車両用ニープロテクター構造
【課題】主に、初期動作をコントロールし得るようにする。
【解決手段】脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間、または、脚部受部材8と低負荷用エネルギー吸収体7との間の少なくとも一方に、入力荷重F1,F2の吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向11の間隙部9を設けるようにしている。
【解決手段】脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間、または、脚部受部材8と低負荷用エネルギー吸収体7との間の少なくとも一方に、入力荷重F1,F2の吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向11の間隙部9を設けるようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に、初期動作をコントロールし得るようにした車両用ニープロテクター構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設置されている。このインストルメントパネルの内部に対し、緊急時に乗員の膝や脛などの脚部を保護するためのニープロテクターを設置することが行われている。このようなニープロテクターには、例えば、特許文献1に開示されたようなものが存在している。
【0003】
特許文献1のニープロテクターは、平均的体格の乗員の膝入力荷重を吸収可能な上ブラケットと、小柄な乗員の膝入力荷重を吸収可能な下ブラケットと、上ブラケットと下ブラケットとの間を直接連結する脚部受部材とをそれぞれ別個に備えている。
【0004】
そして、上ブラケットの入力側端部と下ブラケットの入力側端部とが、上下方向で且つ車両前後方向に離間配置されると共に、上ブラケットの入力側端部に脚部受部材の上端部が直接当接固定され、下ブラケットの入力側端部に、脚部受部材の下端部が直接当接固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用ニープロテクター構造には、以下のような問題があった。
【0007】
即ち、上ブラケットの入力側端部に脚部受部材の上端部が直接当接固定され、下ブラケットの入力側端部に、脚部受部材の下端部が直接当接固定されていたため、乗員の膝や脛などの脚部が脚部受部材に接触した時点から直ちに入力荷重の吸収が開始されてしまうので、上ブラケットや下ブラケットの初期動作をコントロールすることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、乗員の膝入力荷重を塑性変形によって吸収可能な高負荷用エネルギー吸収体と、乗員の膝入力荷重および乗員の脛入力荷重を塑性変形によって吸収可能な低負荷用エネルギー吸収体と、乗員の脚部を受けて、前記高負荷用エネルギー吸収体と低負荷用エネルギー吸収体との少なくとも一方へ、前記膝入力荷重と脛入力荷重との少なくとも一方を伝える脚部受部材とを、それぞれ別個に備え、前記脚部受部材と前記高負荷用エネルギー吸収体との間、または、前記脚部受部材と前記低負荷用エネルギー吸収体との間の少なくとも一方に、入力荷重の吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向の間隙部を設けた車両用ニープロテクター構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、初期動作をコントロールすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両のインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】インストルメントパネルの内部に設けられた車体強度部材に対して本発明の実施例1にかかる車両用ニープロテクターが取付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図3の拡大図である。
【図6】図4の拡大図である。
【図7】平均的体格の乗員の膝による入力荷重を吸収する状態を示す作動図(側面図)である。
【図8】小柄な乗員の膝による入力荷重を吸収する状態を示す作動図(側面図)である。
【図9】初期動作がコントロールされた状態を示す線図(縦軸が荷重、横軸が時間またはストローク)である。
【図10】本発明の実施例2にかかる図5と同様の斜視図である。
【図11】図10の図6と同様の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図9は、この発明の実施例1を示すものであり、図10、図11はこの発明の実施例2を示すものである。そして、上記のうち図1〜図6が実施例1の構成図、図7〜図9が実施例1の作動図、図10、図11が実施例2の構成図である。
【実施例1】
【0013】
<構成>以下、この実施例の構成について、主に図1〜図6を用いて説明する。
【0014】
自動車などの車両には、車室内の前部に、図1に示すような、インストルメントパネル1が設置されている。このインストルメントパネル1における、運転席側の部分の下部には、ロワドライバー2と呼ばれるパネル部材(運転席下部パネル)が取付けられている。このインストルメントパネル1およびロワドライバー2は、樹脂製のものとされる。なお、この図では、インストルメントパネル1は、右ハンドル車のものとなっているが、左ハンドル車のものであっても同様である。インストルメントパネル1の詳細については省略する。
【0015】
そして、このインストルメントパネル1の内部には、図2に示すような、金属製の車体強度部材3が設けられている。この車体強度部材3は、ほぼ車幅方向4へ延びるものである。この車体強度部材3は、ステアリングサポートメンバなどと呼ばれている。なお、この図では、車体強度部材3は、左ハンドル車のものとなっているが、右ハンドル車のものであっても同様である。車体強度部材3の詳細については省略する。
【0016】
そして、上記したインストルメントパネル1の内部に、図3または図4に示すように(図5、図6も併せて参照)、緊急時に乗員の膝を保護するためのニープロテクター5を設置する。この場合、ニープロテクター5は、車体の一部を構成する車体強度部材3の運転席側の部分の下部に設けられる。このニープロテクター5は、ロワドライバー2の奥側に相当する位置に設けられる。なお、同様のニープロテクターを、助手席側の部分に対して設けても良い。
【0017】
このニープロテクター5は、平均的体格の乗員の膝入力荷重(以下、入力荷重F1という(図6参照)、以下同様)を塑性変形によって吸収可能な高負荷用エネルギー吸収体6と、小柄な乗員の膝入力荷重および平均的体格の乗員の脛入力荷重(以下、合わせて入力荷重F2という(図6参照)、以下同様)を塑性変形によって吸収可能な低負荷用エネルギー吸収体7と、乗員の膝や脛などの脚部を受けて高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との少なくとも一方へ、膝入力荷重と脛入力荷重との少なくとも一方(入力荷重F1や入力荷重F2など)を伝える脚部受部材8とを、それぞれ別個に備えている。
【0018】
ここで、上記した「平均的体格」および「小柄な(体格)」は、統計的に求められるものである。
【0019】
「平均的体格」は、例えば、米国成人男性の体格の小さい方から50%をカバーする体形(AM50相当)として設定することができる。また、「小柄な(体格)」は、例えば、米国成人女性の体格の小さい方から5%をカバーする体形(AF05相当)として設定することができる。但し、上記は、米国向仕様の場合である。日本国内や米国以外の仕向国に対しては、仕向国の仕様や法規制に応じて適宜設定することができる。
【0020】
脚部受部材8は、上記した平均的体格の乗員の膝や脛、小柄な乗員の膝などの脚部(特に下脚部)などを受けるものとされる。
【0021】
なお、この実施例1の場合、特に、以下のような構成としている。
【0022】
上記したニープロテクター5は、インストルメントパネル1やロワドライバー2から離した状態で取付けられる。
【0023】
そして、脚部受部材8は、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを連結して、高負荷用エネルギー吸収体6への入力荷重F1が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7へ荷重を伝達可能であり、また、低負荷用エネルギー吸収体7への入力荷重F2が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7と高負荷用エネルギー吸収体6との両方に荷重を伝達可能なものとされる。
【0024】
また、高負荷用エネルギー吸収体6と、低負荷用エネルギー吸収体7と、脚部受部材8とには、それぞれ金属製の部材が使われる。
【0025】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにする。
【0026】
(構成1)
脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間、または、脚部受部材8と低負荷用エネルギー吸収体7との間の少なくとも一方に、入力荷重F1や入力荷重F2などの吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向11の間隙部9を設けるようにする。
【0027】
(構成2)
より具体的には、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部近傍に脚部受部材8が取付けられるようにする。また、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部近傍に脚部受部材8が取付けられるようにする。そして、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部近傍と脚部受部材8との間、または、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部近傍と脚部受部材8との間の少なくとも一方に設けられるようにする。
【0028】
ここで、「入力側端部近傍」は、「入力側端部およびその近傍」を意味している。高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部は、後述するような乗員側取付面部16とされる(以下、必要に応じて入力側端部16という)。また、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部は、後述する上端部21aとされる(以下、必要に応じて入力側端部21aという)。そして、高負荷用エネルギー吸収体6の乗員側取付面部16(の後面側)に、脚部受部材8の上端部8a近傍(の前面側)が取付けられる。また、低負荷用エネルギー吸収体7の上端部21a(の後面側)に、脚部受部材8の上端部8a近傍(の前面側)が取付けられる。
【0029】
