説明

車両用灯具

【課題】ライン状の導光体の組み付けが容易な車両用灯具を提供する。
【解決手段】灯室S内に配設されたライン状導光体40a,40bに、該導光体の延在方向と平行に後方に延出し、その先端側ほどその巾が狭くなるテーパー形状に形成した舌片状延出部50を形成するとともに、導光体40a,40bの取着部30には舌片状延出部50と凹凸ランス係合する係合部64を設けた。
導光体延出部50を導光体取着部30の係合部64に押し込めば、係合部64の内周縁が延出部50の側縁部52a,52bに沿って滑動し、延出部50が係合部64にスムーズに挿入されて延出部50と係合孔64間が凹凸ランス係合するので、ライン状導光体40a,40bを導光体取着部30に対してワンタッチで確実に装着することができるため、組み付けが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、アウターレンズとランプボディで画成された灯室内に配設されたライン状導光体が発光するように構成された車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
対向車ドライバ等に自車の存在を知らせるためのクリアランスランプやデイタイムランニングランプ等の車両用灯具では、従来一般に、光源光をリフレクタで反射配光させるタイプや、光源光をレンズステップで拡散配光させるタイプのものがある。
【0003】
近年では、ライン状の導光体に光源光を導き導光体全体を発光させるタイプのものが知られており、この種のランプでは、例えば特許文献1のような、アウターレンズとランプボディで画成された灯室内の周縁部寄りに配置された合成樹脂製のライン状導光体と、該導光体の端部に配置された光源であるLEDとを備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−295552号公報(段落番号0030、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ネジやフック等の公知の固定手段を用いてライン状導光体を組み付ける旨が記載されているが、ライン状導光体の具体的な取付構造については一切記載されていない。
【0006】
ライン状導光体は細長く延在するものであることに加えて、灯室やアウターレンズを含む灯具の形状は車体外形に倣った流線型に構成されるので、ライン状導光体およびランプボディ側の導光体取着部は三次元的に複雑な形状となり、灯室内所定箇所に装着するにはその組み付け工程が複雑となることが想定される。
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、ライン状導光体の組み付けが容易な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る車両用灯具においては、アウターレンズとランプボディで画成された灯室と、前記灯室内に配設されたライン状導光体と、前記導光体の光入射端部に正対して設けられた光源と、前記ライン状導光体が装着される導光体取着部と、を備え、光入射端部から入射した光源光が内面反射を繰り返して他端部側に向かって導光されることで、導光体の側面の前面側が発光する車両用灯具において、前記ライン状導光体には、該導光体の延在方向と平行に後方に延出する舌片状延出部が形成されるとともに、前記舌片状延出部の側縁部は、該延出部の巾が先端側ほど狭くなるテーパー形状に形成され、一方、前記導光体取着部には、前記舌片状延出部挿入用の係合部が設けられ、前記舌片状延出部と前記係合部が凹凸ランス係合して前記ライン状導光体が前記導光体取着部に固定されるように構成した。
【0009】
(作用)その側縁部が先端側ほど巾狭となるテーパー形状に形成された舌片状の延出部の先端を、それぞれ対応する係合部(例えば、貫通孔または窪み等)に概略一致するように位置合わせして、導光体(延出部)を導光体取着部(の係合部)に押し込めば、係合部の内周縁が延出部の側縁部に沿って滑動し、個々の延出部が係合部にスムーズに挿入され、延出部と係合孔間に設けた凹凸ランス係合部(いずれか一方の側に設けた凸部と、他方の側に設けた凹部)が凹凸ランス係合する。
【0010】
特に、ライン状導光体および導光体取着部が車体の流線形状に倣った三次元に湾曲する複雑な形状であっても、テーパー形状の側縁部が、延出部と係合部の寸法誤差を吸収するので、延出部の係合部への挿入および両者の凹凸ランス係合がスムーズである。
【0011】
