説明

車両用ドアのサッシュ組み付け構造

【課題】ガラスサポートにロアサッシュを連結することで、ドアインナパネルの取付穴に挿通したねじをロアサッシュ下端に容易に締結できる車両用ドアのサッシュ組み付け構造を提供する。
【解決手段】ドア1の窓開口を囲む窓枠部10を成すと共にランチャンネル7の縦向き部を支持する開口対向壁部材14を備え、開口対向壁部材に連結穴16を形成し、連結穴に先端部182が嵌挿される上方連結片18を延出形成するロアサッシュ17を備え、延出部183には連結穴の上縁部に当接する段部184と該段部よりロアサッシュ側に連結穴の穴幅より大きな横幅Lbを有する一対の膨出部186を形成し、連結穴に上方連結片が差し込まれ一対の膨出部が連結穴の側縁部163に当接し上縁部161に段部184が当接した際に、ロアサッシュの下端に設けたねじ穴21がドア本体側の取付穴22に挿通したねじ部材Vと位置合わせされ締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアにおけるガラスサポート構造であるサッシュの組み付け構造、特に、ウインドガラス位置規制用のガラスサポートにロアサッシュを組み付ける車両用ドアのサッシュ組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用ドアとして、車両用ドアをインナパネル及びアウタパネルとを重ね一体化することでドア主要部とその上方の窓開口を形成している。
窓開口は窓ガラスの上下昇降により開閉され、この窓ガラスが前後の縦枠部及びその上端を結ぶ上縁部とからなる窓サッシュに支持されることで窓開口を閉鎖する全閉状態に保持し、前後の縦枠部の下端側に接続された前後のロアサッシュに窓ガラスの前後縁が支持されることで窓開口を全開状態に保持している。
ここで、窓開口の周縁部が前後の縦サッシュ及びその上端を結ぶ上縁サッシュとで形成され、その前後縦サッシュの下端部がインナパネル及びアウタパネルを重ね一体化したドア主部の前後の上縁部に溶着されるサッシュ溶着構成を採ったものが知られている。なお、このような従来技術の一例が特許文献1に開示される。
この場合、ドア主部内に位置するように溶着された前後の縦サッシュの下端部には別部材であるロアサッシュがその上端側に設けられたサッシュ連結部材を介して組みつけられ、これにより形成された上下に連続した窓ガラス案内路にランチャンネルが取り付けられ、窓ガラスの昇降を容易化している。
【0003】
一方、インナパネル及びアウタパネルを一体的に重ねてドア主部とその上部の窓開口5を囲む窓枠部とを連続して一体形成したパネル一体構成を採ったものが知られている。この場合、窓開口を囲む窓枠部のうちの前後縦枠部はインナパネル及びアウタパネル側の各フランジ部とその前後の隙間にはめ込まれるガラスラン(ランチャンネル)と、このガラスランの背面部に当接して位置決めする機能を有したインナパネル側のガラスサポートとを備える。なお、このような従来技術の一例が特許文献2に開示される。
ここでは、縦長のガラスサポートの下端がドア主部側のベルトライン近傍に位置し、その下端部に形成された連結穴に別部材であるロアサッシュの上方に突設されたフック状の係止金具が係止されることで、ロアサッシュの上端がガラスサポートの下部に連結され、ここにガラスランの下方延出部が取り付け支持される。これにより窓ガラス案内路が上下に連続形成され、窓ガラスの昇降が容易化される。
【0004】
更に、特許文献2と同様に、図10(a)、(b)に示すサッシュ組み付け構造では、窓開口200と対向する縦枠部210の一部を成すガラスサポート220の下端に連結穴230を形成し、この連結穴230にロアサッシュ240の上端より延出する先細状の先端を有する上方連結片250を下方より上方に向けて嵌挿させた構成が知られている。
ここでは、連結穴230に上方連結片250を嵌合支持させ、その上でロアサッシュ240の下端のねじ穴260とインナパネル270の取付穴280とを位置合わせして、ねじによる締結処理が成され、ロアサッシュ240のドア本体への組み付けが成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−123763号公報
