説明

車両用ホイールの低圧鋳造装置

【課題】車両用ホイールの口径の変更によっても鋳込み重量に対する製品率を悪化させることのない車両用ホイールの低圧鋳造装置を提供する。
【解決手段】横型30によってキャビティ50のリム成形部53を構成するとともにこの横型30の下方に中間ストーク70を配置した車両用ホイールの低圧鋳造装置Dにおいて、横型30に略L字状の湯道31を形成し、この湯道31の一端をキャビティ50のリム成形部53に開口させて堰とするとともに他端を中間ストーク70に連通させ、中間ストーク70が鉛直方向に対して傾いた状態にて配置されることが可能であることを特徴とする車両用ホイールの低圧鋳造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ホイールを製造するための低圧鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ホイールを鋳造するための装置としては、低圧鋳造装置が広く使用されている。低圧鋳造装置は、鋳型と、鋳型の下に配置されて溶湯を貯留する溶湯保持炉と、溶湯保持炉から鋳型のキャビティ内へと溶湯を送るストーク(溶湯補給菅)とを備えている。鋳型は、一般的に、上型、下型および一対の横型を組み合わせることによって構成され、内部には、車両用ホイールの形状をした空洞(キャビティ)が形成されている。また、一対の横型の合せ面には溶湯の流路となる湯道が形成されている。溶湯はこれら湯道を通じてキャビティの両側から注入されていく。また、ストークは一対設けられており、これら一対のストークはそれぞれ横型の湯道に連通している。さらに、ストークの一端は、溶湯保持炉内に貯留された溶湯の中に差し込まれている。そして、溶湯保持炉内にガスを送り込んで溶湯保持炉内の溶湯を加圧することにより、溶湯をストーク内に流入させる。そして、ストークに流入した溶湯は、横型の湯道を介してキャビティ内に送られる(例えば特許文献1)。
【0003】
低圧鋳造装置では、溶湯保持炉にストークが据え付けられているため、ストークとキャビティとを連絡する横型の湯道の長さを調整することにより、車両用ホイールの口径の変更に対応することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−243720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、車両用ホイールの口径の変更によって湯道が長くなると溶湯を余分に消費することになり、その結果として鋳込み重量に対する製品率が悪化してしまう。
【0006】
本発明の目的は、車両用ホイールの口径の変更によっても鋳込み重量に対する製品率を悪化させることのない車両用ホイールの低圧鋳造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の車両用ホイールの低圧鋳造装置を完成した。本発明は、横型によってキャビティのリム成形部を構成するとともにこの横型の下方に中間ストークと保持炉ストークから構成されたストークを配置した車両用ホイールの低圧鋳造装置において、前記横型に略L字状の湯道を形成し、この湯道の一端を前記キャビティのリム成形部に開口させて堰とするとともに他端を前記中間ストークに連通させ、前記中間ストークが鉛直方向に対して傾いた状態で配置されることが可能であるものである。
【0008】
本発明の車両用ホイールの低圧鋳造装置は上記のように構成されているため、中間ストークの傾きを調整することにより、車両用ホイールの口径に関わらず横型の湯道の長さを短く保つことが可能となり、その結果として、湯道内で凝固する余分な溶湯量を少なくして、鋳込み重量に対する製品率の悪化を防ぐことができる。また、湯道の長さを短くして湯道重量を抑えることにより、湯道内の溶湯を凝固させるまでに要する時間を短くし、生産性を向上させることも可能にする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用ホイールの低圧鋳造装置は、車両用ホイールの口径の変更によっても鋳込み重量に対する製品率を悪化させることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の車両用ホイールの低圧鋳造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の車両用ホイールの低圧鋳造装置の断面図である。本低圧鋳造装置Dには、溶湯から車両用ホイールを成形するための鋳型セットSと、鋳型セットSを載置するための基台10とを備えている。
【0013】
鋳型セットSは、下型20と上型40と一対の横型30とから構成されている。これらの下型20、上型40および横型30を組み合わせることにより、鋳型セットSの内部にキャビティ50を形成することができる。キャビティ50は、車両用ホイ−ルの形状をした空洞であり、ディスク成形部51とスポ−ク成形部52とリム成形部53とから構成されている。このキャビティ50内で溶湯を凝固させることにより、車両用ホイールを成形することができる。ここで横型とは、鉛直方向に交差する面に沿って移動する型のことをいう。本鋳型セットSでは、下型20の上に凹部が形成されており、この凹部に入子21が嵌めこまれている。この入子21によって車両用ホイ−ルのディスク部における凹凸を形づくることができる。
【0014】
一対の横型30の合せ面には一対の湯道31が設けられている。これらの湯道31は略L字状をしており、湯道31の一方の端が側端開口311としてキャビティ50のリム成形部53に開口しており、もう一方の端が下端開口312として横型30の下面において開口している。これにより、溶湯を下端開口312から湯道31内に流入させ、湯道31内に流入した溶湯を側端開口311から鋳型セットSのキャビティ50内へと注入することができる。また、側端開口311には、流路が窄まるように堰が形成されている。
