説明

車両用空調装置

【課題】センタフェイス吹出口とサイドフェイス吹出口のそれぞれから吹き出される風量のアンバランスを抑えた車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1において、センタフェイスドア12と連動するサイドフェイスドア22はフットモード時に第1通風調整部23によって通風を遮り第2通風調整部24によって通風を許容することによりサイドフェイス通風路25の通風口26、27を形成し、バイレベル3モード時に第2通風調整部24によって通風を遮り第1通風調整部23によって通風を生じさせて許容することによりサイドフェイス通風路25の通風口28を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に開口するセンタフェイス吹出口とサイドフェイス吹出口の両方から空調風を吹き出すモードを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置としては、インストルメントパネルの中央部に設けられたセンタフェイス吹出口とインストルメントパネルの両側部に設けられたサイドフェイス吹出口とから車室内に向けて空調風を吹き出す運転モードを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、センタフェイス吹出口、サイドフェイス吹出口のそれぞれを開閉するセンタフェイスドア、サイドフェイスドアは両ドアに共通のドアシャフトをアクチュエータによって回動することによって開度調整されている。
【0003】
そして、サイドシールドガラスの内面の曇りを防止するため、フットモード(オート制御)においてはセンタフェイス吹出口を閉じるとともに、サイドフェイス吹出口を所定の開口面積に開いてサイドフェイス吹出口から主に温風を吹き出している。さらにバイレベルモード時においてはセンタフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口のそれぞれを所定の開口面積に開いて乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出している。
【0004】
また、他の従来例として図15〜図18に示すように、サイドフェイス吹出口125aよりも小さいサイドフェイスドア122の開度を制御することによってサイドフェイス通風路125の通風量を調整する車両用空調装置が知られている。
【0005】
この車両用空調装置の空調ケース102には、2個のセンタフェイス吹出口115aと、センタフェイス吹出口115aの両側に開口された2個のサイドフェイス吹出口125aとが設けられている。センタフェイスドア112のドアシャフト112aとサイドフェイスドア122のドアシャフト122aは一体に形成されたシャフトであり、アクチュエータによってその回動が制御されるものである(以上、図15参照)。以下に、この車両用空調装置におけるフットモード、順に両フェイス吹き出し風量が多くなっていくバイレベル3モード、バイレベル2モードおよびバイレベル1モードについて説明する。
【0006】
まずフットモード時においては、センタフェイス吹出口115aはセンタフェイスドア112によって閉鎖され、センタフェイス吹出口115aから車室内への空調風の吹き出しはない(図16(a)参照)。一方、サイドフェイスドア122はサイドフェイス吹出口125aに対面するようにセンタフェイスドア112と同じ角度0°に保たれているが、反ドアシャフト122a側のサイドフェイスドア122の端部122bとサイドフェイス吹出口125aの内周縁部との間に形成された開口面積を通って空調風が車室内へ吹き出されることになる(図16(b)参照)。このときサイドフェイス吹出口125aからの吹き出し風量とフット吹出口からの吹き出し風量の比はおよそ15:85となっている。
【0007】
次に、フットモードからバイレベル3モードに移行すると、センタフェイスドア112は所定の角度αに回動して保たれ、センタフェイスドア112とセンタフェイス吹出口115aとの間に形成された隙間を通って空調風がセンタフェイス通風路115を流れることになる(図17(a)参照)。一方、サイドフェイスドア122はセンタフェイスドア112と同じ角度αに保たれるので、サイドフェイスドア122とサイドフェイス吹出口125aの内周縁部との間に形成された開口面積がフットモード時よりも大きくなり、フットモード時よりも大風量の吹き出し風量がサイドフェイス通風路125を流れることになる(図17(b)参照)。このときサイドフェイス吹出口125aおよびセンタフェイス吹出口115aからの合計吹き出し風量とフット吹出口からの吹き出し風量の比はおよそ30:70となっている。
【0008】
さらに、バイレベル3モードからバイレベル2モードに移行すると、センタフェイスドア112は角度αからさらに開いて所定の角度βに保たれ、センタフェイスドア112とセンタフェイス吹出口115aとの間に形成された比較的大きな通風断面積を通って空調風がセンタフェイス通風路115を流れることになる(図18(a)参照)。一方、サイドフェイスドア122はセンタフェイスドア112と同じ角度βに保たれるので、サイドフェイスドア122とサイドフェイス吹出口125aの内周縁部との間に形成された開口面積がバイレベル3モード時よりも大きくなり、バイレベル3モード時よりも大風量の吹き出し風量がサイドフェイス通風路125を流れることになる(図18(b)参照)。このときサイドフェイス吹出口125aおよびセンタフェイス吹出口115aからの合計吹き出し風量とフット吹出口からの吹き出し風量の比はおよそ60:40となっている。
【0009】
さらに、バイレベル2モードからバイレベル1モードに移行すると、サイドフェイスドア122とセンタフェイスドア112はさらに開いてバイレベル2モード時よりも大風量の吹き出し風量がセンタフェイス通風路115、サイドフェイス通風路125のそれぞれを流れることになる。
【特許文献1】特開平10−181333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の車両用空調装置においては、フットモードからバイレベルモードに移行する運転が行われた場合、サイドフェイスドアはフットモード時の所定開度からバイレベルモード時にさらに大きな開度に開き、センタフェイスドアはフットモード時の閉状態からバイレベルモード時にサイドフェイスドアよりも小さい開度で開くことになる。つまり、バイレベルモード時におけるサイドフェイスドアの開度は、フットモードからバイレベルモードに移行する間のドアシャフトの回転範囲分にフットモード時のサイドフェイスドアの開度を加えたものとなる。したがって、バイレベルモードにおいてサイドフェイスドアの開度はセンタフェイスドアの開度に比べて大きな開度になるので、サイドフェイス吹出口からの空調風はセンタフェイス吹出口からの空調風に比べて大風量となり、両吹出口からの風量の割合がアンバランスになり、乗員はフィーリングが悪くなり不快に感じるという問題がある。