【特許文献2】特開2003−312264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、断面コ字型の縦サッシュの下端部にロアサッシュの上端側のサッシュ連結部材を外嵌めするものとなっており、断面コ字型の縦サッシュを用いない構造、例えば、特許文献2のようにインナパネル側のガラスサポートにガラスランが係合支持された構成のものに適用することはできない。
一方、特許文献2では、縦長のガラスサポートの下端の連結穴にロアサッシュのフック状の係止金具を係止した上で、下方に延びるロアサッシュの下端側をインナパネルにボルト締結している。しかし、この場合、ロアサッシュの上端側のフック状の係止金具の形状のばらつきや、係止金具がガラスサポートの連結穴に嵌着する形態にばらつきが生じやすく、ロアサッシュの下端側のねじ穴とインナパネルの取付穴の位置合わせに手間取り、ロアサッシュの取り付け作業性が低い。
【0007】
更に、図10(a)、(b)に示すように、ロアサッシュ240の上端の上方連結片250が、ガラスサポート220の下端の連結穴230に略上向きに差し込まれただけの構成では、差込量のずれにより上下方向Zのばらや前後方向Xの位置にばらつきが生じ易い。このようにロアサッシュ上端の連結位置がばらつくことで、ロアサッシュ240の下端側のねじ穴260とインナパネル270の取付穴280との位置合わせに手間取り、ロアサッシュの取り付け作業性が低いものとなっている。
本発明は以上のような課題に基づきなされたもので、目的とするところは、窓開口と対向する縦枠の一部を成すガラスサポートの連結穴に、ロアサッシュ上端部を位置ずれなく連結することで、ドアインナパネルの取付穴に挿通したねじをロアサッシュ下端のねじ穴に容易に位置合わせでき、ロアサッシュの締結作業性が向上する車両用ドアのサッシュ組み付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1の発明は、車両用ドアの窓開口を囲む窓枠部の一部を成すと共に窓ガラス案内用のランチャンネルの縦向き部を支持する開口対向壁部材を備え、前記開口対向壁部材の下部に連結穴を形成し、前記連結穴に先端部が嵌挿される上方連結片を上端より延出形成するロアサッシュを備え、前記上方連結片が前記連結穴の穴側縁間に嵌挿可能な前記先端部と該先端部より前記ロアサッシュの上端まで延出する延出部とを有し、前記延出部には前記連結穴の上縁部に当接する段部と該段部より前記ロアサッシュの上端側に前記連結穴の穴幅より大きな横幅を有する一対の膨出部を形成し、前記連結穴に前記上方連結片が差し込まれ一対の膨出部が連結穴の穴側縁に当接し前記上縁部に段部が当接した際に、前記ロアサッシュの下端に設けたねじ穴が前記ドア本体側の取付穴に挿通したねじ部材と位置合わせされ締結される、ことを特徴とする。
【0009】
本願請求項2の発明は、請求項1記載の車両用ドアのサッシュ組み付け構造において、前記上方連結片の延出部は長手方向に沿って湾曲形成されており、前記連結穴に前記先端部が差し込まれた際に前記上縁部に段部が当接すると共に一対の膨出部が連結穴の穴側縁の上端側に当接する、ことを特徴とする。
【0010】
本願請求項3の発明は請求項1又は2記載の車両用ドアのサッシュ組み付け構造において、前記連結穴の穴周縁部のうち、上側の上穴側縁部が下側の下穴側縁部より段部を介し前記窓開口側に突き出し形成された、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、連結穴にロアサッシュの上端より延出する上方連結片を差し込み、差込量を増すと、この際、上方連結片の段部が連結穴の上縁部に当接することで高さ方向の位置規制が成され、上方連結片の一対の膨出部が連結穴の穴側縁に当接することで前後方向の位置規制が成され、連結穴の穴側縁に上方連結片の両側縁部が当接することで車幅方向の位置規制が成され、これによりロアサッシュの上部の位置決めが成され、同時に下端側の締結用のねじ穴がドア本体側の取付穴に挿通したねじとの位置合わせがなされ、互いを容易にねじ止めできるので、下端側のドアパネルへの締結作業が容易化され、その後で窓ガラス案内用のランチャンネルを容易に取り付け支持することができる。
【0012】
請求項2の発明は、上方連結片の先端部が連結穴に差し込まれた際に延出部が長手方向に沿って湾曲形成されているので、ロアサッシュの延出方向をドア本体の下方側に容易に向けることができ、しかも、連結穴の上縁部に段部を当接し一対の膨出部を穴側縁に当接する状態を容易に保持でき、その状態でロアサッシュの上端の上下位置を容易に特定でき、これに応じて、ロアサッシュの下端側の締結用のねじ穴をドア本体側の取付穴に容易に対向させ、取付穴に挿通したねじとの位置合わせが容易化される。
【0013】
請求項3の発明は、連結穴の段部及び上側の上穴側縁部に対して、上方連結片の先端部を下方側より上方側に向けて容易に差込み嵌合させることができ、組み付け作業が容易化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としての車両用ドアのサッシュ組み付け構造が適用されたドアの車外からの側面図である。
【図2】図1のドアの車内からの側面図である。
【図3】図1のドアの後縦枠部のガラスガイドの拡大側面図である。
【図4】図1のドアの窓枠部の断面図で、(a)は図1のA―A線断面図、(b)は図1のB―B線断面図、(c)は図1のC―C線断面図である。
【図5】図1のドアのガラスガイドの連結穴周りの斜視図で、(a)はロアサッシュ取り付け前を、(b)は取り付け後を示す。
【図6】図4(a)、(b)の連結穴に連結されるロアサッシュの上方連結片の斜視図である。
【図7】図4(a)、(b)のガラスガイドの連結穴とそこに連結されたロアサッシュの上方連結片の縦断面図である。
【図8】図1のドアのロアサッシュの下端部と、これがボルト止めされるインナパネルの部分の斜視図である。
【図9】図1のドアで用いるロアサッシュの上方連結片の正面図を示し、(a)は第1実施形態を、(b)は第2実施形態を示す。
【図10】従来のガラスガイドの連結穴周りの斜視図で、(a)はロアサッシュ取り付け前を、(b)は取り付け後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態である車両用ドアのサッシュ組み付け構造が適用された車両のサイドドア(以後単にドアと記す)について説明する。
このドア1は不図示の車両の側部の乗降口を開閉するものであり、ドアインナパネル2(図2参照)及びドアアウタパネル3(図1参照)を重ねることで、ドア主部4とこのドア主部4の上部に連続形成された窓開口5を囲む形状の窓枠部10とを一体形成する構成を採る。
ドアアウタパネル3及びドアインナパネル2に挟まれた内部空間には窓開口5を開閉する窓ガラス6と同窓ガラスを上下に案内するガイド溝を形成するランチャンネル7(図4参照)及び昇降駆動機構であるレギュレータ8、その他の不図示の開閉操作部材が収容される。
【0016】
図1、図2に示すように、ドアインナパネル2及びドアアウタパネル3が形成する上部の窓開口5の回りの窓枠部10は略閉断面構造を採り、剛性強化を図っている。窓枠部10は、前後の縦枠部11、12とこれらの上端を結ぶ上縁枠部13とを備え、これらを屈曲枠状に連続結合して形成される。
前後の縦枠部11、12と上縁枠部13とはほぼ同様の断面構成(図4参照)を採る。後縦枠部12では、ドアインナパネル2及びドアアウタパネル3の外周縁側200,300は互いに圧着された外フランジを形成するようプレス加工される。ドアインナパネル2及びドアアウタパネル3の窓開口5と対向する内縁側は互いに所定間隔を保持して対向するインナフランジ210、アウタフランジ310が形成される。インナフランジ210とアウタフランジ310の間には窓ガラス6を案内し、保持するガイド溝を形成するランチャンネル7が収容される。
【0017】
インナフランジ210には縦上ランチャンネル7の縦向き部の背部に当接して支持する縦ガラスガイド14の内フランジ141が溶着される。縦ガラスガイド14は、後縦枠部12の一部を成し、縦上ランチャンネル7の縦向き部を支持する開口対向壁部材を成すものであり、図1、3に示すように、後縦枠部12の長手方向である縦向き方向に連続形成される。
