説明

車両用ホイールの表面処理方法

【課題】光輝面とカラー塗装面との境界で塗膜に割れや欠けを生じることなく、ホイール意匠面を生成することのできる車両用ホイールの表面処理方法を提案する。
【解決手段】塗装前にホイール意匠面9に所望の光輝面X1を生成し、塗装後にCOレーザーを所定部位に照射することによって塗膜を除去して光輝面X1を表出するようにした車両用ホイール1の表面処理方法であるから、塗膜除去した所定部位との境界で除去しない塗膜に欠けや割れ等を生じることがなく、該境界をシャープに形成できる。そのため、光輝面X1とカラー塗装面Y1とを組み合わせたホイール意匠面9が優れた意匠性を発揮すると共に、このようなホイール意匠面9を比較的容易に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のホイール形状に成形した車両用ホイールに実施する車両用ホイールの表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ホイールは、近年、その意匠性を高めるために、そのホイール意匠面に様々な塗装が施されている。ホイール意匠面を塗装する工程は、通常、所望の寸法形状に成形加工した後に実施される。例えば、鋳造により製造されるアルミニウム合金製の車両用ホイールにあっては、鋳造により所定ホイール形状に成形し、所望の寸法形状に整える加工が実施された後、ホイール意匠面に塗装することによって製造されている。さらに詳細には、鋳造後に、所望の寸法形状に整える切削加工を実施し、次に化成処理などのいわゆる塗装前処理を実施し、その後に所定塗料を塗布している。尚ここで、切削加工、塗装前処理、塗装は、ホイール意匠面だけでなく他の表面にも実施している。
【0003】
上記したアルミニウム合金製の車両用ホイールにあっては、そのホイール意匠面に様々なカラーの塗料を塗布したり、重ね合わせることなどにより、意匠性を向上するようにしている。また、部分的にカラー塗料を塗布せずにアルミニウム合金の光輝面を表出するようにし、該光輝面とカラー塗装面とを組み合わせた外観としたものも存在する。
【0004】
このようにアルミニウム合金の光輝面とカラー塗装面とを組み合わせたホイール意匠面を生成する方法としては、例えば特許文献1に、ホイール全面にカラー塗料を塗布した後に、ホイール意匠面の所定部位を切削加工するようにした方法が提案されている。この方法にあっては、カラー塗料の塗布後に切削加工することにより所定部位のカラー塗料の塗膜を除去し、さらにアルミニウム合金の母材表面を切削して所望の光輝面を生成する。これにより、アルミニウム合金の光輝面とカラー塗装面とを組み合わせた外観となる。また、同じ特許文献1には、ホイール意匠面の所定部位をマスキングした後に、カラー塗料を塗布する方法も記載されている。この方法を用いた場合、カラー塗装前に光輝面を生成し、所定部位にマスキングしてカラー塗装を行った後に、該マスキングに使用したテープや塗料を取り除くことによってアルミニウム合金の光輝面を所定部位に表出する。これにより、光輝面とカラー塗装面とを組み合わせた外観となる。
【特許文献1】特開昭63−209776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の、カラー塗装後に切削加工する方法にあっては、切削加工する所定部位が平面形状でない場合、該切削加工に要する時間とコストが増大してしまうために、生産性を考慮すればホイール生産工程で用いることが難しい。特に、凹形状の部位やスポーク部側面などを精度良く切削加工することは極めて難しく、そのような部位を光輝面とすることができないという問題があった。そのため、切削加工によりカラー塗装の塗膜を除去する方法を、複雑な表面形状となっているホイール意匠面に適用するには限界がある。さらに、切削加工の際に、カラー塗装の塗膜の境界部分で、該塗膜が欠けてしまう等の問題も生じていた。
【0006】
一方、所定部位をマスキングする方法にあっては、光輝面とカラー塗装面との境界を明確かつ精度良く形成することが難しい。これは、マスキング用のテープや塗料を使用すると、該テープや塗料とカラー塗装が接着してしまい、これらテープや塗料を除去する際に境界部分のカラー塗装が浮いてしまったり、剥がれて欠けてしまい易いためである。また、マスキング用のテープを使用する場合には、該テープの端部まで正確に被着させることが難しく、該端部が微小に浮いているとカラー塗料が侵入してしまうという問題も生じていた。
【0007】
