説明

車両用空調装置

【課題】送風機3から空調ユニット1へ空調用空気が流入する部分での圧損および騒音を低減させる。
【解決手段】送風機3は、回転軸を略垂直に配置した両軸モータ37と、両軸モータ37の両側で駆動される二つの遠心多翼ファン38と、遠心多翼ファン38を内部に収容して遠心多翼ファン38の軸方向両面に対応した吸込口40と、遠心多翼ファン38の周方向の一部を略水平に延出して形成された吹出口41とを有する二つのスクロールケーシング39とを備えている。そして、二つの吹出口41は上下に隣接されて1つの吹出口となり、その吹出口高さH2とエバポレータ12の通風部高さH1とが略同等、且つ略同等高さ位置となっている。
これによれば、送風機3からエバポレータ12への気流は急拡大せずに流入し、この流入部分での風速分布が均一となって圧損および騒音を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風方向を略水平とした冷却用熱交換器を収納するとともに、車室内前方で車両幅方向の略中央部に配置された空調ユニットと、この空調ユニットに向かって空調用空気を送風する送風機を備えるとともに、空調ユニットの側方にオフセットして配置された送風機ユニットとを有する、いわゆるセミセンター置きレイアウトの車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の車両用空調装置の部分正面図である。車室内前方で車両幅方向の略中央部に配置された空調ユニット1には、通風方向を略水平とした冷却用熱交換器(エバポレータ)12を収納している。また、この空調ユニット1の側方にオフセットして配置されて空調ユニット1に向かって空調用空気を送風する送風機ユニット2は、駆動モータ37、遠心多翼ファン38、スクロールケーシング39などから成る送風機3と、空調用空気として吸い込む車室内空気と車室外空気との導入割合を制御する内外気切換部4とを備えて、いわゆるセミセンター置きレイアウトの車両用空調装置となっている。
【0003】
通常、遠心多翼ファン38は一つであり、その遠心多翼ファン38は、ファン径D1に対するファン高さH3の比(H3/D1)が0.4〜0.5となるのが最適仕様で高効率、低騒音となるため、このような比率の寸法で設定されている。このため、スクロールケーシング39の吹出口41は、図4に示すように、冷却用熱交換器12の通風部高さH1(図3参照)まで拡大した形状となっているか、もしくは空調ユニット1の空気流入部14(図3参照)内で拡大する構造となっている。
【0004】
また、冷却用熱交換器12の冷媒配管26は、図4に示すように、空調ユニット1と送風機ユニット2の内外気切換部4との間に生じる空間を通して車両前方側のダッシュパネルDP(図2参照)の図示しない貫通孔部まで延出するようにしている。なお、上述した符合は、後述する本発明の実施形態中の符合と対応するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示す従来の車両用空調装置では、スクロールケーシング39の高さが図3で示す冷却用熱交換器12の通風部高さH1より小さいため、吹出口41の部分で拡大させながらつなぐ必要があり、この通風路の拡大によって圧損や騒音が発生するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、送風機から空調ユニットへ空調用空気が流入する部分での圧損および騒音を低減させることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、通風方向を略水平とした冷却用熱交換器(12)を収納するとともに、車室内前方で車両幅方向の略中央部に配置された空調ユニット(1)と、空調ユニット(1)に向かって空調用空気を送風する送風機(3)を備えるとともに、空調ユニット(1)の側方にオフセットして配置された送風機ユニット(2)とを有する車両用空調装置において、
送風機(3)は、回転軸を略垂直に配置した両軸モータ(37)と、両軸モータ(37)の両側で駆動される二つの遠心多翼ファン(38)と、遠心多翼ファン(38)を内部に収容して遠心多翼ファン(38)の軸方向両面に対応した吸込口(40)と遠心多翼ファン(38)の周方向の一部を略水平に延出して形成された吹出口(41)とを有する二つのスクロールケーシング(39)とを備え、二つの吹出口(41)は上下に隣接されて1つの吹出口となり、その吹出口高さ(H2)と冷却用熱交換器(12)の通風部高さ(H1)とが略同等、且つ略同等高さ位置となっていることを特徴としている。
【0008】
