説明

車両用危険度算出装置

【課題】計算工程を削減して、演算処理にかかる時間を短縮することが可能な車両用危険度算出装置を提供すること。
【解決手段】自車両周辺の走行環境を認識し、認識された走行環境情報に基づいて、自車のリスクポテンシャルと自車周囲の対象物リスクポテンシャルとの重なりである両者の衝突危険度を演算する。そして、自車の車幅方向の中心が横軸の中心として設定されたグリッド状のマップを用いて、位置ごとに衝突危険度を表現するリスクポテンシャルマップを生成する。これにより、縦軸と横軸が交差する基準点(ゼロ点)に、自車の車幅方向の中心を設定して、リスクポテンシャルの分布状況を表すことが可能となる。それため、自車位置から一定範囲の領域における衝突危険度の積算値を算出する際に、1点のメモリアクセスを実行して算出することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用危険度算出装置に関し、特に自車の周辺の危険度を算出するための危険度算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行の安全性を高めるため、車両の周辺の潜在的な危険度を算出し、算出された危険度に応じて運転支援を行う装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の車両用運転支援装置は、車外環境情報として少なくとも車外の対象物を認識し、認識した各対象物の自車に対する2次元リスクポテンシャル分布を演算して車外環境のリスクマップを設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−99237号公報
【特許文献2】特開2005−262967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、道路環境を基に左下端をゼロ点として、X軸、Y軸を伸ばすことで、リスクマップを設定していた。そのため、リスクポテンシャル分布の合計値から所定のエリア内の危険度を求める場合には、矩形のエリアの四隅に対応する4点にメモリアクセスする必要があり、計算工程が多くなってしまい演算処理に時間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、計算工程を削減して、演算処理にかかる時間を短縮することが可能な車両用危険度算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車両用危険度算出装置は、自車両の走行環境を認識し、自車両と自車両周辺に存在する対象物との衝突危険度を算出する車両用危険度算出装置において、自車両の走行予測範囲に応じた自車リスクポテンシャルと対象物の移動予測範囲に応じた周囲リスクポテンシャルとの重なりに基づいて、自車両と対象物との衝突危険度を演算する衝突危険度算出手段と、衝突危険度算出手段によって算出された衝突危険度を、位置ごとに表現するリスクポテンシャルマップを生成するリスクポテンシャルマップ作成手段と、を備え、リスクポテンシャルマップ作成手段は、自車の前後方向が縦軸として設定され、自車の車幅方向の中心が横軸の中心として設定されたグリッド状のマップを用いて、リスクポテンシャルマップを生成することを特徴としている。
【0007】
本発明の車両用危険度算出装置は、自車両周辺の走行環境を認識し、認識された走行環境情報に基づいて、自車のリスクポテンシャルと自車周囲の対象物リスクポテンシャルとの重なりである両者の衝突危険度を演算する。この車両用危険度算出装置では、自車両の前後方向が縦軸として設定され、自車の車幅方向の中心が横軸の中心として設定されたグリッド状のマップを用いて、位置ごとに衝突危険度を表現するリスクポテンシャルマップを生成する。これにより、縦軸と横軸が交差する基準点(ゼロ点)に、自車の車幅方向の中心を設定して、リスクポテンシャルの分布状況を表すことが可能となる。それため、自車位置から一定範囲の領域(リスクポテンシャルエリア)における衝突危険度の積算値(リスク合計)を算出する際に、1点のメモリアクセスを実行して算出することが可能となる。その結果、従前のように4点のメモリアクセスを実行して、リスク合計を算出する必要がなくなり、計算工程を削減することができる。
【0008】
