説明

車両用空気調和装置の切換ドア装置

【目的】 切換ドアを少量生産する場合でもコスト高とならずに、切換ドアにより通風口を全閉する際の打撃音を低減する。
【構成】 内気導入口6と外気導入口7を形成した内外気切換箱2と、回動軸9を中心にして回動する内外気切換ドア3と、内外気切換箱2の側壁外面で回動自在に支持され、内外気切換ドア3を一体的に回動運動させるプレート10と、内外気切換箱2とプレート10との間に配され、プレート10を回動方向に対して直交方向に押圧する円弧状の緩衝材5とを備えている。そして、内気導入口6または外気導入口7の全閉位置や半開位置の近傍で、緩衝材5の高さを高くしてプレート10への押圧力を大きくすることによって、内気導入口6または外気導入口7を全閉するときの打撃音を小さくし、操作レバー13の操作力をフルストロークの間で均一化を図った。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両用空気調和装置の切換ドア装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車用空気調和装置においては、空調モードの切り換えや、エアミックスの割合を調節するなど、空調空気の流れを制御するために各種の切換ドアを用いている。これらの切換ドアを切り換える際には、切換ドアのパッキン部と通気用開口端縁との当接による打撃音が直接に、あるいは回動軸その他の構造部品を介した振動音が車室内に伝播してしまうという不具合があった。この打撃音を低減するようにした自動車用空気調和装置の切換ドア装置としては、例えば特開平1−311911号公報に記載された従来技術Aや、実開昭62−46206号公報に記載された従来技術B等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来技術Aにおいては、切換ドアの表面に被着されるライニングに複数の凹凸部分を設ける必要があるために、各種の切換ドア毎にライニングの型が必要であった。また、従来技術Bにおいては、切換ドアのパッキン部に複数の緩衝用突起を設ける必要があるために、各種の切換ドア毎に切換ドアの専用型が必要であった。したがって、これらの従来技術A、Bにおいては、各種の切換ドアを少量生産する場合に高コストとなるという課題があった。本発明は、切換ドアを少量生産する場合でもコスト高とならずに、切換ドアにより通風口を全閉する際の打撃音を低減する車両用空気調和装置の切換ドア装置の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも通風口を全開する全開位置、および前記通風口を全閉する全閉位置に設定される切換ドアと、この切換ドアに回動運動を与える駆動部材と、この駆動部材を移動自在に支持する支持部材と、前記駆動部材と前記支持部材との間に配され、少なくとも前記全開位置近傍および前記全閉位置近傍において前記駆動部材を押圧して前記駆動部材の動きを鈍らせる緩衝材とを備えた技術手段を採用した。
【0005】
【作用】本発明は、切換ドアの全閉位置近傍において、駆動部材が緩衝材に押圧されて駆動部材の動きが鈍るため、切換ドアが全閉位置に切り換えられても、切換ドアが全閉位置の手前で切換ドアの回動速度が遅くなる。この結果、切換ドアに加工を施すことなく、切換ドアが通風口を全閉する際の打撃音が小さくなる。
【0006】
【実施例】本発明の車両用空気調和装置の切換ドア装置を図1ないし図4に示す一実施例に基づき説明する。図1R>1および図2は車両用空気調和装置の切換ドア装置を示した図である。車両用空気調和装置の切換ドア装置1は、内外気切換箱2、内外気切換ドア3、ドア駆動機構4および緩衝材5を備える。内外気切換箱2は、本発明の支持部材であって、車室内を通じて車室内空気を循環させる通風口としての内気導入口6、および外気を取り入れる通風口としての外気導入口7を有し、これらより空気の流れ方向の下流側に、内外気切換箱2内に車室内に向かう空気流を発生させるブロワ8を配している。
【0007】内外気切換ドア3は、板状を呈し、内気導入口6の周囲に設けられた通風用開口端縁(図示せず)に当接することにより内気導入口6を閉塞し、外気導入口7の周囲に設けられた通風用開口端縁(図示せず)に当接することにより外気導入口7を閉塞する。この内外気切換ドア3は、内外気切換箱2に回動自在に支持された回動軸9を中心にして回動することによって、内気導入口6を全開し、外気導入口7を全閉する内気閉塞位置(全開位置)、内気導入口6および外気導入口7を共に開く半開位置、内気導入口6を全閉し、外気導入口7を全開する外気閉塞位置(全閉位置)に選択的に位置決めされる。