この請求項1に記載の発明によれば、送風機(3)から空調ユニット(1)へ空調用空気が流入する部分において、吹出口高さ(H2)と冷却用熱交換器(12)の通風部高さ(H1)とが略同等、且つ略同等高さ位置とすることにより、送風機(3)から冷却用熱交換器(12)への気流は急拡大せずに流入し、この流入部分での風速分布が均一となって圧損および騒音を低減させることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、上下に配置された二つのスクロールケーシング(39)の間に形成された空間(42)に冷却用熱交換器(12)の冷媒配管(26)を通していることを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、空調ユニット(1)は加熱用熱交換器(13)を収納しており、上下に配置された二つのスクロールケーシング(39)の間に形成された空間(42)に加熱用熱交換器(13)の温水配管(27)を通していることを特徴としている。これら請求項2および請求項3に記載の発明によれば、車両用空調装置を無駄なくコンパクトに構成することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置において、両軸モータ(37)にブラシレスモータを用いていることを特徴としている。この請求項4に記載の発明によれば、両軸モータ(37)を扁平にできる分だけ遠心多翼ファン(38)のファン高さ(H3)を大きくして送風機(3)の送風性能を大きくすることができる。
【0012】
また、従来1つの遠心多翼ファン(38)だったところを二つの遠心多翼ファン(38)とすることで、遠心多翼ファン(38)は小型となり高回転が必要となるが、ブラシレスモータとすればその高回転化に対応することが容易となる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置において、遠心多翼ファン(38)のファン径(D1)を、通風部高さ(H1)の3〜6割としていることを特徴としている。また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置において、遠心多翼ファン(38)のファン高さ(H3)を、通風部高さ(H1)の2〜4割としていることを特徴としている。
【0014】
これら請求項5および請求項6に記載の発明によれば、ファン径(D1)に対するファン高さ(H3)の比(H3/D1)が0.4〜0.5となる最適仕様を確保することができ、遠心多翼ファン(38)を高効率、低騒音とすることができる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置において、送風機ユニット(2)は空調用空気として吸い込む車室内空気と車室外空気との導入割合を制御する内外気切換部(4)を有し、内外気切換部(4)を二つのスクロールケーシング(39)の側方に配置していることを特徴としている。この請求項7に記載の発明によれば、二つのスクロールケーシング(39)に対してバランス良く空調用空気を吸い込ませることができる。
【0016】
また、請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の車両用空調装置において、内外気切換部(4)と送風機(3)との間に、内外気切換部(4)から流入する空気を清浄化するフィルタ(36)を縦に配置していることを特徴としている。また、請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の車両用空調装置において、フィルタ(36)を送風機ユニット(2)と略同等高さとしていることを特徴としている。
【0017】
これら請求項8および請求項9に記載の発明によれば、車両前後方向の寸法を小さくしたまま、フィルタ(36)の面積を大きく確保することができる。ちなみに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付した図1〜3を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す部分断面正面図である。また図2は、図1の車両用空調装置の部分断面平面図であり、図3は、図1中のIII−III断面における空調ユニット1の縦断面図である。
【0019】
本実施形態における車両用空調装置の通風系は、大別すると、送風機ユニット2と、空調ユニット1との二つの部分に分れている。図2に示すように、図示しないエンジン(E/G)が設置されたエンジンルームと車室内とは、ファイヤーウォールFWにて仕切られている。送風機ユニット2は、車室内前方の計器盤下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されており、これに対して空調ユニット1は、車室内前方の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0020】
送風機ユニット2は、大別すると、空調ユニット1に向かって空調用空気を送風する送風機3と、その送風機3を内蔵する送風ケース31の空気流れ最上流部に構成され、空調用空気として吸い込む車室外空気(外気)と車室外空気(外気)との導入割合を制御する内外気切換部4とを備えている。送風ケース31は、例えばポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有して強度的にも優れた樹脂の成形品からなる。
