説明

車両用空調装置

【課題】ドアを駆動する筒状の回転軸部の成形性向上及びドアの組立て性向上が図れる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置100は、空調ケース20及び仕切り板27に、軸方向において少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、第1ドアを駆動する第1回転軸部230と、第1回転軸部230と同軸で第1回転軸部230とは独立して回転可能に空調ケース20に支持されて、第2ドアを駆動する筒体状の第2回転軸部240と、第2回転軸部240の筒体内部に挿入配置され、軸方向の一端側で第1回転軸部の他端部232と結合して同軸に一体となって回転し第1回転軸部230を回転させる第1ドア駆動用シャフト25と、を備える。第1回転軸部の他端部232は、第2回転軸部240の筒体内部にまで延びており、かつ第2回転軸部240と回転可能に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に配設した複数の空気通路のそれぞれを開閉可能なドアを有し、各ドアを駆動する軸部が同軸である車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来技術は、通路に設けられた回転軸方向に並ぶ2個のドアの駆動機構に関するものである。各ドア本体を開閉するために回転させる各回転軸部は、同軸に配される構造であり、両方の回転軸部は、当該回転軸の軸方向の一方側に配置したレバー等を駆動することに伴ってそれぞれ回転する構造となっている。レバー等の駆動機構から近い側にあるドアの回転軸部が円筒状であり、駆動機構から遠い側にあるドアの回転軸部は、当該近い側のドアにおける円筒状の回転軸部に回転可能に内挿されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第3030778A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、円筒状の回転軸部に同軸に挿入設置されるシャフトを有する構造では、ケースとドアの組み付け時に当該シャフトの倒れ等によって組み付けの不良が生じるという問題がある。また、円筒状の回転軸部の成型時に製品にひけや撓みが生じて品質を確保できないことがあり、これに伴って生じるドアの作動不良が問題となる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアを駆動する筒状の回転軸部の成型性向上及びドアの組立て性向上が図れる車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1の車両用空調装置に係る発明は、車室内に供給する空気が流通する空気通路を内部に有する空調ケース(20)と、空調ケースに一体に形成される板、または空調ケースとは別部品の板であって、空調ケース内の空気通路を第1区画通路(26L)と第2区画通路(26R)とに仕切る仕切り板(27)と、第1区画通路に設けられて第1区画通路を開閉する第1ドア(23)と、第1ドアと軸方向に並ぶように第2区画通路に設けられて第2区画通路を開閉する第2ドア(24)と、空調ケース及び仕切り板に、軸方向において少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、第1ドアを駆動する第1回転軸部(230)と、第1回転軸部と同軸で第1回転軸部とは独立して回転可能に空調ケースに支持されて、第2ドアを駆動する筒体状の第2回転軸部(240)と、当該第2回転軸部の筒体内部に挿入配置されるシャフトであって、軸方向の一端側で第1回転軸部の他端部(232)と結合して同軸に一体となって回転し第1回転軸部を回転させる第1ドア駆動用シャフト(25)と、を備え、
第1回転軸部の他端部(232)は、第2回転軸部の筒体内部にまで延びており、かつ第2回転軸部と回転可能に嵌合することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第2回転軸部の一方側に位置する第1回転軸部の他端部を第2回転軸部の筒体内部にまで延ばして配置することにより、両端が開口する筒体状である第2回転軸部を成型するときの、金型の型抜きを、筒体内部に第1回転軸部が内在する側から抜く分割型と第1回転軸部が内在しない側から抜く分割型とに分けることができる。これにより、型抜き工程を良好に行える型抜きの分割面を設定でき、金型の抜き勾配を緩和することが可能となるため、筒体状の第2回転軸部に生じ得るひけや撓みを軽減できる。
【0008】
さらに第2回転軸部の筒体内部にまで延ばした第1回転軸部の他端部を第2回転軸部と回転可能に嵌合することにより、すでに空調ケース等によって支持されている第1回転軸部に対して、その外周面に第2回転軸部の筒体内面を嵌合させて両者を同軸に組み付けることができる。さらに、第1回転軸部と同軸に組み付いている第2回転軸部の筒体内部に、第1ドア駆動用シャフトを挿入し、第1回転軸部の他端部と結合する組み立てを実現できる。これらの軸方向に並ぶ二つのドアの組立て性を円滑かつ正確に実施することができる。以上より、ドアを駆動する筒体状の回転軸部の成型性向上及びドアの組立て性向上が図れる車両用空調装置を提供できる。
【0009】
請求項2の発明によると、第1回転軸部の他端部(232)の外形は、第2回転軸部と回転可能に嵌合する部位において、先細り状であることを特徴とする。この発明によれば、第1回転軸部の他端側の外形が先細り状であることにより、第1回転軸部の他端側と嵌合する第2回転軸部の軸径も小さくすることが可能である。第2回転軸部の軸径を第1回転軸部の軸径に近づけるように小さくすることができれば、空気通路を流れる空気と接触する軸部が閉める容積を小さくできるため、空気の流通抵抗を低減することができ、車両用空調装置の性能向上に貢献することができる。また、第1回転軸部の他端側の外形が先細り状であることにより、第1回転軸部の他端部に嵌合する第2回転軸部の筒体内面との接触面積を増加させることができ、両者間の支持力が安定することになり、両者の同軸関係が良好な状態に維持できる。
