説明

車両用空調装置

【課題】空調ケースが姿勢を変更したとしても、空調ケース内の冷却用熱交換器で生成した凝縮水が第1ケース体と第2ケース体との結合面から車室内へ漏れることを、比較的簡単な構造で防止することが可能な車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】第1上ケース21A(図示略)および第2上ケース21Bのそれぞれには、仕切壁部213の蒸発器側の面から立設され第1上ケース21Aと第2上ケース21Bとの結合面に沿って延びるリブ214、および、仕切壁部213の蒸発器側の面から立設されリブ214と平行に延びるリブ215が設けられ、キャブチルト時の姿勢において凝縮水を貯留する複数の貯水部219aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割成形した複数のケース体を結合した空調ケース内に冷却用熱交換器が配設され、例えばキャビンをチルト可能な車両に搭載されて、異なる複数の姿勢に姿勢変更される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば空調ケースを上ケースと下ケースとに分割して形成するとともに、上ケースを第1上ケースと第2上ケースとに左右に分割して形成し、3つのケースを結合して空調ケースを構成して、内部に冷却用熱交換器を配設した車両用空調装置がある。そして、空調ケース内に冷却用熱交換器を傾斜して配置し、冷却用熱交換器のコア部よりも下方となる下ケースに排水孔を設けて、コア部で生成した凝縮水を排水孔から車室外へ排出するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の車両用空調装置を、例えばキャブオーバー車両の車室内に搭載し、空調装置を使用した直後に、エンジンメンテナンス等のためにキャビンをチルトすると、空調ケース内からキャビン内(車室内)へ凝縮水が漏れるという不具合を発生する場合がある。
【0005】
本発明者は、上記不具合に対して鋭意解析及び検討を行い、上記不具合は以下のようなメカニズムで発生することを見出した。乗員がキャビンに搭乗して空調装置を使用する通常の第1姿勢から、キャビンをチルトすると、キャブチルトに伴い空調ケースも大きく傾斜された第2姿勢となる。第2姿勢では、第1姿勢に対して、冷却用熱交換器のコア部の延在面が鉛直方向を越えて逆側に傾斜する。すると、コア部で生成された凝縮水が、排水孔が形成されていない上ケース内面に流出する。上ケースの内面に流出した凝縮水は、第1ケース体である第1上ケースと第2ケース体である第2上ケースとの結合面から徐々に車室内へ排出される。
【0006】
この不具合を防止するために、第1ケース体と第2ケース体との結合面にシール部材を介在させたり、第1ケース体と第2ケース体との結合面に複雑な嵌合構造を形成したりする手段も考えられるが、いずれも構造が複雑となり、コストアップの要因となり易い。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、空調ケースが姿勢を変更したとしても、空調ケース内の冷却用熱交換器で生成した凝縮水が第1ケース体と第2ケース体との結合面から車室内へ漏れることを、比較的簡単な構造で防止することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)を含む分割成形した複数のケース体(21A、21B、21C)を結合してなり、内部に車室内に吹き出す空気が流通する空調ケース(21)と、
空調ケース(21)に対して固定されて空調ケース(21)内に設けられる熱交換器であって、空調ケース(21)の内部を流通する空気が通過するコア部(22a)を有し、コア部(22a)が空気の通過方向に対して交差する方向に広がるように延在し、コア部(22a)を通過する空気を冷却する冷却用熱交換器(22)と、
空調ケース(21)に形成された排水孔(211)と、を備え、
排水孔(211)は、コア部(22a)の空気の通過方向においてコア部(22a)を挟んだ第1の側および第2の側のうち、第1の側に位置する部分に形成されて、コア部(22a)の表面で生成した凝縮水を空調ケース(21)の外部へ排出するものであり、
第1ケース体(21A)と第2ケース体(21B)との結合面(212)が、空調ケース(21)の第2の側に形成されているとともに、第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)は、第2の側において空気の通路に臨む内面(213a)がコア部(22a)から離れる方向に凹んだ凹状壁部(213)を有しており、
空調ケース(21)の姿勢が、
冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)の上端が下端よりも第1の側に位置するように、コア部(22a)の延在面が鉛直方向に対して第1の側に傾斜して、凝縮水が排水孔(211)から空調ケース(21)の外部へ排出される第1姿勢となる場合と、
冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)の上端が下端よりも第2の側に位置するように、コア部(22a)の延在面が鉛直方向に対して第2の側に傾斜して、凝縮水が第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)の凹状壁部(213)の内面(213a)に流出する第2姿勢となる場合と、をとりうる車両用空調装置であって、
第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)のそれぞれに、凹状壁部(213)の内面(213a)から立設され結合面(212)に沿って延びる立設壁部(214)が設けられ、
第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)のそれぞれには、凹状壁部(213)と立設壁部(214)とにより、立設壁部(214)の結合面(212)とは反対側に、空調ケース(21)の姿勢が第2姿勢となった場合に凝縮水を貯留する貯水部(219)が形成されていることを特徴としている。
【0009】
これによると、空調ケース(21)の姿勢が、第1姿勢であるときには、冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)の上端が下端よりも第1の側に位置するように、コア部(22a)の延在面が鉛直方向に対して第1の側に傾斜している。したがって、コア部(22a)で生成した凝縮水は、コア部(22a)の第1の側へ流出し、空調ケース(21)の第1の側に形成された排水孔(211)から空調ケース(21)の外部へ排出される。
【0010】
一方、空調ケース(21)の姿勢が、第2姿勢であるときには、冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)の上端が下端よりも第2の側に位置するように、コア部(22a)の延在面が鉛直方向に対して第2の側に傾斜している。したがって、コア部(22a)で生成した凝縮水は、コア部(22a)の第2の側から第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)の凹状壁部(213)の内面(213a)に流出し、凹状壁部(213)と立設壁部(214)とにより、立設壁部(214)の結合面(212)とは反対側に形成された貯水部(219)に貯留される。貯水部(219)に貯留された凝縮水は、立設壁部(214)に遮られて結合面(212)に到達し難い。
【0011】
このようにして、空調ケース(21)が、第1姿勢と第2姿勢とで姿勢を変更したとしても、空調ケース(21)内の冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)で生成した凝縮水が、第1ケース体(21A)と第2ケース体(21B)との結合面(212)から車室内へ漏れることを、結合面(212)に沿って延びる立設壁部(214)という比較的簡単な構造で防止することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、凹状壁部(213)には、内面(213a)から立設し、貯水部(219)を複数に分割する分割壁部(215)が設けられていることを特徴としている。これによると、空調ケース(21)の姿勢が第2姿勢であるときに、コア部(22a)の第2の側から貯水部(219)に流入した凝縮水を、分割壁部(215)により複数に分割された各貯水部(219a)に貯留することができる。分割された各貯水部(219a)に流入した凝縮水は、分割壁部(215)に遮られて集合し難い。また、凝縮水は、表面張力により凹状壁部(213)と分割壁部(215)との接合部周辺に保持され易く、移動し難い。これらにより、空調ケース(21)内の冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)で生成した凝縮水が、第1ケース体(21A)と第2ケース体(21B)との結合面(212)から車室内へ漏れることを、確実に防止することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明では、分割壁部(215)は、立設壁部(214)と平行に延設されていることを特徴としている。これによると、分割壁部(215)により分割された複数の貯水部(219a)は、第1ケース体(21A)と第2ケース体(21B)との結合面(212)が延びる方向には並ばず、結合面(212)が延びる方向に交差する方向に並ぶことになる。