【0021】
本実施形態の内外気切換部4は、内気を吸入するための二つの内気吸入口32a、32bと、外気を吸入するための一つの外気吸入口33とが形成されている。そして、メインの内気吸入口32aと外気吸入口33とを選択的に開閉するメインの内外気切換ドア34と、サブの内気吸入口32bを開閉するサブの内外気切換ドア35とが設けられている。
【0022】
これらの二枚の内外気切換ドア34、35は、水平方向に配置されて送風ケース31に回動可能に支持されたそれぞれの回転軸34a、35aと、これらの回転軸34a、35aと一体的に樹脂材で形成されたそれぞれの板部とで構成されており、車両上下方向に回動可能となっている。回転軸34a、35aの一端部は送風ケース31の外部に突出して、図示しないリンク機構で連動して開閉するようになっており、空調装置の内外気制御機構(サーボモータなどのアクチュエータ機構)によって回動制御されるようになっている。
【0023】
内外気切換部4は、本実施形態では送風機3の側方の空気流れ上流部に配置されている。送風機3は、回転軸を略垂直に配置した両軸モータ37と、その両軸モータ37の両側で駆動される二つの遠心多翼ファン(シロッコファン)38と、この遠心多翼ファン38を内部に収容した二つのスクロールケーシング39とを備えている。なお、本実施形態では両軸モータ37として、扁平なブラシレスモータを用いている。
【0024】
また、遠心多翼ファン38は、樹脂材で形成され、ファン径D1(図2参照)を、後述するエバポレータ(冷却用熱交換器)12の通風部高さH1(図3参照)の3〜6割としており、同様にファン高さH3(図1参照)を、先の通風部高さH1の2〜4割としている。
【0025】
なお、本実施形態で、両軸モータ37のシャフトを除くモータ本体部の高さは、エバ通風部高さの2〜4割に相当している。スクロールケーシング39は、例えばポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有して強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、図1に示すように、遠心多翼ファン38の軸方向両面に対応した吸込口40と、遠心多翼ファン38の周方向に対数らせん形状で、その一部を略水平に延出して形成された吹出口41とを備えている。
【0026】
その二つの吹出口41は、送風ケース31より突出され、上下に隣接されて1つの吹出口として空調ユニット1と連通しており、その吹出口高さH2(図1参照)は、先の通風部高さH1とが略同等、且つ略同等高さ位置としている。また、内外気切換部4と送風機3との間には、内外気切換部4から流入する空気を清浄化するフィルタ36を、縦長にして送風ケース31と略同等高さとして配置している。このような送風機3により、内気吸入口32a、32bもしくは外気吸入口33のいずれかから吸入された空調用空気が、後述する各開口部20、22、24に向けて送風されている。
【0027】
次に、空調ユニット1の構造概要を、主に図3を用いて説明する。空調ユニット1は、1つの共通の空調ケース11内にエバポレータ(冷却用熱交換器)12とヒーターコア(加熱用熱交換器)13を両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。空調ケース11はポリプロピレンのような、ある程度弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、図3の上下方向(車両上下方向)に分割面を有する左右2分割のケースとなっている。
【0028】
この左右2分割の空調ケース11は、上記エバポレータ12、ヒーターコア13、後述のドア16、21、25などの機器を収納した後に、金属バネクリップやネジなどの締結手段により一体に結合されて空調ケース11を構成する。空調ユニット1は、車両の前後および上下方向に対して、図1に示す形態で配置されており、空調ケース11の最も車両前方部の部位には、空気流入口14が配設されている。
【0029】
この空気流入口14は、空調ケース11のうち助手席側の側面に開口しており、前述の送風機3の吹出口41が接続されて、送風機ユニット2から送風される空調用空気が流入する。空調ケース11内において、空気流入口14直後の部位には、エバポレータ12が空気通路の全域を横切るように配置されている。
【0030】
このエバポレータ12は、周知の如く、図示しない冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調用空気から吸収して空調用空気を冷却するものである。ここでエバポレータ12は、図3に示すように、車両前後方向には薄型で通風方向を略水平とし、車両上下方向に高さ方向が向く形態で空調ケース11内に設置されている。
【0031】
