説明

車両用空調装置

【課題】 空調装置の操作レバーを小型化しながら被操作部を操作するために必要なケーブルのストロークを確保する。
【解決手段】 基端が第1支軸32を介してケース31に枢支された操作レバー16の先端の摘まみ34cを操作すると、その動きがコントロールケーブル22を介して空調ユニットの被操作部に伝達される。中間部を第2支軸36を介してケース31に枢支されたンク部材36の一端部を操作レバー16の基端側に係合させ、かつリンク部材36の他端部にコントロールケーブル22を接続したので、操作レバー16の揺動角θ1に対してリンク部材36の揺動角θ2を拡大することができ、これにより操作レバー16およびリンク部材36を短くしてコンパクト化を図っても、コントロールケーブル22の必要ストロークを確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基端が第1支軸を介して固定部に枢支され、先端に乗員により操作される操作部を備えた操作レバーの動きをケーブルを介して空調ユニットの被操作部に伝達する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基端が枢支されて先端に摘まみを有する操作レバーの中間部をケーブルを介して車両用空調装置のヒータユニットに接続し、摘まみを操作して操作レバーを揺動させることでケーブルを押し引きしてヒータユニットから出る風の温度調節を行うものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−216658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、かかる空調装置に使用される操作レバーは、メータパネル、ナビゲーションシステム、オーディオ装置、各種スイッチ類等が配置されたインストルメントパネルに設けられるため、その寸法はできるだけ小型であることが望ましい。しかしながら、空調装置のダンパー等の被操作部を操作するために必要なケーブルのストロークは決まっているため、操作レバーを小型化するには限界があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、空調装置の操作レバーを小型化しながら被操作部を操作するために必要なケーブルのストロークを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、基端が第1支軸を介して固定部に枢支され、先端に乗員により操作される操作部を備えた操作レバーの動きをケーブルを介して空調ユニットの被操作部に伝達する車両用空調装置において、リンク部材の中間部を第2支軸を介して固定部に枢支し、前記リンク部材の一端部を前記操作レバーの基端側に係合させるとともに前記リンク部材の他端部に前記ケーブルを接続したことを特徴とする車両用空調装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第2支軸は前記操作レバーの中間部に形成した開口を貫通することを特徴とする車両用空調装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記リンク部材の一端部と前記操作レバーの基端側とを連結ピンを介して枢支したことを特徴とする車両用空調装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態のコントロールケーブル22は本発明のケーブルに対応し、実施の形態の内外気切換ダンパー23は本発明の被操作部に対応し、実施の形態のケース31は本発明の固定部に対応し、実施の形態の摘まみ34cは本発明の操作部に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、基端が第1支軸を介して固定部に枢支された操作レバーの先端の操作部を操作すると、操作レバーの動きがケーブルを介して空調ユニットの被操作部に伝達される。中間部が第2支軸を介して固定部に枢支されたンク部材の一端部を操作レバーの基端側に係合させ、かつリンク部材の他端部にケーブルを接続したので、操作レバーの揺動角に対してリンク部材の揺動角を拡大することができ、これにより操作レバーおよびリンク部材を短くしてコンパクト化を図っても、ケーブルの必要ストロークを確保することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、リンク部材の中間部を枢支する第2支軸が操作レバーの中間部に形成した開口を貫通するので、操作レバーおよびリンク部材を重ね合わせてコンパクトに配置しても、第2支軸が操作レバーと干渉するのを回避することができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、リンク部材の一端部と操作レバーの基端側とを連結ピンを介して枢支したので、操作レバーの動きをスムーズかつ確実ににリンク部材に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インストルメントパネルに設けられた空調用操作パネルの斜視図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図2の3方向拡大矢視図。
【図4】図3の4部拡大図。
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】図4に対応する作用説明図。
【図7】実施の形態の作用効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、車両のインストルメントパネル11の中央部に配置された空調用操作パネル12には、モード切換用ダイヤル13、風量調整用ダイヤル14、温度設定用ダイヤル15、内外気切換用の操作レバー16およびエアコンスイッチ17が設けられる。モード切換用ダイヤル13はコントロールケーブル18を介して暖気あるいは冷気の吹き出し口の位置を切り換えるモード切換ダンパー19を作動させ、温度設定用ダイヤル15はコントロールケーブル20を介して暖気あるいは冷気の混合比率を調節するエアミックスダンパ21を作動させ、操作レバー16はコントロールケーブル22を介して内外気切換ダンパー23を作動させる。
【0016】
図3〜図6から明らかなように、空調用操作パネル12の裏面に設けられたケース31の内部に前記操作レバー16の基端が第1支軸32を介して枢支される。操作レバー16は、基端側の第1レバー33に設けた凸部33aを先端側の第2レバー34に設けた凹部34aに嵌合させ、第1レバー33の2個の係止爪33b,33b(図4参照)を第2レバー34の2個の係止穴34b,34b(図4参照)に係合させることで一体に結合される。