したがって、空調ケース(21)の姿勢が第2姿勢であるときに、コア部(22a)の第2の側から流出し、分割壁部(215)により分割された複数の貯水部(219a)のうち比較的結合面(212)から離れた貯水部(219a)へ流入した凝縮水が、結合面(212)近傍の貯水部(219a)へ移動することを抑止することができる。このようにして、空調ケース(21)内の冷却用熱交換器(22)のコア部(22a)で生成した凝縮水が、第1ケース体(21A)と第2ケース体(21B)との結合面(212)から車室内へ漏れることを、一層確実に防止することができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の車両用空調装置において、立設壁部(214)および分割壁部(215)は、コア部(22a)を通過する空気の通風方向に沿って延設されていることを特徴としている。これによると、立設壁部(214)および分割壁部(215)が通風抵抗となることを抑制することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、請求項2に記載の車両用空調装置において、分割壁部(215)は、コア部(22a)を通過する空気の通風方向に沿って延設されていることを特徴としている。これによると、分割壁部(215)が通風抵抗となることを抑制することができる。
【0016】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の室内ユニット1の外観を示す正面図である。
【図2】室内ユニット1の概略構成を示す縦断面図であり、通常時の姿勢を示している。
【図3】室内ユニット1の仕切壁部213形成部位を拡大した縦断面図である。
【図4】下ケース21Cおよび蒸発器22等を取り外した状態の室内ユニット1を示す正面図である。
【図5】室内ユニット1の概略構成を示す縦断面図であり、キャブチルト時の姿勢を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における車両用空調装置の室内ユニット1の外観を示す正面図であり、図2は、室内ユニット1の概略構成を示す縦断面図(図1のII−II線断面図)である。
【0020】
図1に示すように、室内ユニット1は、内部に空気通路を形成するとともに、後述する各種機能部品を収容する空調ケース21を備えている。空調ケース21は、上ケースのうち車両左方側に配置される第1上ケース21A(第1ケース体に相当)、上ケースのうち車両右方側に配置される第2上ケース21B(第2ケース体に相当)、および、下ケース21Cを、相互に結合して構成されている。
【0021】
第1上ケース21Aと第2上ケース21Bとは、上下方向に延びる結合面212で結合している。結合面212は、例えば、一方の結合端面に形成した嵌合突起部と他方の結合端面に形成した嵌合溝部とを嵌合する、比較的簡単な嵌合構造を有している。また、上ケース21A、21Bと下ケース21Cとの結合面212aも、結合面212と同様の嵌合構造を有している。
【0022】
結合面212aは、車両前方側の下方から車両後方側の上方へ延びている。したがって、上ケース21A、21Bは前ケース、下ケース21Cは後ケースということもできる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の車両用空調装置の室内ユニット1は、例えば、キャブオーバー型の車両の車室(キャビン)内前方部の計器盤下方に図2に示す姿勢で設置され、大別して、送風ユニット10と空調ユニット20との2つの部分が並設されている。
【0024】
送風ユニット10は、室内ユニット1内部に車室内の内気もしくは車室外の外気を吸引するためのものであって、車両幅方向(図2の紙面表裏方向)に図示しない内外気切替箱が配設されている。
【0025】
送風ユニット10には、電動送風機11が備えられている。この送風機11は、遠心多翼ファン12と、ファン駆動用モータ13とを有し、遠心多翼ファン12はスクロールケーシング14内に配置されている。
【0026】
送風ユニット10のスクロールケーシング14の空気流れ下流側には、スクロールケーシング14出口から延びる流路を構成するダクト部15が形成されている。このダクト部15は、送風ユニット10から送風された送風空気を後述する蒸発器22に導入するためのものである。このダクト部15により送風ユニット10の出口部が空調ユニット20の入口部に接続されている。
【0027】
空調ユニット20は、1つの共通の空調ケース21内に蒸発器(冷房用熱交換器、冷却用熱交換器に相当)22とヒータコア(暖房用熱交換器、加熱用熱交換器)23とを内蔵するタイプのものである。
【0028】