また、エバポレータ12は周知の積層型のものであり、アルミニウムなどの金属薄板を2枚張り合わせて構成した偏平チューブ間にコルゲートフィンを介在させ、多数積層配置して一体ろう付けしたものである。そして、エバポレータ12の側面に接続された冷媒配管26は、上下に配置された二つのスクロールケーシング39の間に形成された空間42を通って(図1参照)、その先端側をファイヤーウォールFWに形成された図示しない貫通孔部まで延出させている。
【0032】
エバポレータ12の空気流れ下流側(車両後方側)には、所定の間隔を開けてヒーターコア13が隣接配置されている。このヒーターコア13は、エバポレータ12を通過した冷風を再加熱するものであり、その内部に高温のエンジン冷却水(温水)が流れ、この冷却水を熱源として空気を加熱するものである。このヒーターコア13もエバポレータ12と同様に、車両前後方向には薄型で、車両上下方向に高さ方向が向く形態で空調ケース11内に設置されている。
【0033】
また、ヒーターコア13は周知のものであり、アルミニウムなどの金属薄板を溶接などにより断面偏平状に接合してなる偏平チューブ間にコルゲートフィンを介在させ、多数積層配置して一体ろう付けしたものである。そして、ヒーターコア13の側面に接続された温水配管27は、本実施形態では空調ユニット1の側面に沿ってその先端側をファイヤーウォールFWに形成された図示しない貫通孔部まで延出させている。
【0034】
空調ケース11内で、ヒーターコア13の車両前方側の上方部位には、このヒーターコア13をバイパスして空気(冷風)が流れる冷風バイパス通路15が形成されている。そして、空調ケース11内で、エバポレータ12とヒーターコア13との間には、ヒーターコア13を流れて加熱されて温風となる風量と、ヒーターコア13をバイパスして冷風のままの風量(すなわち、冷風バイパス通路15を流れる風量)との風量割合を調整する平板状のエアミックスドア16が配置されている。
【0035】
エアミックスドア16は、水平方向に配置された回転軸16aと一体に結合されており、この回転軸16aと共に車両上下方向に回動可能になっている。このエアミックスドア16は、上記風量割合の調整により空気温度を調整する温度調整手段を成している。
【0036】
エアミックスドア16は、空調ケース11に回動可能に支持された回転軸16aと、この回転軸16aと一体に樹脂材で形成された板部16bとで構成されている。そして、回転軸16aの一端部は空調ケース11の外部に突出して図示しないリンク機構に結合され、空調装置の温度制御機構(サーボモータなどのアクチュエータ機構)により回動制御されるようになっている。
【0037】
空調ケース11内において、ヒーターコア13の空気下流側(車両後方側の部位)には、ヒーターコア13との間に所定間隔をあけて上下方向に延びる壁面17が空調ケース11に一体成形されている。この壁面17によりヒーターコア13の直後から上方に向かう温風通路18が形成され、この温風通路18の下流側(上方側)はヒーターコア13の上方部において冷風バイパス通路15と合流し、冷風と温風の混合を行う冷温風混合空間19を形成している。
【0038】
空調ケース11の上面部において、車両前方側の部位にはデフロスタ開口部20が開口している。このデフロスタ開口部20は、冷温風混合空間19から温度制御された空調空気が第1入口孔20aを通って流入するものであり、図示しないデフロスタダクトを介して車室内のデフロスタ吹出口に接続されており、このデフロスタ吹出口から、車両前面窓ガラスの内面に向けて主に温風の空調風を吹き出すようになっている。
【0039】
空調ケース11内には、第2入口孔23が形成され、この第2入口孔23の下流に形成された空間に、フェイス開口部22と第3入口孔24aとが形成されている。そして、第1入口孔20aと第2入口孔23とは、デフロスタドア21によって選択的に開閉される。すなわち、デフロスタ開口部20と第2入口孔23とはデフロスタドア21によって開閉される。このデフロスタドア21は、空調ケース11に回動可能に支持され、水平方向に配置された回転軸21aと、この回転軸21aと樹脂材で一体に形成された板部21bとで構成されている。
【0040】
また、第3入口孔24aの空気流れ下流側には、フット開口部24が設けられている。そして、フェイス開口部22と第3入口孔24aとは、フットフェイスドア25によって選択的に開閉される。すなわち、フェイス開口部22とフット開口部24とはフットフェイスドア25によって開閉される。このフットフェイスドア25は、空調ケース11に回動可能に支持され、水平方向に配置された回転軸25aと、この回転軸25aと樹脂材で一体に形成された板部25bとで構成されている。
【0041】
デフロスタドア21とフットフェイスドア25とは、吹出モード切換用のドア手段であり、図示しないリンク機構に連結されて、吹出モード切換機構(サーボモータなどのアクチュエータ機構)により連動制御されるようになっている。そして、フェイス開口部22は、図示しないセンタフェイスダクトを介して車室内前方の計器盤左右方向中央部の上方側に配置された図示しないセンタフェイス吹出口に接続され、この吹出口から車室内の前席乗員頭胸部に向けて主に冷風の空調風を吹き出すようになっている。
