説明

車両用流体伝動装置

【課題】ロックアップダンパを有するロックアップクラッチを備えた車両用流体伝動装置において、スラスト力が大きくなってもタービンシェルをタービンハブに締結するためのリベットの本数を削減することができる構造を提供する。
【解決手段】トルクコンバータ10が作動してタービンシェル22aに軸方向においてリヤシェル20a側に働くスラスト力Fが発生しても、そのスラスト力Fはタービンハブ102のフランジ部106が受け持つので、タービンシェル22aをタービンハブ102に締結するためのリベット114にはスラスト力Fはかからない。従って、タービンシェル22aをタービンハブ102締結するリベット114の本数を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用流体伝動装置に係り、特にタービンシェルを支持するタービンハブの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロントシェルおよびそのフロントシェルに連結されたリヤシェルから成るポンプシェルを有し、軸心まわりに回転するポンプインペラと、そのポンプシェル内に設けられてそのポンプインペラの回転が流体を介して伝達されるタービンシェルおよびそのタービンシェルを支持し軸心まわりに回転可能なタービンハブを有するタービンインペラと、ロックアップダンパを介して前記フロントシェルと前記タービンハブとの間を選択的に断続するロックアップクラッチとを、備えた車両用流体伝動装置がよく知られている。例えば特許文献1のトルクコンバータがその一例である。特許文献1のトルクコンバータは、フロントカバー7とタービンハブ10とを選択的に断続するピストン4およびロックアップダンパ装置5が設けられている。このロックアップダンパ装置5は、一対のクッションプレートと、この一対のクッションプレートに挟持されている中間プレートと、クッションプレートと中間プレートとの間に介挿されている弾性部材とを、備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−180307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のタービンインペラを構成するタービンシェルが、タービンハブの外周部にリベットで締結されている。さらに具体的には、タービンシェルのリベットが貫通する部位が、タービンハブのリベットが貫通する部位よりも軸方向においてポンプインペラ1側に位置した状態でリベットによって締結されている。このように構成されるトルクコンバータが駆動すると、トルクコンバータ内を流れる作動油によって、タービンシェルには軸方向においてポンプインペラ1側に作用するスラスト力が発生し、そのスラスト力によってタービンシェルを介してリベットに引っ張り方向の荷重が作用する。近年では、トルクコンバータの小型化を目的として、タービンインペラを構成するタービンブレードの傾斜角を大きくする傾向にあり、それに応じてタービンシェルおよびリベットにかかるスラスト力が増加する傾向にあった。従って、そのスラスト力を支持するためにリベットの本数が増える問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ロックアップダンパを有するロックアップクラッチを備えた車両用流体伝動装置において、流体伝動装置駆動時にタービンシェルにかかるスラスト力が大きくなってもタービンシェルをタービンハブに締結するためのリベットの本数を削減することができる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、第1発明の要旨とするところは、(a)フロントシェルおよびそのフロントシェルに連結されたリヤシェルから成るポンプシェルを有し、軸心まわりに回転するポンプインペラと、そのポンプシェル内に設けられてそのポンプインペラの回転が流体を介して伝達されるタービンシェルおよびそのタービンシェルを支持し軸心まわりに回転可能なタービンハブを有するタービンインペラと、ロックアップダンパを介して前記フロントシェルと前記タービンハブとの間を選択的に断続するロックアップクラッチとを、備えた車両用流体伝動装置であって、(b)前記ロックアップダンパは、弾性部材と前記タービンハブにその弾性部材を介して連結された中間プレートとを含み、(c)前記タービンハブは、円板状のフランジ部と、前記中間プレートの回転中心の位置決めを行うセンタリング部とを含み、(d)前記タービンシェルの内周部は、前記タービンハブの前記フランジ部にリベットで締結されるものであり、そのタービンシェルの内周部は、そのフランジ部の外周部よりも軸方向において前記フロントシェル側に重ねられた状態で前記リベットによって締結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、トルクコンバータが駆動してタービンシェルに軸方向においてリヤシェル側に働くスラスト力が発生しても、そのスラスト力はタービンハブのフランジ部が受け持つので、タービンシェルをタービンハブに締結するためのリベットにはスラスト力はかからない。従って、リベットの本数を削減することができる。
