説明

車両用空調装置

【課題】冷房運転、暖房運転のいずれにおいてもヒートシンク144からの放熱効果を高める。
【解決手段】冷房運転時には、室外熱交換器122からヒートシンク144へと通風させ、暖房運転時には、ヒートシンク144から室外熱交換器122へと通風させる通風方向切替手段122a、130を備える。
これにより、冷房運転時には、冷却風として外気を室外熱交換器122に供給でき、その室外熱交換器122を通過した冷却風がヒートシンク144に供給され、ヒートシンク144周りに強制対流を起こすことより、放熱効果を高めることができる。また、暖房運転時には、ヒートシンク144周りを強制対流してヒートシンク144を冷却するとともに、そのヒートシンク144から吸熱した空気が次に室外熱交換器122に流通することより、発熱部143の排熱を利用して暖房運転時の熱交換量を増大させ、暖房能力を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラック車両の運転室の屋根上に設置されて、停車時に補助的に使用されるパッケージエアコンに用いて好適な車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記の特許文献1には、室外ユニット内に、作動時に発熱するパワーモジュールと、このパワーモジュールに熱結合したヒートシンクとを備え、室外熱交換器と膨張弁との間に、補助室外熱交換器と第1開閉弁とを直列接続し、室外熱交換器と補助室外熱交換器との間と、第1開閉弁と膨張弁との間に、第2開閉弁を介してバイパス路を接続する一方、ヒートシンクを補助室外熱交換器と熱結合させ、暖房運転時に、第1開閉弁を開き、第2開閉弁を閉じように制御する空気調和機が開示されている。
【0003】
そして、この空気調和機は、室外熱交換器と直列に設けた補助室外熱交換器を、熱結合させたヒートシンクから加熱することにより、パワーモジュールの排熱を利用して暖房運転時の熱交換量を増大させて暖房能力を向上させている。
【特許文献1】特開2002−156149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、暖房運転時に暖房性能の向上とパワーモジュールの放熱促進とが同時に行われるが、冷房運転時にはパワーモジュールの放熱促進を行うことができないという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、冷房運転、暖房運転のいずれにおいてもヒートシンクからの放熱効果を高めることのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(120)は、ヒートポンプサイクル(120)内の冷媒を圧縮する圧縮機(121)と、圧縮機(121)を駆動する電動機(121a)と、ヒートポンプサイクル(120)の冷房運転時には高圧側熱交換器として作用し、ヒートポンプサイクル(120)の暖房運転時には低圧側熱交換器として作用する室外熱交換器(122)と、室外熱交換器(122)に通風させる電動式の送風機(122a)と、外部の商用電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源制御部(140)と、エンジンの駆動により発電される電気または商用電源から供給される電気を蓄電する蓄電手段とを有し、電動機(121a)および送風機(122a)は、電源制御部(140)または前記蓄電手段から制御電圧を供給されるとともに、電源制御部(140)は、電圧の変換によって発熱する発熱部(143)と、発熱部(143)を冷却する放熱部材(144)とを有し、放熱部材(144)は、送風機(122a)が流通させる空気の流通領域内に配設されるとともに、
冷房運転時には、送風機(122a)により生成される冷却風を、室外熱交換器(122)から放熱部材(144)へと通風させ、暖房運転時には、冷却風を放熱部材(144)から室外熱交換器(122)へと通風させる通風方向切替手段(122a、130)を備えることを特徴としている。
【0007】
この請求項1に記載の発明によれば、冷房運転時には、冷却風として装置外空気を室外熱交換器(122)に供給できるとともに、その室外熱交換器(122)を通過した冷却風が放熱部材(144)に供給され、放熱部材(144)周りに強制対流を起こすことより、放熱効果を高めることができる。
【0008】