【0008】ドア駆動機構4は、プレート10、レバー11、コントロールワイヤ12および操作レバー13等から構成されている。プレート10は、本発明の駆動部材であって、内外気切換箱2の側壁外面に回動自在に支持され、内外気切換ドア3を伴って回動軸9を中心にして回動する。このプレート10は、一端に内外気切換ドア3の回動軸9の端部を溶接等により固定し、略中央部分に三角形状の打抜き溝14を有し、他端に緩衝材5に当接する突起部15を有する。なお、プレート10は、回動軸9を中心にして回動すると、突起部15を緩衝材5の上面に押し付けた状態で移動する。
【0009】レバー11は、略L字状を呈し、ねじ16を中心にして内外気切換箱2の側壁外面に回動自在に支持されている。このレバー11は、一端にプレート10の打抜き溝14に係合する円柱状の係合部17を有し、他端にピン18を有する。なお、レバー11は、ねじ16を中心にして回動すると、係合部17が打抜き溝14内を動いてプレート10を回動方向に駆動する。コントロールワイヤ12は、内外気切換箱2に対して往復方向に移動可能に取り付けられ、一端が操作レバー13に固定され、他端がレバー11のピン18に係止されている。操作レバー13は、温度コントロールパネル19に摺動自在に取り付けられている。この操作レバー13の往復運動は、コントロールワイヤ12に伝わり、コントロールワイヤ12に係止されているピン18の往復運動として伝わる。
【0010】緩衝材5は、発泡材ウレタンフォーム等の円弧状の弾性部材により形成され、内外気切換箱2の側壁外面とプレート10の突起部15の箱側面との間に配されている。この緩衝材5の上面には、プレート10の突起部15を、プレートの回動方向に対して直交する方向、つまり内外気切換箱2の外方へ押圧する押圧力が働く。また、緩衝材5の高さは、図3のグラフに示したように、外気閉塞位置A近傍、内気閉塞位置B近傍、および半開位置近傍にてその他の部分より高くなるように内外気切換箱2の側壁外面に接着剤等で貼り付けられている。なお、緩衝材5の高さを上述のように変化させるには、緩衝材5の厚さを一定にしておき、内外気切換箱2の側壁外面の形状を凸凹形状にすれば良い。このようにすると、緩衝材5の厚さを一定にしておけば良いので低コストとなる。
【0011】この車両用空気調和装置の切換ドア装置1の作動を図1ないし図4に基づき説明する。ファンスイッチ(図示せず)がオンされると、操作レバー13の設定位置に応じて内気導入口6または外気導入口7よりブロワ8が空気を吸引し送風される。ここで、内外気切換ドア3が内気導入口6を全開している全開位置(図1の破線位置)から、内気導入口6を全閉する全閉位置(図1R>1の二点鎖線の位置)まで内外気切換ドア3を駆動する場合、まず操作レバー13を図1の実線位置より破線位置側に操作する。すると、操作レバー13に接続されたコントロールワイヤ12が図示左方向に引っ張られることによって、レバー11がねじ16を中心にして図1の実線位置より破線位置側に右回転する。このレバー11の右回転に伴い、レバー11の係合部17がプレート10の打抜き溝14内を移動する。
【0012】さらに、プレート10の一端は、内外気切換ドア3の回動軸9に固定されているとともに、内外気切換ドア3と一体的に回動することからレバー11の右回転に伴い、内外気切換ドア3も図1の破線位置から二点鎖線の位置方向への右回転運動を開始する。そして、操作レバー13が図1の破線位置に到達すると、コントロールワイヤ12の移動により、図1の破線に示したように、プレート10が回動軸9を中心に右回転して内外気切換ドア3が内気導入口6の周囲の通風用開口端縁に当接することによって内外気切換ドア3の回転運動が停まる。このため、内気導入口6が全閉され、外気導入口7が全開される。そして、ブロワ8が作動すると、内外気切換箱2内の気圧が下がり、外気導入口7より外気が吸引される。
