説明

車両用灯具

【課題】部品点数を増加することなく、且つ簡易な構造によって結露の発生を防止することが可能な車両用灯具を提供することにある。
【解決手段】ハウジング3とアウターレンズ5とで形成された灯室内に光源ランプ2と該光源ランプ2からの光をアウターレンズ5の方向に向けて反射させるリフレクタ4とを収容した車両用灯具1であって、灯室内に、アウターレンズ5に沿って且つアウターレンズ5との間に隙間を設けてアウターレンズ以外の部材で囲まれた複数の独立した区画45、46を互いに隣設し、光源ランプ2に最も近い位置にある区画45が光源ランプ2を包囲する空間に連通するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関するものであり、詳しくは、結露防止構造を有する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具の一例として、光源バルブを装着したランプボディの該光源バルブの略真上の位置に、図6に示すような結露防止機構50を設けた構造のものが提案されている。
【0003】
結露防止機構50は、ランプボディ60から後方に延設された断面楕円形状の防水壁51内に、同様にランプボディ60から延設された断面楕円形状の筒体52が設けられ、筒体52の先端部にはキャップ53が嵌着されている。
【0004】
筒体52は、下側壁に先端からランプボディ60側に向って延びるスリット54が形成され、内部はランプボディ60から延設された区画壁55によって上部空間Sと下部空間Sとに区画されると共に、上部空間Sはランプボディ60に設けられた空気孔56に繋がっている。
【0005】
キャップ53と筒体先端部との間には隙間Cを有し、且つスリット54の一部がキャップ53で塞がれることなく防水壁51内に露出しており、空気孔56を介してランプボディ内58と連通する上部空間Sと、隙間Cを介して上部空間Sと連通し且つスリット54を介して筒体52の外部と連通する下部空間Sとが画成されている。
【0006】
これにより、光源バルブ57の点灯時のランプボディ内58の暖気が、空気孔56から上部空間S、隙間C、下部空間S、及びスリット54の経路を経て筒体52の外部に放散され、同時に同一の経路を経て外部の冷気がランプボディ内58に導入される。その結果、ランプボディ内58の空気の温度上昇が抑制されて、前面レンズ59に結露が発生するのが防止される。
【0007】
また、暖気及び冷気の経路は上述のように迷路状に画成されており、筒体52の外部の水がランプボディ内58に浸入しにくい構造となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−340603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記構成の結露防止機構を設けた車両用灯具は、結露防止機構が水の浸入を防止するために迷路状の複雑な構造を有しており、ランプボディの成形に用いられる金型の構造が複雑化することになる。
【0010】
その結果、金型の製造期間が長期化して迅速な生産計画に対応することが難しくなる恐れがある。また、金型の製造コストが上昇して成形品(ランプボディ)のコストが上昇することになる。
【0011】
また、個別部品(キャップ)の採用による部品点数の増加に起因して、製造コストが上昇することになる。
【0012】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、部品点数を増加することなく、且つ簡易な構造によって結露の発生を防止することが可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、開口を有するハウジングと前記ハウジングの前記開口を塞ぐように配置されたアウターレンズとで灯室が形成され、前記灯室内に前記ハウジングに支持された光源と、前記光源を包囲すると共に開口を有し前記光源からの光を反射させて前記開口を介して前記アウターレンズの方向に向けて照射するリフレクタとが収容されてなる車両用灯具であって、前記灯室内に、前記アウターレンズに沿って且つ前記アウターレンズとの間に隙間を設けて前記アウターレンズ以外の部材で囲まれた複数の独立した区画が互いに隣設されており、前記光源に最も近い位置にある区画が前記光源を包囲する空間に連通していることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記区画は前記ハウジング、前記リフレクタ及びインナーレンズのなかから選ばれた組み合わせにより構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2のいずれか1項において、前記光源に最も近い位置にある区画は、区画内に該区画内を部分的に区切る隔壁部を有する迷路構造を有することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項において、前記アウターレンズは車両の前記灯具照射方向から側方に回り込む形状を呈しており、前記アウターレンズの側方の長さは前記リフレクタの前記開口端部の横径の3倍以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ハウジングとアウターレンズとで形成された灯室内に光源と該光源からの光をアウターレンズの方向に向けて反射させるリフレクタとを収容した車両用灯具であって、灯室内に、アウターレンズに沿って且つアウターレンズとの間に隙間を設けてアウターレンズ以外の部材で囲まれた複数の独立した区画を互いに隣設し、光源に最も近い位置にある区画が光源を包囲する空間に連通するようにした。