そして、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9は、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16近傍と脚部受部材8との間、および、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍と脚部受部材8との間の両方に対して設けられている。この空走区間となる車両前後方向11の間隙部9は、必要に応じて、大きさを設定、調整することができる。
【0030】
この場合には、先ず、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16が、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍の部分に当接配置されている。そして、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16が当接された、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍の部分に、間隙形成用段差形状部9aが形成されている。この間隙形成用段差形状部9aは、低負荷用エネルギー吸収体7の本体部分(後述する直線状部25や下方延長部26など)と入力側端部21aとの間に一体に介在されて、入力側端部21aに対して上記間隙部9に相当する大きさの段差を形成するものとされる。
【0031】
そして、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aは、脚部受部材8の上端部8aに対し、直接当接させた状態でボルトやナットなどの締結具を用いて締結固定されるか、或いは、溶接固定される。
【0032】
一方、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16は、脚部受部材8の上端部8a近傍に対し、離間させた状態で、図示しない通しボルトやナットなどの連結具を用いて非当接状態で連結される。この際、上記した通しボルトは、低負荷用エネルギー吸収体7の間隙形成用段差形状部9aに設けられた貫通孔へ移動自在に貫通配置される。
【0033】
なお、上記は、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16を、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aよりも低い位置に形成して、両者を車両前後方向11に重複させるようにした場合の構造であるが、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16を、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aよりも高い位置に形成して、両者を重複させないようにしても良い。この場合には、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aとは、それぞれ別個に、脚部受部材8の上端部8aおよびその近傍に対して、直接当接させた状態で取付けられることになる。なお、取付けについては、上記と同様に、ボルトやナットなどの締結具を用いて締結固定するか、或いは、溶接固定するようにする。そして、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aとの少なくとも一方に対して、上記した間隙形成用段差形状部9aを設けるようにする。
【0034】
以下、この実施例1の上記以外の具体的な構造について説明する。
【0035】
(具体的構造1)
まず、車体に対して高負荷用エネルギー吸収体6が取付けられる。そして、この高負荷用エネルギー吸収体6に対して脚部受部材8が取付けられる。更に、この脚部受部材8に対して低負荷用エネルギー吸収体7が取付けられる。
【0036】
即ち、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを、これらの強度や剛性の大きさに応じた取付関係とする。
【0037】
ここで、車体は、車体強度部材3とする。この場合には、車体強度部材3に、高負荷用エネルギー吸収体6の前端部が取付けられ、高負荷用エネルギー吸収体6の後端部(入力側端部16)に、脚部受部材8の上端部8a近傍が取付けられている。また、脚部受部材8の上下端部8a,8bに、低負荷用エネルギー吸収体7の上下端部21a,21bが取付けられている。そして、上記したように、高負荷用エネルギー吸収体6の後端部(入力側端部16)と、脚部受部材8の上端部8a近傍との間には、低負荷用エネルギー吸収体7の上端部21a近傍の間隙形成用段差形状部9aが介在されている。
【0038】
上記ニープロテクター5のより具体的な構造について、以下に説明する。
【0039】
(具体的構造2)高負荷用エネルギー吸収体6の構造について
図4に示すように、高負荷用エネルギー吸収体6を、少なくとも、ほぼ車両前後方向11へ向け直線的に延びて入力荷重F1を支持可能な直線状突張部12と、この直線状突張部12の少なくとも前後2箇所に設けられたエネルギー吸収部13,14と、上記直線状突張部12の前部を車体に取付ける車体取付部15とを有する上ブラケット17とする。
【0040】
ここで、直線状突張部12は、少なくとも平均的体格の乗員の膝による入力荷重F1の入力方向とほぼ等しい方向へ向くように、車両前後方向11へ延びるものとする。但し、入力荷重F1の入力方向が、車両前後方向11と正確に一致しないという場合には、直線状突張部12は、車両前後方向11ではなく、入力荷重F1の入力方向へ向けるようにしても良い。或いは、入力荷重F1の入力方向と、車両前後方向11とを、意図的に若干ズラせるようにしても良い。
【0041】
エネルギー吸収部13,14は、この場合、主に、前側のエネルギー吸収部13が大きく塑性変形して入力荷重F1を吸収するようなものとしている。
【0042】
車体取付部15は、直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13から、車体強度部材3へ向けて延びるものとする。この場合には、途中に1箇所の屈曲形状をした方向変更部15aを有して車体強度部材3の下半部へ下側から達するように延びるものとされている。この車体取付部15の前端部は、車体強度部材3の下半部の位置に溶接固定される。車体取付部15は、車体強度部材3へ向かうに従い側面形状が大きくなる(即ち、強度または剛性が大きくなる)ように形成されている。
【0043】
また、上ブラケット17は、その後端側に、直線状突張部12の後側のエネルギー吸収部14から、ほぼ後方へ延びる乗員側取付面部16を有している。この乗員側取付面部16は、上ブラケット17の他の部分よりも側面形状が小さくなるように形成されている。この乗員側取付面部16が、上記したように、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部となる。
【0044】
(具体的構造3)エネルギー吸収部13,14について
図3に示すように、上ブラケット17を、中央のウェブ部18aと、このウェブ部18aの両側からほぼ上方へ立上がる一対のフランジ部18bとを有するU字断面部材18によって構成する。そして、上記エネルギー吸収部13,14が、U字断面部材18の局所的な塑性変形によって入力荷重F1を吸収可能な塑性変形予定部19とされる。この塑性変形予定部19を、U字断面部材18の両側のフランジ部18bに切欠部を形成して成る切欠フランジ19aとする。
【0045】
ここで、切欠フランジ19aは、前側のエネルギー吸収部13が小さい切欠部とされ、後側のエネルギー吸収部14が大きい切欠部とされている。
【0046】
また、前後2箇所のエネルギー吸収部13,14は、直線状突張部12の前側と後側とにそれぞれ設けられた屈曲形状部の位置に設けられる。この屈曲形状部により、車体取付部15は前上がりに傾斜され、乗員側取付面部16は後上がりに傾斜される。これらの屈曲形状部は、荷重吸収時に塑性変形(屈曲変形や座屈変形)の起点と成ることを目的として屈曲形成されたものであり、切欠フランジ19aと共に塑性変形予定部19として機能するものである。
【0047】
(具体的構造4)低負荷用エネルギー吸収体7について
上記した低負荷用エネルギー吸収体7を、高負荷用エネルギー吸収体6である上ブラケット17の下方に配設される下ブラケット21とする。そして、図4に示すように、下ブラケット21の両端部を脚部受部材8に固定して、脚部受部材8との間で閉断面部22が構成されるようにする。
【0048】
ここで、下ブラケット21は、ほぼ上下方向へ延びて、その両端部が上端部21aおよび下端部21bとされると共に、この上端部21aと下端部21bとが、脚部受部材8の上端部8a近傍と下端部8b近傍とに対し、それぞれ上下に隔てた状態で固定される。この際、下ブラケット21の上端部21aは、脚部受部材8の上端部8a近傍の前面部分に当接可能となるように後上がりに屈曲され、下ブラケット21の下端部21bは、脚部受部材8の下端部8b近傍の前面部分に当接可能となるように前下がりに屈曲される。なお、下ブラケット21の上端部21aが、上記したように、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部となる。なお、下ブラケット21の下端部21bも、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部となるので、上記した間隙形成用段差形状部9aを設けるようにすることもできる。
【0049】
下ブラケット21の上下端部21a,21bと脚部受部材8の上下端部8a,8bとの間の固定は、上記したように、ボルト固定や溶接固定などとすることができる。下ブラケット21は、図3に示すように、平板部23aの幅中央部に後方へ突出する補強ビード23bを、上端部21aおよび下端部21bを除くほぼ全域に亘って形成された短冊状部材23によって構成される。この短冊状部材23は、上記した上ブラケット17のU字断面部材18よりも強度または剛性が低いものとされる。
【0050】
(具体的構造5)下ブラケット21の構成について
図4に示すように、上記下ブラケット21を、ほぼ車両前後方向11へ向け直線的に延びて入力荷重F2を支持可能な直線状部25と、この直線状部25の前部からほぼ下方へ向けて延びると共に塑性変形によって入力荷重F2を吸収可能な下方延長部26とを有するものとする。
【0051】
直線状部25は、上ブラケット17の直線状突張部12とほぼ平行なものとする。下方延長部26は、側方から見て、直線状、曲線状、折線状(一角または多角のもの)などとすることができるが、この場合には、下方延長部26を、ほぼ鉛直下方へ向けて延びると共に、途中から脚部受部材8の下端部8bへ向けて延びるように、1箇所の屈曲形状をした方向変更部26aを有する折線状(概略「く」字状をした一角)のものとしている。これにより、下ブラケット21は、全体として側面視で概略「つ」字状または「フ」字状のものとなる。
【0052】
(具体的構造6)上ブラケット17と下ブラケット21との位置関係について
上ブラケット17の直線状突張部12と下ブラケット21の直線状部25とを上下方向に対向配置する。そして、下ブラケット21の塑性変形時に、下ブラケット21の直線状部25を上ブラケット17の直線状突張部12で受け得るように構成する。
【0053】
ここで、下ブラケット21は、上端部21aと直線状部25との境界部分をほぼ中心に、前方で且つ上方へ回動するよう塑性変形することにより、直線状部25の上面が、直線状突張部12の下面によって上方から支持されることとなる。