【0013】なお、内外気切換ドア3が内気閉塞位置または外気閉塞位置に切り替わると、内外気切換ドア3は、内外気切換箱2の通風用開口端縁に当接して打撃音が発生するが、緩衝材5がプレート10の突起部15を押圧して内外気切換箱2の外方へ押圧力をかけており、図3のグラフに示したように、外気閉塞位置Aの近傍と内気閉塞位置Bの近傍にて緩衝材5の高さhを高くしている。このため、緩衝材5によるプレート10の突起部15への押圧力が外気閉塞位置Aの近傍と内気閉塞位置Bの近傍にて強くなり、内外気切換ドア3が通風用開口端縁に当接する速度が遅くなる。したがって、内外気切換ドア3に加工を施すことなく、内外気切換ドア3が通風用開口端縁に当接する際の打撃音を小さくすることができるので、低コストで各種の切換ドアにそのまま利用でき、さらに車室内の遮音性が高くなり、車室内の静粛性を保つことができる。
【0014】また、ブロワ8を作動させた場合、内外気切換ドア3にかかる風圧により、図4のグラフに破線で示したように、操作力が0以下の領域(内外気切換ドア3が自走する領域)が現れる場合があるが、このような場合は操作力が0位の領域(半開位置)において,図3のグラフに示したように、緩衝材5の高さを高くすることにより、緩衝材5のプレート10の突起部15への押圧力により内外気切換ドア3が自走することがなく、操作レバー13の操作力が内外気切換ドア3のストロークLの間で均一となる。よって、操作レバー13をフルストロークする途中で操作力が急変し、操作フィーリングが悪化することを防止できる。
【0015】さらに、従来技術において、内外気切換ドア3の幅方向の長さbは、内外気切換ドア3の切り換えが滑らかに行えるように、内外気切換箱2の側壁間距離aより短くしており、a−bが内外気切換ドア3のがたとなって、車両走行時の振動異音や、内外気切換時の内外気切換ドア3のびびり音を引き起こす可能性があった。しかし、この実施例では、内外気切換ドア3の回動軸9の固定されているプレート10を緩衝材5により内外気切換箱2の外方へ押圧しているので、がたが内外気切換箱2の一方の側壁側に寄せられ、車両走行時の振動異音や内外気切換時の内外気切換ドア3のびびり音をなくすことができる。
【0016】本実施例では、切換ドアを内外気を切り換える内外気切換ドア3に用いた例を示したが、切換ドアを空調モードを切り換える切換ドアや、エアミックスの割合を調節する切換ドア等に用いても良い。本実施例では、内外気切換ドア3をコントロールワイヤ12を用いて駆動する例を示したが、コントロールワイヤ12の代わりに負圧アクチュエータ、サーボモータ等により切換ドアを駆動するドア駆動機構を用いても良い。本実施例では、緩衝材5を内外気切換箱2とプレート10との間に配して緩衝材5によってプレート10を内外気切換箱2の外方へ押圧したが、緩衝材を支持部材(内外気切換箱2または温度コントロールパネル19等)とレバー11、コントロールワイヤ12または操作レバー13との間に配して緩衝材5によって各駆動部材を、各駆動部材の運動方向に対して略直交方向となる方向に押圧しても良い。
【0017】
【発明の効果】本発明は、切換ドアに加工を施すことなく、切換ドアが通風口を全閉する際の打撃音を小さくすることができるので、少量生産の切換ドアであってもコスト高とならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用空気調和装置の切換ドア装置を示した側面図である。
【図2】車両用空気調和装置の切換ドア装置の主要部を示した断面図である。
【図3】内外気切換ドアと緩衝材の高さとの関係を示したグラフである。
【図4】内外気切換ドアと操作レバーの操作力との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1 車両用空気調和装置の切換ドア装置
2 内外気切換箱(支持部材)
3 内外気切換ドア
5 緩衝材
6 内気導入口(通風口)
7 外気導入口(通風口)
10 プレート(駆動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)少なくとも通風口を全開する全開位置、および前記通風口を全閉する全閉位置に設定される切換ドアと、(b)この切換ドアに回動運動を与える駆動部材と、(c)この駆動部材を移動自在に支持する支持部材と、(d)前記駆動部材と前記支持部材との間に配され、少なくとも前記全開位置近傍および前記全閉位置近傍において前記駆動部材を押圧して前記駆動部材の動きを鈍らせる緩衝材とを備えた車両用空気調和装置の切換ドア装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate