説明

車両用空調装置

【目的】 車両の限られたスペースに空調ユニットを設置しやすくし、かつ車室内を効率的に空調可能にした車両用空調装置を提供する。
【構成】 電気機関車1に設けられる空調装置2の空調ユニットは、単一のパワーユニット10、単一のコンデンサ11、各運転室4a、4bにそれぞれ個別に設けられるクーリングユニット12a、12bからなる。冷媒用配管16、17に設けられる電磁弁20a、20bの切替えにより、運転室4aを空調するための冷凍サイクルAと、運転室4bを空調するための冷凍サイクルBとに選択的に冷媒が循環される。冷凍サイクルAおよび冷凍サイクルBは、冷媒用配管15、パワーユニット10およびコンデンサ11を共有するため、車両の限られたスペースに搭載する空調ユニットの所要個数が低減され、運転室4a、4bの有効スペースが充分に広く確保される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両用空調装置に関するもので、例えば、車両の前後に運転室を有する電気機関車の空調装置に適用される。
【0002】
【従来の技術】従来より、電気機関車の空調装置としては、コンプレッサ、コンデンサおよびエバポレータが一体になった空調ユニットを電気機関車の運転室の天井部に設けたものが知られている。この種の空調装置は、既存の電気機関車のうち比較的新しいタイプの新造車両に多く設けられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の電気機関車の空調装置によると、運転室の天井部に空調ユニットの取付スペースを充分に広く確保する必要があり、また、車両の前後に運転室が設けられる場合、各運転室を空調するために空調ユニットを各運転室ごとに設ける必要がある。このため、車両前後の運転室に空調装置を設置する場合、空調ユニットを取付けるためのスペースを確保しにくく、空調装置の取付けが困難になるという問題がある。
【0004】本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、車両の限られたスペースに空調ユニットを設置しやすくし、かつ車室内を効率的に空調可能にした車両用空調装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための本発明による車両用空調装置は、冷媒を高温高圧に圧縮するコンプレッサと、高温高圧の冷媒から熱を奪って冷媒を凝縮させるコンデンサと、車両内に分割された室内に個別に設けられ、前記車両の内気から熱を奪って冷媒を蒸発させる複数のエバポレータと、前記コンプレッサおよび前記コンデンサを直列に接続するとともに前記複数のエバポレータを並列に接続する冷媒用配管と、前記冷媒用配管に設けられ、前記複数のエバポレータのうちの特定のエバポレータに選択的に冷媒を流通する冷媒流路切替え手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
【作用】本発明の車両用空調装置によると、複数の室に個別にエバポレータを設け、これらの複数のエバポレータを運転するためのコンプレッサおよびコンデンサを共有する構成にし、複数のエバポレータに選択的に冷媒を循環させるため、空調ユニットの所要個数が低減されるので、空調装置の取付スペースが縮小されるとともに、各室に空調ユニットを比較的容易に取付けることができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明の実施例による車両用空調装置を図1〜図3R>3に示す。図1および図2に示すように、電気機関車1は、車両本体3の前後に運転室4a、4bが設けられ、運転室4aと運転室4bとの間に機械室6が設けられる。電気機関車1の運転者は、車両進行方向に応じて運転室4aまたは4bを選択し、車両本体3を所定方向に進行させる。車両走行用モータ7は、車両本体3の機械室6内に設けられる。
【0008】空調装置2の空調ユニットは、基本的には、単一のパワーユニット10と、単一のコンデンサ11と、各運転室4a、4bに個別に設けられるクーリングユニット12a、12bとからなる。冷媒圧縮用のコンプレッサおよびコンプレッサ駆動用のモータを備えたパワーユニット10は、車両本体3の床下に設けられる。冷媒を凝縮させるコンデンサ11は、走行用モータ7を冷却するための外気取入口に設けられる。送風機、エキスパンションバルブおよび冷媒を蒸発させるエバポレータが一体になったクーリングユニット12a、12bは、運転室4a、4bの天井部に設けられる。
【0009】パワーユニット10のコンプレッサとコンデンサ11とは、冷媒用配管15により直列に接続される。クーリングユニット12a、12bの各エバポレータ同志は、冷媒用配管16、17により接続される。そして、冷媒用配管16、17のそれぞれの中間部に冷媒用配管15の両端が接続され、分岐部18、19が形成される。すなわち、クーリングユニット12a、12bは、分岐部18と分岐部19との間に並列に接続される。
【0010】冷媒用配管16には、コンデンサ11の出口側の分岐部18とクーリングユニット12aとの間に電磁弁20aが設けられ、分岐部18とクーリングユニット12bとの間に電磁弁20bが設けられる。電磁弁20a、20bは、通電により冷媒通路を開くものである。冷媒用配管17には、パワーユニット10の入口側の分岐部19とクーリングユニット12aとの間に逆止弁21aが設けられ、分岐部19とクーリングユニット12bとの間に逆止弁21bが設けられる。逆止弁21aは、クーリングユニット12aから分岐部19側にのみ冷媒が流れるように配置され、逆止弁21bは、クーリングユニット12bから分岐部19にのみ冷媒が流れるように配置される。これにより、パワーユニット10からコンデンサ11、電磁弁20a、クーリングユニット12aおよび逆止弁21aを経由してパワーユニット10に循環する図1実線矢印に示す冷凍サイクルAと、パワーユニット10からコンデンサ11、電磁弁20b、クーリングユニット12bおよび逆止弁21bを経由してパワーユニット10に循環する図1破線矢印に示す冷凍サイクルBとが形成される。
