説明

車両用ドア構造

【課題】必要な部位の剛性確保と軽量化とを効率よく実現することができる車両用ドアを提供する。
【解決手段】ラチェットリンフォースメント12を車両(ドア本体2)の上下方向に延在させて窓肩リンフォースメント20に連結し、ドア本体2の上方寄りでアウタパネル7を補剛するパネルリンフォースメントアッパ40の先端部(一端部)を窓肩リンフォースメント20の中途に連結すると共に、パネルリンフォースメントアッパ40の後端部(他端部)をラチェットリンフォースメント12の下部(下端部)に連結し、ドア本体2を側面視した状態において窓肩リンフォースメント20とラチェットリンフォースメント12とパネルリンフォースメントアッパ40とで囲まれた高補剛領域45を形成し、この高補剛領域45内に対応する位置にアウタハンドル46を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ドア上部についての剛性確保を効率よく行うための車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアにおいては、側面衝突時に入力される衝撃を、ヒンジやラチェット等を介して車体側のピラー等に伝達することにより、ドア上部の変形を抑制し、側面衝突から乗員を保護する構造が採用されている。
【0003】
従って、この種の車両用ドアでは、側面衝突時において、アウタパネル等の変形がドアハンドル(アウタハンドル)の近傍まで及ぶことを防止し、ラチェットによるストライカとの係合状態を的確に維持することが重要となる。そこで、例えば、特許文献1には、ドア内の上部に補強用のインパクトビームアッパを配設し、このインパクトビームアッパを、インナパネルに沿って配設されるアッパリンフォースで支持してフレーム状の補強部を構成することにより、ドア上部を補剛する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−37401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、ドアの上部を車体前後方向全域に渡ってインパクトビーム等で補剛した場合、構造の複雑化や重量の増加等を招く虞がある。特に、近年では、燃費向上等の観点から車両の軽量化が強く求められており、車両用ドアにおいても、必要な部位の剛性確保と軽量化とを効率よく実現することが求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、必要な部位の剛性確保と軽量化とを効率よく実現することができる車両用ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、窓肩部に沿って車両の前後方向に延在する窓肩リンフォースメントと、ラチェット取付部を補剛するラチェットリンフォースメントと、アウタパネルの内面に沿って配設されるパネルリンフォースメントと、を備え、前記ラチェットリンフォースメントを車両の上下方向に延在させて前記窓肩リンフォースメントに連結し、前記パネルリンフォースメントの一端部を前記窓肩リンフォースメントの中途に連結すると共に、前記パネルリンフォースメントの他端部を前記ラチェットリンフォースメントの下部に連結し、側面視した状態において、前記窓肩リンフォースメントと、前記ラチェットリンフォースメントと、前記パネルリンフォースメントとで囲まれた領域内に、前記ラチェットを車外側から動作させるアウタハンドルを配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ドア構造によれば、必要な部位の剛性確保と軽量化とを効率よく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アウタパネルを取り外して車両用ドアの要部を示す側面図
【図2】図1の要部を示す拡大図
【図3】図1のIII−III線に沿う車両用ドアの要部断面図
【図4】図1のIV−IV線に沿う車両用ドアの要部断面図
【図5】図1のV−V線に沿う車両用ドアの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はアウタパネルを取り外して車両用ドアの要部を示す側面図、図2は図1の要部を示す拡大図、図3は図1のIII−III線に沿う車両用ドアの要部断面図、図4は図1のIV−IV線に沿う車両用ドアの要部断面図、図5は図1のV−V線に沿う車両用ドアの要部断面図である。
【0011】
図1乃至図5に示す本実施形態の車両用ドア1は、例えば、車体の後席側に開口するドア開口部(図示せず)を開閉するリヤドアであり、この車両用ドア1は、ドア本体2と、このドア本体2の上部に連設された窓枠3とを有する。
【0012】
ドア本体2は、車幅方向内側に位置するインナパネル6と、車幅方向外側に位置するアウタパネル7とが接合されて要部が構成されている。
【0013】
インナパネル6は、例えば、鋼板を用いた板金部材で構成され、その前後縁辺部及び下縁辺部には、アウタパネル7と接合するためのフランジ部6aが形成されている。また、インナパネル6には、フランジ部6aの内側で車室側に凹設する凹部6bが形成されている。
【0014】
このインナパネル6の上部には、ベルトラインリンフォースメント10(図3参照)が設けられている。ベルトラインリンフォースメント10は、例えば、板金製の長尺な中空部材で構成され、ドア本体2の窓肩部に沿って車両の前後方向に延在されている。
【0015】
