説明

車両用化学蓄熱システム

【課題】長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる車両用化学蓄熱システムを得る。
【解決手段】車両用化学蓄熱システム10は、エンジン12の排気熱を蓄熱すると共に水和により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器40と、反応器40から放出された水蒸気の吸着及び脱着が可能な吸着材が内蔵された吸着器54と、エンジン12の冷却水を保温状態で貯留可能な顕熱蓄熱装置82と、該顕熱蓄熱装置82に貯留した冷却水を吸着器52に導く冷却水移送手段90〜94と、反応器40内が放熱した熱を触媒コンバータ18に伝える加熱エアライン50と、自動車11の停止時に冷却水が顕熱蓄熱器82に貯留されるように該顕熱蓄熱装置82を制御すると共に、自動車11の始動時に、顕熱蓄熱器82に貯留されている冷却水が吸着器54に導かれるように冷却水移送手段90〜94を制御する蓄熱ECU100と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行に伴い生じる熱を有効利用するための車両用化学蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車において、緊急時に駆動用バッテリに充電するための補助エンジンと、暖房用に温水を加熱する燃焼器と、高温温水を利用して熱を蓄える蓄熱器とを備え、補助エンジンの始動の際に蓄熱器の蓄えた温水を補助エンジンに供給して補助エンジンを予熱する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、エンジン駆動とモータ駆動とを組み合わせたハイブリッド車において、冷却水の一部を保温保持する蓄熱器を備え、車両始動時における蓄熱器内の冷却水温がエンジン内の冷却水温よりも高い場合に蓄熱器からエンジンに冷却水を供給して暖気し、当座の間はモータ駆動によって車両を走行させる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−11731号公報
【特許文献2】特開2002−122061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、熱を顕熱として蓄える顕熱蓄熱器を用いているため、長期間に亘り蓄熱状態を維持することができず、また蓄えた温水又は冷却水の温度以上の温度への加熱ができない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる車両用化学蓄熱システムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気の吸着及び吸着した水蒸気の脱着が可能な吸着材が内蔵された吸着器と、前記吸着器の吸着材から水蒸気を脱着させるための脱着促進手段と、前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の車両用化学蓄熱システムでは、反応器の化学蓄熱材に排気熱を蓄熱する際には、該化学蓄熱材から脱水された水蒸気が吸着器の吸着材に吸着される。一方、加熱対象を加熱する際には、脱着促進手段を作動させる。すると、吸着器内の吸着材から水蒸気が脱着され、該水蒸気が反応器内の化学蓄熱材に供給されることで、化学蓄熱材の水和反応に伴って化学蓄熱材が発熱する。この熱は、伝熱構造を介して加熱対象(被加熱体)に供給される。すなわち、化学蓄熱材に蓄えられていた熱が加熱対象に放熱される。
【0009】
本車両用化学蓄熱システムでは、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いるので、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、脱着促進手段の作動により吸着器から反応器に水蒸気が供給されるので、低温環境下で反応器の化学蓄熱材に高温で発熱させることができる。
【0010】
このように、請求項1記載の車両用化学蓄熱システムでは、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記脱着促進手段は、前記内燃機関の排気熱を熱交換媒体に回収するための排気熱回収装置と、該排気熱を回収した熱交換媒体を前記吸着器に導くための媒体移送手段とを含んで構成されており、前記車両の始動時に、前記熱交換媒体に前記内燃機関の排気熱が回収されると共に、該熱交換媒体が前記吸着器に導かれるように、前記排気熱回収装置及び媒体移送手段を制御する制御装置をさらに備えた。
【0012】
請求項2記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両の始動時には、制御装置の制御により作動された排気熱回収装置によって、内燃機関の排気熱が熱交換媒体に回収され、この熱交換媒体が媒体移送手段によって吸着器に導かれることで、吸着材が加熱されて該吸着材から水蒸気が脱着される。このように、排気熱を回収した比較的高温の熱交換媒体を用いて吸着材を加熱するので、該吸着材から発生する水蒸気圧を高くすることができ、反応器の化学蓄熱材により高温で発熱させることが可能になる。
【0013】
請求項3記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1又は請求項2記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記脱着促進手段は、前記内燃機関の冷却水を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱装置と、該顕熱蓄熱器に貯留した冷却水を前記吸着器に導く冷却水移送手段とを含んで構成されており、前記車両の停止時に、前記内燃機関の冷却水が前記顕熱蓄熱装置に貯留されるように該顕熱蓄熱装置を制御すると共に、前記車両の始動時に、前記顕熱蓄熱装置に貯留されている冷却水が前記吸着器に導かれるように前記冷却水移送手段を制御する制御装置をさらに備えた。
【0014】
請求項3記載の車両用化学蓄熱システムでは、車両の停止時に、制御装置の制御により内燃機関の冷却水が顕熱蓄熱装置に貯留される。すなわち、冷却水の顕熱が蓄熱される。そして、車両の始動時には、制御装置の制御に基づき冷却水移送手段によって顕熱蓄熱装置から冷却水が吸着器に導かれる。この熱により吸着材が加熱されて該吸着材から水蒸気が脱着される。このように、顕熱蓄熱器の冷却水を熱源とすることで、例えば、車両始動時に内燃機関を始動することなく加熱対象を加熱することができる。
【0015】
請求項4記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1又は請求項2記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記吸着器の吸着材が水蒸気を吸着する際に該吸着器を冷却するための冷媒を循環させる冷媒循環路を備え、前記脱着促進手段は、前記冷媒循環路に直列又は並列に設けられ、該冷媒循環路の冷媒を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱装置を含んで構成されており、前記反応器への蓄熱中又は蓄熱終了時に、前記冷媒が前記顕熱蓄熱装置に貯留されるように該顕熱蓄熱装置を制御すると共に、前記車両の始動時に、前記顕熱蓄熱装置に貯留されている冷媒が前記吸着器に導かれるように該顕熱蓄熱装置を制御する制御装置をさらに備えた。
【0016】