【0010】
請求項3の発明によると、第1ドア駆動用シャフトの他端側は、第2回転軸部の他端側に回転可能に支持されていることを特徴とする。この発明によれば、第1ドア駆動用シャフトは、一端側で第1回転軸部に結合して第1回転軸部を介して空調ケース等に支持されるとともに、他端側で第2回転軸部を介して空調ケース等に支持されることになる。したがって、各回転軸部及び駆動用シャフト間の同軸関係が良好な状態に維持できるので、ドアの作動不良が起こらない適正な組み立てが実施でき、組立て性の改善も図れる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用空調装置の内部構成を説明する模式的平面図である。
【図2】図1についてII方向から見たときの模式的断面図である。
【図3】二つのドアの各回転軸部、第1ドア駆動用シャフト、及びケースの関係を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態の車両用空調装置について図1〜図3にしたがって説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用空調装置の内部構成を説明する模式的平面図である。図2は、図1についてII方向から見たときの模式的断面図である。図1において、紙面の上方が車両前方、下方が車両後方、左方向が車両左方向、右方向が車両右方向をそれぞれ示している。図2において、紙面の上方が車両上方向、下方が車両下方向、左方向が車両前方、右方向が車両後方をそれぞれ示している。
【0015】
車両用空調装置は、図1に示すように、送風機ユニット1と、この送風機ユニット1から送風された送風空気の温度調節を行う調整部をなす空調ユニット2とを備えている。この車両用空調装置の通風系は、大別して、送風機ユニット1と、空調ユニット2との2つの部分に分かれ、それぞれはケース覆われた外殻を有している。送風機ユニット1は車室内のインストルメントパネル下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されている。これに対し、空調ユニット2は車室内のインストルメントパネル下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0016】
送風機ユニット1は、遠心多翼ファンからなる送風ファン10を有し、この送風ファン10は渦巻き状のスクロールケーシング11内に配置されて、電動モータにて回転駆動される。送風ファン10の送風空気は、スクロールケーシング11の渦巻き形状に沿って図1に示す矢印方向に送風される。
【0017】
送風ファン10の吸入口は、車両上方側に設けられ、内外気切替箱を通して空気を吸入する。内外気切替箱は、内気(車室内空気)吸入口及び外気(車室外空気)吸入口と、これらの吸入口を切替開閉する切替ドアとを有している。
【0018】
空調ユニット2は、1つの共通の空調ケース20内に蒸発器21とヒータコア22を両方とも一体的に内蔵する。空調ケース20は、例えばポリプロピレンといった樹脂の成形品からなり、図2の車両上下方向に延びる分割面を有する複数の分割ケースからなる。この複数の分割ケースは、第1ケース部材20a及び第2ケース部材20bからなり、蒸発器21、ヒータコア22や、後述する各ドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ケース20を形成する。
【0019】
空調ユニット2は、車室内のインストルメントパネル下方部の略中央部に、車両の前後、左右及び上下方向に対して、図1及び図2に示す状態に配置されている。そして、空調ケース20のうち、最も車両前方側の部位には、空気入口201が配設されている。この空気入口201には、送風機ユニット1から送風される空調空気が流入する。この空気入口201は、送風機ユニット1のスクロールケーシング11の空気出口部に接続するために、空調ケース20のうち、助手席側の側面に開口している。
【0020】
空調ケース20内において空気入口201直後の部位に蒸発器21が配置されている。蒸発器21は、車両前後方向には薄型の形態で空調ケース20内通路を横断するように配置されている。したがって、蒸発器21の車両上下及び車両左右に延びる前面に空気入口201からの送風空気が流入する。この蒸発器21は、冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却する。
【0021】
蒸発器21の空気流れ下流側(車両後方側)には、所定の間隔を隔ててヒータコア22が配置されている。ヒータコア22は、蒸発器21を通過した冷風を加熱し、その内部に高温の温水(例えばエンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱する。
【0022】
空調ケース20内部の空気通路は、図1及び図2に示すように車両前後に延びるように形成されている。空調ケース20内部の空気通路は、センタープレートである仕切り板27により、車両左右方向に第1区画通路26Lと第2区画通路26Rとに仕切られている。第1区画通路26Lは助手席側空気通路であり、送風機ユニット1に近接している。第2区画通路26Rは運転席側空気通路であり、第1区画通路26Lに比べて送風機ユニット1から遠い位置にある。仕切り板27は、空調ケース20を構成する第1ケース部材20aまたは第2ケース部材20bに一体に形成されて一部品として構成してもよいし、空調ケース20とは別部品として構成されて空調ケース20と組み立てられる部品でもよい。
【0023】