【0018】
そのため、光源の点灯時の熱により生じる暖気が、光源を包囲する空間に連通する区画内に閉じ込められてアウターレンズに沿う他の区画に流れ込むことが阻止される。
【0019】
その結果、部品点数を増加することなく且つ簡易な構造によって、アウターレンズの、光源を包囲する空間に接する部分を除いた領域に暖気が当たることが抑制されてアウターレンズに曇りや結露が発生することがなく、照射光による視認性や外部からの見栄えを損なうことがない、というすぐれた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる実施形態の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】実施形態の寸法説明図である。
【図5】実施形態の暖気の流れを示す説明図である。
【図6】従来例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図5を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0022】
図1は、車両用灯具の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。本実施形態の車両用灯具1の基本構成は、光源となるランプ(光源ランプ)2、光源ランプ2が装着されたハウジング3、光源ランプ2を包囲するようにハウジング3に保持されたリフレクタ4、光源ランプ2の前方からハウジング3に沿って延設されたアウターレンズ5、及びハウジング3とアウターレンズ5との間に配置されたインナーレンズ6からなっている。
【0023】
以下、車両用灯具1を構成する上記、光源ランプ2、ハウジング3、リフレクタ4、アウターレンズ5、及びインナーレンズ6の夫々の詳細及び互いの位置関係について説明する。なお、以下の説明において使用する「前」、「後」、「上」、「下」、「横」等の方向を示す用語は夫々、車両用灯具を車両に搭載した状態における「照射方向」、「照射方向と反対方向」、「路面方向と反対方向」、「路面方向」、「車幅方向」を意味するものである。
【0024】
光源ランプ2は、バルブ10がバルブ用ソケット11に支持されると共に、バルブ10内の電極から導出されたリード線がソケット11の外部接続端子に電気的に接続された構造となっている。
【0025】
ハウジング3は、後側壁31、後側壁31の上端部から略垂直に立ち上がって前方に延びる上側壁32、及び後側壁31の下端部から略垂直に立ち上がって前方に延びる下側壁33の3面の外周壁からなり、後側壁31と対向する側を開口とする形状となっている(図3参照)。
【0026】
後側壁31は、光源ランプ2が装着されて該光源ランプ2の光軸Xに略垂直な第1後壁部31a、第1後壁部31aの中央側の横端部から略垂直に立ち上がって前方に延びる第2後壁部31b、第2後壁部31bの前端部から側方に延びる取付部31d、及び第1後壁部31aの側方側の横端部から略垂直に立ち上がって後方に延びる第3後壁部31cからなっている(図2参照)。
【0027】
第3後壁部31cの長さL2は第1後壁部31aの長さL1の3倍以上の長さを有する(図4参照)と共に、第1後壁部31aには前方に延びる隔壁部31aaが設けられ、第3後壁部31cには何か所かに段差部31caを有している。
【0028】
リフレクタ4は、光源ランプ2が装着された第1後壁部31aに支持されると共に、光源ランプ2を斜め後方、側方及び斜め前方から覆って光源ランプ2の前方を開口とする反射部41と、開口端部4aの一部から第1後壁部31a及び第3後壁部31cに沿って該第3後壁部31cの途中まで延びるエクステンション部42を有している。
【0029】
リフレクタ4の反射部41の、光源ランプ2を覆って光源ランプ2からの光を反射させる側の面(反射面)41a、及びエクステンション部42の第1後壁部31a及び第3後壁部31cに対向する側と反対側の面(光輝反射面)42aにはクロムメッキ等によるメタリック調の光輝反射処理が施されている。
【0030】
エクステンション部42の先端部42bの略延長線上には第3後壁部31cに沿うようにインナーレンズ6が配置され、インナーレンズ6の一方の端部6a側はその一部がエクステンション部42の先端部42bと嵌合されると共に、エクステンション部42と第3後壁部31cとの間の隙間を塞ぐように位置し、他方の端部6bは第3後壁部31cの端部31cbに嵌合されている。
【0031】
更に、リフレクタ4の開口前方からエクステンション部42及びインナーレンズ6に沿って側方に回り込むようにアウターレンズ5が配置され、アウターレンズ5の両端部5a、5bはいずれもハウジング3に嵌合されている。
【0032】
この場合、アウターレンズ5は車両の前面から側方に回り込む形状を呈しているが、アウターレンズ5の側方の長さM2は、リフレクタ4の反射部41の開口端部4aの横径M1の3倍以上の長さを有している(図4参照)。
【0033】
ところで、インナーレンズ6の一方の端部6a側におけるその端部6aとハウジング3の第3後壁部31cとリフレクタ4のエクステンション部42の位置関係は上記したように、インナーレンズ6の一方の端部6a側はその一部がエクステンション部42の先端部42bに嵌合されると共に、エクステンション部42と第3後壁部31cとの間の隙間を塞ぐように位置している(図2参照)。それと同時に、インナーレンズ6の端部6aがハウジング3の第3後壁部31cの段差部31caに重なるように位置している。
