説明

車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置

【課題】 回転軸のシール装置において、デフレクタ内に侵入した泥水の排出を促進し、泥水によるオイルシールの損傷を少なくして油漏れを減少させる。
【解決手段】 車両用動力伝達装置のハウジング10の回転軸導出部10aに回転自在に支持された回転軸11の先端部には回転部材15が一体的に設けられ、回転軸導出部と回転部材の間にはオイルシール17が設けられている。環状板部20aの外周縁に軸線方向に延びる外周フランジ部20cを形成したデフレクタ20は、回転部材に一体的に設けられて回転軸導出部の先端部とその外周部を隙間をおいて覆い、デフレクタの外周フランジ部には円周方向に距離をおいて、環状板部側からハウジング側に向かって延びる半径方向外向きに突出する複数の溝状の排出ポート20c1が形成されている。排出ポートは環状板部から離れるにつれて、深さが次第に大となるように傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に使用する動力伝達装置、特にそのような動力伝達装置における回転軸のシール装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置としては、例えば特開2008−89070号公報(特許文献1)に背景技術として開示されたものがある。この技術では、その図4に拡大して示すように、車両用変速機の出力軸の後部は、後部ケースの後端に形成した円筒状の出力軸導出部に軸受を介して回転自在に支持され、出力軸導出部と出力軸の先端部の間には、変速機ハウジング内の潤滑油の漏出を防ぐために、パッキン部と補強環部とガータスプリングよりなるオイルシールが設けられている。柔軟で耐油性のある弾性ゴムなどからなるパッキン部は、潤滑油が外部に漏出するのを防止するメインリップと、外部のダストなどからメインリップを保護するダストリップと、サイドリップを備えている。このような出力軸シール装置を備えた車両用変速機は、柔軟なゴムよりなるパッキン部がオイルシールの外面に露出されているので、車両走行時に生じる飛び石が当たって損傷を受けるおそれがある。そこで出力軸導出部の先端部と出力軸には、それぞれ環状板部とその外周及び内周に連続して形成された外フランジ部及び内フランジ部よりなる静止側及び回転側デフレクタを圧入固定し、各デフレクタの外フランジ部が互いに半径方向に隙間をおきかつ軸線方向に重なり合うよう配置して、両デフレクタの間の隙間よりも大きい飛び石がオイルシールのパッキン部に達することはないようにしている。この回転軸のシール装置では静止側及び回転側の2つのデフレクタを設けているが、静止側デフレクタを省略して回転側デフレクタだけとし、回転側デフレクタの環状板部と外フランジ部により出力軸導出部の先端部とその外周部を隙間をおいて覆うようにしたものもある。図3はこのような回転軸のシール装置の一例を示す。次にその構造の説明をする。
【0003】
図3に示すように、車両用変速機(車両用動力伝達装置)のハウジング10内に水平に配置された入力軸または出力軸などの回転軸11は、ハウジング10の側壁に形成された回転軸導出部10aに転がり軸受12を介して同軸的に回転自在に支持されている。少なくとも一部が回転軸導出部10aから外部に突出する回転軸11の一端部にはフランジ部材(回転部材)15が同軸的に一体的に設けられ、このフランジ部材15にはフランジ部15aと円筒状凹部15bが形成されている。このフランジ部材15は、そのボス部が回転軸11の一端部にスプライン嵌合されて回転軸11の段部に当接され、円筒状凹部15bの底面は回転軸11の先端の締付ねじ部11aにねじ込まれたナット16の環状部16aの先端面により締め付けられ、ナット16の薄肉部16bを押し曲げて締付ねじ部11aの先端部の円周方向一部に形成した切欠き11a1にかしめ込んで廻り止めすることにより、回転軸11の先端部に一体的に固定される。回転軸導出部10aの先端部内周にはフランジ部材15のボス部の外周との間をシールするオイルシール17が設けられ、回転部材15の円筒状凹部15bの底面の内側部に形成された環状凹部15c内には、回転軸11とフランジ部材15のボス部内面の間をシールするOリング14が設けられている。回転部材15のフランジ部15aには、駆動車輪に動力を伝達する推進軸25などのフランジ部25aが、ボルト26により同軸的に連結されている。
【0004】