【0008】
また、好適には、第2発明の要旨とするところは、第1発明の車両用流体伝動装置において、前記タービンハブは、前記フランジ部と前記センタリング部とを別体で備えており、そのフランジ部とそのセンタリング部との間に前記タービンシェルが挟み込まれた状態で、前記リベットによってこれらが一体的に締結される。このようにすれば、タービンシェルにかかるスラスト力を、タービンハブのフランジ部に受け持たせることでリベットの本数を削減することができる。また、リベットでフランジ部に締結されるセンタリング部によって、中間プレートの回転中心の位置決めを行うことができる。
【0009】
また、好適には、第3発明の要旨とするところは、第1発明の車両用流体伝動装置において、前記タービンハブは、前記フランジ部と前記センタリング部とを一体で備えており、前記フランジ部の外周および前記タービンシェルの内周には、互いに嵌合してタービンシェルを軸方向において前記フランジ部と前記センタリング部との間に移動させるためのスプライン状の凹凸部がそれぞれ形成されており、前記タービンシェルに形成されている前記凹凸部の内周側に突き出す凸部、および前記フランジ部に形成されている前記凹凸部の外周側に突き出す凸部には、それぞれリベット締結用のリベット孔が形成されている。このようにすれば、タービンシェルの凹凸部とフランジ部の凹凸部とを嵌合させることで、タービンシェルをフランジ部とセンタリング部との間に移動させることができる。そして、タービンシェルの凸部およびフランジ部の凸部にそれぞれ形成されているリベット孔を共通のリベットが貫通可能な回転位置までこれらを相対回転させることで、タービンシェルの内周を前記タービンハブのフランジ部にリベットで締結することができる。そして、タービンシェルにかかるスラスト力は、フランジ部の凸部が受け持つので、リベットにスラスト力がかからなくなりリベットの本数を削減することができる。
【0010】
また、好適には、前記タービンハブは、円筒形状のセンタリング部と、該センタリング部の軸方向の一端から径方向に伸びるフランジ部とからなり、前記中間プレートは、前記センタリング部の外周面と摺接する位置まで内周方向に延設されることを特徴とする。このようにすれば、中間プレートの内周面がセンタリング部の外周に摺接されるので、中間プレートの回転中心の位置決めをすることができる。また、タービンシェルにかかるスラスト力は、タービンハブのフランジ部が受け持つため、リベットの本数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用可能なトルクコンバータの構造を説明するための断面図である。
【図2】図1のタービンインペラを矢印A側からみたA矢視図である。
【図3】作動油がタービンブレードに衝突する際にタービンブレードに係る荷重の関係を示す概念図である。
【図4】本発明が適用された車両用流体伝動装置であるトルクコンバータの断面図である。
【図5】本発明の他の実施例であるトルクコンバータの断面図である。
【図6】図5のタービンハブを矢印B方向から見たB矢視図である。
【図7】本発明の更に他の実施例であるトルクコンバータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、好適には、本願発明は、例えば有段変速機や無段変速機を備えた車両など、流体伝動装置を備える車両であれば適宜適用され得る。
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明が適用可能な車両用流体伝動装置であるトルクコンバータ10の構造を説明するための断面図である。なお、トルクコンバータ10は軸心Cに対して略対称であるため、下半分が省略されている。トルクコンバータ10は、図示しないエンジンと図示しない変速機の入力軸14との間に介挿され、作動油を媒介としてトルクを伝達するよく知られた流体伝動装置である。トルクコンバータ10は、フロントシェル18およびフロントシェル18に連結されたリアシェル20aから成るポンプシェル21を有するポンプインペラ20と、ポンプシェル21内に設けられてポンプインペラ20の回転が流体を介して伝達されるタービンシェル22aおよびタービンシェル22aを支持し軸心まわりに回転可能なタービンハブ24を有するタービンインペラ22と、ポンプインペラ20とタービンインペラ22との間に介挿されているステータ23と、後述するロックアップダンパ46を介してフロントシェル18とタービンハブ24との間を選択的に断続するロックアップクラッチ26とを、備えて構成されている。