また、請求項2においては、請求項1に記載の車両用灯具において、前記舌片状延出部を、前記ライン状導光体側面の前面側と背面側の境界のうちのいずれか一方に形成するように構成した。
【0012】
(作用)ライン状導光体の側面のうち、背面側中央部に舌片状延出部を設けると、第1に、非点灯時に係る部分が影となって暗く見える。第2に、導光体の背面側には一般には点刻や反射ステップ等の配光形成手段を設けるが、延出部を形成すると係る部分には配光形成手段を形成することができないので、点灯時の発光が周囲よりも暗くなり、係る箇所で導光体の発光が不均一となる。一方、舌片状延出部をライン状導光体の側面の前面側と背面側の境界のうちのいずれか一方に設ければ、非点灯時に影となることもないし、反射ステップ等を形成箇所にかからないので、発光が暗く見える部分が生じない。
【0013】
また、請求項3においては、請求項1または2に記載の車両用灯具において、前記舌片状延出部の側縁部の少なくとも付根側を逆テーパー形状に形成するように構成した。
【0014】
(作用)請求項1に係る舌片状延出部によれば、導光体取着部への組み付け性は良好となるが、新たな問題が生じた。即ち、光入射端部から入射した光源光が、導光体内で内面反射を繰り返して他端部側に向かって進行する(導光される)ことで導光体側面が発光するが、導光の一部が請求項1に係る舌片形状の延出部内に導かれると、図4に示すように、ライン状導光体40aの延出部50における一対の側縁部52a,52bは、延出部50の巾が先端側ほど狭くなるテーパー形状(延出部50がその先端側ほど巾狭の舌片状)であるため、延出部50内に導びかれた光は、光入射端部43aから遠方側の側縁部52bの付根部54で出射(屈折)した後、付根部54近傍の導光体40aの所定領域を透過してアウターレンズ4に向かう漏光L(実線矢印)となるか、付根部54の内面で反射或いは全反射して前記所定領域近傍からアウターレンズ4に向かう漏光L(破線矢印)となる。
【0015】
このため、灯具前方から見ると、導光体40aの側面44のうち、上記漏光箇所に対応する領域Rだけが周囲に比べて強く光って見える(以下、「点光り」という)ため、灯具点灯時の見栄えが悪いという問題が生じた。
【0016】
しかし、舌片状延出部50の一対の側縁部52a,52bのうち、光入射端部43aから遠方側の側縁部52bの少なくとも付根部54を逆テーパー形状とすると、図5に示すように、延出部50に導かれた光は、側縁部52bの付根部54で導光体40aの後方に出射(屈折)する漏光L(実線矢印)となるか、付根部54の内面で反射して導光体40aの後方に出射する漏光L(破線矢印)となるので、付根部54近傍の所定位置からアウターレンズ4に向かう漏光は発生しない。
【0017】
また、請求項4においては、請求項2または3に記載の車両用灯具において、前記ライン状導光体の側面の、少なくとも前記舌片状延出部を形成した前記境界と反対側の境界には、前記導光体取着部に形成された段差部へ当接する突起部を一体形成するように構成した。
【0018】
(作用)ライン状導光体側面の前面側と背面側の境界のうち、一方の境界では凹凸ランス固定され、他方の境界では突起部の先端部が段差部に突き当たるので、ライン状導光体は導光体取着部に対して、挿入方向と垂直の方向にも位置決めされた形態で固定される。
【0019】
また、請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具において、前記導光体取着部は、他のランプの光源ユニットと前記アウターレンズとの間に配設されたエクステンションで構成され、前記エクステンションは、ライン状開口部および該ライン状開口部の後方に配置されたライン状リフレクタを備え、前記ライン状導光体を前記ライン状リフレクタの前面側に取着固定するように構成した。
【0020】
具体的には、前記導光体取着部は、他のランプの光源ユニットと前記アウターレンズとの間に配設されたエクステンションで、前記ライン状導光体は、前記エクステンションの背面側に配置されたライン状リフレクタの前面側に取着されて、前記エクステンションに形成されたライン状開口部からその前側面が露呈するように構成するか、或いは、前記導光体取着部は、前記エクステンションに一体形成されたライン状リフレクタの前面側に取着するように構成した。
【0021】
(作用)他のランプの光源ユニットと前記アウターレンズとの間に配設されたエクステンションに備えられたライン状リフレクタによって、灯具後方へ延びる舌片状延出部からの漏光が、ライン状導光体の後方(背面側)に延在するライン状リフレクタで前方に反射されて、再び導光体内に戻される。また、ライン状リフレクタをエクステンションに一体形成した場合は、その分部品点数が減る。