請求項4記載の車両用化学蓄熱システムでは、反応器への蓄熱の際には、冷媒循環路を循環する冷媒によって吸着器が冷却される。換言すれば、冷媒は吸着材の吸着熱にて加熱される。この蓄熱中または蓄熱終了時に、制御装置の制御により加熱された冷媒が顕熱蓄熱装置に蓄えられる。一方、反応器からの放熱の際には、制御装置の制御により顕熱蓄熱装置内の冷媒が吸着器に供給されることで、吸着材が加熱されて該吸着材から水蒸気が脱着される。このように、顕熱蓄熱器の冷媒を熱源とすることで、車両始動時に内燃機関を始動することなく加熱対象を加熱することができる。
【0017】
請求項5記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記脱着促進手段は、前記吸着器内の圧力を低下させるための減圧ポンプを含んで構成されている。
【0018】
請求項5記載の車両用化学蓄熱システムでは、加熱対象を加熱する際には、減圧ポンプを作動させて吸着器内の圧力を低下させる。すると、吸着器内の吸着材からの水蒸気の脱着が促進され(脱着温度が低下し)ると共に、吸着材から発生した水蒸気が減圧ポンプの吐出側では加圧され、水蒸気圧を高くすることができ、反応器の化学蓄熱材により高温で発熱させることが可能になる。
【0019】
なお、減圧ポンプは、上記した排気熱回収器や顕熱蓄熱器と併せ持つことができ、この場合、吸着材から発生する水蒸気圧を一層高くすることができる。また、減圧ポンプは、反応器と吸着器との連通路に設けることが好ましい。
【0020】
請求項6記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項2又は請求項5記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記車両は、前記内燃機関の排気ガスを浄化するための排気触媒を有しており、前記排気触媒が前記加熱対象とされている。
【0021】
請求項6記載の車両用化学蓄熱システムでは、上記の如く排気熱回収器及び/又は減圧ポンプによって吸着器の吸着材が発生する水蒸気圧力を高くすることができるため、反応器の化学蓄熱材の放熱により高温の熱を得ることができる。このため、高温(例えば300℃)で反応活性が良好となる排気触媒の加熱を、化学蓄熱材に蓄えた熱にて有効に行うことが可能になる。
【0022】
請求項7記載の発明に係る車両用化学蓄熱システムは、請求項1〜請求項6の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システムにおいて、前記車両は、走行用の駆動力を発揮するモータと、前記モータに電力を供給するバッテリとを備えたハイブリッド車両であり、前記バッテリが前記加熱対象とされている。
【0023】
請求項7記載の車両用化学蓄熱システムでは、化学蓄熱材が蓄熱していた熱によって、一般に低温での出力密度が低いバッテリが車両始動時に加熱されるので、該バッテリの出力密度が増大される。これにより、本車両用化学蓄熱システムが適用された車両では、モータによる低温始動性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明に係る車両用化学蓄熱システムは、長期間に亘って安定的に蓄熱でき、かつ高温が要求される加熱対象の加熱が可能となるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUの図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを説明するための図であって、(A)は蓄熱モードのシステム構成図、(B)は、放熱モードのシステム構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱、放熱サイクルを示すPT線図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する吸着材の吸着量と平衡圧力との関係を示す線図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する吸着材の吸着等温線を示す線図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUの図である。
【図9−1】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを説明するための図であって、(A)は化学蓄熱モードのシステム構成図、(B)は、顕熱蓄熱モードのシステム構成図である。
【図9−2】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの動作モードを説明するための図であって、(C)は、放熱モードのシステム構成図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの蓄熱、放熱サイクルを示すPT線図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する吸着材の吸着量と平衡圧力との関係を示す線図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムが適用されたハイブリッド車を構成するバッテリの環境温度と出力密度との関係を示す線図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUの図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムの概略全体構成を示すシステム構成図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システムを構成する蓄熱ECUの図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム10について、図1〜図5に基づいて説明する。先ず、車両用化学蓄熱システム10が適用された車両としての自動車11の熱系統について簡単に説明し、次いで、車両用化学蓄熱システム10について説明することとする。
【0027】
図1には、自動車11に適用された車両用化学蓄熱システム10の概略全体構成がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、自動車11は、内燃機関としてのエンジン12を備えている。また、自動車11は、エンジン12からの排気ガスを浄化して大気放出する排気系14を備えている。排気系14は、一端がエンジン12に接続されると共に他端が大気開放端16Aとされた排気ライン(排気管)16と、排気ライン16におけるエンジン12側に設けられた排気触媒としての触媒コンバータ18とを有する。図示は省略するが、排気系14には、排気音を低減するための消音装置が排気ライン16における触媒コンバータ18の下流側に設けられている。
【0028】
さらに、自動車11は、エンジン12を冷却するためのエンジン冷却系20を備えている。エンジン冷却系20は、エンジン12、ヒータコア22、ラジエータ24の順でエンジン冷却水を循環させるための冷却水循環ライン26と、冷却水循環ライン26におけるエンジン12の直上流に設けられエンジン冷却水に駆動力を付与するウォータポンプ28と、ラジエータ24をバイパスするバイパスライン30とを含んで構成されている。この実施形態におけるウォータポンプ28は、エンジン12の駆動力で作動する機械式のポンプとされている。
【0029】
この実施形態では、冷却水循環ライン26におけるラジエータ24とウォータポンプ28との間へのバイパスライン30の合流部分には、3ポート弁32が設けられている。3ポート弁32は、冷却水循環ライン26にのみエンジン冷却水が流通される状態と、バイパスライン30によってラジエータ24が完全にバイパスされる状態と、ラジエータ24とバイパスライン30とにエンジン冷却水が流れる割合を調整する状態とをとり得る構成とされている。
【0030】