尚、マスキングを用いる方法として、光輝面を生成せずにホイール意匠面にカラー塗装を実施した後にマスキングを行い、該マスキングを実施しない部位にバフ研磨等の研磨作業を実施することによって、当該部位のカラー塗装の塗膜を除去し且つこの研磨により光輝面を生成する方法もある。ところが、研磨作業は所定の圧力を掛けて実施することから、マスキングした状態で研磨作業を実行すれば、該研磨作業によりマスキングが剥がれてしまうことも懸念される。そのため、マスキングが剥がれないように研磨作業に掛ける圧力を調整しなければならず、このように圧力調整された研磨作業では、所望の光輝面を生成し難いという問題が生じていた。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決し、複雑な形状のホイール意匠面を、光輝面とカラー塗装面とを組み合わせた外観とすることができる車両用ホイールの表面処理方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定のホイール形状に成形した後に、ホイール意匠面を所望の光輝面とする光輝面成形工程と、ホイール意匠面に化成処理を行う塗装前処理工程と、化成処理したホイール意匠面に所定塗料を塗布する塗装工程と、ホイール意匠面の所定部位にCOレーザーを照射することにより、当該所定部位に前記塗装工程で生成した塗膜を除去するようにしたレーザー照射処理工程と、ホイール意匠面に所定のクリア塗料を塗布するクリア塗装工程とを順に実施するようにしていることを特徴とする車両用ホイールの表面処理方法である。
【0010】
かかる方法にあっては、ホイール意匠面に光輝面を生成して所定塗料を塗布した後に、COレーザーを照射することによって、塗膜を除去して光輝面を表出するようにした方法である。レーザー照射処理工程では、COレーザーを照射することにより、塗膜をアブレーションするため、除去しない塗膜に欠けや割れ等を生じることなく、所定部位の塗膜のみを正確に除去することができ得る。そのため、塗膜を除去して表出した光輝面と塗膜が残る塗装面との境界がシャープに形成され、ホイール意匠面が優れた意匠性を発揮できる。尚、COレーザーを照射する方法としては、レーザー光を集光して当てるように照射する方法が好適に用い得る。この方法では、集光点が極めて小さく、且つこの集光点を移動することによって塗膜を順次除去していくこととなるため、外観上でシャープな境界を形成し易い。
【0011】
また、COレーザーを照射する際には、該照射する位置や角度を適宜変更するだけで、比較的複雑な形状にあっても精度良くレーザー光を当てることができる。そのため、塗装する前に予めホイール意匠面に所望の光輝面を生成しておき、COレーザーを所定部位の形状に応じて照射することによって、比較的複雑な形状の部位にも光輝面を表出することができ得る。このように、様々な形状のホイール意匠面にあっても、所望の部位を光輝面とする製品を容易かつ適正に生産することが可能である。
【0012】
ここで、車両用ホイールにあっては、通常、ホイール意匠面には母材上に粉体塗料、カラー塗料、クリア塗料が順に塗布されて各々塗膜が積層した状態となっている。本発明にあっては、少なくとも粉体塗料の塗膜とカラー塗料の塗膜とが積層した膜厚50μm〜200μmを除去する。COレーザーは、波長が比較的長く、大きな出力を生じ易いため、このような比較的厚い塗膜の除去に適している。また、COレーザーは、8〜12μmの波長のものを好適に用いることができ、これにより、クリア塗料の塗膜をも容易に除去することができる。そのため、例えば粉体塗料にクリア色の塗料を用いた場合にあっても、当該塗膜を確実に除去し得る。さらに、COレーザーは、アルミニウム合金に吸収されないことから、母材にダメージを生じることなく、塗膜のみを除去することができる。そのため、ホイール意匠面を所望の光輝面としておけば、COレーザー照射により、当該光輝面がその表情を維持したまま表出する。このように、本発明は、車両用ホイールのホイール意匠面に生成する塗膜除去に適したCOレーザーを用いるようにした方法である。尚、COレーザー以外のレーザーとして、例えばYAGレーザーでは、比較的波長が短いことから、クリア色の塗料を透過してしまうために、その塗膜を充分に除去できない。さらに、YAGレーザーはアルミニウム合金に吸収するから、光輝面にダメージを生じ易いという問題がある。
【0013】
また、本発明にあって、レーザー照射処理工程の後に、化成処理を実施する塗装前処理工程を実施し、クリア塗装工程を実施するようにしても良い。ここで、レーザー照射処理工程の次に実施する塗装前処理工程は、COレーザーにより塗膜を除去した所定部位に実施する。これにより、所定部位で露出する光輝面とクリア塗装工程で塗布するクリア塗料との密着性を向上することができる。
【0014】
尚、塗装工程では、上記したように粉体塗料、所定カラーの塗料を順次塗布する工程、又は、粉体塗料、所定カラーの塗料、クリア塗料を順次塗布する工程のいずれであっても良い。ここで、粉体塗料は、上記のようにクリア塗料でも所定カラーの塗料のいずれでもあっても良い。また、光輝面成形工程は、バフ研磨などによりホイール意匠面を研磨することにより光輝面とする工程や、ホイール意匠面を切削加工することにより光輝面とする工程のいずれであっても良く、ホイール意匠面の形状に応じて選択的に用いることが可能である。さらに、光輝面成形工程にあっては、予め定められた所定部位を光輝面とするようにしても良いし、ホイール意匠面全体を光輝面とするようにしても良い。
【0015】
このような車両用ホイールの表面処理方法にあって、レーザー照射処理工程は、COレーザーを集光した集光点を、ホイール意匠面の所定部位に沿って500mm/s以上且つ8000mm/s以下の移動速度により移動することにより、当該所定部位の塗膜を除去するようにしている方法が提案される。
【0016】
