説明

車両用リヤゲート

【課題】跳上げ開放時の車体後方への迫り出し量を減少できる構造の車両用リヤゲートであって、製造コストの安価な簡単な構造であり、一般のリヤゲートにも即座に適用することが可能な汎用性の高い車両用リヤゲートを提供する。
【解決手段】リヤゲート2が跳上げ開放される際、四節揺動リンク機構3の上部揺動アーム3Cおよび下部揺動アーム3Dの揺動により、リヤゲート2の上端部が車体1の後部上方から前方に延出する軌跡を描くため、リヤゲート2の下端部が車体1の後方へ迫り出す量が減少する。四節揺動リンク機構3は、構造が簡単であって一般のリヤゲートにも適用することが可能であり、汎用性が高く、製造コストも安価である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体後部に設けられる跳上げ開放式の車両用リヤゲートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体後部に設けられる車両用リヤゲートとして、開放時に下端部が上方に跳ね上げられる跳上げ開放式のリヤゲートが従来一般に知られている。この種の車両用リヤゲートは、通常、上端部が車体後部の上部にヒンジ結合されており、開放時にはヒンジ結合部を揺動中心として下端部が上方に跳ね上げられるようになっている。
【0003】
ところで、この種の跳上げ開放式の車両用リヤゲートは、その跳上げ開放時に下端部が車体後方に大きく迫り出すため、完全に上方に跳ね上げて開放するには、車体後方に広いスペースが必要となり、車体後方のスペースが狭い場合には、十分に開放できないという制約がある。
【0004】
このような技術的背景のもとに、跳上げ開放時の車体後方への迫り出し量を減少し得る構造のリヤゲートに関する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、平行リンク機構を介して上下に連結された上部開閉体と下部開閉体とでバックドア(リヤゲート)を構成し、その跳上げ開放時には下部開閉体を上部開閉体の外側に重ねることで車体後方への迫り出し量を減少可能とした構造が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、ヒンジ回動軸を介して相対回動可能に構成される上側ゲート部材と下側ゲート部材とで中間部位が屈曲(中折)可能なテールゲート(リヤゲート)を構成し、その跳上げ開放時には下側ゲート部材を内側に屈曲させることで車体後方への迫り出し量を減少可能とした構造が提案されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、車体の後部開口の上縁部に対してバックドア(リヤゲート)の上縁部を旋回可能に支持するリンク部材と、車体の後部開口の両縁部とバックドアの両縁部と間に介設された伸縮式ステー部材とを備え、伸縮式ステー部材の伸張によりバックドアを跳上げ開放する際に、バックドアの上縁部を車体の後部開口の上縁部に対して旋回させることでバックドア(リヤゲート)の車体後方への迫り出し量を減少可能とした構造が提案されている。
【特許文献1】特開2003−118378号公報
【特許文献2】特開2002−67697号公報
【特許文献3】特開平9−220934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された構造は、リヤゲートを上部開閉体と下部開閉体とで構成する必要がある。また、特許文献2に記載された構造は、リヤゲートを上側ゲート部材と下側ゲート部材とで構成する必要がある。そして、特許文献3に記載された構造は、車体の後部開口の両縁部とバックドアの両縁部と間に専用の伸縮式ステー部材を介設する必要がある。
【0008】
すなわち、特許文献1〜3に記載された構造は、いずれも複雑な構造が要求され、製造コストが嵩むという問題がある。また、リヤゲートを専用構造とする必要があるため、一般のリヤゲートに適用することができず、汎用性に欠けるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点に対応してなされたものであり、跳上げ開放時の車体後方への迫り出し量を減少できる構造の車両用リヤゲートであって、製造コストの安価な簡単な構造であり、一般のリヤゲートにも適用することが可能な汎用性の高い車両用リヤゲートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決する手段として、本発明に係る車両用リヤゲートは、自動車の車体後部に設けられる跳上げ開放式のリヤゲートであって、車体の後部開口部の両側の上部に左右一対の四節揺動リンク機構を介して連結されており、前記左右一対の四節揺動リンク機構は、前記リヤゲートの跳上げ開放時にリヤゲートの上端部が車体の後部上方から前方に延出する軌跡を描くように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る車両用リヤゲートでは、リヤゲートが跳上げ開放される際、左右一対の四節揺動リンク機構の揺動により、リヤゲートの上端部が車体の後部上方から前方に延出する軌跡を描くため、リヤゲートの下端部が車体後方へ迫り出す量が減少する。