また、自車位置から所定の位置までを含む領域であるリスクポテンシャルエリア内の衝突危険度の積算値を、グリッド状のマップを用いて表現するリスクサムドマップを生成するリスクサムドマップ作成手段を備えることが好適である。横軸の中心を車幅方向の中心としたグリッドを用いて、衝突危険度の積算値を表現するリスクサムドマップを得ることができるため、自車位置から一定範囲の領域(リスクポテンシャルエリア)における衝突危険度の積算値(リスク合計)を算出する際に、1点のメモリアクセスを実行して算出することが可能となる。その結果、計算工程を削減して、演算処理にかかる時間を短縮することができ、高速の演算処理が可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、計算工程を削減して、演算処理にかかる時間を短縮することが可能な車両用危険度算出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る車両用危険度算出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】リスクポテンシャルマップの生成について説明するための図であり、右折する自車両、対向車、および歩行者が存在する交差点を示す平面図である。
【図3】図2に示す交差点の地図上に、自車両の車幅方向の中心を横軸中心とするグリッドを配置した状態を示す図である。
【図4】図2に示す交差点における自車両の衝突危険度を表すリスクポテンシャルマップの一例を示す図である。
【図5】図4に示すリスクポテンシャルマップに基づいて生成されたリスクサムドマップの一例を示す図である。
【図6】車両用危険度算出装置で実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用危険度算出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(車両用危険度算出装置の構成)
図1に示すように、車両用危険度算出装置1は、各種情報を取得するためのセンサ部2と、車両用危険度算出装置1の全体の制御を行う電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)10とを備え、自車両と自車両周辺に存在する対象物との衝突危険度を算出するものである。ECU10は、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。
【0013】
センサ部2は、自車両の周辺環境を検出する各種センサを備える。センサ部2は、周辺環境として、自車両周辺に存在する対象物を検出する。センサ部2は、検出された対象物に関する情報をECU10に送信する。対象物に関する情報としては、対象物の種別に関する情報、対象物の移動速度に関する情報、対象物の移動範囲を予測するために必要な情報などが挙げられる。対象物は、自車両と衝突するおそれのある移動体であり、例えば、他車両、歩行者などである。
【0014】
センサ部2は、例えば自車両の前方の映像等の自車両周囲の映像を撮像するためのカメラ21を備えている。カメラ21は、自車両が走行している道路を十分に撮像可能な左右方向に広い撮像範囲を有するものである。カメラ21は、撮像した映像情報を映像信号としてECU10に送信する。
【0015】
また、センサ部2は、ミリ波を利用して自車両周辺の対象物を検出するためのレーダであるミリ波レーダ22を備える。ミリ波レーダは、自車の前側の中央に取り付けられている。ミリ波レーダ22は、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ22は、そのミリ波の送受信情報をレーダ信号としてECU10に送信する。
【0016】
また、センサ部2は、自車両の走行予測範囲を算出するための各種情報を取得する各種センサを備える。センサ部2は、自車両の車速を検出するための車輪速センサ23を備えている。また、センサ部2は、その他のセンサとして、アクセル操作、ハンドル操作、ブレーキ操作を検出するセンサなどが挙げられる。
【0017】
また、車両用危険度算出装置1は、自車両の位置情報、自車両の進行方向に関する情報を取得可能な構成とされていることが好ましい。ECU10は、自車両に搭載されたカーナビゲーションシステムと通信可能とされ、自車両の位置情報、自車両の経路に関する情報を取得することができる。カーナビゲーションシステムには、自車位置を検出するためのGPS装置が設けられている。また、カーナビゲーションシステムは、地図情報を記憶する地図データベースを備えている。