このレーザー照射処理工程にあっては、上記したように、COレーザーのレーザー光を集光して照射し、その集光点を所定部位に沿って移動することにより、この集光点の移動に伴って順次塗膜を除去していく。ここで、COレーザーの集光点の移動速度を低速化とするに従って、塗膜の除去作用が高くなるものの、該塗膜にレーザー光による熱量が溜まり易くなるために発火し易くなる傾向となる。一方、集光点の移動速度を高速化するに従って、塗膜が発火し難くなるものの、塗膜の除去作用が低減する傾向となる。そして、車両用ホイールの塗膜形態(粉体塗料の塗膜と所定カラー塗料の塗膜を50〜200μmの膜厚とする形態)に適合するように、集光点の移動速度を500mm/s以上且つ8000mm/s以下とする。これにより、ホイール意匠面に塗布した塗膜を、発火することを抑制しつつ、充分に除去することができる。そのため、COレーザーの照射の際に、塗膜が発火してアルミニウム合金表面を炭化してしまうことを防ぎ得る。
【0017】
尚、500mm/sより低速とすると、レーザー光の照射による熱量が蓄積し易くなって発火を抑制する作用が著しく低下する。そのため、発火し易くなって、不具合品となり易い。さらに、低速となると生産性も低下するために、ホイール生産工程として不向きである。一方、8000mm/sより高速とすると、塗膜の除去作用が著しく低下するために、所定部位にレーザー光を照射する回数を多くしなければ、塗膜を除去できなくなる。さらに、ホイール意匠面のように比較的複雑な形状に沿ってレーザー光の集光点を移動する場合に、8000mm/sより高速化すると、形状に応じて塗膜を除去できるところとできないところが生じ易くなる。このようなことから、ホイール生産工程として不向きである。
【0018】
また、COレーザーの集光点を所定部位に照射する照射回数としては、一回又は複数回のいずれに設定しても良い。そして、複数回照射するように設定する場合にあっては、例えば、最初に集光点の移動速度を低速として実施して塗膜を比較的厚く除去し、次に集光点の移動速度を高速として実施して残りの塗膜を除去するようにしても良い。これにより、塗膜の発火を抑制する効果と、レーザー照射処理工程に要する時間を短縮化する効果とを発揮でき、生産性を向上できる。
【0019】
このような車両用ホイールの表面処理方法にあって、レーザー照射処理工程が、COレーザーを100kW/cm以上且つ300kW/cm以下のエネルギー密度により照射するようにしている方法が提案される。このエネルギー密度は、単位面積当りの仕事量で表されており、具体的にはレーザー出力を集光点の面積(スポット面積)で割った値により示している。
【0020】
ここで、COレーザーのエネルギー密度を高くするに従って、塗膜の除去作用が高くなるものの、塗膜が発火し易くなる傾向となる。一方、エネルギー密度を低くするに従って、塗膜が発火し難くなるものの、塗膜の除去作用が低下する傾向となる。そして、車両用ホイールの塗膜形態に適合するように、エネルギー密度を100kW/cm以上且つ300kW/cm以下とする。これにより、ホイール意匠面に塗布した塗膜を、発火することを抑制しつつ、充分に除去することができる。すなわち、本レーザー照射処理工程は、車両用ホイールの塗膜を除去する工程として一層適している。
【0021】
尚、100kW/cmより低くすると、塗膜の除去作用が著しく低下するために、所定部位にレーザー光を照射する回数を多くしなければ、塗膜を除去できなくなる。一方、300kW/cmより高くすると、発火を抑制する作用が著しく低下し、発火し易くなるために、不具合品となり易い。そして、発火抑制作用と塗膜除去作用とをバランス良くするために、エネルギー密度を120kW/cm以上且つ240kW/cm以下とすることが好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、塗装前にホイール意匠面に所望の光輝面を生成し、塗装後にCOレーザーを所定部位に照射することによって塗膜を除去して光輝面を表出するようにした車両用ホイールの表面処理方法であるから、COレーザーにより塗膜をアブレーションするため、塗膜除去した所定部位との境界で除去しない塗膜に欠けや割れ等を生じることがなく、該境界をシャープに形成できる。そのため、上述した従来のマスキングする方法や塗膜を切削する方法と比較して、意匠性を向上できると共に、優れた意匠性のホイール意匠面を容易に得ることができる。また、COレーザーのレーザー光は、比較的複雑な形状にあっても所望の位置に正確に照射できるため、ホイール意匠面の所定部位で塗膜を確実かつ容易に除去でき、所望のホイール意匠面を生成する生産性が向上する。また、COレーザーは、波長が長く出力も大きいため、車両用ホイールの比較的厚い塗膜を除去し易く、また、アルミニウム合金の母材にダメージを生じないという利点も有する。そのため、COレーザーを照射した所定部位に、所望の光輝面をその表情を維持して表出することができ、光輝面とカラー塗装面との組み合わせからなる意匠性を適正に得ることができる。
【0023】
このような車両用ホイールの表面処理方法にあって、レーザー照射処理工程は、COレーザーを集光した集光点を、ホイール意匠面の所定部位に沿って500mm/s以上且つ8000mm/s以下の移動速度により移動するようにした方法では、ホイール意匠面に形成した塗膜を、発火を抑制しつつ除去することができる。そのため、上述した本発明にかかる作用効果を一層高め、且つ車両用ホイールの生産性を向上でき得る。
