説明

車両用空調装置

【課題】配管接続部から冷媒が漏洩しても車内へ流れない車両用空調装置を得る。
【解決手段】車両内に設置される筐体1内に、圧縮機5、室外熱交換器6、膨張弁7および室内熱交換器8が順次接続されて冷媒が循環する冷凍サイクルを備え、筐体1内は仕切り板4で仕切られて室内部2と室外部3とを有し、室内部2に室内熱交換器8が配置され、室外部3に圧縮機5、室外熱交換器6および膨張弁7が配置され、室内熱交換器8は、室内熱交換器本体の一部が仕切り板4を貫通して室外部3側に突出しており、その突出部分に圧縮機5および膨張弁7のそれぞれに通じる各配管の配管接続部10が配置されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載する空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、車両の天井や床下に搭載され、筐体内が仕切り板によって仕切られて室内部と室外部とを有している。室外部には圧縮機と室外熱交換器とが配置され、収納され、室内部には膨張弁と室内熱交換器とが配置され、これらが配管で接続されて冷媒が循環する冷凍サイクルを構成している。そして、車内の空気を室内部に吸い込み、室内熱交換器にて冷媒と熱交換させ、熱交換後の空気を室内送風機により車内へと送風することで車内の空調を行っている(例えば、特許文献1、2参照)。また、室内部に室内熱交換器を配置し、室外部に圧縮機、室外熱交換器および膨張弁を配置した車両用空調装置もある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
この種の車両用空調装置では、圧縮機、室外熱交換器、膨張弁および室内熱交換器のそれぞれの配管接続部は、通常、ロウ付け溶接にて配管と接続されている。また、配管内を真空に引いた後、室外部側に設けられた冷媒封入部から冷媒が充填される。充填する冷媒には、R22で代表されるHCFCや、R407Cで代表されるHFCといった不燃性で温暖化係数が高い冷媒や、可燃性である炭化水素や不燃性であり二酸化炭素で代表される温暖化係数が低い冷媒が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−297964号公報(図1、[0018])
【特許文献2】特開2007−223450号公報(図1、[0009])
【特許文献3】特許第3454647号公報(図1、図2、[0035]、[0036])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機、室外熱交換器、膨張弁および室内熱交換器のそれぞれの配管接続部と配管とは、上述したように通常、ロウ付け溶接により接続されているが、ロウ付け不良や経年劣化により配管接続部から冷媒が漏洩する場合がある。上記従来の車両用空調装置では、室外部だけでなく室内部にも配管接続部があるため、室内部側の配管接続部から冷媒が漏れた場合、車内へと流れていく。冷媒を例えば二酸化炭素とした場合、車内へと流れた冷媒により、人体に過呼吸や窒息感といった悪影響が及ぶ懸念がある。また、炭化水素は可燃性であるため、火災を誘発する恐れがある。このようなことから、配管接続部から冷媒が漏洩しても車内に流れない構造とすることが課題であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、配管接続部から冷媒が漏洩しても車内へ流れない車両用空調装置を得ることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用空調装置は、車両内に設置される筐体内に、圧縮機、室外熱交換器、減圧装置および室内熱交換器が順次接続されて冷媒が循環する冷凍サイクルを備え、筐体内は仕切り板で仕切られて室内部と室外部とを有し、室内部に室内熱交換器が配置され、室外部に圧縮機、室外熱交換器および減圧装置が配置され、室内熱交換器は、室内熱交換器本体の一部が仕切り板を貫通して室外部側に突出しており、その突出部分に圧縮機および減圧装置のそれぞれに通じる各配管の配管接続部が配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷媒漏れが生じる可能性のある部分(配管接続部及び冷媒封入部)を全て室外部側に配置した構成としたため、冷媒が車内へと流れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る車両用空調装置に使用する二重管の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る車両用空調装置の構成を示す概略図である。