また、インナパネル6は、ドア本体2の平面視形状に対して後部上側の領域が一部欠落された形状をなしており、この欠落領域には、例えば、インナパネル6よりも厚板の板金部材で構成されたラチェットリンフォースメント12が連設されている。ラチェットリンフォースメント12はドア本体2の上下方向に所定の長さを有して延在する部材で構成され、このラチェットリンフォースメント12には、インナパネル6のフランジ部6a及び凹部6bに倣ってフランジ部12a及び凹部12bが折曲形成されている。このラチェットリンフォースメント12は、インナパネル6に対し、前側縁辺部が一部重畳された状態で、スポット溶接(スポット溶接部13)によって接合されている。そして、ラチェットリンフォースメント12上に設定されたラチェット取付部14には、車体側に設けられたストライカ(図示せず)と係脱可能なラチェット15が固設されている。
【0016】
ここで、図2に示すように、本実施形態において、ラチェットリンフォースメント12は、上部側がインナパネル6の上方に突出する位置まで延設されており、この延設部によって窓枠3の後側サッシュ31を支持する。すなわち、本実施形態において、ラチェットリンフォースメント12は後側サッシュ31を支持するガセットとしての機能を有し、このラチェットリンフォースメント12には、後側サッシュ31がスポット溶接(スポット溶接部51)によって接合されている。
【0017】
なお、図4に示すように、インナパネル6の前側上部には、窓枠3の前側サッシュ30が、ガセット35と共に、スポット溶接(スポット溶接部50)によって接合されている。
【0018】
また、インナパネル6の上部には、アウタパネル7の窓肩部を補剛するための窓肩リンフォースメント20が設けられている。図1に示すように、窓肩リンフォースメント20は、ドア本体2の窓肩部に沿って延在する長尺な板金部材で構成されている。この窓肩リンフォースメント20は、ベルトラインリンフォースメント10に対し、車幅方向外側にて所定間隔隔てた状態で対向配置され、その前端部がインナパネル6の前部に接合されると共に、後端部がラチェットリンフォースメント12に接合されている。
【0019】
具体的には、例えば、図4に示すように、窓肩リンフォースメント20の前端部は車幅方向内側に折曲され、前側サッシュ30に対し、アーク溶接(アーク溶接部52)によって接合されている。さらに、窓肩リンフォースメント20の前端部は、インナパネル6に対し、前側サッシュ30及びガセット35と共にスポット溶接(スポット溶接部53)によって接合されている。これらにより、窓肩リンフォースメント20の前端部は、間接的及び直接的に、インナパネル6の前部に接合されている。
【0020】
一方、例えば、図5に示すように、窓肩リンフォースメント20の後端部は、車幅方向内側に折曲され、後側サッシュ31に対し、アーク溶接(アーク溶接部54)によって接合されている。これにより、窓肩リンフォースメント20の先端は、間接的に、ラチェットリンフォースメント12に接合されている。
【0021】
さらに、アウタパネル7を内面に沿って補剛するためのパネルリンフォースメントとして、図1に示すように、ドア本体2の内部には、パネルリンフォースメントアッパ40とパネルリンフォースメントロア41が設けられている。
【0022】
パネルリンフォースメントアッパ40は、主として、ドア本体2の上部後寄りにおいてアウタパネル7を補剛するためのリンフォースメントであり、このパネルリンフォースメントアッパ40の一端部(前端部)は、窓肩リンフォースメント20の中途に連結されている。一方、パネルリンフォースメントアッパ40の他端部(後端部)は、ラチェット15よりも下方側において、ラチェットリンフォースメント12とインナパネル6に跨って連結されている。これにより、パネルリンフォースメントアッパ40は、窓肩リンフォースメント20の中途から後方に向かって所定の俯角で傾斜するようインナパネル6内に架設されている。
【0023】
また、パネルリンフォースメントロア41は、例えば、インナパネル6の高さ方向略中央よりもやや下側において、インナパネル6の前縁辺部から後縁辺部にかけて架設されている。なお、本実施形態において、パネルリンフォースメントロア41は、パネルリンフォースメントアッパ40が傾斜して配設されたことに伴い、インナパネル6の前方から後方に向かって所定の俯角で傾斜されている。すなわち、パネルリンフォースメントロア41は、パネルリンフォースメントアッパ40との間隔が過剰に離間することを防止するため、所定の俯角で傾斜されている。
【0024】
アウタパネル7は、例えば、鋼板を用いた板金部材で構成され、その縁辺部がインナパネル6及びラチェットリンフォースメント12とフランジ接合することにより中空のドア本体2を構成する。
【0025】
このアウタパネル7の内面には、窓肩リンフォースメント20、パネルリンフォースメントアッパ40、及び、パネルリンフォースメントロア41等が当接され、これら当接部の要所が、構造用接着剤等を介して適宜接着されることにより、アウタパネル7の剛性が確保されている。
【0026】
この場合において、パネルリンフォースメントアッパ40が窓肩リンフォースメント20及びラチェットリンフォースメント12との間に画成する側面視略三角形状をなす領域は、閉じられた比較的狭い領域となることから、アウタパネル7を他の領域よりも高い剛性で補剛する高補剛領域45として機能する。
【0027】
そして、ドア本体2を側面視した状態において、この高補剛領域45に対応するアウタパネル7上の領域には、ラチェット15を車外側から動作させるアウタハンドル46が配設されている。
【0028】
ここで、本実施形態においては、図2に示すように、パネルリンフォースメントアッパ40上には、アウタパネル7に接着する接着領域40aと、この接着領域よりも上方の先端側に設定された非接着領域40bとが設定されている。そして、アウタハンドル46及びラチェット15は、高補剛領域45内において、接着領域40aの先端部(一端部)とラチェットリンフォースメント12の上端部とを結ぶ直線Lよりもラチェットリンフォースメント12側の領域に配設されている。