さらに、自動車11は、エンジン12の排気熱を回収するための排気熱回収器34を備えている。排気熱回収器34は、排気ライン16における触媒コンバータ18の下流(大気開放端16A)側部分から分岐された熱回収ライン36に、排気ガスと熱回収媒体との熱交換可能に設けられている。熱回収ライン36は、排気ライン16における該熱回収ライン36の分岐部分よりも下流側に合流されても良く、大気開放端16Aとは独立した大気開放端を有する構成としても良い。図1では、熱回収ライン36が排気ライン16に合流する例が図示されている。
【0031】
また、排気ライン16における熱回収ライン36の分岐部分には3ポート弁38が設けられており、排気熱回収器34に排気ガスを導く熱回収状態と、排気熱回収器34をバイパスして排気ガスを大気開放端16Aから放出する状態とを切り替え得る構成とされている。この実施形態では、熱回収媒体として冷却水が用いられており、この冷却水が後述する如く車両用化学蓄熱システム10の低温熱源とされている。すなわち、この実施形態では、排気熱回収器34の冷却水は、エンジン冷却系20で用いられるエンジン冷却水とは独立して循環するものとされている。
【0032】
車両用化学蓄熱システム10は、以上説明した自動車11に適用され、自動車11を構成する加熱対象(この実施形態では、後述する如く触媒コンバータ18)を加熱するようになっている。以下、具体的に説明する。
【0033】
車両用化学蓄熱システム10は、容器内に化学蓄熱材が充填された反応器40を備えている。反応器40内の化学蓄熱材は、脱水に伴って蓄熱(吸熱)し、水和(水酸化カルシウムへの復原)に伴って放熱(発熱)する構成とされている。この実施形態では、化学蓄熱材として、アルカリ土類金属水酸化物の1つである水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が採用されている。したがって、反応器40内では、以下に示す反応で蓄熱、放熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
Ca(OH)2 ⇔ CaO + H2O
【0034】
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
Ca(OH)2 + Q → CaO + H2O
CaO + H2O → Ca(OH)2 + Q
となる。
【0035】
また、車両用化学蓄熱システム10は、反応器40に排気系14の排気ライン16から排気熱、すなわち高温の排気ガスを導入するための排気供給ライン42、反応器40から排気ライン16に排気ガスを戻す排気戻しライン44を備えている。排気供給ライン42、排気戻しライン44は、共に排気ライン16における触媒コンバータ18に対する上流(エンジン12)側に連通されている。
【0036】
また、排気供給ライン42には開閉弁46が設けられ、排気戻しライン44には開閉弁46が設けられている。これにより、開閉弁46、48が共に開放されている場合には反応器40に排気ガスの一部が流通され、開閉弁46、48が共に閉止されている場合には反応器40に排気ガスが導入されない構成とされている。
【0037】
すなわち、この実施形態における反応器40は、化学蓄熱材と排気ガスとの熱交換器として捉えることができる。なお、この実施形態では、自動車11の運転中における化学蓄熱材の温度が略450℃になるように、排気ガスの反応器40への流通量(割合)が設定されている。この設定は、排気ライン16と反応器40側との圧力損失のバランス等で設定されても良く、後述する蓄熱ECU70にて開閉弁46、48の開度を調整することで設定されても良い。化学蓄熱材の温度を略450℃とするのは、500℃以上で生じやすくなる化学蓄熱材の劣化(潮解等)を抑制するためである。
【0038】
さらに、車両用化学蓄熱システム10は、反応器40内の化学蓄熱材が放出した熱を加熱対象に供給するための伝熱構造としての加熱エアライン50を備えている。加熱エアライン50は、一端がブロア52に接続されており、中間部が反応器40内の化学蓄熱材と熱交換可能な熱交換部50Aとされている。この加熱エアライン50における反応器40の下流側部分が、加熱対象としての触媒コンバータ18に導かれるようになっている。加熱エアライン50は、触媒コンバータ18の内部に導入されて排気触媒と直接的に熱交換され、排気ライン16を介して大気開放されるように構成されている。
【0039】
また、車両用化学蓄熱システム10は、反応器40に水和反応のための水蒸気を供給し、又は反応器40での脱水反応に伴い生じた水蒸気を回収するための吸着器(吸脱着器)54を備えている。吸着器54は、容器内に水蒸気を吸着(物理吸着)、脱着可能な吸着材を収容して構成されている。吸着器54を構成する吸着材は、水蒸気の吸着に伴い吸着熱を放出し、外部から脱着熱の供給を受けて吸着されている水蒸気を脱着させる構成とされている。
【0040】
この吸着器54は、水蒸気連通ライン56を介して反応器40の内部(化学蓄熱材の充填空間)に連通されている。水蒸気連通ライン56には、開閉弁58が設けられている。
【0041】
この実施形態では、反応器40、吸着器54、及びこれらを連通する水蒸気連通ライン56内は、予め真空脱気されている。したがって、反応器40、吸着器54は、その機能を発揮するための反応、吸脱着が行われていない状態では、それぞれの内圧が大気圧と比較して十分に小さい構成とされている。
【0042】
さらに、車両用化学蓄熱システム10は、吸着器54で生じた吸着熱を放出するための冷却水が循環する冷媒循環路としての冷却水循環ライン60と、該冷却水循環ライン60に吸着器54と直列を成すように設けられたサブラジエータ62及び冷却水ポンプ64を備えている。これにより、冷却水ポンプ64を作動することで、吸着器54、サブラジエータ62の順で冷却水が循環し、吸着器54で生じた吸着熱がサブラジエータ62で放熱されるようになっている。これにより、吸着器54を略一定の温度に保ちつつ該吸着器54による水蒸気の吸着が可能となる。
【0043】
また、車両用化学蓄熱システム10では、上記した排気熱回収器34で冷却水に回収した排気熱を、脱着熱として反応器40に供給するための排気熱供給ライン66を備えている。排気熱供給ライン66は、冷却水循環ライン60における吸着器54の冷却水出口側とサブラジエータ62との間から分岐されると共に、排気熱回収器34を経由して冷却水循環ライン60におけるサブラジエータ62と冷却水ポンプ64との間に合流されている。
【0044】
冷却水循環ライン60における排気熱供給ライン66の合流部分には、3ポート弁68が設けられている。この3ポート弁68によって、冷却水が吸着器54、サブラジエータ62を循環する状態(図3(A)参照)と、冷却水が吸着器54、排気熱回収器34を循環する状態(図3(B)参照)との切替が可能な構成とされている。この実施形態では、排気熱回収器34、熱回収ライン36及び3ポート弁38が本発明における排気熱回収装置に相当し、冷却水ポンプ64、排気熱供給ライン66及び3ポート弁68が媒体移送手段に相当し、これらを含め本発明における脱着促進手段が構成されているものと捉えることができる。
【0045】
以上説明した車両用化学蓄熱システム10では、上記の如く触媒コンバータ18を加熱するようになっている。この触媒コンバータ18を350℃以上の温度にするための加熱が要求されることを考慮して、車両用化学蓄熱システム10では、化学蓄熱材の水和反応により反応器40の温度が400℃以上になるように、吸着器54の動作温度(発生する水蒸気圧力)が設定されている。
【0046】
この点につき、図4〜図6を参照しつつ補足する。図4には、PT線図に示された圧力平衡点における車両用化学蓄熱システム10のサイクルが示されている。この図において、上側の等圧線が脱水(吸熱)反応を示し、下側の等圧線が水和(発熱)反応を示している。このサイクルに示す通り、化学蓄熱材の温度が略426℃で蓄熱された場合、略12[kPa]の水蒸気が吸着器54に吸着され、吸着器54では、該水蒸気の平衡温度(略80℃)以下になるように、サブラジエータ62によって吸着熱が放熱されるように設計されている。