また、暖房運転時には、放熱部材(144)周りを強制対流して放熱部材(144)を冷却するとともに、その放熱部材(144)から吸熱した空気が次に室外熱交換器(122)に流通することより、発熱部(143)の排熱を利用して暖房運転時の熱交換量を増大させ、暖房能力を向上させることができる。これらにより、冷房運転、暖房運転のいずれにおいても、放熱部材(144)周りに強制対流を起こして放熱部材(144)からの放熱効果を高めることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、通風方向切替手段として送風機(122a)を用い、送風機(122a)の回転方向を切り替えて通風方向を反転させることを特徴としている。この請求項2に記載の発明によれば、機械的な構成を増やすことなく、電気的な切り替えだけで通風方向を反転させることができる。つまり、従来構成を大きく変更することなく、容易に実現することができ、装置が大型化することもない。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の車両用空調装置において、室外熱交換器(122)と放熱部材(144)との間の距離を可変する距離可変手段(150)を備えることを特徴としている。この請求項3に記載の発明によれば、冷房運転時の放熱効果と、暖房運転時の排熱回収効果とが最大となるよう、それぞれ最適な距離に調節することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の車両用空調装置において、暖房運転時には、室外熱交換器(122)と放熱部材(144)とを接触させることを特徴としている。この請求項4に記載の発明によれば、空気を介した熱伝達だけではなく、室外熱交換器(122)と放熱部材(144)とを直接接触させて、熱伝導で排熱を回収させることができる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、通風方向切替手段(130)として、一端に送風機(122a)、他端の略中央部に室外熱交換器(122)、他端の外縁部に放熱部材(144)を配置した空気通路(131)を設け、空気通路(131)の他端は、室外熱交換器(122)を境として略二分されて放熱部材(144)との間の第1空間(131a)と、他方の第2空間(131b)とが形成され、送風機(122a)の下流側に配設されて、第1空間(131a)への流入と第2空間(131b)への流入とを切り替える流入側ドア手段(132、134)と、室外熱交換器(122)および放熱部材(144)の下流側に配設されて、第1空間(131a)からの流出と第2空間(131b)からの流出とを切り替える流出側ドア手段(133、135)とを設け、両ドア手段(132〜135)の切り替えによって通風方向を反転させることを特徴としている。
【0013】
この請求項5に記載の発明によれば、送風機(122a)の回転方向を反転させることなく、室外熱交換器(122)と放熱部材(144)との通風順を反転させることができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の車両用空調装置において、両ドア手段(132〜135)のいずれかに、面スライドドア(134、135)を用いていることを特徴としている。この請求項6に記載の発明によれば、ドア手段(132〜135)として軸回動ドアを用いるのと比べ、通風方向切替手段(130)を小型に構成することができる。なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、図1〜図3を用いて第1実施形態における車両用空調装置100について詳細に説明する。図1は、車両用空調装置100のヒートポンプサイクル120の概略構成を示す模式図である。本実施形態の車両用空調装置(以下、空調装置)100は、トラック車両の運転室1の屋根上に設置されている。そして、車両のエンジンによって駆動される本来の第1の冷凍サイクルとは別に、第2の冷凍サイクルとしてヒートポンプサイクル120を形成しており、エンジンの停止時に補助的に作動する空調装置(パッケージエアコン)となっている。
【0016】
ヒートポンプサイクル120は、図1に示すように、冷房運転(実線矢印)と暖房運転(破線矢印)とで冷媒の流れ方向を切り替えるようになっており、電動圧縮機(圧縮機)121、四方弁126、室外熱交換器122、膨張弁123、室内熱交換器124、およびアキュムレータ127を環状に接続して構成したものである。
【0017】
図2は、車両用空調装置100の具体的な構成を示す(a)平面図と(b)正面図であり、図3は、第1実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140とを示す正面図である。図2に示すように、空調装置100は、取付け台110の上側に搭載されたヒートポンプサイクル120、ヒューズボックス160、および電源制御部140から構成されている。
【0018】
取付け台110は、2本の細長のフレーム111a、111bが平行配置され、この両フレーム111a、111bに直交する方向に複数の板状のクロスメンバ112a〜112cが接続されて、梯子状に形成されている。ヒートポンプサイクル120は、電動圧縮機121、四方弁126、室外熱交換器122、膨張弁123、室内熱交換器124、アキュムレータ127が、冷媒配管125によって環状に接続されている。なお、図2において四方弁126およびアキュムレータ127は図示を省略したが、図1の構成模式図を参照のこと。