【0011】
また、図15〜図18にしたがって説明した上記従来の車両用空調装置においても特許文献1と同様の上記問題があり、この問題は特にフットモードからバイレベル3モードへ移行するときのように比較的小さいドア開度のときに顕著であった。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、センタフェイス吹出口とサイドフェイス吹出口のそれぞれから吹き出される風量のアンバランスを抑えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち第1の発明は、センタフェイス通風路(15)を通り乗員の上半身に向けて吹き出される空調空気の風量を調整するセンタフェイスドア(12)と、サイドフェイス通風路(25)を通り車室内の左右方向両側部に吹き出される空調空気の風量を調整するサイドフェイスドア(22、32、42)とを備え、センタフェイスドア(12)とサイドフェイスドア(22、32、42)はそれぞれに備えられた被駆動部(12a、22a、32a、42a)が駆動されることにより連動する構成であり、
主に乗員の足元に空調風を吹き出すフットモード時に被駆動部(12a、22a、32a、42a)の動作を制御することによりセンタフェイス通風路(15)を閉じて乗員の上半身への空調空気を遮るとともにサイドフェイス通風路(25)を開放して車室内の左右方向両側部へ空調空気を供給し、
乗員の足元と上半身の両方に空調風を吹き出すバイレベルモード時に被駆動部(12a、22a、32a、42a)の動作を制御することによりセンタフェイス通風路(15)を開放して空調空気を供給するとともにサイドフェイス通風路(25)を開放して空調空気を供給する車両用空調装置であって、
サイドフェイスドア(22、32、42)はフットモード時およびバイレベルモード時に空調空気が通るサイドフェイス通風路(25)の通風口(26、27、28、36、37、38、39、40、46、47、48)を形成する第1通風調整部(23、33、43)および第2通風調整部(24、34、44)を備えており、
フットモード時のサイドフェイス通風路(25)の通風口(26、27、36、37、46)は第1通風調整部(23、33、43)によって通風を遮り第2通風調整部(24、34、44)によって通風を許容することにより形成され、バイレベルモード時のサイドフェイス通風路(25)の通風口(28、38、39、40、47、48)は第2通風調整部(24、34、44)によって通風を遮り第1通風調整部(23、33、43)によって通風を許容することにより形成されることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、フットモードからバイレベルモードに移行する運転が行われたときに、センタフェイスドアと連動するサイドフェイスドアの第1通風調整部と第2通風調整部によってサイドフェイス通風路の通風口の面積が急増するのを抑えることができるので、サイドフェイス通風路から吹き出される空調風の増加を低減して、センタフェイス通風路とサイドフェイス通風路のそれぞれから吹き出される風量のアンバランスを抑えることができる。
【0015】
また、センタフェイスドア(12)とサイドフェイスドア(22、32、42)は被駆動部(12a、22a、32a、42a)である回動軸(12a、22a、32a、42a)を備え、回動軸(12a、22a、32a、42a)が駆動されることにより連動して回動する構成であり、第1通風調整部(23、33、43)と第2通風調整部(24、34、44)は、反回動軸(12a、22a、32a、42a)側に位置するそれぞれの端部(23a、24a、33a、34a、43a、44a)が回動方向にずれるように、設けられていることを特徴する。
【0016】
この発明によれば、フットモードからバイレベルモードに移行する運転過程において、回動軸の回動とともに第1通風調整部と第2通風調整部が順番にサイドフェイス通風路との間の通風を遮ることになり、簡易な機構、複雑でないドア形状、少ない部品点数によって本発明の上記目的を達成できる。
【0017】
また、第1通風調整部(23、33)は回動軸(12a、22a、32a)の軸方向中央に設けられ、第2通風調整部(24、34)は第1通風調整部(23、33)の軸方向両側に第1通風調整部(23、33)に一体となって設けられるように構成することができる。
【0018】
また、第1通風調整部(43)は回動軸(42a)に対して直交する方向の回動軸(42a)に近い側に設けられており、第2通風調整部(44)は第1通風調整部(43)よりも回動軸(42a)から遠い側に第1通風調整部(43)に一体に設けられるように構成することができる。
【0019】
また、第2通風調整部(34)はバイレベルモード時にサイドフェイス通風路(25)との間の通風を遮る通風遮蔽部(34a)を備えるとともに、さらにサイドフェイス通風路(25)との間の通風を許容する通風許容部(34c)を備えていることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、フットモード時のサイドフェイス通風路からの風量を多く設定した場合でも、第2通風調整部の通風許容部によってバイレベルモード時に通風面積を確保できるので、本発明の上記目的を達成できる車両用空調装置が得られる。
【0021】
また、フットモード時に形成されるサイドフェイス通風路の通風口(26、27、36、37、46)とバイレベルモード時に形成されるサイドフェイス通風路の通風口(28、38、39、40、47、48)の両面積はほぼ等しくなることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、サイドフェイス通風路を通る風量をフットモード時とバイレベルモード時で大きく変化させず、一方でセンタフェイス通風路を通る風量を増やして、両通風路からの風量をバイレベルモード時に均一に近づけることができるので、両通風路の風量のアンバランスをさらに解消して乗員のフィーリングを向上することができる。
【0023】