【0024】
また、このような車両用ホイールの表面処理方法にあって、レーザー照射処理工程が、COレーザーを100kW/cm以上且つ300kW/cm以下のエネルギー密度により照射するようにした方法では、ホイール意匠面に形成した塗膜を、発火を抑制しつつ除去することができる。そのため、上述した本発明にかかる作用効果を一層高め得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施例を添付図面を用いて詳述する。本実施例1,2にあっては、アルミニウム合金製の車両用ホイール1,51を鋳造により製造する製造工程に、本発明にかかる表面処理方法を適用している。
【実施例1】
【0026】
図1に、実施例1のアルミニウム合金製の車両用ホイール1の平面図を示す。この車両用ホイール1は、ディスク部2とリム部3とから構成されている。このディスク部2には、中央に車軸のハブと連結する略円盤状のハブ取付部4と、該ハブ取付部4の外周縁から放射状に設けられた複数のスポーク部6とを備えてなり、各スポーク部6の外端に、略異形円柱状のリム部3が設けられている。また、ディスク部2のハブ取付部4の中央には、車軸を挿通するハブ孔7が設けられており、該ハブ孔7の外側に周方向に均等間隔でボルト孔8が複数形成されている。このディスク部2のハブ取付部4とスポーク部6の表面により、所謂ホイール意匠面9が構成されている。
【0027】
そして、上記した各スポーク部6は、その表面側で横断面を山形とする形状を成していると共に、スポーク部6の径方向中心線に沿って窪んだ凹部6aが形成されている(図3参照)。すなわち、ホイール意匠面9を構成するスポーク部6の表面形状としては、径方向中心線に沿って凹部6aが形成され、その両側に傾斜部6b,6bが形成されている。尚、凹部6aは、径方向外端で最も深く、内方へ向かうに従って徐々に浅くなっている。
【0028】
このような車両用ホイール1のホイール意匠面9は、上記したスポーク部6の凹部6aがアルミニウム合金Mの光輝面X1となっており(図3参照)、さらに、この光輝面X1が、ハブ孔7の孔縁周部と所定のスポーク部6の凹部6aの内端とを連続するようにも設けられており、ハブ取付部4にも光輝面X1とする略星形の表出部位10を定めている。すなわち、スポーク部6の凹部6aと、所定の凹部6aからハブ孔7の孔周縁部に至る表出部位10とが、本発明にかかるホイール意匠面9の所定部位である。そして、この光輝面X1以外の部位は、カラー塗装面Y1となっている。このように、本実施例1のホイール意匠面9は、光輝面X1とカラー塗装面Y1とが組み合わされた外観としている。
【0029】
また、上記したリム部3は、従来と同じ形状のものを用いることができ、ここではその説明を省略する。
【0030】
次に、上記した光輝面X1とカラー塗装面Y1とからなるホイール意匠面9をなすための表面処理方法について詳述する。
アルミニウム合金製の車両用ホイール1を鋳造により製造する製造工程としては、図2のように、鋳造工程21、ショットブラスト処理工程22、切削加工工程23、バフ研磨工程24、塗装前処理工程25、塗装工程26、レーザー照射処理工程27、塗装前処理工程28、クリア塗装工程29を順次実施する。ここで、鋳造工程21は、アルミニウム合金Mの溶湯を所定金型に鋳込み、所定ホイール形状に成形する工程である。ショットブラスト処理工程22は、鋳造工程21で付着している離型剤や鋳造工程21で生成された酸化皮膜を除去する工程である。切削加工工程23は、鋳造工程21の際にできたバリを削除すると共に、ホイール表面(ホイール意匠面9、ディスク部2の裏面、リム部3の外周面及び内周面)を切削して、所望の寸法形状に整える工程である。尚、鋳造工程21、ショットブラスト処理工程22、切削加工工程23は、従来方法と同じ工程に従って実施することができ、詳細については省略する。
【0031】
上述した切削加工工程23の後に、バフ研磨工程24を実施する。このバフ研磨工程24は、所定の研磨剤を用いて行い、ホイール意匠面9を磨いて、アルミニウム合金Mの母材表面を所望の光輝面X1とする。ここで、バフ研磨工程24は、本実施例1にあってホイール意匠面9の全体に実施するようにしている。尚、図3(A)に、上記したスポーク部6にあって、アルミニウム合金Mの母材表面を光輝面X1とした状態を示している。
【0032】
バフ研磨工程24の後に、塗装前処理工程25を実施する。この塗装前処理工程25としては、ホイール表面全体を脱脂、洗浄し、さらに該ホイール表面に所定の処理液を塗布して該意匠面上に皮膜を形成する化成処理を施す。この化成処理による皮膜によって、ホイール表面を保護し耐食性を高めると共に、この上に塗装する粉体塗料の密着性を向上することができる。
【0033】