【0054】
(具体的構造7)上ブラケット17と下ブラケット21との上下方向の対向間隔について
上ブラケット17の直線状突張部12(の下面)と、下ブラケット21の直線状部25(の上面)との間に、上下方向の間隙部28を設けるようにする。
【0055】
この間隙部28は、大きなものではなく、僅かなものとする。より具体的には、間隙部28は、概略1cm程度以下のものとする。
【0056】
(具体的構造8)上ブラケット17の前側のエネルギー吸収部13と、下ブラケット21の下方延長部26との車両前後方向11の位置関係について
上ブラケット17の直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13と、下ブラケット21の下方延長部26とを、車両前後方向11に対し近接させて配置する。
【0057】
この場合には、上ブラケット17の直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13を前側に、下ブラケット21の下方延長部26を後側に配置することにより、両者を車両前後方向11に対して若干量29だけズラせるようにしている。この若干量29とは、両者が相互に塑性変形を誘発可能な程度の距離のことである。上ブラケット17の直線状突張部12と、下ブラケット21の下方延長部26とは、前後方向の位置関係が逆であっても良い。
【0058】
(具体的構造9)脚部受部材8について
脚部受部材8を、少なくとも上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結するものとする。
【0059】
即ち、脚部受部材8は、上ブラケット17および下ブラケット21よりも後側(乗員側)に位置される。上ブラケット17の乗員側取付面部16の高さは、ほぼ平均的体格の乗員の膝位置となるようにする。また、下ブラケット21の下端側取付面部(下端部21b)の高さは、小柄な乗員の膝位置よりも僅かに低くなるようにする。即ち、上ブラケット17の乗員側取付面部16と下ブラケット21の下端側取付面部(下端部21b)との間に、小柄な乗員の膝が位置するように高さを設定する。
【0060】
なお、脚部受部材8は、側面視で前下がりに傾斜したものとされる。この脚部受部材8の傾斜角度は、上記したロワドライバー2の傾斜角度とほぼ等しいものとされる。そして、上ブラケット17の乗員側取付面部16と、下ブラケット21の上端側取付面部(上端部21a)および下端側取付面部(下端部21b)とは、脚部受部材8の傾斜に合せた位置や角度となるように構成される。
【0061】
(具体的構造10)脚部受部材8の構成について
脚部受部材8を、上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結する上下連結部31と、車幅方向4に隔てて一対設けられた両上下連結部31間を連結する左右連結部32とを有するものとする。
【0062】
ここで、脚部受部材8の上下連結部31と左右連結部32とは一体物とされる。上下連結部31は、ほぼ上下方向へ延びる帯板状のものとされる。また、左右連結部32は、ほぼ車幅方向4へ延びる帯板状のものとされる。
【0063】
なお、上ブラケット17および下ブラケット21は、乗員の左右の脚に合わせて左右一対設けられる。これに合わせて、上下連結部31も上記したように左右一対設けられることになる。
【0064】
(具体的構造11)左右連結部32の位置について
左右連結部32を、一対の上下連結部31の下端間またはその近傍間を相互に連結するものとする。
【0065】
ここで、脚部受部材8は、後方視ほぼU字型をした板状体となる。左右連結部32は、小柄な乗員の膝位置よりも若干下側に設置されることになる。左右連結部32には、必要に応じて補強用ビード32aを設けても良い。
【0066】
<作用>以下、この実施例の作用について、主に図7、図8を用いて説明する。
【0067】
高負荷用エネルギー吸収体6は、図7に示すように、平均的体格の乗員の膝入力荷重(入力荷重F1)を塑性変形によって吸収することができる。また、低負荷用エネルギー吸収体7は、図8に示すように、小柄な乗員の膝入力荷重(および平均的体格の乗員の脛入力荷重)(入力荷重F2)を塑性変形によって吸収することができる。
【0068】
なお、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とが、塑性変形によって入力荷重F1,F2を吸収することにより、例えば、弾性変形によって入力荷重F1,F2を吸収するようにした場合と比べて、より大きな入力荷重F1,F2を吸収することが可能となる。
【0069】
そして、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを連結する脚部受部材8は、高負荷用エネルギー吸収体6への入力荷重F1が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7へ荷重を伝達することができる。また、上記脚部受部材8は、低負荷用エネルギー吸収体7への入力荷重F2が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7と高負荷用エネルギー吸収体6との両方に荷重を伝達することができる。
【0070】
より具体的には、図7に示すように、緊急時に、平均的体格の乗員の膝は、脚部受部材8の上端部8a近傍に当接される。そして、平均的体格の乗員の膝による入力荷重F1は、上ブラケット17の直線状突張部12によって支持されると共に、上ブラケット17の少なくとも前後2箇所に設けたエネルギー吸収部13,14によって吸収される。この時、前後2箇所に設けたエネルギー吸収部13,14としての切欠フランジ19aおよび屈曲形状部が、局所的に塑性変形(屈曲または座屈)することにより、荷重吸収が行われる。なお、この場合には、前側の切欠フランジ19aおよび屈曲形状部が主に吸収するようにしている。
【0071】
また、平均的体格の乗員の脛は、脚部受部材8の下側のより広い範囲の部分に当接される。そして、平均的体格の乗員の脛入力は、下ブラケット21の下方延長部26が、次に述べるのとほぼ同様に塑性変形(屈曲または座屈)することにより吸収される。
【0072】
次に、図8に示すように、緊急時に、小柄な乗員の膝は、脚部受部材8の上下方向の中間部に当接される。この時、脚部受部材8および下ブラケット21が、上端部21aと直線状部25との境界部分をほぼ中心に前方で且つ上方へ向けて僅かに回動することにより、下ブラケット21の直線状部25が上ブラケット17の直線状突張部12に当って、直線状突張部12に上方から支持される。そして、脚部受部材8と下ブラケット21との間に形成される閉断面部22が潰れることで入力荷重F2の吸収が行われる。なお、脚部受部材8と下ブラケット21との間に形成される閉断面部22は、主に下方延長部26が全体的に塑性変形することによって潰されることになる。また、上ブラケット17は、この閉断面部22の変形によってほとんど変形されることはない。
【0073】
<効果>そして、この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
(効果1)
脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間、または、脚部受部材8と低負荷用エネルギー吸収体7との間の少なくとも一方に、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9を設けることにより、乗員の脚部(平均的体格の乗員の膝や脛、小柄な乗員の膝など)が脚部受部材8に当接してから、脚部受部材8が空走区間を移動して高負荷用エネルギー吸収体6または低負荷用エネルギー吸収体7に当たるまでの間(或いは、間隙部9がほぼ完全に潰されるまでの間)、入力荷重の吸収開始をコントロールする(遅らせたり、弱めたりする)ことができる。即ち、乗員の脚部が脚部受部材8に当接してから脚部受部材8が空走区間を移動している間は荷重吸収をほとんど行わず、脚部受部材8が高負荷用エネルギー吸収体6または低負荷用エネルギー吸収体7に当たった時から本格的な荷重吸収を開始させるようにすることができる。これにより、作動初期における入力荷重の吸収量や吸収開始タイミング(時間)や吸収開始までのストローク(移動量)などの初期動作をコントロール(設定、調整)することが可能となる。
【0075】
より具体的には、図9に実線Aで示すように、空走区間で荷重吸収を遅らせたり弱めたりすることができる。これに対し、空走区間を設けない場合には、図9に破線Bで示すように、本格的な荷重吸収が直ちに行われてしまうことになる。
【0076】
(効果2)
高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16近傍に脚部受部材8が取付けられ、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍に脚部受部材8が取付けられ、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16近傍と脚部受部材8との間、または、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍と脚部受部材8との間の少なくとも一方に設けられることにより、上記効果1を具体的に行わせることが可能となる。
【0077】
この場合には、間隙形成用段差形状部9aを共用化することにより、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との両方に対し荷重吸収の開始をコントロールするようにしているが、異なる段差量の間隙形成用段差形状部9aを別個に設けることにより、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との荷重吸収の開始をそれぞれ別個にコントロールさせるようにすることもできる。或いは、間隙形成用段差形状部9aを高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とのどちらか一方に設けることにより、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との一方のみに対して荷重吸収の開始をコントロールさせるようにすることもできる。
【0078】
(具体的構造1の効果)
車体(車体強度部材3)に対して高負荷用エネルギー吸収体6が取付けられると共に、高負荷用エネルギー吸収体6に対して脚部受部材8が取付けられ、脚部受部材8に対して低負荷用エネルギー吸収体7が取付けられたことにより、強度または剛性が相対的に小さな低負荷用エネルギー吸収体7を車体に対して取付けるなどの必要がなくなるので、構造が最適化され、無理なく軽量化を図ることができるようになる。
【0079】
(具体的構造2の効果)高負荷用エネルギー吸収体6を、少なくとも、直線状突張部12と、少なくとも前後2箇所のエネルギー吸収部13,14と、車体取付部15とを有する上ブラケット17としたことにより、ほぼ車両前後方向11へ向け直線的に延びる直線状突張部12によって、ほぼ前方へ向かう入力荷重F1を効率的に支持し、車体取付部15を介して車体へ伝達することができるので、その分、上ブラケット17の軽量化を図ることができる。また、直線状突張部12の少なくとも前後2箇所に設けたエネルギー吸収部13,14により、効率的に入力荷重F1を吸収することができる。