また、バイレベルモードはセンタフェイス通風路(15)およびサイドフェイス通風路(25)から車室内へ吹き出される空調空気の合計風量が段階的に変化する複数のモードからなり、複数のバイレベルモードのうちサイドフェイス通風路(25)から車室内へ吹き出される空調空気の風量が最も小さいバイレベルモード時の通風口(28、38、39、40、47、48)は第2通風調整部(24、34、44)によって通風を遮り第1通風調整部(23、33、43)によって通風を許容することにより形成されることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、通風面積による風量変化の影響を受けやすい小風量時において上記のようにサイドフェイス通風路の通風面積を調整するので、乗員のフィーリング向上についてさらに顕著な効果が得られる。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態を図1〜図10を用いて説明する。図1はすべての実施形態に係る車両用空調装置についてフットモード時の内部構成を示した模式図であり、図2はバイレベル3モード時の内部構成を示した模式図であり、図3はバイレベル2モード時の内部構成を示した模式図である。なお、各実施形態におけるバイレベルモードはセンタフェイス通風路15およびサイドフェイス通風路25を通って車室内へ吹き出される空調空気の合計風量が段階的に変化する3つのモードからなり、サイドフェイス通風路25を通って吹き出される空調空気の風量が小さい順にバイレベル3モード(以下B/L3モードとする)、バイレベル2モード(以下B/L2モードとする)、バイレベル1モード(以下B/L1モードとする)である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の車両用空調装置1は、空調ケース2と、空調ケース2と車室内における各吹出口を接続する各吹出しダクト(図示せず)で構成されている。空調ケース2は複数のケース部材からなり、その材質は例えばポリプロピレンなどの樹脂成形品である。
【0028】
空調ケース2には、外気や内気を切り替え可能に取り入れる内外気切替箱(図示せず)と、車室内または車室外の空気をエバポレータ4以降に送風するための送風機(図示せず)と、この送風機より下流に配置された空調用部品とが、上流からこの順に設けられている。内外気切替箱および送風機は車室内前方部のインストルメントパネルの裏側で車両中央部から助手席寄りの位置に設けられており、空調用部品はインストルメントパネルの裏側で車両中央部付近に設けられている。
【0029】
送風機は、遠心多翼ファンとこれを駆動するモータとからなり、遠心多翼ファンの周囲はスクロールケーシングで囲まれている。送風機の吹出口は遠心多翼ファンの遠心方向に伸びるダクトによってエバポレータ4の通風入口に至る送風通路3と接続されている。
【0030】
送風機よりも下流に配置された空調用部品は、送風通路3全体を横断的に塞ぐように設けられたエバポレータ4と、エバポレータ4を通過してきた空気を加熱するヒータコア7と、エバポレータ4を通過した空気がヒータコア7を通過する風量を調整するエアミックスドア6と、エアミックス空間9の下流に設けられたデフドア10、センタフェイスドア12およびフットドア14と、を含んでいる。図1〜図3は図の上側を天地の天側とし図の下側を天地の地側としている。
【0031】
エバポレータ4は、図示しない冷凍サイクル内の膨張弁で減圧された低温低圧の冷媒を送風機の送風を受けて内部で蒸発させるものであり、冷媒が流れるチューブの周囲を通過する送風空気を冷却する。エバポレータ4よりも下流には冷風通路5とヒータコア7が設けられており、さらに冷風通路5を通過する空気とヒータコア7に向かう空気との風量割合を調整するエアミックスドア6が設けられている。
【0032】
ヒータコア7は、走行用エンジンの高温の冷却水を熱源として空調ケース2内の空気と熱交換させ、周囲を流れる空気を加熱し、エバポレータ4よりも空気流れ方向の下流側の通路を部分的に塞ぐように配置されている。ヒータコア7の下流には、温風通路8が空調ケース2内の車両後方側から上方に向けて設けられ、エアミックス空間9につながっている。
【0033】
エアミックスドア6は、エバポレータ4よりも下流に設けられた片側枢支式の板状ドアである。エアミックスドア6の開度を制御することによってエバポレータ4で冷却された空気量のうちヒータコア7で加熱する空気量が調整され、ヒータコア7を通る空気とヒータコア7を迂回する空気とがエアミックス空間9で混合することにより空気の温調がなされる。
【0034】
エアミックス空間9は、エバポレータ4から流れてきた空気とヒータコア7で加熱されて温風通路8を流れてくる空気とが混ざり合う空間であり、下流側でデフ通風路11、フェイス通風路(センタフェイス通風路15およびサイドフェイス通風路25)およびフット通風路13に連通している。この空間で温度調節された空調風は、デフドア10、センタフェイスドア12、フットドア14などの各モード吹出しドアの開度を制御することによって適正な風量割合に調整されて車室内へ供給される。
【0035】
デフ通風路11はデフロスタモードにおいてフロントウィンドウガラス等の車室内側面に沿うように吹き出される空調風(デフ吹き出し)が流通する通路である。デフドア10は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなり、ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して駆動される。デフ通風路11はドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0036】
センタフェイス通風路15は接続されたセンタフェイス吹出ダクト(図示しない)を介して車室内に開口する車室内センタフェイス吹出口に接続されている。車室内センタフェイス吹出口は乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためにインストルメントパネルの中央部で開口しており、主に冷房時に冷風(センタフェイス吹き出し)が吹き出される。
【0037】
センタフェイスドア12は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト12a(回動軸)等からなる。ドアシャフト12aはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して他のドアとともに駆動される被駆動部である。図4に示すように、センタフェイス通風路15の通風面積は、センタフェイス通風路15の途中に設けられ空調ケース2上部の左右方向に2個並ぶように形成された角形のセンタフェイス開口部15aの開口面積をセンタフェイスドア12により制御することで調整することができる。図4はセンタフェイスドア12およびサイドフェイスドア22の配置を示した平面図である。
【0038】
サイドフェイス通風路25は接続されたサイドフェイス吹出ダクト(図示しない)を介して車室内に開口する車室内サイドフェイス吹出口に接続されている。車室内サイドフェイス吹出口は、サイドウィンドウガラスに沿って空調風を吹き出すためにインストルメントパネルの車室内左右方向の両側部で開口しており、フットモード時およびバイレベルモード時にサイドウィンドウガラスの内面の曇りを低減するために温風(サイドフェイス吹き出し)が吹き出される。
【0039】
