説明

車両用ドアミラー

【課題】本発明は、車体パネル又は車体パネルに固定されたモールとリップ部との間に隙間をでき難くして、車体パネルに装着された際の継ぎ目の外観品質の向上を図っている。
【解決手段】ガスケット8のリップ部20が、ドア取付部6の上側の周壁面11に、矢印A方向から強く突き当てられた場合、リップ部20の後退時に伸縮部21は、大きく外に撓むように変形して、リップ部20が、ドア取付部6の周壁面11に当たる力をコントロールしている。従って、部品の精度のバラツキにより、前側ドア4に設けられたドア取付部6の周壁面11にリップ部20の先端部20aが弱く当たった場合でも強く当たった場合でも、リップ部20の先端部20aとドア取付部6の周壁面11とを確実に密着させることができる。そして、ドア取付部6の上側の周壁面11とリップ部20との間に隙間ができ難く、風切り音の発生防止や水密性の向上が図られ、ドアミラー1が前側ドア4に装着された際の継ぎ目の外観品質の向上にも寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアミラーベースと車体パネルとの間に配置されるガスケットを備えた車両用ドアミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2003−312361号公報がある。この公報に記載されたドアミラーに利用されているガスケットには、ガスケット本体部から起立するようにリップ部が形成され、このリップ部の先端部は、ドアミラーベースと車体パネルとの間で露出している。このようにリップ部を外部に露出させると、ドアミラーベースの上縁部が一定幅のリップ部で縁取りされることになり、ドアミラーの外観上の見栄えを向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−312361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のドアミラーでは、ドアミラーベースの縁取りのように外部に露出するリップ部の先端部は、厚みをもっているので、リップ部の先端部の厚み寸法にバラツキがあると、車体パネルとリップ部との間に隙間ができ易く、この微小な隙間によって、風切り音が発生し易く、しかも、ガスケットと車体パネルとの間に水が侵入し易くなるといった問題点がある。また、このような隙間は、ドアミラーと車体パネルとの繋ぎ目の外観品質を低下させてしまう。
【0005】
本発明は、車体パネル又は車体パネルに固定されたモールとリップ部との間に隙間をでき難くして、車体パネルに装着された際の継ぎ目の外観品質の向上を図るようにした車両用ドアミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体パネルに固定されるドアミラーベースと、ドアミラーベースに取り付けられるガスケットと、ドアミラーベースに取付けられるドアミラー本体と、を備えた車両用ドアミラーにおいて、
ガスケットは、
ドアミラーベースに当接するガスケット本体部と、
ドアミラーベースの周縁に沿って延在すると共に、ドアミラーベースの周縁から所定の幅で露出するリップ部と、
ガスケット本体部とリップ部との間に形成されて、一端がリップ部に対して第1の屈曲部を介して連結され、他端がガスケット本体部に対して第2の屈曲部を介して連結された伸縮部と、を有し、
第1の屈曲部と第2の屈曲部との間で、伸縮部とドアミラーベースとの間には隙間が形成され、リップ部は、このリップ部の幅方向に圧縮されるように先端部が、車体パネル又は車体パネルに固定されたモールに突き当てられることを特徴とする。
【0007】
この車両用ドアミラーに利用されるガスケットは、ドアミラーベースの周縁から所定の幅で露出するリップ部を有している。このリップ部は、リップ部の幅方向に圧縮されるように先端部が、車体パネル又は車体パネルに固定されたモールに突き当てられる。そして、伸縮部とドアミラーベースとの間に隙間が形成されているので、この突き当てによって、リップ部は、圧縮されながら隙間を減らす方向に後退する。更に、伸縮部が屈曲部分を介してドアミラーベース及びリップ部に連結されているので、リップ部の後退時に伸縮部を撓ませるように変形させることができる。これにより、ガスケット自体や車両部品(例えば、ドア、窓枠に固定されたモールなど)の精度のバラツキにより、リップ部の先端部が車体パネル又は車体パネルに固定されたモールに弱く当たった場合でも強く当たった場合でも、リップ部の先端部と車体パネル又は車体パネルに固定されたモールとを確実に密着させることができる。そして、車体パネル又は車体パネルに固定されたモールとリップ部との間に隙間ができ難く、風切り音の発生防止や水密性の向上が図られ、ドアミラーが車体パネルに装着された際の継ぎ目の外観品質の向上にも寄与している。
【0008】
また、第2の屈曲部における内面側には、リップ部の先端部の延在方向に沿って延在する凹部が形成されていると好適である。
伸縮部の肉厚を薄くすればする程、伸縮部は撓み易くなるが、薄くすると、リップ部の先端部を車体パネル又は車体パネルに固定されたモールに突き当てた際に、伸縮部に腰が無くなり、リップ部の先端部と車体パネル又は車体パネルに固定されたモールとの間に隙間が出やすくなる。そこで、伸縮部の他端とガスケット本体部とを連結する内側屈曲部に、リップ部の先端部の延在方向に沿って延在する凹部を形成することで、部品の精度のバラツキにより、リップ部の先端部が車体パネル又は車体パネルに固定されたモールに弱く当たった場合でも強く当たった場合でも、伸縮部に腰をもたせつつ、伸縮部の撓みを容易にコントロールすることができる。
