説明

車両用空調装置の吸気ダクト構造

【課題】 車両用空調装置に空気を導入する吸気ダクトの前後方向寸法を短縮する。
【解決手段】 空調装置に空気を導入する直線状の吸気ダクト17を、フロントウインドシールドの下縁に沿って車幅方向に延びるように、車室の前端を区画するパネル部材13の前面に固定し、その吸気ダクト17に、空気を導入する空気導入口17a,17bと、パネル部材13の開口13aに連通する空気排出口17dと、底壁17jの最下部に形成されたドレン孔17kとを設けたので、吸気ダクト17の前後方向寸法を小型化することができるだけでなく、カウルトップおよび該カウルトップを覆う車体外板にルーバー等の吸気口を形成する必要をなくして外観を向上させることができ、しかも吸気ダクト17内に水が浸入した場合でも、その水を吸気ダクト17の最下部に形成したドレン孔17kから確実に排出して空調装置への流入を阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の前端を区画するパネル部材の前方に配置した吸気ダクトから取り入れた空気を、前記パネル部材に形成した開口を通して空調装置に導入する車両用空調装置の吸気ダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、その図7および図8に示される第2実施例として、自動車のダッシュパネル4の前方のエンジンルーム10に空調装置用の吸気ダクト50を車幅方向に配置し、その上流端をホイールエプロン56を貫通させてホイールハウス内に開口させるとともに、その下流端を内外気切替えユニット38を介して車体後方に屈曲させてダッシュパネル4の開口に接続したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−328931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1に記載されたものは、車幅方向に延びる吸気ダクト50の下流端が車体後方向に屈曲してダッシュパネル4の開口に接続されるため、吸気ダクト50の車体前後方向の寸法を充分に小型化することができず、ダッシュパネル4の前方のエンジンルーム10が狭い場合には吸気ダクト50の設置スペースを確保するのが難しくなる問題があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、車両用空調装置に空気を導入する吸気ダクトの前後方向寸法を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車室の前端を区画するパネル部材の前方に配置した吸気ダクトから取り入れた空気を、前記パネル部材に形成した開口を通して空調装置に導入する車両用空調装置の吸気ダクト構造において、直線状に形成された前記吸気ダクトは、空気を導入する空気導入口と、前記パネル部材の開口に連通する空気排出口と、底壁の最下部に形成されたドレン孔とを備え、フロントウインドシールドの下縁に沿って車幅方向に延びるように前記パネル部材の前面に固定されることを特徴とする車両用空調装置の吸気ダクト構造が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記吸気ダクトは車幅方向両端部にそれぞれ前記空気導入口を備えるとともに、車幅方向中間部に前記空気排出口を備えることを特徴とする車両用空調装置の吸気ダクト構造が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記吸気ダクトの両端の空気導入口の少なくとも一方は下向きに開口することを特徴とする車両用空調装置の吸気ダクト構造が提案される。
【0009】
尚、実施の形態の第1空気導入口17aおよび第2空気導入口17bは本発明の空気導入口に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、空調装置に空気を導入する直線状の吸気ダクトを、フロントウインドシールドの下縁に沿って車幅方向に延びるように、車室の前端を区画するパネル部材の前面に固定し、その吸気ダクトに、空気を導入する空気導入口と、パネル部材の開口に連通する空気排出口と、底壁の最下部に形成されたドレン孔とを設けたので、吸気ダクトの前後方向寸法を小型化することができるだけでなく、カウルトップおよび該カウルトップを覆う車体外板にルーバー等の吸気口を形成する必要をなくして外観を向上させることができ、しかも吸気ダクト内に水が浸入した場合でも、その水を吸気ダクトの最下部に形成したドレン孔から確実に排出して空調装置への流入を阻止することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、吸気ダクトは車幅方向両端部にそれぞれ空気導入口を備えるとともに、車幅方向中間部に空気排出口を備えるので、二つの空気導入口から充分な量の空気を導入して空気排出口へと供給することができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、吸気ダクトの両端の空気導入口の少なくとも一方を下向きに開口させたので.その空気導入口から異物や水が吸気ダクト内に吸い込まれるのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】小型トラックの車体前部の斜視図。
【図2】図2の2方向分解斜視図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
小型トラックは、ラジエータや負圧ブースタやバッテリを収納する車体前部空間11と、その後方に形成された車室12とがパネル部材13で仕切られており、そのパネル部材13は鉛直方向に延びる下側のダッシュパネル14と、ダッシュパネル14の上縁に結合されるカウルトップパネル15とで構成される。カウルトップパネル15は、ダッシュパネル14と略同一方向(鉛直方向)に延びる縦壁部15aと、縦壁部15aの上端から車体前方に向けて折り曲げられたカウルトップ部15bとを備えており、カウルトップ部15bの上面が車体外板16(図3参照)で覆われる。
【0016】
パネル部材13の後方に配置された空調装置に空気を供給する吸気ダクト17は、合成樹脂をブロー成形した概ね角筒状の部材であって、右端に右向きに開口する第1空気導入口17aが形成され、左端に下向きに開口する第2空気導入口17bが形成され、左端に近い後壁17cに横長の矩形状の空気排出孔17dが形成される。吸気ダクト17の後壁17cには、空気排出口を囲むように位置する3個の取付ブラケット17e〜17gと、車幅方向中央の下面に位置する1個の取付ブラケット17hと、第1空気導入口17aの近傍に位置する1個の取付ブラケット17iとが設けられる。
