説明

車両用外装ビームのエンドキャップ及び外装ビーム

【課題】外部への突出量を少なくした簡易な構成で、確実にバンパー本体に固定することができる車両用外装ビームのエンドキャップ及びそれを用いた外装ビームを提供する。
【解決手段】バンパー本体101の開口端部の端面101bを塞ぐ板状のカバー部材1の内面に、バンパー本体101内部に延びる少なくとも一対のリブ部2がカバー部材1の幅方向に間隔をおいて設けられ、リブ部2の先端にバンパー本体101と締結するリベット102を挿入するリベット穴が形成されたエンドキャップ100であって、一対のリブ部2は、根元から漸次間隔を広げて形成された弾性脚部22と、この弾性脚部22の先端に内向き屈曲部23を介して一体に形成された固定部24とを有し、固定部24にリベット穴を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に配置されるバンパー等の外装ビームの端部を覆う車両用外装ビームのエンドキャップ及び外装ビームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なトラック等の車高の高い車両には、車高の低い乗用車等が衝突した際の潜り込みを防止するために、車両の下方にバンパーが設けられている。このバンパーは、スチール又はアルミニウム合金等によって角筒状に形成され、安全性を確保する等の目的で、特許文献1に示されるように、両端の開口端部を樹脂製のカバー部材(エンドキャップ)によって覆ったものが知られている。
【0003】
特許文献1のエンドキャップは、バンパー本体の開口端部近傍の外壁を覆う周壁と開口端部の端面に対向する底壁とを備えた箱状に形成されており、バンパー本体の開口端部を閉塞するようにして、周壁とバンパー本体とに設けたリベット穴にリベットを挿入して取り付けられる。このエンドキャップには、周壁と底壁とのコーナー部近傍に、バンパー本体の端面に接触して変形可能な突起部が設けられている。
エンドキャップをバンパー本体の開口端部に被せて押し込むと、突起部がバンパー本体の端面に接触して、変形する。このように、突起部を変形させながらバンパー本体を押し込むことで、端面が突起部に押圧された状態となり、エンドキャップをバンパー本体に対して遊び(ガタ)のない状態で固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−137363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のエンドキャップにおいては、バンパー本体の開口端部の外壁を覆う形状であるために、エンドキャップが外側に出っ張り、周辺部材と干渉してスペース効率が悪い。また、このように突出した形状のエンドキャップは空気抵抗が大きく、車両の走行中に外れることがないように強固に取り付ける必要があるため、エンドキャップ自体の剛性を強くする必要があった。このため、ますます大型化する傾向にある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、外部への突出量を少なくした簡易な構成で、確実にバンパー本体に固定することができる車両用外装ビームのエンドキャップ及びそれを用いた外装ビームを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用外装ビームのエンドキャップは、バンパー本体の開口端部の端面を塞ぐ板状のカバー部材の内面に、前記バンパー本体内部に延びる少なくとも一対のリブ部が前記カバー部材の幅方向に間隔をおいて設けられ、前記リブ部の先端に前記バンパー本体と締結するリベットを挿入するリベット穴が形成されたエンドキャップであって、前記一対のリブ部は、根元から漸次間隔を広げて形成された弾性脚部と、この弾性脚部の先端に内向き屈曲部を介して一体に形成された固定部とを有し、前記固定部に前記リベット穴を形成していることを特徴とする。
【0008】
このように形成される車両用外装ビームのエンドキャップは、リブ部がバンパー本体内に挿入され、カバー部材が板状に形成されているので、バンパー本体の外部に突出する部分が少なく、周辺部品と干渉することがないとともに、スペース効率がよい。
また、全体的に突出する部分が少ないので、空気抵抗を小さくでき、バンパー本体とエンドキャップとを確実に固定することができるうえに、エンドキャップ自体を剛構造とする必要がないので、軽量、薄型化にも対応でき、コストパフォーマンスに優れている。
【0009】
また、トラック用バンパーに求められる強度要件としては、車両総重量に応じた衝突特性が設定されており、車両総重量が重い車体ほど、バンパー本体の強度を強く設計する必要がある。そのため、各車両総重量に応じてトラック用バンパーの衝突特性を最適化するために、バンパー本体の外形を変えずに肉厚の変更により対応することが求められる場合があるが、この場合においても、前述のように形成されるリブ部は、弾性脚部を弾性変形させて、固定部をバンパー本体の内壁に密着させて取り付けることができるので、肉厚の異なる種々のバンパー本体にも対応することができる。