【0047】
この実施形態では、吸着等温線が図6に示される如くなる吸着材を用いて吸着器54が構成されており、吸着の際に吸着器54の温度を略70℃以下に冷却する設定とされている。これにより、図5に示される如く、脱水(蓄熱)温度が略426℃となる脱水反応の平衡圧力(略12[kPa])に対し十分に低い水蒸気の平衡圧力を得ることができる構成とされている。
【0048】
一方、車両用化学蓄熱システム10では、水和反応に伴う発熱によって反応器40の温度が400℃以上になるように、吸着器54から脱着される水蒸気の温度(圧力)が決められている。この実施形態では、図4に示される如く、吸着器54から脱着される水蒸気の温度は、略63℃(略6[kPa])とされている。すなわち、吸着器54の温度が略63℃以上とされるように、排気熱回収器34から排気熱を回収する構成(設計)とされている。
【0049】
この実施形態では、脱着の際に吸着器54の温度を75〜85℃に加熱する設定とされている。これにより、図5に示される如く、放熱温度が略400℃となる水和反応の平衡圧力(略6[kPa])に対し十分に高い水蒸気の平衡圧力を得ることができる構成とされている。
【0050】
以上により、車両用化学蓄熱システム10では、図4に示す如きサイクルが実現可能であり、反応器40に蓄熱した熱を、400℃以上の温度で反応器40から放熱させることができる構成とされている。
【0051】
さらに、車両用化学蓄熱システム10は、制御装置としての蓄熱ECU70を備えている。蓄熱ECU70は、図2に示される如く、開閉弁46、48、58、3ポート弁38、68、ブロア52、冷却水ポンプ64のそれぞれに電気的に接続されており、これらの作動を制御するようになっている。蓄熱ECU70は、自動車11の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)や外気温センサ等にも電気的に接続されており、車両の走行状態や外気温等の情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。
【0052】
この実施形態では、蓄熱ECU70は、自動車11の走行時には、反応器40の化学蓄熱材への蓄熱が行われる蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図3(A)に示される如く、開閉弁46、48、58を開放させると共に、3ポート弁38の排気熱回収器34側のポート及び3ポート弁68の排気熱供給ライン66側のポートをそれぞれ閉止させ、かつ冷却水ポンプ64を作動させるようになっている。また、蓄熱ECU70は、蓄熱モードでは、ブロア52を停止状態に維持するようになっている。なお、図3における弁類の黒塗りで示すポートは、該ポートが閉止されている状態を示している。
【0053】
一方、蓄熱ECU70は、自動車11の低温環境下での始動時には、反応器40内の化学蓄熱材が放熱を行うと共に、該反応器40から放熱された熱が触媒コンバータ18に導かれる放熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図3(B)に示される如く、開閉弁46、48を閉止させると共に開閉弁58を開放させ、3ポート弁38の大気開放端16A側ポートのみ閉止させ、3ポート弁68のサブラジエータ62側ポートのみ閉止させ、かつブロア52、冷却水ポンプ64を作動させるようになっている。
【0054】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0055】
上記構成の車両用化学蓄熱システム10では、蓄熱ECU70は、自動車11の運転中には、図3(A)に示される如き蓄熱モードを実行する。すると、排気系14の排気ライン16から排気供給ライン42を経由して反応器40に高温の排気ガスが導かれ、該排気ガスからの熱供給を受けて反応器40内の化学蓄熱材が脱水反応を生じ、排気熱が化学蓄熱材に蓄熱される。
【0056】
この蓄熱モード実行の際、反応器40で化学蓄熱材から脱水された水である水蒸気は、水蒸気連通ライン56を介して吸着器54に流入され、該吸着器54を構成する吸着材に吸着される。この吸着に伴って生じる吸着熱は、冷却水循環ライン60を循環する冷却水にてサブラジエータ62に運搬され、該サブラジエータ62にて系外に放熱される。これにより、吸着平衡圧の上昇が抑制され、吸着材による吸着すなわち反応器40での蓄熱が維持される。
【0057】
以上により、車両用化学蓄熱システム10が適用された自動車11では、その走行(エンジン12の作動)に伴い生じる排気ガスの排気熱を反応器40に蓄熱する。
【0058】
また、車両用化学蓄熱システム10では、蓄熱ECU70は、外気温が所定の閾値を下回る低温環境下で自動車11が始動される場合には、図3(B)に示される如き放熱モードを実行する。すると、始動されたエンジン12の排気ガスが排気熱回収器34に導かれ、該排気熱回収器34において排気熱供給ライン66を流れる冷却水と排気ガスとの熱交換が行われる。すなわち、排気熱が冷却水に回収され、この冷却水が排気熱供給ライン66、冷却水循環ライン60を経由して吸着器54に導かれる。
【0059】
これにより、吸着器54に脱着に必要な熱が供給され、該吸着器54の吸着材から水蒸気が脱着される。この実施形態では、脱着温度が63℃以上とされ、該脱着温度に応じた圧力(略6[kPa]以上)で水蒸気が吸着器54から反応器40に供給される。反応器40内の化学蓄熱材は、水蒸気との接触に伴い水和反応を行いつつ放熱する。この実施形態では、上記の通りの圧力で水蒸気が供給されることで、400℃となる。
【0060】
そして、反応器40で発生された熱は、ブロア52の作動によって加熱エアライン50を流れる空気に供給され、該加熱空気によって触媒コンバータ18が加熱される。蓄熱ECU70は、例えば暖気開始からの経過時間、触媒コンバータ18の温度、加熱エアライン50内の空気の温度変化の少なくとも1つに基づいて、触媒コンバータ18が十分に加熱されたと判断すると、放熱モードを終了し、蓄熱モードに移行する。
【0061】
ここで、車両用化学蓄熱システム10では、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いて蓄熱・放熱を行うため、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、吸着器54に脱着熱を供給することで該吸着器54から反応器40に水蒸気を供給させて水和反応を生じさせる構成であるため、供給する脱着熱に対し高い温度での発熱が実現される。
【0062】
特に、車両用化学蓄熱システム10では、排気熱回収器34にて排気熱を回収することで比較的高温とされた冷却水にて吸着器54に脱着熱を供給するため、反応器40に供給する水蒸気圧力が高くなり、反応器40の温度を400℃以上にすることができる。これにより、車両用化学蓄熱システム10では、反応器40からの熱によって触媒コンバータ18内の排気触媒が加熱、昇温される。これにより、車両用化学蓄熱システム10では、エンジン12の始動から短時間で、触媒コンバータ18を350℃以上に昇温することができるので、低温始動時において排気ガスが良好に浄化される(排気ガス中の未燃炭化水素成分が減少される。
【0063】
以上により、車両用化学蓄熱システム10が適用された自動車11では、低温始動時の排気ガス浄化性能が著しく向上する。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成同一の符号を付して説明を省略し、また図示を省略する場合がある。
