説明

車両用ミラー装置

【課題】従来の防眩タイプの車両用ミラー装置では、ミラー2にひずみが発生する可能性があると言う点である。
【解決手段】樹脂製のミラーハウジング3の開口部31の縁部と、樹脂製のミラー2の一面(枠部22の一面)とを接着テープ、接着剤、溶着などの結合手段により結合する。この結果、ミラー2には樹脂の反発力が作用しないので、ミラー2に歪みが発生する可能性がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂製のミラーと樹脂製のミラーハウジングとから構成されている車両用ミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、この車両用ミラー装置について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1にそれぞれ対応する。この車両用ミラー装置は、樹脂製のミラー(2)と樹脂製のミラーハウジング(38)とから構成されている。前記ミラーハウジング(38)は、一面が開口しかつ他面が閉塞した中空形状をなす。前記ミラー(2)の一面には、反射面処理が施されている。前記ミラー(2)の縁部が前記ミラーハウジング(38)の開口部の縁部に圧入嵌合により固定されている。前記ミラー(2)の反射面において、自車の後方を視認することができる。
【0003】
ところが、前記の従来の車両用ミラー装置は、ミラー(2)の縁部をミラーハウジング(38)の開口部の縁部に圧入嵌合して、ミラー(2)およびミラーハウジング(38)の樹脂の反発力により、ミラー(2)をミラーハウジング(38)に固定させるものである。このために、前記の従来の車両用ミラー装置は、ミラー(2)に樹脂の反発力が作用して、ミラー(2)に歪みが発生する可能性がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−291727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、前記の従来の車両用ミラー装置では、ミラー(2)にひずみが発生する可能性があると言う点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ミラーハウジングの開口部の縁部とミラーの一面とを接着テープ、接着剤、溶着などの結合手段により結合する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用ミラー装置は、上記の課題を解決するための手段により、ミラーには樹脂の反発力が作用しないので、ミラーに歪みが発生する可能性がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例のうちの2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0009】
図1は、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例1を示す。なお、図1(A)は、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例1を示す正面図、図1(B)は、ミラーハウジングがミラーとほぼ同等の大きさの場合の平面図、図1(C)は、ミラーハウジングがミラーより小さい場合の平面図、図1(D)は、縦断面図である。
【0010】
以下、この実施例1における車両用ミラー装置について説明する。なお、この明細書中、「後」とは、自動車の前進行方向と逆方向であって、ドライバー側から見た「後」を言う。また、「前」とは、自動車の前進行方向であって、ドライバー側から見た「前」をいう。さらに、「上」、「下」、「左」、「右」は、ドライバー側から見た「上」、「下」、「左」、「右」を言う。
【0011】
図において、符号1は、この実施例1における車両用ミラー装置である。前記車両用ミラー装置1は、樹脂製のミラー2(特許文献1を参照)と樹脂製のミラーハウジング3とから構成されている。前記ミラーハウジング3は、一面(後面)31が開口しかつ他面(前面)32が閉塞した中空形状、すなわち、内部33が中空の形状をなすものである。前記ミラーハウジング3は、図1(B)および(C)に示すように、大きさ(開口部31の大きさ)が前記ミラー2とほぼ同等の大きさのものと、前記ミラー2の中間部とほぼ同等の大きさのものとがある。
【0012】
