説明

車両用格子状部品

【課題】複数の棒状部の意匠面と反対側の表面に付着した汚れを、複数の棒状部の意匠面側から容易に落とすことができる車両用格子状部品を得る。
【解決手段】本フロントグリルでは、複数のスポーク部16の後端側部分が断面くさび状に形成されており、スポーク部16の裏面16C、16Dの全体が、隣のスポーク部16との間(隙間18)から車体外側へ露出している。このため、洗車の際には、車体の外側から裏面16C、16Dの全体に水を吹きかけることができる。したがって、スポーク部16の裏面16C、16Dに付着した汚れdを車体外側からの洗車により容易に落とすことができる。このため、フロントグリル10が透明な樹脂材料によって形成されていても、スポーク部16の表面16A、16B側から透けて見える裏面16C、16Dを清潔にしておくことができるので、フロントグリル10の見栄えを良好に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられる格子状の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントグリルでは、縦横のフィンを備えて格子状に形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。このフロントグリルでは、縦横のフィンの後部断面形状が車体後方へ向かって延びる放物線状に形成されている。
【特許文献1】実開平5−75019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のフロントグリルでは、縦横のフィンの後端部(裏面)が弓形に湾曲して形成されているが、当該後端部には洗車の際に水が当りにくいため、付着した汚れを落としづらい。このため、例えば、上述のフロントグリルが透明な材料で形成されている場合には、フィンの裏面(意匠面と反対側の表面)に付着した汚れがフィン(棒状部)の表面側(車体外側、意匠面側)から透けて見えてしまい、見栄えが悪くなる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、複数の棒状部の意匠面と反対側の表面に付着した汚れを、複数の棒状部の意匠面側から容易に落とすことができる車両用格子状部品を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る車両用格子状部品は、間隙をあけて配置された複数の棒状部を備え、車両の外装を構成すると共に、前記棒状部の車体内側部分が断面くさび状に形成され、前記棒状部の車体内側の表面が前記間隙を介して車体外側へ露出したことを特徴としている。
【0006】
なお、請求項1に記載の「棒状部の車体内側の表面が前記間隙を介して車体外側へ露出した構成」とは、本車両用格子状部品を車体外側から観察したときに、隣り合う棒状部の間から、棒状部の車体内側の表面を視認可能とされている構成のことである。換言すれば、棒状部の車体内側の表面に、車体外側から直接的(直線的)に光を照射可能とされている構成のことである。
【0007】
また、請求項1に記載の「棒状部」は、車体内側の部分の先端が断面形状で尖って形成されていればよく、棒状部の車体内側の表面は、平面状に形成されている必要はない。例えば、棒状部の車体内側の表面が、曲面状や凸凹状に形成された構成にしてもよい。
【0008】
請求項1に記載の車両用格子状部品では、複数の棒状部の車体内側部分が断面くさび状に形成されており、棒状部の車体内側の表面が隣の棒状部との間(間隙)から車体外側へ露出している。このため、洗車の際には、棒状部の車体内側の表面に車体外側から水を吹きかけることができる。したがって、複数の棒状部の車体内側の表面(意匠面と反対側の表面)に付着した汚れを車体外側(意匠面側)から容易に落とすことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用格子状部品は、間隙をあけて配置された複数の棒状部を備え、車両構成部材に取り付けられると共に、前記棒状部の前記車両構成部材側の部分が断面くさび状に形成され、前記棒状部の前記車両構成部材側の表面が前記間隙を介して前記車両構成部材と反対側へ露出したことを特徴としている。
【0010】
なお、請求項2に記載の「車両構成部材」は、車体や内装部品のことである。
【0011】
また、請求項2に記載の「棒状部の車両構成部材側の表面が前記間隙を介して車両構成部材と反対側へ露出した構成」とは、本車両用格子状部品を車両構成部材と反対側から観察したときに、隣り合う棒状部の間から、棒状部の車両構成部材側の表面を視認可能とされている構成のことである。換言すれば、棒状部の車両構成部材側の表面に、車両構成部材と反対側から直接的(直線的)に光を照射可能とされている構成のことである。
【0012】
また、請求項2に記載の「棒状部」は、車両構成部材側の部分の先端が断面形状で尖って形成されていればよく、棒状部の車両構成部材側の表面は、平面状に形成されている必要はない。例えば、棒状部の車両構成部材側の表面が、曲面状や凸凹状に形成された構成にしてもよい。
【0013】
請求項2に記載の車両用格子状部品では、複数の棒状部の車両構成部材側の部分が断面くさび状に形成されており、棒状部の車両構成部材側の表面が隣の棒状部との間(間隙)から車両構成部材側と反対側へ露出している。このため、掃除(例えば、洗車)の際には、棒状部の車両構成部材側の表面に車両構成部材と反対側から水や空気などを吹きかけることができる。したがって、複数の棒状部の車両構成部材側の表面(意匠面と反対側の表面)に付着した汚れを、車両構成部材と反対側(意匠面側)から容易に落とすことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る車両用格子状部品では、複数の棒状部の意匠面と反対側の表面に付着した汚れを、複数の棒状部の意匠面側から容易に落とすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1の実施形態>