【0065】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム80について、図7〜図12に基づいて説明する。図7には、車両用化学蓄熱システム80がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム80は、排気熱回収器34に代えて、エンジン冷却水の顕熱を蓄える顕熱蓄熱器82を備える点で、第1の実施形態とは異なる。
【0066】
具体的には、顕熱蓄熱器82は、冷却水循環ライン26におけるヒータコア22の上下流に連通された蓄熱器ライン84に設けられており、ヒータコア22と並列に配置されているものと捉えることができる。この顕熱蓄熱器82は、断熱容器とされ、高温のエンジン冷却水を貯留することで該エンジン冷却水の顕熱を蓄える構成とされている。
【0067】
冷却水循環ライン26におけるヒータコア22の上流側(エンジン12側)の分岐部には、3ポート弁86が設けられている。また、蓄熱器ライン84における顕熱蓄熱器82に対する3ポート弁86とは反対側には、顕熱蓄熱器82側に向けてエンジン冷却水を圧送するための冷却水ポンプ88が設けられている。
【0068】
そして、車両用化学蓄熱システム80は、排気熱供給ライン66に代えて、それぞれ冷却水循環ライン60に接続されたエンジン冷却水供給ライン90及びエンジン冷却水戻りライン92を備えている。エンジン冷却水供給ライン90は、蓄熱器ライン84における3ポート弁86と顕熱蓄熱器82との間から分岐され、3ポート弁68を介して冷却水循環ライン60に接続されている。蓄熱器ライン84におけるエンジン冷却水供給ライン90の分岐部分には、3ポート弁94が設けられている。また、エンジン冷却水戻りライン92は、冷却水循環ライン60における吸着器54の冷却水出口側とサブラジエータ62との間から分岐されると共に、顕熱蓄熱器82に直接的に連通されている。
【0069】
以上説明したように車両用化学蓄熱システム80は、車両用化学蓄熱システム10とほぼ同様に構成された化学蓄熱部80Aと、エンジン冷却水の顕熱を蓄熱するための顕熱蓄熱部80Bとを備え、エンジン冷却水供給ライン90、エンジン冷却水戻りライン92を介して顕熱蓄熱部80Bから化学蓄熱部80Aにエンジン冷却水の顕熱を輸送可能なシステムとして捉えることができる。
【0070】
したがって、この実施形態では、顕熱蓄熱器82、蓄熱器ライン84、3ポート弁86、冷却水ポンプ88(顕熱蓄熱部80Bの主要部)が本発明における顕熱蓄熱装置に相当し、エンジン冷却水供給ライン90、エンジン冷却水戻りライン92、3ポート弁94及び冷却水ポンプ64が冷却水移送手段に相当し、これらを含め本発明における脱着促進手段が構成されているものと捉えることができる。
【0071】
この実施形態では、自動車11は、駆動源としてモータ95を備えたハイブリッド車とされており、モータ95に電力を供給するためのインバータ(パワーコントロールユニット)96、バッテリ98をさらに備える。この実施形態では、エンジン12及びモータ95の双方に車両走行のための駆動力を生じさせ得るパラレル式のハイブリッド車とされている。
【0072】
そして、この実施形態では、車両用化学蓄熱システム80による加熱対象は、触媒コンバータ18に代えてバッテリ98とされている。したがって、車両用化学蓄熱システム80では、加熱エアライン50に代えて、反応器40との熱交換部99Aの下流にバッテリ98との熱交換を行う熱交換部99Bを有する加熱エアライン99を備えている。加熱エアライン99の一端部は、ブロア52に接続され、他端部は大気開放された大気開放端99Cとされている。
【0073】
以上説明した車両用化学蓄熱システム80のサイクルについて、主に車両用化学蓄熱システム10のサイクルとは異なる部分を、図10及び図11を参照しつつ補足する。図10には、PT線図に示された圧力平衡点における車両用化学蓄熱システム80のサイクルが示されている。この図において、上側の等圧線が脱水(吸熱)反応を示し、下側の等圧線が水和(発熱)反応を示している。このサイクルに示す通り、化学蓄熱材の温度が略426℃で蓄熱された場合、略12[kPa]の水蒸気が吸着器54に吸着され、吸着器54では、該水蒸気の平衡温度(略80℃)以下になるように、サブラジエータ62によって吸着熱が放熱されるように設計されている。すなわち、車両用化学蓄熱システム80では、図11にも示される如く、脱水(蓄熱)については、車両用化学蓄熱システム10と同様であり、同等の熱量Qを蓄熱可能とされている。
【0074】
一方、図10に戻り、車両用化学蓄熱システム80では、顕熱蓄熱器82での蓄熱温度が比較的低いことを考慮して、吸着器54から反応器40に供給される水蒸気の温度として略25℃(蒸気圧0.8[kPa]程度)が設計温度とされている。この場合、図10に示される如く、反応器40の放熱温度は、略338℃となる構成である。吸着器54では、顕熱蓄熱器82からの供給温度として略30〜50℃が設計値とされている。これにより、図11に示される如く、放熱温度が略338℃となる水和反応の平衡圧力(略0.8[kPa])に対し十分に高い水蒸気の平衡圧力を得ることができる構成とされている。
【0075】
図12に示される如く、バッテリ98は、数10℃が使用温度の上限になるので、上記の通り338℃で放熱する反応器40を備えた車両用化学蓄熱システム80によって、有効に加熱(昇温)することができる。
【0076】
また、車両用化学蓄熱システム80は、蓄熱ECU70に代えて、制御装置としての蓄熱ECU100を備えている。蓄熱ECU100は、図8に示される如く、開閉弁46、48、58、3ポート弁32、68、86、94、ブロア52、冷却水ポンプ64、冷却水ポンプ88に電気的に接続されている。蓄熱ECU100は、自動車11の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)や外気温センサ等にも電気的に接続されており、車両の走行状態や外気温等の情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。
【0077】
この実施形態では、蓄熱ECU100は、自動車11の走行時には、反応器40の化学蓄熱材への蓄熱が行われる化学蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図9−1(A)に示される如く、開閉弁46、48、58を開放させ、冷却水ポンプ64を作動させる一方、3ポート弁68のエンジン冷却水供給ライン90側のポート、3ポート弁86の蓄熱器ライン84側のポート、3ポート弁94の顕熱蓄熱器82側のポートをそれぞれ閉止させ、ブロア52、冷却水ポンプ88を停止状態に維持するようになっている。
【0078】
また、蓄熱ECU100は、自動車11の停止の際には、顕熱蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図9−1(B)に示される如く、開閉弁46、48、58を閉止させ、さらに冷却水ポンプ64を停止させる(以上、化学蓄熱部80Aを停止させる)一方、3ポート弁32のラジエータ24側のポート、3ポート弁86のヒータコア22側の各ポート、3ポート弁94のエンジン冷却水供給ライン90側のポートをそれぞれ閉止させると共に、3ポート弁86の蓄熱器ライン84側のポート及び3ポート弁94の顕熱蓄熱器82側のポートを開放させ、かつ冷却水ポンプ88を作動させるようになっている。
【0079】
さらに、蓄熱ECU100は、自動車11の低温環境下での始動時(低温始動時におけるエンジン12の始動前)には、反応器40内の化学蓄熱材が放熱を行うと共に、該反応器40から放熱された熱がバッテリ98に導かれる放熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。具体的には、図9−2(C)に示される如く、上記顕熱蓄熱モードに対し、3ポート弁32のバイパスライン30側のポート、3ポート弁68のサブラジエータ62側のポート、3ポート弁94のエンジン12(3ポート弁86)側のポートを閉止すると共に、3ポート弁68のエンジン冷却水供給ライン90側のポート、3ポート弁94の顕熱蓄熱器82側のポート、及び開閉弁58を開放し、かつ、冷却水ポンプ64及びブロア52を作動させるようになっている。