【0017】
吸気ダクト17の底壁17jは車幅方向右寄り位置で下向きに膨出しており、その最下部にドレン孔17kが開口する。また第1空気導入口17aには、メッシュ18aを備えるキャップ18が装着され、また第2空気導入口17bには、メッシュ19aを備えるキャップ19が装着される。
【0018】
ダッシュパネル14の前面には2本のスタッドボルト20,21が固定されており、これらのスタッドボルト20,21には吸気ダクト17の取付ブラケット17g,17hが貫通してナット22,23で締結される。またカウルトップパネル15の縦壁部15aには3本のスタッドボルト24,25,26が固定されており、これらのスタッドボルト24,25,26には吸気ダクト17の取付ブラケット17e,17f,17iが貫通してナット27,28,29で締結される。
【0019】
その結果、吸気ダクト17は、フロントウインドシールド30の下縁に連なるカウルトップパネル15のカウルトップ部15bの下面に沿うように、パネル部材13の前面に車幅方向に固定される。
【0020】
パネル部材13のカウルトップパネル15のカウルトップ部15bには矩形状の開口13aが形成されており、この開口13aに吸気ダクト17の空気排出口17dがエプトシール31を介して接続される。このとき、吸気ダクト17の空気排出口17dを囲むように突条17mを形成することで、エプトシール31の潰れ代が一定に維持される。そしてパネル部材13の後面には、空調装置に連なる吸気通路32がエプトシール33を介して接続される。
【0021】
しかして、吸気ダクト17の右端の第1空気導入口17aに設けたキャップ18のメッシュ18aおよび左端の第2空気導入口17bに設けたキャップ19のメッシュ19aを通過した空気は、前記メッシュ18a,19aにより異物を除去された状態で吸気ダクト17の内部を流れ、空気排出口17dからパネル部材13の開口13aを通過して吸気通路21に流入し、そこから空調装置に供給される。このように、吸気ダクト17の左右両端の第1、第2空気導入口17a,17bから同時に空気を供給するので.吸気ダクト17の通路断面積を小さくして前後方向寸法を小型化しても、充分な量の空気を空調装置に供給することができる。
【0022】
また第2空気導入口17bは下向きに開口しているので、細かい塵や水が第2空気導入口17bを介して吸気ダクト17の内部に入るのを効果的に阻止することができる。そして、万一吸気ダクト17の内部に水が浸入した場合でも、吸気ダクト17の底壁17jの最も低い部分にドレン孔17kが形成されているため、そのドレン孔17kから水を排出して空調装置への流入を確実に阻止することができる。
【0023】
吸気ダクト17は概ね直成状に形成されており、その後壁17cに直接開設した空気排出口17dをパネル部材13の開口13aにエプトシール31を介して接続したので、吸気ダクト17はパネル部材13の前面との間に殆ど隙間を持たずに固定されることになる。よって、パネル部材13の前方の車体前部空間11が極めて小さい小型トラックのような自動車であっても、その車体前部空間11に吸気ダクト17をコンパクトに配置することができ、他部材との干渉を回避して車体前部空間11の有効利用を図ることができる。
【0024】
また吸気ダクト17は、カウルトップパネル15のカウルトップ部15bとは独立しているので、吸気ダクト17に空気を導入すべく、車体外板16(図3参照)やカウルトップ部15bにルーバー状の開口を形成する必要がなくなり、外観の向上に寄与することができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0026】
例えば、実施の形態ではパネル部材13の開口13aをカウルトップパネル15に設けているが、それをダッシュパネル14に設けても良いし、カウルトップパネル15およびダッシュパネル14の両方に跨がるように設けても良い。
【0027】
また実施の形態では吸気ダクト17の第2空気導入口17bだけを下向きに形成しているが、第1空気導入口17aだけを下向きに形成しても、第1、第2空気導入口17a,17bの両方を下向きに形成しても良い。
【0028】
また実施の形態では、吸気ダクト17をブロー成形しているが、その製造方法は任意である。
【0029】
また実施の形態では自動車として小型トラックを例示したが、本発明は小型トラック以外の任意のタイプの自動車に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
12 車室
13 パネル部材
13a 開口
17 吸気ダクト
17a 第1空気導入口(空気導入口)
17b 第2空気導入口(空気導入口)
17d 空気排出口
17j 底壁
17k ドレン孔
30 フロントウインドシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室(12)の前端を区画するパネル部材(13)の前方に配置した吸気ダクト(17)から取り入れた空気を、前記パネル部材(13)に形成した開口(13a)を通して空調装置に導入する車両用空調装置の吸気ダクト構造において、
直線状に形成された前記吸気ダクト(17)は、空気を導入する空気導入口(17a,17b)と、前記パネル部材(13)の開口(13a)に連通する空気排出口(17d)と、底壁(j)の最下部に形成されたドレン孔(17k)とを備え、フロントウインドシールド(30)の下縁に沿って車幅方向に延びるように前記パネル部材(13)の前面に固定されることを特徴とする車両用空調装置の吸気ダクト構造。
【請求項2】
前記吸気ダクト(17)は車幅方向両端部にそれぞれ前記空気導入口(17a,17b)を備えるとともに、車幅方向中間部に前記空気排出口(17d)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の車両用空調装置の吸気ダクト構造。
【請求項3】
前記吸気ダクト(17)の両端の空気導入口(17a,17b)の少なくとも一方は下向きに開口することを特徴とする、請求項2に記載の車両用空調装置の吸気ダクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−247554(P2010−247554A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95927(P2009−95927)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】