仕切り板27は、2つの通路(第1区画通路26Lと第2区画通路26R)を仕切るために、蒸発器21の空気下流側部位からヒータコア22周辺部を通ってヒータコア22の下流側端部に至るまで、車両前後に延びるように配置されている。この仕切り板27は空調ケース20の部品と一体に形成することができ、また樹脂にて空調ケース20と一体に成形することができ、ヒータコア22の配置部位ではヒータコア22との干渉を回避するための切欠き部が形成されている。
【0024】
ヒータコア22は、第1区画通路26Lと第2区画通路26Rを横断するように配置されており、このヒータコア22の内部は、扁平チューブの扁平面またはコルゲートフィンのフィン面により、仕切り板27と同一位置で第1区画通路26Lと第2区画通路26Rに仕切られている。
【0025】
空調ケース20内の第1区画通路26L及び第2区画通路26Rにおいて、ヒータコア22よりも上方部位には、それぞれ、このヒータコア22をバイパスして冷風空気が流れる第1冷風バイパス通路28Lと第2冷風バイパス通路28R(以下、単に冷風バイパス通路28L,28Rと称することがある)が左右方向に形成されている。
【0026】
また、第1区画通路26L、第2区画通路26Rにおいて、ヒータコア22と蒸発器21との間の部位には、ヒータコア22で加熱される温風と、第1冷風バイパス通路28L、第2冷風バイパス通路28Rを通ってヒータコア22をバイパスする冷風との風量割合を調整する第1エアミックスドア23(第1ドアに相当する)、第2エアミックスドア24(第2ドアに相当する)が設けられている。第1エアミックスドア23は第1区画通路26Lを開閉し、第2エアミックスドア24は第2区画通路26Rを開閉する。
【0027】
第1エアミックスドア23及び第2エアミックスドア24(以下、単に総称してエアミックスドアと称することがある)は、モータ等の駆動手段によってスライドさせられて、冷風バイパス通路28L,28R側及びヒータコア22側に移動するスライド方式のドアである。
【0028】
エアミックスドア23,24は、ドア本体23a,24a、ドア本体23a,24aの端部に設けられるラック(ドアスライドギアともいう)、第1回転軸部230及び第2回転軸部240(以下、単に回転軸部230,240と称することがある)に設けられ駆動手段により回転されるピニオン233,234,243,244(シャフトギアともいう)、ドアガイドピン等から構成されている。ラックは、各ドア本体23a,24aのそれぞれの移動方向全体に延びるように形成されている。ドア本体23aに形成される二つのラックは、ピニオン233,234のそれぞれと噛み合うように構成されている。また、ドア本体24aの軸方向の両側に形成される二つのラックは、ピニオン243,244のそれぞれと噛み合うように構成されている。
【0029】
第1ドアのピニオン233,234は、回転軸の軸方向の一方側(例えば、車両右方向側)に設けられた第1ギア252に伝えられるサーボモータ50の回転駆動力によって第1ギア252とともに回転し、この回転駆動力が二つのラックを第1回転軸部230の軸方向に対して直交する方向に移動させる力として伝達され、ドア本体23aが当該直交する方向に移動することになる。
【0030】
第2ドアのピニオン243,244は、回転軸の軸方向の一方側(例えば、車両右方向側)に設けられた第2ギア254に伝えられるサーボモータ51の回転駆動力によって第2ギア254とともに回転し、この回転駆動力が二つのラックを第2回転軸部240の軸方向に対して直交する方向に移動させる力として伝達され、ドア本体24aが当該直交する方向に移動することになる。
【0031】
エアミックスドア23,24は、そのスライド位置により、ヒータコア22を通る温風の風量とヒータコア22を通過しない冷風の風量との比率を調節する。エアミックスドア23,24が図2に示すヒータコア22側の位置にあるときは最大冷房時であり、第1温風通路29L、第2温風通路29R(以下、単に温風通路29L,29Rと称することがある)を閉めてヒータコア22への空気の流れを完全に遮断し、車室内に冷房風を提供する。逆に、エアミックスドア23,24が図2に示す冷風バイパス通路28L,28R側の位置にあるときは最大暖房時であり、冷風バイパス通路28L,28Rを閉めて蒸発器21を通過した空気をすべてヒータコア22へ流して加熱し、車室内に暖房風を提供する。
【0032】
また、エアミックスドア23,24が中間の位置にあるときは、冷風バイパス通路28L,28Rと温風通路29L,29Rの両方が部分的に開放されて冷風と温風の両方が流下するようになり、下流側に設けられる第1エアミックスチャンバ30L、第2エアミックスチャンバ30R(以下、単にエアミックスチャンバ30L,30Rとも称する)で混合し、温調されてから開放されている各吹出口を通過して車室内に送られる。エアミックスドア23,24は、そのスライド位置に応じて冷風と温風の風量割合を調節し、空調風の温度調節を行う。エアミックスドア23,24のスライド位置は、オートエアコンの設定温度に応じて、各吹出口を開閉する各ドアによる吹出しモードとともに制御装置で決定され、マニュアルエアコンの場合には設定された温度及び吹出しモードに応じて、制御装置で決定される。
【0033】
また、仕切り板27によって左右に区画される第1エアミックスチャンバ30L、第2エアミックスチャンバ30Rのそれぞれは、蒸発器21から流れてきた冷風空気とヒータコア22で加熱された温風空気とが混ざり合う空間である。この空間で温度調節された空調風は、各吹出口を開閉する各ドアを制御することによって適正な風量割合で車室内へ供給することができる。
【0034】
