説明

車両用空調装置

【課題】車室内への浸水を抑制することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10は、上ケース体41における上結合端面41aと、下ケース体42における下結合端面42aとが結合されて、空調ケース40が構成される。膨張弁32は、上ケース体41に形成される筒状体43の内壁に囲まれて、筒状体43内に収容される。筒状体43内に収容されるので、隔壁13の開口部13aを介して筒状体43内にエンジンルーム11から雨水などの流体が侵入してきても、車室12内に流体が侵入することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンルームと車室との隔壁に設けられた開口部に膨張弁を配置し、エンジンルーム内の冷却機器から膨張弁を介して車室内の空調ユニットへ冷媒配管を接続する車両用空調装置が開示されている。このような車両用空調装置では、隔壁の開口部は、エンジンルームから雨水などが車室内に侵入することを抑制するため、シール構造が採用されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−8221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膨張弁を覆っているケースが上下に分割する構成である場合には、ケースの嵌合面がエンジンルームから見て露出することがある。ケースが樹脂の場合には、樹脂同士の嵌合のため完全にシールすることができず、雨水などがケースの嵌合部(切れ目)を介して車室内に侵入するおそれがある。このような侵入を防止するため、防水パッキンなどで嵌合部を覆っている。
【0005】
しかしながら、防水パッキンなどでシールしていても、防水パッキンの経年変化によってシール性が低下することがある。また車両の振動によって嵌合部に隙間ができることもある。したがってこのようなシール構造では、雨水が嵌合部を通過して車室内に侵入するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、車室内への浸水を抑制することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、車室内に配置される空調ユニット(20)と、
空調ユニットの外郭を構成して内部に空気が送風される空調ケース(40)に設けられる膨張弁(32)と、
車室外と車室内とを隔てる隔壁(13)の開口部(13a)を貫通し、膨張弁に接続される室外配管(30)と、
一方の端は膨張弁に接続され、他方の端は空調ユニットの熱交換器(21)に接続される室内配管(31)と、を備える車両用空調装置(10)であって、
空調ケースは、複数の分割ケース体(41,42)を結合することによって構成され、
複数の分割ケース体のうちの一つである第1の分割ケース体(41)が有する第1の結合端面(41a)と、複数の分割ケース体のうちの一つである第2の分割ケース体(42)が有する第2の結合端面(42a)とが結合して合わせ部(48)が構成され、
第1の分割ケース体は、内壁が膨張弁を囲みつつ合わせ方向とは交差する方向に第1の結合端面の一部から延びる筒状体(43)を有し、
筒状体の外壁の一部は、第1の結合端面から合わせ方向に離間しており、
第2の分割ケース体は、断面形状が合わせ方向とは反対方向に凹となるように凹状に湾曲した凹面(42b)を有しつつ、交差する方向へ外周面から突出する突出体(44)を有し、
筒状体の外壁のうち合わせ方向の外周面(41b)と、突出体の凹面とが結合し、合わせ部の一部を構成することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明に従えば、第1の分割ケース体における第1の結合端面と第2の分割ケース体における第2の結合端面とが結合されて、空調ケースが構成される。空調ケースには、膨張弁が設けられる。膨張弁には室外配管と室内配管とが接続されるので、室外配管と室内配管とを、膨張弁を介して連通することができる。このような膨張弁の周囲は、第1の分割ケース体に形成される筒状体の内壁に囲まれる。筒状体の内壁に囲まれるので、隔壁の開口部を介して筒状体内に流体が侵入してきても、筒状体の外部、すなわち車室内に流体が侵入することを抑制することができる。
【0010】
従来技術では、膨張弁を収容する部分は嵌合する部分(切れ目)を有する構成であるので、嵌合する部分から雨水などの流体が空調ケース外、すなわち車室内に流出するおそれがある。しかしながら本発明では、膨張弁を収容する部分には嵌合する部分がなく、筒状体の内壁に囲われてた筒状体内であるので、車室内への浸水を抑制することができる。
【0011】