【発明の効果】
【0022】
以上より、請求項1に係る発明によれば、ライン状導光体を導光体取着部に対してワンタッチで確実に装着することができるので、組み付けが容易である。
請求項2に係る発明によれば、舌片状延出部の形成によってライン状導光体の側面の前面側の均一発光を妨げることがない。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、アウターレンズに向かう漏光に起因する点光りが抑制されて、ライン状導光体の前側面全体が均一発光して見えるので、外観品質の高い(見栄えの良い)車両用灯具を提供することができる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、延在するライン状導光体が挿入方向と垂直の方向にも位置決めされた形態で固定されるので、振動によるぶれが生じない。
請求項5に係る発明によれば、漏光を無駄なく有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施例に係る自動車用前照灯の正面図。
【図2】同前照灯の縦断面図(図1示す線II−IIに沿う断面図)。
【図3】ライン状導光体およびその光源の平面図。
【図4】ライン状導光体の固定部の構成を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図。
【図5】第1の実施例に係るライン状導光体の固定部を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図。
【図6】第2の実施例に係る自動車用前照灯の正面図。
【図7】同前照灯のライン状導光体の固定部を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図。
【図8】第3の実施例に係るライン状導光体の固定部を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図。
【図9】第4の実施例に係る自動車用前照灯の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図3および図5は、本発明の第1の実施例に係る自動車用前照灯を示し、図1は本発明の第1の実施例に係る自動車用前照灯の正面図で、図2は同前照灯の縦断面図(図1示す線II−IIに沿う断面図)で、図3はライン状導光体およびその光源の平面図で、図5は同前照灯のライン状導光体の固定部を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図である。なお、図1では透明なアウターレンズ4を介して透けて見える灯室S内を実線で示す。
【0028】
これらの図において、車両用前照灯1は、車両正面視右側(運転席から見て左側)に設けられる灯具である。符号Sは、ランプボディ2と透明なアウターレンズ4で画成された前照灯1の灯室である。ランプボディ2の前面開口部およびアウターカバー4は、車体の流線形状に倣って、車両前端部3Aから車両側方3Bに廻り込むように三次元的に湾曲して形成されている。
【0029】
灯室S内には、中央車両前端部3A側にフロントターンシグナルランプA、車両側方3B側にロービームランプBが収容されている。そして、アウターレンズ4とこれらランプA,Bに係る光源ユニット20,10との間には、デイタイムランディングランプ(夜間はクリアランスランプ)Cが収容されている。デイタイムランディングランプCは、ランプA,Bを囲うようにフレーム状に配設されている。
【0030】
ロービームランプBは、すれ違いビーム形成用のリフレクタ12に放電バルブ14が挿着されて、所定のすれ違いビームを形成する反射型光源ユニット10で構成されている。
【0031】
フロントターンシグナルランプAは、略放物面形状のリフレクタ22に白熱バルブ24が挿着されて、車体内部に設けられたウィンカスイッチ(図示せず)の操作に応じて、車体前部及び/又は後部に設けられたウィンカ(図示せず)と連動して点滅するように結線された反射型光源ユニット20で構成されている。
【0032】
また、灯室S内には、前記したターンシグナルランプAの光源ユニット20およびロービームランプBの光源ユニット10とランプボディ2との隙間を隠すために、光源ユニット10,20の前面側に、表面アルミ蒸着処理されたエクステンション30が配設されている。