【0080】
次に、第2の実施形態の作用を説明する。
【0081】
上記構成の車両用化学蓄熱システム80では、蓄熱ECU100は、自動車11の運転中には、図9−1(A)に示される如く、主に化学蓄熱部80Aにおいて化学蓄熱モードを実行する。すると、排気系14の排気ライン16から排気供給ライン42を経由して反応器40に高温の排気ガスが導かれ、該排気ガスからの熱供給を受けて反応器40内の化学蓄熱材が脱水反応を生じ、排気熱が化学蓄熱材に蓄熱される。
【0082】
この化学蓄熱モードの実行の際、反応器40で化学蓄熱材から脱水された水である水蒸気は、水蒸気連通ライン56を介して吸着器54に流入され、該吸着器54の吸着材に吸着される。この吸着に伴い生じた吸着熱は、冷却水循環ライン60を循環する冷却水にてサブラジエータ62に運搬され、該サブラジエータ62にて系外に放熱される。
【0083】
以上により、車両用化学蓄熱システム80が適用された自動車11では、その走行(エンジン12の作動)に伴い生じる排気ガスの排気熱を反応器40に蓄熱する。また、化学蓄熱モードの実行の際には、顕熱蓄熱部80Bでは、顕熱蓄熱器82がエンジン冷却水の循環系等から切り離されている。
【0084】
また、車両用化学蓄熱システム80では、蓄熱ECU100は、自動車11が停車(又は運転中にエンジン12が停止)された場合には、図9−1(B)に示される如く、顕熱蓄熱部80Bにおいてエンジン冷却水の顕熱を顕熱蓄熱器82に蓄える顕熱蓄熱モードを実行する。すると、冷却水ポンプ88の駆動力によって、エンジン冷却水がエンジン12と顕熱蓄熱器82との間を所定時間だけ循環する。これにより、顕熱蓄熱器82内には、エンジン12との熱交換で加熱された高温のエンジン冷却水が貯留(保持)される。すなわち、エンジン冷却水の熱が顕熱蓄熱器82に蓄えられる。
【0085】
そして、車両用化学蓄熱システム80では、蓄熱ECU100は、外気温が所定の閾値を下回る低温環境下で自動車11が始動される場合には、エンジン12の始動に先立って、図9−2(C)に示される如き放熱モードを実行する。すると、冷却水ポンプ64の作動によって、顕熱蓄熱器82内のエンジン冷却水がエンジン冷却水供給ライン90を介して吸着器54に導かれ、エンジン冷却水戻りライン92を介して顕熱蓄熱器82に戻される。すなわち、エンジン冷却水が顕熱蓄熱器82と吸着器54との間を循環する。
【0086】
このエンジン冷却水との熱交換によって脱着熱が供給された吸着器54からは、水蒸気が脱着され、この水蒸気はその温度に応じた圧力で水蒸気連通ライン56を介して反応器40に供給される。すると、反応器40内の化学蓄熱材は、水蒸気との接触に伴い水和反応を行いつつ放熱する。この熱は、ブロア52により加熱エアライン99を流れる空気に供給され、該加熱空気によってバッテリ98が加熱される。
【0087】
蓄熱ECU100は、例えば暖気開始からの経過時間、バッテリ98の温度、加熱エアライン50内の空気の温度変化の少なくとも1つに基づいて、バッテリ98が十分に加熱されたと判断すると、モータ95の始動許可信号をメインコントローラ等に出力する。また、蓄熱ECU100は、放熱モードすなわちバッテリ98の暖機を終了する。
【0088】
ここで、車両用化学蓄熱システム80では、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いて蓄熱・放熱を行うため、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、吸着器54に脱着熱を供給することで該吸着器54から反応器40に水蒸気を供給させて水和反応を生じさせる構成であるため、供給する脱着熱に対し高い温度での発熱が実現される。
【0089】
特に、車両用化学蓄熱システム80では、顕熱蓄熱器82に蓄えた熱によって吸着器54から水蒸気を脱着させる構成であるため、自動車11の始動時にエンジン12の作動に頼ることなく脱着熱を確保することができる。これにより、車両用化学蓄熱システム80が適用された自動車11では、低温環境下において、バッテリ98を暖機して出力密度を増大することで、エンジン12を始動させることなく、モータ95の動力で始動することができる。
【0090】
この点について補足すると、バッテリ98の出力密度は、図12に示される如き温度依存性を有しており、例えば、バッテリ98の温度を環境温度0℃から10℃まで上昇させることができれば、出力密度は略1.7倍になり、また例えばバッテリ98の温度を環境温度5℃から15℃まで上昇させることができれば、出力密度は略1.5倍に増大することが解る。そして、本実施形態に係る車両用化学蓄熱システム80では、略1分間の放熱モードの実行で、バッテリ98の温度を略10℃上昇させることができることが確かめられている。
【0091】
これにより、車両用化学蓄熱システム80が適用されたハイブリッド車である自動車11は、低温環境下において、放熱モードの実行によるバッテリ98の昇温を待ってモータ95をスムースに始動させることができる。換言すれば、自動車11は、バッテリ98の出力密度が低下する低温環境下において、エンジン12に頼ることなく始動することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム110について、図13及び図14に基づいて説明する。図13には、車両用化学蓄熱システム110がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム110は、吸着器54を冷却するための冷却水系統に設けられた顕熱蓄熱器112を備える点で、エンジン冷却系20に設けられた顕熱蓄熱器82を備えた車両用化学蓄熱システム80とは異なる。
【0093】
具体的には、車両用化学蓄熱システム110は、冷却水循環ライン60における吸着器54の出口側とサブラジエータ62との間から分岐され、該冷却水循環ライン60における冷却水ポンプ64(吸着器54の入口側)とサブラジエータ62との間に合流されたラジエータバイパスライン114を備えている。顕熱蓄熱器112は、ラジエータバイパスライン114に設けられており、サブラジエータ62と並列に配置されているものと把握することができる。
【0094】
また、冷却水循環ライン60におけるラジエータバイパスライン114の分岐部分には、3ポート弁116が設けられている。3ポート弁116は、冷却水がサブラジエータ62に流入するのを許容する一方顕熱蓄熱器112に流入するのを禁止する蓄熱器バイパス状態と、冷却水がサブラジエータ62に流入するのを禁止する一方顕熱蓄熱器112に流入するのを許容するラジエータバイパス状態とを切り替え得る構成とされている。
【0095】
車両用化学蓄熱システム110においては、エンジン冷却系20側に設けられた顕熱蓄熱部80Bを有せず、化学蓄熱部と顕熱蓄熱部とが一体化されているものと把握することができる。すなわち、この実施形態では、顕熱蓄熱器112、ラジエータバイパスライン114、3ポート弁116、及び冷却水ポンプ64が本発明における脱着促進手段を構成するものと捉えることができる。
【0096】
そして、図14に示される如く、車両用化学蓄熱システム110を構成する制御装置としての蓄熱ECU118は、開閉弁46、48、58、3ポート弁116、ブロア52、及び冷却水ポンプ64に電気的に接続されている。この蓄熱ECU118は、自動車11の図示しないスタートスイッチ(運転制御ECUやメインコントローラ)や外気温センサ等にも電気的に接続されており、車両の走行状態や外気温等の情報に基づいて上記した各制御対象を制御するようになっている。