【0019】
電動圧縮機121は、直流式のモータ部(電動機)121aに圧縮機部121bが接続された電動機器であり、取付け台110(フレーム111a、111b)の長手方向の一端側(図2の右側)となるクロスメンバ112aの上に固定されている。圧縮機部121bは、モータ部121aによって回転駆動され、ヒートポンプサイクル120内の冷媒(蒸気冷媒)を高温高圧に圧縮する。
【0020】
モータ部121aには後述する電源制御部140または蓄電手段から電力(直流電圧)が印加されるようになっており、印加される電圧の大小によって回転数が調整されるようになっている。圧縮機部121bは、モータ部121aの回転数に応じて冷媒吐出量を調整しつつ室外熱交換器122側に冷媒を吐出する。
【0021】
四方弁126は、電動圧縮機121で圧縮された高圧冷媒を、冷房運転時には室外熱交換器122へ、暖房運転時には室内熱交換器124へ流入させるように切り替えるとともに、冷房運転時には室内熱交換器124、暖房運転時には室外熱交換器122で蒸発した低圧冷媒が電動圧縮機121の吸入側に流入するように接続されている。
【0022】
室外熱交換器122は、電動ファン(送風機、通風方向切替手段)122aによって通風される空気と熱交換し、冷房運転時は四方弁126から供給される高圧冷媒を凝縮液化し、暖房運転時は膨張弁123から供給される低圧冷媒を蒸発気化する熱交換器であり、取付け台110の上で電動圧縮機121の隣(図2では左側)に配設されている。
【0023】
電動ファン122aは、直流式のモータによってファンが回転駆動される電動式の送風機であり、室外熱交換器122に固定されている。そして、電動ファン122aが固定された室外熱交換器122は、取付けステー122bによって取付け台110に固定されている。
【0024】
室外熱交換器122の上側端部は、後述する電源制御部140の電源ボックス141の上側部に近接し、且つ、室外熱交換器122の下側端部は、取付け台110のほぼ上側面に位置し、電動圧縮機121の下側部に近接するようにして、室外熱交換器122は垂直方向に対して上側端部が電源制御部140側へ傾斜した姿勢で固定されている。電動ファン122aは、このように傾斜する室外熱交換器122の上側に固定されている。
【0025】
電動ファン122aには、後述する電源制御部140または蓄電手段から電力(直流電圧)が印加されるようになっており、電動ファン122aは印加される電圧の大小によって回転数が調整され、通風量が調整されるようになっている。なお、本実施形態の電動ファン122aは、回転方向を切り替えて通風方向を反転させるようになっており、図3に示すように、冷房運転時には、室外熱交換器122から後述のヒートシンク(放熱部材)144へと通風(実線矢印)させ、暖房運転時には、ヒートシンク144から室外熱交換器122へと通風(破線矢印)させるようになっている。
【0026】
膨張弁123は、室外熱交換器122、もしくは室内熱交換器124から流出する液化冷媒を減圧膨張させる減圧器であり、室内熱交換器124用の空調ケース124a内に配設されている。膨張弁123は、蒸発器となっている室外熱交換器122、もしくは室内熱交換器124からの流出冷媒の温度に応じて、弁開度を調整する温度式の膨張弁とすることができる。
【0027】
室内熱交換器124は、膨張弁123で減圧膨張された冷媒を、送風機124dによって送風される空気と熱交換し、冷房運転時は膨張弁123から供給される低圧冷媒を蒸発気化し、暖房運転時は四方弁126から供給される高圧冷媒を凝縮液化する熱交換器であり、膨張弁123および送風機124dとともに、空調ケース124a内に収容されている。
【0028】
アキュムレータ127は、室外熱交換器122、もしくは室内熱交換器124で蒸発した冷媒が流入し、気液分離されたガス冷媒を電動圧縮機121に吸入させる容器であり、四方弁126と電動圧縮機121の吸入側との間に設けられている。空調ケース124aは、室外熱交換器122とによって電源制御部140を挟むような位置で、取付け台110のクロスメンバ112b、112cの上に固定されている。
【0029】
送風機124dには、後述する電源制御部140または蓄電手段から電力(直流電圧)が印加されるようになっており、送風機124dは印加される電圧の大小によって回転数が調整され、送風量が調整されるようになっている。空調ケース124aの側壁の一方側(図2の左側)には吸入口124bが開口され、他方側(図2の右側)には吹出口124cが開口されている。
【0030】
空調ケース124a内では、室内熱交換器124は吸入口124bに近接して配置され、送風機124dは吹出口124cに近接して配置されている。そして、吸入口124b、および吹出口124cは、図示しないダクトによってそれぞれ運転室1内に接続されている。つまり、送風機124dによって送風される送風空気は、運転室内から吸入口124bを通り、室内熱交換器124で冷却もしくは加熱され、送風機124dを経て、吹出口124cから再び運転室1内に戻るように流れる。
