説明

車両用空調装置

【課題】センサ取付部材が温度センサを保持して蒸発器に脱着可能に装着される車両用空調装置において、空調ケースを分解することなく温度センサを交換可能にする。
【解決手段】空調ケース1には、温度センサ5が通過可能な開口12を設ける。センサ素子51が挿入されるセンサ挿入孔32を有するピース3を、蒸発器2に固定する。センサ取付部材4は、棒状部41の一端側にセンサ素子51を保持し、棒状部41の他端側に開口12を覆う蓋43が設けられ、さらにハーネス52が蓋43を貫通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサを備える車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置は、蒸発器の温度と相関のある温度を検出する温度センサを備えている。そして、温度センサを保持したセンサ取付部材を蒸発器のフィンに差し込んで固定することにより、温度センサを蒸発器の所定位置に配置するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−127641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の車両用空調装置は、温度センサを交換する際には空調ケースを分解する必要があるため、より詳細には、少なくとも温度センサが見える位置まで蒸発器を空調ケースから引き出す必要があるため、温度センサの交換作業に時間がかかるという問題があった。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、空調ケースを分解することなく温度センサを交換可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴では、空調ケース(1)に形成され、温度センサ(5)が通過可能な開口(12)と、棒状部(41)の一端側にセンサ素子(51)を保持し、棒状部(41)の他端側に開口(12)を覆う蓋(43)が設けられ、さらにハーネス(52)が蓋(43)を貫通して、空調ケース(1)に脱着可能に装着されるセンサ取付部材(4)と、蒸発器(2)に固定され、センサ素子(51)が挿入されるセンサ挿入孔(32)を有するピース(3)とを備えている。
【0006】
このようにすれば、温度センサ(5)を蒸発器(2)から外す際には、温度センサ(5)およびセンサ取付部材(4)をセンサ挿入孔(32)の軸線方向に移動させてセンサ素子(51)をピース(3)のセンサ挿入孔(32)から外した後に、温度センサ(5)およびセンサ取付部材(4)を開口(12)から空調ケース(1)外に取り出すことができる。
【0007】
一方、温度センサ(5)を蒸発器(2)に装着する際には、温度センサ(5)およびセンサ取付部材(4)を開口(12)から空調ケース(1)内に挿入した後に、温度センサ(5)およびセンサ取付部材(4)をセンサ挿入孔(32)の軸線方向に移動させてセンサ素子(51)をセンサ挿入孔(32)に挿入することにより、温度センサ(5)をピース(3)を介して蒸発器(2)に固定することができる。
【0008】
したがって、空調ケース(1)を分解することなく温度センサ(5)を交換することができる。
【0009】
本発明の第2の特徴では、棒状部(41)の中間部にセンサ素子(51)を保持するとともに、空調ケース(1)に脱着可能に装着されるセンサ取付部材(4)と、蒸発器(2)に固定され、センサ素子(51)が挿入されるセンサ挿入孔(32)を有するピース(3)とを備え、空調ケース(1)は、温度センサ(5)が通過可能な開口(12)と、この開口(12)に対向する位置に設けられて棒状部(41)の一端側を支持する支持部(14)とを備え、センサ取付部材(4)は、棒状部(41)の他端側に開口(12)を覆う蓋(43)が設けられ、ハーネス(52)が蓋(43)を貫通し、さらに棒状部(41)が中間部で折り曲げ可能に構成されて、蓋(43)が開口(12)を覆うとともに棒状部(41)の他端側が支持部(14)に支持された状態のとき、棒状部(41)の中間部がピース(3)側に凸に折れ曲がってセンサ素子(51)がセンサ挿入孔(32)に挿入されるようにしている。
【0010】
このようにすれば、温度センサ(5)を蒸発器(2)から外す際には、棒状部(41)の中間部をピース(3)から遠ざかる向きに移動させてセンサ素子(51)をピース(3)のセンサ挿入孔(32)から外した後に、温度センサ(5)およびセンサ取付部材(4)を開口(12)から空調ケース(1)外に取り出すことができる。
【0011】