【0033】
エクステンション30の外形は、ランプボディ2の前面開口部に倣って正面視略矩形状に形成されており、例えばアウターレンズ4にネジ固定されることで灯室S内に位置決め保持される。また、エクステンション30には、デイタイムランディングランプCを構成するライン状導光体40a,40bの側面44の前面側46を露呈させるための、導光体40a,40bと正面視略同形状のライン状開口部31a、31bが形成されていて、背面側から導光体40a,40bを(後述するライン状リフレクタ60a、60bを介して)組みつけられるようになっている。
【0034】
次に、デイタイムランディングランプCの構成について詳細に説明する。
デイタイムランディングランプCは、横断面略円形の透明な合成樹脂(例えば、アクリル樹脂)製のライン状の導光体40a,40bの2本で構成されている。そして、灯室S内後方の車両側方3B側の所定位置には、ライン状導光体40a,40bの光源となるLED71a,71bが収容されたLEDユニットアッシー70が配設されている。
【0035】
ライン状導光体40aは、延在する導光体40aの両端のうち一方の端部43aがLEDユニットアッシー70に接続されており、灯室S内正面視上方および左側方に配設されている。詳細には、LEDユニットアッシー70のプリント基板72の前面側に搭載されたLED71aと導光体40aの端部43aの端面43aが正対して、LED71aの照射軸が端面43aに直交するように接続されたのち、光源ユニット10,20とアウターレンズ4の間を、光源ユニット10,20の上側を車両側方3B側から車両前端部3A側に向けて略直線状に配置された上辺部40aと、車両前端部3A側を略直線状に配置された左辺部40aと、からなる。
【0036】
ライン状導光体40bは、プリント基板72の前面側のLED71bの照射軸と導光体40bの端部43bの端面43bとが直交するように接続されたのち、同様に車両側方3B側に配置された右辺部40aと、光源ユニット10,20の略下方を車両側方3B側から車両前端部3A側に向けて配置された下辺部40aとからなる。以下、光源であるLED71a,71bが配設された側の端部43aおよび端部43bを、光入射端部と言う。
【0037】
また、ライン状導光体40a,40bも、アウターレンズ4の流線形状に倣って車両前端部3Aから車両側方3Bに廻り込むように三次元的に湾曲した形状となっている(図3参照)。
【0038】
また、各ライン状導光体40a,40bの側面44の背面側(以下、背側面45という)には、略全域に亘ってプリズム状の溝によって形成される反射ステップ47(図示せず)が所定ピッチをもって設けられていて、光入射端部43a,43bから入射した導光は反射ステップ47で反射されて、導光体40a,40bの側面44の前面側(以下、前側面46)から前方へ向けて略均一に出射する。
【0039】
また、各ライン状導光体40a,40bの側面44には、光入射端部43a,43bを除いた導光体40a,40bの前側面46と背側面45の境界(横断面円形の上下に略対応する位置)に、後述するライン状リフレクタ60に形成された段差部62と当接する横断面矩形状のリブ48が一体形成されている(図2参照。なお、図3では記載を省略している)。
【0040】
そして、ライン状導光体40a,40bには、導光体40a,40bを後述する導光体取着部に組み付けるための舌片状延出部50が形成されている。係る舌片状延出部50は、ライン状導光体40aの上辺部40aの上端部41aに略等間隔3箇所,ライン状導光体40bの下辺部40bの上端部41bに略等間隔2箇所に設けられている(図3参照)。
【0041】
以下、ライン状導光体40aを例に舌片状延出部50の構成を説明する。
図5に示すように、舌片状延出部50は、導光体40aの上辺部40aの上端部41a側のリブ48から、導光体40aの延在方向と平行に灯具後方に延出する、略平板状の固定部である。
【0042】
舌片状延出部50の一対の側縁部52a,52bは、該延出部50の巾が先端側(灯具後方側)ほど狭くなるテーパー形状に形成されているが、光入射端部43aから遠方側の側縁部52bは、その付根側(以下、付根部54と言う)が逆テーパー(該延出部50の巾が付根側(灯具前方側)ほど狭くなるテーパー形状)に形成されている。
【0043】
舌片状延出部50の略中央部には、後述するライン状リフレクタ60aのフック部66と係合可能な略矩形状のランス孔56が形成されている。