【0015】
ポンプインペラ20の前部を構成するフロントシェル18は、図示しないエンジンに連結されることで、エンジンとともに軸心Cまわりに回転させられる有底円筒状の部材である。フロントシェル18は、円盤状の円盤部18aと円盤部18aの外周端から軸方向においてリヤシェル20a側に伸びる円筒状の円筒部18bとから形成されている。円盤部18aの外周部には、ブロック形状を有する接続部材28が周方向に複数個設けられており、その接続部材28に円盤状のドライブプレート30の外周部がボルト32によって締結されている。また、ドライブプレート30の内周端部が、図示しないエンジンの出力軸16(クランク軸)の端部にボルト34によって締結されている。従って、フロントシェル18は、接続部材28およびドライブプレート30を介して図示しないエンジンの出力軸16に連結されることとなる。
【0016】
ポンプインペラ20は、フロントシェル18と、外周端部がフロントシェル18の円筒部18bの外周部に溶接されることで連結されてフロントシェル18とともにポンプシェル21を構成するリヤシェル20aと、ポンプコア20bと、リヤシェル20aおよびポンプコア20bの間に介挿されている複数枚のポンプブレード20cとを備えて構成されている。リヤシェル20aの内周端部は、動力伝達軸36を介して図示しないオイルポンプに接続されている。
【0017】
タービンインペラ22は、内周部がタービンハブ24に連結されているタービンシェル22aと、タービンコア22bと、タービンシェル22aおよびタービンコア22bの間に介挿されている複数枚のタービンブレード22cと、外周部がタービンシェル22aの内周部に連結されることでタービンシェル22aを支持する軸心Cまわりに回転可能なタービンハブ24とを、備えて構成されている。
【0018】
タービンハブ24は、円筒状のボス部24aと、ボス部24aの軸方向の一端から径方向に伸びる円板形状のフランジ部24bとを備えている。ボス部24aの内周部には、図示しない変速機の入力軸14がスプライン嵌合されている。フランジ部24bの外周部には、タービンシェル22aおよびロックアップクラッチ26がリベット38によって締結されている。従って、タービンシェル22aが回転すると、タービンハブ24および入力軸14が軸心Cまわりに回転させられる。
【0019】
ステータ23は、ポンプインペラ20およびタービンインペラ22の径方向内側に設けられており、ブレード23aが形成されている。このステータ23の内周側は、一方向への回転を許容するワンウエイクラッチ40および中間部材42を介して図示しない非回転部材であるハウジングに接続されている。
【0020】
ロックアップクラッチ26は、フロントシェル18とタービンハブ24との間に設けられており、後述するロックアップダンパ46を介してこれらの間を選択的に断続する。ロックアップクラッチ26は、ロックアップピストン44とロックアップダンパ46とを備えて構成されている。
【0021】
ロックアップピストン44は、トルクコンバータ10内を流れる作動油の差圧によってフロントシェル18に近接および隔離可能に構成されている。ロックアップピストン44は、タービンハブ24のボス部24aの外周面を軸方向に摺動可能な内周筒部44aと、内周筒部44aから径方向に伸びる円盤形状の壁部44bと、壁部44bの外周端からリヤシェル20a側に向かって軸方向に伸びる円筒形状の外周筒部44cとから構成されている。
【0022】
ロックアップダンパ46は、ロックアップピストン44とタービンハブ24との間に設けられている。ロックアップダンパ46は、円盤状の一対のクッションプレート48、50と、この一対のクッションプレート48、50に挟持されている円板状の中間プレート52と、クッションプレート48、50と中間プレート52との間に介挿されている第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56とを備えて構成されている。なお、第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56が本発明の弾性部材に対応している。
【0023】