ヒータコア22の下流側には、仕切り板27により左右に仕切られて、第1区画通路26L側の第1温風通路29Lと第2区画通路26R側の第2温風通路29Rとが設けられている。温風通路29L,29Rは、空調ケース20の下部から上方に向けて延びるように形成され、空調ケース20の車両左右幅全体に亘る幅寸法を有し、その幅寸法は車両前後方向の寸法よりも大きくなっている。つまり、温風通路29L,29Rは、前後方向に薄く、横長で上下方向に長い扁平状の通路を呈している。温風通路29L,29Rはヒータコア22の上端部付近でエアミックスチャンバ30L,30Rにそれぞれ接続されて、冷風バイパス通路28L,28Rにそれぞれ合流する。
【0035】
空調ケース20の上部のうち車両前方側の部位には、第1区画通路26L、第2区画通路26Rのそれぞれに対応して左右に第1デフロスタ開口部31L、第2デフロスタ開口部31R(以下、単にデフロスタ開口部31L,31Rと称することもある)が開口している。これらデフロスタ開口部31L,31Rは、それぞれエアミックスチャンバ30L,30Rから温度制御された空調空気が流入するものであって、デフロスタダクトを介して車室内のデフロスタ吹出口に接続されて、このデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
【0036】
デフロスタ開口部31L,31Rは、それぞれ第1デフロスタドア32L、第2デフロスタドア32R(以下、単にデフロスタドア32L,32Rまたは総称してデフロスタドア32とも称する)により開閉される。デフロスタドア32L,デフロスタドア32Rには、それぞれ第1回転軸部321L、第2回転軸部321R(以下、単に回転軸部321L,321Rとも称する)が一体に結合されている。回転軸部321L,321Rは、デフロスタドア32L,32Rと同様に、車両左右方向に沿って、同一直線上に並ぶように空調ケース20に設けられている。これら回転軸部321L,321Rの一方端は、仕切り板27に設けられた回動支持部を介して回動可能に支持されている。また、回転軸部321L,321Rの他方端は、駆動用レバー及びリンク機構を介してサーボモータ等からなる吹出モード切替用のアクチュエータ装置に連結されて、駆動されるようになっている。
【0037】
このように第1デフロスタドア32L、第2デフロスタドア32Rは、サーボモータ等の駆動手段によって第1回転軸部321L、第2回転軸部321Rがそれぞれ回転駆動されることにより、それぞれデフロスタ開口部31L,31Rを開閉する片側枢支式の回転ドアである。デフロスタドア32L,32Rが図2に示す一点鎖線位置に操作されると、デフロスタ開口部31L,31Rを全開するとともに第1連通口44L、第2連通口44Rを閉じるようになっている。第1連通口44L、第2連通口44Rは、第1区画通路26L、第2区画通路26Rにそれぞれ形成され、エアミックスチャンバ30L,30Rからフェイス開口部及びフット開口部側へ空気を流すための通路となる。
【0038】
また、空調ケース20の上部のうち車両後方側の部位には、複数組(本実施形態では、5組の合計10個)の左右のフェイス開口部33L〜37L,33R〜37Rが設けられており、これら各フェイス開口部のうち中央側のフェイス開口部33L,33R,36L,36Rには、エアミックスチャンバ30L,30Rから温度制御された空調空気が第1連通口44L、第2連通口44Rを介して流入する。
【0039】
左右のセンタフェイス開口部33L,33Rには、それぞれ左右のセンタフェイスダクトが連結され、このダクトを介して、インストルメントパネル左右方向の中央部上方側に配置されている車室内のセンタフェイス吹出口に連通し、この吹出口から車室内中央部の乗員頭部に向けて風を吹き出す。センタフェイス開口部33L,33Rの車両左右方向の両側に配置された左右のサイドフェイス開口部34L,34R,35L,35Rには、それぞれ左右のサイドフェイスダクトが連結され、このダクトを介して、インストルメントパネル左右両端部において車室内に向けて開口している左右のサイドフェイス吹出口に連通し、この吹出口から車室内左右両側部の乗員頭部側または車両側面窓ガラスに向けて風を吹き出す。サイドフェイス吹出口は、手動操作される風向変更装置を備えており、この風向変更装置の風向板の方向を調整することにより、車室内左右両側部の乗員頭部側または車両側面窓ガラスに向けて風を吹き出すことが可能になっている。
【0040】
また、左右のサイドフェイス開口部34L,34R,35L,35Rはエアミックスチャンバ30L,30Rと直接連通しているため、デフロスタドア32L,32R、第1フットフェイス切替用ドア40L及び第2フットフェイス切替用ドア40R(以下、単にフットフェイス切替用ドア40L,40Rとも称する)の操作位置と無関係に、全吹出モードにおいて常にエアミックスチャンバ30L,30Rからの空気を吹出すことができる。
【0041】
また、左右のセンタフェイス開口部33L,33Rよりも中央寄りの部位に配置された左右のリヤフェイス開口部36L,36Rは、空調ケース20の外部にてダクトを介して左右の補助リヤフェイス開口部37L,37Rに連通している。この開口部37L,37Rは、空調ケース20に設けられたリヤフェイス通路38L,38Rに接続されている。このリヤフェイス通路38L,38Rの開口端には、リヤフェイスダクトが接続されており、このダクトの先端に形成されたリヤフェイス吹出口から後席の乗員の頭部側に向けて風を吹き出す。また、空調ケース20内で、エアミックスチャンバ30L,30Rより車両後方側の部位に、左右のフット用空気入口部39L,39Rが第1区画通路26L、第2区画通路26Rのそれぞれにおいて開口している。
【0042】
左右のフット用空気入口部39L,39Rは、センタフェイス開口部33L,33R及びリヤフェイス開口部36L,36Rに対向して設けられ、第1区画通路26L、第2区画通路26Rのそれぞれに設けられた各フットフェイス切替用ドア40L,40Rにより切り替え開閉される。
【0043】