前記ミラー2は、反射面を有するミラー部21と、前記ミラー部21の縁部に一体に設けられた枠部22と、から構成されている。前記ミラー部21の一面(前面)には、図1(D)の太線に示すように、反射面処理23が施されている。前記反射面処理23としては、フィルムにアルミ蒸着を施した蒸着フィルムを貼ったり、ミラー部21の一面にアルミ蒸着を直接施したり、ミラー部21の一面に銀色塗装を直接塗布したりする処理などである。
【0013】
前記ミラーハウジング3の開口部31の縁部と前記ミラー2の一面、すなわち、前記枠部22の一面とが、接着テープ、接着剤、溶着などの結合手段により、結合されている。
【0014】
前記ミラー2の角部、すなわち、前記枠部22の角部は、湾曲形状に形成されている。これにより、前記ミラー2の角部(前記枠部22の角部)に当たった際に、湾曲形状の前記ミラー2の角部(前記枠部22の角部)が緩衝作用を果たすことができる。なお、前記ミラー2の角部(前記枠部22の角部)を湾曲形状に形成しなくても良い。
【0015】
前記ミラー2の縁部、すなわち、前記枠部22には、不透明処理が施されている。前記不透明処理としては、透明樹脂のミラー部21と不透明樹脂(着色樹脂)枠部22とを2色成形したり、枠部22の表面をシボ加工(エンボッシング加工)を施したりする処理である。これにより、不透明な枠部22からミラーハウジング3の内部33を見えなくすることができ、見栄えが向上する。なお、前記ミラー2の縁部(枠部22)に不透明処理を施さなくても良い。
【0016】
前記ミラー2の一面の反射面処理が施される部分、すなわち、前記ミラー部21の一面は、他の部分、すなわち、前記枠部22よりも段差を介して突出した凸形状(一段出っ張った凸形状)をなす。これにより、前記反射面処理23が施し易くなる。なお、前記ミラー2の一面が凸形状でなくても良い。
【0017】
前記車両用ミラー装置1は、以上のごとき構成からなるので、ミラー2の反射面、すなわち、ミラー部21の反射面において、自車の後方を視認することができる。また、前記車両用ミラー装置1は、安価な樹脂製ミラー2を使用することにより、製造コストを安価にすることができる。また、前記車両用ミラー装置1は、軽量な樹脂ミラー2を使用することにより、車両用ミラー装置1を軽量化することができ、この軽量化された車両用ミラー装置1を車体に取り付けるための取付手段(たとえば、ステーなど)の剛性を落とすことができ、その分、製造コストを安価にすることができる。さらに、前記車両用ミラー装置1は、プリズム形状のガラス製のミラーと比較して、切削加工が不要であるからその分製造コストを安価にすることができ、しかも、切削加工による廃棄物の発生がないので廃棄物を低減することができ環境に好ましい。
【0018】
前記車両用ミラー装置1は、以上のごとき構成、すなわち、ミラーハウジング3の開口部31の縁部とミラー2の一面(枠部22の一面)とを接着テープ、接着剤、溶着などの結合手段により結合するものであるから、ミラー(2)の縁部をミラーハウジング(38)の開口部の縁部に圧入嵌合する従来の車両用ミラー装置のように、ミラー2には樹脂の反発力が作用しない。この結果、前記車両用ミラー装置1は、樹脂製のミラー2に歪みが発生する可能性がない。
【実施例2】
【0019】
図2および図3は、この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例2を示す。図中、図1と同符号は、同一のものを示す。
【0020】
この実施例2における車両用ミラー装置1Aは、車内に配置される防眩タイプのインサイドミラー装置であって、ミラー2Aまたは2Bと、ミラーハウジング3Aと、反射率切替機構としてのブラケット4および操作レバー(または、ノブ)5と、ステー6とを備える。
【0021】
前記ミラー2Aは、図2および図3の上の図に示すように、透明樹脂のミラー部21と不透明樹脂(着色樹脂)枠部22Aとを2色成形してなるものである。また、前記ミラー2Bは、図3の下の図に示すように、透明樹脂のミラー部21と一体に成形された透明樹脂の枠部22Bの表面にシボ加工(エンボッシング加工)24を施してなるものである。すなわち、前記枠部22A、22Bには、不透明処理が施されている。前記枠部22の角部は、湾曲形状に形成されている。前記枠部22の一面には、位置決め用の凹部25が設けられている。また、前記ミラー部21の一面には、前記枠部22A、22Bよりも段差を介して突出した凸部26が一体に設けられている。前記凸部26には、反射面処理23が施されている。なお、図3のミラー2Aおよび2Bの符号Aで示される範囲は、反射面処理23が施される範囲である。また、図3のミラー2Bの符号Bで示される範囲は、シボ加工(エンボッシング加工)24が施される範囲である。
【0022】