空調ケース21はポリプロピレンのような、ある程度弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、前述したように分割された複数のケース体からなる。この分割されたケース体は、上記熱交換器22、23、後述のドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ケース21を構成する。
【0029】
なお、本実施形態では、空調ケース21は、スクロールケーシング14、ダクト部15とともに一体的に成形されている。具体的には、スクロールケーシング14およびダクト部15の車両左方側の一部が、第1上ケース21Aと一体成形されており、スクロールケーシング14およびダクト部15の車両右方側の残部が、第2上ケース21Bと一体成形されている。
【0030】
空調ケース21下方部の後方側の部位には、空気流入口24が設けられ、この空気流入口24には、前述の送風ユニット10から送風される空気がダクト部15を介して流入する。
【0031】
空調ケース21内において、空気流入口24直後の部位に蒸発器22が空気通路の全域を横切るように配置されている。この蒸発器22は、冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空気から吸収して空気を冷却する熱交換器(空気冷媒熱交換器)である。
【0032】
蒸発器22は、相互に間隔を空けて配列された複数の冷媒管を有するコア部(熱交換部)22a、コア部22aの複数の冷媒管と連通するヘッダタンク22b、および、ヘッダタンク22bと空調ケース21との間に配設されて空気漏れを防止するためのインシュレータ22cを備えている。
【0033】
蒸発器22のコア部22aは、概略の外形が矩形平板状をなしており、矩形平板状の厚さ方向に空気が通過するようになっている。すなわち、コア部22aは、空気の通過方向に対して略直交する方向に広がるように(車両左右方向、並びに、図2図示左下および右上方向に広がるように)延在している。
【0034】
図2から明らかなように、蒸発器22のコア部22aは、延在面(空気の通過方向に対して略直交する方向に広がるように延在する面、コア部22aの厚さ方向に直交する面)が鉛直方向(鉛直面、鉛直方向に延びる面)に対して傾斜している。
【0035】
コア部22aは、上端が下端よりも車両後方側に位置するように傾斜している。換言すれば、コア部22aの空気通過方向においてコア部22aを挟んだ両側のうち、空気流れ上流側を第1の側とし、空気流れ下流側を第2の側としてときに、コア部22aは、上端が下端よりも第1の側に位置するように、コア部22aの延在面が鉛直方向に対して第1の側に傾斜している。
【0036】
そして、蒸発器22の空気流れ下流側(車両前方側)に、ヒータコア23が配置されている。このヒータコア23は、蒸発器22を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に高温のエンジン冷却水(温水)が流れ、この冷却水を熱源として空気を加熱するものである。
【0037】
また、空調ケース21内で、ヒータコア23の図中右方側(車両後方側)部位には、このヒータコア23をバイパスして空気(冷風)が流れるバイパス通路である冷風バイパス通路25が形成されている。
【0038】
そして、ヒータコア23車両後方側においてヒータコア23を通過する空気が流入する加熱用開口部26、および冷風バイパス通路25上流端のバイパス用開口部27には、ヒータコア23を通る空気(温風)と冷風バイパス通路25を通る空気(冷風)の風量割合を調整するエアミックスドア28が配置されている。エアミックスドア28は、空調ケース21に回動可能に支持された回転軸281と、回転軸281に結合された1枚の平板状のドア板部282とにより構成される、所謂片持ちドアである。
【0039】
ヒータコア23および冷風バイパス通路25の下流側(車両上方側)の部位には、冷風バイパス通路25からの冷風とヒータコア23からの温風とを合流させて、冷風と温風とを混合させる冷温風混合空間30が形成されている。
【0040】
空調ケース21の上面部において、車両前方側の部位には、デフロスタ開口部31が開口している。このデフロスタ開口部31は冷温風混合空間30から温度制御された空気が流入するものである。デフロスタ開口部31は、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続され、この吹出口から、車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
【0041】
空調ケース21の上面部において、デフロスタ開口部31よりも車両後方側の部位には、フェイス開口部32が開口している。このフェイス開口部32は冷温風混合空間30から温度制御された空気が流入するものである。フェイス開口部32は、図示しないフェイスダクトを介してフェイス吹出口に接続され、この吹出口から車室内の乗員頭部に向けて風を吹き出す。