クッションプレート48、50は、中間プレート52に形成されている図示しない切欠を貫通する図示しないリベットによって一体的に締結されている。なお、図示しない前記切欠は、例えば周方向に広がる円弧形状を有しており、前記リベットはその間で相対移動可能に構成されている。従って、前記リベットが前記切欠の周方向端部と接触するまでの範囲で、クッションプレート48、50と中間プレート52とが相対回転可能とされている。クッションプレート48の内周部は、タービンシェル22aとともにリベット38によってタービンハブ24のフランジ部24bに締結されている。
【0024】
中間プレート52には、第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56を収容するための中空窓が周方向に複数個形成されており、その中空窓に第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56が収容されている。また、中間プレート52の外周端部には、スプライン状の外歯52aが形成されており、ロックアップピストン44の外周筒部44cに形成されている凹凸形状の切欠45に嵌合されている。従って、ロックアップピストン44が回転すると、中間プレート52が軸心Cまわりに一体的に回転させられる。
【0025】
クッションプレート48、50の周方向には、中間プレート52の第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56が収容されている回転位置と同じ位置に、複数個の開口窓が形成されている。そして、中間プレート52が回転すると、クッションプレート48、50の開口窓の回転方向の一端が、第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56に当接することによって、クッションプレート48、50が回転するようになっている。このとき、第1コイルスプリング54および第2コイルスプリング56が弾性変形しつつクッションプレート48、50に押し付けられることで、図示しないエンジンのトルク変動が吸収されるようになっている。
【0026】
タービンハブ24のフランジ部24bの外周端部には、中間プレート52の内周面と摺接される円還状のセンタリング部58が形成されている。中間プレート52の内周面がこのセンタリング部58の外周面に嵌め入れられることで、中間プレート52の回転中心が軸心Cと一致するように位置決めされる。すなわち、センタリング部58は、中間プレート52のセンタリング(芯だし)を果たしている。
【0027】
また、図1にあっては、タービンハブ24の外周部において、軸方向のフロントシェル18側よりフランジ部24b、クッションプレート48、およびタービンシェル22aの順番で重ねられた状態でリベット38によって一体的に締結されている。
【0028】
このようにタービンシェル22aがタービンハブ24によって支持される場合、図示しないエンジンが駆動してフロントシェル18およびそれに連結されたリヤシェル20aが回転すると、トルクコンバータ10内の作動油が、ポンプブレード20cによって押し出されて回転し、この回転によってポンプブレード20cの外周側に追いやられるようになっている。そして、その作動油がタービンインペラ22のタービンブレード22cに衝突し、その衝突による衝撃力によってタービンブレード22cが回転させられる。また、この作動油は、タービンブレード22cを回転させた後、ステータ23を通ってポンプインペラ20に戻り、トルクコンバータ10内を循環するようになっている。
【0029】
ここで、トルクコンバータ10内を作動油が循環した際には、タービンシェル22aが軸方向においてリヤシェル20a側(図において左側)に引き付けられる方向のスラスト力が発生する。このスラスト力が発生する原理について、図2および図3を用いて説明する。
【0030】
図2は、図1のタービンインペラ22を矢印A側からみたA矢視図である。なお、図2では、周方向の一部が示されているが、実際には周方向に連続している。タービンブレード22cは、周方向に複数枚配置されており、各タービンブレード22cに形成されている2枚のタブがタービンコア22bに形成されている切欠に嵌め入れられた状態でかしめ着けられている。また、各タービンブレード22cは、回転方向に沿って傾斜した状態で固定されており、この傾斜角θが大きくなるに従って、トルクコンバータ10の軸方向の長さが短くなる。近年では、トルクコンバータ10を小型化するためにこの傾斜角θが大きくなる傾向にある。
【0031】