【0012】
本発明の車両用リヤゲートにおいて、左右一対の四節揺動リンク機構は、車体の後部開口部の両側に固定される左右一対の車体側ブラケットと、リヤゲートの左右の縁部に固定される左右一対のゲート側ブラケットと、前記左右一対の車体側ブラケットの上部に基端部が枢着され、先端部が左右一対のゲート側ブラケットの上部に枢着された左右一対の上部揺動アームと、前記左右一対の車体側ブラケットの下部に基端部が枢着され、先端部が左右一対のゲート側ブラケットの下部に枢着され、前記上部揺動アームより長い左右一対の下部揺動アームとを備えた左右一対のアセンブリとして構成するのが好ましい。
【0013】
この場合、車体後部の開口部の両側に各アセンブリの各車体側ブラケットを固定し、リヤゲートの左右の縁部に各アセンブリの各ゲート側ブラケットを固定することで、車体後部にリヤゲートを精度良く容易に組み付けることが可能となる。
【0014】
また、本発明の車両用リヤゲートにおいて、リヤゲートを跳上げ開放状態に保持する伸縮自在な左右一対のガスステーが左右一対のアセンブリの車体側ブラケットとゲート側ブラケットとの間に予め組み付けられていると、リヤゲートを車体に取り付ける際に左右一対のガスステーを別途に組み付ける作業が不要となるので好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車両用リヤゲートによれば、リヤゲートが跳上げ開放される際、左右一対の四節揺動リンク機構の揺動により、リヤゲートの上端部が車体の後部上方から前方に延出する軌跡を描くため、リヤゲートの下端部が車体後方へ迫り出す量を減少させることができ、その分、リヤゲートを十分に跳上げ開放できるエリアを拡大することができる。
【0016】
ここで、左右一対の四節揺動リンク機構は、構造が簡単であって一般のリヤゲートにも適用することが可能であり、汎用性が高く、製造コストも安価である。そして、左右一対の四節揺動リンク機構が左右一対のアセンブリとして構成されている場合には、車体後部にリヤゲートを精度良く容易に組み付けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両用リヤゲートの最良の実施形態を図面を参照しつつ説明する。ここで、図1は一実施形態に係る車両用リヤゲートの車体後部に対する連結構造を簡略に示す側面図、図2は図1に示した四節揺動リンク機構の具体的な構造を示す車体後方から見た正面図、図3は図2に示した左側の四節揺動リンク機構の分解斜視図である。
【0018】
一実施形態に係る車両用リヤゲートは、図1に示すように、自動車の車体1の後部に設けられる跳上げ開放式のリヤゲート2であって、車体1の後部開口部の両側の上部に左右一対の四節揺動リンク機構3(一方のみ図示)を介して連結されている。この四節揺動リンク機構3は、図2に示すように、左右対称に構成された左右一対のアセンブリとして構成されている。
【0019】
左右一対のアセンブリとして構成された四節揺動リンク機構3,3は、図1に示した車体1の後部開口部の両側に固定される左右一対の車体側ブラケット3A,3Aと、リヤゲート2の上下方向中間部の左右の縁部に固定される左右一対のゲート側ブラケット3B,3Bとを備えている。
【0020】
また、四節揺動リンク機構3,3は、車体側ブラケット3A,3Aの上部に基端部が枢着され、先端部がゲート側ブラケット3B,3Bの上部に枢着された左右一対の上部揺動アーム3C,3Cと、車体側ブラケット3A,3Aの下部に基端部が枢着され、先端部がゲート側ブラケット3B,3Bの下部に枢着された左右一対の下部揺動アーム3D,3Dとを備えている。
【0021】
ここで、左右一対のアセンブリの車体側ブラケット3A,3Aとゲート側ブラケット3B,3Bとの間には、リヤゲート2を跳上げ開放状態に保持する伸縮自在な左右一対のガスステー4,4が予め組み付けられている。
【0022】
ここで、図1に示すように、上部揺動アーム3Cの基端部と下部揺動アーム3Dの基端部とは相互に近接して配置されており、上部揺動アーム3Cの先端部と下部揺動アーム3Dの先端部とは相互に離間して配置されている。そして、下部揺動アーム3Dの長さは、上部揺動アーム3Cの長さより若干長く設定されている。このような長さの差があるため、リヤゲート2を開いたときに、リヤゲート2の向きが後ろ向きから上向きへと向きを変えることができる。
【0023】
以上のように構成された一実施形態の車両用リヤゲートでは、図1に示すようにリヤゲート2が跳上げ開放される際、四節揺動リンク機構3を構成する上部揺動アーム3Cのリヤゲート2側の先端部が小さな半径の揺動軌跡Aを描いて上方に揺動し、下部揺動アーム3Dのリヤゲート2側の先端部が大きな半径の揺動軌跡Bを描いて上方に揺動する。