図4(a)に示すように、縦ガラスガイド14は内フランジ141とこれより屈曲して延出しランチャンネル7の背部に当接する支持部142と、支持部142より屈曲してドアアウタパネル3と干渉しないよう延出した上でドアインナパネル2の外インナフランジ210側の段部211に溶着される外フランジ143とを有する。
【0018】
前側の前縦枠部11では、図4(b)に示すように、後縦枠部12の場合とほぼ同様の断面構成を採るが、窓ガラス6の前屈曲部の形状に対応して、ドアインナパネル2及びドアアウタパネル3が形成する閉断面が比較的大きく形成されている。
ここでのドアインナパネル2及びドアアウタパネル3の外周縁側200,300は前端となる外フランジを形成するようプレス加工される。ドアインナパネル2及びドアアウタパネル3の内縁側は互いに対向するインナフランジ210a、アウタフランジ310aが形成され、これらの間にはランチャンネル7が収容される。
【0019】
図1、図4(b)に示すように、インナフランジ210aには屈曲ガラスガイド14aの内フランジ141aが溶着される。屈曲ガラスガイド14aは、前縦枠部11の長手方向に連続的に形成され、下端近くで傾斜状より垂直方向に屈曲して、窓ガラス6の前屈曲部の形状に対応している。図4(b)に示すように、屈曲ガラスガイド14aは内フランジ141aとこれより屈曲して延出し、ランチャンネル7の背部に当接する支持部142aと、支持部142aより屈曲してドアアウタパネル3と干渉しないよう前側に延出した上で外インナフランジ210a側の段部211aに溶着される外フランジ143aとを有する。なお、前縦枠部11のランチャンネル7は前縦枠部11の下部に連結される後述のロアサッシュ16aの下ランチャンネル710に付き合わされることで、窓ガラス6を上下に案内する前側のガイド溝を形成する。
【0020】
次に、後縦枠部12の縦ガラスガイド14とそれに連結されるロアサッシュ16の相対関係を更に説明する。
ここで、後縦枠部12の縦上ランチャンネル7はロアサッシュ16側の下ランチャンネル710に付き合わされることで、窓ガラス6を上下に案内する後側のガイド溝を形成するよう組み立てられる(図1、2参照)。
縦上ランチャンネル7を支持する後縦枠部12の縦ガラスガイド14は、図1、図3に示すように、後縦枠部12の上下方向全域に配備され、上端は上縁枠部13の後端と互いに溶着される。
【0021】
更に、縦ガラスガイド14はその下端において、内フランジ141が前方に延出する下端前方延出部141bを延出形成しており、支持部142が下方に向けて湾曲して延びて連結壁部142bを形成する。更に、外フランジ143は上下全域にわたり外インナフランジ210側の段部211に溶着される。
ところで、縦ガラスガイド14と対向する内フランジ210は、窓開口5のインナ側の下端縁部を形成するベルトラインインナフランジ201の後端と一体結合されてL字状の縁部を成して形成される。この部位に縦ガラスガイド14のL字形状を成した下端前方延出部141bおよび内フランジ141が重ねて溶着されることで、ドアインナパネル2側を補強している。
【0022】
次に、図5、図7に示すように、縦ガラスガイド14の支持部142の下端側はドア本体からの立ち上がり箇所に位置し、上下に湾曲して延びる連結壁部142bとして形成され、ここには矩形の連結穴16が形成される。
連結穴16はその上縁部161と所定量下側の下縁部162と、それらの間の左右側縁部163を備え、上下中間位置に穴前方に突き出す上突出部164を形成した上で穴後方に退却する段部165が形成される。
更に、連結穴16の下縁部162の下方に延びる下方退却壁166の下端が穴前方に突き出すよう湾曲して延出し、下突出部167を突き出し形成した上で退却しつつ下方端168に達している。
【0023】
ここで、図5(b)、図7に示すように、縦ガラスガイド(対向壁部材)14の連結穴16には後述するように、ロアサッシュ17の上端の上方連結片18が差し込み連結される。
図7、図9(a)に示すように、上方連結片18は縦ガラスガイド14の裏壁面であって連結穴16の上方に当接する先端181と、先端181より延出し連結穴16の内部に収容される部位である先端部としての先端湾曲部182と、先端湾曲部182よりロアサッシュ17の上端まで延出する延出部183とを備える。