また、タービンシェル22aの内周部には、リベット38(図1参照)を挿し通すためのリベット孔60が周方向に複数個形成されている。図3は、作動油がタービンブレード22cに衝突する際にタービンブレード22cに係る荷重の関係を示す概念図である。図3において、傾斜された実線がタービンブレード22cを示し、矢印が作動油の流れ方向示している。図3に示すように、作動油が各タービンブレード22cに衝突すると、タービンブレード22cに対して法線方向に衝突荷重Wが発生する。この衝突荷重Wが傾斜角θに応じてスラスト力Fとして作用する。図3からもわかるように、傾斜角θが大きくなるに従って、スラスト力F(=W×sinθ)が大きくなる。前述したように、近年ではトルクコンバータの小型化を目的としてタービンブレード22cの傾斜角θが大きくなる傾向にあり、それに従って、タービンインペラ22に作用するスラスト力Fが大きくなっている。従来では、このスラスト力Fをタービンシェル22aを固定するためのリベット38が受け持っていたため、リベット38の本数が増加していた。
【0032】
これに対して、本実施例では、タービンインペラ22を構成するタービンシェル22aの支持機構を図4に示す構造とすることで、リベット38の本数を削減することを可能とする。図4は、本発明が適用された車両用流体伝動装置であるトルクコンバータ100の断面図である。なお、ポンプシェル20a等は、図1と同じであるため省略されており、タービンシェル22aおよびロックアップダンパ46等についても、図1と同じであるため同じ符号が付されている。また、図4において、軸方向のフロントシェル18側が図の右側、軸方向のリヤシェル20a側が図の左側に対応する。
【0033】
図4において、タービンハブ102は、円筒形状のボス部104と、そのボス部104の軸方向の一端から径方向に伸びる円板状のフランジ部106と、中間プレート52を支持して中間プレート52の回転中心を軸心Cに位置決めするためのセンタリング部108とを備えて構成されている。
【0034】
フランジ部106の外周部は、軸方向においてリヤシェル20a側(図において左側)に屈曲されており、軸方向のリヤシェル20a側にリベット締結用の締結部106aが形成されている。この締結部106aには、周方向に複数個のリベット孔が形成されている。また、締結部106aに対して軸方向のフロントシェル18側(図において右側)には、タービンシェル22aおよびロックアップダンパ46のクッションプレート48をフランジ部106に嵌め付けるための環状溝110が形成されている。
【0035】
タービンハブ102は、フランジ部106とセンタリング部108とを別体で備えている。センタリング部108は、円環状に形成されており、その外周面に中間プレート52の内周面が摺接可能に嵌め付けられている。また、センタリング部108の内周面は、前記環状溝110に嵌め付けられている。このように中間プレート52の内周面がセンタリング部108の外周面に嵌め付けられることで、中間プレート52の回転中心が軸心Cと一致するように位置決めされる(センタリング、芯だし)。そして、フランジ部106とセンタリング部108との間にタービンシェル22aおよびクッションプレート48が挟み込まれた状態で、リベット114によってこれらが一体的に締結される。
【0036】
図4に示すように、タービンハブ102の外周部は、軸方向のリヤシェル20a側(図において左側)から順番に、フランジ部106の締結部106a、タービンシェル22a、クッションプレート48、およびセンタリング部108が順番に重ねられた状態で、それらを軸方向に貫通する複数本のリベット114によって締結(リベット締結)されている。すなわち、タービンシェル22aの内周部は、フランジ部106の締結部106a(フランジ部の外周部)よりも軸方向においてフロントシェル18側(図において右側)に重ねられた状態でリベット114によって締結されている。
【0037】
トルクコンバータ100において、タービンシェル22aが上記のようにタービンハブ102によって支持されることによる作用および効果について説明する。図示しないエンジンが駆動し、フロントシェル18およびポンプインペラ20が回転させられると、タービンインペラ22には軸方向においてリヤシェル20a側(図において左側)に働くスラスト力Fが発生する。従って、タービンインペラ22を構成するタービンシェル22aについても同じ方向に作用するスラスト力Fが発生する。
【0038】
これに対して、上記タービンシェル22aが上記のようにタービンハブ102に支持されると、前記スラスト力Fをタービンシェル22aに隣接するタービンハブ102のフランジ部106(締結部106a)が受けるので、リベット114にはスラスト力Fがかからない。従って、リベット114に係る荷重が抑制されるので、リベット114の本数を削減することが可能となる。また、中間プレート52を支持するセンタリング部108を別体で設け、リベット114によってフランジ部106に一体的に締結することで、センタリング部108による中間プレート52の支持(センタリング)も可能となる。
