成では、クッション材の支持性能をより向上できることが望ましい。
【0008】
ここで本発明では、上述のクッション材の裏面側が、一対の支持部材によって、一対の支持部材の間に配置する中央部位と、中央部位の両側に配置する一対の側方部位とに区画される。
そこで本発明では、中央部位と側方部位が、各々、クッション材の裏面側から隆起する半円筒状の外形形状(断面視で円弧、放物線、懸垂線等)を有する。そして中央部位の外形部と各側方部位の外形部によって、着座側に向かって凹む配置部位を形成することにより、支持部材を沈み込み状に配置可能とした。
本発明では、複数の隆起部位(裏打材の収縮力が好適に作用する部位)を、乗員の周囲(側方位置)に配置することで、シートの着座性を良好に維持できる。また沈み込み状に配置される支持部材により、複数の隆起部位の位置を安定的に規定することができる。
【0009】
第2発明の車両用シートは、第1発明の車両用シートであって、シート構成部材が、一対の支持部材に対して交差状に配置する他の支持部材を有する。また中央部位が、他の支持部材によって、乗員尻部又は乗員肩甲骨に対面可能な第一部位と、第一部位に隣接する第二部位に区画される。
そこで本発明では、第一部位の外形部と第二部位の外形部によって、着座側に向かって凹む配置部位を形成することにより、他の支持部材を沈み込み状に配置可能とした。
本発明では、複数の隆起部位(裏打材の収縮力が好適に作用する部位)を、乗員の周囲(前後位置又は上下位置)に配置することで、シートの着座性を更に良好に維持できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、クッション材の支持性能をより向上させることができる。また第2発明によれば、クッション材の支持性能を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用シートの斜視図である。
【図2】フレーム部材の斜視図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】車両用シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図4を参照して説明する。なお各図には、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを適宜付す。なお図3及び図4では、便宜上、表皮材を省略して車両用シートを図示する。
図1の車両用シート2は、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、シート骨格をなすフレーム部材(4F,6F,8F)と、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材を被覆の表皮材(4S,6S,8S)を有する。
【0013】
<実施例1>
シートクッション4は、上述の構成(4F,4P,4S)と、複数の支持部材11,12を有する(各部材の詳細は後述、図1及び図2を参照)。
本実施例では、複数の支持部材11,12をフレーム部材4Fに取付ける。つぎに複数の支持部材11,12にてクッション材4Pを支持しつつ、クッション材4P表面を表皮材4Sで被覆する。
そしてクッション材4Pの反発力(後述する裏打材50の収縮力)により乗員を支持するのであるが、この種のシート構成では、クッション材4Pの支持性能をより向上できることが望ましい。
そこで本実施例では、後述の構成にて、クッション材4Pの支持性能をより向上させることとした。以下、各構成について詳述する。
【0014】
(フレーム部材)
フレーム部材4Fは、略長方形状(上方視)の枠体であり、前方フレーム4aと、一対の側方フレーム4bと、後方フレーム4cを有する(図2を参照)。
前方フレーム4aは、シートクッション4の前部を構成する部材(平板状)である。また一対の側方フレーム4bは、それぞれシートクッション4の側部を構成する平板状の部材であり、シート側方において互いに対面状に配置する。そして後方フレーム4cは、フレーム部材4F後部を補強する部材(棒状)であり、一対の側方フレーム4bの間に橋渡し状に配設できる。
【0015】
(支持部材)
複数の支持部材(一対の第一支持部材11,第二支持部材12)は、いずれも線状の部材であり、係止部14と、支持部16を有する(図2を参照)。
各支持部材の材質は、乗員Xを支持可能であるかぎり特に限定しないが、着座側からの押圧(乗員Xの荷重)により撓み変形可能な材質(金属や樹脂等)が好ましい。
そして係止部14は、各支持部材両端の直線状の部位であり、フレーム部材4F上に取付けることができる。また支持部16は、各支持部材の途中に設けた凹み部位であり、各支持部材の一側(シート裏側)に向けて突出可能である。
【0016】