【0042】
また、空調ケース21の側面部には、フット開口部33が開口している。このフット開口部33も冷温風混合空間30から温度制御された空気が流入するものである。フット開口部33は、図示しないフットダクトを介してフット吹出口に接続され、この吹出口から車室内の乗員足元に向けて風を吹き出す。
【0043】
空調ケース21内のデフロスタ開口部31とフェイス開口部32との間には、両開口部31、32を開閉するためのデフロスタフェイスドア34が配設されている。デフロスタフェイスドア34は、空調ケース21に回動可能に支持された回転軸341と、回転軸341に結合された1枚の平板状のドア板部342とにより構成される、所謂片持ちドアである。
【0044】
また、空調ケース21内の冷温風混合空間30の上方には、フット開口部33と、デフロスタ開口部31およびフェイス開口部32に繋がる空気通路の上流端開口部と、を開閉するフットドア35が配設されている。フットドア35は、空調ケース21に回動可能に支持された回転軸351と、回転軸351に結合された2枚の平板状のドア板部352と、2枚のドア板部352を接続する扇形の連結板353とにより構成されるドアである。
【0045】
デフロスタ開口部31、フェイス開口部32およびフット開口部33は、2枚の吹出モードドアであるデフロスタフェイスドア34およびフットドア35により開閉され、設定された吹出モードに応じて各開口部31、32、33から送り出される風量割合が調節される。
【0046】
また、空調ケース21の下ケース21Cには、空調ケース21内の水(外部から流入した水や蒸発器22の表面で生成した凝縮水等)を車室外に排出するためのドレン孔211(排水孔に相当)が設けられている。換言すれば、蒸発器22のコア部22aの空気通過方向においてコア部22aを挟んだ両側のうち、空気流れ上流側を第1の側とし、空気流れ下流側を第2の側としてときに、ドレン孔211は、空調ケース21の第1の側に形成されている。
【0047】
図2に示すように、空調ケース21内に傾斜して配設された蒸発器22の下方側となる部位に、ドレン孔211は形成されている。
【0048】
空調ケース21の第1上ケース21Aおよび第2上ケース21Bには、蒸発器22の車両前方側となるヒータコア23配設部位との間に、下方側から上方に向かって突出する仕切壁部213が設けられている。以下、図3および図4も用いて、この部位の構成について説明する。
【0049】
図3は、室内ユニット1の仕切壁部213形成部位を拡大した縦断面図である。また、図4は、仕切壁部213を視認可能なように、下ケース21Cおよび蒸発器22等を取り外した状態の室内ユニット1を示す正面図であり、車両後方側のやや下方から見た図である。
【0050】
なお、図3は縦断面図であり、上ケースは第2上ケース21Bのみが図示されているが、図示されていない第1上ケース21Aにおいても、第2上ケース21Bと同様の要部構成を有している。また、図3では、下ケース21Cの図示を省略している。
【0051】
図3に示すように、第2下ケース21Bには、蒸発器22のコア部22aに対して離間し、第2下ケース21Bの底部側からコア部22aに沿って延びる仕切壁部213が形成されている。仕切壁部213の上端辺は、前述した加熱用開口部26の下端辺となっている。
【0052】
図3から明らかなように、仕切壁部213は、突出方向の途中で若干屈曲するとともに、屈曲部位よりも下方に、蒸発器22のヘッダタンク22bに向かって突出する水平リブ216を有している。図4に示すように、水平リブ216は、第1、第2上ケース21A、21Bのそれぞれにおいて、車両幅方向(図3における紙面表裏方向)に延設されている。
【0053】
このような構成により、水平リブ216を有する仕切壁部213は、コア部22a空気流れ下流側である第2の側において、コア部22aから流出する空気の通路に臨む内面213a(図3に示す一点鎖線で示す内面、仕切壁部213の表面のうち蒸発器側の面)がコア部22aから離れる方向に凹んだ凹状壁部となっている。
【0054】
図3に示すように、水平リブ216は、突出方向の先端部が、蒸発器22のインシュレータ22cを押圧しており、第2上ケース21Bと蒸発器22のヘッダタンク22bとの間の、風漏れを抑止するとともに、水密性を確保している。
【0055】
図3に示すように、仕切壁部213には、前述した蒸発器22側の内面213aから蒸発器22に向かって立設したリブ214(立設壁部に相当)が設けられている。図4に示すように、リブ214は、第1上ケース21Aと第2上ケース21Bとの結合面212に沿って上下方向に延設されている。リブ214は、結合面212から若干離れた位置に立設されて、結合面212に沿って延設されている。リブ214は、結合面212から離れておらず、結合面212の位置に立設されて、結合面212に沿って延設されるものであってもよい。