【0031】
ヒューズボックス160は、空調ケース124aに隣接して、取付け台110(フレーム111a、111b)の長手方向の他端側に固定されている。ヒューズボックス160は、本空調装置100を使用する際に、商用電源と接続される電源接続部を成すものであり、内部には過大電流に対して電気回路を保護するヒューズが組み込まれている。
【0032】
そして、ヒューズボックス160は、電源制御部140に接続されている。なお、ここで言う商用電源とは、全国の高速道路網などの所定箇所に設置された電源供給施設(スタンド)であり、所定のカードなどの使用によって料金の支払いが成され、車両乗員に電力(交流100Vまたは200V電源)の供給を可能とするものである。
【0033】
そして、電源制御部140は、電源ボックス141の内部にトランス142およびダイオード(発熱部)143などが設けられたものであり、室外熱交換器122と空調ケース124aとの間に配設されて、取付け台110の上に固定されている。トランス142は、電源ボックス141内の略中央に配置され、また、ダイオード143は、電源ボックス141内の室外熱交換器122側となる側壁に配置されている。
【0034】
ダイオード143は、電動圧縮機121のモータ部121a用のものと、電動ファン122aおよび送風機124d用のものとで、本実施形態では2個仕様となっている。トランス142は、商用電源から供給される電源の電圧を調整する変圧器である。また、ダイオード143は、商用電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流器である。
【0035】
ここで、ダイオード143は、作動時において発熱する特性がある(電源制御部140においての発熱部となる)ため、耐久性の確保のために、ヒートシンク(放熱部材)144によってダイオード143を冷却するようになっている。ヒートシンク144は、例えば、平板状の放熱板部と、この放熱板部から細長の板状を成して突出する複数のフィンとを備えた放熱部材である。
【0036】
放熱板部の反フィン側の面には、2つのダイオード143が直接接触するように接合されている。さらに、細長の板状を成すフィンの長手方向が上下方向を向いて、左右方向に複数並ぶようにしている。そして、ヒートシンク144は、室外熱交換器122の電動ファン122aによって形成される通風領域内に入るように配設されている。本実施形態でヒートシンク144は、電源ボックス141の室外熱交換器122側の側壁の上下方向の略中央部に配設されている。
【0037】
以上のように構成される空調装置100には、図2に対して、各機器を一体的に覆う図示しないカバーが被せられて、トラック車両の運転室1の屋根10(図3参照)の上に搭載されている。運転室1の屋根10には、図示しないルーフリフレクターが取り付けられており、空調装置100は、このルーフリフレクター内に収容されるようになっている。
【0038】
次に、上記構成に基づく空調装置100の作動および作用効果について説明する。空調装置100を搭載するトラック車両においては、通常、エンジンの作動によって走行している場合は、エンジンの駆動力によって図示しない本来の冷凍サイクルが作動されて、車室内の空調が行われる。
【0039】
しかしながら、エンジンを停止して乗員が休憩や仮眠を取る場合などには、本来の冷凍サイクルを作動させることができないため、商用電源を備えるパーキングにて、商用電源から電力を供給して本空調装置100(ヒートポンプサイクル120)を作動させて空調を継続する。
【0040】
即ち、休憩や仮眠などを取る場合は乗員により商用電源とヒューズボックス160とが電気配線によって接続され、空調装置100がONされる。すると電源制御部140は、交流電流を直流電流に変換するとともに、必要とされる電圧値に制御して、電動圧縮機121のモータ部121a、電動ファン122a、送風機124dに電力を供給する。
【0041】
この電力供給によって、電動圧縮機121は駆動され、冷媒を圧縮吐出して、ヒートポンプサイクル120内に冷媒を循環させる。冷房運転では、電動ファン122aが作動され、冷却風が室外熱交換器122に供給されて冷媒が凝縮液化(放熱)される。空調ケース124a内では、送風機124dが作動されて、運転室1内と空調ケース124a内との間で空気を循環させて、室内熱交換器124で循環空気を冷却して、運転室1内の冷房を行う。
【0042】
ここで、電源制御部140の作動に伴って、内部のダイオード143は発熱を生じるが、このダイオード143と接合されたヒートシンク144のフィンには、電動ファン122aの作動により室外熱交換器122を通過した風を流通させることができるので、ヒートシンク144においては、この冷却風による強制冷却が行われ、大型化を伴うことなくダイオード143(電源制御部140)に対する冷却性能を向上せることができる。
【0043】