サイドフェイスドア22はドア本体、正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト22a(回動軸)等からなる。被駆動部であるドアシャフト22aはサーボモータ等のアクチュエータによりセンタフェイスドア12のドアシャフト12aとともに駆動されるので、センタフェイスドア12とサイドフェイスドア22は連動する。サイドフェイス通風路25の通風面積は、サイドフェイス通風路25の途中に設けられセンタフェイス開口部15aの両側に2個形成された角形のサイドフェイス開口部25aの開口面積をサイドフェイスドア22により制御することにより調整することができる。
【0040】
サイドフェイスドア22のドア本体は、回動軸であるドアシャフト22aの軸方向中央に設けられた板状の第1通風調整部23と、この第1通風調整部23の軸方向両側で第1通風調整部23に一体に設けられた板状の第2通風調整部24とから構成されている。
【0041】
このドア本体は、図4のように平面視すると、両側部(第2通風調整部24)よりも中央部(第1通風調整部23)が凹んだ3つの平面を呈している。これらの平面部はドアシャフト22a側でほぼ同一平面をなすように形成されており、ドアシャフト22aから遠ざかるにつれて回動方向にずれる(オフセットする)度合いが大きくなる形状となっている。すなわち、第1通風調整部23の反ドアシャフト側端部23aと第2通風調整部24の反ドアシャフト側端部24aはドアシャフト22aが回動する方向に所定距離ずれた位置に配置されている。
【0042】
また、サイドフェイスドア22のドア本体をドアシャフト22aに平行な面で切断したときの形状は両端側に翼部を有する椀状体を呈する。この椀状体の底部は第1通風調整部23の断面であり、翼部は第2通風調整部24の断面である。底部と翼部は互いに平行である。そして、サイドフェイスドア22のドア本体は上記切断面がドアシャフト22aから遠ざかるほど上記椀状体の翼部から底部までの深さが深くなるように構成されている。
【0043】
第1通風調整部23は、サイドフェイス開口部25aの軸方向幅よりも狭い軸方向長さを有し、ドアシャフト22aに直交する方向の長さがサイドフェイス開口部25aと同等またはサイドフェイス開口部25a内を回動可能なようにわずかに短くなっている矩形状の板部材である。
【0044】
第2通風調整部24は、第1通風調整部23の軸方向両側にそれぞれ第1通風調整部23と一体に設けられた短冊状の板部材である。この短冊状の板部材はドアシャフト22aに直交する方向の長さが第1通風調整部23と同等であり、第1通風調整部23および第2通風調整部24と直交しドアシャフト22aから反ドアシャフト22a側に向かって末広がり状に延設されたくさび形の連結部24bによって第1通風調整部23と一体に形成されている。このような形状のサイドフェイスドア22はポリプロピレン樹脂、ABS樹脂などを主成分とする硬質の樹脂で金型等を用いて所定の形状に成形することにより製造する。樹脂は例えば、ポリプロピレン樹脂などのプラスチックに補強材としてタルク材、マイカ、ガラスなどを混ぜて構成してもよい。
【0045】
フット通風路13は、接続されたフット吹出ダクト(図示しない)を介して車室内に開口する車室内フット吹出口に接続されている。車室内フット吹出口は前席乗員や後席乗員の足元へ空調風を吹き出すための開口であり、主に暖房時に温風が吹き出される。フットドア14は板状のドア本体および正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト等からなり、ドアシャフトはサーボモータ等のアクチュエータによりリンク機構を介して他のドアとともに駆動される。フット通風路13はドアシャフトの回動を制御することにより開閉される。
【0046】
制御装置(図示せず)には、車室内の温度を設定する温度設定手段、車室内の温度を検出する内気温度センサ、外気の温度を検出する外気温度センサ、車室内への日射量を検出する日射センサ、エバポレータ4の後流温度を検出する温度センサおよびエンジンの冷却水温度を検出する水温センサなどの各種センサからの信号が入力される。制御装置は、各種センサからの入力信号に基づいて所定の制御プログラムを実行して、送風機、エアミックスドア6、デフドア10、センタフェイスドア12、サイドフェイスドア22およびフットドア14などの各ドアを駆動するサーボモータ等を制御する。
【0047】
上記構成に係る車両空調装置の各運転モード時の作動を図5〜図10を用いて説明する。図5(a)はフットモード時のセンタフェイス開口部15aの閉鎖状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した模式的断面図である。図8はフットモード時のサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した斜視図である。図10は各運転モード(フットモード、バイレベル3モード、バイレベル2モード、バイレベル1モード、フェイスモード)において両フェイスドアの開度(換言すれば回動角度)と吹き出し風量の関係を示した図である。
【0048】
フットモードの運転が行われると、センタフェイスドア12がセンタフェイス開口部15aの内周縁近傍の側壁面(シール部)に当接するようにアクチュエータによってドアシャフト12a、22aの回動位置が制御される。ドアシャフト12a、22aがこの回動位置に制御されることにより、センタフェイスドア12と連動するサイドフェイスドア22は、第2通風調整部24の反ドアシャフト側端部24aがサイドフェイス開口部25aよりも下流側に位置し、第1通風調整部23の反ドアシャフト側端部23aがサイドフェイス開口部25aの内周部に対向するように位置する。
【0049】
この作動により、第1通風調整部23とサイドフェイス通風路25との間の通風が遮られ、第2通風調整部24とサイドフェイス通風路25との間に通風が生じることになる(図5(a)、(b)参照)。
【0050】
このフットモードにおいては、サイドフェイスドア22が上記所定の回動位置に設定されることにより、図8に示すようにサイドフェイス開口部25aの軸方向両側に通風口26と通風口27が形成される。この通風口26と通風口27のそれぞれは第2通風調整部24と同様の大きさの開口面積を有している。所定の温度に温調された空調ケース2内の空調風は第1通風調整部23の裏面側から天面側に向かって第1通風調整部23を軸方向両側から巻き込むように通風口26と通風口27を通過してサイドフェイス通風路25を流れ、車室内サイドフェイス吹出口からサイドウィンドウガラスに沿って吹き出される。
【0051】
また、図10に示すように、フットモードにおいてはサイドフェイス吹き出し、フット吹き出し、デフ吹き出しの各風量の比はおよそ15:70:15となる。
【0052】
図6(a)はバイレベル3モード時のセンタフェイス開口部15aの開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した模式的断面図である。図9はバイレベル3モード時のサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した斜視図である。