車両用空調装置は、車両の床下や天井に搭載され車両内の空調を行うもので、筐体1内に室内部2と室外部3とを有している。筐体1内には略中央部に仕切り板4が配置され、筐体1内を室内部2と室外部3とに区画しており、室内部2で発生した熱と室外部3で発生した熱とが混在しない構成となっている。
【0011】
車両用空調装置は、筐体1内に、圧縮機5、室外熱交換器6、減圧装置としての膨張弁7および室内熱交換器8が配管9で順次接続されて冷媒が循環する冷凍サイクルを備えている。図1には冷凍サイクルを2サイクル備えた例を示しているが、冷凍サイクルの数に制限はなく、1サイクルや更に複数サイクルとしてもよい。冷凍サイクルの各構成部品(圧縮機5、室外熱交換器6、膨張弁7および室内熱交換器8)のそれぞれの配管接続部10と各配管9とはそれぞれロウ付け溶接により接続される。このように構成された冷凍サイクル内には、配管9内を真空に引いた後、室外部3側に配置された冷媒封入部11から冷媒が充填される。
【0012】
ここで、本例では冷凍サイクルを構成する各構成部品のうち、室内熱交換器8のみを室内部2に配置し、それ以外の圧縮機5、室外熱交換器6および膨張弁7を室外部3に配置している。また、室内熱交換器8は、室内熱交換器本体の一部が仕切り板4に設けた貫通穴(図示せず)を貫通して室外部3に突出しており、その突出部分に室内熱交換器8と配管9a、9bとの配管接続部10a、10bが配置されている。なお、室内熱交換器本体と仕切り板4の貫通穴(図示せず)との間の隙間にはパッキン等のシール材が設けられており、室内熱交換器本体の一部が気密且つ液密に仕切り板4を貫通している。
【0013】
以上の構成により、冷凍サイクルにおける全ての配管接続部10と冷媒封入部11とが室外部3側に集約した構成となっている。また、室内部2には室内送風機12が配置され、室外部3には室外送風機13が配置されている。室内送風機12の位置は、室内熱交換器8の風上流または下流のどちらに配置してもよい。また、室外送風機13の位置は、室外熱交換器6の風上流または下流のどちらに配置してもよい。
【0014】
次に、このように構成された車両用空調装置の冷凍サイクルにおける冷媒の流れについて説明する。
(冷房運転)
圧縮機5から高温・高圧のガス冷媒が吐き出され、室外熱交換器6で車外空気と熱交換して放熱(凝縮)し、高圧・高温の液冷媒となって膨張弁7に流入する。膨張弁7に流入した液冷媒は膨張弁7で低圧・低温とされた後、室内熱交換器8に流入する。室内熱交換器8に流入した低圧・低温の冷媒は、室内送風機12からの室内空気と熱交換して吸熱(蒸発)し、冷房作用を行った後、低圧・常温となって圧縮機5に戻る。このサイクルが繰り返し行われて車内が冷却される。
【0015】
次に、冷房運転時の空気の流れついて説明する。室外部3では、車外空気が室外送風機13により室外部3に吸い込まれ、室外熱交換器6にて冷媒の凝縮熱により加熱されて温度上昇した後、車外へと吹き出される。室内部2では、車内空気が室内送風機12により室内部2に吸い込まれ、室内熱交換器8にて冷媒の蒸発熱により冷却された後、車内へと吹き出される。
【0016】
(暖房運転)
圧縮機5から高温・高圧のガス冷媒が吐き出され、室内熱交換器8で室内送風機12からの室内空気と熱交換して放熱(凝縮)し、暖房作用を行った後、高圧・高温の液冷媒となって膨張弁7に流入する。膨張弁7に流入した液冷媒は膨張弁7で低圧・低温とされた後、室外熱交換器6に流入する。室外熱交換器6に流入した低圧・低温の冷媒は、室外送風機13からの車外空気と熱交換して吸熱(蒸発)し、低圧・常温となって圧縮機5に戻る。このサイクルが繰り返し行われて車内が暖房される。
【0017】
次に、暖房運転時の空気の流れついて説明する。室内部2では、車内空気が室内送風機12により室内部2に吸い込まれ、室内熱交換器8にて冷媒の凝縮熱により加熱されて温度上昇した後、車内へと吹き出される。室外部3では、車外空気が室外送風機13により室外部3に吸い込まれ、室外熱交換器6にて冷媒の蒸発熱により冷却された後、車外へと吹き出される。
【0018】
ここで、冷凍サイクル内に充填される冷媒について説明する。本発明は、冷媒を特に限定するものではないが、例えば以下の冷媒が充填される。以下では、温暖化係数が高い媒体と温暖化係数が低い媒体とに分け、それぞれの具体的な冷媒とその特徴についてまとめて記載する。