また第2の分割ケース体は、断面形状が凹状に湾曲している突出体を有し、突出体の外周面が第2の結合端面の一部を構成する。突出体の外周面は、筒状体の外周面と結合する。このような筒状体と突出体とが結合するので、突出体は筒状体を支持して、全体として筒状体と突出体との強度を向上することができる。これによって第1の分割ケース体と第2の分割ケース体とが結合する部分付近に、筒状体を配置しても、強度不足によって損傷することを防ぐことができる。したがって空調ケースの構造上の制限によって、筒状体および突出体を除く結合端面の位置が規制されている場合であっても、筒状体と突出体とを各分割ケース体に設けることができる。したがって分割ケース体に他の部品を設けることなく、本発明の作用および効果を達成することができる。
【0012】
また請求項2に記載の発明では、筒状体の先端と突出体の先端とは、面一であり、
筒状体の先端と突出体の先端に接触して設けられる環状のパッキン(50)をさらに含むことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明に従えば、第1の分割ケース体と第2の分割ケース体とが結合した状態において、筒状体の先端と突出体の先端とは、面一である。このような面一の部分に、環状のパッキンが筒状体の先端と突出体の先端に接触して設けられる。これによって環状のパッキンによって、筒状体と突出体との結合部分が覆われることになるので、この結合部分に雨水などが侵入することを抑制することができる。したがってさらに、雨水が侵入する可能性を小さくすることができる。
【0014】
さらに請求項3に記載の発明では、空調ケース内と筒状体および突出体に囲まれた空間とを連通する貫通孔(47)が、第1の分割ケース体および第2の分割ケース体の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明に従えば、空調ケース内と筒状体および突出体によって囲まれた空間とを連通する貫通孔が、第1の分割ケース体および第2の分割ケース体の少なくともいずれか一方に形成されている。したがって囲まれた空間内に雨水が侵入した場合であっても、貫通孔を介して空調ケース内に雨水を導くことができる。これによって空調ケース外、すなわち車室内に雨水が侵入することを抑制することができる。
【0016】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置10の一部を拡大して示す正面図である。
【図2】図1の切断面線II−IIから見て示す断面図である。
【図3】図1の切断面線III−IIIから見て示す断面図である。
【図4】上ケース体41を示す正面図である。
【図5】下ケース体42を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図6を用いて説明する。図1は、第1実施形態の車両用空調装置10の一部を拡大して示す正面図である。図2は、図1の切断面線II−IIから見て示す断面図である。図3は、図1の切断面線III−IIIから見て示す断面図である。図2に仮想的に示すように、車両前方のエンジンルーム11と車室12とは隔壁13によって隔てられている。隔壁13は、エンジンが発生する熱、およびエンジンルーム11に侵入する水が車室12内に入り込むことを防止する機能を有する。ここで車室12は、乗員が乗車する空間だけでなく、隔壁13よりも後方側のダッシュボードおよび車両用メータなどが搭載されている空間も含む。
【0019】
先ず、図2を用いて、車両用空調装置10の全体の構成に関して説明する。エンジンルーム11内(図2において隔壁13の左側)には、簡略化して示すように、凝縮器14、レシーバ(図示せず)、圧縮機15などの空調用機器が配置されている。また車室12(図2において隔壁13の右側)内には、空調ユニット20が配置されている。空調ユニット20は、送風機(図示せず)、蒸発器21、エアミックスドア(図示せず)、ヒータコア(図示せず)、および吹出口切替ドア(図示せず)等の空調用機器を備える。空調ユニット20は、車室12内の箇所に空調風を吹き出すものである。
【0020】
図2に示すように、エンジンルーム11内の空調用機器と車室12内の空調ユニット20とは、冷媒を循環するために室外配管30および室内配管31によって接続されている。図2では、理解を容易にするため、各配管30,31の直径は省略して示す。室内配管31は、一方の端が車室12内に位置する熱交換器である蒸発器21に接続され、他方の端が膨張弁32に接続される。室外配管30は、一方の端が膨張弁32に接続され、他方の端がエンジンルーム11内の圧縮機15または凝縮器14に接続される。
【0021】
室外配管30と室内配管31とは、本実施形態では、それぞれ2本で構成される。本実施形態では、室内配管31は、蒸発器21から冷媒が導出する冷媒導出配管31aと、蒸発器21に冷媒が導入する冷媒導入配管31bとなる。
【0022】
膨張弁32は、車室12内に設けられる。室外配管30および室内配管31は、隔壁13の付近に配置される膨張弁32を介して接続される。隔壁13には、厚み方向に貫通する開口が形成される開口部13aを有する。室外配管30は、隔壁13に設けられた開口部13aを貫通して設けられる。
【0023】