塗装前処理工程25の後に、塗装工程26を実施する。この塗装工程26としては、塗装前処理工程25により生成した皮膜上に所定の塗料を塗布して焼き付け乾燥することにより行う。ここで、ホイール意匠面9を塗布する工程としては、該ホイール意匠面9に粉体塗料を塗布して焼き付け乾燥し、次に所定のカラー塗料を塗布して焼き付け乾燥するようにしている。粉体塗料を塗布することにより、鋳造によって生じる梨地肌を隠して平滑な表面を成すと共に、滑らかな厚み感、艶、光沢感を高めるようにしている。カラー塗料を塗布することにより、所定カラーのカラー塗装面Y1となるようにしている。この塗装工程26を実施することにより、図3(B)のように、光輝面X1上に粉体塗料の塗膜Fとカラー塗料の塗膜Gとが積層された状態となる。尚、本実施例1にあっては、粉体塗料とカラー塗料とにアクリル系塗料を用いており、該粉体塗料にはクリア色のものを用いている。また、粉体塗料による塗膜Fとカラー塗料による塗膜Gとを合わせた膜厚が100μmとなるようにしている。
【0034】
塗装工程26の後に、レーザー照射処理工程27を実施する。レーザー照射処理工程27は、各スポーク部6の凹部6aとハブ取付部4の表出部位10とに、COレーザーを照射することにより行う。ここで、レーザー照射処理工程27は、COレーザーを照射する所定の照射装置(図示省略)を用いている。この照射装置としては、COレーザーを発振する発振器、COレーザーを集光して照射するレーザー照射部、発振器からレーザー照射部に至るレーザー光路、レーザー照射部を移動する駆動装置、該駆動装置を制御してレーザー照射部を移動制御する制御装置とから構成されている。ここで、レーザー照射部には、COレーザーを集光する所定のレンズと、該レンズにより集光した集光点を位置変換できるミラーとを備えており、該ミラーの傾斜角を前記制御装置で傾動制御することにより集光点の位置を移動することができるようになっている。このミラーの傾斜角には限界があるため、ミラーの傾斜角を傾動制御するだけではレーザーの照射範囲が限定される。そのため、レーザー照射部を移動することにより、ホイール意匠面を全体的に照射可能とするようにしている。すなわち、この照射装置は、レーザー照射部のミラーを角度制御してレーザー光の集光点を移動することにより照射し、該ミラーの角度制御による照射範囲を超える場合にはレーザー照射部を移動制御して、引き続きミラーの角度制御による照射を実施するようにしている。このようにレーザー照射部のミラーの角度制御と照射部の移動制御とによって、ホイール意匠面9の所定部位にCOレーザーを照射できるようになっている。尚、レーザー照射部のミラーの傾斜角を傾動制御することによって、レーザー光の集光点を移動できるため、該集光点を比較的高速で移動させることができ得る。
【0035】
上記したCOレーザーを照射する照射装置は、レーザー照射部のミラーの傾斜角を傾動することによって、レーザー光の集光点を移動し、該集光点の位置制御(移動経路制御)と移動速度制御とを行う。そして、ミラーの傾斜角を変更するだけで、移動速度制御できるため、集光点を比較的高速で移動させることが可能である。このようなレーザー照射部の移動速度や移動経路は、光輝面X1を表出する所定部位の形状に従って予め設定されており、照射装置の制御装置により自動的にレーザー照射部のミラーを角度変更し且つ該レーザー照射部を移動するように制御している。これにより、本実施例1にあっては、スポーク部6の凹部6aとハブ取付部4の表出部位10とに精度良くCOレーザーを照射することができる。
【0036】
本実施例1にあって、COレーザーの照射条件として、波長を10.6μm、エネルギー密度を120kW/cmとして設定している。そして、レーザー照射部のミラーの傾斜角を傾動制御することによる集光点の移動速度を1100mm/sとしている。ここで、エネルギー密度は、上記した発振器から発振したレーザー光の出力を、COレーザーの集光点の面積(スポット面積)で割った値であり、該集光点の面積当りのレーザー強さを示す仕事量である。このようなエネルギー密度および集光点の移動速度を設定することにより、上記した塗装工程で生成した塗膜F,Gを除去できると共に、レーザー光が当たることで生ずる熱量によって塗膜F,Gが発火してしまうことを防止できる。すなわち、レーザー光による熱量が、上記したアクリル系の粉体塗料とカラー塗料との発火点を超えないようにしつつ、塗膜F,Gを除去する。このように塗料が発火することを防止できるため、該発火によりアルミニウム合金Mの表面が炭化反応してしまうことを防ぎ、上記した光輝面X1を表出でき得る。
【0037】
また、COレーザーは、波長が比較的長いため、クリア色とした粉体塗料の塗膜Fをも除去できると共に、アルミニウム合金Mに吸収されず、該アルミニウム合金Mにダメージを与えない。尚、例えばYAGレーザーの場合には波長が約1μmであり比較的短いために、クリア色の塗膜を透過してしまい充分に除去できないと共に、アルミニウム合金Mに吸収されてダメージを生じ易い。このようなことから、本発明にあっては、COレーザーを用いている。
【0038】
そして、このような照射条件では、上記した塗装工程で生成した粉体塗料およびカラー塗料の塗膜F,Gが比較的厚い(50〜200μm)ために、一回の照射で当該塗膜F,Gを充分に除去することが難しい。そのため、COレーザーを二回照射することによって、塗膜F,Gを完全に除去できるようにしている。
【0039】