デフレクタ1は、鋼板を絞り加工により成形した板金製品であり、半径方向に延びる環状板部1aと、その内周縁及び外周縁からそれぞれ軸線方向に延びる円筒状の内周フランジ部1b及び外周フランジ部1cを備えており、外周フランジ部1cの先端縁はU字状に折り曲げられて補強部1c1が形成されている。このデフレクタ1は、二重に重ねて折り曲げられた内周フランジ部1bが、ハウジング10よりも多少外側となるフランジ部材15のボス部の外周に圧入されて回転軸11に同軸的に固定され、環状板部1a及び外周フランジ部1cにより回転軸導出部10aの先端部とその外周部外周を隙間をおいて覆い、オイルシール17を飛び石などから保護するラビリンスLを形成している。耐油性ゴムなどの柔軟弾性材を補強環により補強したオイルシール17は、柔軟弾性材から内方に突出するメインリップ17a及びダストリップ17bの各先端部がフランジ部材15のボス部の外周面に摺動自在に当接され、また同じ柔軟弾性材から軸線方向に突出するサイドリップ17cの先端部がデフレクタ1の環状板部1aの内面に摺動自在に当接されて、ハウジング10の内部を外部からシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−89070号公報(段落〔0002〕〜〔0003〕、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来技術による車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置では、ハウジング10の回転軸導出部10aとデフレクタ1の間に形成されるラビリンスLによりラビリンスL内に飛び石や地面から巻き上げられた砂塵や飛散した泥水をある程度抑制することはできるが、ラビリンスL内への侵入を完全に防ぐことはできない。上述した従来技術では、一旦デフレクタ1内に侵入した泥水などは、回転するデフレクタ1の外周フランジ部1cの内周面に遠心力により押し付けられ、外周フランジ部1cの内周面に泥水がある程度蓄積されることで、押し出されるように外周部に排出される。しかし泥水が浸入し続けた場合は外周部への排出が間に合わず、ラビリンスL内に泥水が蓄積され、オイルシール17のサイドリップ17c及びデフレクタ1の環状板部1aの内面に異常摩耗が生じ、サイドリップ17cの締め代が減少してシール性能が低下するので、泥水の浸入が生じるようになる。これによりサイドリップ17cの内側に侵入した泥水は、次にダストリップ17b及びそれが当接されるボス部外周面を損傷してシール機能を低下させ、さらにこの泥水がメインリップ17aに達するとメインリップ17a及びそれが当接されるボス部外周面を損傷して油漏れを生じるようになる。
【0007】
本発明は、デフレクタ内に侵入した泥水の排出を促進し、これによりデフレクタの外周フランジ部の内周面に蓄積される泥水の量を少なくし、泥水による各シールリップ及びそれが当接される部材の損傷を少なくして油漏れを減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明による車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置は、円筒状の回転軸導出部を有する車両用動力伝達装置のハウジングと、このハウジングに回転軸導出部と同軸的に回転自在に支持されて先端部の少なくとも一部が回転軸導出部より外方に突出される回転軸と、この回転軸の先端部に一体的に同軸的に設けられた回転部材と、回転軸導出部の内周と回転部材の間に設けられたオイルシールと、環状板部とその外周縁から軸線方向に延びる外周フランジ部よりなり回転部材に一体的に同軸的に設けられて回転軸導出部の先端部とその外周部を隙間をおいて覆うデフレクタよりなる車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置において、デフレクタの外周フランジ部には円周方向に距離をおいて、環状板部側からハウジング側となる末端縁に向かって延び半径方向外向きに突出する複数の溝状の排出ポートを形成したことを特徴とするものである。
【0009】
前項に記載の車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置において、溝状の排出ポートの底部は環状板部側からハウジング側に進むにつれて深さが次第に大となるように傾斜させることが好ましい。
【0010】
前2項に記載の車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置は、溝状の排出ポートの断面形状をV形とすることが好ましい。
【0011】
前3項に記載の車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置は、オイルシールから軸線方向に突出する柔軟弾性材よりなるサイドリップの先端縁をデフレクタの環状板部の内面に摺動自在に弾性的に押圧することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