片側枢支式の回転ドアである第1フットフェイス切替用ドア40L、第2フットフェイス切替用ドア40Rには、それぞれ第1回転軸部401L、第2回転軸部401R(以下、単に回転軸部401L,401Rとも称する)が一体に結合されている。回転軸部401L,401Rは、フットフェイス切替用ドア40L,40Rと同様に、車両左右方向に沿って、同一直線上に並ぶように空調ケース20に設けられている。
【0044】
これら回転軸部401L,401Rの一方端は、仕切り板27に設けられた回動支持部を介して回動可能に支持されている。また、回転軸部401L,401Rの他方端は、駆動用レバー及びリンク機構を介してサーボモータ等からなる吹出モード切替用のアクチュエータ装置に連結されて、駆動されるようになっている。また、フットフェイス切替用ドア40L,40Rが図2に示す一点鎖線位置に操作されると、中央側のフェイス開口部33L,33R,36L,36Rを全開するとともに左右のフット用空気入口部39L,39Rを閉じるようになっている。
【0045】
フット用空気入口部39L,39Rからの空気は前席用フット開口部41L,41Rに流れ、さらに前席用フットダクト、車室内の前席用吹出口を経て前席の乗員足元に吹き出される。また、フット用空気入口部39L,39Rからの空気の一部は、後席用フット通路42L,42Rを流れて後席用フット開口部43L,43Rに至り、ここから後席用フットダクト、車室内の後席用吹出口を経て後席の乗員足元に吹き出される。
【0046】
デフロスタドア32L,32R及びフットフェイス切替用ドア40L,40Rは、吹出モード切替用のドアであって、左右2つの第1区画通路26L、第2区画通路26R内に配され、第1回転軸部321L,401L及び第2回転軸部321R,401Rを独立駆動または一体同時駆動のいずれかで回動駆動することによって、エアミックスチャンバ30L,30Rで温度調整された空調空気を車室内に吹き出す吹出モードの切り替えを、左右独立駆動または左右一体駆動のいずれかで操作することができる。
【0047】
(各回転軸部230,240を支持する構造の説明)
次に、回転軸部の軸方向に並ぶ第1ドアと第2ドアを空調ケース20に対して取り付けるときの支持構造について図3を参照して説明する。図3は、二つのドアの各回転軸部230,240、第1ドア駆動用シャフト25、及び空調ケース20の関係を説明するための図であり、これらを車両後方に向かって見たものを断面で示した部分断面図である。以下の文言において、「車両左側」は、「回転軸部の一端側」と同意であり、「車両右側」は、「回転軸部の他端側」と同意である。つまり、各回転軸部及び第1ドア駆動用シャフトにおいて、車両左側の端部を一端部とし、車両右側の端部を他端部とする。
【0048】
図3に示すように、ドア本体23aは、ドア本体23aの軸方向両端に設けられた2個のラックのそれぞれに、第1回転軸部230の一端側(車両左側)と中ほどとに一体に形成された2個のピニオン233,234がかみ合うことにより、第1回転軸部230と一体となっている。ドア本体24aは、ドア本体24aの軸方向両端部に設けられた2個のラックのそれぞれに、第2回転軸部一端部241(車両左側に位置する一端部)と他端側とに一体に形成された2個のピニオン243,244が噛み合うことにより、第2回転軸部240と一体となっている。
【0049】
第1回転軸部230は、ピニオン233よりも車両左側に位置する一端部231が、第1ケース部材の支持部20a1によって回転可能に支持されるとともに、第2回転軸部240の筒体内部にまで延びる他端部232とピニオン234との間の部位が、仕切り板27に形成された支持部271によって回転可能に支持される。第1ケース部材の支持部20a1には、ケース内面よりも車両右方向に突出する軸方向突出部20a2が形成されている。
【0050】
仕切り板の支持部271には、仕切り板27の表面よりも、車両左方向に突出する軸方向突出部271aと車両右方向に突出する軸方向突出部271bとが形成されている。第1回転軸部の他端部232は、第1ドア駆動用シャフト25の車両左側に位置する一端部251と第2回転軸部240の筒体内部において結合される結合凹部であり、両者の結合は嵌合構造、螺合構造等によって構成されている。螺合構造の場合には、第1ドア駆動用シャフトの一端部251に雄螺子が形成され、第1回転軸部の他端部232に雌螺子が形成されることになる。
【0051】
第1回転軸部230の他端側の外周面は、第2回転軸部240の一端側の内周面と回転可能に嵌合する。第1回転軸部の他端部232と第1ドア駆動用シャフトの一端部251は、第2回転軸部240の筒体内部で結合する連結部である。第1ドア駆動用シャフト25を第1回転軸部230に組み付ける場合には、第2回転軸部240の一端側に回転可能に支持される第1回転軸部の他端部232に対して、第2回転軸部240の他端側の開口部から第1ドア駆動用シャフト25を挿入し、第1ドア駆動用シャフトの一端部251を第1回転軸部の他端部232に嵌合、または螺合させて両者を結合する。
【0052】
第1ドア駆動用シャフト25は、自身が回転することにより、一体に結合されている第1回転軸部230を回転させる駆動シャフトである。第1ドア駆動用シャフト25は、車両右側に位置する他端部に第1ギア252を備えている。第1ギア252は、例えばサーボモータ50等のアクチュエータ装置に接続され、アクチュエータ装置からの駆動力を受けて回転駆動される。したがって、アクチュエータ装置からの駆動力によって、第1ギア252とともに第1ドア駆動用シャフト25が回転すると第1ドア駆動用シャフト25と一体に第1回転軸部230が回転し、回転するピニオン233,234とラックとの噛み合いにより、ドア本体23aが軸方向に対して垂直な方向にスライド移動する。なお、第1ギア252とアクチュエータ装置との間に、リンク機構を連結するように構成してもよい。
【0053】