このようにCOレーザーを照射することによって、図3(C)のように、スポーク部6の凹部6aとハブ取付部4の表出部位10とに形成されている粉体塗料の塗膜Fとカラー塗料の塗膜Gとを適切に除去することができ得る。そして、COレーザーの集光点は数μm単位の領域であるため、当該集光点が当たった微小範囲の塗膜F,Gを除去でき、この微小範囲を集光点の移動によって拡げていく。そのため、集光点が当たらない部位では塗膜F,Gを除去したり傷つけたりしないから、塗膜除去する部位と塗膜との境界を正確かつシャープに形成することができ得る。このようにして、塗膜F,Gを除去して表出した光輝面X1とカラー塗料が塗布されているカラー塗装面Y1とがその境界ではっきりと区切られるため、ホイール意匠面9が優れた意匠性を有するものとなる。
【0040】
レーザー照射処理工程27の後には、塗装前処理工程28を実施する。この塗装前処理工程28は、レーザー照射処理工程27により塗膜F,Gを除去して光輝面X1を表出した部位(スポーク部6の凹部6aおよびハブ取付部4の表出部位10)に実施する。そして、この塗装前処理工程28は、上記した塗装前処理工程25と同様に実施する。すなわち、表出した光輝面X1を脱脂、洗浄し、さらに所定の処理液を塗布して該意匠面上に皮膜を形成する化成処理を施す。これにより、後述するクリア塗装工程でクリア塗料と光輝面X1との密着性を向上するようにしている。これは、レーザー照射処理工程27によって、表出した光輝面X1で、前に実施した塗装前処理工程25による化成処理の作用効果が減じてしまうことが懸念されるために、同様の塗装前処理工程28を実施するようにしている。
【0041】
この塗装前処理工程28の次に、クリア塗装工程29を実施する。このクリア塗装工程29では、所定のクリア塗料を塗布することによって、図3(D)のように光輝面X1とカラー塗装面Y1とを被覆するようにクリア塗料の塗膜Hが形成される。このクリア塗料の塗膜Hにより、上述した塗装工程26でカラー塗料を塗布したカラー塗装面Y1と、レーザー照射処理工程27で表出した光輝面X1とを保護すると共に、ホイール意匠面9の光沢性を高めている。
【0042】
このような本実施例1の表面処理方法によって、アルミニウム合金Mの母材表面を研磨した光輝面X1とカラー塗装面Y1とを組み合わせたホイール意匠面9を生成することができ得る。そして、上述したようにCOレーザーによって塗膜除去を行っていることから、カラー塗装面Y1との境界をシャープに形成でき、且つカラー塗装面Y1の境界部分に塗膜F,Gの欠けや割れ等の不具合が発生することを防止でき得る。そのため、上述した従来のマスキングして塗装する方法に比して、ホイール意匠面の意匠性が向上する。また、マスキング用のテープや塗料を要せず且つマスキングする作業も必要としないことから、マスキングにかかるコストと時間を省くことができ、車両用ホイールの生産性が向上する。特に、マスキングにより境界をできるだけ良好に処理しようとすると、高度なテクニックを要することから、本実施例1の表面処理方法はコストや時間の低減効果に優れる。
【0043】
上述した本実施例1にあって、バフ研磨工程24、塗装前処理工程25、塗装工程26、レーザー照射処理工程27、クリア塗装工程29とによって、本発明にかかる車両用ホイール1の表面処理方法を構成している。ここで、バフ研磨工程24が、本発明にかかる光輝面生成工程である。
【実施例2】
【0044】
図4に、実施例2のアルミニウム合金製の車両用ホイール51の平面図を示す。この車両用ホイール51は、ディスク部52とリム部53とから構成されている。そして、ディスク部52には、そのハブ取付部54のハブ孔7の孔周縁からスポーク部56を通じてディスク部52の外端に至る略平面状の平滑面部52aが形成されている。そして、平滑面部52aが各スポーク部56の径方向中心線に沿って設けられており、該スポーク部56では平滑面部52aの両側に傾斜面部56a,56aが設けられている。このように、平滑面部52aは、ハブ取付部54と各スポーク部56とに連続するように設けられている。尚、本実施例2にあって、平滑面部52aが本発明にかかる所定部位である。
【0045】
本実施例2の車両用ホイール51は、そのホイール意匠面59が、上記した平滑面部52aをアルミニウム合金Mの光輝面X2とし、該光輝面X2以外の部位が所定カラー塗装面Y2となっている(図5参照)。このように、ホイール意匠面59は、光輝面X2とカラー塗装面Y2とが組み合わされた外観としている。
【0046】
次に、上記の車両用ホイール51のホイール意匠面59を生成する表面処理方法について説明する。本実施例2にあっては、上述した実施例1のバフ研磨工程24を仕上げ加工工程に代えた方法である(図示省略)。
切削加工工程23後に、上記した平滑面部52aを機械加工により切削する仕上げ加工工程を実施する。これにより平滑面部52aを所望の光輝面X2とする。ここで、平滑面部52aは、略平面状であるために機械加工によって比較的容易かつ精度良く所望の光輝面X2を得ることができる。さらに、機械加工は自動化が容易であり加工時間も短時間で良いという利点があり、車両用ホイール51の生産工程として好適である。この仕上げ加工工程が、本発明にかかる光輝面生成工程である。
【0047】