【0029】
なお、本実施形態において、窓肩リンフォースメント20及びパネルリンフォースメントロア41上には、アウタパネル7との各接着領域20a,41aが所定間隔毎に設定されている。
【0030】
このような実施形態によれば、ラチェットリンフォースメント12を車両(ドア本体2)の上下方向に延在させて窓肩リンフォースメント20に連結し、ドア本体2の上方寄りでアウタパネル7を補剛するパネルリンフォースメントアッパ40の先端部(一端部)を窓肩リンフォースメント20の中途に連結すると共に、パネルリンフォースメントアッパ40の後端部(他端部)をラチェットリンフォースメント12の下部(下端部)に連結することにより、他の領域よりも高い剛性でアウタパネル7を補剛する高補剛領域45を、軽量且つ簡単な構成で形成することができる。そして、この高補剛領域45内にアウタハンドル46(及びラチェット15)を配設することにより、側面衝突時にアウタパネル7の変形等からアウタハンドル46を的確に保護し、ラチェット15とストライカとの係合状態を維持することができる。
【0031】
この場合において、パネルリンフォースメントアッパ40上を、アウタパネル7の内面に接着する接着領域40aと、当該接着領域40aよりも上方の先端側に設定された非接着領域40bとに区分し、接着領域40aの先端部とラチェットリンフォースメント12の上端部とを結ぶ直線Lよりもラチェットリンフォースメント12側の領域にアウタハンドル46等を配設することにより、アウタパネル7の変形が高補剛領域45に及んだ場合にも当該変形を適切に制御してアウタハンドル46等を的確に保護することができる。すなわち、パネルリンフォースメントアッパ40上を接着領域40aと非接着領域40bとで区分することにより、万が一、高補剛領域45にまでアウタパネル7の変形が及んだ場合にも、当該変形を直線Lに沿って行わせることができ、アウタハンドル46等を的確に保護することができる。
【0032】
また、ラチェットリンフォースメント12を窓肩リンフォースメント20よりも上方まで延設し、窓枠3用のサッシュ(後側サッシュ31)を支持するガセットとして兼用することにより、車両用ドア1の部品点数を効果的に削減することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 … 車両用ドア
2 … ドア本体
3 … 窓枠
6 … インナパネル
6a … フランジ部
6b … 凹部
7 … アウタパネル
10 … ベルトラインリンフォースメント
12 … ラチェットリンフォースメント
12a … フランジ部
12b … 凹部
13 … スポット溶接部
14 … ラチェット取付部
15 … ラチェット
20 … 窓肩リンフォースメント
20a … 接着領域
30 … 前側サッシュ
31 … 後側サッシュ
35 … ガセット
40 … パネルリンフォースメントアッパ(パネルリンフォースメント)
40a … 接着領域
40b … 非接着領域
41 … パネルリンフォースメントロア
41a … 接着領域
45 … 高補剛領域
46 … アウタハンドル
50 … スポット溶接部
51 … スポット溶接部
52 … アーク溶接部
53 … スポット溶接部
54 … アーク溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体を構成するアウタパネルの内側に、
前記ドア本体の窓肩部に沿って車両の前後方向に延在する窓肩リンフォースメントと、
ラチェット取付部が設定されるラチェットリンフォースメントと、
アウタパネルの内面に沿って配設されるパネルリンフォースメントと、を備え、
前記ラチェットリンフォースメントを車両の上下方向に延在させて前記窓肩リンフォースメントに連結し、
前記パネルリンフォースメントの一端部を前記窓肩リンフォースメントの中途に連結すると共に、
前記パネルリンフォースメントの他端部を前記ラチェットリンフォースメントの下部に連結し、
前記ドア本体を側面視した状態において、前記窓肩リンフォースメントと、前記ラチェットリンフォースメントと、前記パネルリンフォースメントとで囲まれた領域内に、前記ラチェットを車外側から動作させるアウタハンドルを配設したことを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記パネルリンフォースメントは、前記アウタパネルの内面に接着する接着領域と、当該接着領域よりも上方の一端側に設定された非接着領域とを有し、
側面視した状態において、前記接着領域の一端部と前記ラチェットリンフォースメントの上端部とを結ぶ直線よりも前記ラチェットリンフォースメント側の領域に、前記アウタハンドルを配設したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドア構造。
【請求項3】
前記ラチェットリンフォースメントを前記窓肩リンフォースメントよりも上方まで延設し、窓枠用のサッシュを支持するガセットとして兼用したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221971(P2010−221971A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74509(P2009−74509)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)