【0039】
上述のように、本実施例によれば、トルクコンバータ10が駆動してタービンシェル22aに軸方向においてリヤシェル20a側に働くスラスト力Fが発生しても、そのスラスト力Fはタービンハブ102のフランジ部106が受け持つので、タービンシェル22aをタービンハブ102に締結するためのリベット114にはスラスト力Fはかからない。従って、タービンシェル22aをタービンハブ102締結するリベット114の本数を削減することができる。また、タービンブレード22cの傾斜角θも大きくすることができるので、トルクコンバータ10の軸方向の長さを短くすることができる。
【0040】
また、本実施例によれば、タービンハブ102は、フランジ部106とセンタリング部108とを別体で備えており、そのフランジ部106とそのセンタリング部108との間にタービンシェル22aが挟み込まれた状態で、リベット114によってこれらが一体的に締結される。このようにすれば、タービンシェル22aにかかるスラスト力Fを、タービンハブ102のフランジ部106に受け持たせることでリベット114の本数を削減することができる。また、リベット114でフランジ部106に締結されるセンタリング部108によって、中間プレート52の回転中心の位置決めを行うこともできる。
【0041】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0042】
図5は、本発明の他の実施例であるトルクコンバータ200(車両用流体伝動装置に対応)の断面図であって、主に本発明の要部であるタービンシェル210を支持するタービンハブ202の支持構造が示されている。なお、図5において、リヤシェル20a等は省略されており、タービンインペラ22やロックアップダンパ46等については、図1と略同様であるため同じ符号が付されている。また、図5において、軸方向のフロントシェル18側が前述の実施例と同様に、図の右側に対応し、軸方向のリヤシェル20a側が図の左側に対応している。
【0043】
図5に示すタービンハブ202は、円筒形状のボス部204と、そのボス部204の軸方向の一端から径方向に伸びる円板形状のフランジ部206と、中間プレート52を支持してその中間プレート52の回転中心を軸心Cに位置決めするためのセンタリング部208とを、備えて構成されている。
【0044】
フランジ部206の外周部は、軸方向においてリヤシェル20a側に屈曲されており、軸方向のリヤシェル20a側の端部には、リベット締結用の締結部206aが形成されている。この締結部206aには、周方向に複数個のリベット孔218が形成されている。また、フランジ部206の軸方向においてフロントシェル18側の端部には、センタリング部208が形成されている。センタリング部208は、その外周面に中間プレート52の内周面が摺動可能に嵌め付けられることで、中間プレート52の回転中心が軸心Cとなるように位置決めされる。
【0045】
本実施例では、タービンハブ202は、前記フランジ部206とセンタリング部208とを一体で備えている。そして、締結部206aとセンタリング部208との間にタービンシェル210およびロックアップダンパ46を構成するクッションプレート211を介挿するための環状溝212が形成されている。タービンシェル210およびクッションプレート211の内周部が、この環状溝212内に嵌め入れられた状態でリベット214によってタービンハブ202に締結される。
【0046】
図6は、図5のタービンハブ202を矢印B方向から見たB矢視図である。図6に示すように、タービンハブ202の外周である締結部206aには、周方向にスプライン状の凹凸部216が形成されている。また、この凹凸部216の径方向に突き出す凸部216aには、リベット締結用のリベット孔218がそれぞれ形成されている。また、図6に、タービンシェル210およびクッションプレート211の内周端の形状を示す。タービンシェル210およびクッションプレート211の内周にも、それぞれタービンハブ202の凹凸部216に嵌合可能なスプライン状の凹凸部220が形成されており、内周側に突き出す凸部220aには、それぞれリベット孔222が形成されている。
【0047】
このように構成されると、トルクコンバータ組付時においてタービンハブ202の凹凸部216とタービンシェル210およびクッションプレート211の凹凸部220とを嵌合させることによって、タービンシェル210およびクッションプレート211を締結部206aとセンタリング部208との間まで軸方向に移動させることができる。そして、破線で示すように、タービンシェル210およびクッションプレート211を、それらの部材に形成されているリベット孔222とタービンハブ202に形成されているリベット孔218とが軸方向に一致する回転位置、すなわち共通のリベット214が貫通可能な回転位置まで相対回転させることで、リベット214をそれらリベット孔218、222を通してリベット締結することができる。