仕上げ加工工程後に、上述した実施例1と同様に塗装前処理工程25、塗装工程26を順に実施する。その後、レーザー照射処理工程27を実施する。このレーザー照射処理工程27にあっても、実施例1と同様のレーザー照射装置(図示省略)を用いて、同様の照射条件によりCOレーザーを照射している。このレーザー照射処理装置27により、平滑面部52aに形成されている塗膜(粉体塗料による塗膜Fとカラー塗料による塗膜G)を除去する。その際に、レーザー照射部を、レーザー光がホイール意匠面59に対して垂直に当たるように制御する。これにより、図5(A),(B)のように、平滑面部52a上に積層した粉体塗料の塗膜Fとカラー塗料の塗膜Gとを除去できると共に、このCOレーザーを照射することによって傾斜面部56a,56aの塗膜F,Gが欠けたり割れたりすることがない。そのため、塗膜F,Gとの境界をシャープに形成することができ、カラー塗装面Y2と平滑面部52aの光輝面X2とが組み合わされた、優れた意匠性を有するホイール意匠面59となる。
【0048】
このレーザー照射処理工程27の後に、上述した実施例1と同様に、塗装前処理工程28を実施してクリア塗装工程29を行う。このようにして車両用ホイール51のホイール意匠面59を生成する。尚、本実施例2にあっては、車両用ホイール51の形状が異なること、機械加工による仕上げ加工工程により所望の光輝面X2を生成していること以外は、上述した実施例1と同様であり、その詳細を省略している。
【0049】
実施例2の表面処理方法にあっても、光輝面X2とカラー塗装面Y2とが組み合わされ、且つ両者の境界がシャープに表わされたホイール意匠面59を生成することができ得る。そして、COレーザーにより塗膜F,Gを除去していることから、前記境界でカラー塗装面Y2の塗膜F,Gに欠けや割れ等を生じることがない。さらに、本実施例2は、機械加工により光輝面X2を生成するようにしていることから、仕上げ加工工程に要する時間が比較的短く、総じて車両用ホイール51の生産性を高く維持できるという利点もある。また、上述した実施例1と同様に、COレーザーによる本発明の作用効果を発揮し得る。
【0050】
次に、本実施例1,2に関連して、上記したレーザー光の集光点の移動速度と塗膜の発火とについて予備検討した結果を説明する。
この予備検討では、カラー塗料としてシルバー色の塗料とグレー色の塗料をアルミニウム合金のテストピース上に塗布し、その塗膜の厚みと集光点の移動速度とによって塗膜の発火する条件を調べる試験を実施した。尚、この予備検討では、エネルギー密度を120kW/cmとしている。この試験結果を図6(A),(B)に示す。この試験結果では、各図のプロット点が発火した膜厚と移動速度とを表しており、各プロット点より移動速度が遅い場合には発火したことを示している。この結果から、シルバー色とグレー色のいずれの塗料を塗布した場合にあっても、膜厚が厚くなるに従って発火する集光点の移動速度が高くなった。すなわち、塗膜の膜厚を厚くするに従って、発火しないためには集光点の移動速度を高速化する必要がある。そして、車両用ホイールの一般的な膜厚範囲である50μm〜200μmの範囲では、集光点の移動速度が500mm/sより低速であると発火する。また、この膜厚範囲では、集光点の移動速度が1100mm/sより高速とすると発火しない。尚、この予備検討では、カラー塗料だけを用いていることから、粉体塗料を塗布する実際の車両用ホイールとは厳密には条件が異なる。また、粉体塗料を塗布している場合には、カラー塗料の塗膜は薄くなるため、移動速度が500mm/s以上とすることにより発火を抑制でき得ると思われる。
【0051】
また、エネルギー密度を120kW/cmより高くした場合については充分な検討を実施していないが、発火してしまう膜厚と集光点の移動速度との関係は同様の傾向を示すと考えられる。しかし、120kW/cmよりも発火し易くなるため、集光点の移動速度を高速化するか、レーザー光が当たるところにエアーを吹き付ける等して熱量を低減すること等の処理条件を変更することが必要と思われる。このようにエネルギー密度の設定に応じて、集光点の移動速度を適宜設定したり、エアーを吹き付ける等を実施することによって、塗膜が発火することを抑制でき得る。
【0052】
上述した実施例1,2の表面処理方法にあっては、光輝面とカラー塗装面とを組み合わせるホイール意匠面を生成するようにしているが、その他にも、COレーザーの照射により文字として塗膜を除去するようにしても良い。この場合には、アルミニウム合金の光輝面が文字としてホイール意匠面に表出されることとなる。
【0053】
また、実施例1,2では、塗装工程にあって、粉体塗料とカラー塗料とを塗布するようにしているが、この塗装工程でカラー塗料の上にクリア塗料を塗布することも可能である。この場合にあっても、COレーザーは、クリア塗料の塗膜を充分に除去することができるため、光輝面を確実に表出することができ得る。また、カラー塗料は、グレーやブラックなどのカラー以外にも、メタリック系のものを用いることも可能であり、メタリック系の塗料による塗膜であっても、COレーザーにより充分に除去でき得る。
【0054】