【0042】
また、フェイス開口部22は、図示しないサイドフェイスダクトを介して計器盤左右両端部の上方側に配置された図示しないサイドフェイス吹出口に接続され、この吹出口から車室内の前席乗員頭胸部、もしくは車両前席の側面窓ガラスに向けて主に冷風の空調風を吹き出すようになっている。
【0043】
なお、サイドフェイス吹出口は周知の如く、手動操作できる風向き変更装置を備えており、この風向き変更装置の風向板の方向調整により、吹出空気を車室内の前席乗員頭胸部、もしくは車両前席の側面窓ガラスに向けて空調風の吹出方向の調節が可能となっている。また、フット開口部24は、図示しないフットダクトを介して車室内の図示しないフット吹出口に接続され、このフット吹出口から前席乗員の足元に向けて主に温風の空調風を吹き出すようになっている。
【0044】
尚、上述した各ドア16、21、25の各回転軸16a、21a、25aは長さが略同一である。また各板部16b、21b、25bは、本実施形態では樹脂製のドア基板を有し、このドア基板の表裏両面にウレタンフォームのような弾性シール材を貼着した構造となっている。
【0045】
上記構成の空調ユニット1は、周知のように、図示しない空調操作パネルに設けられた各種操作部材からの操作信号、および空調制御用の各種センサーからのセンサー信号が入力される図示しない制御装置を備えており、この制御装置の出力信号により各ドア16、21、25、34、35の回動位置が制御されるようになっている。
【0046】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、送風機3は、回転軸を略垂直に配置した両軸モータ37と、両軸モータ37の両側で駆動される二つの遠心多翼ファン38と、遠心多翼ファン38を内部に収容して遠心多翼ファン38の軸方向両面に対応した吸込口40と、遠心多翼ファン38の周方向の一部を略水平に延出して形成された吹出口41とを有する二つのスクロールケーシング39とを備えている。そして、二つの吹出口41は上下に隣接されて1つの吹出口となり、その吹出口高さH2とエバポレータ12の通風部高さH1とが略同等、且つ略同等高さ位置となっている。
【0047】
これによれば、送風機3から空調ユニット1へ空調用空気が流入する部分において、吹出口高さH2とエバポレータ12の通風部高さH1とが略同等、且つ略同等高さ位置とすることにより、送風機3からエバポレータ12への気流は急拡大せずに流入し、この流入部分での風速分布が均一となって圧損および騒音を低減させることができる。また、送風機3の遠心多翼ファン38が小径となることより、送風機ユニット2を車両前後方向に薄型として、助手席側の居住スペースを拡大することができる。また、遠心多翼ファン38が低トルクとなることより、省電力とすることができる。
【0048】
また、上下に配置された二つのスクロールケーシング39の間に形成された空間42にエバポレータ12の冷媒配管26を通している。これによれば、車両用空調装置を無駄なくコンパクトに構成することができる。また、両軸モータ37にブラシレスモータを用いている。
【0049】
これによれば、両軸モータ37を扁平にできる分だけ遠心多翼ファン38のファン高さH3を大きくして送風機3の送風性能を大きくすることができる。また、従来1つの遠心多翼ファン38だったところを二つの遠心多翼ファン38とすることで、遠心多翼ファン38は小型となり高回転が必要となるが、ブラシレスモータとすればその高回転化に対応することが容易となる。
【0050】
また、遠心多翼ファン38のファン径D1を、通風部高さH1の3〜6割としている。また、遠心多翼ファン38のファン高さH3を、通風部高さH1の2〜4割としている。これらによれば、ファン径D1に対するファン高さH3の比(H3/D1)が0.4〜0.5となる最適仕様を確保することができ、遠心多翼ファン38を高効率、低騒音とすることができる。
【0051】
また、送風機ユニット2は空調用空気として吸い込む車室内空気と車室外空気との導入割合を制御する内外気切換部4を有し、内外気切換部4を二つのスクロールケーシング39の側方に配置している。これによれば、二つのスクロールケーシング39に対してバランス良く空調用空気を吸い込ませることができる。
【0052】
また、内外気切換部4と送風機3との間に、内外気切換部4から流入する空気を清浄化するフィルタ36を縦に配置している。また、フィルタ36を送風機ユニット2と略同等高さとしている。これらによれば、車両前後方向の寸法を小さくしたまま、フィルタ36の面積を大きく確保することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、上下に配置された二つのスクロールケーシング39の間に形成された空間42に、エバポレータ12の冷媒配管26を通しているが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、先の空間42にヒーターコア13の温水配管27を通しても良い。また、冷媒配管26と温水配管27との両方を通しても良い。これらによっても上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、上述の実施形態では、スクロールケーシング39の吹出口41と、空調ケース11の空気流入口14とを直接接続した構造としたが、これらの間をつなぎダクトで接続し、このつなぎダクトに形成した空間42に冷媒配管26や温水配管27を通す構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す部分断面正面図である。