【0048】
また、トルクコンバータ駆動時(エンジン駆動時)において、タービンシェル210には軸方向においてリヤシェル20a側に作用するスラスト力Fが発生するが、このスラスト力Fをタービンハブ202のフランジ部206が受けることとなり、リベット214には、スラスト力Fがかからない。従って、タービンシェル210およびクッションプレート211を締結するリベット214の本数を削減することができる。
【0049】
上述のように、本実施例によれば、タービンハブ202は、フランジ部206とセンタリング部208とを一体で備えており、フランジ部206の外周部およびタービンシェル210の内周部には、互いに嵌合してタービンシェル210を軸方向においてフランジ部206とセンタリング部208との間に移動させるためのスプライン状の凹凸部216、220がそれぞれ形成されており、タービンシェル210に形成されている凹凸部220の内周側に突き出す凸部220a、およびフランジ部206に形成されている凹凸部216の外周側に突き出す凸部216aには、それぞれリベット締結用のリベット孔218、222が形成されている。このようにすれば、タービンシェル210の凹凸部220とフランジ部206の凹凸部216とを嵌合させることで、タービンシェル210をフランジ部206とセンタリング部208との間に移動させることができる。そして、タービンシェル210の凸部220aおよびフランジ部206の凸部216aにそれぞれ形成されているリベット孔218、222を共通のリベット214が貫通可能な回転位置までこれらを相対回転させることで、タービンシェル210の内周をタービンハブ202のフランジ部206にリベット214で締結することができる。そして、タービンシェル210にかかるスラスト力Fは、フランジ部206の凸部216aが受け持つので、リベット214にスラスト力Fがかからなくなり、リベット214の本数を削減することができる。
【実施例3】
【0050】
図7は、本発明の更に他の実施例であるトルクコンバータ300(車両用流体伝動装置に対応)の断面図であって、主に本発明の要部であるタービンシェル22aおよびを支持するタービンハブ302の支持構造を示している。なお、図7において、ポンプインペラ20等が省略されており、タービンインペラ22等については、図1のものと略同様であるため同じ符号が付されている。また、図7において、軸方向のフロントシェル18側が、前述の実施例と同様に図の右側に対応し、軸方向のリヤシェル20a側が図の左側に対応している。
【0051】
タービンハブ302は、円筒形状のボス部304と、そのボス部304の軸砲の一端から径方向に伸びる円板形状のフランジ部306とを、備えて構成されている。
【0052】
フランジ部306の外周部は、軸方向においてリヤシェル20a側に屈曲されており、軸方向においてリヤシェル20a側の端部にリベット締結用の締結部306aが形成されている。また、フランジ部306の外周部であって、軸方向においてフロントシェル18側には、タービンシェル22aおよび後述するクッションプレート310を嵌め付けるための環状溝311が形成されている。
【0053】
本実施例では、ロックアップダンパ308が軸方向においてフロントシェル18側に配置されるように、クッションプレート310が屈曲されている。そして、中間プレート312の内周面が径方向においてボス部304の外周面と摺接する位置まで延設されている。中間プレート312はボス部304の外周面と摺接することで回転中心が軸心Cと一致するように位置決め(センタリング)される。すなわち、ボス部304ががセンタリング部として機能する。また、中間プレート312には、タービンハブ304とタービンシェル22aおよびクッションプレート310とを締結するためのリベット314をかしめる際に使用されるかしめ孔316が形成されている。
【0054】
本実施例においても、フランジ部306の外周部において、軸方向のリヤシェル20a側から締結部306a、タービンシェル22a、およびクッションプレート310の順番で重ねられた状態でリベット314によって両端が締結されている。従って、トルクコンバータ駆動時において、タービンシェル22aには軸方向のリヤシェル20a側に作用するスラスト力Fが発生するが、このスラスト力Fをタービンハブ302のフランジ部306が受けることとなり、リベット314には、スラスト力Fがかからない。従って、タービンシェル22aおよびクッションプレート310を締結するリベット314の本数を削減することができる。