【0080】
(具体的構造3の効果)上ブラケット17を構成するU字断面部材18の両側のフランジ部18bに設けた切欠フランジ19aが、上ブラケット17の局所的な塑性変形(屈曲または座屈)を促すことにより、入力荷重F1を有効に吸収することができる。
【0081】
(具体的構造4の効果)低負荷用エネルギー吸収体7を、脚部受部材8との間に閉断面部22を形成する下ブラケット21とすることにより、下ブラケット21を、入力荷重F2によって多くの点で(或いは全体的に)塑性変形するいわゆる多点曲げを起こし易いものとすることができるため、一定レベル以上の受け反力を長く維持しつつ効率的に入力荷重F2を吸収させるようにすることができるようになる。
【0082】
これに対し、下ブラケット21を、一点のみで塑性変形させるいわゆる一点曲げを起こすようなものとした場合、瞬時に高い受け反力を発揮し尽くしてしまうこととなる(受け反力がピーキーなものとなる)ため、一定レベル以上の受け反力を長く維持することが難しくなるので、この実施例のように、軽量化された下ブラケット21を用いて入力荷重F2を吸収させるような場合には余り好ましくない。よって、下ブラケット21の下方延長部26は、方向変更部26aで一点曲を起こさないように、方向変更部26aの強度が下方延長部26の他の部分よりも低くならないように構成している。
【0083】
また、脚部受部材8と下ブラケット21との間に閉断面部22を形成することにより、下ブラケット21をより短くより細いものとしても所要の受け反力を発生可能な強度または剛性を確保することが可能となるので、その分、下ブラケット21の軽量化を図ることができる。また、下ブラケット21を車体に取付ける必要をなくすことができる。
【0084】
(具体的構造5の効果)下ブラケット21を、直線状部25と下方延長部26とに分けて構成することにより、直線状部25による入力荷重F2を支持する機能と、下方延長部26による入力荷重F2を吸収する機能とを明確に区別することができるため、各部がそれぞれの最適性能を出せるように設計することが可能となる。
【0085】
(具体的構造6の効果)上ブラケット17の直線状突張部12(の下面)と下ブラケット21の直線状部25(の上面)とを上下方向に対向配置して、下ブラケット21の塑性変形時に、下ブラケット21の直線状部25を上ブラケット17の直線状突張部12によって受けさせるようにしたことにより、下ブラケット21への入力荷重F2を上ブラケット17で確実に受止めて、下ブラケット21に塑性変形による荷重吸収を行わせることができる。即ち、より強度または剛性の高い上ブラケット17で、強度または剛性の低い下ブラケット21を支持させて荷重吸収を行う無理の無い構造とすることができる。
【0086】
(具体的構造7の効果)上ブラケット17の直線状突張部12(の下面)と、下ブラケット21の直線状部25(の上面)との間に、上下方向の間隙部28を設けたことにより、通常走行時に、走行振動などで下ブラケット21の直線状部25が上ブラケット17の直線状突張部12に当って低級音を発生するのを防止することができる。
【0087】
また、上記上下方向の間隙部28により、入力荷重F2によって下ブラケット21が僅かに前方で且つ上方へ回動した後に直線状部25が上ブラケット17の直線状突張部12へ衝突するようになるので、下ブラケット21を塑性変形を起こし易い向きまたは角度に姿勢変更したり、下ブラケット21の塑性変形の開始に使われる初期衝撃力を確実に発生させたりするなどのコントロールを行わせることが可能となる。
【0088】
(具体的構造8の効果)上ブラケット17の直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13と、下ブラケット21の下方延長部26とを、車両前後方向11に対し近接させて配置したことにより、直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13と下方延長部26との間で、相互に塑性変形を誘発し易い構造とすることができる。
【0089】
(具体的構造9の効果)脚部受部材8が、少なくとも上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結することにより、上下方向の広い範囲に亘って乗員による荷重の入力を受けることが可能になると共に、上ブラケット17と下ブラケット21との間で入力荷重F1,F2を有効に伝達し得るようにすることができる。
【0090】
(具体的構造10の効果)脚部受部材8が、上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結する上下連結部31と、車幅方向4に隔てて一対設けられた両上下連結部31間を連結する左右連結部32とを有することにより、両上下連結部31間と左右連結部32との間で互いに入力荷重F1,F2を有効に伝達し得るようにすることができる。
【0091】
(具体的構造11の効果)左右連結部32が、一対の上下連結部31の下端間またはその近傍間を相互に連結することにより、小柄な乗員の膝が上下連結部31の位置から横へ外れていても、左右連結部32が確実にこれを受けて上下連結部31へ入力荷重F2を伝達することができる。
【0092】
即ち、小柄な乗員の両膝の間隔が、平均的体格の乗員の両膝の間隔より狭いことなどにより、上下連結部31から外れてしまうような場合であっても、小柄な乗員の膝入力荷重(入力荷重F2)を左右連結部32によって確実に受けることが可能となる。
【実施例2】
【0093】
<構成>以下、この実施例の構成について、主に図10、図11を用いて説明する。なお、上記実施例と同一ないし均等な部分については、同一の符号を付すことにより、説明を省略できるものとする。但し、説明が省略された部分については、上記実施例の記載を以て、この実施例の記載とすることができる。また、図面の関係で、符号を付すことができない場合において、上記実施例1と同様であっても良いものについては、同様であるとする。
【0094】
実施例1の構成1については、この実施例2も同様である。そして、実施例1の構成2の代りに、以下の構成3を備えるようにしている。
【0095】
(構成3)
低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とが一体に形成されるようにする。そして、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と脚部受部材8との間に設けられるようにする。
【0096】
ここで、高負荷用エネルギー吸収体6は、金属製の部材によって構成される。また、低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とは、樹脂製の部材によって構成される。特に、低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とは、一体成形によって形成することができる。一体成形の場合、低負荷用エネルギー吸収体7は、スライド型などを用いて形成することができる。低負荷用エネルギー吸収体7の内部には、必要に応じて、金属製や樹脂製の補強部材を埋設或いは付設することができる。そして、脚部受部材8は、ロワドライバー2に対し、面接触状態で配置されると共に、振動溶着や接着などによって一体的に取付けられる。脚部受部材8は、高負荷用エネルギー吸収体6から離間させて設置される。この脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間隔が、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9に相当するものとなる。
【0097】
次に、この実施例2と実施例1との具体的な構造の違いについて説明する。
【0098】
(具体的構造1)について
この実施例では、車体に対して高負荷用エネルギー吸収体6が取付けられることは同様である。但し、上記したように、この高負荷用エネルギー吸収体6には、脚部受部材8は取付けられない。そして、上記したように、脚部受部材8に対して低負荷用エネルギー吸収体7が取付けられる。
【0099】
このようにしても、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを、これらの強度や剛性の大きさに応じた取付関係としている点については、同様である。
【0100】
なお、上記以外の具体的な構造については実施例1の(具体的構造2)〜(具体的構造11)とほぼ同様である。
【0101】
但し、低負荷用エネルギー吸収体7については、樹脂成形品となるため、必ずしも短冊状部材23とする必要はない。
【0102】
<効果>そして、この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
(効果3)
低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とが一体に形成され、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と脚部受部材8との間に設けられるようにしたことにより、上記効果1を具体的に行わせることが可能となる。
【0103】
なお、上記以外の作用効果については実施例1の作用効果とほぼ同様である。
【0104】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0105】
6 高負荷用エネルギー吸収体
7 低負荷用エネルギー吸収体
8 脚部受部材
9 間隙部
11 車両前後方向
16 乗員側取付面部(入力側端部)
21a 上端部(入力側端部)
F1 入力荷重
F2 入力荷重
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に、初期動作をコントロールし得るようにした車両用ニープロテクター構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設置されている。このインストルメントパネルの内部に対し、緊急時に乗員の膝や脛などの脚部を保護するためのニープロテクターを設置することが行われている。このようなニープロテクターには、例えば、特許文献1に開示されたようなものが存在している。
【0003】
特許文献1のニープロテクターは、平均的体格の乗員の膝入力荷重を吸収可能な上ブラケットと、小柄な乗員の膝入力荷重を吸収可能な下ブラケットと、上ブラケットと下ブラケットとの間を直接連結する脚部受部材とをそれぞれ別個に備えている。
【0004】
そして、上ブラケットの入力側端部と下ブラケットの入力側端部とが、上下方向で且つ車両前後方向に離間配置されると共に、上ブラケットの入力側端部に脚部受部材の上端部が直接当接固定され、下ブラケットの入力側端部に、脚部受部材の下端部が直接当接固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された車両用ニープロテクター構造には、以下のような問題があった。
【0007】