一方、温度センサ(5)を蒸発器(2)に装着する際には、温度センサ(5)およびセンサ取付部材(4)を開口(12)から空調ケース(1)内に挿入した後に、棒状部(41)の中間部がピース(3)に近づく向きに棒状部(41)を折り曲げてセンサ素子(51)をセンサ挿入孔(32)に挿入することにより、温度センサ(5)をピース(3)を介して蒸発器(2)に固定することができる。
【0012】
したがって、空調ケース(1)を分解することなく温度センサ(5)を交換することができる。
【0013】
第1の特徴および第2の特徴において、センサ取付部材(4)が空調ケース(1)に装着された状態での棒状部(41)の長手方向に沿ってセンサ挿入孔(32)を複数個設けるようにすれば、温度センサ(5)を蒸発器(2)に装着する際に、センサ素子(51)とセンサ挿入孔(32)との位置関係がばらついていても、センサ素子(51)は複数個のセンサ挿入孔(32)のいずれかに挿入される。
【0014】
また、第1の特徴および第2の特徴において、センサ挿入孔(32)をテーパ形状にすれば、温度センサ(5)を蒸発器(2)に装着する際に、センサ素子(51)とセンサ挿入孔(32)との位置関係がばらついていても、センサ素子(51)はセンサ挿入孔(32)に容易に挿入される。
【0015】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係る車両用空調装置における空調ユニットの要部の構成を示す図、図2は図1の装置における温度センサの脱着途中工程を示す図、図3は図1のセンサ取付部材および温度センサを示す分解斜視図である。
【0017】
図1〜3に示すように、空調ユニットは、樹脂製の空調ケース1を備えている。空調ケース1は、ブロアユニット(図示せず)から送られた空気を流通させて最終的に車室内に吹き出すための通路11を形成するものであり、この通路11中に蒸発器2が設置されている。
【0018】
空調ケース1には空調ケース1の内外を連通させる開口12が形成されている。開口12は、後述する温度センサおよびセンサ取付部材を蒸発器2に対して脱着する際に利用されるものであり、蒸発器2における空気下流側端面21よりも空気下流側に設けられている。また、空調ケース1には、タッピングスクリュ6が螺合されるタッピング穴13が開口12の近傍に形成されている。
【0019】
蒸発器2は、図示しない圧縮機、凝縮器、受液器、減圧器とともに配管結合された周知の冷凍サイクルを構成する熱交換器であり、蒸発器2は冷媒と空気との間で熱交換して空気を冷却・除湿するものである。具体的には、蒸発器2は、冷媒を流通させる複数のチューブが積層配置され、隣接するチューブ間に空気と冷媒との間の熱交換を促進させる波状のフィンが配置されている。
【0020】
蒸発器2には、ピース3とセンサ取付部材4によって温度センサ5が装着されている。この温度センサ5は、蒸発器2の表面温度に応じた電気信号を出力するセンサ素子51と、このセンサ素子51に接続されてセンサ素子51の電気信号を空調ケース1外のECU(図示せず)に伝達するハーネス52とを備えている。そして、センサ素子51にて検出された蒸発器2の表面温度の情報は、吹出空気温度、吹出モードなどの各種の空調制御に用いられる。なお、センサ素子51は、サーミスタを用いることができる。
【0021】
センサ取付部材4は、樹脂製であり、円柱状の棒状部41の一端側に保持部42を備え、棒状部41の他端側に蓋43が設けられている。センサ素子51は、一部が保持部42内に収納され、残部が保持部42から突出している。ハーネス52は、一部が棒状部41内に収納され、残部が蓋43を貫通して外に出ている。蓋43は、空調ケース1の開口12を覆うものであり、タッピングスクリュ6を通す貫通穴44が形成されている。
【0022】
ピース3は、樹脂製であり、平板状の板部31には、センサ素子51が挿入されるセンサ挿入孔32が形成されている。このセンサ挿入孔32は、センサ取付部材4が空調ケース1に装着された状態での棒状部41の長手方向に沿って、換言すると、温度センサの交換時に温度センサ5およびセンサ取付部材4を蒸発器2の空気下流側端面21と平行に移動させる際の移動方向に沿って、複数個(本例では2個)設けられている。
【0023】
また、センサ挿入孔32は、ピース3が蒸発器2に固定された状態において、空気下流側から空気上流側に向かって径が小さくなるテーパ形状になっている。そして、センサ挿入孔32は、最大径部の径はセンサ素子51の径よりも十分に大きく、最小径部の径はセンサ素子51の径よりも僅かに小さくなっている。
【0024】
ピース3は、板部31の一端面から突出する2つの突起部33を備えている。そして、この突起部33を蒸発器2のフィン間に挿入することにより、ピース3が蒸発器2に固定される。また、センサ素子51の先端部もフィン間に挿入されて、蒸発器2の表面温度を検出可能になっている。