【0056】
内面213aがコア部22aから離れる方向に凹んだ仕切壁部213と、仕切壁部213の内面213aから蒸発器22に向かって立設し結合面212に沿って延びるリブ214とにより、第1上ケース21Aおよび第2上ケース21Bのそれぞれには、リブ214の結合面212がある側とは反対側の領域に、後述するキャブチルト時姿勢において凝縮水を貯留可能な貯水部(貯水凹部)219が形成されている。
【0057】
また、仕切壁部213には、蒸発器22側の内面213aから蒸発器22に向かって立設した複数の(本例では、各上ケースにおいて5つの)リブ215(分割壁部に相当)が、相互に間隔を空けて複数(本例では、各上ケースにおいて5つ)設けられている。各リブ215は、リブ214と平行に上下方向に延設されている。
【0058】
この複数のリブ215により、貯水部219は、複数の(本例では、各上ケースにおいて6つの)貯水部219aに分割されている。図4からも明らかなように、リブ214およびリブ215の相互の間隔は、結合面212の近傍では比較的狭く、結合面212から離れた部位では比較的広くなっている。すなわち、貯水部219は、リブ215によって、結合面212に近い貯水部219aの方が結合面212から遠い貯水部219aよりも容積が小さくなるように区画されている。
【0059】
また、蒸発器22のコア部22aから流出した空気は、コア部22aと仕切壁部213との間では、上方へ向かうので、リブ214、215は、コア部22a通過空気の通風方向に沿っていることになる。
【0060】
なお、リブ214、215の一部は、水平リブ216よりも下方にまで延設されている。これにより、各上ケース21A、21Bの下方部位の剛性を高めて、下ケース21Cとの接合端面の精度を向上している。
【0061】
次に、上記構成に基づき本実施形態の車両用空調装置の作動について説明する。
【0062】
車両用空調装置は、空調操作パネルに設けられた各種操作部材からの操作信号および空調制御用の各種センサからのセンサ信号が入力される電子制御装置(図示せず)を備えており、この制御装置の出力信号に基づいて、モータ13の駆動、エアミックスドア28や各吹出モードドア34、35の位置が制御される。
【0063】
モータ13が駆動され遠心多翼ファン12が回転すると、スクロールケーシング14内に吸入された空気がダクト部15を介して空気流入口24より空調ユニット20内に流入する。
【0064】
空気流入口24から流入した送風空気は、蒸発器22のコア部22aにて冷却されて冷風となる。この蒸発器22を通過した冷風は、エアミックスドア28による各開口部26、27の開度により、冷風バイパス通路25を流れる部分と、ヒータコア23で再加熱される部分とに振り分けられる。
【0065】
ヒータコア23で加熱された温風は、冷温風混合空間30において、冷風バイパス通路25からの冷風と混合され、吹出モードドア34、35により形成された吹出モードに応じて、デフロスタ開口部31、フェイス開口部32およびフット開口部33のいずれか1つもしくは複数を介して車室内に吹き出される。
【0066】
蒸発器22のコア部22aを空気が通過する際には、空気中の水蒸気がコア部22aの表面で凝縮して凝縮水を生成する。コア部22aの表面で生成した凝縮水は、図2に示す通常時(キャブオーバー型の車両のキャビン(車室)内に乗員が搭乗可能な状態時)の姿勢(第1姿勢に相当)では、コア部22aの空気流れ上流側の面(車両後方側の面、コア部22aへの空気流入面)から下ケース21Cの内面に滴下する。そして、下ケース21Cの内面に滴下した凝縮水は、ドレン孔211から車室外へ排水される。
【0067】
通常時の姿勢で空調装置を使用した直後等に、エンジンメンテナンスを行う等のために車両のキャビン部をチルトすると、これに伴い、キャビン内に搭載された室内ユニット1は、図5に示すように車両前方に傾斜する。
【0068】
図5に示すキャブチルト時の姿勢(第2姿勢に相当)では、蒸発器22のコア部22aは、上端が下端よりも車両前方側に位置するように傾斜している。換言すれば、コア部22aの空気通過方向においてコア部22aを挟んだ両側のうち、空気流れ上流側を第1の側とし、空気流れ下流側を第2の側としてときに、コア部22aは、上端が下端よりも第2の側に位置するように、コア部22aの延在面が鉛直方向に対して第2の側に傾斜している。例えば、コア部22aの延在面は、鉛直方向に対して約5〜10度傾斜している。
【0069】
図5に示す姿勢では、コア部22aから流出する凝縮水は、コア部22aの空気流れ下流側の面(車両前方側の面、コア部22aへの空気流出面)から第1、第2上ケース21A、21Bの仕切壁部213の内面213aに滴下する。すなわち、仕切壁部213とリブ214、215により形成された複数の貯水部219a内に滴下する。貯水部219a内に滴下した凝縮水は、貯水部219a内に貯留される。