【0053】
次に、フットモードからバイレベル3モードに移行する運転が行われると、ドアシャフト12a、22aの回動位置がフットモード時に対してさらに所定角度分回転するように制御され、センタフェイスドア12およびサイドフェイスドア22はセンタフェイス開口部15aおよびサイドフェイス開口部25aに対して微小開度に保たれる。そして、ドアシャフト12a、22aがこの回動位置に制御されることにより、センタフェイスドア12がセンタフェイス開口部15aの内周縁側面(シール部)から離れてセンタフェイス通風路25を開放する。
【0054】
さらに、センタフェイスドア12に連動するサイドフェイスドア23は第2通風調整部24の外周部がサイドフェイス開口部25aの内周部に対向するように位置してサイドフェイス通風路25との間の通風を遮り、第1通風調整部23がサイドフェイス開口部25aの内周部に対応する位置から下方に位置してサイドフェイス通風路25との間に通風を生じさせる(図6(a)、(b)参照)。
【0055】
このバイレベル3モードにおいては、サイドフェイスドア22が上記所定の回動位置に設定されることにより、図9に示すようにサイドフェイス開口部25aの反ドアシャフト側に通風口28が形成される。所定の温度に温調された空調風は第1通風調整部23の上流側(裏面側)から通風口28を通過して第1通風調整部23の平面部を沿うようにしてサイドフェイス通風路25を下流側に向かって流れ、車室内サイドフェイス吹出口からサイドウィンドウガラスに沿って吹き出される。
【0056】
また、図10に示すように、バイレベル3モードにおいてはサイドフェイス吹き出し、センタフェイス吹き出し、フット吹き出しの各風量の比はおよそ15:15:70となるように制御されている。このように両ドアが微小開度範囲内で挙動するフットモードからバイレベル3モードへの移行過程において、サイドフェイスドア22の第1通風調整部23と第2通風調整部24の作用によりサイドフェイス通風路25の通風面積の急増が抑えられ、サイドフェイス吹き出し風量の増加を抑えている。
【0057】
言い換えれば、フットモード時からバイレベル3モード時に至るサイドフェイス通風路25の通風面積は、通風口26および通風口27を徐々に小さくしながら第1通風調整部23のドアシャフト側端部23aとサイドフェイス開口部25aとの間の通風面積を徐々に増やしていき、通風口28が完成すると同時に通風口26および通風口27を閉鎖するように変遷する。これにより、センタフェイス通風路15の通風抵抗が減少していく度合いに対してサイドフェイス通風路25の通風抵抗が減少する度合いが小さくなり、サイドフェイス吹き出しの風量増加が低減されてセンタフェイス吹き出しとの風量バランスを適正に制御することができる。乗員にとっては車室内サイドフェイス吹出口から吹き出し風が小風量時に過剰になり違和感を与えることを抑制できる。
【0058】
また、サイドフェイスドア22は、好ましくは上記フットモード時に形成される通風口26と通風口27とを合わせた開口面積と、バイレベル3モード時に形成される通風口28の開口面積とがほぼ等しくなるように構成されている。この構成を採用すると、サイドフェイス通風路25の通風面積をフットモード時とバイレベル3モード時で大きく変化させないためサイドフェイス通風路25を通る風量の変化が抑えられ、一方でセンタフェイス通風路15を通る風量が徐々に増えるので、乗員のフィーリングを損なわないで両通風路からの風量を均一に近づけながらバイレベル3モードに移行させることができる。
【0059】
図7(a)は、バイレベル2モード時のセンタフェイス開口部15aの開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した模式的断面図である。
【0060】
次に、バイレベル3モードからバイレベル2モードに移行する運転が行われると、ドアシャフト12a、22aの回動位置がバイレベル3モード時に対してさらに所定の角度分回転するように制御される。ドアシャフト12a、22aがこの回動位置に制御されることにより、センタフェイスドア12、サイドフェイスドア22のそれぞれはバイレベル3モード時よりもさらにセンタフェイス開口部15a、サイドフェイス開口部25aから離れてそれぞれの開口部15a、25aを通過する風量が大きくなる(図7(a)、(b)参照)。このバイレベル2モードにおいては、サイドフェイス吹き出し、センタフェイス吹き出し、フット吹き出しの各風量の比はおよそ30:30:40となるように制御されている(図10参照)。
【0061】
次に、バイレベル2モードからバイレベル1モードに移行する運転が行われると、ドアシャフト12a、22aの回動位置がバイレベル2モード時に対してさらに所定の角度分回転するように制御される。ドアシャフト12a、22aがこの回動位置に制御されることにより、センタフェイスドア12、サイドフェイスドア22のそれぞれはバイレベル2モード時よりもさらにセンタフェイス開口部15a、サイドフェイス開口部25aから離れてそれぞれの開口部15a、25aを通過する風量が大きくなる。このバイレベル1モードにおいては、サイドフェイス吹き出し、センタフェイス吹き出し、フット吹き出しの各風量の比はおよそ35:35:30となるように制御されている(図10参照)。
【0062】
以上のようにフットモードからバイレベル3モードへ吹き出しモードが移行する場合には、サイドフェイス吹き出しの風量はほぼ均一でありセンタフェイス吹き出しの風量はサイドフェイス吹き出しの風量に近づいていき両者の風量バランスは適正に確保される。さらに、バイレベル3モードからバイレベル1モードまで吹き出しモードが移行する間には、センタフェイス吹き出しとサイドフェイス吹き出しはほぼ等しい風量で増加し、両者の風量バランスは引き続き適正に確保されることになる。
【0063】
このようにセンタフェイスドア12と連動するサイドフェイスドア22は、フットモード時に第1通風調整部23によって通風を遮り第2通風調整部24によって通風を許容することによりサイドフェイス通風路25の通風口26、27を形成し、バイレベル3モード時に第2通風調整部24によって通風を遮り第1通風調整部23によって通風を生じさせて許容することによりサイドフェイス通風路25の通風口28を形成する。
【0064】
この構成によれば、フットモードからバイレベル3モードに移行する運転が行われたときに、センタフェイスドア12と連動するサイドフェイスドア22の第1通風調整部23と第2通風調整部24によってサイドフェイス通風路25の通風口の面積が急増するのを抑えることができるので、サイドフェイス通風路25から吹き出される空調風の増加を低減して、センタフェイス通風路15とサイドフェイス通風路25のそれぞれから吹き出される風量のアンバランスを抑えることができる。
【0065】
