説明

車両用灯具

【課題】遮熱と放熱によって回路ケース内の電気回路の温度上昇を抑制してその作動安定性を高めることができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に少なくとも光源を収容し、該光源を駆動制御する電気回路を実装して成る回路基板11を前記ハウジングの背面に取り付けられた回路ケース8内に収容して成る車両用灯具において、前記回路ケース8を樹脂にて構成するとともに、該回路ケース8内に収容された前記回路基板11に放熱シート12を介して放熱板13を密着させる。又、前記回路基板11と前記放熱板15を共締めによって前記回路ケース8に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源を駆動制御する電気回路を実装して成る回路基板をハウジングの背面に取り付けられた回路ケース内に収容して成る車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前部の左右に配置されるヘッドランプ等の車両用灯具は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に少なくとも光源を収容して構成されており、ハウジングの背面には、前記光源を駆動制御する電気回路を実装して成る回路基板が取り付けられている。
【0003】
斯かる車両用灯具においては、点灯によって回路基板の電気部品が発熱するため、その熱を放熱によって周囲に逃がして電気部品の温度上昇を抑制し、該電気回路の安定した動作を確保する必要がある。このため、従来は回路ケースを熱伝導性の高いアウミダイカスト等によって成形し、該回路ケースをヒートシンクとして機能させる構成が採用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許だ第4727001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アウミダイカスト等によって成形した回路ケースをヒートシンクとして機能させる構成は、例えば駆動源として電動モータを搭載した電気自動車等においては、回路ケースの温度が周囲の温度よりも高いために該回路ケースをヒートシンクとして使用し、これに収容された電気回路において発生する熱を回路ケースから周囲に放熱させることができる。
【0006】
しかしながら、高熱源であるエンジンを駆動源とする車両においては、エンジンの方が回路ケースよりも高温となるため、エンジンからの熱が回路ケースを介して電気回路に伝達し、該電気回路が加熱されてその作動安定性が害されるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、遮熱と放熱によって回路ケース内の電気回路の温度上昇を抑制してその作動安定性を高めることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に少なくとも光源を収容し、該光源を駆動制御する電気回路を実装して成る回路基板を前記ハウジングの背面に取り付けられた回路ケース内に収容して成る車両用灯具において、前記回路ケースを樹脂にて構成するとともに、該回路ケース内に収容された前記回路基板に放熱シートを介して放熱板を密着させたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記回路基板と前記放熱板を共締めによって前記回路ケースに取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、金属よりも熱伝達率が低くて断熱性の高い樹脂によって回路ケースを構成したため、例えばエンジン等の外部からの熱を回路ケースによって遮断することができる。又、回路ケース内の電気回路自体が発生する熱は、放熱シートから放熱板へと伝導し、放熱板から周囲に放熱される。従って、回路ケース内に収容された電気回路は回路ケースによる遮熱と放熱板からの放熱によって温度上昇が抑えられ、その作動安定性が高められる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、回路基板と放熱板を共締めによって回路ケースに取り付けるようにしたため、これらの回路基板と放熱板の組付性が高められるとともに、ネジ等の締結具の部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る車両用灯具の正面図である。
【図2】本発明に係る車両用灯具の背面図である。
【図3】本発明に係る車両用灯具の回路ケースの外面図(図4の矢視A方向の図)である。