【0011】次に、前述した空調装置2の電気回路について図3に基づいて説明する。図1および図2に示す運転室4a、4bには、空調装置2を作動するための図3に示すスイッチSW1 およびスイッチSW2 が設けられる。スイッチSW1 は、オン状態でリレーRL1 に接続され、オフ状態でリレーRL2 に接続される。また、スイッチSW2 は、オン状態でリレーRL2 に接続され、オフ状態でリレーRL1 に接続される。リレーRL1 およびリレーRL2 の接続されない側のスイッチSW1 およびスイッチSW2 の端子には、リレーRL1 の接点27aとリレーRL2 の接点27bとが並列に設けられる。そして、接点27aとスイッチSW2 との間に、図1R>1に示すクーリングユニット12aの送風ファンモータ25aと電磁弁20aの電磁コイル26aとが並列に接続され、接点27bとスイッチSW2 との間に、図1に示すクーリングユニット12bの送風ファンモータ25bと電磁弁20bの電磁コイル26bとが並列に接続される。
【0012】スイッチSW1 がオン状態でスイッチSW2 がオフ状態のとき、リレーRL1のコイルに通電され、接点27aが閉じ、送風ファンモータ25aおよび電磁コイル26aに通電される。また、スイッチSW1 がオフ状態でスイッチSW2 がオン状態のとき、リレーRL2 のコイルに通電され、接点27bが閉じ、送風ファンモータ25bおよび電磁コイル26bに通電される。このため、運転室4a側の送風ファンモータ25aおよび電磁コイル26aと運転室4b側の送風ファンモータ25bおよび電磁コイル26bとが同時に作動することはなく、スイッチSW1 およびスイッチSW2 の切忘れ等による弊害が防止される。
【0013】運転室4aを冷房する場合、スイッチSW1 をオンにし、スイッチSW2 をオフにすると、電磁弁20aが開き、クーリングユニット12aの送風ファンが駆動する。すると、パワーユニット10により圧送される冷媒は、冷凍サイクルAを循環し、クーリングユニット12aのエバポレータにより運転室4aの空気と熱交換する。このとき、冷凍サイクルBは、電磁弁20bにより閉鎖されている。また、運転室4bを冷房する場合、スイッチSW1 をオフにし、スイッチSW2 をオンにすると、電磁弁20bが開き、クーリングユニット12bの送風ファンが駆動する。するとパワーユニット10により圧送される冷媒は、冷凍サイクルBを循環し、クーリングユニット12bのエバポレータによって運転室4bの空気と熱交換する。したがって、運転室4aまたは4bが選択的に冷房される。なお、運転室4aまたは4bの室温調節は、例えばクーリングユニット12aまたは12bの送風機の送風量を調節することにより行なう。
【0014】本実施例の空調装置2によると、運転室4aまたは4bを空調するとき、冷凍サイクルAおよび冷凍サイクルBにパワーユニット10およびコンデンサ11を共有して用いるため、各運転室4a、4bには、空調ユニットとしてクーリングユニット12a、12bを設ければよく、パワーユニット、コンデンサの取付けは不要である。このため、空調ユニット数を減らすことができ、空調装置の取付作業が容易になり、また運転室4a、4bの有効スペースが充分に確保される。
【0015】本実施例の空調装置2は、運転室4a、4bにクーリングユニット12a、12bを設けたが、機械室6にクーリングユニットを併せて設けることもできる。この場合、機械室6のクーリングユニットは、パワーユニット10およびコンデンサ11とともに冷凍サイクルAまたは冷凍サイクルBとは別の冷凍サイクルを形成する。
【0016】また、本実施例では、冷媒流路切替え手段として電磁弁20a、20bおよび逆止弁21a、21bを設けたが、三方切替え弁やダンパ等を用いてもよい。さらに、本実施例は、空調装置2を電気機関車1に設けたが、電気機関車に代えてディーゼル機関車に設けてもよい。この場合、パワーユニットのコンプレッサをディーゼル機関の駆動力によるベルト駆動にすると、パワーユニットのコンプレッサ駆動用のモータを排除することができ、空調装置の取付けスペースをさらに縮小することができる。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の車両用空調装置によれば、コンプレッサおよびコンデンサを共有するエバポレータを車室内に分散して配置し、冷媒の流れを切替える構成にしたため、少数の空調ユニットにより車室内を効率的に冷房するので、車両内のスペースを有効に活用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による車両用空調装置を示す側面模式図である。
【図2】図1に示す車両用空調装置の平面模式図である。
【図3】本発明の実施例による車両用空調装置の電気回路を示す回路図である。
【符号の説明】
2 空調装置(車両用空調装置)
3 車両本体
4a、4b 運転室
10 パワーユニット(コンプレッサ)
11 コンデンサ
12a、12b クーリングユニット(エバポレータ)
15、16、17 冷媒用配管
20a、20b 電磁弁(冷媒流路切替え手段)
21a、21b 逆止弁(冷媒流路切替え手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷媒を高温高圧に圧縮するコンプレッサと、高温高圧の冷媒から熱を奪って冷媒を凝縮させるコンデンサと、車両内に分割された室内に個別に設けられ、前記車両の内気から熱を奪って冷媒を蒸発させる複数のエバポレータと、前記コンプレッサおよび前記コンデンサを直列に接続するとともに前記複数のエバポレータを並列に接続する冷媒用配管と、前記冷媒用配管に設けられ、前記複数のエバポレータのうちの特定のエバポレータに選択的に冷媒を流通する冷媒流路切替え手段とを備えたことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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