さらに、サイドフェイス通風路25の通風面積(通風口の面積)の上記調整をフットモードから吹き出し風量の小さいバイレベル3モードに移行する過程で行うことにより、風量変化の影響を受けやすい小風量時に(ドアの微小開度範囲内で)フェイス吹き出し風量を適正に制御できるので、乗員のフィーリング向上の顕著な効果が得られる。
【0066】
また、センタフェイスドア12とサイドフェイスドア22は同軸の回動軸であるドアシャフト12a、22aが駆動されることにより連動して回動する構成であり、第1通風調整部23と第2通風調整部24はそれぞれの反ドアシャフト側端部23a、24aが回動方向にずれるように設けられている。
【0067】
この構成によれば、フットモードからバイレベル3モードに移行する運転過程において、ドアシャフト12a、22aが回動するにつれて第1通風調整部23と第2通風調整部24が順番にサイドフェイス開口部25aの一部を塞ぎサイドフェイス通風路25との間の通風を遮ることになるので、例えば両ドアの回動角度をずらす機構や制御が不要であり、簡易な機構、簡易形状のドア本体、少ない部品点数によってサイドフェイス吹き出しの通風を調整することができる。また、両ドアをリンクさせる別個の構成部品が不要であり、ドアを駆動するためのスペースを小さくできる。
【0068】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例としてのサイドフェイスドア32の構成とその作動について図11および図12にしたがって説明する。なお、サイドフェイスドア32以外の構成および作動は第1実施形態と同様である。図11は本実施形態の車両用空調装置においてフットモード時のサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した斜視図である。図12はバイレベル3モード時のサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した斜視図である。
【0069】
サイドフェイスドア32は、サイドフェイスドア22と同様にドア本体、正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト32a(回動軸)等からなる。さらに、サイドフェイスドア32はドア本体として第1実施形態の第1通風調整部23および第2通風調整部24と同様の作用効果を有する第1通風調整部33および第2通風調整部34を備えている。
【0070】
サイドフェイスドア32とサイドフェイスドア22の相違点を以下に示す。第1通風調整部33とサイドフェイスドア32のドア本体の回動軸方向の長さ寸法の比は、第1通風調整部23とサイドフェイスドア22のドア本体との回動軸方向の長さ寸法の比よりも小さい値である。つまり、サイドフェイスドア32は、第1通風調整部33の回動軸方向長さが第1通風調整部23に対して短くなり第2通風調整部34の回動軸方向長さが第2通風調整部24に対して長くなるので、フットモード時の第2通風調整部34により許容される通風のための通風口36、37の面積が第1実施形態のフットモード時の通風口26、27よりも大きくなる(図11参照)。
【0071】
さらに、第2通風調整部34の回動軸に直交する半径方向長さは、第1実施形態の第2通風調整部24のようにサイドフェイス開口部25aの半径方向全体に及ぶものではなく、ドアシャフト32aからサイドフェイス開口部25aの中ほどに至る長さである。つまり、ドアシャフト32aから第2通風調整部34の反ドアシャフト側端部34cまでの間は、ドア本体は、平面視すると両側部(第2通風調整部34)よりも中央部(第1通風調整部33)が凹んだ3つの平面を呈している。これらの平面部はドアシャフト32a側でほぼ同一平面をなすように形成されており、ドアシャフト32aから遠ざかるにつれて回動方向にずれる(オフセットする)度合いが大きくなる形状となっている。第1通風調整部33の反ドアシャフト側端部33aと反ドアシャフト側端部34aはドアシャフト32aが回動する方向に所定距離ずれた位置に配置されている。
【0072】
第1通風調整部33と第2通風調整部34は、第1通風調整部23および第2通風調整部24と直交しドアシャフト32aから反ドアシャフト32a側に向かって末広がり状に延設されたくさび形の連結部34bによって一体に形成されている。また、サイドフェイスドア32のドア本体をドアシャフト32aに平行な面で切断したときの形状は、ドアシャフト32aから反ドアシャフト側端部34cまでの間は両端側に翼部(第2通風調整部34の断面)を有する椀状体を呈し、反ドアシャフト側端部34cよりもドアシャフト32aから遠い箇所では翼部を備えない椀状体(第1通風調整部33および連結部34bの断面)を呈する。
【0073】
このようなサイドフェイスドア32の構成により、バイレベル3モード時におけるサイドフェイス通風路25の通風面積は、サイドフェイス開口部25aと第1通風調整部33とにより形成される通風口38と、サイドフェイス開口部25aと両側の第2通風調整部34とにより形成される通風口39および通風口40とを合わせた面積になる。
【0074】
以上のようにサイドフェイスドア32の第2通風調整部34はバイレベルモード時に、サイドフェイス開口部25aの内周部と対向するように位置してサイドフェイス通風路25との間の通風を遮る通風遮蔽部である軸方向側端部34aを備えるとともに、さらにサイドフェイス開口部25aの内周部との間に開口を形成してサイドフェイス通風路25との間の通風を許容する通風許容部としての反ドアシャフト側端部34cを備えている。
【0075】
この構成によれば、バイレベルモード時に第2通風調整部の反ドアシャフト側端部34cによって通風面積を確保できるので、フットモード時のサイドフェイス吹き出し風量を多く設定することができる。
【0076】
(第3実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例としてのサイドフェイスドア42の構成とその作動について図13および図14にしたがって説明する。なお、サイドフェイスドア32以外の構成および作動は第1実施形態と同様である。図13は本実施形態の車両用空調装置においてフットモード時のサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した斜視図である。図14はバイレベル3モード時のサイドフェイス開口部25aの開放状態を示した斜視図である。
【0077】
サイドフェイスドア42は、サイドフェイスドア22と同様にドア本体、正逆方向に円運動(回動)してドア本体を回動させるドアシャフト42a(回動軸)等からなる。さらに、サイドフェイスドア42はドア本体として第1実施形態の第1通風調整部23および第2通風調整部24と同様の作用効果を有する第1通風調整部43および第2通風調整部44を備えている。
【0078】
サイドフェイスドア42とサイドフェイスドア22の相違点を以下に示す。サイドフェイスドア42は、第1通風調整部43が回動軸であるドアシャフト42aに対して直交する方向のドアシャフト42aに近い側に設けられ、第2通風調整部44が第1通風調整部43よりもドアシャフト42aから遠い側に第1通風調整部43に一体に設けられて構成されている。