この冷房運転時の放熱効果については、自然対流のみによって放熱を行う場合は熱抵抗が大きく放熱効果が小さいのに対して、本実施形態では強制対流によって放熱を行うので、熱抵抗が小さく放熱効果が大きくなり、自然対流のみの放熱に対して2.2倍程度の向上が見込まれる。
【0044】
また、暖房運転では、電動ファン122aが冷房運転時とは逆回転で作動され、ヒートシンク144を通過した風が室外熱交換器122に供給されて冷媒が蒸発気化(吸熱)される。空調ケース124a内では、送風機124dが作動されて、運転室1内と空調ケース124a内との間で空気を循環させて、室内熱交換器124で循環空気を加熱して、運転室1内の暖房を行う。
【0045】
ここで、電源制御部140の作動に伴って、内部のダイオード143は発熱を生じるが、このダイオード143と接合されたヒートシンク144のフィンには、電動ファン122aの作動によりヒートシンク144を通過した風を流通させることができるので、ヒートシンク144においては、この冷却風による強制冷却が行われ、大型化を伴うことなくダイオード143(電源制御部140)に対する冷却性能を向上せることができる。
【0046】
そのうえ、ヒートシンク144から吸熱した空気が次に室外熱交換器122に流通することより、ダイオード143の排熱を利用して暖房運転時の熱交換量を増大させ、暖房能力を向上させることができる。
【0047】
また、通風方向切替手段として電動ファン122aを用い、電動ファン122aの回転方向を切り替えて通風方向を反転させるようにしている。これによれば、機械的な構成を増やすことなく、電気的な切り替えだけで通風方向を反転させることができる。つまり、従来構成を大きく変更することなく、容易に実現することができ、装置が大型化することもない。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140とを示す正面図である。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。本実施形態では、室外熱交換器122とヒートシンク144との間の距離を可変する距離可変機構(距離可変手段)150を備えている。
【0049】
なお、図4中のグラフは、室外熱交換器122とヒートシンク144との距離に対する室外熱交換器122の前面温度Taと、ダイオード143の温度Tbとを表している。ダイオード143の温度Tbは、その作動を保障する限界温度以下に冷却して作動させる必要がある。
【0050】
距離可変機構150は、運転の状況に応じて、放熱効果と冷暖房能力とが最大となる距離に制御される。例えば、冷房運転時で放熱性能に余裕がある場合には、ヒートシンク144からの放熱が室外熱交換器122に熱影響を与えない距離まで離すことで冷房能力は最大となる。
【0051】
また、同じく冷房運転時で、ヒートシンク144から室外熱交換器122までの距離が充分に大きく、冷房能力が最大である場合には、冷房能力が低下しない範囲内でヒートシンク144と室外熱交換器122との距離を小さくし、ヒートシンク144周りの風速を大きくして放熱効果を大きくすることができる。
【0052】
これらのことより、冷房運転時の放熱効果と、暖房運転時の排熱回収効果とが最大となるよう、それぞれ最適な距離に調節することができる。また、暖房運転時には、室外熱交換器122とヒートシンク144とを接触させることも可能となる。これによれば、空気を介した熱伝達だけではなく、室外熱交換器122とヒートシンク144とを直接接触させて、熱伝導で排熱を回収させることができる。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図5は、第3実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140との(a)平面図と(b)正面図であり、冷房状態を示し、図6は、同じく暖房状態を示す。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態は、通風方向切替部(通風方向切替手段)130として、一端側に電動ファン122a、他端側に室外熱交換器122とヒートシンク144とを配置したダクト(空気通路)131を形成している。
【0054】
つまり、室外熱交換器122と電動ファン122aとは別体で構成している。そして、室外熱交換器122は、ダクト通風路の略中央部に配置され、ヒートシンク144は、ダクト通風路の外縁部に配置されている。これにより、ダクト131の他端側は、室外熱交換器122を境として略二分されて、ヒートシンク144との間の第1空間131aと、他方の第2空間131bとを形成している。
【0055】
また、電動ファン122aの下流側に配設されて、第1空間131aへの流入と第2空間131bへの流入とを切り替える流入側板ドア(流入側ドア手段)132と、室外熱交換器122およびヒートシンク144の下流側に配設されて、第1空間131aからの流出と第2空間131bからの流出とを切り替える流出側板ドア(流出側ドア手段)133とを設けている。