本実施例では、一対の第一支持部材11を、それぞれシートクッション4の前後(長手)方向に向かって延設する(図2〜図4を参照)。
このとき一対の第一支持部材11を、着座状態の乗員尻部を挟んで左右対称に(シート幅方向に)配置しつつ、それぞれ乗員脚部に沿って並列させる(乗員Xを支持可能に並列配置させる)。そして各第一支持部材11の中央(支持部16)をシート裏側に突出させつつ、各第一支持部材11の両端(係止部14)を、それぞれ前方フレーム4aと後方フレーム4cに固定する。
【0017】
つぎに第二支持部材12(他の支持部材)を、シートクッション4の幅方向に向かって延設しつつ、一対の第一支持部材11に交差状に配置(直交配置)する。
このとき第二支持部材12を、乗員Xの座骨結節の直下(最も乗員荷重のかかる部位)よりも後方に配置することが好ましい(図4を参照)。そして第二支持部材12の中央(支持部16)をシート裏側に突出させつつ、第二支持部材12の両端(係止部14)を、それぞれ側方フレーム4bに固定する。
【0018】
(クッション材)
クッション材4Pは、シート外形をなす部材(略長方形状)であり、乗員Xを弾性支持できる(図1及び図3を参照)。クッション材4Pの材質は特に限定しないが、ポリウレタンフォームなどの樹脂部材を例示できる。
本実施例のクッション材4Pは、着座部14aと、サポート部14bと、複数の隆起部位(中央部位20、側方部位30)と、複数の配置部位41,42と、裏打材50を有する。
着座部14aは、クッション材4Pの上面中央の部位(平坦)であり、サポート部14bは、着座部14a側方の突出部位である。また複数の隆起部位(中央部位20、側方部位30)は、いずれもクッション材4Pの裏面側から隆起する部位である。
本実施例では、クッション材の裏面形状(横断面視)がシート下方に凸の円弧形状をなす。そしてクッション材4Pの裏面側が、一対の第一支持部材11にて複数の隆起部位20,30に区画される。
【0019】
(中央部位)
中央部位20は、一対の支持部材11の間(シート中央)に配置可能な部位であり、第一部位21と、第二部位22を有する(図3及び図4を参照)。
本実施例では、中央部位20を、一対の支持部材11の間(シートクッション4中央)でシート前後に延設して、乗員尻部(好ましくは座骨結節)の直下に配置する。そして中央部位20が、シートクッション4中央に配置することで、通常運転時における乗員荷重を受け止めることができる。
また本実施例の中央部位20は、第二支持部材12によって、第一部位21と第二部位22に区画される。第一部位21は、中央部位20の前部を構成する部位であり、乗員尻部(好ましくは座骨結節)に対面可能である。また第二部位22は、第一部位21に隣接する部位であり、中央部位20の後部を構成する。
【0020】
(側方部位)
一対の側方部位30は、それぞれ中央部位20の側方(シート側方)に配置可能な部位であり、図示しない第三部位と第四部位を有する(図3を参照)。
本実施例の一対の側方部位30は、それぞれ中央部位20の隣接位置でシート前後に延設して、シート幅方向でみてシートクッション4側方に配置する。そして各側方部位30が、シートクッション4側方に配置することで、例えばコーナリング運転時における乗員荷重を受け止めることができる。
また本実施例の側方部位30は、上述の中央部位20と同様に、第二支持部材12によって第三部位と第四部位(いずれも図示省略)に区画される。
第三部位は、側方部位30の前部を構成する部位であり、第一部位21に隣接配置する。また第四部位は、側方部位30の後部を構成する部位であり、第二部位22に隣接配置する。
【0021】
(中央部位と側方部位の外形形状)
中央部位20と側方部位30は、共に半円筒状(断面視で円弧、放物線、懸垂線等)の外形形状を有して、クッション材4Pの裏面側から隆起する(図3及び図4を参照)。
中央部位20の外形形状は、シート幅方向で見て、クッション材4P中央を頂点とした円弧状(断面視)である。そして中央部位20は、第一支持部材11の配置位置(後述の第一配置部位41)を基端として凸面状に湾曲する。
さらに第一部位21は、シート前後方向で見て、シート略中央(乗員尻部に対面可能な位置)を頂点とした凸状の円弧状(断面視)である。また第二部位22は、第二支持部材12と後方フレーム4cの中間位置を頂点とした凸状の円弧状(断面視)である。そして第一部位21と第二部位22は、各々、第二支持部材12の配置位置(後述の第二配置部位42)を基端として凸面状に湾曲する。
【0022】
また側方部位30の外形形状は、シート幅方向で見て、第一支持部材11と側方フレーム4bの中間位置を頂点とした円弧状(断面視)である。そして側方部位30は、第一支持部材11と側方フレーム4bの配置位置(後述の第一配置部位41)を基端として凸面状に湾曲する。