膨張弁32は、ボックス型であって、図示は省略するが、ダイヤフラムが設けられ冷媒ガスが封入されているダイヤフラム室を有するダイヤフラム部と、ダイヤフラムに感温棒を介して接続されるニードル弁を有する本体部とからなる。このような構成の膨張弁32は、蒸発器21の出力側の冷媒温度を感温棒で検知し、凝縮器14から送られる高温・高圧の冷媒量を、蒸発器21の出力側の冷媒温度に応じて調整しながら、低温・低圧の霧状の冷媒をニードル弁の小孔から噴出して、冷媒導入配管31bを介して蒸発器21に供給する。
【0024】
次に、空調ケース40に関して説明する。空調ユニット20は、前述の空調用機器を収容する空調ケース40を含んで構成される。空調ケース40は、空調ユニット20の外郭を構成し、内部に空気が送風される。空調ケース40内には、蒸発器21などの空調用機器が収容される。一端が蒸発器21に接続される室内配管31は、他端が空調ケース40外に設けられる膨張弁32に接続される。
【0025】
空調ケース40は、複数の分割ケース体41,42を結合することによって構成される。本実施形態では、2つの分割ケース体41,42を結合することによって空調ケース40が構成される。以下、一方の分割ケース体である第1の分割ケース体を上ケース体41と称し、他方の分割ケース体である第2の分割ケース体を下ケース体42と称する。図4は、上ケース体41を示す正面図である。図5は、下ケース体42を示す正面図である。
【0026】
各ケース体41,42は、それぞれ椀状部材であって、最中合わせに結合することによって、空調ケース40が構成される。各ケース体41,42は、結合する際に当接する面として、それぞれ結合端面を有する。上ケース体41は、第1の結合端面である上結合端面41aを有する。下ケース体42は、第2の結合端面である下結合端面42aを有する。上結合端面41aと下結合端面42aとを当接し、結合することによって、合わせ部48が構成される。したがって合わせ部48は、上結合端面41aと下結合端面42aとが結合された部分である。
【0027】
上ケース体41は下ケース体42の上方に位置し、下ケース体42は上ケース体41の下方に位置する。各ケース体41,42を近接させる合わせ方向に変位させることによって、上ケース体41と下ケース体42とが結合され、空調ケース40が構成される。具体的には、上ケース体41を下方に変位させ、下ケース体42を上方へ変位させるのが合わせ方向への変位である。
【0028】
上ケース体41は、車室12内に設置された状態で隔壁13に向かって突出する筒状体43を外周面に有する。筒状体43は、筒状であり、本実施形態では円筒状であって、内部に膨張弁32を収容する空間を有する。筒状体43の内方は、空調ケース40内に連通する。したがって膨張弁32は、空調ケース40の外に設けられる。ここで空調ケース40外とは、筒状体43の内部のように空調ケース40において空調された空気が通過しない部分である。筒状体43の外周面の一部は、上結合端面41aの一部を構成する。また筒状体43における上結合端面41a(以下、単に「筒結合端面41b」という)は、他の上結合端面41aよりも筒状体43の径方向の外方、具体的には下方に向かって突出する。したがって筒結合端面41bは、筒状体43の外壁のうち合わせ方向の外周面である。換言すると、筒結合端面41bは、図4に示すように、筒状体43によって、隔壁13から見て下方に向かって凸となるように湾曲している。筒状体43の外壁の一部は、上結合端面41aから合わせ方向に離間している。また、筒状体43は、内壁が膨張弁32を囲みつつ合わせ方向とは交差する方向(本実施形態では図1における紙面の厚み方向)に上結合端面41aの一部から延びる。
【0029】
下ケース体42は、車室12内に設置された状態で、合わせ部48に交差する方向である隔壁13に向かって突出する突出体44を外周面に有する。突出体44は、図5に示すように、隔壁13から見た断面形状が合わせ方向とは反対方向である下方に向かって凸となるように湾曲している。突出体44の外周面の一部は、下結合端面42aの一部を構成する。具体的には、突出体44の上方に位置する外周面のうち、筒状体43に対向する面である凹面が下結合端面42aの一部となる。また突出体44における下結合端面42a(以下、単に「突出結合端面42b」という)は、他の下結合端面42aよりも下方に向かって凸となるように湾曲している。
【0030】
このような筒状体43の筒結合端面41bと突出体44の突出結合端面42bとを、図1に示すように当接し、他の上結合端面41aと他の下結合端面42aとを結合することによって、空調ケース40が構成される。
【0031】
また突出結合端面42bの周方向の端、すなわち図1の左右方向の端には、上方に突出する位置決め部45が形成される。また筒状体43は、上下方向の中央に段差43aを有し、段差43aの外表面が筒結合端面41bとなる。この段差43aのうち、下ケース体42に対向する面には、前述の位置決め部45が嵌合する嵌合凹部46が形成される。
【0032】
この位置決め部45と嵌合凹部46とを嵌合させることによって、上ケース体41と下ケース体42との水平方向の相対変位を規制することができる。これによって所定の位置で、上ケース体41と下ケース体42とを結合することができる。