前記ミラーハウジング3Aは、樹脂製から構成されている。前記ミラーハウジング3Aの開口部31は、前記ミラー2Aまたは3Aとほぼ同等の大きさを有する。前記開口部31の縁部には、位置決め用の凸部34が前記ミラー2A、3Aの凹部25に対応して一体に設けられている。前記ミラーハウジング3Aの閉塞部32のほぼ中央には、透孔37が設けられている。また、前記ミラーハウジング3Aの閉塞部32の下部には、窓部35が設けられている。
【0023】
前記ミラーハウジング3Aの開口部31の縁部と前記ミラー2A、3Aの枠部22A、22B一面、すなわち、前記ミラーハウジング3Aの凸部34と前記ミラー2A、3Aの凹部26とを相互に嵌合させて位置決めし、そこで、接着テープ、ホットメルトなどの接着剤、溶着などの結合手段36により、結合する。
【0024】
前記ミラーハウジング3Aの内部33には、前記ブラケット4と前記操作レバー5とが回転軸機構など(図示せず)によりそれぞれ回転可能に取り付けられている。前記ブラケット4と前記操作レバー5とは、トグルタイプの反射率切替機構を介して結合されている。前記ブラケット4には、球凹部41が設けられている。また、前記操作レバー5の一部(ノブ部)は、前記ミラーハウジング3Aの窓部35を経て外部に突出する。
【0025】
前記ステー6の一端は、車体に装備されている。すなわち、前記ステー6の一端は、脱落機構(図示せず)を有するベースなどの取付手段(図示せず)により、車室内の取付箇所(図示せず)、たとえば、フロントインサイドルーフパネルやフロントウインドパネル内面などに脱落可能に取り付けられている。この結果、前記車両用ミラー装置1Aに所定値以上の衝撃力がかかると、前記ステー6の一端が車体から脱落するので、前記車両用ミラー装置1Aに緩衝作用が作用して、安全性が確保されている。前記ステー6の他端には、反射面角度調整機構としての球部61が一体に設けられている。前記ステー6の球部61は、前記ミラーハウジング3Aの透孔37を経て前記ブラケット4の球凹部41に圧入する。これにより、前記ミラーハウジング3Aは、前記ブラケット4を介して前記ステー6の他端に反射面角度調整機構(球部61および球凹部41などからなる機構)を介して保持される。
【0026】
この実施例2における車両用ミラー装置1Aは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0027】
まず、図2に示すように、ミラー2Aが昼間用の反射率の状態のとき、ミラー2Aの反射面が下に向いた状態にあり、また、操作レバー5のノブが前側に突出した状態(図2中の実線で示す状態)にある。この状態のときに、入射光線がミラー2Aに入射すると、この入射光線がミラー2Aの裏面の反射面(反射面処理23が施されている面)で反射して、高い反射率の鏡面反射光線としてドライバーの目に入射する。
【0028】
つぎに、操作レバー5のノブを、図2中の実線で示す状態から図2中の二点鎖線で示す状態に切り替える。すなわち、操作レバー5のノブをミラーハウジング3Aに対して前側から下側に引く。すると、操作レバー5およびブラケット4からなる反射率切替機構を介してミラーハウジング3Aが夜間用の反射率の状態となり、ミラー2Aの反射面が上を向いた状態となる。この状態のときに、入射光線がミラー2Aに入射すると、この入射光線がミラー2Aの表面(反射膜処理23が施されている裏面と反対側の面)で反射して、低い反射率の表面反射光線としてドライバーの目に入射する。
【0029】
逆に、操作レバー5のノブを、図2中の二点鎖線で示す状態から図2中の実線で示す状態に切り替える。すなわち、操作レバー5のノブをミラーハウジング3Aに対して下側から前側に押す。すると、操作レバー5およびブラケット4からなる反射率切替機構を介してミラーハウジング3Aが昼間用の反射率の状態となり、ミラー2Aの反射面が下を向いた状態となる。
【0030】
それから、ミラー3Aを掴んで反射面角度調整機構の球部61および球凹部41の中心Oを通る中心線を回転軸として前後上下左右に回動傾動させる。すると、ミラーハウジング3Aがステー6に対して前後上下左右に回動傾動して、ミラーハウジング3Aに結合手段を介して結合されているミラー2Aの反射面の角度がドライバーの視線に合わせて調整される。
【0031】
この実施例2における車両用ミラー装置1Aは、前記の実施例1における車両用ミラー装置1と、ほぼ同様の効果を達成することができる。すなわち、車両用ミラー装置1Aは、ミラーハウジング3Aの開口部31の縁部の凸部34とミラー2A、2Bの枠部22A、22Bの一面の凹部25とを接着テープ、接着剤、溶着などの結合手段36により結合するものであるから、ミラー2A、2Bには樹脂の反発力が作用せず、その結果、樹脂製のミラー2A、2Bに歪みが発生する可能性がない。特に、位置決め用の凸部34と凹部25とが嵌合するので、ミラーハウジング3Aとミラー2A、2Bとを正確にかつ確実に結合することができる。