さらに第三部位は、シート前後方向で見て、シート側部の略中央(乗員Xの側方位置)を頂点とした凸状の円弧状(断面視)である。また第四部位は、第二支持部材12と後方フレーム4cの中間位置を頂点とした凸状の円弧状(断面視)である。
【0023】
(配置部位)
第一配置部位41と第二配置部位42は、シートクッション4の着座側(着座部14a)に向かって凹む部位であり、各支持部材11,12を沈み込み状に配置可能である(図3及び図4を参照)。
第一配置部位41は、第一支持部材11を配置可能な部位であり、中央部位20と側方部位30の間に形成できる。また第二配置部位42は、第二支持部材12を配置可能な部位であり、中央部位20と側方部位30をシート幅方向に横断して形成できる。
【0024】
本実施例では、一対の第一配置部位41を、中央部位20の外形部(凸面状)と、側方部位30の外形部(凸面状)にて形成する。
各第一配置部位41は、中央部位20と側方部位30の間において、シート前後方向に延びて第一支持部材11に対面配置する。そして中央部位20の外形部と側方部位30の外形部が第一配置部位41を挟んで隆起することで、第一配置部位41に第一支持部材11を沈み込み状に配置できる。
また本実施例では、第二配置部位42(一部)を、第一部位21の外形部(凸面状)と、第二部位22の外形部(凸面状)にて形成する。さらに第二配置部位42(他部)を、第三部位の外形部(凸面状)と、第四部位の外形部(凸面状)にて形成する。第二配置部位42は、シート幅方向に延びて第二支持部材12に対面配置する。そして隣り合う部位の外形部が第二配置部位42を挟んで隆起することで、第二配置部位42に第二支持部材12を沈み込み状に配置できる。
【0025】
(裏打材)
裏打材50は、クッション材4Pよりも伸長性に劣る(伸びにくい)面状部材である(図3及び図4を参照)。
裏打材50として、布帛(織物、編物、不織布)や皮革や樹脂層を例示できる。なかでもスパンボンド不織布(例えば三井化学社製、商品名タフネル(登録商標))を裏打材50として好適に使用できる。
本実施例では、クッション材4Pの裏面側を裏打材50にて被覆する。そして後述するように、クッション材4Pの変形時に、裏打材50が収縮して元に戻ろうとすることで、クッション材4Pの反発力が発生することとなる(図3及び図4の矢印R1を参照)。
【0026】
ここで裏打材50の配設方法は特に限定しない。クッション材4P(成形後)の裏面に裏打材50を取付けることができ、クッション材4Pの成形時に裏打材50を取付けることもできる。
例えばクッション材4Pを成形する際に、成形型のキャビティ内に裏打材50(布帛等)を配置する。このとき裏打材50を、クッション材4Pの裏面形状(隆起形状)に倣った形状で張設することが望ましい。
そして成形型内に成形原料(溶融樹脂等)を流し込むことで、クッション材4Pを成形しつつ裏打材50を取付ける。このとき裏打材50(繊維の間)に、溶融樹脂が侵入固化(含浸)することで、クッション材4P裏面に裏打材50が一体化される。
【0027】
[クッション材の配設]
図2〜図4を参照して、クッション材4Pを、フレーム部材4F上に配置しつつ、複数の支持部材11,12で支持する。
本実施例では、一対の第一配置部位41に、各々、第一支持部材11を沈み込み状に配置するとともに、第二配置部位42に第二支持部材12を沈み込み状に配置する。そして中央部位20を、一対の第一支持部材11の間に配置するとともに、一対の側方部位30を、それぞれ第一支持部材11の外側(シート側方)に配置する。
このとき本実施例では、複数の支持部材11,12を沈み込み状に配置することで、複数の隆起部位(20,30等)の位置を安定的に規定できる。そして第一部位21を乗員尻部の直下に配置しつつ、第一部位21の周囲に複数の隆起部位(第二部位22、第三部位、第四部位)を配置する。
【0028】
[クッション材の支持性能]
上述のシート構成では、通常運転時などにおいて、乗員Xの押圧力によりクッション材4P(中央部位20)が潰れ変形することが懸念される(図3及び図4を参照)。
本実施例では、クッション材4Pに押圧力(乗員荷重)がかかることで、中央部位20が潰れ変形しつつ裏打材50を伸長させる。このとき裏打材50が収縮しつつ元に戻ろうとすることにより(裏打材50の収縮力により)、中央部位20が元の形状に戻ろうとすることで反発力(乗員Xを押し上げる向きの力)が発生する(図3及び図4の矢印R1を参照)。
このため本実施例では、通常運転時などにおいてクッション材4Pの受ける押圧力を、中央部位20(特に第一部位21)の反発力にて極力相殺できる。さらに本実施例では、複数の隆起部位(第二部位22〜第四部位)を、乗員Xを囲むよう(包むように)に設けたことで、乗員Xを安定的に支持できる。
【0029】
また上述のシート構成では、コーナリング走行時等に乗員の荷重移動が生じた場合、クッション材4P(側方部位30)に押圧力が作用することがある。