延出部183の上端は連結穴16の上縁部161に当接し、横幅Bを有する段状ストッパ部184として形成される。更に、段状ストッパ部184よりロアサッシュ17側である下方側に湾曲して延出する湾曲部185が形成され、湾曲部185の近傍の左右端縁には一対の膨出部186が形成される。ここで、一対の膨出部186は連結穴16の穴幅Bb(>B)より大きな横幅Lbを有し、上突出部164に当接するよう形成される。
【0024】
ここでは、ロアサッシュ17の上側の位置決めと、下端側の締結用のねじ穴(図8参照)21がインナパネル(ドア本体側)2の取付穴22に挿通したボルトV(図8参照)との位置合わせが容易になされるように形成している。
即ち、本願発明ではロアサッシュ17の上方連結片18の形状と、縦ガラスガイド14の下端の連結壁部142bに設けた連結穴16の形状とを適宜設定することで、ねじ穴21と取付穴22に挿通したボルトVとの位置合わせを容易に行えるように両形状を設定する。
具体的には、上方連結片18の先端部としての先端湾曲部182を縦ガラスガイド14の連結穴16に差し込み、その先端湾曲部182の先端181を縦ガラスガイド14の裏壁面に当接すると共に、段状ストッパ部183が左右側縁部163に当接する状態で、ロアサッシュ17の上方連結片18の車幅方向である左右方向Yの位置が規制される。
【0025】
この際、連結穴16の段部165及び上側の左右側縁部163および上突出部164(上穴側縁部)に対して、上方連結片18の先端湾曲部182を下方側より上方側に向けて容易に差込み嵌合させることができ、組み付け作業が容易化される。
更に、延出部183の湾曲部185が長手方向に沿って湾曲形成されているので、ロアサッシュ17の延出方向をドア本体の下方側に容易に向けることができる。
しかも、連結穴16の上縁部161に段部165を当接し、一対の膨出部186を上側の左右側縁部163に当接する状態を容易に保持できるので、その状態でロアサッシュ17の上端の上下方向Z、前後方向Xの位置を容易に規制し特定できる。
【0026】
このように、ロアサッシュ17の上端側の位置を上方連結片18が規制した上で、次に、延出端部185の下方のロアサッシュ17の前後方向Xの傾斜角θ(図7参照)を変位させて、ロアサッシュ17の背部を下突出部167に当接させる。
この際、ロアサッシュ17の組み付け時において、ロアサッシュ17の上下端部はドアインナパネル2及びドアアウタパネル3を重ねたドア主部4の内部にあり、目視することが容易でない部位にある。しかし、ここでは、ロアサッシュ17の上端側の上方連結片18の連結穴16への位置合わせを兼ねた連結処理が容易に成される。このため、上端側が先に位置規制されたロアサッシュ17の下端側(図8参照)の上下方向Z、前後方向X、車幅方向である左右方向Yの位置規制が容易化され、ロアサッシュ17の下端側の締結用のねじ穴21をドア本体側の取付穴22に容易に対向させ、取付穴に挿通したボルトVとの位置合わせ、締結処理を容易に的確に行える。
【0027】
この後、後縦枠部12の縦上ランチャンネル7の下端とロアサッシュ17側の下ランチャンネル710(図4(c)参照)が適正状態で対向するよう容易に取り付け支持することができ、窓ガラス6を上下に案内するガイド溝を確実に形成できる。
上述のところでは、窓枠部10のうちの後縦枠部12の縦上ランチャンネル7の下端とロアサッシュ17側の下ランチャンネル710が適正状態で対向するよう取り付け支持する点を説明したが、図1、2に示すように、前の前縦枠部11はほぼ前後対称形状を成す。
ここで、前縦枠部11の長手方向に連続的に形成された屈曲ガラスガイド14aの下端に形成された連結穴16に対し、前側のロアサッシュ17aの上端の上方連結片18は、後側のロアサッシュ17の上方連結片18と同様に連結される。更に、前側のロアサッシュ17aの下端のねじ21aに、インナパネル2側の取付穴22aの外側より締結用のボルトVが差し込まれ、ねじ21aに達し、互いをねじ止めすることができる。
【0028】
これにより縦上ランチャンネル7の下端と前側のロアサッシュ16aの下ランチャンネル710を後側と前後対象の構成を用いて、同様に適正状態で対向するよう容易に取り付け支持でき、窓ガラス6の前側を上下に案内するガイド溝を確実に形成できる。