即ち、上ブラケットの入力側端部に脚部受部材の上端部が直接当接固定され、下ブラケットの入力側端部に、脚部受部材の下端部が直接当接固定されていたため、乗員の膝や脛などの脚部が脚部受部材に接触した時点から直ちに入力荷重の吸収が開始されてしまうので、上ブラケットや下ブラケットの初期動作をコントロールすることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、乗員の膝入力荷重を塑性変形によって吸収可能な高負荷用エネルギー吸収体と、乗員の膝入力荷重および乗員の脛入力荷重を塑性変形によって吸収可能な低負荷用エネルギー吸収体と、乗員の脚部を受けて、前記高負荷用エネルギー吸収体と低負荷用エネルギー吸収体との少なくとも一方へ、前記膝入力荷重と脛入力荷重との少なくとも一方を伝える脚部受部材とを、それぞれ別個に備え、前記脚部受部材と前記高負荷用エネルギー吸収体との間、または、前記脚部受部材と前記低負荷用エネルギー吸収体との間の少なくとも一方に、入力荷重の吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向の間隙部を設けた車両用ニープロテクター構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、初期動作をコントロールすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両のインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】インストルメントパネルの内部に設けられた車体強度部材に対して本発明の実施例1にかかる車両用ニープロテクターが取付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図3の拡大図である。
【図6】図4の拡大図である。
【図7】平均的体格の乗員の膝による入力荷重を吸収する状態を示す作動図(側面図)である。
【図8】小柄な乗員の膝による入力荷重を吸収する状態を示す作動図(側面図)である。
【図9】初期動作がコントロールされた状態を示す線図(縦軸が荷重、横軸が時間またはストローク)である。
【図10】本発明の実施例2にかかる図5と同様の斜視図である。
【図11】図10の図6と同様の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図9は、この発明の実施例1を示すものであり、図10、図11はこの発明の実施例2を示すものである。そして、上記のうち図1〜図6が実施例1の構成図、図7〜図9が実施例1の作動図、図10、図11が実施例2の構成図である。
【実施例1】
【0013】
<構成>以下、この実施例の構成について、主に図1〜図6を用いて説明する。
【0014】
自動車などの車両には、車室内の前部に、図1に示すような、インストルメントパネル1が設置されている。このインストルメントパネル1における、運転席側の部分の下部には、ロワドライバー2と呼ばれるパネル部材(運転席下部パネル)が取付けられている。このインストルメントパネル1およびロワドライバー2は、樹脂製のものとされる。なお、この図では、インストルメントパネル1は、右ハンドル車のものとなっているが、左ハンドル車のものであっても同様である。インストルメントパネル1の詳細については省略する。
【0015】
そして、このインストルメントパネル1の内部には、図2に示すような、金属製の車体強度部材3が設けられている。この車体強度部材3は、ほぼ車幅方向4へ延びるものである。この車体強度部材3は、ステアリングサポートメンバなどと呼ばれている。なお、この図では、車体強度部材3は、左ハンドル車のものとなっているが、右ハンドル車のものであっても同様である。車体強度部材3の詳細については省略する。
【0016】
そして、上記したインストルメントパネル1の内部に、図3または図4に示すように(図5、図6も併せて参照)、緊急時に乗員の膝を保護するためのニープロテクター5を設置する。この場合、ニープロテクター5は、車体の一部を構成する車体強度部材3の運転席側の部分の下部に設けられる。このニープロテクター5は、ロワドライバー2の奥側に相当する位置に設けられる。なお、同様のニープロテクターを、助手席側の部分に対して設けても良い。
【0017】
このニープロテクター5は、平均的体格の乗員の膝入力荷重(以下、入力荷重F1という(図6参照)、以下同様)を塑性変形によって吸収可能な高負荷用エネルギー吸収体6と、小柄な乗員の膝入力荷重および平均的体格の乗員の脛入力荷重(以下、合わせて入力荷重F2という(図6参照)、以下同様)を塑性変形によって吸収可能な低負荷用エネルギー吸収体7と、乗員の膝や脛などの脚部を受けて高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との少なくとも一方へ、膝入力荷重と脛入力荷重との少なくとも一方(入力荷重F1や入力荷重F2など)を伝える脚部受部材8とを、それぞれ別個に備えている。
【0018】
ここで、上記した「平均的体格」および「小柄な(体格)」は、統計的に求められるものである。
【0019】
「平均的体格」は、例えば、米国成人男性の体格の小さい方から50%をカバーする体形(AM50相当)として設定することができる。また、「小柄な(体格)」は、例えば、米国成人女性の体格の小さい方から5%をカバーする体形(AF05相当)として設定することができる。但し、上記は、米国向仕様の場合である。日本国内や米国以外の仕向国に対しては、仕向国の仕様や法規制に応じて適宜設定することができる。
【0020】
脚部受部材8は、上記した平均的体格の乗員の膝や脛、小柄な乗員の膝などの脚部(特に下脚部)などを受けるものとされる。
【0021】
なお、この実施例1の場合、特に、以下のような構成としている。
【0022】
上記したニープロテクター5は、インストルメントパネル1やロワドライバー2から離した状態で取付けられる。
【0023】
そして、脚部受部材8は、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを連結して、高負荷用エネルギー吸収体6への入力荷重F1が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7へ荷重を伝達可能であり、また、低負荷用エネルギー吸収体7への入力荷重F2が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7と高負荷用エネルギー吸収体6との両方に荷重を伝達可能なものとされる。
【0024】
また、高負荷用エネルギー吸収体6と、低負荷用エネルギー吸収体7と、脚部受部材8とには、それぞれ金属製の部材が使われる。
【0025】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにする。
【0026】
(構成1)
脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間、または、脚部受部材8と低負荷用エネルギー吸収体7との間の少なくとも一方に、入力荷重F1や入力荷重F2などの吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向11の間隙部9を設けるようにする。
【0027】
(構成2)
より具体的には、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部近傍に脚部受部材8が取付けられるようにする。また、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部近傍に脚部受部材8が取付けられるようにする。そして、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部近傍と脚部受部材8との間、または、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部近傍と脚部受部材8との間の少なくとも一方に設けられるようにする。
【0028】
ここで、「入力側端部近傍」は、「入力側端部およびその近傍」を意味している。高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部は、後述するような乗員側取付面部16とされる(以下、必要に応じて入力側端部16という)。また、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部は、後述する上端部21aとされる(以下、必要に応じて入力側端部21aという)。そして、高負荷用エネルギー吸収体6の乗員側取付面部16(の後面側)に、脚部受部材8の上端部8a近傍(の前面側)が取付けられる。また、低負荷用エネルギー吸収体7の上端部21a(の後面側)に、脚部受部材8の上端部8a近傍(の前面側)が取付けられる。
【0029】
そして、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9は、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16近傍と脚部受部材8との間、および、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍と脚部受部材8との間の両方に対して設けられている。この空走区間となる車両前後方向11の間隙部9は、必要に応じて、大きさを設定、調整することができる。
【0030】
この場合には、先ず、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16が、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍の部分に当接配置されている。そして、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16が当接された、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍の部分に、間隙形成用段差形状部9aが形成されている。この間隙形成用段差形状部9aは、低負荷用エネルギー吸収体7の本体部分(後述する直線状部25や下方延長部26など)と入力側端部21aとの間に一体に介在されて、入力側端部21aに対して上記間隙部9に相当する大きさの段差を形成するものとされる。
【0031】
そして、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aは、脚部受部材8の上端部8aに対し、直接当接させた状態でボルトやナットなどの締結具を用いて締結固定されるか、或いは、溶接固定される。
【0032】
一方、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16は、脚部受部材8の上端部8a近傍に対し、離間させた状態で、図示しない通しボルトやナットなどの連結具を用いて非当接状態で連結される。この際、上記した通しボルトは、低負荷用エネルギー吸収体7の間隙形成用段差形状部9aに設けられた貫通孔へ移動自在に貫通配置される。
【0033】