第2回転軸部240は、軸の両端部241,242が開口する円筒体であり、その内部には第1ドア駆動用シャフト25が挿入配置されている。第2回転軸部240の円筒内径は、第1ドア駆動用シャフト25の外径よりも大きく設定されている。第1ドア駆動用シャフト25は、第2回転軸部240の円筒内部で回転可能である。つまり、第1ドア駆動用シャフト25の回転によって第2回転軸部240がとも回りすることはなく、その逆のとも回りも起こらない。
【0054】
第1回転軸部の他端側の外形は、第2回転軸部240と回転可能に嵌合する部位において、先細り状に形成されていることが好ましい。当該先細り状は、先端に向かうにつれて、徐々に軸径が細くなる形状、段階的に軸径が細くなる形状等のいずれであってもよい。第1回転軸部の他端側が先細り状であることにより、第1回転軸部の他端側と嵌合する第2回転軸部240における軸径を小さく設定することができる。回転軸部の軸径を小さくできることによれば、空気通路を流れる空気の流通抵抗を低減することができる。
【0055】
第1ドア駆動用シャフト25の他端側は、第2回転軸部240の他端側でその円筒内面に回転可能に接触することにより、支持されていることが好ましい。すなわち、第1ドア駆動用シャフト25は、一端側で第1回転軸部230と一体に結合され、第1回転軸部230の他端側が第2回転軸部240の一端側に回転可能に支持されることで一端側が支持される。さらに第1ドア駆動用シャフト25は、他端側で第2回転軸部240の円筒内面によって独立して回転可能に支持されている。
【0056】
第2回転軸部240のピニオン244よりも車両右側に位置する他端部242には、第2ギア254が第2回転軸部240に同軸に固定されている。第2ギア254は、例えばサーボモータ51等のアクチュエータ装置に接続され、アクチュエータ装置からの駆動力を受けて回転駆動される。なお、第2ギア254とアクチュエータ装置との間に、リンク機構を連結するように構成してもよい。
【0057】
第2回転軸部240は、ピニオン243が形成されている一端部241が、第1回転軸部230によって内側から回転可能に支持されるとともに、ピニオン244と第2ギア254の間の部分が、第2ケース部材の支持部20b1によって回転可能に支持されている。第2ケース部材の支持部20b1には、第2ケース部材20bの内面よりも、車両左方向に突出する軸方向突出部20b2と車両右方向に突出する軸方向突出部20b3とが形成されている。
【0058】
上記構成により、第1回転軸部230は、軸方向長さにおいて、一端部231と他端部232よりも一端部寄りの2箇所で空調ケース20及び仕切り板27によって回転可能に支持されるとともに、第1ドア駆動用シャフト25との結合によって当該者シャフトと同軸に支持され得る。
【0059】
第2回転軸部240は、軸方向長さにおいて、一端部241で第1回転軸部の他端部232が内嵌して回転可能に支持され、さらにピニオン244よりも他端側に近い部位で外周面を回転可能に支持される。また、第1ドア駆動用シャフト25は、上記のようにケース等及び第2回転軸部240に回転可能に支持されている第1回転軸部230に同軸に結合して支持されることで、第2回転軸部240の筒体内部で、大きく傾いたり、倒れたりすることなく、回転軸部230,240の回転動作を円滑に維持することができる。
【0060】
また、アクチュエータ装置からの駆動力によって、第2ギア254とともに第2回転軸部240が回転すると、回転するピニオン243,244とラックとの噛み合いにより、ドア本体24aが軸方向に対して垂直な方向にスライド移動する。このように、サーボモータ50とサーボモータ51を個別に制御することにより、第1エアミックスドア23と第2エアミックスドア24は、独立してスライド移動可能なため、各通路において、冷風と温風の混合割合を個別に制御でき、独立した温度制御が可能である。
【0061】
また、第1ケース部材20a、第2ケース部材20b及び仕切り板27は、ポリプロピレン(PP)樹脂で形成されており、あるいはさらに強度を向上する場合には、所定量のタルクやガラス繊維を含有したPP樹脂が用いられる。第1回転軸部230、第2回転軸部240、第1ドア駆動用シャフト25、第1ギア252、及び第2ギア254は、強度を要するため、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアセタール(POM)樹脂、または所定量のタルクやガラス繊維を含有したPP樹脂で形成されている。
【0062】
空調ケース20におけるドアが設置される部分は、一対のケース部材(第1ケース部材20aと第2ケース部材20b)が組み合わされている。当該一対のケース部材の組み立てに関する構成は、ドアの組み付けに関係する部位の空調ケース20が左右方向(第1回転軸部230等の軸方向)に組み合わされる第1ケース部材20aと第2ケース部材20bを含み、さらに第1ドアと第2ドアが同時ではなく別々に組み付けられる。
【0063】
図3に示すように、空調ケース20、第1エアミックスドア23及び第2エアミックスドア24等を組み立てるときは、まず、第1回転軸部230を備えた第1エアミックスドア23を空調ケース20において車両左側に配される第1ケース部材20aに対して組み付ける。ここで、車両左側(軸の一端側)に位置する第1回転軸部の一端部231は、第1ケース部材の支持部20a1によって回転可能に支持されている。なお、この状態では、第1回転軸部230と第1ドア駆動用シャフト25はまだ組み立てられていない。
【0064】
次に、第1ケース部材20aと第1エアミックスドア23とが組み立てられたものに、仕切り板27を組み付ける。この段階において、仕切り板の支持部271は、車両右側(軸の他端側)に位置する第1回転軸部の他端部232寄りの部位を回転可能に支持する。この状態では、第1回転軸部の他端部232は、仕切り板27よりも車両右方向に突出するように配置されている。
【0065】