【0018】
ECU10は、走行環境認識部11、対象物認識部12、リスクポテンシャルマップ生成部13、及びリスクサムドマップ生成部14を備えている。これらの走行環境認識部11、対象物認識部12、リスクポテンシャルマップ生成部13、及びリスクサムドマップ生成部14は、ECU10のCPU、RAM、ROM等のハードウエアが、所定のプログラムに従い協働して動作することによってソフトウエア的に実現される構成要素である。
【0019】
走行環境認識部11は、カメラ21からの映像信号に基づき、映像処理を行って現在の自車両の走行環境等を認識する。自車両の走行環境には、自車両周辺の道路形状、道路の勾配、道路の停止線の位置、自車両の進行方向の信号表示、自車両の交差方向の信号表示、自車両の交差方向の歩行者用信号表示等が含まれる。なお、走行環境認識部11は、自車両周辺の道路形状、道路の勾配等のデータ等を、GPS装置24からの現在位置信号を取得し、自車両現在位置に基づき地図情報を参照して取得することもできる。
【0020】
対象物認識部12は、自車両周辺に存在する物体のうち自車両に衝突する可能性がある物体を自車両周辺の対象物として認識する。更に対象物認識部12は、当該障害物の状態を認識する。すなわち、対象物認識部12は、ミリ波レーダからのレーダ信号に基づき、対象物を認識すると共に、当該対象物の位置、移動方向、移動速度等を認識する。更に、対象物認識部12は、カメラ21からの映像信号に基づいて所定の映像処理を行い、上記対象物が車両であるか歩行者であるかその他の物体であるかを認識する。
【0021】
リスクポテンシャルマップ生成部13は、自車両の走行予測範囲に基づいて算出された自車のリスクポテンシャルと、対象物の移動予測範囲に基づいて算出された対象物のリスクポテンシャル(周囲リスクポテンシャル)との重なりから両者(自車両と対象物)の衝突危険度を位置ごとに表現するリスクポテンシャルマップを作成する。
【0022】
リスクポテンシャルマップ生成部13は、自車両の走行予測範囲に応じた自車リスクポテンシャルと対象物の移動予測範囲に応じた周囲リスクポテンシャルとの重なりに基づいて、自車両と対象物との衝突危険度を演算する本発明の衝突危険度算出手段として機能する。
【0023】
また、リスクポテンシャルマップ生成部13は、衝突危険度算出手段によって算出された衝突危険度を、位置ごとに表現する本発明のリスクポテンシャルマップ作成手段として機能する。
【0024】
リスクポテンシャルマップは、自車両が存在する道路の平面図上における衝突危険度の分布を、グリッド(x−y座標系)を用いて表現するものである。リスクポテンシャルマップは、例えば自車両と各対象物との衝突確率、衝突予測時間(TTC: Time To Collision)等が考慮され作成される。
【0025】
また、リスクポテンシャルマップ生成部13は、自車両の前後方向を縦軸(Y軸)とし、当該縦軸と交差する横軸(X軸)の中心を自車両の車幅方向の中心(ゼロ点)としてグリッドを設定し、このグリッド用いて、自車両と対象物との衝突危険度を位置ごとに表現するリスクポテンシャルマップを生成する。
【0026】
リスクサムドマップ生成部14は、リスクポテンシャルマップ生成部13によって作成されたリスクポテンシャルマップを参照して、衝突危険度の積算値を位置ごとに表現するリスクサムドマップを作成する。
【0027】
リスクサムドマップは、自車両が存在する道路の平面図上における衝突危険度の積算値を、グリッド(x−y座標系)を用いて表現するものである。リスクサムドマップは、ポテンシャルマップの各グリッドに対応するリスクポテンシャルを積算して生成されたマップである。例えば、画像を用いて自車両の衝突危険度を表現する場合、画像における各画像がポテンシャルマップのグリッドに対応するように、リスクサムドマップが生成される。衝突危険度を表現する画像において自車位置から所定の位置までの各画素を積算することで生成されたものがリスクサムドマップとなる。
【0028】
