説明

車両用窓ガラス判別装置及び回収方法

【課題】 多数のガラス破片を分別するための大掛かりな装置を必要とせず、小型で携帯可能な装置により確実に紫外線遮蔽ガラスの判別ができ、高品質の再利用ガラスを得ることができる車両用窓ガラス判別装置及び回収方法を提供する。
【解決手段】 被判別ガラス2を照射して、酸化セリウムを励起させる波長の光を発する光源3と、前記被判別ガラス2からの酸化セリウムが励起して発光したときの発光光を検出して、前記被判別ガラス2が酸化セリウムを成分として含む紫外線遮蔽ガラスか否かを判別するための検出器4と、該検出器4への前記発光光以外の自然光の入射を遮蔽する自然光遮蔽手段6とを有し、携帯可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラスを回収して再利用する際に適用できる車両用窓ガラス判別装置及び回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から自動車の窓ガラス等の車両用窓ガラスも再資源材料として利用されることが望まれている。この場合、窓ガラスを破砕し破片(カレット)にして回収し、その破片を工場に搬送し、これをフロート窯などの板ガラス製造用フロート窯に投入することによって、車両用窓ガラスを板ガラスの再資源材料として使用できる。
【0003】
ところで、車両用窓ガラスは、通常のガラス板の他に、紫外線をカットする紫外線遮蔽ガラス(UVカットガラス)が用いられている。紫外線遮蔽ガラスは紫外線をカットするために酸化セリウムを成分として含み、通常のガラス板と組成が異なる。よって、車両用窓ガラスのカレットを回収する際に、UVカットガラスのカレットと通常のガラス板のカレットが混ざって回収されると、フロート窯に投入してもガラスの組成が制御できず、所望の組成の通常のガラス板やUVカットガラスとして再生できない。そのため、UVカットガラスのカレットと通常のガラス板のカレットを分別する必要がある。そこで、双方のガラスカレットを分離する作業が必要となるが、見た目には変わらない通常のガラス板のカレットとUVカットガラスのカレットとを分離することは容易でない。
【0004】
カレット分別方法及び装置が特許文献1に記載されている。このカレット分別方法及び装置は、上述した問題点を考慮せず、厚みの異なるソーダ石灰ガラスの分別を目的としている。このカレット分別装置は、カレットを提供するホッパと、これを搬送するコンベアと、カレットに可視光線を照射する照明と、その透過光を受光する3台のCCDカメラと、判別結果によりカレットを分別する高圧空気噴射装置と、分別したカレットを収容する分別容器で構成される。このように、特許文献1に記載のカレット分別装置は、その構成が複雑で部品点数も多く、大掛かりな装置であり、そのためのスペースが必要である。また、カレットの大きさや形状等は全て異なり、その数は無数であるため、判別ミスが生じるおそれがある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−275855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多数のガラス破片を分別するための大掛かりな装置を必要とせず、小型で携帯可能な装置により確実に紫外線遮蔽ガラスの判別ができ、高品質の再利用ガラスを得ることができる車両用窓ガラス判別装置及び回収方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、被判別ガラスを照射して、酸化セリウムを励起させる波長の光を発する光源と、前記被判別ガラスからの酸化セリウムが励起して発光したときの発光光を検出して、前記被判別ガラスが酸化セリウムを成分として含む紫外線遮蔽ガラスか否かを判別するための検出器と、該検出器への前記発光光以外の自然光の入射を遮蔽する自然光遮蔽手段とを有し、携帯可能であることを特徴とする車両用窓ガラス判別装置を提供する。
【0008】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記自然光遮蔽手段は、周縁部が前記被判別ガラスに密着するカバー材であり、該カバー材は前記被判別ガラスの発光部分と前記光源と前記検出器とを覆うことを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記カバー材は前記被判別ガラスの両面に備わることを特徴としている。
【0010】