車両用動力伝達装置のハウジングに回転自在に支持された回転軸の先端部に回転部材を介して一体的に同軸的に設けられて回転するデフレクタの外周フランジ部の内周面に遠心力により押し付けられた泥水は、車輌の加減速などにより外周フランジ部の内周面を円周方向に移動される。請求項1の発明によれば、上述のように、デフレクタの外周フランジ部には円周方向に距離をおいて、環状板部側からハウジング側となる末端縁に向かって延び半径方向外向きに突出する複数の溝状の排出ポートを形成したので、デフレクタの外周フランジ部の内周面を円周方向に移動する泥水は排出ポート内に入って遠心力により排出ポートの底部に押し付けられ、外周フランジ部の内周面に戻ることはない。デフレクタの外周フランジ部に円周方向に距離をおいて形成された排出ポートの面積は外周フランジ部の内周面の面積よりは相当に小さく、従って排出ポート内に入ってその底部に押し付けられた泥水の水位は外周フランジ部の内周面に存在していた場合よりも相当に高くなるので、すぐにハウジング10側となる排出ポートの末端縁から溢れ、飛沫となって半径方向に飛散されて排出されやすくなる。これにより泥水が浸入し続けた場合でもデフレクタの外周フランジ部の内面に蓄積される泥水の量が増大することはなくなり、そのような泥水によるオイルシールの各シールリップ及びそれが当接される部材の損傷は少なくなるので、油漏れを減少させることができる。
【0013】
溝状の排出ポートの底部は環状板部側からハウジング側に進むにつれて深さが次第に大となるように傾斜させた請求項2の発明によれば、排出ポート内に入った泥水は、遠心力により排出ポートの傾斜した底面に沿って、ハウジング10側となる排出ポートの末端縁側に積極的に送り出される。これにより排出ポート内に入った泥水の排出の効率が高まるので、オイルシールの各シールリップ及びそれが当接される部材の損傷は一層少なくなって、油漏れを一層減少させることができる。
【0014】
溝状の排出ポートの断面形状をV形とした請求項3の発明によれば、排出ポートの底部の断面積が減少し、これにより排出ポート内に入った泥水の量が同じ場合の排出ポートの底部に貯まる泥水の水位が高くなるので、排出ポート内に入った泥水の排出の効率が高まる。これによりオイルシールの各シールリップ及びそれが当接される部材の損傷はさらに一層少なくなるので、油漏れをさらに一層減少させることができる。
【0015】
オイルシールから軸線方向に突出する柔軟弾性材よりなるサイドリップの先端縁をデフレクタの環状板部の内面に摺動自在に弾性的に押圧するようにした請求項4の発明によれば、オイルシールのシールリップの数が増大するので、油漏れをさらに一層減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置の一実施形態の全体構造を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の要部であるデフレクタの右側より見た正面図である。
【図3】従来技術による車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置の一例の図1と同様な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図1及び図2により、本発明による車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置の一実施形態の説明をする。この実施形態は、デフレクタ20の構造を除き、前述した従来技術と実質的に同じであるので主としてデフレクタ20の説明をし、それ以外の説明は省略する。
【0018】
図1及び図2に示すように、デフレクタ20は、前述した従来技術のデフレクタ1と同様、鋼板を絞り加工により成形した板金製品で、半径方向に延びる環状板部20aと、その内周縁及び外周縁から軸線方向で互いに逆向きに延びるそれぞれ円筒状の内周フランジ部20b及び外周フランジ部20cを備えている。デフレクタ20は、二重に重ねて折り曲げられてハウジング10側とは逆向きに延びる内周フランジ部20bが、ハウジング10の回転軸導出部10aの先端部よりも多少外側となるフランジ部材(回転部材)15のボス部の外周に圧入されて回転軸11に同軸的に固定される。この取り付け状態では外周フランジ部20cは環状板部20aの外周縁からハウジング10側に向かって延び、環状板部20aと外周フランジ部20cは回転軸導出部10aの先端部とその外周部を多少の隙間をおいて覆い、オイルシール17と外部の間にラビリンスLを形成している。