このように、ドア1はその窓枠部10側の前後の縦枠部11、12における屈曲ガラスガイド14a、縦ガラスガイド14に設けた連結穴16a、16に前後のロアサッシュ17a、17の上方連結片18a、18を連結することで、窓ガラス6の前後を上下に案内するガイド溝を確実に形成でき、この窓ガラス6を昇降駆動機構であるレギュレータ8を用いて容易に昇降作動できる。
【0029】
特に、後側のロアサッシュ17を用いて説明したように、上方連結片18を連結穴18に差し込むと、一対の膨出部186が上穴側縁部163に容易に当接し、その上で段状ストッパ部183が連結穴18の上縁部に当接することで、ロアサッシュ17の上端側の前後方向Xと高さ方向Zの位置規制がスムーズに成され、即ち、ロアサッシュの上部の位置決めがスムーズに成されるので、下端側の締結用のねじ穴21と取付穴22に挿通されたボルトVの締結作業もスムーズに行える。
上述のところで、縦ガラスガイド14の支持部142に形成された連結穴16に連結される上方連結片18は、図9(a)に示したように、延出部183の幅Lbを一対の膨出部186の幅Lbより狭めて、軽量化を図っていたが、場合により、図9(b)に第2実施形態として示すように、延出部185aの幅全体を膨出部186の幅Lbと同様に形成し、形状の簡素化を図っても良い。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ドア
5 窓開口
7、710 ランチャンネル
10 窓枠部
11、12 縦枠部
14 縦ガラスガイド(対向壁部材)
16 連結穴
161 上縁部
163 穴側縁
17 ロアサッシュ
18 上方連結片
181 先端部
183 段状ストッパ部(段部)
184 上当接部
1841 膨出部
185 延出端部
21 ナット
22 取付穴
B 上方連結片の横幅
Bb 連結穴の穴幅
Lb 横幅
V ねじ
X 前後方向
Y 車幅方向
Z 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの窓開口を囲む窓枠部の一部を成すと共に窓ガラス案内用のランチャンネルの縦向き部を支持する開口対向壁部材を備え、
前記開口対向壁部材の下部に連結穴を形成し、
前記連結穴に先端部が嵌挿される上方連結片を上端より延出形成するロアサッシュを備え、
前記上方連結片が前記連結穴に嵌挿可能な前記先端部と該先端部より前記ロアサッシュの上端まで延出する延出部とを有し、
前記延出部には前記連結穴の上縁部に当接する段部と該段部より前記ロアサッシュの上端側に前記連結穴の穴幅より大きな横幅を有する一対の膨出部を形成し、
前記連結穴に前記上方連結片が差し込まれ一対の膨出部が連結穴の穴側縁に当接し前記上縁部に段部が当接した際に、前記ロアサッシュの下端に設けたねじ穴が前記ドア本体側の取付穴に挿通したねじ部材と位置合わせされ締結される、ことを特徴とする車両用ドアのサッシュ組み付け構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドアのサッシュ組み付け構造において、
前記上方連結片の延出部は長手方向に沿って湾曲形成されており、前記連結穴に前記先端部が差し込まれた際に前記上縁部に段部が当接すると共に一対の膨出部が連結穴の穴側縁の上端側に当接する、ことを特徴とする車両用ドアのサッシュ組み付け構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用ドアのサッシュ組み付け構造において、
前記連結穴の穴周縁部のうち、上側の上穴側縁部が下側の下穴側縁部より段部を介し前記窓開口側に突き出し形成された、ことを特徴とする車両用ドアのサッシュ組み付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−35446(P2013−35446A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173914(P2011−173914)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)