【0009】
また、凹部は、断面C字状であると好適である。
このような構成を採用すると、伸縮部を確実に外側に湾曲させるように撓ませることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車体パネル又は車体パネルに固定されたモールとリップ部との間に隙間をでき難くして、車体パネルに装着された際の継ぎ目の外観品質の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両にドアミラーが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用ドアミラーに適用されるガスケット及びドアミラーベースを示す斜視図である。
【図3】ガスケットの要部拡大断面図である。
【図4】ガスケットが車体パネルに弱く突き当てられた状態を示す断面図である。
【図5】ガスケットが車体パネルに強く突き当てられた状態を示す断面図である。
【図6】車両にドアミラーが取り付けられた状態の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用ドアミラーの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、車両用ドアミラー1は、ハウジング2内にミラーが収容されてなるドアミラー本体3と、車体パネルのうちの前側ドア4のドア取付部6に固定されるドアミラーベース7と、ドアミラーベース7と前側ドア4との間に配置されて水密性を担保するための平板状のガスケット8とを備えている。このガスケット8は、弾性樹脂(例えばポリエチレン)で成形されていると共に、略三角形状をなす樹脂製のドアミラーベース7の周縁と略一致して延在する外形を有し、ドアミラーベース7とドア取付部6との隙間を埋めるためのものである。
【0014】
図2に示すように、ドア取付部6は、三角形状のガスケット本体部9に対面する平坦面10と、この平坦面10の周縁から前側ドア4の表面に掛けて傾斜して立ち上がる周壁面11とで、ガスケット8が収容されるように凹状に形成されている。この平坦面10には、下部に位置する第1の凹み部12と、上部に位置する第2の凹み部13とが形成され、第1の凹み部12には、ガスケット本体部9に形成された第1の凸部14が水密性を担保するように嵌合し、第2の凹み部13には、ガスケット本体部9に形成された第2の凸部15が水密性を担保するように嵌合する。
【0015】
さらに、第1の凹み部12と第2の凹み部13と第1の凸部14と第2の凸部15には、ドアミラーベース7の裏面に固定されたボルト(不図示)が貫通する貫通穴16が形成されている。このドアミラーベース7は、ガスケット本体部9及びドア取付部6を貫通したボルトにより、ドア取付部6の裏面側でナット(不図示)によって固定される。また、ガスケット8には、ドアミラーベース7の裏面に形成された位置決め用ピン(不図示)が嵌合する孔部18が形成されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、ガスケット8の上部には、前側ドア4のピラー4a(図1参照)側の周壁面11に当接させるためのリップ部20が形成されている。このリップ部20は、先細形状になっており、先端部20aから基部にかけて外側面20bは湾曲し、内側面20cは直線的に形成されている。また、ドアミラーベース7には、ドアミラーベース7の装着方向(矢印A参照)に対して略直交する方向に突出して周縁の一部をなすリップ当接部7aが形成され、このリップ当接部7aにリップ部20の外側面20bの基端側が当接する。そして、このリップ部20が、矢印Bで示されるように、幅方向に圧縮されるように、先端部20aは、前側ドア4に設けられたドア取付部6の周壁面11に突き当てられる。
【0017】
リップ部20は、ドアミラーベース7の上側の周縁に沿って延在すると共に、ドアミラーベース7の周縁から所定の幅(例えば、4〜10mm)で露出する。リップ部20とガスケット本体部9とは、リップ部20の基端より薄肉な伸縮部21によって連結されている。この伸縮部21は、ガスケット本体部9とリップ部20との間に形成され、伸縮部21の一端は、リップ部20に対して鈍角を作り出す第1の屈曲部D1を介して連結され、伸縮部21の他端は、ガスケット本体部9に対して鈍角を作り出す第2の屈曲部D2を介して連結されている。この伸縮部21は、略平行に延在するリップ部20とガスケット本体部9とを斜めに架け渡すように延在しているが、第1の屈曲部D1と第2の屈曲部D2とにより、リップ部20と伸縮部21とガスケット本体部9とが略S字クランク状になるように連結されている。
【0018】
ドアミラーベース7には、リップ当接部7aより内側に位置してドアミラーベース7の装着方向(矢印A参照)に突出するガスケット本体当接部7bが形成され、伸縮部21は、ガスケット本体当接部7bに対して隙間Sをもって離間させられている。この隙間Sは、第1の屈曲部D1と第2の屈曲部D2との間で、伸縮部21の全長に渡って延在する。さらに、第2の屈曲部D2における内面側には、リップ部20の先端部20a及び伸縮部21の延在する方向に沿って延在する断面C字状の凹部23が形成されている。
【0019】