図1には、本発明の第1の実施形態に係る車両用格子状部品としてのフロントグリル10が部分的な正面図にて示されている。また、図2には、図1の2−2線断面図が示されている。なお、図中矢印FRはフロントグリル10が取り付けられた車両の前方向を示し、矢印UPはこの車体の上方向を示し、矢印LHは車体の左方向(車体前方側から見て車体の右方向)を示し示している。
【0016】
フロントグリル10は、透明な樹脂材料によって形成された所謂クリスタルグリルであり、図示しない自動車の車体前部(車両構成部材)に取り付けられている。このフロントグリル10は、格子状に形成されており、枠状に形成された外周枠部12と、外周枠部12の内側に設けられた格子部14とを備えている。外周枠部12は、車体左右方向に延びる上下一対の横方向延在部12A、12Bと、横方向延在部12A、12Bの車体左右方向外側端部を上下に連結する左右一対の縦方向延在部12Cとを備えている(なお、図1では車体右側の縦方向延在部12Cのみを図示してある)。
【0017】
一方、格子部14は、車体左右方向に周期的に並んだ複数のスポーク部16(棒状部)を備えている。これらのスポーク部16は、棒状に形成されて車体上下方向に延在しており、上端部が上側の横方向延在部12Aに一体的に接続され、下端部が下側の横方向延在部12Bに一体的に接続されている。また、隣り合うスポーク部16、16の間には、自動車の走行風を図示しないエンジンルーム内へ導入するための間隙18(貫通孔)が設けられている。
【0018】
図2に示されるように、各スポーク部16は、断面形状が四角形状に形成されている。この四角形状の断面の対角線のうちの一方は、車体前後方向に沿って配置されており、この四角形状の断面の対角線のうちの他方は、車体左右方向に沿って配置されている(断面の角部が車体に対して前後左右に配置されている)。このため、各スポーク部16は、車体前方側(車体外側、車両構成部材と反対側)へ向いた2つの表面16A、16B(意匠面)と、車体後方側(車体内側、車両構成部材側)へ向いた2つの裏面16C、16D(車体内側の表面、意匠面と反対側の表面)とを備えている。裏面16C、16Dは、表面16A、16Bよりも表面積が広く形成されており、各スポーク部16は、後端側の部分(車体内側部分)が断面くさび状に尖って形成されている。
【0019】
ここで、本第1の実施形態では、図2に示されるように、隣り合う一対のスポーク部16、16において、一方のスポーク部16(図2において右側のスポーク部16)の表面16Aの断面線L1の延長上に、他方のスポーク部16(図2において左側のスポーク部16)の後端部(裏面16Dの後端部)が配置されており、裏面16Dの全体が断面線L1よりも車体前方側に配置されている。このため、隣り合うスポーク部16の間(間隙18)から裏面16Dの全体が車体前方側(車体外側)へ露出している。
【0020】
また同様に、他方のスポーク部16(図2において左側のスポーク部16)の表面16Bの断面線L2の延長上に、一方のスポーク部16(図2において右側のスポーク部16)の後端部(裏面16Cの後端部)が配置されており、裏面16Cの全体が断面線L2よりも車体前方側に配置されている。このため、隣り合うスポーク部16、16の間(間隙18)から裏面16Cの全体が車体前方側(車体外側)へ露出している。
【0021】
次に、本第1の実施形態の作用について説明する。
【0022】
上記構成のフロントグリル10では、格子部14を構成する複数のスポーク部16の後端側部分が断面くさび状に形成されており、スポーク部16の裏面16C、16Dの全体が、隣のスポーク部16との間(間隙18)から車体外側へ露出している。このため、洗車の際(例えば高圧洗車機による洗車の際)には、車体の外側から裏面16C、16Dの全体に水を吹きかけることができる(図2の矢印W1及び矢印W2参照)。したがって、スポーク部16の裏面16C、16D(意匠面と反対側の面)に付着した汚れdを車体外側(意匠面側)からの洗車により容易に落とすことができる。
【0023】
すなわち、このフロントグリル10では、スポーク部16の裏面16C、16Dに車体の外側から水を吹きかける際に、隣のスポーク部16に邪魔されずに裏面16C、16Dの全体に水を吹きかけることができる。このため、裏面16C、16Dに付着した汚れを良好に洗い流すことができる。
【0024】
したがって、フロントグリル10が透明な樹脂材料によって形成されていても、スポーク部16の表面16A、16B側から透けて見える裏面16C、16Dを清潔にしておくことができるので、フロントグリル10の見栄えを良好に維持することができる。
【0025】
なお、上記第1の実施形態では、隣り合う一対のスポーク部16、16において、一方のスポーク部16の表面16Aの断面線L1の延長上に、他方のスポーク部16の後端部が配置され、他方のスポーク部16の表面16Bの断面線L2の延長上に、一方のスポーク部16の後端部が配置された構成にしたが、本発明はこれに限らず、図3に示される変形例のように構成にしてもよい。
【0026】
図3に示される変形例では、隣り合う一対のスポーク部20、20において、一方のスポーク部20(図3において右側のスポーク部20)の後端部と、他方のスポーク部20(図3において左側のスポーク部20)の前端側とに接する仮想直線L3よりも車体前方側(車体外側)に一方のスポーク部20の裏面20Dが配置されている。また、他方のスポーク部20の後端部と、一方のスポーク部20の前端側とに接する仮想直線L4よりも車体前方側(車体外側)に他方のスポーク部20の裏面20Cが配置されている。この変形例においても、裏面20C、20Dが間隙18から車体外側に露出しているため、上記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。