さらに、請求項4の発明では、車両用窓ガラスを破砕して回収する車両用窓ガラスの回収方法であって、前記車両用窓ガラスの破砕前に請求項1〜3のいずれかに記載の判別装置を用いて該車両用窓ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かを判別し、紫外線遮蔽ガラスを分別して回収することを特徴とする車両用窓ガラスの回収方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、装置が携帯可能であるため、大掛かりな据置構造の装置を必要とせずに、被判別ガラスの判別を行うことができる。被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスである場合、紫外線遮蔽ガラスに含有される酸化セリウムが光源からの光により励起して被判別ガラスが特定波長の光を発光するため、検出器がこの発光光を検出し、被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かを判別できる。また、被判別ガラスからの発光光以外の自然光を遮蔽する自然光遮蔽手段により、被判別ガラスからの発光光と同じ波長の光を含む自然光が遮断されるため、検出器は判別装置外からの自然光の影響を受けることなく、確実に被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かを判別できる。
【0012】
請求項2の発明によれば、カバー材により被判別ガラスの発光部分(光源からの照射により酸化セリウムが励起して発光する部分)と光源と検出器が覆われその周縁部がガラス面に密着する。したがって、被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスである場合、光源からの光が確実に被判別ガラスを発光させ、その発光が確実に検出器により判別装置外からの自然光の影響を受けることなく検出できる。したがって、確実に被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かを判別できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、カバー材が被判別ガラスの両面に備わるため、検出器を装着したガラス面と反対側からの被判別ガラスからの発光光以外の自然光が確実に遮断され、確実に検出器への判別装置外からの自然光を遮蔽できる。したがって、検出器には被判別ガラスの発光による光のみが入射し、確実に被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かを判別できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ガラスの破砕前にそのガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かの判別を行うため、予め紫外線遮蔽ガラスとその他のガラスを認識でき、これらを分別して回収することができる。このため、フロート板ガラスを再生する場合に紫外線遮蔽ガラスの破片が混ざって再生処理されることを防止できる。したがって、再生効率が高まり、再生ガラスの純度や品質が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る車両用窓ガラス判別装置を示し、(A)は装置本体を車両用窓ガラスに取り付けたときの概略図、(B)はその断面図である。
図示したように、本発明に係る車両用窓ガラス判別装置1は、自動車のドア10に備わる窓ガラス(被判別ガラス)2に取り付けられる。判別装置1は、光源3と、検出器4と、カバー材5a,5bで構成される。紫外線遮蔽ガラス(UVカットガラス)には、紫外線を遮断するために酸化セリウムが含有されている。この酸化セリウムは波長約380nmの光を照射されると、励起して波長約426nmの光を発光する。光源3はこの酸化セリウムを励起させる波長(約360nm〜約400nm)の光を発光する。光源3としては、ブラックライト等の紫外線照射装置を用いることができる。
【0016】
検出器4と被判別ガラス2の間には、フィルタ6が設けられる。このフィルタ6は波長410nm以下の光を遮光するフィルタである。したがって、光源3からの光により被判別フィルタ2が波長約426nmの光を発光すると、この発光光はフィルタ6を通過して検出器4で検出される。検出器4が発光光を検出すると、表示ランプ7が点灯して被判別ガラス2が紫外線遮蔽ガラスであることを作業者に通知する。判別結果を作業者に通知できるものであればどのような機構でもよく、例えば表示ランプ7の代わりにブザー音等を発する音声装置を用いることもできる。光源3からの光が直接検出器4で検出されることを防止するため、検出器4と光源3の間には仕切り板8が備わる。なお、被判別ガラス2の発光光の波長である約426nmを周波数分析できる検出器を用いれば、フィルタ6や仕切り板8は不要である。
【0017】
光源3と検出器4及び被判別ガラス2の発光部分はカバー材5a,5bにより覆われる。このカバー材5a,5bの周縁部は被判別ガラス2の両面に密着して取り付けられるため、判別装置1内に対して外部からの自然光を遮断できる。ここでいう自然光とは、被判別ガラス2からの発光光以外の自然光をいう。したがって、判別装置1による被判別ガラス2の判別時に検出器4には被判別ガラス2の発光光以外が入射することはないので、確実に被判別ガラス2の判別を行うことができる。カバー材として弾性体を用いれば、湾曲した被判別ガラス2に対しても弾性変形して密着できるので、自然光を確実に遮断できる。なお、車両全体を覆ったり、判別を行う部屋を暗室として自然光を遮蔽できれば、カバー材は被判別ガラス2の片面のみでもよいし、両面とも不要とすることもできる。