【0070】
図5に示すキャブチルト時姿勢で貯水部219a内に貯留保持された凝縮水は、室内ユニット1がキャブチルト時の姿勢から通常時の姿勢に戻ると、蒸発器22の下部のヘッダタンク22bの上面に沿ってコア部22aを通過して、下ケース21Cの内面に流出し、ドレン孔211から車室外へ排水される。
【0071】
上述の構成および作動によれば、第1上ケース21Aおよび第2上ケース21Bのそれぞれには、仕切壁部213の内面213aから立設され第1上ケース21Aと第2上ケース21Bとの結合面212に沿って延びるリブ214、および、仕切壁部213の内面213aから立設されリブ214と平行に延びるリブ215が設けられ、キャブチルト時の姿勢において凝縮水を貯留する複数の貯水部219aが形成されている。
【0072】
したがって、車両のキャビンがチルトされたときには、コア部22aで生成した凝縮水は、コア部22aの車両前方側の面から第1上ケース21Aおよび第2上ケース21Bの仕切壁部213の内面213aへ流出し、仕切壁部213、リブ214およびリブ215とにより形成される複数の貯水部219aに貯留される。
【0073】
このようにして、室内ユニット1の空調ケース21が、キャブチルトに伴い第1姿勢と第2姿勢とで姿勢を変更したとしても、空調ケース21内の蒸発器22のコア部22aで生成した凝縮水が、キャブチルト時の第2姿勢で、結合面212から車室内へ漏れることを、リブ214、215という比較的簡単な構造で防止することができる。
【0074】
また、リブ215を設けることにより、仕切壁部213とリブ214とにより形成される貯水部219を、複数の貯水部219aに分割している。したがって、キャブチルト時に蒸発器22のコア部22aから貯水部219に流入した凝縮水を、複数に分割された各貯水部219aに貯留することができる。これにより、分割貯留された凝縮水が、両上ケース21A,21Bの結合面212に隣接する貯水部219aに集合することを抑止することができ、凝縮水が結合面212から車室内へ漏れることを確実に防止することができる。
【0075】
また、貯水部219aの形成を、リブ214、215という仕切壁部213の内面213aから立設する壁部により行っている。貯水部219aに流入した凝縮水は、表面張力により各リブ214、215の基端部(仕切壁部213とリブ214、215との接合部)周辺に保持され易く、移動し難い。これにより、貯水部219内における凝縮水の移動を確実に抑止することができる。
【0076】
また、リブ214およびリブ215は、蒸発器22のコア部22aを通過する空気の通風方向に沿って延設されている。したがって、リブ214およびリブ215を設けても、これらが通風抵抗となることを抑制することができる。
【0077】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0078】
上記実施形態では、リブ215は、リブ214に平行に延設されていたが、これに限定されるものではない。例えば、結合面212が延びる方向と蒸発器22のコア部22aを通過する空気の流通方向とが異なる場合には、リブ214を結合面212に沿って延設し、リブ215を通風方向に沿わせるように延設するものであってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、リブ215を設けて両上ケース21A、21Bのそれぞれに複数の貯水部219aを形成していたが、これに限定されるものではない。例えば、リブ215を設けずに、両上ケース21A、21Bに、それぞれ1つの貯水部219を形成するものであってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、蒸発器22のコア部22aの空気の通過方向において空気流れ上流側を第1の側とし、空気流れ下流側を第2の側として、空調ケース21の第1の側にドレン孔211を設け、空調ケース21の第2の側として貯水部219を設けていたが、これに限定されるものではなく、逆であってもかまわない。蒸発器22のコア部22aの空気の通過方向において空気流れ下流側を第1の側とし、空気流れ上流側を第2の側として、空調ケース21の第1の側にドレン孔211を設け、空調ケース21の第2の側として貯水部219を設けるものであってもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、蒸発器22が収容される空調ケース21はキャブチルト可能な車両のキャビンに搭載され、空調ケース21の姿勢を、通常時の姿勢を第1姿勢とし、キャブチルト時の姿勢を第2姿勢としていたが、これに限定されるものではない。例えば、空調ケース21の搭載場所が、車両においてキャビン以外のチルト動作可能な部位に搭載されるものであっても本発明は適用して有効である。