次に、第2エアミックスドア24の第2回転軸部240の一端部241を、仕切り板27よりも車両左方向に突出する第1回転軸部の他端部232の外周面に嵌合させて、第1回転軸部230と第2回転軸部240とを組み立てる。そして、第2回転軸部240を回転可能に支持するように第2ケース部材20bを組み付ける。さらに、第2ギア254を第2回転軸部の他端部242に組み付ける。
【0066】
次に、第1ドア駆動用シャフト25を第2回転軸部の他端部242の開口部から挿入し、第1ドア駆動用シャフトの一端部251を、第1回転軸部の他端部232に固定し、第1ドア駆動用シャフト25と第1回転軸部230を一体に組み付ける。この状態で、第1回転軸部230及び第1ドア駆動用シャフト25と、第2回転軸部240とが、同軸上に一体であり、かつ個別に回転可能に構成される。
【0067】
ここで、第1ドア駆動用シャフトの一端部251と第1回転軸部の他端部232とが雄ねじと雌ねじの関係にある場合には第1ドア駆動用シャフトの一端部251を第1回転軸部の他端部232に対して車両左方向にねじ止めすることにより固定される。また、両者が嵌め合い関係の構成である場合には、第1ドア駆動用シャフトの一端部251を第1回転軸部の他端部232に車両左方向に挿し込むことにより、両者は嵌め合わされて固定される。
【0068】
このような結合構造により、互いに固着されて一体構造を呈するため、第1回転軸部230は、第1ドア駆動用シャフト25と同軸となるように設けられる。ここまでの組立工程で、第1ケース部材20a、第1エアミックスドア23及び仕切り板27が組み立てられたものに、第2エアミックスドア24が組みつけられ、さらに第2ギア254と第1ドア駆動用シャフト25とが組み付けられることになる。第1ケース部材20aと第2ケース部材20bは、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合される。
【0069】
さらに、第1ギア252及び第2ギア254のそれぞれを、サーボモータ50、サーボモータ51といったアクチュエータ装置に接続する。これにより。第1回転軸部230と第2回転軸部240は、各アクチュエータ装置からの駆動力を受けて駆動されることになる。
【0070】
なお、第1回転軸部230は、第1ケース部材の支持部20a1における軸方向突出部20a2によって車両左方向(軸の一方向)の移動が規制され、仕切り板の支持部271における車両左側(軸の一端側)に位置する軸方向突出部271aによって車両右方向(軸の他方向)の移動が規制される。また、第2回転軸部240は、仕切り板の支持部271における車両右側(軸の他端側)に位置する軸方向突出部271bによって車両左方向(軸の一方向)の移動が規制され、第2ケース部材の支持部20b1における車両左側(軸の一端側)に位置する軸方向突出部20b2によって車両右方向(軸の他方向)の移動が規制される。第2ギア254は、第2ケース部材の支持部20b1における車両右側(軸の他端側)に位置する軸方向突出部20b3によって車両左方向(軸の一方向)の移動が規制される。
【0071】
以下に、本実施形態の車両用空調装置100がもたらす作用効果について述べる。車両用空調装置100は、空調ケース20と、空調ケース20に一体に形成される板、または空調ケース20とは別部品の板であって、空気通路を第1区画通路26Lと第2区画通路26Rとに仕切る仕切り板27と、第1区画通路26Lに設けられて第1区画通路26Lを開閉する第1ドアと、第1ドアと軸方向に並ぶように第2区画通路26Rに設けられて第2区画通路26Rを開閉する第2ドアと、空調ケース20及び仕切り板27に、軸方向において少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、第1ドアを駆動する第1回転軸部230と、第1回転軸部230と同軸であり、第1回転軸部230とは独立して回転可能に空調ケース20に支持されて、第2ドアを駆動する筒体状の第2回転軸部240と、第2回転軸部240の筒体内部に挿入配置されるシャフトであって、軸方向の一端側で第1回転軸部の他端部232と結合して同軸に一体となって回転し第1回転軸部230を回転させる第1ドア駆動用シャフト25と、を備える。
【0072】
第1回転軸部の他端部232は、第2回転軸部240の筒体内部にまで延びており、かつ第2回転軸部240と回転可能に嵌合する。
【0073】
この構成によれば、第2回転軸部240の一方側に位置する第1回転軸部の他端部232を第2回転軸部240の筒体内部にまで延ばして配置することにより、両端が開口する筒体状である第2回転軸部240を成型する際に、金型の型抜きを、筒体内部に第1回転軸部230が内在する側から抜く分割型と第1回転軸部230が内在しない側から抜く分割型とに分けることができる。このような分割型により、型抜き工程を良好に行える型抜き分割面を設定することが可能で、金型の抜き勾配を緩和することも可能となる。したがって、第2回転軸部240に生じ得るひけや撓みを軽減して組立て性に優れる製品を提供でき、また型構造、型精度の緩和も図れる。
【0074】
さらに第2回転軸部240の筒体内部にまで延ばした第1回転軸部の他端部232を第2回転軸部240と回転可能に嵌合することにより、すでに空調ケース20等によって支持されている第1回転軸部230に対して、その外周面に第2回転軸部240の筒体内面を嵌合させて両者を同軸に組み付けることが可能になる。さらに、第1回転軸部230と同軸に組み付いている第2回転軸部240の筒体内部に、第1ドア駆動用シャフト25を挿入し、第1回転軸部の他端部232と結合する組み立てを実現できる。このため、これらの軸方向に並ぶ二つのドア23,24の組立て性を円滑かつ正確に実施することができる。以上により、ドアを駆動する筒体状の回転軸部の成型性向上及びドアの組立て性向上を図る車両用空調装置100が得られる。
【0075】