【0019】
デフレクタ20の外周フランジ部20cには、円周方向に等角度間隔に距離をおいて、環状板部20a側からハウジング10側となる末端縁に向かって延び、半径方向外向きに突出する複数(4個)の溝状の排出ポート20c1が形成されている。各排出ポート20c1の断面形状はV形であり、その底部は環状板部20a側からハウジング10側に進むにつれて深さが次第に大となるよう傾斜され、ハウジング10側となる末端縁はV形のまま解放されている。フランジ部材15に対するデフレクタ20の取り付けは、内周フランジ部20bによる圧入に限らず、内周フランジ部20bを省略し、フランジ部材15の外周に形成した小フランジ部あるいは段部の端面に環状板部20aを当接してねじ止めあるいはかしめ止めにより取り付けるなど、任意である。またフランジ部材15は、削り出しなどにより回転軸11と一体形成してもよい。
【0020】
耐油性ゴムなどの柔軟弾性材を金属の補強環により補強したオイルシール17は、柔軟弾性材を内方に傾斜して突出させたメインリップ17a及びダストリップ17bの各先端部がフランジ部材15のボス部の外周面に摺動自在に弾性的に押圧され、また同じ柔軟弾性材を外向きに傾斜して軸線方向に突出させたサイドリップ17cの先端部はデフレクタ1の環状板部1aの内面に摺動自在に弾性的に押圧されて、ハウジング10の内部を外部からシールしている。
【0021】
上述した実施形態では、自動車の走行状態において、ハウジング10の回転軸導出部10aとデフレクタ20の間に形成されるラビリンスL内に浸入した泥水などは、フランジ部材15を介して回転軸11と共に回転するデフレクタ20の外周フランジ部20cの内周面に遠心力により押し付けられ、デフレクタ20の回転速度は車輌の加減速や変速などにより変動するので、外周フランジ部20cの内周面を円周方向に移動する。この泥水はデフレクタ20の外周フランジ部20cに円周方向に距離をおいて形成された複数の溝状の排出ポート20c1内に入り、その底部を遠心力により深さが次第に大となる半径方向外向きに移動し、ハウジング10側となる排出ポート20c1の末端縁から飛沫となって半径方向に飛散されて排出される。これにより、泥水が浸入し続けた場合でもデフレクタ20の外周フランジ部20cの内面に蓄積される泥水の量が増大することはなくなり、そのような泥水によるオイルシール17のサイドリップ17c及びそれが当接されるデフレクタ20の環状板部20aの内面の損傷はなくなり、さらにオイルシール17のシールリップ17b,17a及びそれらが当接されるフランジ部材15のボス部の損傷も少なくなるので、油漏れを減少させることができる。
【0022】
上述した実施形態では、排出ポート20c1の底部は環状板部20a側からハウジング10側に進むにつれて深さが次第に大となるよう傾斜されており、このようにすれば排出ポート20c1内に入った泥水は、遠心力により傾斜した底面に沿って、ハウジング10側となる排出ポート20c1の末端縁側に積極的に送り出される。これにより排出ポート内に入った泥水の排出の効率が高まるので、オイルシールの各シールリップ及びそれが当接される部材の損傷は一層少なくなって、油漏れを一層減少させることができる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、排出ポート20c1の底部を傾斜させないようにして実施することも可能である。その場合でも外周フランジ部20cの内周面を円周方向に移動する泥水は排出ポート20c1内に入って遠心力によりその底部に押し付けられ、外周フランジ部20cの内周面に戻ることはない。外周フランジ部20cの内面側から見た排出ポート20c1の面積は外周フランジ部20cの内周面の面積よりは相当に小さく、従ってV形断面形状の排出ポート20c1内に入ってその底部に押し付けられた泥水の水位は外周フランジ部20cの内周面に存在していた場合よりも相当に高くなるので、排出ポート20c1の底部を傾斜させない場合でもハウジング10側となる排出ポート20c1の末端縁から容易に溢れ、飛沫となって半径方向に飛散されて排出される。これによりデフレクタ20の外周フランジ部20cの内面に貯まる泥水の量は減少するので、排出ポート20c1の底部を傾斜させない場合でも泥水によるオイルシールの各シールリップ及びそれが当接される部材の損傷は相当少なくなるので、油漏れを減少させるという効果は得られる。
【0023】