【0044】
なお、舌片状延出部50は、導光体取着部への取付性の観点からは、ライン状導光体40aの背側面45の中央部に設けることもできるが、第1に、非点灯時に係る部分が影となって暗く見える。第2に、係る部分に反射ステップ47を形成することができないので、点灯時の発光が他の前側面46よりも暗くなり、係る箇所で導光体40aの発光が不均一となる。従って、導光体40aの前側面46と背側面45の境界(横断面円形の上下に略対応する位置)のいずれか一方に設けることが好ましい。
【0045】
また、舌片状延出部50は上端側のリブ48から延出させているが、多少発光が劣るものの、導光体40a本体の上端から直接延出形成してもよい。
次に、ライン状導光体40aの取着部であるライン状リフレクタ60aを説明する。ライン状リフレクタ60aは、横断面半円弧状で、導光体40aと正面視略同形状にライン状に延びる光学部材であり、エクステンション30に組み付け一体化される。
【0046】
ライン状リフレクタ60の前面63側は表面アルミ蒸着処理およびシボ塗装が施されていて、前面63での反射光は灯具前方に向かうように配光される。また、ライン状リフレクタ60aの横断面半円の上下に略対応する位置には、ライン状導光体40aに形成されたリブ48の先端および背面側が係合される段差部62が延設されている。
【0047】
そして、ライン状リフレクタ60aには、舌片状延出部50に対応する位置に、舌片状延出部50挿入用の矩形状の係合孔64が設けられている。さらに、係合孔64の内周(上面)には、舌片状延出部50のランス孔56と凹凸ランス係合するフック部66が下方へ突出形成されている。
【0048】
ライン状リフレクタ60bは、ライン状導光体40bと略同形状であって、係合孔64が前記した2箇所に設けられたことの他は、ライン状リフレクタ60aと同様である。
【0049】
次に、ライン状導光体40aをライン状リフレクタ60aに組み付ける工程を説明する。
【0050】
ライン状導光体40aの舌片状延出部50の先端を、それぞれ対応するライン状リフレクタ60aの係合孔64に概略一致するように位置合わせして、ライン状導光体40a(舌片状延出部50)をライン状リフレクタ60a(の係合孔64)に押し込めば、係合孔64の内周側縁が舌片状延出部50の側縁部52a,52b(の先端側)に沿って滑動するので、舌片状延出部50が係合孔64にスムーズに挿入される。
【0051】
そして、舌片状延出部50に設けられたランス孔56が係合孔64に設けられたフック部66に対応する位置まで挿入されると、自動的にフック部66がランス孔56に凹凸ランス係合されて、舌片状延出部50がライン状リフレクタ60aに前後方向に確実に抜け止め保持されるとともに、導光体40aの側面44の両端に設けられたリブ48の先端および背面側がライン状リフレクタ60aの段差部32に突き当たり、導光体40aは前後方向(挿入方向)と垂直方向にも位置決めされた形態で固定されるので、振動によるぶれが生じない。
【0052】
このとき、舌片状延出部50と係合孔64とが概略一致するように位置合わせして、ライン状導光体40aをライン状リフレクタ60aに押し込むだけで良いので、ライン状導光体40aをワンタッチで簡単に装着することができ、ライン状導光体40aの組み付けが容易である。
【0053】
特に、ライン状導光体40aおよびライン状リフレクタ60aが車体の流線形状に倣った三次元で湾曲する複雑な形状であっても、テーパー形状の側縁部52a,52bが舌片状延出部50と係合孔64の寸法誤差を吸収するので、舌片状延出部50の係合孔64への挿入および両者の凹凸ランス係合は非常にスムーズである。
【0054】
以上により、ライン状導光体40aは背側面45全体をライン状リフレクタ60aで覆われた形態で該リフレクタ60aの前面側に確実に固定保持される。
そして、係るライン状導光体40aが取着されたライン状リフレクタ60aを、エクステンション30の背面側から挿入して、ライン状導光体40aの前側面46がライン状開口部31aから露呈するように、エクステンション30とリフレクタ60aを所定箇所でネジ等の公知の手段で固定すれば、ライン状導光体40aの配設が完了する。同様に、ライン状導光体40bが凹凸ランス固定されたライン状リフレクタ60bを、ライン状開口部31bから露呈するようにエクステンション30に固定すれば、デイタイムランディングランプCの組み付けが完了する。
【0055】
次に、ライン状導光体40aを例に導光および漏光の様子を説明する。