【図4】本発明に係る車両用灯具の回路ケースの側面図である。
【図5】本発明に係る車両用灯具の回路ケースの内面図(図4の矢視B方向の図)である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】図5のD−D線断面図である。
【図8】本発明に係る車両用灯具の回路ケースの内部構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る車両用灯具の正面図、図2は同車両用灯具の背面図、図3は同車両用灯具の回路ケースの外面図(図4の矢視A方向の図)、図4は同回路ケースの側面図、図5は同回路ケースの内面図(図4の矢視B方向の図)、図6は図5のC−C線断面図、図7は図5のD−D線断面図、図8は回路ケースの内部構造を示す分解斜視図である。
【0015】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、車両前部の左右に設けられるコンビネーションタイプのヘッドランプであって、図1に示すように、ハウジング2とその前面開口部を覆う透明なアウタレンズ3によって画成された灯室内に、ロービーム用ランプ4、ハイビーム用ランプ5、ポジションランプ6及びターンシグナルランプ7を収容して構成されている。尚、左右のヘッドランプ1の構成は左右で同じであるため、以下、一方のヘッドランプ1についてのみ図示及び説明する。
【0016】
ところで、図2に示すように、ハウジング2の背面上部には回路ケース8がその周囲の3箇所をネジ9によって締め付けられることによって取り付けられている。ここで、回路ケース8は、金属よりも熱伝導率が低くて断熱性の高いPBT/PET等の樹脂によって一体成形されており、図3〜図8に示すように、その中央部には有底筒状の収容部8Aが形成され、その周囲にはプレート状のフランジ部8Bが形成されている。そして、フランジ部8Bの外周3箇所には取付ブラケット8aが一体に突設されており、各取付ブラケット8aには、前記ネジ9(図2参照)が挿通するための円孔10がそれぞれ形成されている。又、図6及び図7に示すように、回路ケース8の収容部8Aの内面の3箇所にはボスが8b突設されている。
【0017】
而して、回路ケース8の収容部8Aの内部には、図5〜図8に示すように、回路基板11、放熱シート12、放熱板13及び遮蔽カバー14が収容されている。
【0018】
上記回路基板11は、熱伝導性及び電気絶縁性が高いセラミック等によって円板状に成形されており、これには灯室内に収容された前記ロービーム用ランプ4の光源を駆動制御するための電気回路(不図示)が実装されている。又、図5及び図8に示すように、回路基板11の一方(図5及び図8の手前側)の面の側部にはコネクタ15が取り付けられており、回路基板11の外周3箇所にはネジ16が挿通するための円孔17が形成されている。
【0019】
前記放熱シート12は、熱伝導率の高い材質によって構成されており、前記放熱板13は熱伝導率の高いアルミニウムによって構成されている。ここで、図8に示すように、放熱板13の上下には図8の手前側に起立する取付ブラケット13aが切り起しによって形成され、同放熱板13の中間高さ位置の側部には同じく切り起しによって図8の手前側に起立する矩形プレート状の密着部13bが形成されている。そして、放熱板13の各取付ブラケット13aには円孔18がそれぞれ形成されている。
【0020】
又、前記遮蔽カバー14は、回路基板11に実装された不図示の電気回路をノイズから遮蔽するためのものであって、板金によって矩形ボックス状に成形されている。そして、この遮蔽カバー14の外周3箇所(回路基板11に形成された前記円孔17に対応する3箇所)には取付ブラケット14a(図8には2つのみ図示)が一体に形成されており、各取付ブラケット14aには長孔状のネジ挿通孔19がそれぞれ形成されている。
【0021】
而して、回路ケース8の収納部8A内には放熱板13、放熱シート12、回路基板11及び遮蔽カバー14が組み込まれるが、回路基板11と放熱板13は間に放熱シート12を挟み込んで重ねられる。このとき、放熱シート12は、図7に示すように、回路基板11の一方の面(図7において下側の面)と放熱板13の密着部13bの面に密着する。又、放熱板13の上下の各取付ブラケット13aに形成された円孔18は、回路基板11の外周に形成された上下の円孔17にそれぞれ一致するよう位置が調整される。
【0022】