ここで、リスクサムドマップ生成部14は、自車位置から所定の位置までを含む領域であるリスクポテンシャルエリア内の衝突危険度の積算値を演算し、グリッドの横軸(X軸)の中心を自車両の車幅方向の中心(ゼロ点)としてグリッドを設定し、このグリッドを用いて、衝突危険度の積算値を位置ごとに表すリスクサムドマップを生成する。そして、ECU10では、リスクサムドマップを利用することで合成衝突危険度を演算する。ECU10では、リスクポテンシャルマップのサムドマップを作成する際に、自車両位置をマップの中心に配置することで、リスクポテンシャルエリアの積算値(リスク合計)の算出を簡略化することが可能である。
【0029】
また、リスクサムドマップ生成部14では、リスクサムドマップ作成時に、自車位置からの距離が遠い部分のサムドマップを作成しないことで、演算処理の簡略化を図ることできる。自車両からの距離が遠い部分については、自車両との衝突危険度が低くなることから、ある閾値以上の距離にある部分についてマップを作成しない場合であっても、衝突危険度の精度の低下を抑制して演算処理の高速化を実現する。
【0030】
(リスクポテンシャルマップの生成方法の詳細)
続いて、リスクポテンシャルマップ生成部13によるリスクポテンシャルマップの生成方法の詳細について、図2〜図4を用いて説明する。図2は、リスクポテンシャルマップの生成について説明するための図であり、右折する自車両、対向車、および歩行者が存在する交差点を示す平面図である。なお、以下では、図2に示す道路状況におけるリスクポテンシャルマップの生成について説明する。
【0031】
図2では、自車両101が交差点で右折しようとしているところを表している。自車両101は、交差点で右折するために、自車両が存在する車線111に対して斜めに向いている。車線111の対向車線112では、対向車102が交差点内へ向かい直進している。自車両101が右折した場合の進行方向となる車線113には、横断歩道114が設けられ、この横断歩道の直前で歩行者103が待機している。
【0032】
リスクポテンシャルマップ生成部13は、走行環境認識部11及び対象物認識部12からの情報に基づいて、自車両の走行予測範囲R101、対向車102の走行予測範囲R102、および歩行者103の移動予測範囲R103を算出する。例えば、現在の運動(速度、方向)が継続するものとして、走行予測範囲、および移動予測範囲を演算する。また、複数の走行予測範囲を算出してもよい。
【0033】
図3は、図2に示す交差点の地図上に、自車両の車幅方向の中心を横軸中心とするグリッドを配置した状態を示す図である。リスクポテンシャルマップ生成部13は、縦軸Yと横軸Xが直交するグリッドGを設定する。具体的には、自車両101のグリッドGの縦軸Yを自車両101の前後方向に設定し、横軸Xを自車両101の車幅方向に設定する。そして、横軸Xの中心Oを自車両101の車幅方向の中心に対応するように設定する。また、自車両101の先端がY軸方向のゼロ点に対応するようにグリッドGが設定されることが好ましい。
【0034】
また、リスクポテンシャルマップ生成部13は、グリッドGでは、X軸に平行する複数の線が等間隔で配置され、Y軸に平行する複数の線が等間隔で配置されている。そして、これらの線の交点に、対応する位置のリスクポテンシャルの値が記憶される。なお、全ての交点にリスクポテンシャルの値が記憶されない場合でもよい。また、X軸およびY軸に平行する線は、等間隔に配置されていない場合でもよい。
【0035】
図4は、図2に示す交差点における自車両の衝突危険度を表すリスクポテンシャルマップの一例を示す図である。図4に示すリスクポテンシャルマップでは、図3に示すグリッドGの交点に記憶されているリスクポテンシャルの値を一例として示している。原点O(0,0)は、横軸Xの中心であり、自車両101の車幅方向の中心に対応するように設定されている。例えば、原点(0,0)には、リスクポテンシャルの値“80”が記録されている。リスクポテンシャルの値は、自車両101が衝突する可能性が高いほど大きな値となることを示すものである。
【0036】
(リスクサムドマップの生成方法の詳細)
続いて、リスクサムドマップ生成部14によるリスクサムドマップの生成方法の詳細について、図5を用いて説明する。図5は、図4に示すリスクポテンシャルマップに基づいて生成されたリスクサムドマップの一例を示す図である。図5に示すリスクサムドマップの横軸Xの中心は、自車両101の車幅方向の中心に設定され、リスクサムドマップとリスクポテンシャルマップの位置関係はそれぞれ対応している。