【0027】
これに対し、図4に示される比較例では、スポーク部22の裏面22C、22Dが、仮想直線L3、L4上に配置されているため、隣のスポーク部22が邪魔になり、車体の外側から裏面22C、22Dに水を吹きかけることができない。また、図5、図6に示される他の比較例においても、スポーク部24の裏面24C、24Dとスポーク部26の裏面26C、26Dとが、間隙18を介して車体の外側に露出していないため、車体の外側から裏面24C、24D、26C、26Dに水を吹きかけることができない。
【0028】
なお、上記第1の実施形態では、格子部14を構成する複数のスポーク部16(棒状部)が車体左右方向に周期的に並んだ構成にしたが、これに限らず、複数の棒状部が縦横或いは斜めに交差して配置された構成にしてもよい。この点は、以下に説明する本発明の第2の実施形態においても同様である。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成・作用については、前記第1の実施形態と同符号を付与し、その説明を省略する。
<第2の実施形態>
図7には、本発明の第2の実施形態が示されている。この実施形態は、前記第1の実施形態と基本的に同様の構成とされているが、この実施形態では、格子部14を構成する複数のスポーク部28の形状が前記第1の実施形態に係るスポーク部16とは異なっている。各スポーク部28は、断面形状が車体後方側へ向けて尖った略くさび形(断面略三角形)に形成されている。また、各スポーク部28の前端部には、断面略くさび形の溝30が形成されている。
【0030】
この実施形態では、隣り合う一対のスポーク部28、28において、一方のスポーク部28(図7において右側のスポーク部28)の後端部と、他方のスポーク部28(図7において左側のスポーク部28)の前端側とに接する仮想直線L3よりも車体前方側(車体外側)に一方のスポーク部28の裏面28Dが配置されている。また、他方のスポーク部28の後端部と、一方のスポーク部28の前端側とに接する仮想直線L4よりも車体前方側に他方のスポーク部28の裏面28Cが配置されている。
【0031】
この実施形態においても、裏面28C、28Dが間隙18から車体外側に露出しているため、上記第1の実施形態と基本的に同様の作用効果を奏する。しかも、この実施形態では、各スポーク部28の前端部に、溝30が形成されているため、質量を軽量化することができると共に、斬新な意匠を呈する。
【0032】
なお、上記第2の実施形態では、スポーク部28(棒状部)の前端部に断面略くさび形の溝30が形成された構成にしたが、溝30の形状はこれに限るものではなく、適宜設定変更することができる。すなわち、本発明に係る車両用格子状部品では、棒状部の車体外側部分(意匠面)の形状については制約がなく、意匠の自由度を確保することができる。
【0033】
また、前記第1の実施形態及び上記第2の実施形態では、本発明が車両のフロントグリルに対して適用された場合について説明したが、本発明は、例えば、車両のインストルメントパネルに取り付けられるレジスター(空気の吹出口)などの他の車両用格子状部品に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフロントグリルの部分的な構成を示す正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係るフロントグリルの格子部の部分的な構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の比較例に係るフロントグリルの格子部の部分的な構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の比較例に係るフロントグリルの格子部の部分的な構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の比較例に係るフロントグリルの格子部の部分的な構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るフロントグリルの格子部の部分的な構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 フロントグリル(車両用格子状部品)
14 格子部
16 スポーク部(棒状部)
18 間隙
16C、16D 裏面(車体内側の表面、車両構成部材側の表面)
20 スポーク部(棒状部)
20C、20D 裏面(車体内側の表面、車両構成部材側の表面)
28 スポーク部(棒状部)
28C、28D 裏面(車体内側の表面、車両構成部材側の表面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙をあけて配置された複数の棒状部を備え、車両の外装を構成すると共に、前記棒状部の車体内側部分が断面くさび状に形成され、前記棒状部の車体内側の表面が前記間隙を介して車体外側へ露出した車両用格子状部品。
【請求項2】
間隙をあけて配置された複数の棒状部を備え、車両構成部材に取り付けられると共に、前記棒状部の前記車両構成部材側の部分が断面くさび状に形成され、前記棒状部の前記車両構成部材側の表面が前記間隙を介して前記車両構成部材と反対側へ露出した車両用格子状部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255743(P2009−255743A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107056(P2008−107056)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)