【0010】
例えば、バンパー本体の肉厚が厚い場合は、対向するリブ部同士が近づく方向に押し込まれて、バンパー本体内に挿入される。そして、対向するリブ部のうち一方の固定部をリベットでバンパー本体の内壁に密着させて固定すると、内向き屈曲部の部分でモーメントが発生し、そのモーメントにより他方のリブ部に近いカバー部材の縁部が、バンパー本体の端面に押し付けられて、エンドキャップの動きが規制される。
そのため、仮に、リブ部の一方側だけをリベットで固定して、反対側を固定しないとしても、カバー部材の内面をバンパー本体の端面に密着させて状態で保持することができ、バンパー本体とエンドキャップとを確実に固定することができる。
また、バンパー本体の肉厚が薄い場合には、バンパー本体とリブ部とをリベットで固定することで、リブ部の固定部がリベットにより引っ張られて、リブ部の根元部分でモーメントが発生することから、カバー部材をバンパー本体の端面に密着させて、確実に固定することができる。
この場合においても、バンパー本体の肉厚が厚い場合と同様に、仮に、リブ部の一方側だけをリベットで固定して、反対側を固定しないとしても、一方側のリブ部の弾性変形によって反対側のリブ部に近いカバー部材の縁部がバンパー本体の端面に引き寄せられ、エンドキャップを密着させて保持することができる。
【0011】
また、本発明の車両用外装ビームのエンドキャップにおいて、前記一対のリブ部同士が、下端部で帯板状の連結部により連結されているとよい。
リブ部同士を連結する連結部を設けることにより、カバー部材の幅方向の剛性を高めることができる。これにより、前述したように、一方のリブ部をバンパー本体に固定した際に生じるモーメントを他方のリブ部に確実に伝達して、エンドキャップのカバー部材がバンパー本体の端面から浮き上がるのを確実に防止することができる。
【0012】
そして、本発明の車両用外装ビームのエンドキャップにおいて、前記リベット穴が前記リブ部の長さ方向に延びる長穴で形成されているとよい。
この場合、リブ部が弾性変形して、バンパー本体との取付位置が多少ずれた場合でも、確実に固定することができる。
【0013】
本発明の車両用外装ビームは、筒状のバンパー本体の両端の開口端部に、前記エンドキャップが取り付けられて構成されており、前記エンドキャップは、カバー部材が前記開口端部の端面を塞ぐとともに、前記リブ部の固定部が、前記リベット穴及びバンパー本体を貫通するリベットにより固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性変形可能なリブ部をバンパー本体の内部に挿入して、バンパー本体にエンドキャップを取り付ける簡易な構成でありながら、肉厚の異なる種々のバンパー本体への取り付けが対応可能であるとともに、エンドキャップの外部への突出量を少なくして、確実にバンパー本体とエンドキャップとを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のエンドキャップの斜視図である。
【図2】本実施形態のバンパーの斜視図である。
【図3】バンパー本体を説明する図である。
【図4】基準寸法の肉厚のバンパー本体とエンドキャップとの取り付けを説明する図である。
【図5】肉厚の厚いバンパー本体とエンドキャップとの取り付けを説明する図であり、(a)が固定前、(b)が固定後を示す。
【図6】肉厚の薄いバンパー本体とエンドキャップとの取り付けを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の車両用外装ビームをバンパーに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のバンパー200は、図2に示すように、角筒状に形成されたバンパー本体101の両端の開口端部に、その端面を塞ぐエンドキャップ100を取り付けて、構成される。
【0017】
バンパー本体101は、図3に示すように、アルミニウム合金の押出成形等によって角筒状に形成されており、取り付けられる車両の幅寸法と同程度の長さに形成されている。両端の開口端部101aには、エンドキャップ100を固定するためのリベット102を挿入するリベット孔110が設けられている。
リベット孔110は、バンパー本体101の幅方向に対向する周壁のみに設けられており、各周壁に2個ずつ形成されている。
【0018】
エンドキャップ100は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成されており、バンパー本体101の端面101bの外形とほぼ同じ長方形の板状のカバー部材1と、このカバー部材1によりバンパー本体101の端面101bを塞いだときにバンパー本体101の内部に延びる二対のリブ部2とが一体に形成されている。