このような車両用ドアミラー1に利用されるガスケット8は、ドアミラーベース7の周縁の一部をなすリップ当接部7aから所定の幅で露出するリップ部20を有し、このリップ部20は、前側ドア4に設けられたドア取付部6の上側の周壁面11に、矢印A方向から突き当てられる。図4に示すように、リップ部20は、矢印Bで示されるように、折れ曲がることなく圧縮されながら隙間Sを減らす方向に後退する。そして、伸縮部21には、矢印Cで示された方向に力が加わり圧縮される。伸縮部21のこのような圧縮は、リップ部20が、ドア取付部6の周壁面11に弱く突き当てられた場合に起こる。この状態が、設計時に予定された突き当て状態である。
【0020】
しかしながら、現実上、ガスケット8自体や車両部品(例えば、前側ドア4のピラー4aなど)の精度のバラツキが発生するので、図5に示されるように、リップ部20が、ドア取付部6の上側の周壁面11に、矢印A方向から強く突き当てられた場合、リップ部20の後退時に伸縮部21は、大きく外に撓むように変形して、リップ部20が、ドア取付部6の周壁面11に当たる力をコントロールすることができる。従って、ガスケット8自体や車両部品(例えば、前側ドア4のピラー4aなど)の精度のバラツキにより、前側ドア4に設けられたドア取付部6の周壁面11にリップ部20の先端部20aが予定よりも強く当たった場合でも、リップ部20の先端部20aとドア取付部6の周壁面11とを確実に密着させることができる。そして、ドア取付部6の上側の周壁面11とリップ部20との間に隙間ができ難く、風切り音の発生防止や水密性の向上が図られ、ドアミラー1が前側ドア4に装着された際の継ぎ目の外観品質の向上にも寄与している。
【0021】
また、図4に示された状態を設計状態にしているので、前側ドア4のピラー4aにリップ部20の先端部20aが更に弱く突き当たった場合や、ガスケット8自体や車両部品(例えば、前側ドア4のピラー4aなど)の精度誤差が最大になって、前側ドア4のピラー4aとリップ部20の先端部20aとが点接触に近いような場合(図3参照)でも、前述した効果を発揮し得る。
【0022】
また、伸縮部21の肉厚を薄くすればする程、伸縮部21は撓み易くなるが、薄くすると、リップ部20の先端部20aをドア取付部6の上側の周壁面11に突き当てた際に、伸縮部21に腰が無くなり、リップ部20の先端部20aとドア取付部6の上側の周壁面11との間に隙間が出やすくなる。そこで、第2の屈曲部D2における内面側に設けられた断面C字状の凹部23によって、部品の精度のバラツキにより、リップ部20の先端部20aがドア取付部6の上側の周壁面11に弱く当たった場合でも強く当たった場合でも、伸縮部21に腰をもたせつつ、伸縮部21の撓みを容易にコントロールすることができる。そして、凹部23の断面をC字状にすることで、伸縮部21を確実に外側に湾曲するように撓ませることができる。
【0023】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、リップ部20は、ガスケット8の全周にあっても、上側又は下側だけであっても所期の目的を達成することができる。
【0024】
図6に示すように、リップ部20の先端部20aは、前側ドア4のピラー4aに固定されたメッキの装飾部材をなすモール30等に突き当てられる場合がある。
【符号の説明】
【0025】
1…車両用ドアミラー、3…ドアミラー本体、4…前側ドア(車体パネル)、7…ドアミラーベース、8…ガスケット、9…ガスケット本体部、20…リップ部、20a…リップ部の先端部、21…伸縮部、23…凹部、30…モール、D1…第1の屈曲部、D2…第2の屈曲部、S…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに固定されるドアミラーベースと、前記ドアミラーベースに取り付けられるガスケットと、前記ドアミラーベースに取付けられるドアミラー本体と、を備えた車両用ドアミラーにおいて、
前記ガスケットは、
前記ドアミラーベースに当接するガスケット本体部と、
前記ドアミラーベースの周縁に沿って延在すると共に、前記ドアミラーベースの周縁から所定の幅で露出するリップ部と、
前記ガスケット本体部と前記リップ部との間に形成されて、一端が前記リップ部に対して第1の屈曲部を介して連結され、他端が前記ガスケット本体部に対して第2の屈曲部を介して連結された伸縮部と、を有し、
前記第1の屈曲部と前記第2の屈曲部との間で、前記伸縮部と前記ドアミラーベースとの間には隙間が形成され、前記リップ部は、このリップ部の幅方向に圧縮されるように先端部が、前記車体パネル又は前記車体パネルに固定されたモールに突き当てられることを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項2】
前記第2の屈曲部における内面側には、前記リップ部の前記先端部の延在方向に沿って延在する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ドアミラー。
【請求項3】
前記凹部は、断面C字状であることを特徴とする請求項2記載の車両用ドアミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162002(P2011−162002A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25357(P2010−25357)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】