【0082】
また、車両の一部がチルトされるものに限定されず、例えば、平坦な地表面上と傾斜した地表面上とを移動し、車両全体が大きく姿勢を変更する建設機械車両等に搭載される空調装置に本発明を適用しても有効である。
【符号の説明】
【0083】
21 空調ケース
21A 第1上ケース(第1ケース体)
21B 第2上ケース(第2ケース体)
22 蒸発器(冷却用熱交換器)
22a コア部
211 ドレン孔(排水孔)
212 結合面
213 仕切壁部(凹状壁部)
213a 内面
214 リブ(立設壁部)
215 リブ(分割壁部)
216 水平リブ(凹状壁部の一部)
219 貯水部
219a 貯水部(分割された貯水部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケース体(21A)および第2ケース体(21B)を含む分割成形した複数のケース体(21A、21B、21C)を結合してなり、内部に車室内に吹き出す空気が流通する空調ケース(21)と、
前記空調ケース(21)に対して固定されて前記空調ケース(21)内に設けられる熱交換器であって、前記空調ケース(21)の内部を流通する前記空気が通過するコア部(22a)を有し、前記コア部(22a)が前記空気の通過方向に対して交差する方向に広がるように延在し、前記コア部(22a)を通過する前記空気を冷却する冷却用熱交換器(22)と、
前記空調ケース(21)に形成された排水孔(211)と、を備え、
前記排水孔(211)は、前記コア部(22a)の前記空気の通過方向において前記コア部(22a)を挟んだ第1の側および第2の側のうち、前記第1の側に位置する部分に形成されて、前記コア部(22a)の表面で生成した凝縮水を前記空調ケース(21)の外部へ排出するものであり、
前記第1ケース体(21A)と前記第2ケース体(21B)との結合面(212)が、前記空調ケース(21)の前記第2の側に形成されているとともに、前記第1ケース体(21A)および前記第2ケース体(21B)は、前記第2の側において前記空気の通路に臨む内面(213a)が前記コア部(22a)から離れる方向に凹んだ凹状壁部(213)を有しており、
前記空調ケース(21)の姿勢が、
前記コア部(22a)の上端が下端よりも前記第1の側に位置するように、前記コア部(22a)の延在面が鉛直方向に対して前記第1の側に傾斜して、前記凝縮水が前記排水孔(211)から前記空調ケース(21)の外部へ排出される第1姿勢となる場合と、
前記コア部(22a)の上端が下端よりも前記第2の側に位置するように、前記コア部(22a)の延在面が鉛直方向に対して前記第2の側に傾斜して、前記凝縮水が前記第1ケース体(21A)および前記第2ケース体(21B)の前記凹状壁部(213)の内面(213a)に流出する第2姿勢となる場合と、をとりうる車両用空調装置であって、
前記第1ケース体(21A)および前記第2ケース体(21B)のそれぞれに、前記内面(213a)から立設され前記結合面(212)に沿って延びる立設壁部(214)が設けられ、
前記第1ケース体(21A)および前記第2ケース体(21B)のそれぞれには、前記凹状壁部(213)と前記立設壁部(214)とにより、前記立設壁部(214)の前記結合面(212)とは反対側に、前記空調ケース(21)の姿勢が前記第2姿勢となった場合に前記凝縮水を貯留する貯水部(219)が形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記凹状壁部(213)には、前記内面(213a)から立設し、前記貯水部(219)を複数に分割する分割壁部(215)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記分割壁部(215)は、前記立設壁部(214)と平行に延設されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記立設壁部(214)および前記分割壁部(215)は、前記コア部(22a)を通過する空気の通風方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記分割壁部(215)は、前記コア部(22a)を通過する空気の通風方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−240581(P2012−240581A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113973(P2011−113973)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】