このとき本実施例では、クッション材4P(側方部位30)に押圧力がかかることで、側方部位30が潰れ変形しつつ裏打材50を伸長させる。このとき裏打材50の収縮力が働くことで、側方部位30に反発力が発生することとなる(図3の矢印R1を参照)。
このため本実施例では、コーナリング走行時などにおいてクッション材4Pの受ける押圧力を、側方部位30の反発力にて極力相殺できる。
【0030】
以上説明したとおり本実施例では、複数の隆起部位(20,30等)を、乗員Xの直下及び周囲(側方位置、前後位置)に配置する。そして複数の隆起部位(20,30等)の反発力により、クッション材4Pの潰れ変形を防止又は低減することで、シートの着座性を良好に維持できる。
また本実施例では、複数の支持部材11,12を沈み込み状に配置することで、複数の隆起部位(20,30等)の位置を安定的に規定できる。
このため本実施例によれば、複数の隆起部位(20,30等)により、クッション材4Pの支持性能をより向上させることができる。
【0031】
<実施例2>
本実施例のシートバック6は、実施例1のシートクッション4とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造は対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。
シートバック6は、上述の構成(6F,6P,6S)と、複数の支持部材11a,12aと、複数の配置部位(42等)を有する(図1、図2及び図4を参照)。
【0032】
(フレーム部材)
フレーム部材6F(略逆U字状の枠体)は、上部フレーム6aと、一対の側部フレーム6bと、リクライニング軸Rを有する(図2を参照)。
上部フレーム6aは、シート上部をなす平板部材であり、一対の側部フレーム6b(図示省略)は、それぞれシート側部をなす平板部材である。
そしてリクライニング軸Rは、シート下部において一対の側部フレーム6b間に橋渡しされた棒状部材であり、シートクッション4に対するシートバック6の起倒動作(回転動作)の中心となる。
【0033】
(支持部材)
複数の支持部材(一対の第一支持部材11a,第二支持部材12a)は、いずれも線状の部材であり、係止部14を有する(図2を参照)。
本実施例では、一対の第一支持部材11aを、それぞれシートバック6の上下(長手)方向に向かって延設する。
このとき一対の第一支持部材11aを、着座状態の乗員背骨を挟んで左右対称に(シート幅方向に)配置しつつ、それぞれ乗員背部に沿って並列させる(乗員Xを支持可能に並列配置させる)。そして各第一支持部材11aの両端(係止部14)を、それぞれ上部フレーム6aとリクライニング軸Rに固定する。
つぎに第二支持部材12a(他の支持部材)を、シートバック6の幅方向に向かって延設しつつ、一対の第一支持部材11aに交差状に固定(直交配置)する。このとき第二支持部材12aを、乗員肩甲骨の対面位置(最も乗員荷重のかかる部位)よりも上方に配置することが好ましい。
【0034】
(クッション材)
本実施例では、第一支持部材11a及び第二支持部材12aによって、クッション材6Pの裏面側を、複数の隆起部位(中央部位20a,一対の側方部位等)に区画する(図4を参照)。
そして中央部位20aと各側方部位(図示省略)は、ともに半円筒状の外形形状を有して、クッション材6Pの裏面側から隆起する。
【0035】
本実施例の中央部位20aは、一対の第一支持部材11aの間に配置して、シートバック6中央でシート上下に延びる。そして中央部位20aが、シートバック6中央(乗員背部の対面位置)に配置することで、通常運転時における乗員荷重を受け止めることができる。
また中央部位20aは、第二支持部材12aによって、第一部位21aと第二部位22aに区画される。第一部位21aは、中央部位20aの下部を構成する部位であり、乗員肩甲骨に対面可能である。また第二部位22aは、中央部位20aの上部を構成する部位であり、第一部位21aに隣接配置する。
また一対の側方部位(図示省略)は、それぞれシートバック6側方でシート上下に延びる。そして各側方部位が、シートバック6側方(乗員側方)に配置することで、例えばコーナリング運転時における乗員荷重を受け止めることができる。
【0036】
(配置部位)
第一配置部位(図示省略)と第二配置部位42aは、着座側に向かって凹む部位であり、各支持部材を沈み込み状に配置できる(図2及び図4を参照)。
本実施例では、一対の第一配置部位(図示省略)を、中央部位20aの外形部(凸面状)と、一対の側方部位の外形部(凸面状)にて形成する。各第一配置部位は、中央部位20aと側方部位の間において、シート上下方向に延びて第一支持部材11aに対面配置する。
また第二配置部位42aを、第一部位21aの外形部(凸面状)と、第二部位22aの外形部(凸面状)にて形成する。第二配置部位42aは、シート幅方向に延びて第二支持部材12aに対面配置する。