【0037】
リスクサムドマップ生成部14は、グリッドGの点にリスクポテンシャルの積算値を記憶する。例えば、所定の位置に対応する点Q(n,m)におけるリスクポテンシャルの積算値とは、自車位置に対応する点O(0,0)から点Q(n,m)までを含む領域(リスクポテンシャルエリア)内のリスクポテンシャルの値の合計値である。リスクサムドマップ生成部14は、点Oから点Qまでを含む領域であるリスクポテンシャルエリアとして、X軸、Y軸、点(0,m)と点Qとを結ぶ直線、点(n,0)と点Qと結ぶ直線に囲まれた領域を設定し、このリスクポテンシャルエリア内の値を合計して、積算値を求める。
【0038】
例えば、点A(0,10)の積算値を求める場合には、ポテンシャルエリアとして、Y軸に沿って、点O〜点A(0,10)を含む領域が設定される。リスクサムドマップ生成部14は、ポテンシャルエリア内の積算値として、点O〜点A(0,10)の各点(11箇所)のリスクポテンシャルの値を合計する。算出された積算値が、点Aに記憶される。
【0039】
また、点B(3,4)の積算値を求める場合には、ポテンシャルエリアとして、X軸、Y軸、点(0,4)〜点B(3,4)を結ぶ直線、点(3,0)〜点B(3,4)を結ぶ直線に囲まれた領域が設定される。リスクサムドマップ生成部14は、ポテンシャルエリア内の積算値として、点O〜点(0,4)、点(1,0)〜点(1,4)、点(2,0)〜点(2,4)、点(3,0)〜点Bの各点(20箇所)のリスクポテンシャルの値を合計する。算出された積算値が点Bに記憶される。
【0040】
(車両用危険度算出装置における制御処理の流れ)
次に、車両用危険度算出装置1で実行される制御処理の流れについて、図6を参照して説明する。図6は、車両用危険度算出装置1で実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。図6のフローチャートに示される処理は、主として上記したECUによって行われるものであり、車両用危険度算出装置1の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0041】
まず、ECU10のリスクポテンシャルマップ生成部13は、リスクポテンシャルマップをクリアする(ステップS1)。次に、リスクポテンシャルマップ生成部13は、グリッドの横軸の中心に、自車両の車幅方向の中心を設定することで、自車両中心を設定する(ステップS2)。
【0042】
次に、リスクポテンシャルマップ生成部13は、衝突確率をグリッドに設定する(ステップS3)。ここでは、リスクポテンシャルマップ生成部13は、自車両101の走行予測範囲、および対象物の走行予測範囲の重なりに基づいて、自車両101の位置ごとの衝突確率をリスクポテンシャルとして設定する。リスクポテンシャルマップ生成部13は、グリッドの交点に対応する領域に、リスクポテンシャルの値を格納することでリスクポテンシャルを設定する。
【0043】
次に、リスクサムドマップ生成部14は、リスクポテンシャルマップからリスクサムドマップを作成する(ステップS4)。リスクサムドマップ生成部14は、位置ごとに、ゼロ点(0,0)からのリスクポテンシャルの値を積算し、グリッドに積算値を設定する。リスクサムドマップ生成部14は、グリッドの交点に対応する領域に、積算値を格納することで積算値を設定する。
【0044】
次に、ECU10は、合成リスク値を算出する(ステップS5)。ECU10は、リスクサムドマップを利用して合成衝突危険度を演算することで、合成リスク値を算出する。なお、ECU10は、自車両101の走行状況に応じて、図5に示すようなリスクポテンシャルエリアF,F,Fを設定する。
【0045】
例えば、自車両101が直進する場合には、リスクポテンシャルエリアFが設定され、右折する場合には、リスクポテンシャルエリアFが設定され、左折する場合には、リスクポテンシャルエリアFが設定される。このリスクポテンシャルエリアのX軸方向の大きさは、操舵角の大きさによって設定され、操舵角が大きくなるほど、X軸方向の大きさが大きくなる。また、リスクポテンシャルエリアのY軸方向の大きさは、車速の大きさによって設定され、車速が大きくなるほど、Y軸方向の大きさが大きくなる。
【0046】