【0032】
また、車両用ミラー装置1Aは、ミラー2A、2Bの角部、すなわち、枠部22A、22Bの角部は、湾曲形状に形成されているので、枠部22A、22Bの角部に当たった際に、湾曲形状の枠部22A、22Bの角部が緩衝作用を果たすことができる。また、ミラー2A、2Bの縁部、すなわち、枠部22A、22Bには、不透明樹脂(着色樹脂)、シボ加工(エンボッシング加工)24などの不透明処理が施されているので、ミラー部21に透明な樹脂を使用しても、不透明な枠部22A、22Bからミラーハウジング3Aの内部33を見えなくすることができ、見栄えが向上する。さらに、ミラー2A、2Bの一面の反射面処理23が施される部分、すなわち、ミラー部21の一面に凸部26を設けたので、反射面処理23が施し易くなる。
【0033】
しかも、車両用ミラー装置1Aは、安価な樹脂製ミラー2A、2Bを使用することにより、製造コストを安価にすることができる。また、車両用ミラー装置1Aは、軽量な樹脂ミラー2A、2Bを使用することにより、車両用ミラー装置1Aを軽量化することができ、この軽量化された車両用ミラー装置1Aを車体に取り付けるための取付手段(たとえば、ステー6など)の剛性を落とすことができ、その分、製造コストを安価にすることができる。さらに、車両用ミラー装置1Aは、プリズム形状のガラス製のミラーと比較して、切削加工が不要であるからその分製造コストを安価にすることができ、しかも、切削加工による廃棄物の発生がないので廃棄物を低減することができ環境に好ましい。
【0034】
なお、前記の実施例1、2においては、プリズム形状のミラー2、2A、2Bを使用するものである。ところが、この発明においては、平板形状のミラーを使用する車両用ミラー装置、たとえば、トラック用のインサイドミラー装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例1を示す説明図である。
【図2】この発明にかかる車両用ミラー装置の実施例1を示す縦断面図である。
【図3】同じく、ミラーハウジングとミラーとを分解した状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1、1A 車両用ミラー装置
2、2A、2B ミラー
21 ミラー部
22 枠部
23 反射面処理
24 シボ加工
25 凹部
26 凸部
3、3A ミラーハウジング
31 開口部
32 閉塞部
33 内部
34 凸部
35 窓部
36 結合手段
37 透孔
4 ブラケット
41 球凹部
5 操作レバー
6 ステー
61 球部
O 反射面角度調整機構の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のミラーと樹脂製のミラーハウジングとから構成されている車両用ミラー装置において、
樹脂製から構成されていて、一面が開口しかつ他面が閉塞した中空形状をなす前記ミラーハウジングと、
樹脂製から構成されていて、一面には反射面処理が施されている前記ミラーと、
を備え、
前記ミラーハウジングの開口部の縁部と前記ミラーの一面とが、接着テープ、接着剤、溶着などの結合手段により、結合されている、ことを特徴とする車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記ミラーは、反射面を有するミラー部と、前記ミラー部の縁部に一体に設けられた枠部と、から構成されており、
前記枠部と前記ミラーハウジングの開口部の縁部とが、前記結合手段により結合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記ミラーの縁部には、不透明処理が施されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記ミラーの一面の反射面処理が施される部分は、他の部分よりも突出した凸形状をなす、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用ミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−103620(P2006−103620A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296158(P2004−296158)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)