【0017】
第2レバー33の先端の摘まみ34cが空調用操作パネル12に左右方向に形成した円弧状のスリット12aを摺動自在に貫通し、空調用操作パネル12の車室側の面に形成された凹部12b内に突出する。第2レバー34は空調用操作パネル12のスリット12aの裏面に沿って延びる円弧状の壁部34dを備える。前記スリット12aおよび前記壁部34dの円弧は共に第1支軸32を中心としており、操作レバー16を左右に揺動させたときに壁部34dはスリット12aの開口を隙間なく閉塞して美観を向上させる。また壁部34dの上縁に沿って第1支軸32を中心とする円弧状の突起34e(図5参照)が形成されており、この突起34eをケース31に形成した同心の円弧状のガイド溝31a(図5参照)に案内させることで、操作レバー16の安定した揺動が可能になる。
【0018】
第1レバー33の幅広になった中間部に第1支軸32を中心とする円弧状の開口33cが形成されており、ケース31の天井壁から第2支軸35が前記開口33cを貫通して垂下する。第2支軸35にリンク部材36の中間部が揺動自在に枢支されており、リンク部材36の一端に上向きに突設した連結ピン36a(図5参照)が第2レバー34の下面に形成したピン孔34f(図5参照)に嵌合するとともに、リンク部材36の他端にコントロールケーブル22のインナーケーブル22a(図4参照)が接続される。
【0019】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0020】
空調装置の内気および外気を切り換えるべく、乗員が操作レバー16の摘まみ34cを摘んで空調用操作パネル12のスリット12aに沿って左右に操作すると、操作レバー16がケース31の第1支軸32を支点にして左右に揺動する。このとき、ケース31の第2支軸35に枢支されたリンク部材36の一端に設けた連結ピン36aが操作レバー16の先端側(摘まみ34c側)に設けたピン孔34fに係合しているため、ピン孔34fに連結ピン36aを押されたリンク部材36が第2支軸35を支点にして操作レバー16と同方向に揺動する。その結果、リンク部材36の他端に連結されたコントロールケーブル22が押し引きされ、内外気切換ダンパー23が揺動して空調装置の内気および外気が切り換えられる(図4および図6参照)。
【0021】
図7(A)から明らかなように、第1支軸32から連結ピン36aまでの距離L1に比べて、第2支軸35から連結ピン36aまでの距離L2は小さいため、操作レバー16の揺動角θ1に対してリンク部材36の揺動角θ2は大きくなる。そして、第2支軸35から測ったリンク部材36のコントロールケーブル22との接続部までの距離L3が、第2支軸35から連結ピン36aまでの距離L2に概ね等しいとすると、コントロールケーブル22のストロークはSは操作レバー16のピン孔34fの位置におけるストロークと概ね等しくなる。
【0022】
よって、図7(B)に示すように、リンク部材36を廃止して操作レバー16のピン孔34fに相当する位置にコントロールケーブル22Aを連結すれば、本実施の形態と同じストロークSを得ることができるが、このようにするとコントロールケーブル22Aの連結部が操作レバー16の摘まみ34cに近づき過ぎるため、コントロールケーブル22Aの取り回しが難しくなる問題がある。
【0023】
逆に、図7(B)に示すように、操作レバー16を第1支軸32を超えて延長し、その延長部の先端にコントロールケーブル22Bを接続した場合には、本実施の形態と同じストロークSを得るためには、操作レバー16の長さを約2倍に延長することが必要になり、操作レバー16が大型化してインストルメントパネル11への収納が難しくなる問題がある。
【0024】
それに対し、本実施の形態によれば、リンク部材36を操作レバー16の長さの範囲内に配置し、かつコントロールケーブル22を操作レバー16の摘まみ34cから離れた位置に接続して取り回しを容易にしながら、コントロールケーブル22の必要なストロークSを確保することができる。
【0025】
またリンク部材36を枢支する第2支軸35との干渉を回避すべく、操作レバー16の第1レバー33に開口33cを形成したので、操作レバー16およびリンク部材36を上下に重なるように配置してコンパクト化することができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0027】
例えば、実施の形態では操作レバー16で被操作部材としての内外気切換ダンパー23を操作しているが、その被操作部材は内外気切換ダンパー23に限定されず、他のダンパーやダンパー以外の部材であっても良い。
【符号の説明】
【0028】
16 操作レバー
22 コントロールケーブル(ケーブル)
23 内外気切換ダンパー(被操作部)
31 ケース(固定部)
32 第1支軸
33c 開口
34c 摘まみ(操作部)
35 第2支軸
36 リンク部材
36a 連結ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端が第1支軸(32)を介して固定部(31)に枢支され、先端に乗員により操作される操作部(34c)を備えた操作レバー(16)の動きをケーブル(22)を介して空調ユニットの被操作部(23)に伝達する車両用空調装置において、
リンク部材(36)の中間部を第2支軸(35)を介して固定部(31)に枢支し、前記リンク部材(36)の一端部を前記操作レバー(16)の基端側に係合させるとともに前記リンク部材(36)の他端部に前記ケーブル(22)を接続したことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第2支軸(35)は前記操作レバー(16)の中間部に形成した開口(33c)を貫通することを特徴とする、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記リンク部材(36)の一端部と前記操作レバー(16)の基端側とを連結ピン(36a)を介して枢支したことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−84091(P2011−84091A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236081(P2009−236081)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】