【0034】
つまり、ハウジング3の後側壁31の第3後壁部31cとリフレクタ4のエクステンション部42とで形成された隙間がインナーレンズ6の一方の端部6a側によって塞がれた状態となっている。これにより、ハウジング3の上側壁32、下側壁33、第1後壁部31a及び第3後壁部31cと、リクレクタ4の反射部41及びエクステンション部42と、インナーレンズ6とで形成された空間がインナーレンズ6の端部6a側で2つの独立した空間に区画されている(図2、図3参照)。
【0035】
第1の区画45はハウジング3の上側壁32、下側壁33、第1後壁部31a及び第3後壁部31cと、リクレクタ4の反射部41及びエクステンション部42と、インナーレンズ6の端部6a側とで構成され、第2の区画46はハウジング3の上側壁32、下側壁33及び第3後壁部31cと、インナーレンズ6とで構成されている。
【0036】
第1の区画45と第2の区画46のうち光源ランプ2に近い位置にある第1の区画45は、区画内にハウジング3の第1後壁部31aから前方に延びて該区画内を部分的に区切る隔壁部31aaを有する迷路構造を有している。
【0037】
このように構成された車両用灯具1において、図5に示すように、光源ランプ2が点灯すると光源ランプ2の発熱はリフレクタ4の反射部41内の空気の温度を上昇させ、反射部41内の暖気が第1の区画45の内部空間の、隔壁部31aaを隔てた光源ランプ2側の空間領域45aに流れ込む。第1の区画45の空間領域45aに流れ込んだ暖気はその流れが隔壁部31aaによって阻害されて流速が抑制され、減速された暖気流が隔壁部31aaとリクレクタ4のエクステンション部42との隙間を通って隔壁部31aaを隔てた光源ランプ2と反対側の空間領域45bに流れ込む。
【0038】
第1の区画45の空間領域45bに流れ込んだ暖気はその多くが該空間領域45b内で対流を生じてその空間領域45b内に留まる。そのため、光源ランプ2の点灯時の発熱はそのほとんどが発熱源の光源ランプ2に近い側に位置する第1の区画45内に滞留し、光源ランプ2から遠く、且つアウターレンズ5の側方に回り込む長い部分に沿って位置する第2の区画46内にはほとんど流入することはない。
【0039】
そのため、アウターレンズ5とリクレクタ4のエクステンション部42とで形成される隙間47、及びアウターレンズ5とインナーレンズ6とで形成される隙間48にもほとんど暖気が流れ込むことはない。
【0040】
その結果、光源ランプの点灯時の発熱によってアウターレンズに曇りや結露が発生することがなく、照射光による視認性や外部からの見栄えを損なうことがない。このような優れた効果は、車両用灯具を上述したような構成とすることによって、部品点数を増加することなく且つ簡易な構造で実現することができるものである。
【符号の説明】
【0041】
1… 車両用灯具
2… 光源ランプ
3… ハウジング
4… リフレクタ
4a… 開口端部
5… アウターレンズ
5a… 端部
5b… 端部
6… インナーレンズ
6a… 端部
6b… 端部
10… バルブ
11… ソケット
31… 後側壁
31a… 第1後壁部
31aa… 隔壁部
31b… 第2後壁部
31c… 第3後壁部
31ca… 段差部
31cb… 端部
31d… 取付部
32… 上側壁
33… 下側壁
41… 反射部
41a… 反射面
42… エクステンション部
42a… 光輝反射面
42b… 先端部
45… 第1の区画
45a… 空間領域
45b… 空間領域
46… 第2の区画
47… 隙間
48… 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するハウジングと前記ハウジングの前記開口を塞ぐように配置されたアウターレンズとで灯室が形成され、前記灯室内に前記ハウジングに支持された光源と、前記光源を包囲すると共に開口を有し前記光源からの光を反射させて前記開口を介して前記アウターレンズの方向に向けて照射するリフレクタとが収容されてなる車両用灯具であって、
前記灯室内に、前記アウターレンズに沿って且つ前記アウターレンズとの間に隙間を設けて前記アウターレンズ以外の部材で囲まれた複数の独立した区画が互いに隣設されており、
前記光源に最も近い位置にある区画が前記光源を包囲する空間に連通していることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記区画は前記ハウジング、前記リフレクタ及びインナーレンズのなかから選ばれた組み合わせにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源に最も近い位置にある区画は、区画内に該区画内を部分的に区切る隔壁部を有する迷路構造を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記アウターレンズは車両の前記灯具照射方向から側方に回り込む形状を呈しており、前記アウターレンズの側方の長さは前記リフレクタの前記開口端部の横径の3倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−159541(P2011−159541A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21322(P2010−21322)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】