【0055】
上述のように、本実施例によれば、タービンハブ302は、円筒形状のボス部304と、ボス部304の軸方向の一端から径方向に伸びるフランジ部306とからなり、中間プレート312は、ボス部304の外周面と摺接する位置まで内周方向に延設される。このようにすれば、中間プレート312の内周面がボス部304の外周に摺接されるので、中間プレート312の回転中心の位置決めをすることができる。また、タービンシェル22aにかかるスラスト力Fは、タービンハブ302のフランジ部306が受け持つため、リベット314の本数を削減することができる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0057】
例えば、前述の実施例は、車両用流体伝動装置としていずれもトルクコンバータが適用されているが、流体継手に適用されても構わない。
【0058】
また、前述の実施例では、タービンハブ202のフランジ部206側に凹凸部216が形成されているが、センタリング部208側に凹凸部が形成される構成であっても構わない。
【0059】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
10、100、200、300:トルクコンバータ(車両用流体伝動装置)
18:フロントシェル
20:ポンプインペラ
20a:リヤシェル
21:ポンプシェル
22:タービンインペラ
22a、210:タービンシェル
24、102、202、302:タービンハブ
24b、106、206、306:フランジ部
26:ロックアップクラッチ
38、114、214、314:リベット
46、308:ロックアップダンパ
52、312:中間プレート
54:第1コイルスプリング(弾性部材)
56:第2コイルスプリング(弾性部材)
58、108、208:センタリング部
216、220:凹凸部
216a、220a:凸部
218、222:リベット孔
304:ボス部(センタリング部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントシェルおよび該フロントシェルに連結されたリヤシェルから成るポンプシェルを有し、軸心まわりに回転するポンプインペラと、該ポンプシェル内に設けられて該ポンプインペラの回転が流体を介して伝達されるタービンシェルおよび該タービンシェルを支持し軸心まわりに回転可能なタービンハブを有するタービンインペラと、ロックアップダンパを介して前記フロントシェルと前記タービンハブとの間を選択的に断続するロックアップクラッチとを、備えた車両用流体伝動装置であって、
前記ロックアップダンパは、弾性部材と前記タービンハブに該弾性部材を介して連結された中間プレートとを含み、
前記タービンハブは、円板状のフランジ部と、前記中間プレートの回転中心の位置決めを行うセンタリング部とを含み、
前記タービンシェルの内周部は、前記タービンハブの前記フランジ部にリベットで締結されるものであり、該タービンシェルの内周部は、該フランジ部の外周部よりも軸方向において前記フロントシェル側に重ねられた状態で前記リベットによって締結されることを特徴とする車両用流体伝動装置。
【請求項2】
前記タービンハブは、前記フランジ部と前記センタリング部とを別体で備えており、該フランジ部と該センタリング部との間に前記タービンシェルが挟み込まれた状態で、前記リベットによってこれらが一体的に締結されることを特徴とする請求項1の車両用流体伝動装置。
【請求項3】
前記タービンハブは、前記フランジ部と前記センタリング部とを一体で備えており、
前記フランジ部の外周および前記タービンシェルの内周には、互いに嵌合して該タービンシェルを軸方向において前記フランジ部と前記センタリング部との間に移動させるためのスプライン状の凹凸部がそれぞれ形成されており、前記タービンシェルに形成されている前記凹凸部の内周側に突き出す凸部、および前記フランジ部に形成されている前記凹凸部の外周側に突き出す凸部には、それぞれリベット締結用のリベット孔が形成されていることを特徴とする請求項1の車両用流体伝動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−92239(P2013−92239A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236037(P2011−236037)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)