また、レーザー照射処理工程では、COレーザーのレーザー光を二回照射するようにしているが、エネルギー密度や集光点の移動速度を調整することにより、照射回数を一回としたり、三回とするなど適宜調整可能である。また、複数回照射する場合には、各回毎にエネルギー密度や集光点の移動速度を夫々異なる設定とすることも可能である。例えば、二回照射する場合にあって、一回目は比較的エネルギー密度を高く且つ移動速度を低速として膜厚を多く除去できるようにし、二回目はエネルギー密度を低くかつ移動速度を高速とするようにして、総合的に当該工程に要する時間を短くすることもできる。さらには、COレーザーを照射する際に、集光点が当たる部位にエアーを吹き付けることによって塗膜の熱上昇を抑制するようにしても良い。これにより、一層塗膜の発火を防止する効果が高くなる。尚、生産工程から考慮すれば、このようなエアーを用いずに発火を抑制できることが好適であり、発火を抑制するようにエネルギー密度や集光点の移動速度を設定することが良い。
【0055】
また、上述した実施例1,2では、比較的広い領域にCOレーザーを照射して光輝面を生成するようにしているが、COレーザーを微小領域に照射して光輝面を生成することもできる。例えば、図7のように、実施例1と同形状の車両用ホール61にあって、そのスポーク部6の片側傾斜部6bの上部に、網目状に複数の光輝面X3を生成する。この場合、レーザー照射処理工程では、COレーザーの集光点をその移動に伴って間欠的に照射するように制御することによって、塗膜G,Fを除去した部位と除去しない部位とが交互に列ぶようにして、網目状に複数の光輝面X3を表出する。このように片側傾斜部6では、塗装面Y1に複数の光輝面X3が網目状に表出してなる表面模様を生成される。ここで、光輝面X3は、COレーザーの集光点によって塗膜G,Fを除去して生成されることから、該集光点よりも面積の大きいものであれば生成できるため、比較的小さい(微小な)面積のものを正確かつ容易に生成できる。特に、微小な面積の光輝面X3を生成する場合にあっても、該光輝面X3と塗膜G,Fとの境界をシャープに形成することができるため、網目状の表面模様をはっきりとした外観に生成でき得る。尚、このように微小な光輝面X3を複数生成することは、上述した従来の、マスキングして研磨する方法や切削加工する方法ではできず、本発明により達成可能となっている。また、ここでは、網目状に複数の光輝面X3を生成するようにしたが、その他にも、縞状などの形状に光輝面を生成することも可能であり、様々な表面模様を生成でき得る。また、光輝面を、所定のバーコードや2次元コードの形状に生成することも可能であり、これらコードにより当該ホイールの情報を記録するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1の車両用ホイール1の平面図である。
【図2】車両用ホイール1の製造工程を示す工程部である。
【図3】車両用ホイール1のスポーク部6における、バフ研磨工程24からクリア塗装工程29に至る処理過程を表す説明図である。
【図4】実施例2の車両用ホイール51の平面図である。
【図5】車両用ホイール51のスポーク部56における、レーザー照射処理工程27における処理過程を表す説明図である。
【図6】塗膜発火の条件を調べるための予備検討における、(A)シルバー色塗料の塗膜と(B)グレー色塗料の塗膜との試験結果である。
【図7】別例の車両用ホイール61の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1,51 車両用ホイール
9,59 ホイール意匠面
6a 凹部(所定部位)
10 表出部位(所定部位)
24 バフ研磨工程(光輝面生成工程)
25 塗装前処理工程
26 塗装工程
27 レーザー照射処理工程
29 クリア塗装工程
52a 平滑面部
X1,X2 光輝面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のホイール形状に成形した後に、ホイール意匠面を所望の光輝面とする光輝面成形工程と、
ホイール意匠面に化成処理を行う塗装前処理工程と、
化成処理したホイール意匠面に所定塗料を塗布する塗装工程と、
ホイール意匠面の所定部位にCOレーザーを照射することにより、当該所定部位に前記塗装工程で生成した塗膜を除去するようにしたレーザー照射処理工程と、
ホイール意匠面に所定のクリア塗料を塗布するクリア塗装工程と
を順に実施するようにしていることを特徴とする車両用ホイールの表面処理方法。
【請求項2】
レーザー照射処理工程は、COレーザーを集光した集光点を、ホイール意匠面の所定部位に沿って500mm/s以上且つ8000mm/s以下の移動速度により移動することにより、当該所定部位の塗膜を除去するようにしている請求項1に記載の車両用ホイールの表面処理方法。
【請求項3】
レーザー照射処理工程が、COレーザーを100kW/cm以上且つ300kW/cm以下のエネルギー密度により照射するようにしている請求項1又は請求項2に記載の車両用ホイールの表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−29333(P2009−29333A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197195(P2007−197195)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(391006430)中央精機株式会社 (128)