そして、車両用危険度算出装置1では、リスクポテンシャルエリアF,F,Fのリスク合計を演算する場合には、それぞれ、点A,点B,点Cの1点にメモリアクセスすることで求めることができる。ステップS5の処理の実行後、一連の処理は終了する。
【0047】
(車両用危険度算出装置による作用および効果)
車両用危険度算出装置1は、センサ部2からの情報に基づいて、自車両の走行環境を認識して、自車両の走行予測範囲および自車両周辺の対象物の移動予測範囲を算出することができる。車両用危険度算出装置1は、自車両の走行予測範囲と対象物の移動予測範囲の重なりから両者の衝突危険度を算出し、位置ごとの衝突危険度を、グリッドを用いて表現することが可能である。
【0048】
また、車両用危険度算出装置1では、横軸の中心を自車両の車幅方向の中心として設定されたグリッドを用いて、リスクポテンシャルマップおよびリスクサムドマップが生成されているため、自車位置から一定領域のリスク合計を算出する場合には、1点のメモリアクセスだけで算出することが可能である。これにより従前のように4点のメモリアクセスを実行して、リスク合計を算出する必要がなく、計算工程を削減することができる。その結果、演算処理にかかる時間を短縮して高速の演算処理を実行することができる。
【0049】
なお、リスクサムドマップを作成する際に、自車両から一定距離、離れた位置の積算値は演算しないようにしてもよい。自車両から距離が遠いほど、近い場合と比較して衝突危険度は低くなる傾向にあるため、ある閾値以上離れた位置の積算値を算出しない場合であっても、リスクサムドマップの妥当性を低下させることなく高速でリスクサムドマップを作成することができる。
【0050】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、自車両の前面の車幅方向の中心をグリッドの原点(0,0)に設定しているが、自車両の車両中心を原点(0,0)に設定したグリッドを用いて、リスクポテンシャルマップ、リスクサムドマップを生成してもよい。
【0051】
また、車両用危険度算出装置1は、リスクサムドマップを生成するリスクサムドマップ生成手段を備える構成としているが、リスクサムドマップを備えていない車両用危険度算出装置でもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…車両用危険度算出装置、2…センサ部、21…カメラ、22…ミリ波レーダ、23…車輪速センサ、10…ECU、11…走行環境認識部、12…対象物認識部、13…リスクポテンシャルマップ生成部、14…リスクサムドマップ生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行環境を認識し、自車両と自車両周辺に存在する対象物との衝突危険度を算出する車両用危険度算出装置において、
自車両の走行予測範囲に応じた自車リスクポテンシャルと前記対象物の移動予測範囲に応じた周囲リスクポテンシャルとの重なりに基づいて、自車両と対象物との衝突危険度を演算する衝突危険度算出手段と、
前記衝突危険度算出手段によって算出された前記衝突危険度を、位置ごとに表現するリスクポテンシャルマップを生成するリスクポテンシャルマップ作成手段と、を備え、
前記リスクポテンシャルマップ作成手段は、自車の前後方向が縦軸として設定され、自車の車幅方向の中心が横軸の中心として設定されたグリッド状のマップを用いて、前記リスクポテンシャルマップを生成することを特徴とする車両用危険度算出装置。
【請求項2】
自車位置から所定の位置までを含む領域であるリスクポテンシャルエリア内の前記衝突危険度の積算値を、前記グリッド状のマップを用いて表現するリスクサムドマップを生成するリスクサムドマップ作成手段を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用危険度算出装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−253302(P2011−253302A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126094(P2010−126094)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】