【0015】
基台10には、中間ストーク70が貫通している。この中間ストーク70は、鉛直方向に対して傾いた方向に延びた状態で配置されることが可能である。中間ストーク70の上端は、湯道31の下端開口312に連結している。これにより、中間ストーク70内に流入した溶湯を湯道31内に送り込むことができる。
【0016】
基台10の下方には、溶湯保持炉60が配置されている。溶湯保持炉60内には、溶湯Mが収容されている。溶湯保持炉60には、保持炉ストーク75が装着されている。この保持炉ストーク75は略鉛直方向に延びている。また、保持炉ストーク75の上端は中間ストーク70の下端に連結し、保持炉ストーク75の下端は溶湯保持炉60内に収容された溶湯Mの中に差し込まれている。
【0017】
本低圧鋳造装置Dでは、溶湯保持炉60内にガスを供給して溶湯Mを加圧することにより、ストーク(中間ストーク70と保持炉ストーク75)を介して溶湯Mをキャビティ50内へと送り込むことができる。
【0018】
そして、車両用ホイールをキャビティ50内で鋳造する際には、溶湯Mをキャビティ50内および湯道31内に満たした後、そのままの状態で溶湯Mを凝固させる。
【0019】
また、本低圧鋳造装置Dでは、製造するホイ−ルの口径を変更する場合、鋳型セットSとともに基台10も取り替える。製造するホイ−ルの口径を変更した場合、キャビティ50の径が変わるため、取り替え前と比べて湯道31の側端開口311の位置が変わる。保持炉ストーク75は保持炉60に据え付けられておりその上端の位置は変えることができない。そのため、湯道31の側端開口311の位置が変わることにより、湯道31の側端開口311と保持炉ストーク75の上端との距離も変わってしまう。ここで、中間ストーク70の傾きが異なった基台10に取り替えることにより、湯道31の側端開口311と下端開口312とを近い状態に保たせたまま(湯道31の長さを短い状態に保たせたまま)、湯道31の下端開口312と保持炉ストーク75の上端との間を中間ストーク70によって連絡させることができる。その結果として湯道31内で凝固する溶湯Mの量を少なくすることができる。湯道31内で凝固する溶湯Mは製品であるホイールとはならないことから、湯道31の長さを短くすることにより、余分な溶湯Mの消費を低減し、鋳込み重量に対する製品率の悪化を避けることができる。
【0020】
また、湯道31の側端開口311の位置が中間ストーク70の上端の位置よりも外側にある場合には、中間ストーク70の上端が外側に向かって開くように中間ストーク70を傾けることにより対応することができる(図示せず)。従来の低圧鋳造装置では、一対のストークは、互いの間隔を最も大きい口径を持つ車両用ホイールの口径以上となった状態で据え付けられている。そのため、車両用ホイールの口径が小さい場合には、湯道を長くすることにより対処していた。したがって、従来技術では、最も大きい口径の車両用ホイールを製造する以外は、湯道の長さを伸ばした分だけ余分な溶湯を消費する。この問題は、本低圧鋳造装置Dを使用することにより解消することができる。なぜなら、本低圧鋳造装置Dは車両用ホイールの口径に関わらず湯道の長さを短く保つことができるからである。
【0021】
なお、本低圧鋳造装置Dでは、湯道31と中間ストーク70との間にストレナーRを設けることにより、溶湯に混入した異物を除去することができる。
【0022】
脱型する際には、溶湯がキャビティ50内および湯道31内で凝固した後、まず、一対の横型30を脱型する(図面の垂直方向に開放する。302は横型30のパーティング面である。)。溶湯が横型30の湯道31内で凝固することにより、L字状の金属塊が形成される。横型30を脱型する際には、このL字状の金属塊も横型30から開放される。
【0023】
続いて、上型40および下型20を脱型する。上型40および下型20の脱型は、上型作動具80および押し出し板90を使用する。上型作動具80は、上型40に装着されており、上型40を上下動させることができる。上型作動具80を作動させて上型40および押し出し板90を鋳造された車両用ホイールとともに持ち上げ、基台に締結固定された下型20を外す。次に、押し出し板90を保持し上型40を上昇させることにより、リムフランジを押圧することで上型40から鋳造された車両用ホイールを脱型することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、車両用ホイールを製造するための低圧鋳造装置として利用できる。
【符号の説明】
【0025】
30:横型、31:湯道、311:(湯道の)側端開口、50:キャビティ、53:リム成形部、70:中間ストーク、D:車両用ホイールの低圧鋳造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型によってキャビティのリム成形部を構成するとともにこの横型の下方に中間ストークと保持炉ストークから構成されたストークを配置した車両用ホイールの低圧鋳造装置において、前記横型に略L字状の湯道を形成し、この湯道の一端を前記キャビティのリム成形部に開口させて堰とするとともに他端を前記中間ストークに連通させ、前記中間ストークが鉛直方向に対して傾いた状態に配置されることが可能であることを特徴とする車両用ホイールの低圧鋳造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−96247(P2012−96247A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244182(P2010−244182)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000116873)旭テック株式会社 (144)