光入射端部43aから入射したLED71aの光は、ライン状導光体40a内を内面反射を繰り返して他方の端部42に向けて導かれるとともに、導光体40aの背側面45全体に設けられている反射ステップ47によって反射されて導光体40aの前側面46から出射するが、導光の一部は舌片状延出部50内にも導かれる。
【0056】
ここで、図4に示すように、ライン状導光体40aの舌片状延出部50を、延出部50の巾が先端側ほど狭くなるテーパー形状(延出部50がその先端側ほど巾狭の舌片状)の側縁部52a,52bとすると、延出部50内に導びかれた光は、その大半が、光入射端部43aから遠方側の側縁部52bの付根部54で導光体40a側に向けて出射(屈折)した後、付根部54近傍のリブ48の所定領域を透過して再び屈折し、アウターレンズ4に向かう漏光L(実線矢印)となる。またその一部は、付根部54の内面で反射或いは全反射して、前記所定領域近傍のリブ48からアウターレンズ4に向かう漏光L(破線矢印)となる。
【0057】
このため、導光体40aを灯具前方から見ると、上記漏光箇所に対応するリブ48の所定領域Rだけが周囲の前側面46に比べて強く光って見える(以下、「点光り」という)ため、灯具点灯時の見栄えが悪くなる。
【0058】
しかし、本実施例では、図5に示すように、舌片状延出部50の一対の側縁部52a,52bのうち、光入射端部43aから遠方側の側縁部52bの付根部54を逆テーパー形状(該延出部50の巾が付根54側(灯具前方側)ほど狭くなるテーパー形状)としているので、延出部50に導びかれた光の大半は、側縁部52bの付根部54で導光体40aの後方に出射(屈折)する漏光L(実線矢印)となる。或いは、付根部54の内面で反射して導光体40aの後方に出射する漏光L(破線矢印)となる。よって、アウターレンズ4に向かう漏光は発生しない。
【0059】
このため、領域Rの点光りが抑制されて、灯具前方から見ると、エクステンション30(のライン状開口部31a)から露呈したライン状導光体40aの前側面46全体が均一に発光して見えるので、外観品質の高い(見栄えの良い)前照灯1となる。
【0060】
さらに、係る灯具後方への漏光L,Lは、導光体40aの背面側に設けられたライン状リフレクタ60aの前面63によって灯具前方に反射するように配光されて再び導光体40a内に戻される。このため、漏光L,Lは無駄なく有効に利用される。
【実施例2】
【0061】
図6,図7は、本願発明の第2の実施例を示し、図6は第2の実施例に係る自動車用前照灯の正面図で、図7は同前照灯のライン状導光体の固定部を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図である。
【0062】
第2の実施例では、デイタイムランディングランプCが、第1の実施例と略同位置に、1本のライン状導光体40Aによって構成されており、係る導光体40Aの正面視形状に倣ったライン状リフレクタ60A,ライン状開口部31Aに形状変更した他は、第1の実施例と同様の構成である。また、ライン状導光体40Aの組み付け工程も第1の実施例と同様である。
【0063】
ただし、ライン状導光体40Aでは、1本の導光体40Aの両端部43A,43Bから光源光が入射する構成となるため、光入射端部43Aから入射したLED71aの光は内面反射を繰り返しながら光入射端部43Bまで導光され、LED71bの光は光入射端部43Bから光入射端部43Aまで導光される。
【0064】
よって、導光体40Aの上辺部40Aに設けられた舌片状延出部50では、図7に示すように、係る延出部50に近い光入射端部43Aから入射したLED71aからの導光は、第1の実施例と同様に側縁部52bの付根部54で導光体40Aの後方に出射(漏光L,L)するため、アウターレンズ4方向に漏光することはない。
【0065】
一方、延出部50から遠い光入射端部43Bから入射したLED71bからの導光は、逆テーパーされた側縁部52bの付根部54が舌片状延出部50への入射方向に対して立壁となって、延出部50への入射が阻害されてそのまま導光体40A内を内面反射を繰り返しながら導光する。このため、舌片状延出部50に入射するLED71bの光の量は減少する。そして、舌片状延出部50に微量に入射したLED71bの光が側縁部52aからアウターレンズ4へ向って漏光したとしても、その量は少ないため、側縁部52a近傍のリブ48が点光りすることはない。
【0066】