【0037】
[クッション材の支持性能]
本実施例では、通常運転時などにおいてクッション材6P(中央部位20a)の受ける押圧力を、中央部位20aの反発力(裏打材50の収縮力)にて極力相殺できる(図4の矢印R2を参照)。このとき本実施例では、第一部位21aと第二部位22aを乗員肩甲骨の周囲に(包むように)設けたことで、乗員Xを安定的に支持できる。
また本実施例では、コーナリング走行時などにおいてクッション材6P(側方部位)の受ける押圧力を、側方部位の反発力にて極力相殺できる。
以上説明したとおり本実施例では、複数の隆起部位(20a等)を、乗員Xの周囲(側方位置、上下位置)に配置する。そして複数の隆起部位(20a等)の反発力により、クッション材6Pの潰れ変形を防止又は低減することで、シートの着座性を良好に維持することができる。
【0038】
本実施形態の車両用シート2は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、一対の第一支持部材11(11a)を車両用シート2に配設する例を説明したが、3本以上の第一支持部材を配設できる。この場合には、一対の第一支持部材の側方位置に他の第一支持部材を配置することが望ましい。そして第一支持部材の配設数に応じて、複数の突出部位と第一配置部位をクッション材に形成できる。
また第一支持部材は、フレーム部材に着脱不能に取付けてもよく、着脱可能に取付けてもよい。
【0039】
(2)また本実施形態では、単数の第二支持部材12を車両用シート2に配設する例を説明したが、複数の第二支持部材を配設できる。例えば一対の第二支持部材を配設する場合、一方の第二支持部材をシート後方に配置するとともに、他方の第二支持部材をシート前方に配置する。そして一対の第二支持部材により、乗員尻部をシート前後から囲むことができる。そして第二支持部材の配設数に応じて、中央部位又は側方部位を複数に分割する(第二配置部位を複数形成する)ことができる。
また第二支持部材は、側方フレーム(側部フレーム)に着脱不能に取付けてもよく、着脱可能に取付けてもよい。また同様に第二支持部材は、第一支持部材に着脱不能に取付けてもよく、着脱可能に取付けてもよい。
【0040】
(3)また本実施形態では、第二支持部材12を車両用シート2に配設する例を説明したが、第二支持部材12を省略することもできる。
【符号の説明】
【0041】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
11 第一支持部材
12 第二支持部材
14 係止部
16 支持部
20 中央部位
21 第一部位
22 第二部位
30 側方部位
41 第一配置部位
42 第二配置部位
50 裏打材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションやシートバックなどのシート構成部材を有するとともに、前記シート構成部材が、シート骨格をなすフレーム部材と、シート外形をなして弾性的に乗員を支持可能なクッション材と、前記クッション材を支持可能な線状の一対の支持部材とを有する車両用シートにおいて、
前記一対の支持部材を前記フレーム部材に取付けて、着座状態の乗員を支持可能にシート幅方向に並列配置し、
着座側とは異なる前記クッション材の裏面側を、前記クッション材よりも伸長性に劣る裏打材にて被覆する構成とし、
前記クッション材の裏面側が、前記一対の支持部材によって、前記一対の支持部材の間に配置する中央部位と、前記中央部位の両側に配置する一対の側方部位とに区画され、
前記中央部位と前記側方部位が、各々、前記クッション材の裏面側から隆起する半円筒状の外形形状を有するとともに、前記中央部位の外形部と前記各側方部位の外形部によって、前記着座側に向かって凹む配置部位を形成することにより、前記支持部材を沈み込み状に配置可能とした車両用シート。
【請求項2】
前記シート構成部材が、前記一対の支持部材に対して交差状に配置する他の支持部材を有するとともに、前記中央部位が、前記他の支持部材によって、前記乗員尻部又は乗員肩甲骨に対面可能な第一部位と、前記第一部位に隣接する第二部位に区画され、
前記第一部位の外形部と前記第二部位の外形部によって、前記着座側に向かって凹む配置部位を形成することにより、前記他の支持部材を沈み込み状に配置可能とした請求項1に記載の車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−496(P2013−496A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137225(P2011−137225)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】