また上述した実施形態では、排出ポート20c1の断面形状をV形としており、このようにすれば排出ポート20c1の底部の幅従って断面積が減少し、これにより排出ポート20c1内に入った泥水の量が同じ場合の排出ポート20c1の底部に貯まるの水位が高くなるので、排出ポート20c1内に入った泥水の排出の効率が高まる。しかしながら本発明はこれに限られるものではなく、排出ポート20c1の断面形状をV形以外の形状(例えばU形)とした場合でも、外周フランジ部20cの内周面を円周方向に移動する泥水は排出ポート20c1内に入って外周フランジ部20cの内周面に戻ることはない、内面から見た排出ポート20c1の面積は外周フランジ部20cの内周面の面積よりは相当に小さく、従って排出ポート20c1内に入ってその底部に押し付けられた泥水の水位は外周フランジ部20cの内周面に存在していた場合よりも相当に高くなるという作用に変わりはないので、程度の差はあるが泥水によるオイルシール及びそれが当接される部材の損傷が少なくなって、油漏れを減少させるという効果を得ることができる。
【0024】
また上述した実施形態では、排出ポート20c1の数は90度おきに4個としたが、排出ポート20c1の数を多くすればデフレクタ20内に入った泥水の排出機能が増大すると共に、デフレクタ20内に入る泥水の量も多少増大する。回転軸11の平均的回転速度及びラビリンスLの隙間などに応じて排出ポート20c1の数を増減することにより、各シールリップ17a〜17cに達する泥水の量が最少となるように、泥水の排出性能を調整することができる。
【0025】
上述した実施形態では、オイルシール17に軸線方向に突出するサイドリップ17cを設け、このサイドリップ17cの先端をデフレクタ20の環状板部20aの内面に摺動自在に当接しており、このようにすればメインリップ17aの外側に設けるダストリップが二重になるので油漏れを一層減少させることができる。しかし本発明はこれに限られるものではなく、サイドリップ17cを省略して実施してもよく、使用環境によってはそれで充分に目的を達成することができる。本発明は、車両用エンジン、変速機、トランスファなどの入出力軸のハウジングから外部に突出される部分に適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
10…ハウジング、10a…回転軸導出部、11…回転軸、15…回転部材(フランジ部材)、17…オイルシール、17c…サイドリップ、20…デフレクタ、20a…環状板部、20c…外周フランジ部、20c1…排出ポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の回転軸導出部を有する車両用動力伝達装置のハウジングと、このハウジングに前記回転軸導出部と同軸的に回転自在に支持されて先端部の少なくとも一部が前記回転軸導出部より外方に突出される回転軸と、この回転軸の先端部に一体的に同軸的に設けられた回転部材と、前記回転軸導出部の内周と回転部材の間に設けられたオイルシールと、環状板部とその外周縁から軸線方向に延びる外周フランジ部よりなり前記回転部材に一体的に同軸的に設けられて前記回転軸導出部の先端部とその外周部を隙間をおいて覆うデフレクタよりなる車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置において、
前記デフレクタの外周フランジ部には円周方向に距離をおいて、前記環状板部側から前記ハウジング側となる末端縁に向かって延び半径方向外向きに突出する複数の溝状の排出ポートを形成したことを特徴とする車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置において、前記溝状の排出ポートの底部は前記環状板部側から前記ハウジング側に進むにつれて深さが次第に大となるように傾斜させたことを特徴とする車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置において、前記溝状の排出ポートの断面形状をV形としたことを特徴とする車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置において、前記オイルシールから軸線方向に突出する柔軟弾性材よりなるサイドリップの先端縁を前記デフレクタの環状板部の内面に摺動自在に弾性的に押圧したことを特徴とする車両用動力伝達装置における回転軸のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−197831(P2012−197831A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61278(P2011−61278)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】