【0079】
第1通風調整部43と第2通風調整部44はいずれもサイドフェイス開口部25aの回転軸方向長さと同等の長さを有し、ドアの回動方向について互いにずれるように配置され(オフセット配置され)、両者は矩形状の連結部45によって一体となっている。すなわち、第2通風調整部44は第1通風調整部43に対して所定回転角分、下流側にずれた位置にあり、連結部45によって第1通風調整部43に一体となることによりドア全体を半径方向に切断した切断面は略N字形を呈する。
【0080】
上記構成に係るサイドフェイスドア42のフットモード時、バイレベル3モード時の作動を説明する。フットモードの運転が行われると、ドアシャフト42aが所定の回動位置に制御され、サイドフェイスドア42は、第2通風調整部44の反ドアシャフト側端部44aがサイドフェイス開口部25aよりも下流側に位置し、第1通風調整部43の回転軸方向両端部43aがサイドフェイス開口部25aの内周部に対向するように位置する。
【0081】
この作動により、第1通風調整部43とサイドフェイス通風路25との間の通風が遮られ、第2通風調整部44とサイドフェイス通風路25との間に通風が生じることになる(図13参照)。
【0082】
このフットモードにおいては、サイドフェイスドア42が上記所定の回動位置に設定されることにより、図13に示すようにサイドフェイス開口部25aの反回転軸方向側に通風口46が形成される。そして、所定の温度に温調された空調ケース2内の空調風は第2通風調整部44の上流側表面から下流側表面に回り込むように通風口46を通過してサイドフェイス通風路25を流れ、車室内サイドフェイス吹出口からサイドウィンドウガラスに沿って吹き出される。
【0083】
次に、フットモードからバイレベル3モードに移行する運転が行われると、ドアシャフト12a、42aの回動位置がフットモード時に対してさらに所定角度分回転するように制御され、サイドフェイスドア43は第2通風調整部44の反ドアシャフト側端部44aを含む外周部がサイドフェイス開口部25aの内周部に対向するように位置してサイドフェイス通風路25との間の通風を遮り、第1通風調整部43がサイドフェイス開口部25aの内周部に対応する位置から下方(下流側)に位置してサイドフェイス通風路25との間に通風を生じさせる(図14参照)。
【0084】
このバイレベル3モードにおいては、サイドフェイスドア22が上記所定の回動位置に設定されることにより、図14に示すようにサイドフェイス開口部25a、第1通風調整部43の回転軸方向両端部43aおよび連結部45の回転軸方向両端部で囲まれる空調ケース2内に通風口47と通風口48が形成される。そして、所定の温度に温調された空調風は空調ケース2内から通風口47、48を通過して第1通風調整部43の下流側表面を沿うようにして流れサイドフェイス通風路25を下流側に向かい、車室内サイドフェイス吹出口からサイドウィンドウガラスに沿って吹き出される。
【0085】
このように両ドアが微小開度範囲内で挙動するフットモードからバイレベル3モードへの移行過程において、サイドフェイスドア42の第1通風調整部43と第2通風調整部44の作用によりサイドフェイス通風路25の通風面積の急増が抑えられ、サイドフェイス吹き出し風量の増加を抑えている。
【0086】
また、サイドフェイスドア42は、好ましくは上記フットモード時に形成される通風口46の開口面積と、バイレベル3モード時に形成される通風口47と通風口48と合わせた開口面積とがほぼ等しくなるように構成されている。この構成を採用すると、サイドフェイス通風路25の通風面積をフットモード時とバイレベル3モード時で大きく変化させないためサイドフェイス通風路25を通る風量の変化が抑えられ、一方でセンタフェイス通風路15を通る風量が徐々に増えるので、乗員のフィーリングを損なわないで両通風路からの風量を均一に近づけながらバイレベル3モードに移行させることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0088】
例えば、上記実施形態ではセンタフェイスドアおよびサイドフェイスドアは板状のドア本体であるが、上記実施形態に記載されるような第1通風調整部および第2通風調整部を備えていればドア本体の形状は板状に限定するものではない。例えば回動軸から半径方向に延びる半径方向側板および周方向に延びる周方向側板とで形成されるロータリ式のドアであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のすべての実施形態に係る車両用空調装置についてフットモード時の内部構成を示した模式図である。
【図2】同車両用空調装置についてバイレベル3モード時の内部構成を示した模式図である。
【図3】同車両用空調装置についてバイレベル2モード時の内部構成を示した模式図である。
【図4】第1実施形態の車両用空調装置についてセンタフェイスドアおよびサイドフェイスドアの配置を示した平面図である。
【図5】同車両用空調装置のフットモード時において、(a)はセンタフェイス開口部の閉鎖状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス開口部の開放状態を示した模式的断面図である。
【図6】同車両用空調装置のバイレベル3モード時において、(a)はセンタフェイス開口部の開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス開口部の開放状態を示した模式的断面図である。
【図7】同車両用空調装置のバイレベル2モード時において、(a)はセンタフェイス開口部の開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス開口部の開放状態を示した模式的断面図である。
【図8】同車両用空調装置のフットモード時においてサイドフェイス開口部の開放状態を示した斜視図である。
【図9】同車両用空調装置のバイレベル3モード時においてサイドフェイス開口部の開放状態を示した斜視図である。
【図10】同車両用空調装置の各運転モードにおける両フェイスドアの開度と吹き出し風量の関係を示した図である。
【図11】第2実施形態の車両用空調装置においてフットモード時のサイドフェイス開口部の開放状態を示した斜視図である。
【図12】同車両用空調装置においてバイレベル3モード時のサイドフェイス開口部の開放状態を示した斜視図である。
【図13】第3実施形態の車両用空調装置においてフットモード時のサイドフェイス開口部の開放状態を示した斜視図である。
【図14】同車両用空調装置においてバイレベル3モード時のサイドフェイス開口部の開放状態を示した斜視図である。
【図15】従来の同車両用空調装置についてセンタフェイスドアおよびサイドフェイスドアの配置を示した平面図である。