なお、上記は、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16を、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aよりも低い位置に形成して、両者を車両前後方向11に重複させるようにした場合の構造であるが、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16を、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aよりも高い位置に形成して、両者を重複させないようにしても良い。この場合には、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aとは、それぞれ別個に、脚部受部材8の上端部8aおよびその近傍に対して、直接当接させた状態で取付けられることになる。なお、取付けについては、上記と同様に、ボルトやナットなどの締結具を用いて締結固定するか、或いは、溶接固定するようにする。そして、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21aとの少なくとも一方に対して、上記した間隙形成用段差形状部9aを設けるようにする。
【0034】
以下、この実施例1の上記以外の具体的な構造について説明する。
【0035】
(具体的構造1)
まず、車体に対して高負荷用エネルギー吸収体6が取付けられる。そして、この高負荷用エネルギー吸収体6に対して脚部受部材8が取付けられる。更に、この脚部受部材8に対して低負荷用エネルギー吸収体7が取付けられる。
【0036】
即ち、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを、これらの強度や剛性の大きさに応じた取付関係とする。
【0037】
ここで、車体は、車体強度部材3とする。この場合には、車体強度部材3に、高負荷用エネルギー吸収体6の前端部が取付けられ、高負荷用エネルギー吸収体6の後端部(入力側端部16)に、脚部受部材8の上端部8a近傍が取付けられている。また、脚部受部材8の上下端部8a,8bに、低負荷用エネルギー吸収体7の上下端部21a,21bが取付けられている。そして、上記したように、高負荷用エネルギー吸収体6の後端部(入力側端部16)と、脚部受部材8の上端部8a近傍との間には、低負荷用エネルギー吸収体7の上端部21a近傍の間隙形成用段差形状部9aが介在されている。
【0038】
上記ニープロテクター5のより具体的な構造について、以下に説明する。
【0039】
(具体的構造2)高負荷用エネルギー吸収体6の構造について
図4に示すように、高負荷用エネルギー吸収体6を、少なくとも、ほぼ車両前後方向11へ向け直線的に延びて入力荷重F1を支持可能な直線状突張部12と、この直線状突張部12の少なくとも前後2箇所に設けられたエネルギー吸収部13,14と、上記直線状突張部12の前部を車体に取付ける車体取付部15とを有する上ブラケット17とする。
【0040】
ここで、直線状突張部12は、少なくとも平均的体格の乗員の膝による入力荷重F1の入力方向とほぼ等しい方向へ向くように、車両前後方向11へ延びるものとする。但し、入力荷重F1の入力方向が、車両前後方向11と正確に一致しないという場合には、直線状突張部12は、車両前後方向11ではなく、入力荷重F1の入力方向へ向けるようにしても良い。或いは、入力荷重F1の入力方向と、車両前後方向11とを、意図的に若干ズラせるようにしても良い。
【0041】
エネルギー吸収部13,14は、この場合、主に、前側のエネルギー吸収部13が大きく塑性変形して入力荷重F1を吸収するようなものとしている。
【0042】
車体取付部15は、直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13から、車体強度部材3へ向けて延びるものとする。この場合には、途中に1箇所の屈曲形状をした方向変更部15aを有して車体強度部材3の下半部へ下側から達するように延びるものとされている。この車体取付部15の前端部は、車体強度部材3の下半部の位置に溶接固定される。車体取付部15は、車体強度部材3へ向かうに従い側面形状が大きくなる(即ち、強度または剛性が大きくなる)ように形成されている。
【0043】
また、上ブラケット17は、その後端側に、直線状突張部12の後側のエネルギー吸収部14から、ほぼ後方へ延びる乗員側取付面部16を有している。この乗員側取付面部16は、上ブラケット17の他の部分よりも側面形状が小さくなるように形成されている。この乗員側取付面部16が、上記したように、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部となる。
【0044】
(具体的構造3)エネルギー吸収部13,14について
図3に示すように、上ブラケット17を、中央のウェブ部18aと、このウェブ部18aの両側からほぼ上方へ立上がる一対のフランジ部18bとを有するU字断面部材18によって構成する。そして、上記エネルギー吸収部13,14が、U字断面部材18の局所的な塑性変形によって入力荷重F1を吸収可能な塑性変形予定部19とされる。この塑性変形予定部19を、U字断面部材18の両側のフランジ部18bに切欠部を形成して成る切欠フランジ19aとする。
【0045】
ここで、切欠フランジ19aは、前側のエネルギー吸収部13が小さい切欠部とされ、後側のエネルギー吸収部14が大きい切欠部とされている。
【0046】
また、前後2箇所のエネルギー吸収部13,14は、直線状突張部12の前側と後側とにそれぞれ設けられた屈曲形状部の位置に設けられる。この屈曲形状部により、車体取付部15は前上がりに傾斜され、乗員側取付面部16は後上がりに傾斜される。これらの屈曲形状部は、荷重吸収時に塑性変形(屈曲変形や座屈変形)の起点と成ることを目的として屈曲形成されたものであり、切欠フランジ19aと共に塑性変形予定部19として機能するものである。
【0047】
(具体的構造4)低負荷用エネルギー吸収体7について
上記した低負荷用エネルギー吸収体7を、高負荷用エネルギー吸収体6である上ブラケット17の下方に配設される下ブラケット21とする。そして、図4に示すように、下ブラケット21の両端部を脚部受部材8に固定して、脚部受部材8との間で閉断面部22が構成されるようにする。
【0048】
ここで、下ブラケット21は、ほぼ上下方向へ延びて、その両端部が上端部21aおよび下端部21bとされると共に、この上端部21aと下端部21bとが、脚部受部材8の上端部8a近傍と下端部8b近傍とに対し、それぞれ上下に隔てた状態で固定される。この際、下ブラケット21の上端部21aは、脚部受部材8の上端部8a近傍の前面部分に当接可能となるように後上がりに屈曲され、下ブラケット21の下端部21bは、脚部受部材8の下端部8b近傍の前面部分に当接可能となるように前下がりに屈曲される。なお、下ブラケット21の上端部21aが、上記したように、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部となる。なお、下ブラケット21の下端部21bも、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部となるので、上記した間隙形成用段差形状部9aを設けるようにすることもできる。
【0049】
下ブラケット21の上下端部21a,21bと脚部受部材8の上下端部8a,8bとの間の固定は、上記したように、ボルト固定や溶接固定などとすることができる。下ブラケット21は、図3に示すように、平板部23aの幅中央部に後方へ突出する補強ビード23bを、上端部21aおよび下端部21bを除くほぼ全域に亘って形成された短冊状部材23によって構成される。この短冊状部材23は、上記した上ブラケット17のU字断面部材18よりも強度または剛性が低いものとされる。
【0050】
(具体的構造5)下ブラケット21の構成について
図4に示すように、上記下ブラケット21を、ほぼ車両前後方向11へ向け直線的に延びて入力荷重F2を支持可能な直線状部25と、この直線状部25の前部からほぼ下方へ向けて延びると共に塑性変形によって入力荷重F2を吸収可能な下方延長部26とを有するものとする。
【0051】
直線状部25は、上ブラケット17の直線状突張部12とほぼ平行なものとする。下方延長部26は、側方から見て、直線状、曲線状、折線状(一角または多角のもの)などとすることができるが、この場合には、下方延長部26を、ほぼ鉛直下方へ向けて延びると共に、途中から脚部受部材8の下端部8bへ向けて延びるように、1箇所の屈曲形状をした方向変更部26aを有する折線状(概略「く」字状をした一角)のものとしている。これにより、下ブラケット21は、全体として側面視で概略「つ」字状または「フ」字状のものとなる。
【0052】
(具体的構造6)上ブラケット17と下ブラケット21との位置関係について
上ブラケット17の直線状突張部12と下ブラケット21の直線状部25とを上下方向に対向配置する。そして、下ブラケット21の塑性変形時に、下ブラケット21の直線状部25を上ブラケット17の直線状突張部12で受け得るように構成する。
【0053】
ここで、下ブラケット21は、上端部21aと直線状部25との境界部分をほぼ中心に、前方で且つ上方へ回動するよう塑性変形することにより、直線状部25の上面が、直線状突張部12の下面によって上方から支持されることとなる。
【0054】
(具体的構造7)上ブラケット17と下ブラケット21との上下方向の対向間隔について
上ブラケット17の直線状突張部12(の下面)と、下ブラケット21の直線状部25(の上面)との間に、上下方向の間隙部28を設けるようにする。
【0055】
この間隙部28は、大きなものではなく、僅かなものとする。より具体的には、間隙部28は、概略1cm程度以下のものとする。
【0056】
(具体的構造8)上ブラケット17の前側のエネルギー吸収部13と、下ブラケット21の下方延長部26との車両前後方向11の位置関係について
上ブラケット17の直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13と、下ブラケット21の下方延長部26とを、車両前後方向11に対し近接させて配置する。
【0057】
この場合には、上ブラケット17の直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13を前側に、下ブラケット21の下方延長部26を後側に配置することにより、両者を車両前後方向11に対して若干量29だけズラせるようにしている。この若干量29とは、両者が相互に塑性変形を誘発可能な程度の距離のことである。上ブラケット17の直線状突張部12と、下ブラケット21の下方延長部26とは、前後方向の位置関係が逆であっても良い。
【0058】
(具体的構造9)脚部受部材8について
脚部受部材8を、少なくとも上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結するものとする。
【0059】
即ち、脚部受部材8は、上ブラケット17および下ブラケット21よりも後側(乗員側)に位置される。上ブラケット17の乗員側取付面部16の高さは、ほぼ平均的体格の乗員の膝位置となるようにする。また、下ブラケット21の下端側取付面部(下端部21b)の高さは、小柄な乗員の膝位置よりも僅かに低くなるようにする。即ち、上ブラケット17の乗員側取付面部16と下ブラケット21の下端側取付面部(下端部21b)との間に、小柄な乗員の膝が位置するように高さを設定する。
【0060】
なお、脚部受部材8は、側面視で前下がりに傾斜したものとされる。この脚部受部材8の傾斜角度は、上記したロワドライバー2の傾斜角度とほぼ等しいものとされる。そして、上ブラケット17の乗員側取付面部16と、下ブラケット21の上端側取付面部(上端部21a)および下端側取付面部(下端部21b)とは、脚部受部材8の傾斜に合せた位置や角度となるように構成される。