【0033】
また各ケース体41,42が結合した状態において、筒状体43の先端と突出体44の先端とは、図2および図3に示すように、面一である。この面一の部分に、図2および図3で仮想的に示す環状のパッキン50が設けられる。このパッキン50の隔壁13側の面は、隔壁13に当接するように設けられる。これによって図1に示すような筒状体43と突出体44との結合面が、パッキン50で覆われる。
【0034】
したがってパッキン50は、エンジンルーム11と車室12とを隔てる隔壁13に設けられた開口部13aの周りに押し当ててシールするためのシールパッキン50である。また隔壁13に形成される開口部13aは、車室12内において、筒状体43およびパッキン50によって覆われる。したがって隔壁13の開口部13aから車室12内に侵入してきた異物は、筒状体43の中に入ることになる。このようなパッキン50は、予め結合した空調ケース40の前述の該当箇所に貼付していてもよい。これによって組立の際の作業効率を向上することができる。
【0035】
さらに下ケース体42には、図2および図5に示すように、各ケース体41,42が結合した状態において、空調ケース40内と筒状体43および突出体44に囲まれた空間とを連通する貫通孔47が形成されている。筒状体43および突出体44に囲まれた空間とは、膨張弁32が収容されている空間である。貫通孔47は、本実施形態では、突出体44の根本付近に形成される。したがって膨張弁32の周囲に異物として雨水などが侵入してきた場合には、貫通孔47を流下して、空調ケース40内に侵入し、車室12内に洩れることを防止することができる。
【0036】
空調ケース40には、予め車外へ通じるドレイン孔(図示せず)が形成されている。これによって空調ケース40内に侵入してきた雨水、および空調ケース40内で発生した霜などの水は、ドレイン孔からドレインホース(図示せず)を介して車室12内に至ることなく、車室12外に排水することができる。
【0037】
以上説明したように本実施形態の配管シール構造は、上ケース体41(第1の分割ケース体に相当)における上結合端面41a(第1の結合端面に相当)と、下ケース体42(第2の分割ケース体に相当)における下結合端面42a(第2の結合端面に相当)とが結合されて、空調ケース40が構成される。空調ケース40には、膨張弁32が設けられる。膨張弁32には室外配管30と室内配管31とが接続されるので、室外配管30と室内配管31とを、膨張弁32を介して連通することができる。このような膨張弁32は、上ケース体41に形成される筒状体43の内壁に囲まれて、筒状体43内に収容される。筒状体43内に収容されるので、隔壁13の開口部13a(ダッシュ貫通部ともいう)を介して筒状体43内にエンジンルーム11から雨水などの流体が侵入してきても、筒状体43の外部、すなわち車室12内に流体が侵入することを抑制することができる。
【0038】
従来技術では、膨張弁32を収容する部分は嵌合している部分(切れ目)が露出している構成であるので、嵌合している部分から流体が空調ケース40外、すなわち車室12内に流出するおそれがある。しかしながら本実施形態では膨張弁32を収容する部分には嵌合している部分がなく、筒状体43の周囲は筒状体43の内壁に囲まれているので、車室12内への浸水を抑制することができる。換言すると、本実施形態では、直接被水しない部位で上ケース体41と下ケース体42とが結合されるので、車室12内への浸水を抑制することができる。
【0039】
また下ケース体42は、断面形状が凹状に湾曲している突出体44を有し、突出体44の外周面が下結合端面42aの一部を構成する。突出体44の外周面は、筒状体43の外周面と結合する。このような筒状体43と突出体44とが結合するので、突出体44は筒状体43を支持して、全体として筒状体43と突出体44との強度を向上することができる。上ケース体41と下ケース体42とが結合する部分付近に、筒状体43を配置しても、強度不足によって損傷することを防ぐことができる。したがって本実施形態では空調ケース40は上下に分割されたケース体41,42を結合する構成であるので、このような分割ケース体41,42であっても、筒状体43と突出体44とを各分割ケース体41,42に設けることができる。したがって分割ケース体に他の部品、たとえばパッキン50を設けることなく、前述の本実施形態の作用および効果を達成することができる。したがってパッキン50を用いない場合であっても、高いシール性を確保することができ、パッキン50の貼り付け工数および部品費を削減することができる。
【0040】
また本実施形態では、上ケース体41と下ケース体42とが結合した状態において、筒状体43の先端と突出体44の先端とは、面一である。このような面一の部分に、環状のパッキン50が筒状体43の先端と突出体44の先端に接触して設けられる。これによって環状のパッキン50によって、筒状体43と突出体44との結合部分が覆われることになるので、この結合部分に雨水などが侵入することを抑制することができる。したがってさらに、雨水が侵入する可能性を小さくすることができる。