【0056】
なお、本実施形態では、各ドアを回動軸中心に回動する板ドア(軸回動ドア)で構成しており、流出側板ドア133は両側二枚で構成している。そして、これらの流入側板ドア132と流出側板ドア133との切り替えにより通風方向を反転させるものである。具体的に、図5の冷房運転時は、流入側板ドア132を第1空間131a側として第2空間131b側へ送風が流入するようにし、流出側板ドア133は第2空間131b側として第1空間131a側から送風が流出するようにしている。これにより、室外熱交換器122を流通してからヒートシンク144へ流れる通風方向が実現される。
【0057】
また、図6の暖房運転時は、流入側板ドア132を第2空間131b側として第1空間131a側へ送風が流入するようにし、流出側板ドア133は第1空間131a側として第2空間131b側から送風が流出するようにしている。これにより、ヒートシンク144を流通してから室外熱交換器122へ流れる通風方向が実現される。つまりこれにより、電動ファン122aの回転方向を反転させることなく、室外熱交換器122とヒートシンク144との通風順を反転させることができる。
【0058】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図7は、第4実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140との(a)平面図と(b)正面図であり、冷房状態を示し、図8は、同じく暖房状態を示す。上述した第3実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、流入、流出の両ドア手段に、流入側スライドドア(流入側ドア手段、面スライドドア)134と、流出側スライドドア(流出側ドア手段、面スライドドア)135とを用いている。
【0059】
これによれば、ドアの可動範囲が必要最小限となるため、軸回動ドアを用いた場合と比べてダクト131の高さを低くできるとともに、ダクト131の側面に回動スペースを確保する必要もなく、通風方向切替部130を小型に構成することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の実施形態では、電源制御部140(ダイオード143)を放熱させる放熱部材としてヒートシンク144を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、ヒートパイプやラジエータなど、他の放熱手段を用いるものであっても良い。
【0061】
また、上述の第2実施形態では、距離可変機構150で室外熱交換器122側を稼働させているが、電源ボックス141側を可動させて距離を可変するものであっても良い。また、上述の第3実施形態では、軸回動ドアとして片持ちの板ドアを用いているが、板ドア部の中央近傍に回動軸を配置したバタフライドアの他に、回動軸に対する円弧面をドア面としたロータリードアなどであっても良い。
【0062】
また、上述の第4実施形態に用いる面スライドドアとして、剛性のある板ドア部をスライドさせるスライドドアの他に、膜状部材をスライドさせるフィルムドアや、フィルムよりもう少し腰のある薄板部材などをスライドさせるフレキシブルドアや、剛性のある枠体にフィルムなどを組み合わせてスライドさせるスライドドアなどでも良い。また、搭載される車両は、トラック車両に限らず、普通車両などであっても良い。さらに、空調装置100の搭載位置は、運転室1屋根10の上に限らず、他の部位であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】車両用空調装置100のヒートポンプサイクル120の概略構成を示す模式図である。
【図2】車両用空調装置100の具体的な構成を示す(a)平面図と(b)正面図である。
【図3】第1実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140とを示す正面図である。
【図4】第2実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140とを示す正面図である。
【図5】第3実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140との(a)平面図と(b)正面図であり、冷房状態を示す。
【図6】第3実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140との(a)平面図と(b)正面図であり、暖房状態を示す。
【図7】第4実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140との(a)平面図と(b)正面図であり、冷房状態を示す。
【図8】第4実施形態における室外熱交換器122と電源制御部140との(a)平面図と(b)正面図であり、暖房状態を示す。