【0061】
(具体的構造10)脚部受部材8の構成について
脚部受部材8を、上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結する上下連結部31と、車幅方向4に隔てて一対設けられた両上下連結部31間を連結する左右連結部32とを有するものとする。
【0062】
ここで、脚部受部材8の上下連結部31と左右連結部32とは一体物とされる。上下連結部31は、ほぼ上下方向へ延びる帯板状のものとされる。また、左右連結部32は、ほぼ車幅方向4へ延びる帯板状のものとされる。
【0063】
なお、上ブラケット17および下ブラケット21は、乗員の左右の脚に合わせて左右一対設けられる。これに合わせて、上下連結部31も上記したように左右一対設けられることになる。
【0064】
(具体的構造11)左右連結部32の位置について
左右連結部32を、一対の上下連結部31の下端間またはその近傍間を相互に連結するものとする。
【0065】
ここで、脚部受部材8は、後方視ほぼU字型をした板状体となる。左右連結部32は、小柄な乗員の膝位置よりも若干下側に設置されることになる。左右連結部32には、必要に応じて補強用ビード32aを設けても良い。
【0066】
<作用>以下、この実施例の作用について、主に図7、図8を用いて説明する。
【0067】
高負荷用エネルギー吸収体6は、図7に示すように、平均的体格の乗員の膝入力荷重(入力荷重F1)を塑性変形によって吸収することができる。また、低負荷用エネルギー吸収体7は、図8に示すように、小柄な乗員の膝入力荷重(および平均的体格の乗員の脛入力荷重)(入力荷重F2)を塑性変形によって吸収することができる。
【0068】
なお、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とが、塑性変形によって入力荷重F1,F2を吸収することにより、例えば、弾性変形によって入力荷重F1,F2を吸収するようにした場合と比べて、より大きな入力荷重F1,F2を吸収することが可能となる。
【0069】
そして、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを連結する脚部受部材8は、高負荷用エネルギー吸収体6への入力荷重F1が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7へ荷重を伝達することができる。また、上記脚部受部材8は、低負荷用エネルギー吸収体7への入力荷重F2が所定値以上となった時に、低負荷用エネルギー吸収体7と高負荷用エネルギー吸収体6との両方に荷重を伝達することができる。
【0070】
より具体的には、図7に示すように、緊急時に、平均的体格の乗員の膝は、脚部受部材8の上端部8a近傍に当接される。そして、平均的体格の乗員の膝による入力荷重F1は、上ブラケット17の直線状突張部12によって支持されると共に、上ブラケット17の少なくとも前後2箇所に設けたエネルギー吸収部13,14によって吸収される。この時、前後2箇所に設けたエネルギー吸収部13,14としての切欠フランジ19aおよび屈曲形状部が、局所的に塑性変形(屈曲または座屈)することにより、荷重吸収が行われる。なお、この場合には、前側の切欠フランジ19aおよび屈曲形状部が主に吸収するようにしている。
【0071】
また、平均的体格の乗員の脛は、脚部受部材8の下側のより広い範囲の部分に当接される。そして、平均的体格の乗員の脛入力は、下ブラケット21の下方延長部26が、次に述べるのとほぼ同様に塑性変形(屈曲または座屈)することにより吸収される。
【0072】
次に、図8に示すように、緊急時に、小柄な乗員の膝は、脚部受部材8の上下方向の中間部に当接される。この時、脚部受部材8および下ブラケット21が、上端部21aと直線状部25との境界部分をほぼ中心に前方で且つ上方へ向けて僅かに回動することにより、下ブラケット21の直線状部25が上ブラケット17の直線状突張部12に当って、直線状突張部12に上方から支持される。そして、脚部受部材8と下ブラケット21との間に形成される閉断面部22が潰れることで入力荷重F2の吸収が行われる。なお、脚部受部材8と下ブラケット21との間に形成される閉断面部22は、主に下方延長部26が全体的に塑性変形することによって潰されることになる。また、上ブラケット17は、この閉断面部22の変形によってほとんど変形されることはない。
【0073】
<効果>そして、この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
(効果1)
脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間、または、脚部受部材8と低負荷用エネルギー吸収体7との間の少なくとも一方に、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9を設けることにより、乗員の脚部(平均的体格の乗員の膝や脛、小柄な乗員の膝など)が脚部受部材8に当接してから、脚部受部材8が空走区間を移動して高負荷用エネルギー吸収体6または低負荷用エネルギー吸収体7に当たるまでの間(或いは、間隙部9がほぼ完全に潰されるまでの間)、入力荷重の吸収開始をコントロールする(遅らせたり、弱めたりする)ことができる。即ち、乗員の脚部が脚部受部材8に当接してから脚部受部材8が空走区間を移動している間は荷重吸収をほとんど行わず、脚部受部材8が高負荷用エネルギー吸収体6または低負荷用エネルギー吸収体7に当たった時から本格的な荷重吸収を開始させるようにすることができる。これにより、作動初期における入力荷重の吸収量や吸収開始タイミング(時間)や吸収開始までのストローク(移動量)などの初期動作をコントロール(設定、調整)することが可能となる。
【0075】
より具体的には、図9に実線Aで示すように、空走区間で荷重吸収を遅らせたり弱めたりすることができる。これに対し、空走区間を設けない場合には、図9に破線Bで示すように、本格的な荷重吸収が直ちに行われてしまうことになる。
【0076】
(効果2)
高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16近傍に脚部受部材8が取付けられ、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍に脚部受部材8が取付けられ、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16近傍と脚部受部材8との間、または、低負荷用エネルギー吸収体7の入力側端部21a近傍と脚部受部材8との間の少なくとも一方に設けられることにより、上記効果1を具体的に行わせることが可能となる。
【0077】
この場合には、間隙形成用段差形状部9aを共用化することにより、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との両方に対し荷重吸収の開始をコントロールするようにしているが、異なる段差量の間隙形成用段差形状部9aを別個に設けることにより、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との荷重吸収の開始をそれぞれ別個にコントロールさせるようにすることもできる。或いは、間隙形成用段差形状部9aを高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とのどちらか一方に設けることにより、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7との一方のみに対して荷重吸収の開始をコントロールさせるようにすることもできる。
【0078】
(具体的構造1の効果)
車体(車体強度部材3)に対して高負荷用エネルギー吸収体6が取付けられると共に、高負荷用エネルギー吸収体6に対して脚部受部材8が取付けられ、脚部受部材8に対して低負荷用エネルギー吸収体7が取付けられたことにより、強度または剛性が相対的に小さな低負荷用エネルギー吸収体7を車体に対して取付けるなどの必要がなくなるので、構造が最適化され、無理なく軽量化を図ることができるようになる。
【0079】
(具体的構造2の効果)高負荷用エネルギー吸収体6を、少なくとも、直線状突張部12と、少なくとも前後2箇所のエネルギー吸収部13,14と、車体取付部15とを有する上ブラケット17としたことにより、ほぼ車両前後方向11へ向け直線的に延びる直線状突張部12によって、ほぼ前方へ向かう入力荷重F1を効率的に支持し、車体取付部15を介して車体へ伝達することができるので、その分、上ブラケット17の軽量化を図ることができる。また、直線状突張部12の少なくとも前後2箇所に設けたエネルギー吸収部13,14により、効率的に入力荷重F1を吸収することができる。
【0080】
(具体的構造3の効果)上ブラケット17を構成するU字断面部材18の両側のフランジ部18bに設けた切欠フランジ19aが、上ブラケット17の局所的な塑性変形(屈曲または座屈)を促すことにより、入力荷重F1を有効に吸収することができる。
【0081】
(具体的構造4の効果)低負荷用エネルギー吸収体7を、脚部受部材8との間に閉断面部22を形成する下ブラケット21とすることにより、下ブラケット21を、入力荷重F2によって多くの点で(或いは全体的に)塑性変形するいわゆる多点曲げを起こし易いものとすることができるため、一定レベル以上の受け反力を長く維持しつつ効率的に入力荷重F2を吸収させるようにすることができるようになる。
【0082】
これに対し、下ブラケット21を、一点のみで塑性変形させるいわゆる一点曲げを起こすようなものとした場合、瞬時に高い受け反力を発揮し尽くしてしまうこととなる(受け反力がピーキーなものとなる)ため、一定レベル以上の受け反力を長く維持することが難しくなるので、この実施例のように、軽量化された下ブラケット21を用いて入力荷重F2を吸収させるような場合には余り好ましくない。よって、下ブラケット21の下方延長部26は、方向変更部26aで一点曲を起こさないように、方向変更部26aの強度が下方延長部26の他の部分よりも低くならないように構成している。
【0083】
また、脚部受部材8と下ブラケット21との間に閉断面部22を形成することにより、下ブラケット21をより短くより細いものとしても所要の受け反力を発生可能な強度または剛性を確保することが可能となるので、その分、下ブラケット21の軽量化を図ることができる。また、下ブラケット21を車体に取付ける必要をなくすことができる。
【0084】
(具体的構造5の効果)下ブラケット21を、直線状部25と下方延長部26とに分けて構成することにより、直線状部25による入力荷重F2を支持する機能と、下方延長部26による入力荷重F2を吸収する機能とを明確に区別することができるため、各部がそれぞれの最適性能を出せるように設計することが可能となる。
【0085】
(具体的構造6の効果)上ブラケット17の直線状突張部12(の下面)と下ブラケット21の直線状部25(の上面)とを上下方向に対向配置して、下ブラケット21の塑性変形時に、下ブラケット21の直線状部25を上ブラケット17の直線状突張部12によって受けさせるようにしたことにより、下ブラケット21への入力荷重F2を上ブラケット17で確実に受止めて、下ブラケット21に塑性変形による荷重吸収を行わせることができる。即ち、より強度または剛性の高い上ブラケット17で、強度または剛性の低い下ブラケット21を支持させて荷重吸収を行う無理の無い構造とすることができる。