【図2】図1の車両用空調装置の部分断面平面図である。
【図3】図1中のIII−III断面における空調ユニット1の縦断面図である。
【図4】従来の車両用空調装置の部分正面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…空調ユニット
2…送風機ユニット
3…送風機
4…内外気切換部
12…エバポレータ(冷却用熱交換器)
13…ヒーターコア(加熱用熱交換器)
26…冷媒配管
27…温水配管
36…フィルタ
37…両軸モータ
38…遠心多翼ファン
39…スクロールケーシング
40…吸込口
41…吹出口
42…空間
D1…ファン径
H1…通風部高さ
H2…吹出口高さ
H3…ファン高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風方向を略水平とした冷却用熱交換器(12)を収納するとともに、車室内前方で車両幅方向の略中央部に配置された空調ユニット(1)と、
前記空調ユニット(1)に向かって空調用空気を送風する送風機(3)を備えるとともに、前記空調ユニット(1)の側方にオフセットして配置された送風機ユニット(2)とを有する車両用空調装置において、
前記送風機(3)は、回転軸を略垂直に配置した両軸モータ(37)と、
前記両軸モータ(37)の両側で駆動される二つの遠心多翼ファン(38)と、
前記遠心多翼ファン(38)を内部に収容して前記遠心多翼ファン(38)の軸方向両面に対応した吸込口(40)と前記遠心多翼ファン(38)の周方向の一部を略水平に延出して形成された吹出口(41)とを有する二つのスクロールケーシング(39)とを備え、
二つの前記吹出口(41)は上下に隣接されて1つの吹出口となり、その吹出口高さ(H2)と前記冷却用熱交換器(12)の通風部高さ(H1)とが略同等、且つ略同等高さ位置となっていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
上下に配置された二つの前記スクロールケーシング(39)の間に形成された空間(42)に前記冷却用熱交換器(12)の冷媒配管(26)を通していることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ユニット(1)は加熱用熱交換器(13)を収納しており、上下に配置された二つの前記スクロールケーシング(39)の間に形成された前記空間(42)に前記加熱用熱交換器(13)の温水配管(27)を通していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記両軸モータ(37)にブラシレスモータを用いていることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記遠心多翼ファン(38)のファン径(D1)を、前記通風部高さ(H1)の3〜6割としていることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記遠心多翼ファン(38)のファン高さ(H3)を、前記通風部高さ(H1)の2〜4割としていることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記送風機ユニット(2)は前記空調用空気として吸い込む車室内空気と車室外空気との導入割合を制御する内外気切換部(4)を有し、前記内外気切換部(4)を二つの前記スクロールケーシング(39)の側方に配置していることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記内外気切換部(4)と前記送風機(3)との間に、前記内外気切換部(4)から流入する空気を清浄化するフィルタ(36)を縦に配置していることを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記フィルタ(36)を前記送風機ユニット(2)と略同等高さとしていることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−254576(P2008−254576A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98749(P2007−98749)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】