説明

車両用燃料電池システム

【課題】車両が急カーブ路を走行している際に走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止する。
【解決手段】ステップS1の処理では、制御装置が、加速度計の検出結果に参照して車両の横方向に対する加速度Aを検出し、検出された加速度Aが設定された所定加速度A(s)以下であるか否かを判別する。そして、判別の結果、加速度Aが所定加速度A(s)以下でない場合、制御装置は、車両は急カーブ路を走行していると判断して、開閉バルブを閉状態に制御することにより、排出口から水が排出されないように制御する。これにより、車両が急カーブ路を走行している際に走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池を有する車両用燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池から排出された凝縮水を車両下部から効率的に外部に排出する車両用燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、車両の後輪より車体側方方向に配設された排水口を介して燃料電池が生成した水を排出することにより、燃料電池が生成した水が後輪に掛かることを防止する車両用燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平11−204126号公報
【特許文献2】特開2001−313056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来までの車両用燃料電池システムは、車両から外部へと排出された水が車外環境に与える影響については考慮していない。従って、従来までの車両用燃料電池システムによれば、車両が急カーブ路を走行している際、走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散し、迷惑を掛ける可能性がある。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両が急カーブ路を走行している際に走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止可能な車両用燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る車両用燃料電池システムは、発電に伴い燃料電池から排出される水を外部に排出する排出口を開閉する開閉手段と、車両横方向に対する加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出手段により検出された加速度に応じて開閉手段を開閉制御することにより排水口からの水の排水量を制御する制御手段とを備える。
【0006】
また、本発明の第2の態様に係る車両用燃料電池システムは、発電に伴い燃料電池から排出される水を外部に排出する排出口を開閉する開閉手段と、車両の現在位置を検出すると共に、車両の現在位置周辺の地図情報を参照して車両が走行している道路の曲率を検出する位置検出手段と、車両の速度を検出する速度検出手段と、位置検出手段により検出された車両の位置と道路の曲率、及び速度検出手段により検出された速度に応じて開閉手段を開閉制御することにより排水口からの水の排水量を制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用燃料電池システムによれば、車両が急カーブ路を走行している際に排水口から水が排出されることを防止するので、車両が急カーブ路を走行している際に走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態となる車両用燃料電池システムの構成について説明する。
【実施例1】
【0009】
〔車両用燃料電池システムの構成〕
本発明の第1の実施形態となる車両用燃料電池システムは、車両1に搭載され、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池が複数積層された燃料電池スタック2と、燃料電池を加湿する際に用いる純水や発電反応により生成される生成水を外部に排出する排出口3を開閉する開閉バルブ4と、車両1の横方向に対する加速度を検出する加速度計5と、車両用燃料電池システム全体の動作を制御する制御装置6とを主な構成要素として備える。そして、このような構成を有する車両用燃料電池システムでは、制御装置6が以下に示す排出制御処理を実行することにより、車両が急カーブ路を走行している際に走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止する。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この排出制御処理を実行する際の制御装置6の動作について説明する。
【0010】
〔排出制御処理〕
図2に示すフローチャートは、燃料電池スタック2が発電を開始するのに応じてスタートとなり、排出制御処理はステップS1の処理に進む。なお、この排出制御処理は所定制御周期毎に繰り返し実行され、また通常時、開閉バルブ4は開状態に制御されているものとする。
【0011】
ステップS1の処理では、制御装置6が、加速度計5の検出結果を参照して車両1の横方向に対する加速度Aを検出し、検出された加速度Aが設定された所定加速度A(s)以下であるか否かを判別する。なお、上記所定加速度A(s)は、例えば車両が走行している道路の曲率1/Rと車速Vを数式A(s)=V^2/Rに代入することにより算出することができる。
【0012】
そして、判別の結果、加速度Aが所定加速度A(s)以下である場合、制御装置6は、車両1は急カーブ路を走行していないと判断し、一連の制御処理を終了する。一方、加速度Aが所定加速度A(s)以下でない場合には、制御装置6は、車両1は急カーブ路を走行していると判断し、この制御処理をステップS2の処理に進める。
【0013】
ステップS2の処理では、制御装置6が、開閉バルブ4を閉状態に制御することにより、急カーブ路走行時に排出口3から水が排出されないように制御する。これにより、このステップS2の処理は完了し、一連の制御処理は終了する。
【0014】
一般に、車両がカーブ路を走行する際、図3(a)に示すように、カーブ路の曲率と車速に応じて車両横方向、より詳しくは、カーブ路の半径方向外側に慣性力が働く。そして、この慣性力はカーブ路の曲率が大きくなる程、又は、車速が速くなる程大きくなり、慣性力が所定値以上である場合、図3(b)に示すように、慣性力の影響によって走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することがある。これに対して、本発明の第1の実施形態となる車両用燃料電池システムでは、上述の通り、制御装置6が、車両1の横方向に対する加速度Aが設定された所定加速度A(s)以下であるか否かを判別し、加速度Aが所定加速度A(s)以下でない場合、車両は急カーブ路を走行していると判断し、開閉バルブ4を閉状態に制御することにより、排出口3から水が排出されないように制御する。これにより、本発明の第1の実施形態となる車両用燃料電池システムによれば、慣性力の影響によって走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止できる。
【実施例2】
【0015】
〔車両用燃料電池システムの構成〕