また、以上の構成及び作用によれば、第1回転軸部230及び第2回転軸部240を支持し、かつこれらと同軸上に配される第1ドア駆動用シャフト25は、各回転軸部230,240を介して空調ケース20等によって確実に支持されるので、筒体状の第2回転軸部240の内部で、第1ドア駆動用シャフト25が所定の姿勢に対して、倒れたり、撓んだりすることを抑制することができる。つまり、従来技術で指摘されるシャフトの倒れこみ等に伴う、駆動ギアと従動ギアとの噛み合いの不具合を回避して、ドアの作動不良の問題を解消できる。したがって、空調ケース20内で回転軸方向に並ぶ複数のドアについて、回転軸等が適正な位置や姿勢で設置されないことに伴う作動不良を防止することができる。
【0076】
また、第1回転軸部の他端部232の外形は、第2回転軸部240と回転可能に嵌合する部位において、先細り状である。この構成によれば、第1回転軸部230の他端側と嵌合する第2回転軸部240の軸径も小さくすることが可能であり、第2回転軸部240の軸径を第1回転軸部230の軸径に近づけるように小さくすることができれば、空気通路を流れる空気と接触する軸部が閉める容積を小さくできる。よって、空気の流通抵抗を低減することができ、車両用空調装置100の性能向上に貢献することができる。また、第1回転軸部230の他端側の外形が先細り状であることにより、第1回転軸部の他端部232に嵌合する第2回転軸部240の筒体内面との接触面積を増加させることができ、両者間の支持力が安定する。これにより、両者の同軸関係が良好な状態に維持できるので、ドアの作動不良が起こらないように適正に組み立てることができる。
【0077】
また、第1ドア駆動用シャフト25の他端側は、第2回転軸部240の他端側に回転可能に支持されている。この構成によれば、第1ドア駆動用シャフト25は、その一端側で第1回転軸部230に結合するので第1回転軸部230を介して空調ケース20等に適正に支持されるとともに、他端側で第2回転軸部240を介して空調ケース20等に適正に支持されることになる。これにより、第1回転軸部230、第2回転軸部240、及び第1ドア駆動用シャフト25間の同軸関係が良好な状態に維持できる。よって、ドアの作動不良を抑制する適正な組み立てを実施でき、その組立て作業性の改善にも寄与する。
【0078】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0079】
上記実施形態において、軸方向に並んで配置される複数のドアの各回転軸部230,240、第1ドア駆動用シャフト25、第1ケース部材20a、第2ケース部材20b、及び仕切り板27に関わる支持構造の発明は、エアミックスドア23,24を例に挙げて説明しているが、このドアに限定して適用するものではない。例えば、デフロスタドア32L,32Rや、フットフェイス切替用ドア40L,40R等の車両用空調装置が備える各種ドアにも適用することができる。
【0080】
上記実施形態では、第1回転軸部230は空調ケース20内において車両左側(助手席側)に配され、第2回転軸部240は空調ケース20内において車両右側(運転席側)に配されている形態であるが、これと逆の位置とする複数のドアに適用可能であることはいうまでもない。
【0081】
また、上記実施形態において説明した第1ドア及び第2ドアは、その両方が平行移動するスライド移動方式のドアであるが、本発明に係るドアは、この形式のドアに限定するものではない。
【符号の説明】
【0082】
20…空調ケース
23…第1エアミックスドア(第1ドア)
24…第2エアミックスドア(第2ドア)
25…第1ドア駆動用シャフト
27…仕切り板
26L…第1区画通路
26R…第2区画通路
230…第1回転軸部
232…第1回転軸部の他端部
240…第2回転軸部
251…一端部、第1ドア駆動用シャフトの一端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に供給する空気が流通する空気通路を内部に有する空調ケース(20)と、
前記空調ケースに一体に形成される板、または前記空調ケースとは別部品の板であって、前記空調ケース内の前記空気通路を第1区画通路(26L)と第2区画通路(26R)とに仕切る仕切り板(27)と、
前記第1区画通路に設けられて前記第1区画通路を開閉する第1ドア(23)と、
前記第1ドアと軸方向に並ぶように前記第2区画通路に設けられて前記第2区画通路を開閉する第2ドア(24)と、
前記空調ケース及び前記仕切り板に、軸方向において少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、前記第1ドアを駆動する第1回転軸部(230)と、
前記第1回転軸部と同軸で前記第1回転軸部とは独立して回転可能に前記空調ケースに支持されて、前記第2ドアを駆動する筒体状の第2回転軸部(240)と、
当該第2回転軸部の筒体内部に挿入配置されるシャフトであって、軸方向の一端側で前記第1回転軸部の他端部(232)と結合して同軸に一体となって回転し前記第1回転軸部を回転させる第1ドア駆動用シャフト(25)と、
を備え、
前記第1回転軸部の他端部(232)は、前記第2回転軸部の前記筒体内部にまで延びており、かつ前記第2回転軸部と回転可能に嵌合することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1回転軸部の他端側の外形は、前記第2回転軸部と回転可能に嵌合する部位において、先細り状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記第1ドア駆動用シャフトの他端側は、前記第2回転軸部の他端側に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43470(P2013−43470A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180512(P2011−180512)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】