【図16】従来の車両用空調装置のフットモード時において、(a)はセンタフェイス吹出口の開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス吹出口の開放状態を示した模式的断面図である。
【図17】従来の車両用空調装置のバイレベル3モード時において、(a)はセンタフェイス吹出口の開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス吹出口の開放状態を示した模式的断面図である。
【図18】従来の車両用空調装置のバイレベル2モード時において、(a)はセンタフェイス吹出口の開放状態を示した模式図であり、(b)はサイドフェイス吹出口の開放状態を示した模式的断面図である。
【符号の説明】
【0090】
12…センタフェイスドア
12a、22a、32a、42a…ドアシャフト(回動軸、被駆動部)
15…センタフェイス通風路
22、32、42…サイドフェイスドア
23、33、43…第1通風調整部
24、34、44…第2通風調整部
25…サイドフェイス通風路
26、27、36、37、46…通風口
28、38、39、40、47、48…通風口
34a…第2通風調整部の軸方向側端部(通風遮蔽部)
34c…第2通風調整部の反ドアシャフト側端部(通風許容部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタフェイス通風路(15)を通り乗員の上半身に向けて吹き出される空調空気の風量を調整するセンタフェイスドア(12)と、サイドフェイス通風路(25)を通り車室内の左右方向両側部に吹き出される空調空気の風量を調整するサイドフェイスドア(22、32、42)とを備え、
前記センタフェイスドア(12)と前記サイドフェイスドア(22、32、42)はそれぞれに備えられた被駆動部(12a、22a、32a、42a)が駆動されることにより連動する構成であり、
主に乗員の足元に空調風を吹き出すフットモード時に前記被駆動部(12a、22a、32a、42a)の動作を制御することにより前記センタフェイス通風路(15)を閉じて前記乗員の上半身への空調空気を遮るとともに前記サイドフェイス通風路(25)を開放して前記車室内の左右方向両側部へ空調空気を供給し、
乗員の足元と上半身の両方に空調風を吹き出すバイレベルモード時に前記被駆動部(12a、22a、32a、42a)の動作を制御することにより前記センタフェイス通風路(15)を開放して空調空気を供給するとともに前記サイドフェイス通風路(25)を開放して空調空気を供給する車両用空調装置であって、
前記サイドフェイスドア(22、32、42)は前記フットモード時および前記バイレベルモード時に前記空調空気が通る前記サイドフェイス通風路(25)の通風口(26、27、28、36、37、38、39、40、46、47、48)を形成する第1通風調整部(23、33、43)および第2通風調整部(24、34、44)を備えており、
前記フットモード時の前記サイドフェイス通風路(25)の前記通風口(26、27、36、37、46)は前記第1通風調整部(23、33、43)によって通風を遮り前記第2通風調整部(24、34、44)によって通風を許容することにより形成され、
前記バイレベルモード時の前記サイドフェイス通風路(25)の前記通風口(28、38、39、40、47、48)は前記第2通風調整部(24、34、44)によって通風を遮り前記第1通風調整部(23、33、43)によって通風を許容することにより形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記センタフェイスドア(12)と前記サイドフェイスドア(22、32、42)は前記被駆動部(12a、22a、32a、42a)である回動軸(12a、22a、32a、42a)を備え、前記回動軸(12a、22a、32a、42a)が駆動されることにより連動して回動する構成であり、
前記第1通風調整部(23、33、43)と前記第2通風調整部(24、34、44)は、反回動軸(12a、22a、32a、42a)側に位置するそれぞれの端部(23a、24a、33a、34a、43a、44a)が回動方向にずれるように、設けられていることを特徴する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1通風調整部(23、33)は前記回動軸(12a、22a、32a)の軸方向中央に設けられ、前記第2通風調整部(24、34)は前記第1通風調整部(23、33)の前記軸方向両側に前記第1通風調整部(23、33)に一体となって設けられていることを特徴する請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第2通風調整部(34)はバイレベルモード時に前記サイドフェイス通風路(25)との間の通風を遮る通風遮蔽部(34a)を備えるとともに、さらに前記サイドフェイス通風路(25)との間の通風を許容する通風許容部(34c)を備えていることを特徴する請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第1通風調整部(43)は前記回動軸(42a)に対して直交する方向の前記回動軸(42a)に近い側に設けられており、前記第2通風調整部(44)は前記第1通風調整部(43)よりも前記回動軸(42a)から遠い側に前記第1通風調整部(43)に一体に設けられていることを特徴する請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記フットモード時に形成される前記サイドフェイス通風路の前記通風口(26、27、36、37、46)の面積と前記バイレベルモード時に形成される前記サイドフェイス通風路の前記通風口(28、38、39、40、47、48)の面積はほぼ等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記バイレベルモードは前記センタフェイス通風路(15)および前記サイドフェイス通風路(25)から車室内へ吹き出される空調空気の合計風量が段階的に変化する複数のモードからなり、
前記複数のバイレベルモードのうち前記サイドフェイス通風路(25)から車室内へ吹き出される空調空気の風量が最も小さいバイレベルモード時における前記通風口(28、38、39、40、47、48)は前記第2通風調整部(24、34、44)によって通風を遮り前記第1通風調整部(23、33、43)によって通風を許容することにより形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−18780(P2009−18780A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185119(P2007−185119)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】