【0097】
この実施形態では、蓄熱ECU118は、自動車11の走行時には、反応器40の化学蓄熱材への蓄熱が行われる化学蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。図示は省略するが、化学蓄熱モードでは、3ポート弁116が蓄熱器バイパス状態をとるように蓄熱ECU118に制御され、冷却水の循環により吸着器54が冷却されるようになっている。その他の動作(排気ガスの流れ)は、車両用化学蓄熱システム10、80と同様である。
【0098】
また、蓄熱ECU118は、自動車11の停止の際には、顕熱蓄熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。図示は省略するが、顕熱蓄熱モードでは、開閉弁58が閉止されると共に、3ポート弁116がラジエータバイパス状態をとるように蓄熱ECU118に制御されるようになっている。これにより、冷却水ポンプ64の動力で冷却水が顕熱蓄熱器112と吸着器54とを循環することで、吸着器54の吸着熱を顕熱として有する冷却水が顕熱蓄熱器112に貯留(断熱保持)されるようになっている。
【0099】
さらに、蓄熱ECU118は、自動車11の低温環境下での始動時(低温始動時におけるエンジン12の始動前)には、反応器40内の化学蓄熱材が放熱を行うと共に、該反応器40から放熱された熱がバッテリ98に導かれる放熱モードを実行するように、上記した各制御対象を制御するようになっている。図示は省略するが、放熱モードでは、開閉弁58が開放されると共に、3ポート弁116がラジエータバイパス状態をとるように蓄熱ECU118に制御されるようになっている。これにより、顕熱蓄熱器112に蓄えられていた顕熱が吸着器54に脱着熱として供給されるようになっている。
【0100】
次に、第3の実施形態の作用を説明する。
【0101】
上記構成の車両用化学蓄熱システム110では、第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム80と同様に、自動車11の走行中に蓄熱モードを実行してエンジン12の排気熱を反応器40に蓄熱し、自動車11(又はエンジン12)の停止時に顕熱蓄熱モードを実行して顕熱蓄熱器112に顕熱を蓄える。また、車両用化学蓄熱システム110では、自動車11の低温始動時に顕熱蓄熱器112の熱を利用して吸着器54から水蒸気を脱着させることで、反応器40で水和反応を生じさせる。
【0102】
したがって、第3の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム110によっても、第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム80と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。すなわち、車両用化学蓄熱システム110では、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いて蓄熱・放熱を行うため、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、吸着器54に脱着熱を供給することで該吸着器54から反応器40に水蒸気を供給させて水和反応を生じさせる構成であるため、供給する脱着熱に対し高い温度での発熱が実現される。
【0103】
特に、車両用化学蓄熱システム110では、顕熱蓄熱器112に蓄えた熱によって吸着器54から水蒸気を脱着させる構成であるため、自動車11の始動時にエンジン12の作動に頼ることなく脱着熱を確保することができる。これにより、車両用化学蓄熱システム110が適用された自動車11では、低温環境下において、バッテリ98を暖機して出力密度を増大することで、エンジン12を始動させることなく、モータ95の動力で始動することができる。
なお、第3の実施形態では、化学蓄熱モードと顕熱蓄熱モードとを別々に行う例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、化学蓄熱モードの実行時に顕熱蓄熱モードを並行して実行する構成としても良い。
【0104】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム120について、図15及び図16に基づいて説明する。図15には、車両用化学蓄熱システム120がシステム構成図にて示されている。この図に示される如く、車両用化学蓄熱システム120は、水蒸気連通ライン56に本発明における脱着促進手段を構成する減圧ポンプとしての真空ポンプ122を備える点で、第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム80とは異なる。
【0105】
真空ポンプ122は、作動することで吸着器54を減圧しつつ反応器40を加圧する構成とされている。そして、この実施形態では、車両用化学蓄熱システム120による加熱対象は、第1の実施形態と同様に触媒コンバータ18とされている。
【0106】
また、車両用化学蓄熱システム120を構成する蓄熱ECU124は、制御対象として真空ポンプ122が付加されている点で、車両用化学蓄熱システム80を構成する蓄熱ECU100とは異なる。この実施形態では、蓄熱ECU124による制御は、放熱モードにおいて真空ポンプ122を作動させる点で、蓄熱ECU100による制御とは異なる。
【0107】
車両用化学蓄熱システム120の他の構成は、蓄熱ECU124による制御を含め、車両用化学蓄熱システム80の対応する構成と同じである。すなわち、車両用化学蓄熱システム120は、化学蓄熱部120Aと、エンジン冷却水の顕熱を蓄熱するための顕熱蓄熱部120Bとを備えた構成である捉えることができる。
【0108】
次に、第4の実施形態の作用を説明する。
【0109】
上記構成の車両用化学蓄熱システム120では、第2の実施形態に係る車両用化学蓄熱システム80と同様に、自動車11の走行中に蓄熱モードを実行してエンジン12の排気熱を反応器40に蓄熱し、自動車11(又はエンジン12)の停止時に顕熱蓄熱モードを実行して顕熱蓄熱器82に顕熱を蓄える。また、車両用化学蓄熱システム120では、自動車11の低温始動時に、真空ポンプ122を作動しつつ顕熱蓄熱器82の熱を吸着器54に供給して該吸着器54から水蒸気を脱着させることで、反応器40で水和反応を生じさせる。
【0110】
ここで、車両用化学蓄熱システム120では、脱水、水和反応により蓄熱・放熱を行う化学蓄熱材を用いて蓄熱・放熱を行うため、長期間に亘り安定的に蓄熱することができる。また、吸着器54に脱着熱を供給することで該吸着器54から反応器40に水蒸気を供給させて水和反応を生じさせる構成であるため、供給する脱着熱に対し高い温度での発熱が実現される。
【0111】
そして、車両用化学蓄熱システム120では、放熱モードにおいて真空ポンプ122を作動させるため、比較的低温の熱源である顕熱蓄熱器82の顕熱を脱着熱として利用する構成において、反応器40への水蒸気の供給圧力を増大することができる。これにより、反応器40に蓄熱した熱によって、350℃以上の高温への昇温を要求する触媒コンバータ18の加熱が可能となる。
【0112】
したがって、車両用化学蓄熱システム120では、始動時にエンジン12の排気熱を利用することなく触媒コンバータ18を加熱、昇温した後に、エンジン12を始動することができる。この場合、排気ガス中の未燃炭化水素成分が、放熱モードなしでエンジン12を始動した場合と比較して半減される。
【0113】