各対のリブ部2は、図1及び図4に示すように、カバー部材1の内面に、幅方向に間隔をおいて設けられている。そして、リブ部2は、根元から漸次間隔を広げて形成された弾性脚部22と、この弾性脚部22の先端に内向き屈曲部23を介して一体に形成された固定部24とによって構成されており、固定部24には、リベット102を挿入するリベット穴21が、リブ部2の長さ方向に延びる長穴により形成されている。
また、これら対のリブ部2同士は、カバー部材1の内面に一体に立設した幅方向に沿う帯板状の連結部3によって下端部が相互に連結されており、これにより、リブ部2自体が根元から折れて破損するのを防ぐとともに、カバー部材1の幅方向の剛性を高めている。
【0019】
なお、図1及び図4に示す爪部4は、カバー部材1の内面に突出して形成されるとともに、カバー部材1の長さ方向に離間して一対形成されており、バンパー本体101の取り付けの際には、バンパー本体101の内側空間に入り込んで、長さ方向の位置合わせがなされるようになっている。
また、バンパー本体101にリブ部2を挿入し易くするために、固定部24の外側面の先端部分には、傾斜面25が形成されている。
【0020】
このように構成されるエンドキャップ100は、以下のようにしてバンパー本体101に固定される。
なお、バンパー本体101は、外形寸法(図3に示す高さHおよび幅W)を変えずに、周壁の肉厚tの異なる複数種類が存在しており、本実施形態のエンドキャップ100は、上述した構成によって、このような種々の肉厚のバンパー本体に対応できるように形成されている。
【0021】
まず、図4に示すように、固定部24の外側面間の寸法と、バンパー本体101の内壁間の寸法とが、ほぼ同じ大きさで形成されている場合を基準として説明する。以下、この場合のバンパー本体101の肉厚寸法を基準寸法とする。
バンパー本体101の開口端部101aにリブ部2を挿入して、バンパー本体101の端面101bとカバー部材1とを密着させると、バンパー本体101側のリベット孔110と、リブ部2のリベット穴21とが対向して配置される。この状態で、リベット102をバンパー本体101の外側から挿入して、バンパー本体101とバンパー用エンドキャップ100とを固定する。
この際、リブ部2の固定部24がリベット102によって、バンパー本体101の内壁に密着して固定される。リブ部2は、弾性脚部22により弾性変形可能に設けられているので、遊びのない状態でバンパー本体101の内壁に密着させることができ、確実に固定することができる。
【0022】
次に、バンパー本体の肉厚が基準寸法よりも厚く、エンドキャップ100のリブ部2が固定されるバンパー本体の内壁間の寸法が、基準より狭い場合について説明する。
バンパー本体111の肉厚が厚い場合は、リブ部2をバンパー本体111の内部に挿入すると、対向するリブ部2同士が、図5(a)の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態に、相互に近づく方向に押し込まれて、弾性脚部22が弾性変形する。
そして、対向するリブ部2のうちの一方の固定部24(図中では右側)をリベット102でバンパー本体111の内壁に密着させて、図5(b)の実線で示すように固定すると、内向き屈曲部23の部分を中心として図5(b)の右側のリブ部2では時計回りにモーメントが発生し、そのモーメントにより、他方のリブ部2に近いカバー部材1の縁部が、矢印Aで示すように、バンパー本体111の端面111bに押し付けられて、エンドキャップ100自体の動きが規制される。
そのため、仮に、他方のリブ部2をリベット102で固定しないとしても、カバー部材1の内面をバンパー本体111の端面111bに密着させた状態で保持することができ、バンパー本体111とエンドキャップ100とを確実に固定することができる。
【0023】
続いて、バンパー本体の肉厚が、基準寸法よりも薄く、バンパー本体の内壁間の寸法が基準より広い場合について説明する。
図6に示すように、バンパー本体121の肉厚が薄い場合には、バンパー本体121とリブ部2とをリベット102で固定することで、リブ部2の固定部24がリベット102により引っ張られて、弾性脚部22が弾性変形して固定される。
この際にも、リブ部2にはその根元の部分でモーメントが発生し、その根元のカバー部材1がバンパー本体121の端面121bに密着させられる。これにより、バンパー本体121とエンドキャップ100とを確実に固定することができる。
この場合、仮に、対向するリブ部2のうちの一方のリブ部2だけをリベット102で固定して、他方のリブ部2を固定しないとしても、一方のリブ部2の弾性変形によって他方のリブ部2に近いカバー部材1の縁部が、端面121bに引き寄せられ、エンドキャップ100を確実に密着させることができる。