【0018】
カバー材5a,5bは連結部材9で連結される。この連結部材9はカバー材5a,5b同士が内側方向に相互に押圧するような弾性を有する。したがって、連結部材9を被判別ガラス2の上辺に引っ掛けるだけでその弾性力によりカバー材5a,5bが互いに引きつけられて確実に被判別ガラス2に密着して検出器を自然光から遮蔽する。なお、連結部材9は弾性部材でなくてもよく、作業者がカバー材5a,5bをそれぞれ持って被判別ガラス2の両面に取り付けることができれば連結部材9は不要である。
【0019】
上述したように、装置本体1は自動車の窓ガラスに取り付けられる程度の大きさであるため、小型であり、携帯性に優れる。したがって、作業者が手に持ってこれを被判別ガラス2に取り付けることができ、大掛かりな据置装置を必要とせずに被判別ガラス2の判別を行うことができる。これにより、ガラス破片を再生処理する工場に搬送する前に自動車の解体現場で紫外線遮蔽ガラスを分別することができる。
【0020】
図2は本発明に係る別の車両用窓ガラス判別装置の断面図である。
図示したように、光源3をカバー材5a側に、検出器4をカバー材5b側に設けてもよい。このような構成としても、光源3からの光による被判別ガラス2の発光光は検出器4で検出される。その他の構成、作用、効果は図1の例と同様である。
【0021】
図3は本発明に係る車両用窓ガラスの回収方法のフローチャートである。
ステップS1
被判別ガラスである自動車の窓ガラスに本発明に係る車両用窓ガラス判別装置をセットする。
ステップS2
被判別ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かの判別を行う。
ステップS3
ステップS2の判別結果に基づいて、紫外線遮蔽ガラスとその他のガラスとを分別して被判別ガラスを破砕して回収する。
【0022】
このように、ガラスの破砕前にそのガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かの判別を行うため、予め紫外線遮蔽ガラスとその他のガラスを認識でき、これらを分別して回収することができる。このため、ガラスカレットを通常のガラスと紫外線遮蔽ガラスとの破片が混ざってフロート窯に投入されることを防止できる。したがって、ガラスの組成を制御できるようになるため再生効率が高まり、再生ガラスの純度や光学品質が低下することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、車両用窓ガラスを破砕回収して再生する場合に、ガラス板が紫外線遮蔽ガラスか否かを判別して分別回収するために適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車両用窓ガラス判別装置を示し、(A)は装置本体を車両用窓ガラスに取り付けたときの概略図、(B)はその断面図。
【図2】本発明に係る別の車両用窓ガラス判別装置の断面図。
【図3】本発明に係る車両用窓ガラスの回収方法のフローチャート。
【符号の説明】
【0025】
1:判別装置、2:被判別ガラス、3:光源、4:検出器、5:カバー材、6:フィルタ、7:表示ランプ、8:仕切り板、9:連結部材、10:ドア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被判別ガラスを照射して、酸化セリウムを励起させる波長の光を発する光源と、
前記被判別ガラスからの酸化セリウムが励起して発光したときの発光光を検出して、前記被判別ガラスが酸化セリウムを成分として含む紫外線遮蔽ガラスか否かを判別するための検出器と、
該検出器への前記発光光以外の自然光の入射を遮蔽する自然光遮蔽手段とを有し、
携帯可能であることを特徴とする車両用窓ガラス判別装置。
【請求項2】
前記自然光遮蔽手段は、周縁部が前記被判別ガラスに密着するカバー材であり、該カバー材は前記被判別ガラスの発光部分と前記光源と前記検出器とを覆うことを特徴とする請求項1に記載の車両用窓ガラス判別装置。
【請求項3】
前記カバー材は前記被判別ガラスの両面に備わることを特徴とする請求項2に記載の車両用窓ガラス判別装置。
【請求項4】
車両用窓ガラスを破砕して回収する車両用窓ガラスの回収方法であって、
前記車両用窓ガラスの破砕前に請求項1〜3のいずれかに記載の判別装置を用いて該車両用窓ガラスが紫外線遮蔽ガラスか否かを判別し、紫外線遮蔽ガラスを分別して回収することを特徴とする車両用窓ガラスの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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