上記状態から遮蔽カバー14を回路基板11に合わせ、その外周3箇所に形成された取付ブラケット14aを回路基板11に密着させ、各取付ブラケット14aに形成されたネジ挿通孔19を回路基板11の外周3箇所に形成された円孔17にそれぞれ合わせる。そして、その状態から3本のネジ16を遮蔽カバー14の3つのネジ挿通孔19と回路基板11の3つの円孔17に通すとともに、上下2本のネジ16を放熱板13の上下2つの円孔18に通し、3本のネジ16を図5〜図7に示すように回路ケース8の3つのボス8bにそれぞれねじ込むことによって、遮蔽カバー14と回路基板11及び放熱板13が共締めによって回路ケース8に取り付けられる。そして、このように遮蔽カバー14と回路基板11及び放熱板13が共締めによって回路ケース8に取り付けられ状態では、図7に示すように、回路基板11と放熱板13の間に挟持された放熱シート12は、回路基板11の一方の面と放熱板13の密着部13bの面に密着している。
【0023】
そして、内部に遮蔽カバー14と回路基板11及び放熱板13が組み込まれた回路ケース8は、そのフランジ部8Bの外周3箇所に突設された各取付ブラケット8aの円孔10(図3及び図5参照)にそれぞれ挿通する計3本のネジ9を締め付けることによって図2に示すようにハウジング2の背面に取り付けられる。
【0024】
而して、以上のようにハウジング2の背面に取り付けられた回路ケース8の内部に回路基板11及び放熱板13を組み込み、両者の間に放熱シート12を介設して成るヘッドランプ1は、エンジンルーム内に駆動源としてのエンジンを配置して成る車両の前部左右に配置されるものであるが、本発明に係るヘッドランプ1においては、金属よりも熱伝達率が低くて断熱性の高い樹脂によって回路ケース8を構成したため、エンジンからの熱を回路ケース8によって遮断することができ、回路ケース8内の回路基板11への外部からの熱の伝導が抑制される。又、回路ケース8内の電気回路自体が発生する熱は、放熱シート12から放熱板13へと伝導し、熱伝導率の高いアルミニウムによって構成された放熱板13から周囲に放熱される。尚、放熱板13から周囲に放熱された熱は、灯室内へと散逸し、灯室内へと流れ込んだ熱はアウタレンズ3等を介して大気中に放熱される。
【0025】
従って、本発明に係るヘッドランプ1によれば、回路ケース8内に収容された回路基板11に実装された電気回路は、樹脂製の回路ケース8による遮熱とアルミニウム製の放熱板13からの放熱によって温度上昇が抑えられ、その作動安定性が高められる。
【0026】
又、本実施の形態では、遮蔽カバー14と回路基板11及び放熱板13をネジ16による共締めによって回路ケース8に取り付けるようにしたため、これらの遮蔽カバー14と回路基板11及び放熱板13の組付性が高められるとともに、ネジ16等の締結具の部品点数が削減しされて当該ヘッドランプ1のコストダウンが図られる。
【0027】
尚、以上は本発明をヘッドランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の他の任意の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 ヘッドランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
3 アウタレンズ
4 ロービーム用ランプ
5 ハイビーム用ランプ
6 ポジションランプ
7 ターンシグナルランプ
8 回路ケース
8A 回路ケースの収納部
8B 回路ケースのフランジ部
8a 回路ケースの取付ブラケット
8b 回路ケースのボス
9 ネジ
10 回路ケースの円孔
11 回路基板
12 放熱シート
13 放熱板
13a 放熱板の取付ブラケット
13b 放熱板の密着部
14 遮蔽カバー
14a 遮蔽カバーの取付ブラケット
15 コネクタ
16 ネジ
17 回路基板の円孔
18 放熱板の円孔
19 遮蔽カバーのネジ挿通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成された灯室内に少なくとも光源を収容し、該光源を駆動制御する電気回路を実装して成る回路基板を前記ハウジングの背面に取り付けられた回路ケース内に収容して成る車両用灯具において、
前記回路ケースを樹脂にて構成するとともに、該回路ケース内に収容された前記回路基板に放熱シートを介して放熱板を密着させたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記回路基板と前記放熱板を共締めによって前記回路ケースに取り付けたことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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