【0024】
また、肉厚の異なるバンパー本体111,121にカバー部材1の剛性の低いエンドキャップを取り付けた場合には、前述したモーメントにより、カバー部材1の中央部がバンパー本体の内部に引き込まれて、カバー部材1の縁部がバンパー本体の端面から浮き上がることが懸念されるが、本実施形態のエンドキャップ100においては、リブ部2同士を連結する連結部3を設けているので、カバー部材1の幅方向の剛性が高くなっており、変形が抑えられる。
したがって、リブ部2をバンパー本体に固定した際に生じるモーメントを、他方のリブ部に確実に伝達して、エンドキャップのカバー部材がバンパー本体の端面から浮き上がることを確実に防止することができる。
【0025】
なお、リブ部2は、基準寸法のバンパー本体101に取り付けた場合と比べて、肉厚の異なるバンパー本体111,121に取り付けた場合の取付位置は、弾性脚部22が弾性変形することにより、リブ部2の固定部24の高さ位置が変動して、リベット孔110との位置関係が多少ずれるが、リベット穴21は長穴で形成されているため、いずれの場合も確実にリベット102を挿入して固定することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態のエンドキャップにおいては、リブ部を弾性変形可能に設けたので、リブ部をバンパー本体に密着させて確実に取り付けることができ、肉厚の異なる種々のバンパー本体にも対応することができる。
そして、このように形成されるエンドキャップは、カバー部材が板状であり、リブ部がバンパー本体に内に挿入されているので、バンパー本体の外部に突出する部分が少なく、周辺部品と干渉することがないとともに、スペース効率がよい。
また、全体的に突出する部分が少ないので、空気抵抗を小さくでき、バンパー本体とエンドキャップとを確実に固定することができるうえに、エンドキャップ自体を剛構造とする必要がないので、軽量、薄型化にも対応でき、コストパフォーマンスに優れている。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態においては、車両用外装ビームをバンパーに適用した場合について説明したが、この外装ビームは、車両のサイドに設けられるサイドガード等にも適用することができる。
また、バンパー本体は、アルミニウム合金だけでなく、スチール等の他の材料を使用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 カバー部材
2 リブ部
3 連結部
4 爪部
21 リベット穴
22 弾性脚部
23 内向き屈曲部
24 固定部
25 傾斜面
100 エンドキャップ
101,111,121 バンパー本体
101a 開口端部
101b,111b,121b 端面
102 リベット
110 リベット孔
200 バンパー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパー本体の開口端部の端面を塞ぐ板状のカバー部材の内面に、前記バンパー本体内部に延びる少なくとも一対のリブ部が前記カバー部材の幅方向に間隔をおいて設けられ、前記リブ部の先端に前記バンパー本体と締結するリベットを挿入するリベット穴が形成されたエンドキャップであって、前記一対のリブ部は、根元から漸次間隔を広げて形成された弾性脚部と、この弾性脚部の先端に内向き屈曲部を介して一体に形成された固定部とを有し、前記固定部に前記リベット穴を形成していることを特徴とする車両用外装ビームのエンドキャップ。
【請求項2】
前記一対のリブ部同士が、下端部で帯板状の連結部により連結されていることを特徴とする請求項1記載の車両用外装ビームのエンドキャップ。
【請求項3】
前記リベット穴が前記リブ部の長さ方向に延びる長穴で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用外装ビームのエンドキャップ。
【請求項4】
筒状のバンパー本体の両端の開口端部に、請求項1から3のいずれか一項に記載のエンドキャップが取り付けられて構成されており、前記エンドキャップは、前記カバー部材が前記開口端部の端面を塞ぐとともに、前記リブ部の固定部が、前記リベット穴及び前記バンパー本体を貫通するリベットにより固定されていることを特徴とする車両用外装ビーム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−25254(P2012−25254A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164986(P2010−164986)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)