なお、第4の実施形態では、加熱対象を触媒コンバータ18とした例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、加熱対象をバッテリ98としても良い。この場合、例えば、顕熱蓄熱器82内のエンジン冷却水温度が環境温度(低温始動時の環境温度)程度まで低下していても、バッテリ98を加熱、昇温するのに十分な温度で反応器40を発熱させることができる。また例えば、エンジン12(触媒コンバータ18)とモータ95(バッテリ98)とを共に備えたハイブリッド車に適用される構成において、加熱対象を触媒コンバータ18及びバッテリ98のうちから選択する構成としても良い。この場合、例えば、吸着器54の温度に応じて加熱対象を選択する構成とすることができる。
【0114】
また、第4の実施形態では、顕熱蓄熱器82を有する構成において真空ポンプ122を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1又は第3の実施形態に係る構成に真空ポンプ122を設けた構成としても良く、また例えば、脱着熱の供給源として単にエンジン冷却水、冷却水循環ライン60の冷却水、外気(雰囲気)等を用いる構成に真空ポンプ122を設けた構成としても良い。すなわち、温度に頼らず圧力のコントロールで水蒸気を脱着する構成とする(真空ポンプ122のみで本発明における脱着促進手段を構成する)ことも可能である。
【0115】
さらに、上記した各実施形態では、車両用化学蓄熱システム10、80、110、120の概略構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。特に、各実施形態における各ラインの配置、弁類のタイプ、配置、開閉動作等は、対応するモード(蓄熱、放熱の各モード)を実行可能であれば良く、各種の変更が可能である。
【0116】
またさらに、上記した各実施形態では、化学蓄熱材として水酸化カルシウムを用いた例を示したが、本発明はこれに限定されず、水和・脱水による各種の放熱・蓄熱する各種の化学蓄熱材を用いて実施することができる。
【0117】
また、上記した各実施形態では、蓄熱した熱による加熱対象としてバッテリ98、触媒コンバータ18を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、予めされた設定に基づいて又は要求に応じて、エンジン12及び/又はヒータコア22を加熱対象としても良く、また例えば、氷雪等が付着した車体、車輪周り、ウインドシールドガラス等を加熱対象としても良い。また、加熱対象を複数の加熱対象候補から選択する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 車両用化学蓄熱システム
11 自動車(車両、ハイブリッド車両)
12 エンジン(内燃機関)
18 触媒コンバータ(排気触媒)
34 排気熱回収器(排気熱回収装置、脱着促進手段)
36 熱回収ライン(排気熱回収装置、脱着促進手段)
38 3ポート弁(排気熱回収装置、脱着促進手段)
40 反応器
50 加熱エアライン(伝熱構造)
52 ブロア(伝熱構造)
54 吸着器
60 冷却水循環ライン(冷媒循環路)
64 冷却水ポンプ(媒体移送手段、冷却水移送手段、脱着促進手段)
66 排気熱供給ライン(媒体移送手段、脱着促進手段)
68 ポート弁(媒体移送手段、脱着促進手段)
70 蓄熱ECU(制御装置)
80・110・120 車両用化学蓄熱システム
82・112 顕熱蓄熱器(顕熱蓄熱装置)
84 蓄熱器ライン(顕熱蓄熱装置)
86 ポート弁(顕熱蓄熱装置)
88 冷却水ポンプ(顕熱蓄熱装置)
90 エンジン冷却水供給ライン(冷却水移送手段、脱着促進手段)
92 エンジン冷却水戻りライン(冷却水移送手段、脱着促進手段)
94 ポート弁(冷却水移送手段、脱着促進手段)
95 モータ
98 バッテリ
99 加熱エアライン(伝熱構造)
100・118・124 蓄熱ECU
114 ラジエータバイパスライン(顕熱蓄熱装置)
116 ポート弁(顕熱蓄熱装置)
122 真空ポンプ(減圧ポンプ、脱着促進手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関の排気熱により脱水反応を行って蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が内蔵された反応器と、
前記反応器から前記脱水反応に伴って放出された水蒸気の吸着、及び吸着した水蒸気の脱着が可能な吸着材が内蔵された吸着器と、
前記吸着器の吸着材から水蒸気を脱着させるための脱着促進手段と、
前記反応器内の前記化学蓄熱材が水和反応により放熱した熱を加熱対象に伝える伝熱構造と、
を備えた車両用化学蓄熱システム。
【請求項2】
前記脱着促進手段は、前記内燃機関の排気熱を熱交換媒体に回収するための排気熱回収装置と、該排気熱を回収した熱交換媒体を前記吸着器に導くための媒体移送手段とを含んで構成されており、
前記車両の始動時に、前記熱交換媒体に前記内燃機関の排気熱が回収されると共に、該熱交換媒体が前記吸着器に導かれるように、前記排気熱回収装置及び媒体移送手段を制御する制御装置をさらに備えた請求項1記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項3】
前記脱着促進手段は、前記内燃機関の冷却水を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱装置と、該顕熱蓄熱器に貯留した冷却水を前記吸着器に導く冷却水移送手段とを含んで構成されており、
前記車両の停止時に、前記内燃機関の冷却水が前記顕熱蓄熱装置に貯留されるように該顕熱蓄熱装置を制御すると共に、前記車両の始動時に、前記顕熱蓄熱装置に貯留されている冷却水が前記吸着器に導かれるように前記冷却水移送手段を制御する制御装置をさらに備えた請求項1記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項4】
前記吸着器の吸着材が水蒸気を吸着する際に該吸着器を冷却するための冷媒を循環させる冷媒循環路を備え、
前記脱着促進手段は、前記冷媒循環路に直列又は並列に設けられ、該冷媒循環路の冷媒を保温状態で貯留可能に構成された顕熱蓄熱装置を含んで構成されており、
前記反応器への蓄熱中又は蓄熱終了時に、前記冷媒が前記顕熱蓄熱装置に貯留されるように該顕熱蓄熱装置を制御すると共に、前記車両の始動時に、前記顕熱蓄熱装置に貯留されている冷媒が前記吸着器に導かれるように該顕熱蓄熱装置を制御する制御装置をさらに備えた請求項1記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項5】
前記脱着促進手段は、前記吸着器内の圧力を低下させるための減圧ポンプを含んで構成されている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項6】
前記車両は、前記内燃機関の排気ガスを浄化するための排気触媒を有しており、
前記排気触媒が前記加熱対象とされている請求項2又は請求項5記載の車両用化学蓄熱システム。
【請求項7】
前記車両は、走行用の駆動力を発揮するモータと、前記モータに電力を供給するバッテリとを備えたハイブリッド車両であり、
前記バッテリが前記加熱対象とされている請求項1〜請求項6の何れか1項記載の車両用化学蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−64413(P2013−64413A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4284(P2013−4284)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2008−108579(P2008−108579)の分割
【原出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)