【0019】
(1)温暖化係数が高い媒体
(1−1)R22で代表されるHCFCやR407Cで代表されるHFC
・温暖化係数:1200〜1700程度
・不燃性
・安全許容濃度が0.30kg/m3
(2)温暖化係数が低い媒体
(2−1)プロパンに代表される炭化水素
・温暖化係数:3〜30程度
・可燃性
(2−2)二酸化炭素
・温暖化係数:1
・不燃性
・安全許容濃度が0.07kg/m3
なお、温暖化係数は、数値が低い方が環境に良いことを示す。
【0020】
冷媒には、環境への配慮から温暖化係数が低い冷媒を用いることが好ましいが、温暖化係数が低い炭化水素や二酸化炭素は、環境に良い一方で可燃性であったり安全許容濃度が低かったりして車内へ冷媒が漏洩した場合の火災や人体への悪影響の問題がある。本実施の形態1の車両用空調装置は、冷媒漏れが生じる可能性のある部分(配管接続部10及び冷媒封入部11)を全て室外部3側に配置した構成としたため、冷媒が漏洩しても大気に放出され、室内部2から車内へと冷媒が侵入することはない。よって、人体や環境への悪影響や火災防止を図ることができ、安全で信頼性の高い車両用空調装置を得ることができる。なお、本例の車両用空調装置は、温暖化係数が低い媒体を用いた場合に特に効果を発揮するが、上述したように冷媒は特に限定されず、温暖化係数が高い媒体を用いてもよい。
【0021】
実施の形態2.
実施の形態2は、図1に示した実施の形態1の車両用空調装置において、室内熱交換器8と圧縮機5とを接続する配管9aと、室内熱交換器8と膨張弁7とを接続する配管9bと、次の図2に示す二重管としたものである。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0022】
図2は、実施の形態2に係る車両用空調装置に使用する二重管の断面斜視図である。
二重管21は内管22と内管22を外包する外管23とを備えており、内管22内側の内側通路24と、内管22と外管23との間に形成された外側通路25とを有している。実施の形態2では、このように構成された二重管21の内側通路24に冷媒を流す。外側通路25は空間のままとしてもよいし、熱伝導率または熱伝達率が高く、人体に無害な流体(例えば水やブライン)を封入または流すようにしてもよい。
【0023】
配管9a、9bとして、以上のように構成された二重管21を用いることにより、仮に内側流路26から冷媒が漏洩したとしても、外側通路25へと漏れるだけであり、配管9a、9b自体から外部へ冷媒が漏れるのを防止できる。このため、室内部2への冷媒漏洩防止の確実性を更に高めることができ、実施の形態1よりも安全で信頼性の高い車両用空調装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 筐体、2 室内部、3 室外部、4 仕切り板、5 圧縮機、6 室外熱交換器、7 膨張弁(減圧装置)、8 室内熱交換器、9,9a,9b 配管、10,10a,10b 配管接続部、11 冷媒封入部、12 室内送風機、13 室外送風機、21 二重管、22 内管、23 外管、24 内側通路、25 外側通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に設置される筐体内に、圧縮機、室外熱交換器、減圧装置および室内熱交換器が順次接続されて冷媒が循環する冷凍サイクルを備え、
前記筐体内は仕切り板で仕切られて室内部と室外部とを有し、前記室内部に前記室内熱交換器が配置され、前記室外部に前記圧縮機、前記室外熱交換器および前記減圧装置が配置され、
前記室内熱交換器は、室内熱交換器本体の一部が前記仕切り板を貫通して前記室外部側に突出しており、その突出部分に前記圧縮機および前記減圧装置のそれぞれに通じる各配管の配管接続部が配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記圧縮機および前記減圧装置のそれぞれに通じる前記各配管を二重管とし、該二重管の内側通路を前記冷媒が流れるようにしたことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−260398(P2010−260398A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111095(P2009−111095)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】