【符号の説明】
【0064】
100…車両用空調装置
120…ヒートポンプサイクル
121…電動圧縮機(圧縮機)
121a…モータ部(電動機)
122…室外熱交換器
122a…電動ファン(送風機、通風方向切替手段)
130…通風方向切替部(通風方向切替手段)
131…ダクト(空気通路)
131a…第1空間
131b…第2空間
132…流入側板ドア(流入側ドア手段)
133…流出側板ドア(流出側ドア手段)
134…流入側スライドドア(流入側ドア手段、面スライドドア)
135…流出側スライドドア(流出側ドア手段、面スライドドア)
140…電源制御部
143…ダイオード(発熱部)
144…ヒートシンク(放熱部材)
150…距離可変機構(距離可変手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンによって駆動される冷凍サイクルと、この冷凍サイクルとは別のヒートポンプサイクル(120)とを有し、前記エンジンの停止時に前記ヒートポンプサイクル(120)を補助的に作動させる車両用空調装置において、
前記ヒートポンプサイクル(120)は、
前記ヒートポンプサイクル(120)内の冷媒を圧縮する圧縮機(121)と、
前記圧縮機(121)を駆動する電動機(121a)と、
前記ヒートポンプサイクル(120)の冷房運転時には高圧側熱交換器として作用し、前記ヒートポンプサイクル(120)の暖房運転時には低圧側熱交換器として作用する室外熱交換器(122)と、
前記室外熱交換器(122)に通風させる電動式の送風機(122a)と、
外部の商用電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する電源制御部(140)と、
前記エンジンの駆動により発電される電気または前記商用電源から供給される電気を蓄電する蓄電手段とを有し、
前記電動機(121a)および前記送風機(122a)は、前記電源制御部(140)または前記蓄電手段から制御電圧を供給されるとともに、
前記電源制御部(140)は、前記電圧の変換によって発熱する発熱部(143)と、
前記発熱部(143)を冷却する放熱部材(144)とを有し、
前記放熱部材(144)は、前記送風機(122a)が流通させる空気の流通領域内に配設されるとともに、
前記冷房運転時には、前記送風機(122a)により生成される冷却風を、前記室外熱交換器(122)から前記放熱部材(144)へと通風させ、前記暖房運転時には、前記冷却風を前記放熱部材(144)から前記室外熱交換器(122)へと通風させる通風方向切替手段(122a、130)を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記通風方向切替手段として前記送風機(122a)を用い、前記送風機(122a)の回転方向を切り替えて通風方向を反転させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記室外熱交換器(122)と前記放熱部材(144)との間の距離を可変する距離可変手段(150)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記暖房運転時には、前記室外熱交換器(122)と前記放熱部材(144)とを接触させることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記通風方向切替手段(130)として、一端に前記送風機(122a)、他端の略中央部に前記室外熱交換器(122)、他端の外縁部に前記放熱部材(144)を配置した空気通路(131)を設け、
前記空気通路(131)の前記他端は、前記室外熱交換器(122)を境として略二分されて前記放熱部材(144)との間の第1空間(131a)と、他方の第2空間(131b)とが形成され、
前記送風機(122a)の下流側に配設されて、前記第1空間(131a)への流入と前記第2空間(131b)への流入とを切り替える流入側ドア手段(132、134)と、
前記室外熱交換器(122)および前記放熱部材(144)の下流側に配設されて、前記第1空間(131a)からの流出と前記第2空間(131b)からの流出とを切り替える流出側ドア手段(133、135)とを設け、
前記両ドア手段(132〜135)の切り替えによって通風方向を反転させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記両ドア手段(132〜135)のいずれかに、面スライドドア(134、135)を用いていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−184440(P2009−184440A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24330(P2008−24330)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】