本発明の第2の実施形態となる車両用燃料電池システムは、車両1に搭載され、燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池が複数積層された燃料電池スタック2と、燃料電池を加湿する際に用いる純水や発電反応により生成される生成水を外部に排出する排出口3を開閉する開閉バルブ4と、車両1の現在位置を検出すると共に、車両の現在位置周辺の地図情報を参照して車両1が走行している道路の曲率1/Rを検出するナビゲーションシステム7と、車両1の速度Vを検出する速度センサ8と、車両用燃料電池システム全体の動作を制御する制御装置6とを主な構成要素として備える。なお、ナビゲーションシステム7は、地図情報が格納されたデータベースを備えるものであってもよいし、電気通信回線を介して地図情報を取得するものであってもよい。ナビゲーションシステム7が電気通信回線を介して地図情報を取得するものである場合には、常に最新の地図情報を利用して車両1が走行している道路の曲率1/Rを正確に検出することができる。そして、このような構成を有する車両用燃料電池システムでは、制御装置6が以下に示す排出制御処理を実行することにより、車両が急カーブ路を走行している際に走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止する。以下、図5に示すフローチャートを参照して、この排出制御処理を実行する際の制御装置6の動作について説明する。
【0016】
〔排出制御処理〕
図5に示すフローチャートは、燃料電池スタック2が発電を開始するのに応じてスタートとなり、排出制御処理はステップS11の処理に進む。なお、この排出制御処理は所定制御周期毎に繰り返し実行され、また通常時、開閉バルブ4は開状態に制御されているものとする。
【0017】
ステップS11の処理では、制御装置6が、速度センサ8の検出結果を参照して車両1の速度Vを検出し、検出された速度Vが設定された所定速度V(s)以下であるか否かを判別する。そして、判別の結果、速度Vが所定速度V(s)以下である場合、制御装置6は、急カーブ路を走行した場合であっても水は飛散しないと判断し、一連の制御処理を終了する。一方、速度Vが所定速度V(s)以下でない場合には、制御装置6は、急カーブ路を走行した場合には水が飛散すると判断し、この制御処理をステップS12の処理に進める。
【0018】
ステップS12の処理では、制御装置6が、ナビゲーションシステム7の検出結果を参照して車両1が走行している道路の曲率1/Rを検出し、検出された曲率1/Rが設定された所定曲率1/R(s)以下であるか否かを判別する。そして、判別の結果、曲率1/Rが所定曲率1/R(s)以下である場合、制御装置6は、車両1は急カーブ路を走行していないと判断し、一連の制御処理を終了する。一方、曲率Rが所定曲率1/R(s)以下でない場合には、制御装置6は、車両1は急カーブ路を走行していると判断し、この制御処理をステップS13の処理に進める。
【0019】
ステップS13の処理では、制御装置6が、開閉バルブ4を閉状態に制御することにより、急カーブ路走行時に排出口3から水が排出されないように制御する。これにより、このステップS13の処理は完了し、一連の制御処理は終了する。
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる車両用燃料電池システムでは、制御装置6が、車両1の速度Vが設定された所定速度V(s)以下であるか否かを判別し、速度Vが所定速度V(s)以下でない場合、急カーブ路を走行した場合には水は飛散すると判断して、車両1が走行している道路の曲率1/Rが設定された所定曲率1/R(s)以下であるか否かを判別し、曲率Rが所定曲率1/R(s)以下でない場合、車両は急カーブ路を走行していると判断して、開閉バルブ4を閉状態に制御することにより、排出口3から水が排出されないように制御する。従って、本発明の第2の実施形態となる車両用燃料電池システムによれば、慣性力の影響によって走行車線に隣接した歩道上の歩行者や路肩の駐車車両に水が飛散することを防止できる。
【0021】
なお、この第2の実施形態となる車両用燃料電池システムにおいて、制御装置6は、車両1が走行している道路の曲率1/R、及び車両の速度Vに基づいて車両1の走行状態を予測し、予測された走行状態に従って開閉バルブ4を開閉制御してもよい。このような構成によれば、例えば、曲率が入口付近で急激に大きくなるカーブ路を車両1が走行しようとしている場合であっても、カーブ路の走行を開始する前に開閉バルブ4を閉状態に制御し、水が飛散することを確実に防止することができる。
【0022】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態となる車両用燃料電池システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態となる排出制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【図3】車両用燃料電池システムから排出される水に対する慣性力の影響を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態となる車両用燃料電池システムの構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態となる排出制御処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0024】
1:車両
2:燃料電池スタック
3:排出口
4:開閉バルブ
5:加速度計
6:制御装置
7:ナビゲーションシステム
8:速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池を有する車両用燃料電池システムであって、
発電に伴い前記燃料電池から排出される水を外部に排出する排出口を開閉する開閉手段と、
車両横方向に対する加速度を検出する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段により検出された加速度に応じて前記開閉手段を開閉制御することにより前記排水口からの水の排水量を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両用燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガス及び酸化剤ガスの供給を受けて発電する燃料電池を有する車両用燃料電池システムであって、
発電に伴い前記燃料電池から排出される水を外部に排出する排出口を開閉する開閉手段と、
車両の現在位置を検出すると共に、車両の現在位置周辺の地図情報を参照して車両が走行している道路の曲率を検出する位置検出手段と、
前記車両の速度を検出する速度検出手段と、
前記位置検出手段により検出された車両の現在位置と道路の曲率、及び前記速度検出手段により検出された速度に応じて前記開閉手段を開閉制御することにより前記排水口からの水の排水量を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両用燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用燃料電池システムであって、
前記位置検出手段は、前記地図情報を外部の情報処理装置から取得することを特徴とする車両用燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両用燃料電池システムであって、
前記制御手段は、前記位置検出手段により検出された車両の位置と道路の曲率、及び前記速度検出手段により検出された速度に基づいて車両の走行状態を予測し、予測された走行状態に従って前記開閉手段を開閉制御することを特徴とする車両用燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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