同様に、導光体40Aの下辺部40Bに設けられた舌片状延出部50においては、係る延出部50に近い光入射端部43BからのLED71bの光は側縁部52bで導光体40Aの後方に出射(漏光)され、遠い光入射端部43AからのLED71aの光は側縁部52bの付根部54により入射が抑制されることとなるので、同様に点光りは発生しない。
【0067】
従って、側縁部52bの付根部54を逆テーパー形状とすることは、1本の導光体の両端から光源光が入射される場合にも十分に効果がある。
【実施例3】
【0068】
図8は、本願発明の第3の実施例に係るライン状導光体の固定部を上方から見た拡大斜視図であって、漏光の様子を説明する図である。
【0069】
第3の実施例では、第2の実施例において、舌片状延出部50の形状を舌片状延出部50Aに形状変更した他は、第2の実施例と同様である。
【0070】
舌片状延出部50Aは、図8に示すように、側縁部52bだけでなく側縁部52aの付根部54Aも逆テーパーさせた形状にしたものである。
【0071】
よって、舌片状延出部50Aにおける導光は、導光体40Aの上辺部40Aに設けられた舌片状延出部50Aで説明するに、係る延出部50Aに近い光入射端部43Aから入射したLED71aからの導光も、逆テーパーされた側縁部52aの付根部54Aが立壁となって延出部50Aへの入射が阻害され、そのまま導光体40A内を内面反射を繰り返しながら導光する。延出部50Aに遠い光入射端部43Bから入射したLED71bからの導光も同様である。よって、舌片状延出部50Aに入射する光の量は大幅に減少する。そして、舌片状延出部50AにこれらLED71a,71bの光が微量に入射したとしても、LED71aの光は側縁部52bの付根部54で灯具後方へ出射(屈折)され(L,L)、LED71bの光は側縁部52aの付根部54Aで灯具後方へ出射(屈折)される(L3’,L4’)ので、アウターレンズ4へ向かう漏光は全く生じない。よって、点光りは確実に抑制することができる。
【0072】
なお、第3の実施例の舌片状延出部50Aは第1の実施例で用いてもよい。
【実施例4】
【0073】
図9は、本願発明の第4の実施例に係る自動車用前照灯の縦断面図である。
【0074】
第4の実施例では、第1の実施例において別部材であったエクステンション30とライン状リフレクタ60a,60bを一体にして、エクステンション30の前面にライン状リフレクタ部60Aを形成したエクステンション30Aが導光体取着部となった他は、第1の実施例と同様の構成である。
【0075】
エクステンション30Aは、図9に示すように、第1の実施例におけるエクステンション30のライン状開口部31a、31bに対応する部分が横断面半円弧状に灯具後方に窪んだライン状の溝部となっていて、係る溝部に表面アルミ蒸着処理に加えシボ塗装を施すことで、反射光を灯具前方に向かう配光とするライン状リフレクタ60Aがエクステンション30Aの前面に一体形成された構成となっている。
【0076】
ライン状リフレクタ60A(エクステンション30A)には、第1の実施例と同様に係合孔64,フック部66,段差部62が設けられていて、ライン状導光体40a,40bの舌片状延出部50と係合孔64が概略一致するように位置合わせして押し込めば、両者が凹凸ランス係合して導光体40a,40bはエクステンション30Aに簡単に装着され、ライン状導光体40a,40bは背側面45全体をライン状リフレクタ60Aで覆われてライン状開口部31Aからその前側面46を露呈した形態で、ライン状リフレクタ60Aの前面側に確実に固定保持される。
【0077】
第4の実施例では、舌片状延出部50における灯具後方への漏光が、導光体40a,40bの背面側に配置されたライン状リフレクタ部60Aの前面63によって灯具前方に反射されて再び導光体40a,40b内に戻るため、第1の実施例と同様、漏光を無駄なく有効に利用できる。
【0078】
さらに、ライン状リフレクタ部60Aをエクステンション30Aに一体形成した分、第1の実施例より部品点数が減り、その分ライン状導光体40a,40b周りの構造が簡潔となる。
【0079】
なお、エクステンション30Aは、第2,3実施例で用いてもよい。
【0080】
また、前記した第1〜4の実施例において、ライン状導光体の舌片状延出部と導光体取着部(ライン状リフレクタを別体または一体で備えたエクステンション)は、両者が凹凸ランス係合により固定される限り、実施例の構成に限定されるものではない。例えば、凸部(フック部66)と凹部(ランス孔56)はいずれに設けられていてもよいし、凹部をランス孔56ではなく窪みにすることも考えられる。