【0025】
次に、温度センサ5の交換作業の手順について説明する。温度センサ5およびセンサ取付部材4を蒸発器2から外す際には、まず、図1の状態からタッピングスクリュ6を外す。
【0026】
続いて、蓋43を持って温度センサ5およびセンサ取付部材4をセンサ挿入孔32の軸線方向(より詳細には、蒸発器2の空気下流側端面21から遠ざかる向き)に移動させて、センサ素子51をセンサ挿入孔32から外す(図2の状態)。この後、温度センサ5およびセンサ取付部材4を空気下流側端面21と平行に移動させて、温度センサ5およびセンサ取付部材4を開口12から空調ケース1外に取り出す。
【0027】
続いて、別途用意した交換用の温度センサ5およびセンサ取付部材4を蒸発器2に装着する。この際には、温度センサ5およびセンサ取付部材4を開口12から空調ケース1内に挿入し、蓋43が空調ケースに当たる位置まで温度センサ5およびセンサ取付部材4を空気下流側端面21と平行に移動させる(図2の状態)。
【0028】
この後、温度センサ5およびセンサ取付部材4をセンサ挿入孔32の軸線方向(より詳細には、蒸発器2の空気下流側端面21に近づく向き)に移動させて、センサ素子51をセンサ挿入孔32に挿入し、続いて、タッピングスクリュ6により蓋43を空調ケース1に固定する。これにより、センサ素子51はピース3を介して蒸発器2に固定される。因みに、センサ挿入孔32の最小径部の径はセンサ素子51の径よりも僅かに小さくなっているため、センサ素子51は軽圧入状態になる。
【0029】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によると、空調ケース1を分解することなく温度センサ5を交換することができる。
【0030】
また、センサ挿入孔32を複数個設けているため、センサ素子51をセンサ挿入孔32に挿入する際にセンサ素子51とセンサ挿入孔32との位置関係がばらついていても、センサ素子51は複数個のセンサ挿入孔32のいずれかに挿入される。
【0031】
さらに、センサ挿入孔32をテーパ形状にしているため、センサ素子51をセンサ挿入孔32に挿入する際にセンサ素子51とセンサ挿入孔32との位置関係がばらついていても、センサ素子51はセンサ挿入孔32に容易に挿入される。
【0032】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は第2実施形態に係る車両用空調装置における空調ユニットの要部の構成を示す図、図5は図4の装置における温度センサの脱着途中工程を示す図である。なお、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
本実施形態のセンサ取付部材4は、樹脂製であり、円柱状の棒状部41の一端側が、空調ケース1に設けた支持部14にて揺動自在に支持されるようになっている。なお、空調ケース1の支持部14は、開口12に対向する位置に設けられている。
【0034】
また、センサ取付部材4は、棒状部41の中間部に保持部42が配置され、棒状部41の他端側に蓋43が設けられている。棒状部41には、棒状部41を中間部で折り曲げ可能にするために切り欠き45が形成されている。より詳細には、切り欠き45は棒状部41の中間部に位置し、棒状部41はその中間部がピース3側に凸に折り曲がることができる。
【0035】
次に、温度センサ5の交換作業の手順について説明する。温度センサ5およびセンサ取付部材4を蒸発器2から外す際には、まず、図4の状態からタッピングスクリュ6を外す。
【0036】
続いて、蓋43を持って保持部42をセンサ挿入孔32の軸線方向(より詳細には、蒸発器2の空気下流側端面21から遠ざかる向き)に移動させて、センサ素子51をセンサ挿入孔32から外す(図5の状態)。この後、温度センサ5およびセンサ取付部材4を空気下流側端面21と平行に移動させて、温度センサ5およびセンサ取付部材4を開口12から空調ケース1外に取り出す。
【0037】
続いて、別途用意した交換用の温度センサ5およびセンサ取付部材4を蒸発器2に装着する。この際には、温度センサ5およびセンサ取付部材4を開口12から空調ケース1内に挿入し、棒状部41の一端側が支持部14に当たる位置まで温度センサ5およびセンサ取付部材4を空気下流側端面21と平行に移動させる(図4の状態)。
【0038】