【0024】
そして、下部揺動アーム3Dのリヤゲート2側の先端部が描く揺動軌跡Bは、リヤゲート2の中間開放位置(図1の二点鎖線参照)から車体1の前方へ向かう軌跡となる。このため、リヤゲート2は、その上端部が車体1の後部上方から前方に延出する軌跡を描いて跳上げ開放され、リヤゲート2の下端部は、車体1側に近寄った揺動軌跡Cを描いて上方に跳ね上がる。
【0025】
ここで、図1に示す揺動軌跡Dは、上端部が車体後部の上部に単にヒンジ結合された従来一般のリヤゲートの跳上げ開放時における下端部の揺動軌跡であり、この揺動軌跡Dに較べて揺動軌跡Cは、車体1側に近寄っている。すなわち、リヤゲート2が跳上げ開放される際にリヤゲート2の下端部が車体1の後方へ迫り出す量は、従来例より大幅に減少している。
【0026】
従って、一実施形態の車両用リヤゲートによれば、リヤゲート2が跳上げ開放される際にリヤゲート2の下端部が車体1の後方へ迫り出す量を減少させることができる。その結果、リヤゲート2を十分に跳上げ開放できるエリアを拡大することができる。
【0027】
また、四節揺動リンク機構3は、構造が簡単であって一般のリヤゲートにも適用することが可能であり、汎用性が高く、製造コストも安価である。
【0028】
さらに、左右一対の四節揺動リンク機構3,3が左右一対のアセンブリとして構成されているため、車体1の後部にリヤゲート2を精度良く容易に組み付けることができる。
【0029】
そして、左右一対のガスステー4,4が左右一対のアセンブリの車体側ブラケット3A,3Aとゲート側ブラケット3B,3Bとの間に予め組み付けられているため、左右一対のガスステー4,4を別途に組み付ける作業が不要となり、作業性が向上する。加えて、左右一対のガスステー4,4を別途に組み付ける場合に較べてその組み付けの占有スペースを減少させることができる。
【0030】
本発明に係る車両用リヤゲートは、前述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、左右一対のガスステー4,4は省略しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用リヤゲートの車体後部に対する連結構造を簡略に示す側面図である。
【図2】図1に示した四節揺動リンク機構の具体的な構造を示す車体後方から見た正面図である。
【図3】図2に示した左側の四節揺動リンク機構の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 車体
2 リヤゲート
3 四節揺動リンク機構
3A 車体側ブラケット
3B ゲート側ブラケット
3C 上部揺動アーム
3D 下部揺動アーム
4 ガスステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体後部に設けられる跳上げ開放式のリヤゲートであって、車体の後部開口部の両側の上部に左右一対の四節揺動リンク機構を介して連結されており、
前記左右一対の四節揺動リンク機構は、前記リヤゲートの跳上げ開放時にリヤゲートの上端部が車体の後部上方から前方に延出する軌跡を描くように構成されていることを特徴とする車両用リヤゲート。
【請求項2】
前記左右一対の四節揺動リンク機構は、車体の後部開口部の両側に固定される左右一対の車体側ブラケットと、リヤゲートの左右の縁部に固定される左右一対のゲート側ブラケットと、前記左右一対の車体側ブラケットの上部に基端部が枢着され、先端部が左右一対のゲート側ブラケットの上部に枢着された左右一対の上部揺動アームと、前記左右一対の車体側ブラケットの下部に基端部が枢着され、先端部が左右一対のゲート側ブラケットの下部に枢着され、前記上部揺動アームより長い左右一対の下部揺動アームとを備えた左右一対のアセンブリとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用リヤゲート。
【請求項3】
前記リヤゲートを跳上げ開放状態に保持する伸縮自在な左右一対のガスステーが前記左右一対のアセンブリの車体側ブラケットとゲート側ブラケットとの間に予め組み付けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用リヤゲート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−195091(P2008−195091A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29095(P2007−29095)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(591185423)千代田工業株式会社 (10)