【0081】
また、舌片状延出部は、ライン状導光体の左辺部、右辺部に設けてもよいが、係合孔64を設けた箇所は、係る穴がアウターレンズ越しに多少黒く見えてしまうため、灯具の見栄えの観点からは、人間が灯具を見下ろした時に係合孔64が見えにくいよう、導光体の上辺部や下辺部に設けることが好ましく、特に上辺部,下辺部において、導光体の横断面円形の上下に略対応する位置のうち、横断面円形上部に設けることが望ましい。
【0082】
また、前記した舌片状延出部の側縁部の逆テーパーは、少なくともその付根側が逆テーパーされていればよい。
【0083】
なお、前記した舌片状延出部は、側縁部52a,52bの一方が垂直形状(テーパーしていない形状)であっても、いずれか一方の側縁部が先端側ほど巾狭にテーパーしていれば、先端側ほど巾狭な形状にテーパーした舌片形状に当然に含まれる。
【0084】
また、ライン状導光体の横断面の形状は、楕円形状や矩形楕円形である場合も考えられる。
【0085】
また、ライン状導光体に設けられる配光形成手段としては、反射ステップ47に代えて点刻としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 車両用前照灯
2 ランプボディ
4 アウターレンズ
3A 車両前端部
3B 車両側方
A ターンシグナルランプ
B ロービームランプ
C デイタイムランディングランプ
30、30A エクステンション
31a、31b、31A エクステンションのライン状開口部
40a、40b、40A ライン状導光体
43a、43b、43A、43B 光入射端部
45 ライン状導光体の背側面
46 ライン状導光体の前側面
48 リブ
50、50A 舌片状延出部
52a 光入射端部側の側縁部
52b 光入射端部から遠方側の側縁部
54、54A 側縁部の付根部
56 凹凸ランス孔
60a、60b、60A ライン状リフレクタ
62 段差部
64 延出部の係合孔
66 フック部
71a、71b ライン状導光体の光源であるLED
R 点光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターレンズとランプボディで画成された灯室と、前記灯室内に配設されたライン状導光体と、前記導光体の光入射端部に正対して設けられた光源と、前記ライン状導光体が装着される導光体取着部と、を備え、
光入射端部から入射した光源光が内面反射を繰り返して他端部側に向かって導光されることで、導光体の側面の前面側が発光する車両用灯具において、
前記ライン状導光体には、該導光体の延在方向と平行に後方に延出する舌片状延出部が形成されるとともに、前記舌片状延出部の側縁部は、該延出部の巾が先端側ほど狭くなるテーパー形状に形成され、
一方、前記導光体取着部には、前記舌片状延出部挿入用の係合部が設けられ、
前記舌片状延出部と前記係合部が凹凸ランス係合して前記ライン状導光体が前記導光体取着部に固定されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記舌片状延出部は、前記ライン状導光体側面の前面側と背面側の境界のうちのいずれか一方に形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記舌片状延出部の側縁部の少なくとも付根側が逆テーパー形状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ライン状導光体側面の、少なくとも前記舌片状延出部を形成した前記境界と反対側の境界には、前記導光体取着部に形成された段差部へ当接する突起部が一体形成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記導光体取着部は、他のランプの光源ユニットと前記アウターレンズとの間に配設されたエクステンションで構成され、前記エクステンションは、ライン状開口部および該ライン状開口部の後方に配置されたライン状リフレクタを備え、前記ライン状導光体は、前記ライン状リフレクタの前面側に取着固定されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48845(P2012−48845A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187270(P2010−187270)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】