この後、棒状部41の中間部がピース3側に凸になるように棒状部41を折り曲げることにより、保持部42をセンサ挿入孔32の軸線方向(より詳細には、蒸発器2の空気下流側端面21に近づく向き)に移動させて、センサ素子51をセンサ挿入孔32に挿入し、続いて、タッピングスクリュ6により蓋43を空調ケース1に固定する。これにより、センサ素子51はピース3を介して蒸発器2に固定される。
【0039】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によると、空調ケース1を分解することなく温度センサ5を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置における空調ユニットの要部の構成を示す図である。
【図2】図1の装置における温度センサの脱着途中工程を示す図である。
【図3】図1のセンサ取付部材および温度センサを示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置における空調ユニットの要部の構成を示す図である。
【図5】図4の装置における温度センサの脱着途中工程を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1…空調ケース、2…蒸発器、3…ピース、4…センサ取付部材、5…温度センサ、11…空気の通路、12…開口、32…センサ挿入孔、41…棒状部、43…蓋、51…センサ素子、52…ハーネス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に吹き出す空気の通路(11)を形成する空調ケース(1)と、この空調ケース(1)内に設置されて空気と冷媒との間で熱交換する蒸発器(2)と、この蒸発器(2)の温度と相関のある温度をセンサ素子(51)で検出してハーネス(52)により電気信号を前記空調ケース(1)の外に伝達する温度センサ(5)とを備える車両用空調装置において、
前記空調ケース(1)に形成され、前記温度センサ(5)が通過可能な開口(12)と、
棒状部(41)の一端側に前記センサ素子(51)を保持し、前記棒状部(41)の他端側に前記開口(12)を覆う蓋(43)が設けられ、さらに前記ハーネス(52)が前記蓋(43)を貫通して、前記空調ケース(1)に脱着可能に装着されるセンサ取付部材(4)と、
前記蒸発器(2)に固定され、前記センサ素子(51)が挿入されるセンサ挿入孔(32)を有するピース(3)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車室内に吹き出す空気の通路(11)を形成する空調ケース(1)と、この空調ケース(1)内に設置されて空気と冷媒との間で熱交換する蒸発器(2)と、この蒸発器(2)の温度と相関のある温度をセンサ素子(51)で検出してハーネス(52)により電気信号を伝達する温度センサ(5)とを備える車両用空調装置において、
棒状部(41)の中間部に前記センサ素子(51)を保持するとともに、前記空調ケース(1)に脱着可能に装着されるセンサ取付部材(4)と、
前記蒸発器(2)に固定され、前記センサ素子(51)が挿入されるセンサ挿入孔(32)を有するピース(3)とを備え、
前記空調ケース(1)は、前記温度センサ(5)が通過可能な開口(12)と、この開口(12)に対向する位置に設けられて前記棒状部(41)の一端側を支持する支持部(14)とを備え、
前記センサ取付部材(4)は、前記棒状部(41)の他端側に前記開口(12)を覆う蓋(43)が設けられ、前記ハーネス(52)が前記蓋(43)を貫通し、さらに前記棒状部(41)が中間部で折り曲げ可能に構成されて、前記蓋(43)が前記開口(12)を覆うとともに前記棒状部(41)の他端側が前記支持部(14)に支持された状態のとき、前記棒状部(41)の中間部が前記ピース(3)側に凸に折れ曲がって前記センサ素子(51)が前記センサ挿入孔(32)に挿入されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
前記センサ挿入孔(32)は、前記センサ取付部材(4)が前記空調ケース(1)に装着された状態での前記棒状部(41)の長手方向に沿って複数個設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記センサ挿入孔(32)は、テーパ形状になっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−285090(P2008−285090A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133688(P2007−133688)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】