【0041】
さらに本実施形態では、空調ケース40内と筒状体43および突出体44によって囲まれた空間とを連通する貫通孔47が、下ケース体42に形成されている。これによって囲まれた空間内に雨水が侵入した場合であっても、貫通孔47を介して空調ケース40内に雨水を導くことができる。したがって空調ケース40外、すなわち車室12内に雨水が侵入することを抑制することができる。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0043】
前述の第1実施形態では、空調ケース40は、2つの分割ケース体を結合することによって構成されるが、2つに限るものではなく、3つ以上であってもよい。
【0044】
また前述の第1実施形態では、貫通孔47は下ケース体42に形成されるが、下ケース体42に限るものではなく、上ケース体41であってもよく、両方に形成してもよい。貫通孔47は、車両に搭載した状態で、流体が貫通孔47から空調ケース40内に流出する位置に設けることが好ましい。
【0045】
さらに前述の第1実施形態では、上ケース体41に筒状体43が形成され、下ケース体42に突出体44が形成されるが、これに限るものではなく、上ケース体41に突出体44を形成し、下ケース体42に筒状体43を形成してもよい。
【0046】
また前述の第1実施形態では、パッキン50を備える構成であるが、パッキン50を有しない構成である場合には、筒状体43および突出体44の先端を隔壁13に密に当接するように配置してもよい。この場合、筒状体43および突出体44の突出方向を鉛直方向下方に流体が流れるように鉛直方向に対して傾斜させることによって、雨水などが開口部13aから侵入しても、車室12内に洩れることを可及的に防止することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…車両用空調装置
11…エンジンルーム
12…車室
13…隔壁
13a…開口部
20…空調ユニット
21…蒸発器(熱交換器)
30…室外配管
31…室内配管
32…膨張弁
40…空調ケース
41…上ケース体(第1の分割ケース体)
41a…上結合端面(第1の結合端面)
41b…筒結合端面(第1の結合端面)
42…下ケース体(第2の分割ケース体)
42a…下結合端面(第2の結合端面)
42b…突出結合端面(凹面)
43…筒状体
43a…段差
44…突出体
47…貫通孔
48…合わせ部
50…パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に配置される空調ユニット(20)と、
前記空調ユニットの外郭を構成して内部に空気が送風される空調ケース(40)に設けられる膨張弁(32)と、
車室外と前記車室内とを隔てる隔壁(13)の開口部(13a)を貫通し、前記膨張弁に接続される室外配管(30)と、
一方の端は前記膨張弁に接続され、他方の端は空調ユニットの熱交換器(21)に接続される室内配管(31)と、を備える車両用空調装置(10)であって、
前記空調ケースは、複数の分割ケース体(41,42)を結合することによって構成され、
前記複数の分割ケース体のうちの一つである第1の分割ケース体(41)が有する第1の結合端面(41a)と、前記複数の分割ケース体のうちの一つである第2の分割ケース体(42)が有する第2の結合端面(42a)とが結合して合わせ部(48)が構成され、
前記第1の分割ケース体は、内壁が前記膨張弁を囲みつつ合わせ方向とは交差する方向に第1の結合端面の一部から延びる筒状体(43)を有し、
前記筒状体の外壁の一部は、前記第1の結合端面から合わせ方向に離間しており、
前記第2の分割ケース体は、断面形状が合わせ方向とは反対方向に凹となるように凹状に湾曲した凹面(42b)を有しつつ、前記交差する方向へ外周面から突出する突出体(44)を有し、
前記筒状体の外壁のうち前記合わせ方向の外周面(41b)と、前記突出体の前記凹面とが結合し、前記合わせ部の一部を構成することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記筒状体の先端と前記突出体の先端とは、面一であり、
前記筒状体の先端と前記突出体の先端に接触して設けられる環状のパッキン(50)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調ケース内と前記筒状体および前記突出体に囲まれた空間とを連通する貫通孔(47)が、前記第1の分割ケース体および前記第2の分割ケース体の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106562(P2012−106562A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255973(P2010−255973)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】