【0086】
(具体的構造7の効果)上ブラケット17の直線状突張部12(の下面)と、下ブラケット21の直線状部25(の上面)との間に、上下方向の間隙部28を設けたことにより、通常走行時に、走行振動などで下ブラケット21の直線状部25が上ブラケット17の直線状突張部12に当って低級音を発生するのを防止することができる。
【0087】
また、上記上下方向の間隙部28により、入力荷重F2によって下ブラケット21が僅かに前方で且つ上方へ回動した後に直線状部25が上ブラケット17の直線状突張部12へ衝突するようになるので、下ブラケット21を塑性変形を起こし易い向きまたは角度に姿勢変更したり、下ブラケット21の塑性変形の開始に使われる初期衝撃力を確実に発生させたりするなどのコントロールを行わせることが可能となる。
【0088】
(具体的構造8の効果)上ブラケット17の直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13と、下ブラケット21の下方延長部26とを、車両前後方向11に対し近接させて配置したことにより、直線状突張部12の前側のエネルギー吸収部13と下方延長部26との間で、相互に塑性変形を誘発し易い構造とすることができる。
【0089】
(具体的構造9の効果)脚部受部材8が、少なくとも上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結することにより、上下方向の広い範囲に亘って乗員による荷重の入力を受けることが可能になると共に、上ブラケット17と下ブラケット21との間で入力荷重F1,F2を有効に伝達し得るようにすることができる。
【0090】
(具体的構造10の効果)脚部受部材8が、上ブラケット17の後端側に設けられた乗員側取付面部16と、下ブラケット21の下端側に設けられた下端側取付面部(下端部21b)との間を連結する上下連結部31と、車幅方向4に隔てて一対設けられた両上下連結部31間を連結する左右連結部32とを有することにより、両上下連結部31間と左右連結部32との間で互いに入力荷重F1,F2を有効に伝達し得るようにすることができる。
【0091】
(具体的構造11の効果)左右連結部32が、一対の上下連結部31の下端間またはその近傍間を相互に連結することにより、小柄な乗員の膝が上下連結部31の位置から横へ外れていても、左右連結部32が確実にこれを受けて上下連結部31へ入力荷重F2を伝達することができる。
【0092】
即ち、小柄な乗員の両膝の間隔が、平均的体格の乗員の両膝の間隔より狭いことなどにより、上下連結部31から外れてしまうような場合であっても、小柄な乗員の膝入力荷重(入力荷重F2)を左右連結部32によって確実に受けることが可能となる。
【実施例2】
【0093】
<構成>以下、この実施例の構成について、主に図10、図11を用いて説明する。なお、上記実施例と同一ないし均等な部分については、同一の符号を付すことにより、説明を省略できるものとする。但し、説明が省略された部分については、上記実施例の記載を以て、この実施例の記載とすることができる。また、図面の関係で、符号を付すことができない場合において、上記実施例1と同様であっても良いものについては、同様であるとする。
【0094】
実施例1の構成1については、この実施例2も同様である。そして、実施例1の構成2の代りに、以下の構成3を備えるようにしている。
【0095】
(構成3)
低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とが一体に形成されるようにする。そして、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と脚部受部材8との間に設けられるようにする。
【0096】
ここで、高負荷用エネルギー吸収体6は、金属製の部材によって構成される。また、低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とは、樹脂製の部材によって構成される。特に、低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とは、一体成形によって形成することができる。一体成形の場合、低負荷用エネルギー吸収体7は、スライド型などを用いて形成することができる。低負荷用エネルギー吸収体7の内部には、必要に応じて、金属製や樹脂製の補強部材を埋設或いは付設することができる。そして、脚部受部材8は、ロワドライバー2に対し、面接触状態で配置されると共に、振動溶着や接着などによって一体的に取付けられる。脚部受部材8は、高負荷用エネルギー吸収体6から離間させて設置される。この脚部受部材8と高負荷用エネルギー吸収体6との間隔が、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9に相当するものとなる。
【0097】
次に、この実施例2と実施例1との具体的な構造の違いについて説明する。
【0098】
(具体的構造1)について
この実施例では、車体に対して高負荷用エネルギー吸収体6が取付けられることは同様である。但し、上記したように、この高負荷用エネルギー吸収体6には、脚部受部材8は取付けられない。そして、上記したように、脚部受部材8に対して低負荷用エネルギー吸収体7が取付けられる。
【0099】
このようにしても、高負荷用エネルギー吸収体6と低負荷用エネルギー吸収体7とを、これらの強度や剛性の大きさに応じた取付関係としている点については、同様である。
【0100】
なお、上記以外の具体的な構造については実施例1の(具体的構造2)〜(具体的構造11)とほぼ同様である。
【0101】
但し、低負荷用エネルギー吸収体7については、樹脂成形品となるため、必ずしも短冊状部材23とする必要はない。
【0102】
<効果>そして、この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
(効果3)
低負荷用エネルギー吸収体7と脚部受部材8とが一体に形成され、空走区間となる車両前後方向11の間隙部9が、高負荷用エネルギー吸収体6の入力側端部16と脚部受部材8との間に設けられるようにしたことにより、上記効果1を具体的に行わせることが可能となる。
【0103】
なお、上記以外の作用効果については実施例1の作用効果とほぼ同様である。
【0104】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0105】
6 高負荷用エネルギー吸収体
7 低負荷用エネルギー吸収体
8 脚部受部材
9 間隙部
11 車両前後方向
16 乗員側取付面部(入力側端部)
21a 上端部(入力側端部)
F1 入力荷重
F2 入力荷重
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の膝入力荷重を塑性変形によって吸収可能な高負荷用エネルギー吸収体と、
乗員の膝入力荷重および乗員の脛入力荷重を塑性変形によって吸収可能な低負荷用エネルギー吸収体と、
乗員の脚部を受けて、前記高負荷用エネルギー吸収体と低負荷用エネルギー吸収体との少なくとも一方へ、前記膝入力荷重と脛入力荷重との少なくとも一方を伝える脚部受部材とを、それぞれ別個に備え、
前記脚部受部材と前記高負荷用エネルギー吸収体との間、または、前記脚部受部材と前記低負荷用エネルギー吸収体との間の少なくとも一方に、入力荷重の吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向の間隙部を設けたことを特徴とする車両用ニープロテクター構造。
【請求項2】
前記高負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍に脚部受部材が取付けられ、
前記低負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍に脚部受部材が取付けられ、
前記空走区間となる車両前後方向の間隙部が、高負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍と脚部受部材との間、または、低負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍と脚部受部材との間の少なくとも一方に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用ニープロテクター構造。
【請求項3】
低負荷用エネルギー吸収体と脚部受部材とが一体に形成され、
前記空走区間となる車両前後方向の間隙部が、高負荷用エネルギー吸収体の入力側端部と脚部受部材との間に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用ニープロテクター構造。
【請求項1】
乗員の膝入力荷重を塑性変形によって吸収可能な高負荷用エネルギー吸収体と、
乗員の膝入力荷重および乗員の脛入力荷重を塑性変形によって吸収可能な低負荷用エネルギー吸収体と、
乗員の脚部を受けて、前記高負荷用エネルギー吸収体と低負荷用エネルギー吸収体との少なくとも一方へ、前記膝入力荷重と脛入力荷重との少なくとも一方を伝える脚部受部材とを、それぞれ別個に備え、
前記脚部受部材と前記高負荷用エネルギー吸収体との間、または、前記脚部受部材と前記低負荷用エネルギー吸収体との間の少なくとも一方に、入力荷重の吸収開始をコントロールするための空走区間となる車両前後方向の間隙部を設けたことを特徴とする車両用ニープロテクター構造。
【請求項2】
前記高負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍に脚部受部材が取付けられ、
前記低負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍に脚部受部材が取付けられ、
前記空走区間となる車両前後方向の間隙部が、高負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍と脚部受部材との間、または、低負荷用エネルギー吸収体の入力側端部近傍と脚部受部材との間の少なくとも一方に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用ニープロテクター構造。
【請求項3】
低負荷用エネルギー吸収体と脚部受部材とが一体に形成され、
前記空走区間となる車両前後方向の間隙部が、高負荷用エネルギー吸収体の入力側端部と脚部受部材との間に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車両用ニープロテクター構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−232680(P2012−232680A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103028(P2011−103028)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
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